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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】車両の走行制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/00 20060101AFI20221004BHJP
   B60W 30/14 20060101ALI20221004BHJP
   B60W 40/00 20060101ALI20221004BHJP
   B60K 31/00 20060101ALI20221004BHJP
   B60W 30/12 20200101ALI20221004BHJP
   B60W 30/09 20120101ALI20221004BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
B60W30/00
B60W30/14
B60W40/00
B60K31/00 Z
B60W30/12
B60W30/09
G08G1/16 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017143613
(22)【出願日】2017-07-25
(65)【公開番号】P2019025932
(43)【公開日】2019-02-21
【審査請求日】2020-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(72)【発明者】
【氏名】竹腰 史彦
(72)【発明者】
【氏名】小野 勝一
【審査官】佐々木 佳祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-073060(JP,A)
【文献】特開2002-207077(JP,A)
【文献】特開2017-065420(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
B60K 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車走行レーンおよび該走行レーンを走行する先行他車を認識する前方認識手段と、
隣接走行レーンを走行する先行他車および後続他車を認識する側方認識手段と、
を備えた車両の走行制御装置であって、
前記前方認識手段に先行他車が認識されない場合は、目標車速に従って定速走行を行い、前記前方認識手段に先行他車が認識されかつ設定車間時間まで接近した場合であって、隣接走行レーンの所定車間距離内に先行他車および後続他車が存在しない場合は、隣接走行レーンへの車線変更を行う機能を有するものにおいて、
前記所定車間距離は、自車の走行速度に応じて設定され、
前記前方認識手段に認識される先行他車の車格を判別する機能と、前記車格に応じて前記車線変更の開始条件を変更する機能を有し、
前記先行他車の車格を判別する機能は、前記車格が、普通車、大型車の何れであるか判別する機能を含み、
前記車格に応じて前記車線変更の開始条件を変更する機能は、前記先行他車が大型車の場合に、前記車線変更の開始条件としての前記所定車間距離を前記先行他車が普通車の場合よりも大きくすることを特徴とする車両の走行制御装置。
【請求項2】
前記所定車間距離は、前記自車の走行速度が大きいほど大きくなるように設定されることを特徴とする請求項1記載の車両の走行制御装置。
【請求項3】
前記先行他車の車格を判別する機能は、前記車格が二輪車であることを判別する機能をさらに含み、前記車格に応じて前記車線変更の開始条件を変更する機能は、前記先行他車が二輪車の場合に自車走行レーン内での二輪車の横位置を検出する機能を含み、かつ、前記二輪車の横位置が設定以上隣接走行レーン寄りである場合は車線変更を開始しない機能を含むことを特徴とする請求項1または2記載の車両の走行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行制御装置に関し、さらに詳しくは、自動車線変更機能を備えた車両の走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
