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特許7151054サーマルプリントヘッド、および、その製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】サーマルプリントヘッド、および、その製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/335 20060101AFI20221004BHJP
   B41J 2/345 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
B41J2/335 101C
B41J2/345 C
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2018192370
(22)【出願日】2018-10-11
(65)【公開番号】P2020059223
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(72)【発明者】
【氏名】周 旋
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-126048(JP,A)
【文献】特開平07-017067(JP,A)
【文献】特開2004-322447(JP,A)
【文献】特開2000-127472(JP,A)
【文献】特開2018-062136(JP,A)
【文献】特開平07-329332(JP,A)
【文献】特開昭63-315263(JP,A)
【文献】特開平08-039852(JP,A)
【文献】米国特許第06028619(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/335
B41J 2/345
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面である基板主面と、前記基板主面に直交し、かつ、副走査方向の一方側を向く基板端面と、を有する基板と、
前記基板主面に形成されたグレーズ層と、
前記グレーズ層の前記基板とは反対側を向く面に形成された電極層と、
前記電極層に接続する抵抗体層と、
を備え、
前記グレーズ層は、前記基板主面の前記基板端面側の端部に配置され、かつ、前記基板とは反対側を向く第1グレーズ主面を有する第1グレーズを備え、
前記第1グレーズ主面は、前記基板端面側の端縁を含み、かつ、平坦である第1部と、前記基板端面とは反対側の端縁を含み、かつ、湾曲する第2部と、を備え
前記第1グレーズは、前記基板端面側を向く第1グレーズ端面を備え、
前記第1グレーズ端面は、前記基板側の端縁の位置が副走査方向において前記基板端面に一致し、かつ、前記基板端面に対して傾斜している、
ことを特徴とするサーマルプリントヘッド。
【請求項2】
前記グレーズ層は、前記第1グレーズから副走査方向に離間して配置され、かつ、主走査方向に延びる帯状で主走査方向に直交する断面の形状が前記基板の厚さ方向に膨出した形状である第2グレーズをさらに備え、
前記抵抗体層は、少なくとも一部が前記第2グレーズ上に配置されている、
請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項3】
前記グレーズ層は、前記第1グレーズと前記第2グレーズとの間に配置される中間ガラス層をさらに備え、
前記基板の厚さ方向視において、前記中間ガラス層は、前記第1グレーズおよび前記第2グレーズに重なっている、
請求項に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項4】
前記グレーズ層は、前記基板主面の前記基板端面とは反対側の端部に配置された端部ガラス層をさらに備え、
前記基板の厚さ方向視において、前記端部ガラス層は、前記第2グレーズに重なっている、
請求項またはに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項5】
一方の面である基板主面と、前記基板主面に直交し、かつ、副走査方向の一方側を向く基板端面と、を有する基板と、
前記基板主面に形成されたグレーズ層と、
前記グレーズ層の前記基板とは反対側を向く面に形成された電極層と、
前記電極層に接続する抵抗体層と、
を備え、
前記グレーズ層は、前記基板主面の前記基板端面側の端部に配置され、かつ、前記基板とは反対側を向く第1グレーズ主面を有する第1グレーズを備え、
前記第1グレーズ主面は、前記基板端面側の端縁を含み、かつ、平坦である第1部と、前記基板端面とは反対側の端縁を含み、かつ、湾曲する第2部と、を備え
前記グレーズ層は、
前記第1グレーズから副走査方向に離間して配置され、かつ、主走査方向に延びる帯状で主走査方向に直交する断面の形状が前記基板の厚さ方向に膨出した形状である第2グレーズと、
前記基板主面の前記基板端面とは反対側の端部に配置された端部ガラス層と、
をさらに備え、
前記抵抗体層は、少なくとも一部が前記第2グレーズ上に配置され、
前記基板の厚さ方向視において、前記端部ガラス層は、前記第2グレーズに重なっている、
ことを特徴とするサーマルプリントヘッド。
【請求項6】
前記第1グレーズは、前記基板端面側を向く第1グレーズ端面を備え、
副走査方向において、前記第1グレーズ端面の前記基板側の端縁の位置は、前記基板端面に一致する、
請求項に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項7】
前記第1グレーズ端面は、前記基板端面と面一である、
請求項に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項8】
前記第1グレーズ端面は、前記基板端面に対して傾斜している、
請求項に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項9】
前記第1部は、前記基板端面側に近づくほど前記基板主面に近づくように傾斜している、
請求項1ないし8のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項10】
前記第1部は、前記基板主面に平行である、
請求項1ないし8のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項11】
前記第2部は、前記基板主面が向く方向に突出する凸部を備える、
請求項1ないし10のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項12】
基材に配線パターンが形成された配線基板と、
前記配線基板に搭載された駆動ICと、
をさらに備え、
前記駆動ICは、ワイヤによって、前記電極層のうち前記第1グレーズ主面の前記第1部に形成された部分に接続される、
請求項1ないし11のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項13】
