(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】ケース付熱電変換モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 35/30 20060101AFI20221004BHJP
H01L 35/32 20060101ALI20221004BHJP
H02N 11/00 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
H01L35/30
H01L35/32 A
H02N11/00 A
(21)【出願番号】P 2017183459
(22)【出願日】2017-09-25
【審査請求日】2020-03-25
(31)【優先権主張番号】P 2016251318
(32)【優先日】2016-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】中田 嘉信
(72)【発明者】
【氏名】駒崎 雅人
【審査官】田邊 顕人
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-029695(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0060889(US,A1)
【文献】特開2011-238693(JP,A)
【文献】特開2016-152386(JP,A)
【文献】特開2006-066431(JP,A)
【文献】特開2011-049534(JP,A)
【文献】特開平11-257789(JP,A)
【文献】特開2004-319136(JP,A)
【文献】特開2010-287729(JP,A)
【文献】特開2006-135124(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0093789(US,A1)
【文献】国際公開第2007/105361(WO,A1)
【文献】特開2006-128589(JP,A)
【文献】特開2007-070733(JP,A)
【文献】特開2010-194717(JP,A)
【文献】実開平05-025731(JP,U)
【文献】特開2016-004816(JP,A)
【文献】特開平11-329719(JP,A)
【文献】特開2009-088117(JP,A)
【文献】特開2011-049501(JP,A)
【文献】特開2006-332398(JP,A)
【文献】特開2006-303320(JP,A)
【文献】特表2016-530674(JP,A)
【文献】特開2016-164947(JP,A)
【文献】特開平11-251648(JP,A)
【文献】特開平08-243991(JP,A)
【文献】特開2006-041287(JP,A)
【文献】特開2013-040938(JP,A)
【文献】特開2013-040939(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 35/30
H01L 35/32
H02N 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、前記ケースの内部に収容された熱電変換モジュールとを有し、
前記熱電変換モジュールは、対向配置される配線基板の間にP型熱電変換素子とN型熱電変換素子とを複数対組み合わせて配列し、これらの熱電変換素子が前記配線基板を介して接続されており、
前記配線基板は、セラミックス基板と、前記セラミックス基板の一方の面に接合されて前記熱電変換素子が接合される配線金属層と、前記セラミックス基板の他方の面に接合されて前記ケースの内面に対向接触して配置される金属板からなる熱伝達金属層とを有し、
前記セラミックス基板は、前記他方の面の全面が前記熱伝達金属層に接合されており、
前記熱伝達金属層の周縁部は、前記セラミックス基板の周縁部よりも外側に突出して形成されていることを特徴とするケース付熱電変換モジュール。
【請求項2】
前記熱伝達金属層は、アルミニウム又は銅を主成分とする材料により形成されていることを特徴とする請求項1に記載のケース付熱電変換モジュール。
【請求項3】
前記熱伝達金属層は、純度99.99質量%以上のアルミニウム又は純度99.9質量%以上の銅とされていることを特徴とする請求項2に記載のケース付熱電変換モジュール。
【請求項4】
前記ケースは上ケースと下ケースとを有し、
前記上ケースと前記下ケースとの間が接合され
て、前記ケースの天面部と底面部及び筒状の胴部が構成されており、且つ、前記熱電変換モジュールが前記上ケースと前記下ケースとの間に挟持されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のケース付熱電変換モジュール。
【請求項5】
前記ケースがステンレス鋼(SUS)で形成されており、
前記上ケースと前記下ケースとの間は、ろう付け、はんだ付け、溶接、超音波接合のいずれかで接合されていることを特徴とする請求項4に記載のケース付熱電変換モジュール。
【請求項6】
前記上ケースと前記下ケースとの間は樹脂製の接着剤で接合されており、
前記上ケースと前記下ケースとの接合位置は、前記熱電変換モジュールの低温側に配置されていることを特徴とする請求項4に記載のケース付熱電変換モジュール。
【請求項7】
前記ケースの内部は外部と区切られ気密に保持されており、
前記ケースの内部に乾燥剤又は脱酸剤若しくはこれらの双方が配置されて
おり、前記脱酸剤が、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、マグネシウム(Mg)の金属のいずれかを含んでいることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のケース付熱電変換モジュール。
【請求項8】
前記脱酸剤
は前記マグネシウム(Mg)により構成されて
おり、
前記ケースがステンレス鋼(SUS)により形成されており、
前記マグネシウムが前記ケースの内面に蒸着されていることを特徴とする請求項7に記載のケース付熱電変換モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のP型熱電変換素子とN型熱電変換素子とを組み合わせて配列した熱電変換モジュールをケース内に収容したケース付熱電変換モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
熱電変換モジュールは、配線基板(絶縁基板)の間に、一対のP型熱電変換素子とN型熱電変換素子とを電極で接続状態に組み合わせたものを、P型、N型、P型、N型の順に交互に配置されるように、電気的に直列に接続した構成とされ、両端を直流電源に接続して、ペルチェ効果により各熱電変換素子中で熱を移動させる(P型では電流と同方向、N型では電流と逆方向に移動させる)、あるいは両配線基板間に温度差を付与して各熱電変換素子にゼーベック効果により起電力を生じさせるもので、冷却、加熱、あるいは発電としての利用が可能である。
