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特許7151071インクセット、画像形成方法及びインクジェット記録装置
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  • 特許-インクセット、画像形成方法及びインクジェット記録装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】インクセット、画像形成方法及びインクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/40 20140101AFI20221004BHJP
   C09D 11/54 20140101ALI20221004BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20221004BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20221004BHJP
   D06M 15/564 20060101ALI20221004BHJP
   D06B 11/00 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
C09D11/40
C09D11/54
B41M5/00 114
B41M5/00 120
B41M5/00 132
B41J2/01 501
B41J2/01 123
D06M15/564
D06B11/00 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017200322
(22)【出願日】2017-10-16
(65)【公開番号】P2019073619
(43)【公開日】2019-05-16
【審査請求日】2020-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100129137
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 ゆみ
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(72)【発明者】
【氏名】柚原 敬介
(72)【発明者】
【氏名】多賀 康浩
(72)【発明者】
【氏名】前田 光範
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 慎平
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-110318(JP,A)
【文献】特開2015-131404(JP,A)
【文献】特開2002-302627(JP,A)
【文献】特開2017-186702(JP,A)
【文献】国際公開第2016/088847(WO,A1)
【文献】特開2004-285177(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
布帛及び記録用紙から選ばれる記録媒体への画像の形成に用いられるインクセットであって、
インクジェット記録用水性インクと、処理剤と、を含み、
前記水性インクは、顔料と、樹脂と、水と、を含み、
前記水性インクは、前記樹脂として、バインダー樹脂を含み、
前記処理剤は、樹脂と、水と、を含み、
前記処理剤に含まれる前記樹脂が、ウレタン構造を含むカチオン性ポリマーであり、
前記ウレタン構造を含むカチオン性ポリマーが、前記ウレタン構造以外の部分に、アクリル構造及びスチレン構造の少なくとも一方を含み、
下記条件(1)~(3)を満たすことを特徴とするインクセット。

条件(1):0.9≦(B+C)/A
条件(2):3≦A≦9
条件(3):B<9
A:前記水性インク全量における前記顔料の配合量(重量%)
B:前記水性インク全量における前記樹脂の配合量(重量%)
C:前記処理剤全量における前記樹脂の配合量(重量%)
【請求項2】
さらに、下記条件(4)を満たす、請求項1記載のインクセット。

条件(4):(B+C)/A≦2
A:前記水性インク全量における前記顔料の配合量(重量%)
B:前記水性インク全量における前記樹脂の配合量(重量%)
C:前記処理剤全量における前記樹脂の配合量(重量%)
【請求項3】
前記顔料の平均粒子径が、110nm以下である、請求項1又は2記載のインクセット。
【請求項4】
前記ウレタン構造を含むカチオン性ポリマーが、エマルションである、請求項1~のいずれか一項に記載のインクセット。
【請求項5】
前記ウレタン構造を含むカチオン性ポリマーが、前記ウレタン構造以外の部分に、アクリル構造を含む、請求項1~のいずれか一項に記載のインクセット。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一項に記載のインクセットを用いて、布帛及び記録用紙を含む記録媒体に画像を形成する画像形成方法であって、
前記記録媒体に前記水性インクをインクジェット方式により吐出して画像を印刷する画像印刷工程を含み、
前記記録媒体が前記布帛の場合、さらに、
前記布帛に前記処理剤を付与する処理剤付与工程を含み、
前記処理剤付与工程において、前記布帛の面積あたりの前記処理剤の付与量が、4.7mg/cm~50mg/cmである、
ことを特徴とする画像形成方法。
【請求項7】
インクセット収容部と、処理剤付与手段と、インク吐出手段と、制御手段と、を含み、
前記インクセット収容部に、請求項1~のいずれか一項に記載のインクセットが収容され、
前記インクセットを構成する前記水性インクが、前記インク吐出手段によって記録媒体に吐出され、
前記インクセットを構成する前記処理剤を、前記処理剤付与手段によって前記記録媒体に付与可能であり、