放熱板をさらに備え、
前記基板および前記配線基板は、前記放熱板に固定されている、
請求項12に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項14】
前記グレーズ層は、非晶質ガラスからなる、
請求項1ないし13のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項15】
基板材料の裏面に溝を形成する工程と、
前記基板材料の主面上に、ガラスペーストを厚膜印刷して焼成することで、第1グレーズを含むグレーズ層を形成する工程と、
前記第1グレーズ上の副走査方向における中央付近に配置されるボンディング部を含む電極層を形成する工程と、
前記電極層に接続する抵抗体層を形成する工程と、
前記基板材料を、主走査方向に平行で、かつ、前記第1グレーズの副走査方向における中央を通る切断線で、前記基板材料を前記溝に沿って割ることにより切断する工程と、
を備え
前記切断する工程により、前記基板材料に基板端面が形成され、前記第1グレーズに、前記基板端面側を向く第1グレーズ端面が形成され、
前記第1グレーズ端面は、前記基板材料側の端縁の位置が副走査方向において前記基板端面に一致し、かつ、前記基板端面に対して傾斜している、
ことを特徴とするサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項16】
基板材料上に、ガラスペーストを厚膜印刷して焼成することで、第1グレーズを含むグレーズ層を形成する工程と、
前記第1グレーズ上の副走査方向における中央付近に配置されるボンディング部を含む電極層を形成する工程と、
前記電極層に接続する抵抗体層を形成する工程と、
前記基板材料を、主走査方向に平行で、かつ、前記第1グレーズの副走査方向における中央を通る切断線で切断する工程と、
を備え
前記グレーズ層を形成する工程は、
前記第1グレーズを形成する工程と、
前記第1グレーズから副走査方向に離間して配置され、かつ、主走査方向に延びる帯状で主走査方向に直交する断面の形状が前記基板材料の厚さ方向に膨出した形状である第2グレーズを形成する工程と、
副走査方向において前記第2グレーズに対して前記第1グレーズとは反対側の端部に、前記基板材料の厚さ方向視において前記第2グレーズに重なるように、端部ガラス層を形成する工程と、
を備えている、
ことを特徴とするサーマルプリントヘッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、サーマルプリントヘッド、および、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発熱抵抗体および電極パターンを備えた印字基板を、発熱抵抗体の駆動ICが搭載された配線基板とは別体に構成した、いわゆる分離型のサーマルプリントヘッドが知られている。特許文献1には、従来の分離型のサーマルプリントヘッドの一例が開示されている。同文献に開示されたサーマルプリントヘッドにおいて、配線基板に搭載された駆動ICのパッドと、印字基板の電極パターンとは、ワイヤによって接続されている。当該サーマルプリントヘッドによると、駆動ICが比較的安価な配線基板に搭載されることで、比較的高価な印字基板の面積が小さくなり、全体としての製造コストが抑制される。また、印字基板において、ワイヤがボンディングされる電極パターンのボンディング部が配置される位置には、電極パターンを積層しやすくし、かつ、ワイヤをボンディングしやすくするためにダイボンディンググレーズが設けられる。
【0003】
サーマルプリントヘッドは、小型化および低価格化が求められている。このため、印字基板の副走査方向の寸法を小さくすることが求められている。印字基板の副走査方向の寸法を小さくすると、ダイボンディンググレーズの副走査方向の寸法も小さくする必要がある。しかし、ダイボンディンググレーズの副走査方向の寸法を小さくしすぎると、問題が生じる場合がある。すなわち、ダイボンディンググレーズの材料であるガラスペーストの表面張力によって、ダイボンディンググレーズの表面にメニスカスが形成され、その上に形成される電極パターンのボンディング部が湾曲する場合がある。湾曲したボンディング部にワイヤがボンディングされた場合、ワイヤの接合が弱くなって、断線が発生する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭62-238761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、ワイヤの断線を抑制することができるサーマルプリントヘッドを提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示によって提供されるサーマルプリントヘッドは、一方の面である基板主面と、前記基板主面に直交し、かつ、副走査方向の一方側を向く基板端面と、を有する基板と、前記基板主面に形成されたグレーズ層と、前記グレーズ層の前記基板とは反対側を向く面に形成された電極層と、前記電極層に接続する抵抗体層とを備え、前記グレーズ層は、前記基板主面の前記基板端面側の端部に配置され、かつ、前記基板とは反対側を向く第1グレーズ主面を有する第1グレーズを備え、前記第1グレーズ主面は、前記基板端面側の端縁を含み、かつ、平坦である第1部と、前記基板端面とは反対側の端縁を含み、かつ、湾曲する第2部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示のサーマルプリントヘッドによれば、第1グレーズ主面のうち、基板端面側に位置する第1部は平坦である。したがって、当該第1部に形成されたボンディング部の表面も平坦になる。これにより、ボンディング部にボンディングされたワイヤが、ボンディング部との接合が弱まることにより断線することを抑制できる。
【0008】
本開示のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示す平面図である。
図2図1のサーマルプリントヘッドを示す要部拡大平面図である。
図3図2のIII-III線に沿う断面図である。
図4図2のIII-III線に沿う要部拡大断面図である。
図5】ダイボンディンググレーズの断面プロファイルを示す図である。
図6図1のサーマルプリントヘッドの製造方法の一例を示す要部拡大断面図である。
図7図1のサーマルプリントヘッドの製造方法の一例を示す要部拡大断面図である。
図8図1のサーマルプリントヘッドの製造方法の一例を示す要部拡大断面図である。
図9図1のサーマルプリントヘッドの製造方法の一例を示す要部拡大断面図である。
図10図1のサーマルプリントヘッドの製造方法の一例を示す要部拡大断面図である。
図11図1のサーマルプリントヘッドの製造方法の一例を示す断面図である。
図12図1のサーマルプリントヘッドの製造方法の一例を示す断面図である。