【0003】
このような熱電変換モジュールは、例えば特許文献1又は特許文献2に記載されているように、ステンレス鋼(SUS)等で形成されたケース内に収容され、ケース付熱電変換モジュールとしてパッケージ化されることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016‐174114号公報
【文献】国際公開第2007/105361号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなケース付熱電変換モジュールでは、ケースの内面と熱電変換モジュールの配線基板の表面とは、両者の密着性を高めて熱伝導性を上げるため、つまり、発電量(発電効率)を向上させるため、機械的な圧力(バンド等)を加えることにより接触させられている。また、ケースと接触させられる配線基板の表面には、絶縁のためにセラミックス基板が配置される。
【0006】
ところで、ケースと熱電変換モジュールの密着性(熱伝導性)を高くするためには、ケースと熱電変換モジュールの配線基板とを直接接合すれば良いが、特許文献1に記載の熱電変換モジュールのように、配線基板の表面にセラミックス基板が配置されている場合は、セラミックス基板とケース(ステンレス板)との金属ろう材による接合は難しく、ケースの内側で接合作業をすることはさらに難しい。また、金属ろう材を用いた接合が可能だとしても、使用時に数百℃程度の温度差が不定期に加わるので、熱膨張係数(熱膨張率)が小さく脆性材料であるセラミックス基板と、熱膨張係数が大きく剛性の高いステンレス鋼との熱膨張差により接合箇所が割れたり、剥がれたり、さらにセラミックス基板が割れたりする。
【0007】
また、特許文献2の
図4に示される熱電変換モジュールでは、配線基板を構成するセラミックス基板の表面に銅又はアルミニウムからなる第2の金属板を接合しておき、この第2の金属層とケースとをろう材で接合させているが、この場合にも、セラミックス基板やケースの熱膨張差により、接合箇所が割れたりする等、密着性を維持することが難しくなる。さらに、第2金属層の平面サイズはセラミックス基板よりも小さく、第2金属層とセラミックス基板との接触面積が小さくなることから、第2金属層を設けることにより熱伝達性が低下するおそれがある。また、第2金属層よりも平面サイズの大きなセラミックス基板の周縁部がケースと接触しやすくなり、そのケースとの接触によりセラミックス基板に割れが生じた場合にも、熱伝達性が阻害される。
【0008】
このように、ケース付熱電変換モジュールにおいては、一般的には、配線基板とケースとを接合することなく、前述したように、ケースの外側から機械的な圧力を加えて接触させることにより、ケースと配線基板との間の密着性を維持することが行われている。しかし、圧力を加えてケースと配線基板とを接触させるような場合であっても、強い圧力が不均一に加えられると配線基板のセラミックス基板に割れが発生するおそれがある。一方、加圧力が弱いと、ケースと配線基板との間に部分的な隙間が発生し、熱伝達が阻害されるおそれがある。そこで、熱電変換モジュールの高温側に配置される配線基板とケースとの間には高温に耐え得るカーボンシート(5(W/m℃))を配置し、熱電変換モジュールの低温側に配置される配線基板とケースとの間にはグリース(0.2~2.0(W/m℃))を配置することで、ケースとセラミックス基板の密着性を高めて、熱伝達性を高めることも行われている。しかし、ケースと配線基板との間にカーボンシートやグリースを配置した構成であっても、熱伝達性を十分に維持することは難しく、さらなる改善が望まれている。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、配線基板とケースとの密着性及び熱伝達性を高めることができ、高い熱電変換性能(発電効率)を有するケース付熱電変換モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のケース付熱電変換モジュールは、ケースと、前記ケースの内部に収容された熱電変換モジュールとを有し、前記熱電変換モジュールは、対向配置される配線基板の間にP型熱電変換素子とN型熱電変換素子とを複数対組み合わせて配列し、これらの熱電変換素子が前記配線基板を介して接続されており、前記配線基板は、セラミックス基板と、前記セラミックス基板の一方の面に接合されて前記熱電変換素子が接合される配線金属層と、前記セラミックス基板の他方の面に接合されて前記ケースの内面に対向接触して配置される金属板からなる熱伝達金属層とを有し、前記セラミックス基板は、前記他方の面の全面が前記熱伝達金属層に接合されており、前記熱伝達金属層の周縁部は、前記セラミックス基板の周縁部よりも外側に突出して形成されている。
【0011】
配線基板に熱伝達金属層を設け、その熱伝達金属層の周縁部をセラミックス基板の周縁部よりも外側に突出して形成することにより、熱伝達金属層とケースとを接触させて、セラミックス基板とケースとが接触することを確実に防止できる。この場合、セラミックス基板の全面が熱伝達金属層に接合されるので、セラミックス基板と熱伝達金属層との接合面積を大きくでき、また熱伝達金属層とケースとの接触面積を大きくできるので、熱電変換モジュールとケースとの熱伝達性を向上できる。さらに、熱伝達金属層は、弾性変形及び塑性変形が可能であることから、圧力を加えてケースを配線基板に向けて接触させた際に、熱伝達金属層がケースの内面に沿って変形することで、ケースとの密着性を向上でき、良好な熱伝達性を維持できる。したがって、本発明のケース付熱電変換モジュールにおいては、配線基板とケースとの密着性及び熱伝達性を高めることができ、熱電変換性能(発電効率)を向上させることができる。
なお、熱電変換素子は電圧が低いことから、絶縁基板であるセラミックス基板の周縁部よりも熱伝達金属層の周縁部を外側に突出して設けた場合であっても、熱伝達金属層がセラミックス基板の一方の面に接合された配線金属層と物理的に接触しない限り、電気的なリークを生じることがない。
【0012】
本発明のケース付熱電変換モジュールの好ましい実施形態において、前記熱伝達金属層は、アルミニウム又は銅とされ、好ましくは、純度99.99質量%以上のアルミニウム、あるいは純度99.9質量%以上の銅とされているとよい。
【0013】
高純度のアルミニウム(Al)や銅(Cu)は、弾性変形、塑性変形しやすく、ケースが剛性の高いステンレス鋼(SUS)等で形成されている場合にも、ケースの内面に沿った形に容易に変形する。このため、ケースと配線基板との間に隙間が生じることを確実に防止でき、さらにケースと熱電変換モジュールとの密着性を向上できる。
【0014】
本発明のケース付熱電変換モジュールの好ましい実施形態において、前記ケースは上ケースと下ケースとを有し、前記上ケースと前記下ケースとの間が接合されて、前記ケースの天面部と底面部及び筒状の胴部が構成されており、且つ、前記熱電変換モジュールが前記上ケースと前記下ケースとの間に挟持されているとよい。
【0015】