運転者の負担軽減を目的として、従来運転者が行っていた認知・判断・操作を部分的に車両が行うようにする種々の技術、例えば、ACC(アダプティブクルーズコントロール)、LKA(レーンキーピングアシスト)などが実用化されている。さらに、ACCによる追従走行中において、先行車の速度が自車の設定速度に比べて低い場合に、自動操縦により車線変更を実施する技術も開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、周辺環境情報と走行情報とに基づいて自車両の走行車線前方の追越し対象とする追越し対象車両を検出し、周辺環境情報に基づいて自車両の走行車線後方の後続車両を元車線後続車両として検出し、追越し対象車両と元車線後続車両とを監視し、該監視結果に基づいて追越し対象車両に対する追越し走行を可変制御することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-4443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車線変更の可否もしくは適否の状況判断において、追越し対象車両との車間距離(車間時間)や速度などの要件が考慮されるべきことは当然であるが、一口に追越し対象車両と言っても、大型車や二輪車は車両の大きさや挙動が異なる。特許文献1には、車車間通信により車両情報を取得することが記載されているが、状況判断への利用に関する示唆は無い。
【0006】
本発明は、上記のような実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、追越し対象となる先行車両の車格を考慮した車線変更を実施可能な車両の走行制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、
自車走行レーンおよび該走行レーンを走行する先行他車を認識する前方認識手段と、
隣接走行レーンを走行する先行他車および後続他車を認識する側方認識手段と、
を備えた車両の走行制御装置であって、
前記前方認識手段に先行他車が認識されない場合は、目標車速に従って定速走行を行い、前記前方認識手段に先行他車が認識されかつ設定車間時間まで接近した場合であって、隣接走行レーンの所定車間距離内に先行他車および後続他車が存在しない場合は、隣接走行レーンへの車線変更を行う機能を有するものにおいて、
前記所定車間距離は、自車の走行速度に応じて設定され、
前記前方認識手段に認識される先行他車の車格を判別する機能と、前記車格に応じて前記車線変更の開始条件を変更する機能を有し、
前記先行他車の車格を判別する機能は、前記車格が、普通車、大型車の何れであるか判別する機能を含み、
前記車格に応じて前記車線変更の開始条件を変更する機能は、前記先行他車が大型車の場合に、前記車線変更の開始条件としての前記所定車間距離を前記先行他車が普通車の場合よりも大きくすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る車両の走行制御装置によれば、先行他車の車格を判別する機能と、前記車格(大型車、普通車、二輪車など)に応じて車線変更の開始条件を変更する機能を有することにより、先行他車の挙動の影響を回避でき、予防安全効果の高い自動車線変更を実施するうえで有利である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明実施形態に係る走行制御装置を示すブロック図である。
図2】先行他車が普通車の場合の車線変更を示す概略的な平面図である。
図3】先行他車が二輪車の場合の車線変更を示す概略的な平面図である。
図4】二輪車の横位置(車幅方向位置)を示す概略的な平面図である。
図5】先行他車が大型車の場合の車線変更を示す概略的な平面図である。
図6】本発明実施形態に係る走行制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1において、本発明に係る車両の走行制御システムは、自車走行レーンおよび該走行レーンを走行する先行他車を認識する前方認識手段20、隣接走行レーンを走行する先行他車および後続他車を認識する側方認識手段30、車両情報を取得するためのセンサ群40、および、制御コントローラ10から主に構成される。
【0011】
前方認識手段20は、自車前方を撮像する前方カメラ21、自車前方を走行する先行車両との距離および位置を検出する前方距離センサ22などで構成される。前方カメラ21は、撮像された画像から自車走行レーン(左右区分線)の位置、右および左の隣接走行レーンの有無、先行車両の形状(車格)を検出する画像処理手段を備えている。前方距離センサ22としてはミリ波レーダを好適に使用できる。
【0012】
側方認識手段30は、右前方の先行他車との距離および位置を検出する右前方距離センサ31、左前方の先行他車との距離および位置を検出する左前方距離センサ32、右後方の後続他車との距離および位置を検出する右後方距離センサ33、および、左後方の後続他車との距離および位置を検出する左後方距離センサ34で構成される。これらの距離センサ31~34としてはLIDAR(レーザ画像検出/測距)を好適に使用できる。