図13】本開示の第2実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示す要部拡大断面図である。
図14】本開示の第3実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示す要部拡大断面図である。
図15図14のサーマルプリントヘッドの製造方法の一例を示す要部拡大断面図である。
図16図14のサーマルプリントヘッドの製造方法の一例を示す要部拡大断面図である。
図17】本開示の第4実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示す断面図である。
図18】本開示の第5実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示す要部拡大平面図である。
図19図18のXIX-XIX線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0011】
<第1実施形態>
図1図4は、本開示に係るサーマルプリントヘッドの一例を示している。本実施形態のサーマルプリントヘッド101は、プラテンローラとの間に挟まれて搬送される印刷媒体に印刷を施すプリンタに組み込まれるものである。このような印刷媒体としては、たとえばバーコードシートやレシートを作成するための感熱紙が挙げられる。
【0012】
図1は、サーマルプリントヘッド101を示す平面図である。図2は、サーマルプリントヘッド101を示す要部拡大平面図である。図3は、図2のIII-III線に沿う断面図である。図4は、図2のIII-III線に沿う要部拡大断面図である。これらの図において、サーマルプリントヘッド101の長手方向(主走査方向)をx方向とし、短手方向(副走査方向)をy方向とし、厚さ方向をz方向として説明する。また、y方向については、図1および図2の下方(図3および図4の右方)を印刷媒体が送られてくる上流側とし、図1および図2の上方(図3および図4の左方)を印刷媒体が排出される下流側とする。以下の図においても同様である。なお、理解の便宜上、図1および図2においては、保護層5を省略している(図18についても同様)。また、図2においては、封止樹脂74を省略している(図18についても同様)。
【0013】
サーマルプリントヘッド101は、印字基板8、配線基板6、駆動IC71、封止樹脂74、コネクタ75および放熱板9を備えている。印字基板8は、基板1、グレーズ層2、電極層3、抵抗体層4、および保護層5を備えている。
【0014】
基板1は、印字基板8の土台となるものであり、たとえばAlN、Al23、ジルコニアなどのセラミックからなる。図1に示すように、基板1は、x方向に長く延びる長矩形状の板状とされ、その厚さ(z方向の寸法)はたとえば0.5~1.0mm程度である。また、本実施形態では、基板1は、短辺の寸法(y方向の寸法)がたとえば4~7mm程度である。図3および図4に示すように、基板1は、z方向において互いに反対側を向く主面11および裏面12と、主面11および裏面12に直交し、かつ、y方向上流側を向く端面13とを備えている。主面11に、グレーズ層2、電極層3、抵抗体層4、および保護層5が形成される。また、基板1の裏面12は、たとえばシリコーン接着剤で放熱板9に接着される。基板1の主面11は、ダイボンディンググレーズ形成領域111を有する(図4参照)。ダイボンディンググレーズ形成領域111は、後述するダイボンディンググレーズ22が形成される領域であり、主面11のy方向上流側端部に位置する。
【0015】
グレーズ層2は、基板1の主面11上に形成されており、たとえば非晶質ガラスなどのガラス材料からなる。グレーズ層2は、ガラスペーストを厚膜印刷したのちに、これを焼成することにより形成されている。グレーズ層2は、基板1の主面11の凹凸をなくして電極層3を積層しやすくするために設けられている。
【0016】
図3に示すように、グレーズ層2は、ヒーターグレーズ21、ダイボンディンググレーズ22、中間ガラス層23、および端部ガラス層24を備えている。
【0017】
ヒーターグレーズ21は、基板1の主面11の、y方向下流側寄りに配置されている。ヒーターグレーズ21は、図2に示すようにx方向に長く延びる帯状であり、図3に示すようにy方向およびz方向を含むyz平面の断面形状が、z方向に膨出した円弧状とされている。ヒーターグレーズ21は、軟化点がたとえば800~850℃程度であるガラス材料からなる。ヒーターグレーズ21は、抵抗体層4のうちの発熱する部分である発熱部41を印刷対象である感熱紙などに押し当てるために設けられている。なお、ヒーターグレーズ21を設けないようにしてもよい。ヒーターグレーズ21が、本開示の「第2グレーズ」に相当する。
【0018】
ダイボンディンググレーズ22は、基板1の主面11のダイボンディンググレーズ形成領域111(図4参照)に形成され、ヒーターグレーズ21に対してy方向上流側に離間した位置で、ヒーターグレーズ21と平行に設けられた帯状とされている。ダイボンディンググレーズ22は、軟化点がたとえば800~850℃程度であるガラス材料からなる。ダイボンディンググレーズ22は、電極層3の一部を支持している。ダイボンディンググレーズ22の厚さは、たとえば20~50μm程度である。ダイボンディンググレーズ22が、本開示の「第1グレーズ」に相当する。
【0019】
図4に示すように、ダイボンディンググレーズ22は、主面221、裏面222、および端面223を備えている。主面221および裏面222は、z方向において互いに反対側を向く面である。主面221は、基板1とは反対側を向く面であり、電極層3の一部が形成され、一部が保護層5で覆われる。裏面222は、基板1側を向く面であり、基板1の主面11に接する。端面223は、主面221および裏面222につながり、y方向上流側を向く面である。本実施形態では、端面223は、基板1の主面11に直交(裏面222にも直交)し、基板1の端面13と、面一である。
【0020】
主面221は、第1部221aおよび第2部221bを備えている。第1部221aは、主面221のy方向上流側の端縁から中央より下流側まで広がり、x方向に延びている。第1部221aは、平坦であり、y方向上流側に向かうほど基板1の主面11に近づくように傾斜している。つまり、ダイボンディンググレーズ22の厚さ(z方向の寸法)は、第1部221aの部分においては、y方向上流側に向かうほど薄くなり、第2部221bとの境界での厚さt1が、端面223での厚さt2より大きい。電極層3のボンディング部38は、第1部221a上に形成されている。
【0021】
第2部221bは、主面221のy方向下流側の端縁から第1部221aとの境界まで広がり、x方向に延びている。第2部221bは、y方向およびz方向を含むyz平面の断面形状がz方向に膨出した形状とされ、湾曲している。第2部221bは、凸部221cを有する。凸部221cは、z方向において、主面11から最も離れた部位である。凸部221cは、x方向に延びている。
【0022】