前記制御手段は、前記記録媒体の種類に応じて、前記処理剤付与手段による付与を制御することを特徴とするインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクセット、画像形成方法及びインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紙媒体に対して印刷を実行するための紙媒体印刷モードと、布地媒体に対して印刷を実行するための捺染印刷モードと、を有し、紙媒体と布地媒体との双方に対して印刷が可能な印刷装置が各種提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-168147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、衣類等の布帛への画像形成においては、紙媒体と異なり当該布帛が肌に触れることがあるため、高い耐擦過性が求められる。耐擦過性は、樹脂を含有した処理剤を顔料インクと併用し、顔料の布帛への定着性を高めることで、向上させ得る。しかしながら、顔料に対して樹脂の量が多すぎると、印刷後の手触りが硬くなる。また、例えば、家庭用又はオフィス向けのパーソナルユースのインクジェット記録装置においては、産業用のインクジェット記録装置と比べて廃液処理等に用いられるメンテナンス機構が小型であることから、それに搭載されるインクセットには、高いメンテナンス性が求められる。
【0005】
そこで、本発明は、布帛への画像形成において、高い耐擦過性と手触りの変化の抑制とを両立可能で、メンテナンス性が高く、且つ、記録用紙への画像形成にも適用可能なインクセットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明のインクセットは、
布帛及び記録用紙を含む記録媒体への画像の形成に用いられるインクセットであって、
インクジェット記録用水性インクと、処理剤と、を含み、
前記水性インクは、顔料と、樹脂と、水と、を含み、
前記処理剤は、樹脂と、水と、を含み、
下記条件(1)~(3)を満たすことを特徴とする。

条件(1):0.9≦(B+C)/A
条件(2):3≦A≦9
条件(3):B<9
A:前記水性インク全量における前記顔料の配合量(重量%)
B:前記水性インク全量における前記樹脂の配合量(重量%)
C:前記処理剤全量における前記樹脂の配合量(重量%)
【発明の効果】
【0007】
本発明のインクセットは、水性インクにおける顔料の配合量と、水性インク及び処理剤における樹脂の配合量とが所定の条件を満たすことで、布帛への画像形成において、高い耐擦過性と手触りの変化の抑制とを両立可能で、メンテナンス性が高く、且つ、記録用紙への画像形成にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明のインクジェット記録装置の一例の構成を示す概略斜視図である。
図2図2は、本発明のインクジェット記録装置の一例の構成を示す模式図である。
図3図3(a)及び(b)は、本発明の画像形成方法における処理剤の付与例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[インクセット]
本発明のインクセットについて説明する。本発明のインクセットは、インクジェット記録用水性インク(以下、「水性インク」又は「インク」と言うことがある。)と、処理剤と、を含む。
【0010】
(水性インク)
まず、前記水性インクについて説明する。前記水性インクは、顔料と、樹脂と、水と、を含む。
【0011】
前記顔料としては、例えば、樹脂分散型顔料、自己分散型顔料等があげられる。
【0012】
前記樹脂分散型顔料は、例えば、顔料分散用樹脂(樹脂分散剤)によって、水に分散可能なものである。前記樹脂分散型顔料として用い得る顔料としては、特に限定されず、例えば、カーボンブラック、無機顔料及び有機顔料等があげられる。前記カーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等があげられる。前記無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄系無機顔料及びカーボンブラック系無機顔料等をあげることができる。前記有機顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料;フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料;塩基性染料型レーキ顔料、酸性染料型レーキ顔料等の染料レーキ顔料;ニトロ顔料;ニトロソ顔料;アニリンブラック昼光蛍光顔料;等があげられる。これらの顔料の具体例としては、例えば、C.I.ピグメントブラック1、6及び7;C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14、15、16、17、55、73、74、75、78、83、93、94、95、97、98、114、128、129、138、150、151、154、180、185及び194;C.I.ピグメントオレンジ31及び43;C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、12、15、16、48、48:1、53:1、57、57:1、112、122、123、139、144、146、149、150、166、168、175、176、177、178、184、185、190、202、221、222、224及び238;C.I.ピグメントバイオレット19及び196;C.I.ピグメントブルー1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:4、16、22及び60;C.I.ピグメントグリーン7及び36;及びこれらの顔料の固溶体等もあげられる。
【0013】