【0013】
車両情報40を取得するための内界センサ群は、速度センサ、操舵角センサ、ヨーレートセンサ、加速度センサなどで構成され、それぞれの検出値は、制御コントローラ10に入力される。
【0014】
制御コントローラ10は、操舵制御を行うステアリングコントローラ11、速度制御(加減速制御)を行うエンジンコントローラ12およびブレーキコントローラ13と連携して、ACC制御、LKA制御、車線変更制御などの自動運転制御を統括するためのプログラム及びデータを記憶したROM、演算処理を行うCPU、前記プログラム及びデータを読出し、動的データや演算処理結果を記憶するRAM、および、入出力インターフェースなどを含むコンピュータで構成されている。
【0015】
ACC制御は、前方認識手段20に先行他車が認識されない場合は、エンジンコントローラ12およびブレーキコントローラ13の加減速制御により目標車速(クルーズコントロールセット速度)に従って定速走行を行い、前方認識手段20に先行他車が認識されかつ設定タイムギャップ(車間時間=車間距離/自車速)まで接近した場合には、設定タイムギャップを維持して追従走行を行う。
【0016】
LKA制御は、前方カメラ21に取得される画像データに基づいて車線区分線と自車位置を検知し、ステアリングコントローラ11による操舵制御により車線中央を走行するように操舵力を補助する。さらに、LKA制御とACC制御を連動させることで、限定的な自動操舵に相当する車線内部分的自動走行を行うこともできる。
【0017】
ACC制御と連動してLKA制御が作動している状態で、前方認識手段20に先行他車が認識されかつ設定タイムギャップまで接近した場合に、側方認識手段30により、隣接走行レーンが存在しかつその所定車間距離の範囲内に先行他車および後続他車が存在しないことが確認された場合には、運転者のウインカ操作をトリガとしてLKA機能が解除され、隣接走行レーンへの自動車線変更が開始される。
【0018】
ところで、既に述べたように、普通車と大型車や二輪車では、車両の大きさや挙動が異なる。そこで、本発明に係る走行制御システムでは、前方認識手段20を構成する前方カメラ21と前方距離センサ22により追越し対象となる先行車両を識別し、その車格に応じて自動車線変更の開始条件が設定されるようにしている。
【0019】
例えば、前方カメラ21に取得される画像から画像処理(特徴点やオプティカルフロー抽出、フレーム間差分など)によって先行車両を移動体として検知し、前方距離センサ22に検出される先行車両との距離から、先行車両の大きさ(横幅、高さ)形状(縦横比)、あるいはナンバープレートの大きさを測定することにより車格を識別できる。
【0020】
具体的に、車両の大きさおよび形状としては、二輪車の場合横幅が所定以下(例えば1m以下)であることと、縦横比が縦長であることから識別できる。トラック車の場合、小型トラックは横幅が2m以内であり、中型トラックは2~2.5m、大型トラックや大型バスは2.5~3mである。ナンバープレートの大きさ(縦×横)は、大型車は22cm×44cm、普通車は16.5cm×33cm、二輪車は12.5cm×23cmと規定されている。また、ナンバープレートの文字認識によっても先行車両を識別できる。
【0021】
次に、普通車、二輪車、大型車のそれぞれにおける開始条件について説明する。
【0022】
(普通車)
図2は、自車1の走行レーン51の前方に先行他車2(普通車)が存在し、右側の隣接走行レーン52の後方に後続他車(普通車)が存在する状況を示している。この場合、自動車線変更の開始条件は、前方車間距離xが所定車間距離x1以上ということになる。所定車間距離(x1)は、制動距離を基準に走行速度に応じて決定され、例えば、普通車の場合、80km/h走行時の制動距離54m、100km/h走行時の制動距離84mを基準に設定される。
【0023】
自車1の用途にもよるが、走行量全体で見れば普通車の割合が多いので、先行他車が普通車である場合の開始条件を初期値として、以下に述べる二輪車や大型車である場合にそれぞれの開始条件を適用する制御が行われる。
【0024】
(二輪車)
図3に示すように、自車1の走行レーン51の前方に二輪車4が走行している場合には、前方距離センサ22により二輪車4までの相対距離(前方車間距離x)を検出し、前方カメラ21と前方距離センサ22により車線中央を基準にした二輪車4の横位置yを検出する。二輪車は車線内での位置取りを容易に変更できるので、十分な側方距離が確保される状況で車線変更を実施する。
【0025】