図5は、ダイボンディンググレーズ22の断面プロファイルを示す図である。図5に示すように、第1部221aは、平坦であって、y方向上流側に向かうほどz方向上流側(図5の下側)に近づくように傾斜している。また、第2部221bは、中央部分がz方向下流側(図5の上側)に膨出するように湾曲している。
【0023】
また、図4に示すように、ダイボンディンググレーズ22は、露出面224を有する。露出面224は、中間ガラス層23に重ならず、中間ガラス層23から露出した面である。
【0024】
中間ガラス層23は、図2および図3に示すように、基板1の主面11のうちヒーターグレーズ21とダイボンディンググレーズ22とに挟まれた領域を覆っており、上面が平坦な形状である。中間ガラス層23は、軟化点がたとえば680℃程度と、ヒーターグレーズ21およびダイボンディンググレーズ22を形成するガラス材料よりも軟化点が低いガラス材料からなる。中間ガラス層23の厚さは、たとえば2.0μm程度である。z方向視において、中間ガラス層23のy方向上流側の一部はダイボンディンググレーズ22に重なっており、中間ガラス層23のy方向下流側の一部はヒーターグレーズ21に重なっている。したがって、中間ガラス層23とダイボンディンググレーズ22との間、および、中間ガラス層23とヒーターグレーズ21との間から、基板1の主面11は露出しない。
【0025】
端部ガラス層24は、図2および図3に示すように、基板1の主面11のうちヒーターグレーズ21に対してy方向下流側の領域の一部を覆っており、上面が平坦な形状である。端部ガラス層24は、中間ガラス層23と同様の材質および厚さである。z方向視において、端部ガラス層24のy方向上流側の一部はヒーターグレーズ21に重なっている。したがって、端部ガラス層24とヒーターグレーズ21との間から、基板1の主面11は露出しない。
【0026】
電極層3は、抵抗体層4に通電するための経路を構成するためのものであり、グレーズ層2の基板1とは反対側を向く面上に形成されている。電極層3は、たとえば添加元素としてロジウム、バナジウム、ビスマス、シリコンなどが添加されたレジネートAuからなる。電極層3は、レジネートAuのペーストを厚膜印刷したのちに、これを焼成することにより形成されている。なお、電極層3は、スパッタリングなどの薄膜形成技術によって形成するようにしてもよい。電極層3は、複数のAu層を積層させることによって構成してもよい。電極層3の厚さは特に限定されないが、たとえば0.6~1.2μm程度である。電極層3は、基板1の主面11以外の部分に形成された部位を有していてもよい。電極層3は、共通電極31および複数の個別電極35を備えている。
【0027】
共通電極31は、複数の共通電極帯状部32、連結部33、および迂回部34を備えている。連結部33は、基板1のy方向下流側端寄りに配置されており、x方向に延びる帯状である。連結部33は、ヒーターグレーズ21の一部と端部ガラス層24の上に形成されており、y方向下流側の端部が端部ガラス層24からはみ出さないように形成されている。また、連結部33のy方向上流側の端部は、ヒーターグレーズ21上にあり、x方向の両端部も端部ガラス層24からはみ出さないように形成されている。複数の共通電極帯状部32は、各々が連結部33からヒーターグレーズ21に向かってy方向に延びており、ヒーターグレーズ21上でx方向に等ピッチで配列されている。迂回部34は、連結部33のx方向の一端からy方向に延びている。
【0028】
複数の個別電極35は、抵抗体層4に対して部分的に通電するためのものであり、共通電極31に対して逆極性となる部位である。個別電極35は、抵抗体層4から駆動IC71に向かって延びている。複数の個別電極35は、x方向に等ピッチで配列されており、各々が個別電極帯状部36、連結部37およびボンディング部38を有している。
【0029】
各個別電極帯状部36は、y方向に延びた帯状部分であり、ヒーターグレーズ21上において隣り合う2つの共通電極帯状部32の間に位置している。つまり、個別電極帯状部36と共通電極帯状部32とは、x方向において交互に配置されている。隣り合う個別電極帯状部36と共通電極帯状部32との間隔はたとえば40μm以下となっている。
【0030】
連結部37は、個別電極帯状部36から駆動IC71に向かって延びる部分である。連結部37は、一端が個別電極帯状部36につながり、他端がボンディング部38につながっている。
【0031】
ボンディング部38は、個別電極35のy方向端部に形成されており、連結部37に繋がっている。ボンディング部38には、個別電極35と駆動IC71とを接続するためのワイヤ73がボンディングされている。連結部37の一部およびボンディング部38は、ダイボンディンググレーズ22の主面221上に配置される。特に、ボンディング部38は、主面221のうち、基板1の端面13に近く平坦である第1部221aに配置される。
【0032】
なお、電極層3の各部の形状および配置は特に限定されず、様々な構成とすることができる。また、電極層3の各部の材質も限定されない。
【0033】
抵抗体層4は、電極層3を構成する材料よりも抵抗率が大であるたとえば酸化ルテニウムなどからなり、基板1の主面11のヒーターグレーズ21上で、x方向に延びる帯状に形成されている。抵抗体層4は、酸化ルテニウムなどのペーストを厚膜印刷したのちに、これを焼成することにより形成されている。なお、抵抗体層4は、スパッタリングなどの薄膜形成技術によって形成するようにしてもよい。抵抗体層4の厚さは特に限定されないが、たとえば3~10μm程度である。抵抗体層4は、ヒーターグレーズ21の中央寄りの位置において、複数の共通電極帯状部32および複数の個別電極帯状部36の上側(基板1とは反対側)に、複数の共通電極帯状部32と複数の個別電極帯状部36とにそれぞれ交差するように形成されている。抵抗体層4のうち各共通電極帯状部32と各個別電極帯状部36とに挟まれた部位が、発熱部41となっている。発熱部41は、電極層3によって部分的に通電されることにより発熱する部位であり、この発熱によって印字ドットが形成される。
【0034】
保護層5は、電極層3および抵抗体層4を保護するためのものであり、抵抗体層4および電極層3のほぼ全体を覆っている。ただし、保護層5は、複数の個別電極35のボンディング部38を含む領域を露出させている。図3に示すように、保護層5は、y方向において、基板1の下流側端縁手前(たとえば端縁より0.1~0.5mm手前)から個別電極35のボンディング部38の手前にわたる領域に形成されており、電極層3の大部分を覆っている。なお、保護層5は、y方向において、基板1の下流側端縁まで形成されていてもよい。保護層5は、たとえば非晶質ガラスなどのガラス材料からなる。このガラス材料の軟化点は、たとえば700℃程度である。保護層5は、ガラスペーストを厚膜印刷したのちに、これを焼成することによって形成される。保護層5の厚さは特に限定されないが、たとえば6~8μm程度である。なお、保護層5の材料は、非晶質ガラスに限定されず、絶縁性の材料であればよい。また、保護層5の外側(基板1とは反対側)に、さらに第2の保護層を形成するようにしてもよい。第2の保護層の材料は、たとえばSiC、SiN、TiN、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)、ta-C(テトラヘデラル・アモルファスカーボン)などがあげられる。