ケースを上ケースと下ケースとを組み合わせて構成することにより、ケース付熱電変換モジュールのパッケージ化の際に、熱電変換モジュールを上ケースと下ケースとの間で容易に挟持でき、熱電変換モジュールに圧縮荷重が作用した状態で容易に組み立てを行うことができる。したがって、熱電変換モジュールとケースとの密着性をさらに高めることができる。
【0016】
本発明のケース付熱電変換モジュールの好ましい実施形態において、前記ケースがステンレス鋼(SUS)で形成されており、前記上ケースと前記下ケースとの間は、ろう付け、はんだ付け、溶接、超音波接合のいずれかで接合されているとよい。
【0017】
上ケースと下ケースとの間をろう付け、はんだ付け、溶接等の耐熱性の高い接合方法により接合することで、熱電変換モジュールを上ケースと下ケースとの間で挟持した状態を安定して維持できる。したがって、熱電変換モジュールとケースとの密着性を良好に維持でき、熱電変換モジュールの熱電交換性能を高く維持できる。
【0018】
本発明のケース付熱電変換モジュールの好ましい実施形態において、前記上ケースと前記下ケースとの間は樹脂製の接着剤で接合されており、前記上ケースと前記下ケースとの接合位置は、前記熱電変換モジュールの低温側に配置されているとよい。
【0019】
上ケースと下ケースとの接合位置を樹脂製の接着剤で接合することにより、上ケースと下ケースとの間を断熱して、これらの上ケースと下ケースとの間の熱交換を防止できる。また、上ケースと下ケースとの接合位置を、熱電変換モジュールの高温側ではなく低温側に配置することで、ケースを介して下ケースが昇温されることも防止できる。したがって、熱電変換モジュールの熱電交換性能を向上させることができる。
【0020】
本発明のケース付熱電変換モジュールの好ましい実施形態において、前記ケースの内部は外部と区切られ気密に保持されており、前記ケースの内部に乾燥剤又は脱酸剤若しくはこれらの双方が配置されており、前記脱酸剤が、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、マグネシウム(Mg)の金属のいずれかを含んでいるとよい。
【0021】
ケースの内部を気密に保持したケース付熱電変換モジュールでは、ケースの内部を真空にするか、窒素やアルゴン等の不活性ガスを充填し、熱電変換モジュールの酸化を防止する。ところが、ケースの内部を真空引きしても、完全に空気を抜くことは難しい。また、ケースの内部の気密も、長期にわたり維持することが難しい。このため、少なからずケースの内部に酸素や水分が侵入するおそれがある。
熱電変換素子の材料には、酸素と反応するものが存在する。例えばマグネシウムシリサイド系は、酸素と反応することで錆を生じ、脆くなる。また、熱電変換素子以外にも、配線金属層等の金属は、酸素と反応して酸化することにより錆を生じ、脆くなる。また、これらの酸化反応は、熱電変換素子やその他の金属が水分と接触することにより促進される。
したがって、ケースの内部に乾燥剤を配置しておくことで、ケースの内部に存在する水分を乾燥剤により吸収できるので、熱電変換素子やその他の金属の酸化反応を抑制することができる。また、ケースの内部に脱酸剤を配置しておくことで、ケースの内部に存在する酸素を脱酸剤により吸収できるので、熱電変換素子やその他の金属が酸化することを防止できる。これにより、熱電変換モジュールを長期にわたり安定して使用でき、熱電変換モジュールの熱電交換性能を高く維持できる。
【0022】
本発明のケース付熱電変換モジュールの好ましい実施形態において、前記脱酸剤は前記マグネシウム(Mg)により構成されており、前記ケースがステンレス鋼により形成されており、前記マグネシウムが前記ケースの内面に蒸着されているとよい。
【0023】
脱酸剤として、熱電変換素子よりも酸化しやすい金属を用いることにより、これらの金属が優先的に酸素と反応して酸化し、熱電変換素子が酸化することを防止できる。したがって、熱電変換モジュールを長期にわたり安定して使用でき、熱電変換モジュールの熱電交換性能を高く維持できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、配線基板とケースとの密着性及び熱伝達性を高めることができるので、熱電変換モジュールの熱電変換性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の第1実施形態のケース付熱電変換モジュールを用いた熱電変換装置の縦断面図である。
【
図2】
図1のA‐A線の矢視方向の平断面図である。
【
図3】
図1のB‐B線の矢視方向の平断面図である。
【
図4】
図1のケース付熱電変換モジュールの要部断面図である。
【
図5】本発明の第2実施形態のケース付熱電変換モジュールの縦断面図である。
【
図6】本発明の第3実施形態のケース付熱電変換モジュールの縦断面図である。
【
図7】本発明の第4実施形態のケース付熱電変換モジュールの縦断面図である。
【
図8】本発明の第5実施形態のケース付熱電変換モジュールの縦断面図である。
【
図9】本発明の第6実施形態のケース付熱電変換モジュールの縦断面図である。
【
図10】本発明の第7実施形態のケース付熱電変換モジュールを示す
図2同様の平断面図である。
【
図12】本発明の第8実施形態のケース付熱電変換モジュールの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
図1~
図4に示すように、第1実施形態のケース付熱電変換モジュール101は、外部と区切られた内部空間50を有するケース5と、その内部空間50に収容された熱電変換モジュール1とを有する。このケース付熱電変換モジュール101は、
図1に示すように、高温ガスが流れる高温側流路91と、冷却水が流れる低温側流路92との間に介在するように取り付けられることにより、熱電変換装置81を構成する。
【0027】
ケース5は、上ケース510と下ケース520とを有しており、上ケース510と下ケース520との間を樹脂製の接着剤531で接合することにより、上ケース510と下ケース520との間が封止され、外部から区切られた内部空間50が形成される。そして、
図1では、上ケース510が高温側流路91側に配置され、下ケース520が低温側流路92側に配置されており、上ケース510と下ケース520との接合位置は、熱電変換モジュール1の低温側(
図1において下部側)に配置されている。
【0028】
上ケース510と下ケース520は、剛性の高いステンレス鋼(SUS)やA5052等のアルミニウム合金、モリブデン等により形成される。また、接着剤531には、例えば、フェノール樹脂系接着剤(耐熱温度:150℃以下)、耐熱エポキシ樹脂系接着剤(耐熱温度:370℃以下)、または東亜合成株式会社製の耐熱性無機接着剤アロンセラミックやDurabond Products Lomited製のDurabond954等の耐熱性無機接着剤(耐熱温度:1200℃以下)等が用いられ、耐熱性、断熱性に優れた接着剤を好適に用いることができる。
【0029】