図4に示すように、二輪車4の横位置yに応じて、の二輪車4の走行位置を車線中央yc、車線右寄りyr、車線左寄りylに区分する。例えば、走行レーン51の幅が3.5mの場合、y<±0.5mであれば車線中央yc、0.5m≦y≦1.75mであれば車線右寄りyr、-0.5m≧y≧-1.75mであれば車線左寄りylとする。
【0026】
先行する二輪車4が車線中央ycまたは車線左寄りylを走行している場合、二輪車4との相対距離xが所定車間距離x1以内であれば車線変更を開始する。一方、二輪車4の横位置が車線右寄りyrにあると判定された場合は車線変更を中止する。
【0027】
(大型車)
次に、図5に示すように、自車1の走行レーン51の前方に大型車5が走行している場合には、車線変更開始の基準となる所定車間距離を普通車や二輪車の場合(x1)よりも大きい所定車間距離x2に変更する。
【0028】
前方車両が大型車の場合、接近すると前方視界が制限される。また、大型車は慣性が大きいため、車速を維持する運転傾向があるため、大型車が先行車両に近づくと、急な車線変更を行うことが予想される。そのため、普通車より長い車間距離x2で車線変更を開始することにより、視界の制限や大型車の挙動に対処できる。
【0029】
そこで、上記のような理由から、隣接走行レーン52の所定車間距離x1内に先行他車および後続他車が存在しない場合は、大型車5に所定車間距離x1まで接近する以前に、所定車間距離x2になった時点で車線変更が開始されるようにする。
【0030】
例えば、大型車5が80km/h(22.2m/s)走行時には、車間時間を2秒延長し、所定車間距離x2=x1+2(s)×22.2(m/s)に変更する。時速80km/h走行時の制動距離54mを所定車間距離x1とすると、変更後の所定車間距離x2は98.4mである。
【0031】
(自動車線変更フロー)
以下、上記実施例に基づく自動車線変更フローについて図6を参照しながら説明する。
ACC制御およびLKA制御が作動している状態で自動車線変更が起動している場合(ステップ100)、前方認識手段20による前方車両検出とともに、側方認識手段30による隣接走行レーン検出が実施される(ステップ101)。
【0032】
このような状態において、前方認識手段20に前方車両が検出され、かつ、隣接走行レーンが存在し、かつ、隣接走行レーンの所定車間距離の範囲内に先行他車および後続他車が存在しないことが確認されると、前方カメラ21および前方距離センサ22により前方車両形状の検出が行われる(ステップ102)。
【0033】
前方車両が二輪車であると判断された場合(ステップ103)は、二輪車を対象とした開始条件の設定が行われ(ステップ120)、二輪車の横位置が検出される(ステップ121)。二輪車が車線中央または左寄りの場合は、前方距離x<所定車間距離x1において車線変更を開始するが(ステップ113、114)、二輪車が車線の右寄りを走行していると判断された場合には車線変更を中止する(ステップ122)。
【0034】
前方車両が大型車であると判断された場合(ステップ104)は、大型車を対象とした開始条件の設定が行われ(ステップ130)、前方距離x<所定車間距離x2において車線変更を開始する(ステップ133、114)。前方距離xが所定車間距離x2に達しない場合は前方認識手段20による前方車両検出、および、側方認識手段30による隣接走行レーン検出が継続される。
【0035】
前方車両が二輪車や大型車でなく普通車であると判断された場合は、普通車を対象とした開始条件(デフォルト値)が維持され、前方距離x<所定車間距離x1において車線変更を開始する(ステップ113、114)。前方距離xが所定車間距離x1に達しない場合は前方認識手段20による前方車両検出、および、側方認識手段30による隣接走行レーン検出が継続される。
【0036】
以上、本発明のいくつかの実施形態について述べたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいてさらに各種の変形および変更が可能であることを付言する。
【符号の説明】
【0037】
1 車両(自車、普通車)
2 車両(先行他車、普通車)
3 車両(後続他車)
4 二輪車(先行他車)
5 大型車(先行他車)
10 制御コントローラ
11 ステアリングコントローラ
12 エンジンコントローラ
13 ブレーキコントローラ
20 前方認識手段
21 前方カメラ
22 前方距離センサ
30 側方認識手段
31 右前方距離センサ
32 左前方距離センサ
33 右後方距離センサ
34 左後方距離センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6