【0035】
図4に示すように、保護層5は、曲面51を有する。曲面51は、保護層5のy方向上流側端部に位置する面であり、凸状の曲面である。また、保護層5は、凸部52を有する。凸部52は、z方向視において、ダイボンディンググレーズ22の凸部221cに重なる部分であり、z方向に突出した部分である。凸部52は、x方向に延びている。
【0036】
配線基板6は、たとえばガラスエポキシ樹脂からなる基材にたとえばCuからなる配線パターン63が形成されたプリント配線基板である。図1に示すように、配線基板6は、x方向に長く延びる長矩形状の板状とされ、その厚さはたとえば0.3~1.0mm程度である。図3に示すように、配線基板6は、z方向において互いに反対側を向く主面61および裏面62を有している。主面61には、配線パターン63が形成され、駆動IC71が搭載されている。また、配線基板6の裏面62は、放熱板9の主面91に、たとえばシリコーン接着剤で接着される。
【0037】
駆動IC71は、複数の個別電極35を選択的に通電させることにより、複数の発熱部41のいずれかを任意に発熱させる機能を果たす。図1に示すように、本実施形態においては、複数の駆動IC71が、配線基板6に搭載されている。また、図2に示すように、駆動IC71には、複数のパッド72が形成されている。複数のパッド72は、複数のワイヤ73を介して複数の個別電極35のボンディング部38、または、配線基板6上に形成された配線パターン63のボンディング部に接続されている。ワイヤ73は、たとえばAuからなる。図1および図3に示すように、駆動IC71は、封止樹脂74によって覆われている。封止樹脂74は、たとえば黒色の絶縁性軟質樹脂からなる。封止樹脂74は、駆動IC71、ワイヤ73、ボンディング部38、および、配線パターン63のボンディング部を覆って保護している。本実施形態では、封止樹脂74は、保護層5のy方向上流側端部まで達し、曲面51を覆っている。つまり、封止樹脂74は、保護層5が露出させているボンディング部38を含む領域を覆っている。これにより、電極層3の全てが、保護層5または封止樹脂74によって覆われて、保護される。なお、図2においては、理解の便宜上、封止樹脂74を省略している。
【0038】
また、図1に示すように、配線基板6には、コネクタ75が設けられている。駆動IC71とコネクタ75とは、配線パターン63によって接続されている。コネクタ75は、サーマルプリントヘッド101をたとえばプリンタに組み込む際に、このプリンタ側のコネクタと接続される。
【0039】
放熱板9は、印刷時において印字基板8から発生する熱を外部に放散するためのものである。放熱板9は、たとえばAlなどの金属よりなり、x方向に長く延びる長矩板形状とされている。放熱板9は、主面91を有している。主面91は、図3及ぶ図3において上側を向く面であり、基板1の裏面12と対向する面である。印字基板8および配線基板6は、放熱板9の主面91上で、隣接するように、接着により固定されている。
【0040】
次に、サーマルプリントヘッド101の製造方法の一例について、図6図12を参照しつつ以下に説明する。まず、図6図10を参照して、印字基板8の製造方法の一例について説明する。図6図10は、図3の印字基板8に相当する要部拡大断面図である。
【0041】
まず、たとえばAlNからなる基板材料100を用意する。基板材料100は、印字基板8の基板1が複数個取りできるサイズである。すなわち、以降の印字基板8の製造工程においては、複数の印字基板8を一括して製造する手法を前提としている。
【0042】
次いで、基板材料100上にガラスペーストを厚膜印刷して焼成することを複数回繰り返すことにより、グレーズ層2を形成する。具体的には、まず、図6に示すように、ヒーターグレーズ21およびグレーズ220を形成する。グレーズ220は、ダイボンディンググレーズ22になる部分である。グレーズ220は、厚膜印刷されたガラスペーストの表面張力によって、表面にメニスカスが形成される。本実施形態においては、グレーズ220の表面は、y方向の両端部付近がz方向に盛り上がり、その内側が凹んで、y方向の中央部分が緩やかな傾斜を有し、かつ、平坦になっている。次いで、図7に示すように、中間ガラス層23および端部ガラス層24を形成する。
【0043】
次いで、図8に示すように、電極層3および抵抗体層4を形成する。まず、レジネートAuのペーストを厚膜印刷した後に、これを焼成することにより、金属膜を形成する。次いで、金属膜に対してたとえばエッチング等を用いたパターニングを施すことにより、電極層3を形成する。次いで、たとえば酸化ルテニウムなどの抵抗体を含む抵抗体ペーストを厚膜印刷し、これを焼成することにより、抵抗体層4を形成する。
【0044】
次いで、図9に示すように、たとえばガラスペーストを厚膜印刷し、これを焼成することにより、保護層5を形成する。次いで、基板材料100を、x方向に平行で、かつ、グレーズ220のy方向における中央を通る切断線、および、y方向に平行な切断線で切断する。図9においては、基板材料100は、図に示す2点鎖線に沿って切断される。これにより、図10に示すように、個片としての印字基板8が得られる。本実施形態では、ダイシングカッターなどによって切断が行われる。当該切断工程で基板材料100が切断されて、基板1になり、端面13が形成される。端面13は、切断面である。また、当該切断工程でグレーズ220が切断されて、ダイボンディンググレーズ22になり、端面223が形成される。端面223は、切断面である。基板材料100およびグレーズ220は、ダイシングカッターなどによって同時に切断されるので、基板1の端面13と、ダイボンディンググレーズ22の端面223とは、面一になっている。ダイシングカッターが、本発明の「切削部材」に相当する。なお、切断の方法は限定されない。たとえば、基板材料100に溝を形成し、当該溝に沿って基板材料100を割ることにより切断してもよい(後述する第3実施形態参照)。
【0045】
また、印字基板8とは別に、たとえばガラスエポキシ樹脂からなる基材にたとえばCuからなる配線パターン63を形成し、駆動IC71を搭載して、個片に切断し、コネクタ75を取り付けることで配線基板6が得られる。
【0046】
次に、図11図12を参照して、サーマルプリントヘッド101の組み立て方法の一例について説明する。図11図12は、図3に相当する断面図である。
【0047】