上ケース510は、天面部511と、天面部511の周縁から下方に向けて立設された筒状の胴部512と、胴部512の下端開口周縁に沿って環状に形成された下部フランジ部513とを有しており、下ケース520は、底面部521と、底面部521の周縁から上方に向けて立設された筒状の胴部522と、胴部522の上端開口周縁に沿って環状に形成された上部フランジ部523とを有している。そして、上ケース510の下部フランジ部513と下ケース520の上部フランジ部523とを重ねて配置し、下部フランジ部513と上部フランジ部523との間を接着剤531で接合することにより、ケース5が組み立てられる。この場合、下ケース520の胴部522の高さが、上ケース510の胴部512の高さよりも低く、すなわち下ケース520の深さが浅く設けられており、これにより、上ケース510と下ケース520との接合位置が熱電変換モジュール1の低温側に配置されている。
【0030】
熱電変換モジュール1は、一組の対向配置される配線基板210,220の間に、P型熱電変換素子3とN型熱電変換素子4とを線状(一次元状)に配列し、これらの熱電変換素子3,4が配線基板210,220を介して接続された構成である。簡便にするため、
図1~
図3には、P型熱電変換素子3とN型熱電変換素子4とが二対組み合わせて配列された例を示しており、合計4個の熱電変換素子3,4が一列に並んで設けられる。また、図中、P型熱電変換素子3には「P」、N型熱電変換素子4には「N」と表記する。
【0031】
また、
図1~
図3に示すように、熱電変換モジュール1の上側に配置された一方の配線基板210が高温側流路91側に配置され、熱電変換モジュール1の下側に配置された他方の配線基板220が低温側流路92側に配置され、熱電変換装置81の使用時には、一方の配線基板210が高温に加熱され、他方の配線基板220が低温に冷却される。そして、熱電変換装置81では、各熱電変換素子3,4に両配線基板210,220の温度差に応じた起電力が発生することにより、配列の両端の外部配線部141,142間に、各熱電変換素子3,4に生じる起電力の総和の電位差が得られる。なお、高温側流路91内には、棒状の吸熱フィン931を有するヒートシンク93が設けられ、この吸熱フィン931を一方の配線基板210に向けて押圧するバネ等の弾性部材94が設けられている。
【0032】
配線基板210,220は、絶縁基板であるセラミックス基板30と、セラミックス基板30の一方の面に接合されて熱電変換素子3,4の各電極部が接合される配線金属層10と、セラミックス基板30の他方の面に接合されてケース5の内面に対向接触して配置される熱伝達金属層20とを有する。
【0033】
セラミックス基板30は、窒化アルミニウム(AlN)、アルミナ(Al2O3)、窒化ケイ素(Si3N4)、炭化ケイ素(SiC)、カーボン板、グラファイト板上に成膜したダイヤモンド薄膜基板等の熱伝導性の高い絶縁性セラミックス基板により形成される。
【0034】
また、配線金属層10は、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)又はニッケル(Ni)を主成分とする材料(純銀又は銀合金、純アルミニウム又はアルミニウム合金、純銅又は銅合金、純ニッケル又はニッケル合金等を含む)あるいはこれらの積層板からなり、セラミックス基板30の一方の面に接合されることにより形成されている。配線金属層10の材料としては、純度99.99質量%以上のアルミニウム(いわゆる4Nアルミニウム)や純度99.9質量%以上の銅が好ましく、その場合の配線金属層10の厚さとしては0.05mm以上2.0mm以下とすることが好ましい。
【0035】
なお、アルミニウム及び銅は銀と比較して安価であるから、配線金属層10をアルミニウム又は銅により形成することで、熱電変換モジュール1を安価に製造できる。また、配線金属層10をアルミニウム又は銅により形成することで、配線金属層10により接続される両熱電変換素子3,4間の熱伝導性や導電性を良好に維持できる。
一方、配線金属層10に銀を用いることで、熱伝導性や導電性を良好に維持でき、厚さを比較的薄く形成した場合でも電気抵抗を低くできる。また、銀を用いることで、配線金属層10の耐熱性や耐酸化性を向上させることができる。なお、配線金属層10を銀で形成する場合には、配線金属層10の厚さは10μm以上200μm以下とすることが好ましい。
【0036】
また、ニッケルは、アルミニウムや銀と比較すると耐酸化性に劣るが、比較的良好な耐熱性を有する。また、ニッケルは銀と比較して安価であるとともに、比較的素子接合性が良い。このため、配線金属層10にニッケルを用いた場合には、性能と価格のバランスに優れた熱電変換モジュール1を構成できる。また、ニッケルを用いることで、アルミニウムや銅を用いる場合と比較して、配線金属層10の耐熱性や耐酸化性を向上させることができる。なお、配線金属層10をニッケルで形成する場合には、配線金属層10の厚さは0.1mm以上1.0mm以下とすることが好ましい。
【0037】
対向配置される配線基板210,220のうち、
図1の上側に配置される配線基板210の配線金属層10は、
図2に示すように、隣り合うP型熱電変換素子3とN型熱電変換素子4との対ごとにそれぞれ接合する平面視長方形の2個の電極部11により形成されている。また、
図1の下側に配置される配線基板220の配線金属層10は、
図3に示すように、各熱電変換素子3,4の個々に接続される平面視正方形状の4個の電極部12と、一方の配線基板210の電極部11により接続状態となる各対の両熱電変換素子3,4のうち、一方の対のN型熱電変換素子4と他方の対のP型熱電変換素子3とを接続状態とする内部配線部13と、一方の対のP型熱電変換素子3及び他方の対のN型熱電変換素子4をそれぞれ外部に接続するための外部配線部141,142とにより形成されている。
【0038】
なお、配線金属層10を構成する電極部11,12の大きさ(平面サイズ、面積)は、これら電極部11,12に接続される熱電変換素子3,4の大きさに応じて適宜変更され、熱電変換素子3,4の端面の面積と同等又はそれよりも若干大きく設定される。例えば、4mm四方の横断面の熱電変換素子3,4に対して、電極部11が5mm×10mmの長方形、電極部12が4.5mm四方の正方形に形成される。また、配線部13,141,142は、幅が0.3mm以上2.0mm以下の範囲内の線材により形成され、セラミックス基板30の表面に接合されている。
【0039】
なお、配線基板210,220のセラミックス基板30は、各電極部11,12の間、及び周囲に幅0.1mm以上のスペースを確保できる程度の平面形状に形成されている。厚さは、例えば、窒化アルミニウム、アルミナからなる場合は0.1mm以上1.5mm以下の範囲で、窒化ケイ素からなる場合は0.05mm以上1.5mm以下の範囲とすることができる。好ましい例として、セラミックス基板30として窒化アルミニウムからなるセラミックス板を用いる場合、大きさ30mm×12.5mm、厚さ0.6mmで形成される。
【0040】
熱伝達金属層20は、アルミニウム(Al)又は銅(Cu)を主成分とする材料(アルミニウム又はアルミニウム合金、銅又は銅合金)、あるいはこれらの積層板からなり、セラミックス基板30の他方の面に接合されることにより形成されている。熱伝達金属層20は、好ましくは、純度99.99質量%以上のアルミニウム(いわゆる4Nアルミニウム)、純度99.9質量%以上の銅や純度99.9999質量%以上の銅により形成される。また、熱伝達金属層20の周縁部はセラミックス基板30の周縁部と同じか、それよりも外側に突出して形成されており、セラミックス基板30の他方の面の全面が熱伝達金属層20の下面に接合されている。また、熱伝達金属層20の周縁部は、セラミックス基板30の周縁部から外側に0.5mmまでの範囲内で突出して形成されることが好ましい。なお、第1実施形態のケース付熱電変換モジュール101においては、
図1~
図4に示されるように、熱伝達金属層20の周縁部がセラミックス基板30の周縁部よりも外側に突出して形成されている。そして、熱伝達金属層20の厚さは、配線金属層10と同程度の厚さとすることが好ましく、0.05mm以上2.0mm以下の範囲で形成することができ、0.3mmの厚さが好適である。
【0041】
なお、配線金属層10及び熱伝達金属層20のセラミックス基板30への接合は、ろう材等を用いて行われる。例えば、セラミックス基板30の一方の面に配線金属層10となる金属板、セラミックス基板30の他方の面に熱伝達金属層20となる金属板を、それぞれAl‐Si系ろう材等を介して積層し、これらを積層方向に加圧した状態で610℃~650℃に加熱することで、セラミックス基板30に配線金属層10及び熱伝達金属層20が接合され、配線基板210,220が得られる。
【0042】
P型熱電変換素子3及びN型熱電変換素子4は、例えばテルル化合物、スクッテルダイト、充填スクッテルダイト、ホイスラー、ハーフホイスラー、クラストレート、シリサイド、酸化物、シリコンゲルマニウム等の焼結体により構成される。なお、ドーパントによりP型とN型の両方をとれる化合物と、P型かN型のどちらか一方のみの性質をもつ化合物がある。
【0043】
P型熱電変換素子3の材料として、Bi2Te3、Sb2Te3、PbTe、TAGS(=Ag‐Sb‐Ge‐Te)、Zn4Sb3、CoSb3、CeFe4Sb12、Yb14MnSb11、FeVAl、MnSi1.73、FeSi2、NaxCoO2、Ca3Co4O7、Bi2Sr2Co2O7、SiGe、Mn0.93V0.03Fe0.04Si1.7などが用いられる。
【0044】
N型熱電変換素子4の材料として、Bi2Te3、PbTe、La3Te4、CoSb3、FeVAl、ZrNiSn、Ba8Al16Si30、Mg2Si、Mg2SixSn1-x(但し、x=0~1)、FeSi2、SrTiO3、CaMnO3、ZnO、SiGeなどが用いられる。
【0045】
例えば、マンガンシリサイドから構成されたP型熱電変換素子3、及びマグネシウムシリサイドから構成されたN型熱電変換素子4は、それぞれ母合金をボールミルにて粉砕して例えば粒径75μm以下の粉砕粉末を作製した後、粉砕粉末をプラズマ放電焼結、ホットプレス、熱間等方圧加圧法により焼結して、例えば円盤状、角板状のバルク材を作製しておき、これを例えば角柱状又は円柱状に切断することにより形成される。
【0046】
また、シリコンゲルマニウム(Si‐Ge)から構成されたP型熱電変換素子3は、Si粉(79.7at%)と、Ge粉(20.1at%)と、B粉(0.2at%)とを混合した混合物を用いて、ガスアトマイズ法により、B(ボロン)がドープされたSi‐Geの微細な球状粉末を作製した後、粒状粉末を通電加熱焼結法(1250℃、1分保持)により焼結して、例えば円盤状、角板状のバルク材を作製しておき、これを例えば角柱状又は円柱状に切断することにより形成される。
【0047】
また、これらの熱電変換素子3,4は、例えば横断面が正方形(例えば、一辺が1mm~8mm)の角柱状や、横断面が円形(例えば、直径が1mm~8mm)の円柱状に形成され、長さ(
図1の上下方向に沿う長さ、配線基板210,220の対向方向に沿う長さ)は1mm~10mmとされる。そして、このようにして形成される各熱電変換素子3,4の両端面に、ニッケル、銀、金のうちのいずれかの層を含むメタライズ層(図示略)をめっき又はスパッタリングにより形成する。このメタライズ層が銀または金からなる場合には、熱電変換素子3,4の両端面に、ニッケル、チタンのいずれかからなる単層又はこれらの積層構造からなるバリア層(図示略)を形成しておき、このバリア層を介してメタライズ層を形成するとよい。メタライズ層の厚さは1μm以上100μm以下とされる。
【0048】
そして、熱電変換モジュール1は、両配線基板210,220が相互に平行に配置され、その間で各電極部11,12間に熱電変換素子3,4が接合されることにより形成されている。具体的には、各電極部11,12と、各熱電変換素子3,4との接合は、ペーストやろう材を用いた接合、荷重印加による固相拡散接合等により接合される。また、このように構成された熱電変換モジュール1は、上ケース510と下ケース520との間でケース5の内部空間50に気密に収容され、内部空間50を窒素ガスやアルゴンガス等を充填し不活性雰囲気に保持してパッケージ化することや、真空又は減圧状態に保持してパッケージ化することにより、ケース付熱電変換モジュール101が製出される。
【0049】
内部空間50としては真空又は減圧状態が好ましく、内部空間50を真空又は減圧状態とした場合には、高温側と低温側とが断熱されるため、熱電交換性能が低下しにくくなる。そして、このパッケージ化の際に、熱電変換モジュール1が上ケース510と下ケース520との間で挟持されることで、上側の配線基板210に上ケース510の天面部511が押し付けられるとともに、下側の配線基板220に下ケース520の底面部521が押し付けられ、熱電変換モジュール1に圧縮荷重が作用した状態で上ケース510と下ケース520との間が接合(固定)されている。なお、外部配線部141,142は、ケース5に対して絶縁状態で外部に引き出される。
【0050】
このように構成されるケース付熱電変換モジュール101では、対向配置される配線基板210,220に熱伝達金属層20を設け、その熱伝達金属層20の周縁部をセラミックス基板30の周縁部と同じか、それよりも外側に突出して形成することにより、熱伝達金属層20とケース5とを接触させて、セラミックス基板30とケース5とが接触することを確実に防止できる。この場合、セラミックス基板30の全面が熱伝達金属層20に接合されるので、セラミックス基板30と熱伝達金属層20との接合面積を大きくでき、また熱伝達金属層20とケース5との接触面積を大きくできるので、特許文献2のように、セラミックス基板よりも熱伝達金属層の平面サイズを小さく形成した場合と比較して、熱電変換モジュール1とケース5との熱伝達性を向上できる。
【0051】