まず、図11に示すように、別途用意した放熱板9に、印字基板8および配線基板6を固定する。具体的には、放熱板9の主面91に、基板1の裏面12をたとえばシリコーン接着剤で接着することで、放熱板9に印字基板8を固定する。また、放熱板9の主面91に、印字基板8の端面13側に隣接させて、配線基板6の裏面62をたとえばシリコーン接着剤で接着することで、放熱板9に配線基板6を固定する。このとき、印字基板8の端面13と配線基板6の端面とも、たとえばシリコーン接着剤で接着する。なお、接着剤に代えて、両面テープで固定してもよい。
【0048】
次いで、図12に示すように、配線基板6に搭載された駆動IC71のパッド72(図示なし)と、印字基板8に形成されたボンディング部38とをそれぞれワイヤ73で接続する。また、駆動IC71のパッド72と、配線基板6上に形成された配線パターン63ともワイヤ73で接続する。次いで、駆動IC71、ワイヤ73、ボンディング部38、および、配線パターン63のボンディング部を覆うように、封止樹脂74を形成する。以上の工程により、サーマルプリントヘッド101が得られる。
【0049】
次に、サーマルプリントヘッド101の作用について説明する。
【0050】
本実施形態によれば、ダイボンディンググレーズ22の主面221のうち、y方向上流側(基板1の端面13側)に位置する第1部221aは平坦である。したがって、第1部221aに形成されたボンディング部38の表面も平坦になる。これにより、ボンディング部38にボンディングされたワイヤ73が、ボンディング部38との接合が弱まることにより断線することを抑制できる。また、第1部221aは、y方向上流側に向かうほど基板1の主面11に近づくように傾斜している。したがって、第1部221aに形成されたボンディング部38の表面も同様に傾斜している。したがって、ワイヤ73の一方端を駆動IC71のパッド72にボンディングした後に、当該ワイヤ73の他方端をボンディングするのに好適である。
【0051】
また、本実施形態によれば、ダイボンディンググレーズ22は、基板材料100上にガラスペーストを厚膜印刷して焼成することで形成されたグレーズ220を、y方向の中心で切断することで形成される。グレーズ220は、ガラスペーストの表面張力によって、表面にメニスカスが形成されるが、y方向の中央部分は平坦になっている。当該平坦部分が、ボンディング部38が形成される第1部221aとして用いられる。したがって、印字基板8のy方向の寸法を小さくするために、ダイボンディンググレーズ22のy方向の寸法を小さくする場合でも、ボンディング部38が形成される部分を平坦な面とすることができる。
【0052】
また、本実施形態によれば、ヒーターグレーズ21が形成され、抵抗体層4が当該ヒーターグレーズ21上に形成されている。したがって、抵抗体層4の発熱部41を、z方向に突出させて、印刷媒体に対して適切に当接させることができる。また、本実施形態によれば、封止樹脂74は、保護層5が露出させているボンディング部38を含む領域を覆っている。したがって、電極層3の全てが、保護層5または封止樹脂74によって覆われている。これにより、電極層3全体が、外部から遮蔽されて保護される。
【0053】
図13図19は、本開示の他の実施形態を示している。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。
【0054】
<第2実施形態>
図13は、本開示の第2実施形態に係るサーマルプリントヘッド102を示す要部拡大断面図である。本実施形態のサーマルプリントヘッド102は、ダイボンディンググレーズ22の主面221の第1部221aが傾斜しておらず、基板1の主面11に対して平行になっている。
【0055】
製造工程において、基板材料100上にグレーズ220を形成する場合、グレーズ220のy方向の寸法が小さいほど、表面に形成されたメニスカスの両端部付近の盛り上がりが互いに近づくので、第1部221aの傾斜が大きくなる。一方、グレーズ220のy方向の寸法が大きいほど、メニスカスの両端部付近の盛り上がりが互いに遠ざかるので、第1部221aの傾斜が小さくなる。グレーズ220のy方向の寸法がある程度大きい場合、メニスカスの中央部分は、基板材料100の表面に対して平行になる。この場合、第1部221aは、基板1の主面11に対して平行になる。サーマルプリントヘッド102は、基板1のy方向の寸法が大きく、グレーズ220のy方向の寸法がある程度大きくなったことにより、第1部221aが基板1の主面11に対して平行になったものである。なお、サーマルプリントヘッド102には、その他の理由で第1部221aが基板1の主面11に対して平行になったものも含まれる。
【0056】
本実施形態においても、ダイボンディンググレーズ22の主面221のうち、y方向上流側に位置する第1部221aは平坦である。したがって、第1部221aに形成されたボンディング部38の表面も平坦になる。これにより、ボンディング部38にボンディングされたワイヤ73が、ボンディング部38との接合が弱まることにより断線することを抑制できる。また、本実施形態においても、ダイボンディンググレーズ22は、基板材料100上にガラスペーストを厚膜印刷して焼成することで形成されたグレーズ220を、y方向の中心で切断することで形成される。したがって、ボンディング部38が形成される部分を平坦な面とすることができる。
【0057】
なお、第1部221aは、y方向上流側に向かうほど基板1の主面11から遠ざかるように傾斜(第1実施形態の場合とは逆向きの傾斜)していてもよい。第1部221aの傾斜の有無や傾斜の方向に関係なく、第1部221aが平坦であれば、ボンディング部38にボンディングされたワイヤ73が、ボンディング部38との接合が弱まることにより断線することを抑制できる。
【0058】
<第3実施形態>
図14は、本開示の第3実施形態に係るサーマルプリントヘッド103を示す要部拡大断面図である。本実施形態のサーマルプリントヘッド103は、ダイボンディンググレーズ22の端面223が基板1の端面13と面一になっておらず、基板1から離れるほど端面13の向く方向とは反対側に向かうように、端面13に対して傾斜している。また、基板1には、傾斜面14が形成されている。傾斜面14は、端面13の裏面12側につながり、かつ、裏面12に近づくほどy方向下流側に向かうように、端面13に対して傾斜している。当該傾斜面14は、製造工程で形成された切断線の位置の溝の側面が残ったものである。
【0059】
製造工程における切断工程(図10参照)において、ダイシングカッターなどによって切断を行った場合、基板材料100およびグレーズ220が同時に切断されるので、基板1の端面13と、ダイボンディンググレーズ22の端面223とは、面一になる。しかし、たとえば、基板材料100に形成された溝に沿って基板材料100を割ることによって切断を行った場合、グレーズ220の一部が欠けて、ダイボンディンググレーズ22の端面223が基板1の端面13に対して傾斜したものになる場合がある。サーマルプリントヘッド103は、切断工程時にグレーズ220の一部が欠けたことにより、ダイボンディンググレーズ22の端面223が基板1の端面13に対して傾斜したものである。