なお、熱伝達金属層20の周縁部をセラミックス基板30の周縁部と同じ大きさとした場合よりも、熱伝達金属層20の周縁部をセラミックス基板30の周縁部よりも外側に突出して形成した場合の方が、熱伝達金属層20とケース5との接触面積を大きくできるので、熱電変換モジュール1とケース5との熱伝達性をより向上でき、さらにセラミックス基板30とケース5とが接触することを確実に防止できる。
【0052】
さらに、熱伝達金属層20は、アルミニウム(Al)又は銅(Cu)を主成分とする材料からなり、弾性変形及び塑性変形が可能であることから、圧力を加えてケース5を配線基板210,220に向けて接触させた際に、熱伝達金属層20がケース5の内面に沿って変形することで、ケース5との密着性を向上でき、良好な熱伝達性を維持できる。したがって、ケース付熱電変換モジュール101においては、配線基板210,220とケース5との密着性及び熱伝達性を高めることができ、熱電変換性能(発電効率)を向上させることができる。
【0053】
なお、熱電変換素子3,4は電圧が低いことから、絶縁基板であるセラミックス基板30の周縁部よりも熱伝達金属層20の周縁部を外側に突出して設けた場合であっても、熱伝達金属層20がセラミックス基板30の一方の面に接合された配線金属層10と物理的に接触しない限り、電気的なリークを生じることがない。
【0054】
また、熱伝達金属層20を、高純度のアルミニウム(Al)や銅(Cu)により形成した場合には、高純度のアルミニウムや銅は弾性変形、塑性変形しやすいことから、剛性の高いステンレス鋼(SUS)等で形成されたケース5の内面に沿った形に容易に変形する。このため、ケース5と配線基板210,220との間に隙間が生じることを確実に防止でき、さらにケース5と熱電変換モジュール1との密着性を向上でき、ケース5と熱電変換モジュール1との熱伝達性を高めることができる。したがって、熱電変換モジュール1の高温側と低温側との温度差を確保でき、熱電交換性能(発電効率)を向上させることができる。
なお、ケース5と各配線基板210,220(熱伝達金属層20)との間を、ろう付けやはんだ付け、超音波接合等で接合しておくこともでき、この場合には、さらにケース5と熱電変換モジュール1との密着性及び熱伝達性を向上できるので、熱電交換性能をさらに向上させることができる。
【0055】
また、本実施形態のケース付熱電変換モジュール101のように、上ケース510と下ケース520との接合位置を樹脂製の接着剤531で接合することにより、上ケース510と下ケース520との間を断熱して、これらの上ケース510と下ケース520との間の熱交換を防止できる。このため、熱電変換モジュール1の高温側と低温側との温度差を確保して、熱電交換性能を一層向上させることができる。また、上ケース510と下ケース520との接合位置を、熱電変換モジュール1の高温側ではなく低温側に配置することで、樹脂製の接着剤531に比較的軟らかい樹脂を用いることができる。このため、熱電変換モジュール1に冷熱サイクルが負荷されても、接着剤531において衝撃を吸収でき、ケース5の破損を防ぐことができる。
【0056】
また、上ケース510と下ケース520との接合位置を、熱電変換モジュール1の高温側に配置することもできる。上記実施形態のように、上ケース510と下ケース520との接合位置を熱電変換モジュール1の低温側に配置した場合では、上ケース510の側面(胴部512)の温度が、熱電変換モジュール1の高温部からの熱伝導により上昇する。このため、上ケース510の胴部512により、その胴部512付近に配置された熱電変換素子3,4が暖められ、熱電変換素子3,4の両端子間の温度勾配が取りにくくなるおそれがある。そこで、上ケース510と下ケース520との接合位置を熱電変換モジュール1の高温側に配置し、上ケース510の胴部512を熱電変換素子3,4から離して配置することにより、熱電変換素子3,4を暖めにくくし、熱電変換効率の低下を防ぐことができる。なお、この場合、上ケース510と下ケース520との接合位置での耐熱性が必要となるので、接着剤531には、耐熱性無機接着剤等の耐熱性(耐熱温度)の高い接着剤を用いるとよい。
【0057】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記以外の種々の変更を加えることも可能である。
(第2実施形態)
例えば、
図1~
図4に示される第1実施形態のケース付熱電変換モジュール101においては、熱伝達金属層20の周縁部がセラミックス基板30の周縁部よりも外側に突出して形成されていたが、
図5に示す第2実施形態のケース付熱電変換モジュール102のように、熱伝達金属層20の周縁部をセラミックス基板30の周縁部と同じ大きさに形成して、セラミックス基板30の全面と熱伝達金属層20を接合してもよい。この場合も、セラミックス基板30の全面に熱伝達金属層20を接合することで、特許文献2のように、セラミックス基板よりも熱伝達金属層の平面サイズを小さくした場合と比較して、熱電変換モジュール1とケース5との熱伝達性を向上でき、熱伝達金属層20とケース5とを接触させて、セラミックス基板30とケース5とが接触することを確実に防止できる。なお、
図5において、第1実施形態と共通する要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0058】
また、上ケース510と下ケース520との間の接合は、第1実施形態の構成に限定されるものではなく、
図5に示す第2実施形態のケース付熱電変換モジュール102のように、かしめ構造を採用することもできる。
この
図5に示す例では、下ケース520の上部フランジ部524を上ケース510の下部フランジ部513よりも外側に大きく形成しておき、その下ケース520の上部フランジ部524の基端部に上ケース510の下部フランジ部513を重ねた状態で、下ケース520の上部フランジ部524の先端部を内側に折り込むことで、下ケース510の上部フランジ部524の基端部と先端部との間に上ケース510の下部フランジ部513を挟持して、上ケース510と下ケース520とが固定されている。なお、第2実施形態においても、かしめ構造と併せて、下部フランジ部513と上部フランジ部524との間を樹脂製の接着剤531により接合してもよい。
【0059】
また、上ケース510と下ケース520との間の接合は、ろう付け、はんだ付け、溶接、超音波接合等の接着剤以外の接合方法を採用することもできる。いずれの場合においても、ケース5を上ケース510と下ケース520とを組み合わせて構成することにより、ケース付熱電変換モジュール101,102のパッケージ化の際に、熱電変換モジュール1を上ケース510と下ケース520との間で容易に挟持でき、熱電変換モジュール1に圧縮荷重が作用した状態で容易に組み立てを行うことができる。したがって、熱電変換モジュール1とケース5との密着性を高めることができる。
【0060】
また、上ケース510と下ケース520との間をろう付け、はんだ付け、溶接、超音波接合等の耐熱性の高い接合方法により接合することで、熱電変換モジュール1を上ケース510と下ケース520との間で挟持した状態を安定して維持できる。したがって、熱電変換モジュール1とケース5との密着性を良好に維持でき、熱電変換モジュール1の熱電交換性能を高く維持できる。