【0060】
次に、サーマルプリントヘッド103の製造方法の一例について、図15図16を参照しつつ以下に説明する。
【0061】
まず、たとえばAlNからなる基板材料100を用意する。次いで、本実施形態では、図15に示すように、基板材料100の、ガラスペーストが厚膜印刷される側とは反対側の面(図15においては下側の面)において、x方向に平行な切断線の位置に溝110を形成し、y方向に平行な切断線の位置に溝(図15には表れていない)を形成する。次いで、第1実施形態の場合と同様にして、グレーズ層2、電極層3、抵抗体層4、および保護層5を形成する(図6図9参照)。
【0062】
次いで、図16に示すように、基板材料100を、x方向に平行な溝110、および、y方向に平行な溝に沿って割ることにより切断することで、個片としての印字基板8が得られる。当該切断工程で基板材料100が切断されて、基板1になり、端面13が形成される。また、当該切断工程でグレーズ220が切断されて、ダイボンディンググレーズ22になり、端面223が形成される。また、溝110の側面が、傾斜面14になる。
【0063】
本実施形態では、基板材料100を割ることにより切断が行われるので、グレーズ220の切断面が、基板1の端面13に対して面一にならない場合がある。図16の左側(y方向下流側)の印字基板8では、ダイボンディンググレーズ22の端面223が、基板1から離れるほど端面13の向く方向とは反対側に向かうように傾斜している。一方、図16の右側(y方向上流側)の印字基板8では、ダイボンディンググレーズ22の端面223が、基板1から離れるほど端面13の向く方向に向かうように傾斜している。どちらの印字基板8においても、端面223の基板1側の端縁のy方向における位置は、端面13のy方向の位置に一致する。なお、切断時にグレーズ220の一部が欠けて、図16の両方の印字基板8において、ダイボンディンググレーズ22の端面223が、基板1から離れるほど端面13の向く方向とは反対側に向かうように傾斜する場合もある。
【0064】
次いで、上記のようにして形成された印字基板8と、第1実施形態の場合と同様にして形成された配線基板6とを、第1実施形態の場合と同様に、別途用意した放熱板9に固定する(図11参照)。次いで、第1実施形態の場合と同様に、ワイヤ73のボンディングによる接続を行い(図12参照)、封止樹脂74を形成する。以上の工程により、サーマルプリントヘッド103が得られる。
【0065】
本実施形態においても、ダイボンディンググレーズ22の主面221のうち、y方向上流側に位置する第1部221aは平坦である。したがって、第1部221aに形成されたボンディング部38の表面も平坦になる。これにより、ボンディング部38にボンディングされたワイヤ73が、ボンディング部38との接合が弱まることにより断線することを抑制できる。また、本実施形態においても、ダイボンディンググレーズ22は、基板材料100上にガラスペーストを厚膜印刷して焼成することで形成されたグレーズ220を、y方向の中心で切断することで形成される。したがって、ボンディング部38が形成される部分を平坦な面とすることができる。さらに、本実施形態によれば、切断工程において、基板材料100を溝に沿って割ることにより切断するので、ダイシングカッターなどによって切断する場合と比べて、切断工程にかかる時間を短縮することができる。
【0066】
なお、本実施形態では、図14に示すように、ダイボンディンググレーズ22の端面223が、基板1から離れるほど端面13の向く方向とは反対側に向かうように傾斜している場合について説明したが、これに限られない。端面223が、基板1から離れるほど端面13の向く方向に向かうように傾斜してもよい。図16の右側(y方向上流側)の印字基板8を用いた場合、端面223がこのように傾斜したものになる。端面223の端面13に対する傾斜の有無や傾斜の方向に関係なく、第1部221aが平坦であれば、ボンディング部38にボンディングされたワイヤ73が、ボンディング部38との接合が弱まることにより断線することを抑制できる。なお、サーマルプリントヘッド103には、その他の理由でダイボンディンググレーズ22の端面223が基板1の端面13に対して傾斜したものも含まれる。
【0067】
<第4実施形態>
図17は、本開示の第4実施形態に係るサーマルプリントヘッド104を示す断面図である。本実施形態のサーマルプリントヘッド104は、印字基板8および配線基板6が放熱板9の主面91に固定されているのではなく、印字基板8が配線基板6の主面61に固定されている。また、本実施形態のサーマルプリントヘッド104においては、基板1の裏面12のうち、主面11にヒーターグレーズ21が形成された部分に放熱板9が固定されている。なお、サーマルプリントヘッド104は、放熱板9を備えなくてもよいし、その場合、基板1の裏面12全体を配線基板6の主面61に固定してもよい。
【0068】
本実施形態においても、ダイボンディンググレーズ22の主面221のうち、y方向上流側に位置する第1部221aは平坦である。したがって、第1部221aに形成されたボンディング部38の表面も平坦になる。これにより、ボンディング部38にボンディングされたワイヤ73が、ボンディング部38との接合が弱まることにより断線することを抑制できる。また、本実施形態においても、ダイボンディンググレーズ22は、基板材料100上にガラスペーストを厚膜印刷して焼成することで形成されたグレーズ220を、y方向の中心で切断することで形成される。したがって、ボンディング部38が形成される部分を平坦な面とすることができる。
【0069】
<第5実施形態>
図18および図19は、本開示の第5実施形態に係るサーマルプリントヘッド105を示している。図18は、サーマルプリントヘッド105を示す要部拡大平面図である。図19は、図18のXIX-XIX線に沿う断面図である。第1~4実施形態のサーマルプリントヘッド101~104が、いわゆる厚膜タイプであるのに対して、本実施形態のサーマルプリントヘッド105は、いわゆる薄膜タイプである。
【0070】
本実施形態において、抵抗体層4は、グレーズ層2と電極層3との間に配置されており、ヒーターグレーズ21の全面、中間ガラス層23および端部ガラス層24の一部に広がるように形成されている。電極層3は、抵抗体層4上に形成されている。個別電極帯状部36および共通電極帯状部32は、それぞれヒーターグレーズ21の途中まで延びており、y方向において互いに対向するように配置されている。抵抗体層4のうち各共通電極帯状部32と各個別電極帯状部36とに挟まれた部位が、発熱部41となっている。
【0071】
本実施形態においても、ダイボンディンググレーズ22の主面221のうち、y方向上流側に位置する第1部221aは平坦である。したがって、第1部221aに形成されたボンディング部38の表面も平坦になる。これにより、ボンディング部38にボンディングされたワイヤ73が、ボンディング部38との接合が弱まることにより断線することを抑制できる。また、本実施形態においても、ダイボンディンググレーズ22は、基板材料100上にガラスペーストを厚膜印刷して焼成することで形成されたグレーズ220を、y方向の中心で切断することで形成される。したがって、ボンディング部38が形成される部分を平坦な面とすることができる。
【0072】
本開示に係るサーマルプリントヘッドおよびその製造方法は、上述した実施形態に限定されるものではない。本開示に係るサーマルプリントヘッドおよびその製造方法の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0073】
〔付記1〕
一方の面である基板主面と、前記基板主面に直交し、かつ、副走査方向の一方側を向く基板端面と、を有する基板と、
前記基板主面に形成されたグレーズ層と、
前記グレーズ層の前記基板とは反対側を向く面に形成された電極層と、
前記電極層に接続する抵抗体層と、
を備え、
前記グレーズ層は、前記基板主面の前記基板端面側の端部に配置され、かつ、前記基板とは反対側を向く第1グレーズ主面を有する第1グレーズを備え、
前記第1グレーズ主面は、前記基板端面側の端縁を含み、かつ、平坦である第1部と、前記基板端面とは反対側の端縁を含み、かつ、湾曲する第2部と、を備える、
ことを特徴とするサーマルプリントヘッド。
〔付記2〕
前記第1部は、前記基板端面側に近づくほど前記基板主面に近づくように傾斜している、
付記1に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記3〕
前記第1部は、前記基板主面に平行である、
付記1に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記4〕
前記第1グレーズは、前記基板端面側を向く第1グレーズ端面を備え、
副走査方向において、前記第1グレーズ端面の前記基板側の端縁の位置は、前記基板端面に一致する、
付記1ないし3のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記5〕
前記第1グレーズ端面は、前記基板端面と面一である、
付記4に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記6〕
前記第1グレーズ端面は、前記基板端面に対して傾斜している、
付記4に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記7〕
前記第2部は、前記基板主面が向く方向に突出する凸部を備える、
付記1ないし6のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記8〕
基材に配線パターンが形成された配線基板と、
前記配線基板に搭載された駆動ICと、
をさらに備え、
前記駆動ICは、ワイヤによって、前記電極層のうち前記第1グレーズ主面の前記第1部に形成された部分に接続される、
付記1ないし7のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記9〕
放熱板をさらに備え、
前記基板および前記配線基板は、前記放熱板に固定されている、
付記8に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記10〕
前記グレーズ層は、前記第1グレーズから副走査方向に離間して配置され、かつ、主走査方向に延びる帯状で主走査方向に直交する断面の形状が前記基板の厚さ方向に膨出した形状である第2グレーズをさらに備え、
前記抵抗体層は、少なくとも一部が前記第2グレーズ上に配置されている、
付記1ないし9のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記11〕
前記グレーズ層は、前記第1グレーズと前記第2グレーズとの間に配置される中間ガラス層をさらに備え、
前記基板の厚さ方向視において、前記中間ガラス層は、前記第1グレーズおよび前記第2グレーズに重なっている、
付記10に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記12〕
前記グレーズ層は、前記基板主面の前記基板端面とは反対側の端部に配置された端部ガラス層をさらに備え、
前記基板の厚さ方向視において、前記端部ガラス層は、前記第2グレーズに重なっている、
付記10または11に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記13〕
前記グレーズ層は、非晶質ガラスからなる、
付記1ないし12のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記14〕
基板材料上に、ガラスペーストを厚膜印刷して焼成することで、グレーズを含むグレーズ層を形成する工程と、
前記グレーズ上の副走査方向における中央付近に配置されるボンディング部を含む電極層を形成する工程と、
前記電極層に接続する抵抗体層を形成する工程と、
前記基板材料を、主走査方向に平行で、かつ、前記グレーズの副走査方向における中央を通る切断線で切断する工程と、
を備えることを特徴とするサーマルプリントヘッドの製造方法。
〔付記15〕
前記切断する工程は、前記基板材料と前記グレーズとを、切削部材によって同時に切断する、
付記14に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
〔付記16〕
前記グレーズ層を形成する工程の前に、前記基板材料に溝を形成する工程をさらに備え、
前記切断する工程は、前記基板材料を前記溝に沿って割ることにより切断する、
付記14に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【符号の説明】
【0074】
101,102,103,104,105:サーマルプリントヘッド
8 :印字基板
1 :基板
11 :主面
111 :ダイボンディンググレーズ形成領域
12 :裏面
13 :端面
14 :傾斜面
2 :グレーズ層
21 :ヒーターグレーズ
22 :ダイボンディンググレーズ
221 :主面
221a :第1部
221b :第2部
221c :凸部
222 :裏面
223 :端面
224 :露出面
23 :中間ガラス層
24 :端部ガラス層
3 :電極層
31 :共通電極
32 :共通電極帯状部
33 :連結部
34 :迂回部
35 :個別電極
36 :個別電極帯状部
37 :連結部
38 :ボンディング部
4 :抵抗体層
41 :発熱部
5 :保護層
51 :曲面
52 :凸部
6 :配線基板
61 :主面
62 :裏面
63 :配線パターン
71 :駆動IC
72 :パッド
73 :ワイヤ
74 :封止樹脂
75 :コネクタ
9 :放熱板
91 :主面
100 :基板材料
110 :溝
220 :グレーズ
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