【0061】
また、第1実施形態及び第2実施形態のケース付熱電変換モジュール101,102のように、上ケース510と下ケース520とにより外部と区切られた気密に保持された内部空間50を形成し、熱電変換モジュール1をケース5の内部空間50に気密に収容した場合において、
図6~
図9に示す第3~第6実施形態のケース付熱電変換モジュール103~106のように、ケース5の内部(内部空間50)に乾燥剤又は脱酸剤若しくはこれらの双方を配置することができる。なお、これらの
図6~
図9において、第1実施形態と共通する要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0062】
(第3実施形態)
図6に示す第3実施形態のケース付熱電変換モジュール103は、ケース5の内部に、符号542で示す乾燥剤又は脱酸剤が配置されている。
図6では、乾燥剤と脱酸剤とを共通の符号542で表す。この場合、ケース5に、乾燥剤又は脱酸剤542を収容する収容部541が設けられており、この収容部541内に乾燥剤又は脱酸剤542を収容することで、乾燥剤又は脱酸剤542をケース5内の一箇所に固定している。また、収容部541は、ケース5の内部において熱電変換モジュール1と接触しない位置に配置されており、乾燥剤又は脱酸剤542が熱電変換モジュール1と接触することが防止されている。
【0063】
図6では、収容部541は低温側に配置される下ケース520に設けられており、例えば下ケース520と同じ材料の金属(例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、モリブデン等)の線材を織り込んで網状に形成された金網(メッシュ)等を下ケース520に溶接することで容易に形成できる。収容部541は網目を有しているので、これらの網目によりケース5の内部空間50において内部雰囲気を収容部541の内外に移動可能である。
【0064】
乾燥剤としては、一般的な乾燥剤を用いることができ、例えば、塩化カルシウム乾燥剤、シリカゲル乾燥剤、石灰乾燥剤、ミネラル乾燥剤、粘土系乾燥剤、分子ふるい乾燥剤、活性炭乾燥剤等を好適に用いることができる。なお、これらの乾燥剤は、包装紙等に包まれたものを好適に用いることができる。
【0065】
脱酸剤としては、一般的な脱酸剤を用いることができ、鉄系脱酸剤や鉄の線材からなるスチールウール等を好適に用いることができる。また、脱酸剤として、鉄(Fe)の他にも、熱電変換素子3,4よりも酸化しやすい金属、例えばアルミニウム(Al)、チタン(Ti)、マグネシウム(Mg)等を用いることもできる。脱酸剤として、熱電変換素子3,4よりも酸化しやすい金属を用いることにより、これらの金属が優先的に酸素と反応して酸化し、熱電変換素子3,4が酸化することを防止できる。
【0066】
なお、ケース5の内部空間(内部)50は、第1実施形態及び第2実施形態のケース付熱電変換モジュール101,103と同様に、気密に保持されている。そして、気密に保持された内部空間50は、窒素ガスやアルゴンガス等を充填して不活性雰囲気に保持されるか、真空又は減圧状態に保持される。
【0067】
第3実施形態のケース付熱電変換モジュール103において、ケース5の内部に乾燥剤を配置した場合、ケース5の内部に存在する水分を乾燥剤により吸収できるので、熱電変換素子3,4やその他の金属(配線金属層10等)の酸化反応を抑制することができる。また、ケース5の内部に脱酸剤を配置した場合、ケース5の内部に存在する酸素を脱酸剤により吸収できるので、熱電変換素子3,4やその他の金属が酸化することを防止できる。また、ケース5の内部に乾燥剤と脱酸剤との双方を配置することで、熱電変換モジュール1の酸化防止効果をより向上できる。なお、ケース5の内部に乾燥剤と脱酸剤とのいずれかを配置する場合には、乾燥剤よりも脱酸剤を配置する方が好ましい。脱酸剤を配置することで、酸化の原因となる酸素を除去できるためである。
【0068】
上述したように、第3実施形態のケース付熱電変換モジュール103では、ケース5の内部を気密に保持し、このケース5の内部に乾燥剤又は脱酸剤若しくはこれらの双方を配置するようにしたので、熱電変換素子3,4や配線金属層10等の酸化を防止でき、これらが脆くなることを防止できる。したがって、熱電変換モジュール1を長期にわたり安定して使用でき、熱電変換モジュール1の熱電交換性能を高く維持できる。
【0069】
また、ケース付熱電変換モジュール103では、収容部541内に乾燥剤又は脱酸剤542を収容しているので、吸湿した乾燥剤や酸化した脱酸剤が熱電変換モジュール1と接触することが防止できる。これにより、熱電変換モジュール1の酸化防止効果を安定して維持できる。
また、ケース付熱電変換モジュール103では、収容部541を低温側に配置される下ケース520に形成したので、乾燥剤又は脱酸剤542が耐熱性の低い材料で構成されている場合にも、これらの乾燥剤又は脱酸剤542を安定した状態で使用できる。
【0070】
なお、上記の第3実施形態では、乾燥剤又は脱酸剤542をケース5の内部の一箇所に配置した例について説明したか、これらを複数箇所に配置することもできる。また、乾燥剤又は脱酸剤542が熱電変換モジュール1の高温側の加熱温度に対する耐熱性を有する材料で構成される場合には、乾燥剤又は脱酸剤542をケース5の高温側に配置することができる。なお、乾燥剤又は脱酸剤542は、上記のように収容部541に収容する以外にも、接着剤によりケース5の内側に直接固定することもできる。また、スチールウール等で構成される脱酸剤542は、ケース5にスポット溶接等により直接固定することも可能である。
【0071】
(第4実施形態)
図6に示す第3実施形態のケース付熱電変換モジュール103では、金網等より乾燥剤又は脱酸剤542の収容部541を形成し、乾燥剤又は脱酸剤542をケース5内の特定の位置に固定していたが、
図7に示す第4実施形態のケース付熱電変換モジュール104のように、乾燥剤又は脱酸剤542を磁石543の磁力による吸着力より固定することもできる。この場合、乾燥剤又は脱酸剤542は、鉄等の磁性材料で構成されたものを用いる。あるいは、乾燥剤又は脱酸剤542に鉄等の磁石に吸着する板材や粉末を袋等の内部に入れたり、あるいは取り付けて、非磁性の乾燥剤又は脱酸剤を固定することもできる。
【0072】
磁石543は、例えば、ケース付熱電変換モジュール104の使用温度が150℃以下の場合には耐熱ネオジム磁石、200℃以下の場合にはフェライト磁石、300℃以下の場合にはサマリウムコバルト磁石、400℃以下の場合にはアルニコ磁石等を用いることができる。なお、磁石543は、使用温度に応じて、最も磁力が強い磁石を用いることが好ましい。また、ケース付熱電変換モジュール104において、磁石543は樹脂製の接着剤(図示略)によりケース5の内側に固定されている。磁石543をケース5に固定する接着剤には、上ケース510と下ケース520との間の封止に用いた接着剤531と同様の耐熱性、断熱性に優れた樹脂製の接着剤を好適に用いることができる。
【0073】
また、このように構成されるケース付熱電変換モジュール104には、ケース5の内部空間50において、熱電変換モジュール1の配置空間と乾燥剤又は脱酸剤542の配置空間とを仕切る仕切り部544を配置してもよい。仕切り部544を配置することで、乾燥剤又は脱酸剤542が磁石543から外れることがあっても、乾燥剤又は脱酸剤542が熱電変換モジュール1に接触することを防止できる。仕切り部544は、第3実施形態の収容部541と同様に、例えばケース5と同じ材料の金属(例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、モリブデン等)の線材を織り込んで網状に形成された金網(メッシュ)等をケース5の内側に溶接することで容易に形成できる。仕切り部544は、網目を有しているので、ケース5の内部空間50において内部雰囲気を熱電変換モジュール1の配置空間と乾燥剤又は脱酸剤542の配置空間との間で移動可能である。
【0074】
(第5実施形態)
第4実施形態のケース付熱電変換モジュール104では、磁石543をケース5の内側に配置していたが、
図8に示す第5実施形態のケース付熱電変換モジュール105のように、磁石543をケース5の外側に配置することもできる。この場合も、磁石543は、上ケース510と下ケース520との間の封止に用いた接着剤531と同様の耐熱性、断熱性に優れた樹脂製の接着剤を使用してケース5に固定される。
【0075】
第5実施形態のケース付熱電変換モジュール105においても、ケース5の外側に配置した磁石543の磁力による吸着力により、ケース5を介してケース5の内部に配置された乾燥剤又は脱酸剤542をケース5内の特定の位置に固定できる。また、ケース付熱電変換モジュール105においても、熱電変換モジュール1の配置空間と乾燥剤又は脱酸剤542の配置空間とを仕切る仕切り部544を配置してもよい。
【0076】
(第6実施形態)
第3~第5実施形態のケース付熱電変換モジュール103~105では、ケース5の内部に収容部541や磁石543等を用いて乾燥剤又は脱酸剤542を固定していたが、
図9に示す第6実施形態のケース付熱電変換モジュール106のように、ケース5の内側に予め乾燥剤又は脱酸剤として機能する金属を蒸着により成膜しておくことで、ケース5の内部に乾燥剤又は脱酸剤545を配置することもできる。
【0077】
また、例えば、第6実施形態のケース付熱電変換モジュール106では、脱酸剤545として、ステンレス鋼(SUS)で形成されたケース5の内面にマグネシウム(Mg)が蒸着されている。ケース付熱電変換モジュール106においては、パッケージ化の際に、予め上ケース510と下ケース520のそれぞれの内面にマグネシウムを蒸着しておき、これらの上ケース510と下ケース520との間で熱電変換モジュール1を挟持する。そして、熱伝達金属層20のアルミニウム(Al)とマグネシウム(Mg)との共晶温度程度で加熱することで、これらの熱伝達金属層20と上ケース510又は下ケース520との間にAl‐Mgの液相を形成できる。これらの共晶温度以下に冷却することで、熱伝達金属層20の上ケース510又は下ケース520との接触面側にAl‐Mg合金層21を形成でき、上ケース510又は下ケース520との接触性(密着性)を向上できる。なお、ケース付熱電変換モジュール106の高温側は、アルミニウムとマグネシウムとの共晶温度よりも低い温度で使用される。
【0078】
第6実施形態のケース付熱電変換モジュール106では、上ケース510又は下ケース520の内面に脱酸剤545を構成するマグネシウムを蒸着しており、熱電変換モジュール1との接触面の以外に蒸着されたマグネシウムにより、ケース5の内部に存在する酸素を円滑に吸収できる。したがって、熱電変換素子3,4やその他の金属が酸化することを防止できる。
【0079】
(第7実施形態)
また、第1~第6実施形態のケース付熱電変換モジュール101~106では、熱電変換モジュール1のP型熱電変換素子3及びN型熱電変換素子4の配列が線状(一次元状)とされた例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、
図10及び
図11に示す第7実施形態のケース付熱電変換モジュール107のように、P型熱電変換素子3及びN型熱電変換素子4を面状(二次元)に配列してもよい。この第7実施形態において、第1実施形態の
図1に相当する図面は省略するが、縦断面構造は
図1とほぼ同様である。
【0080】
(第8実施形態)
また、上記実施形態のケース付熱電変換モジュール101~107では、上ケース510と下ケース520とにより外部と区切られた内部空間50を形成し、熱電変換モジュール1をケース5内に気密に収容した例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、
図12及び
図13に示す第8実施形態のケース付熱電変換モジュール108のケース6のように、一部に開口部を有するケースを用いる構成とし、このケース6に熱電変換モジュール1を収容してもよい。なお、
図12及び
図13に示すケース付熱電変換モジュール108では、ケース6は、それぞれU字溝状に形成された上ケース610と下ケース620とで構成され、
図12及び
図13において左右側の両側面が開いた筒状に形成されている。
【0081】
この場合においても、対向配置される配線基板210,220に熱伝達金属層20を設け、その熱伝達金属層20の周縁部をセラミックス基板30の周縁部と同じか、それよりも外側に突出して形成することにより、熱伝達金属層20とケース6とを接触させて、セラミックス基板30とケース6とが接触することを確実に防止できる。また、セラミックス基板30の全面が熱伝達金属層20に接合されているので、セラミックス基板30と熱伝達金属層20との接合面積を大きくでき、また熱伝達金属層20とケース6との接触面積を大きくできるので、セラミックス基板よりも熱伝達金属層の平面サイズを小さく形成した場合と比較して、熱電変換モジュール1とケース6との熱伝達性を向上できる。なお、
図12及び
図13において、第1実施形態と共通する要素には同一符号を付して説明を省略する。
【符号の説明】
【0082】
1 熱電変換モジュール
210,220 配線基板
3 P型熱電変換素子
4 N型熱電変換素子
5,6 ケース
510,610 上ケース
520,620 下ケース
11,12 電極部
13 内部配線部
141,142 外部配線部
20 熱伝達金属層
30 セラミックス基板
50 内部空間
511 天面部
512 胴部
513 下部フランジ部
521 底面部
522 胴部
523,524 上部フランジ部
531 接着剤
541 収容部
542,545 乾燥剤,脱酸剤
543 磁石
544 仕切り部
81 熱電変換装置
91 高温側流路
92 低温側流路
93 ヒートシンク
94 弾性部材
101,102,103,104,105,106,107,108 ケース付熱電変換モジュール