前記顔料は、自己分散型顔料であってもよい。前記自己分散型顔料は、例えば、顔料粒子にカルボニル基、ヒドロキシル基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基等の親水性官能基及びそれらの塩の少なくとも一種が、直接又は他の基を介して化学結合により導入されていることによって、分散剤を使用しなくても水に分散可能なものである。前記自己分散型顔料は、例えば、特開平8-3498号公報、特表2000-513396号公報、特表2008-524400号公報、特表2009-515007号公報、特表2011-515535号公報等に記載の方法によって顔料が処理されたものを用いることができる。前記自己分散型顔料の原料としては、無機顔料及び有機顔料のいずれも使用することができる。また、前記処理を行うのに適した顔料としては、例えば、三菱化学(株)製の「MA8」、「MA100」及び「#2650」、デグサ社製の「カラーブラックFW200」等のカーボンブラックがあげられる。前記自己分散型顔料は、例えば、市販品を用いてもよい。前記市販品としては、例えば、キャボット・コーポレーション社製の「CAB-O-JET(登録商標)200」、「CAB-O-JET(登録商標)250C」、「CAB-O-JET(登録商標)260M」、「CAB-O-JET(登録商標)270Y」、「CAB-O-JET(登録商標)300」、「CAB-O-JET(登録商標)400」、「CAB-O-JET(登録商標)450C」、「CAB-O-JET(登録商標)465M」及び「CAB-O-JET(登録商標)470Y」;オリエント化学工業(株)製の「BONJET(登録商標)BLACK CW-2」及び「BONJET(登録商標)BLACK CW-3」;東洋インキ製造(株)製の「LIOJET(登録商標)WD BLACK 002C」;等があげられる。
【0014】
前記顔料の平均粒子径は、例えば、110nm以下である。顔料の平均粒子径が110nm以下であれば、より高い耐擦過性を得ることができる。前記平均粒子径は、例えば、固形分量が0.02重量%となるように希釈して、(株)堀場製作所の動的散乱式粒度分布測定装置「LB-550」を用いて、散乱光強度を粒子径基準として算出可能である。
【0015】
前記顔料は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。前記水性インク全量における前記顔料の配合量については、後述する。
【0016】
前記水性インクに含まれる前記樹脂は、例えば、前記顔料が前記樹脂分散型顔料である場合には、例えば、顔料分散用樹脂(樹脂分散剤)であってもよいし、記録媒体表面に前記顔料が定着するのを補助する顔料定着用の樹脂(バインダー樹脂)であってもよいし、前記樹脂分散剤と前記バインダー樹脂とを兼ねるものであってもよいし、前記樹脂分散剤と前記バインダー樹脂との双方であってもよい。前記水性インクに含まれる樹脂は、前記顔料が前記自己分散型顔料である場合には、例えば、前記バインダー樹脂である。
【0017】
前記樹脂分散剤としては、例えば、メタクリル酸及びアクリル酸の少なくとも一方をモノマーとして含むもの等があげられ、例えば、市販品を用いてもよい。前記市販品としては、例えば、BASF社(旧ジョンソンポリマー(株))製の「ジョンクリル(登録商標)611」、「ジョンクリル(登録商標)586」、「ジョンクリル(登録商標)687」、「ジョンクリル(登録商標)63」及び「ジョンクリル(登録商標)HPD296」;ビックケミー社製の「Disperbyk190」及び「Disperbyk191」;ゼネカ社製の「ソルスパース20000」及び「ソルスパース27000」;等があげられる。
【0018】
前記バインダー樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアクリル酸ナトリウム、アクリル酸/マレイン酸共重合体塩、スチレン/無水マレイン酸共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル/アクリル共重合体樹脂、酢酸ビニル/エチレン共重合体樹脂等があげられる。前記バインダー樹脂は、自家調製してもよいし、市販品を用いてもよい。前記市販品としては、例えば、BASF社(旧ジョンソンポリマー(株))製の「ジョンクリル(登録商標)JDX-6500」(スチレンアクリル樹脂)、「ジョンクリル(登録商標)537」(アクリル樹脂)、「ジョンクリル(登録商標)60」(アクリル樹脂)、「ジョンクリル(登録商標)450」(スチレンアクリル樹脂)、「ジョンクリル(登録商標)390」(アクリル樹脂)、「ジョンクリル(登録商標)62」(スチレンアクリル樹脂)及び「ジョンクリル(登録商標)HPD-96」(スチレンアクリル樹脂)、星光PMC(株)製の「F-52」(アクリル樹脂)、「KE-1148」(アクリル樹脂)及び「PE-1304」(スチレンアクリル樹脂);第一工業製薬(株)製の「スーパーフレックス210」(ウレタン樹脂)及び「スーパーフレックスE-4000」(ウレタン樹脂、有効成分量=45重量%);三洋化成工業(株)製の「ユーコート(登録商標) UWS-145」(ウレタン樹脂)、「パーマリン(登録商標) UA-150」(ウレタン樹脂)及び「パーマリン(登録商標) UA-368」(ウレタン樹脂);クラレ(株)製の「PVA-220」(ポリビニルアルコール樹脂の10%水溶液)及び「PVA-203」(ポリビニルアルコール樹脂の10%水溶液);日本触媒(株)製の「アクアリック(登録商標)L DL-40」(ポリアクリル酸ナトリウム、有効成分量=40重量%)及び「アクアリック(登録商標)L TL-37」(アクリル酸/マレイン酸共重合体塩、有効成分量=37重量%);等があげられる。前記バインダー樹脂として例示のものは、前記樹脂分散剤としても用い得る。
【0019】
前記水性インクに含まれる前記樹脂は、例えば、処理剤に含まれる樹脂の例として後述するのと同様のウレタン構造を含むカチオン性ポリマーを含んでもよい。
【0020】
前記水性インクに含まれる前記樹脂は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。前記水性インク全量における前記樹脂の配合量については、後述する。
【0021】
前記水は、イオン交換水又は純水であることが好ましい。前記水性インク全量における前記水の配合量は、例えば、他の成分の残部としてもよい。
【0022】
前記水性インクは、さらに、界面活性剤を含んでもよい。前記界面活性剤は、特に限定されず、例えば、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製のアニオン性界面活性剤「LIPOLAN(登録商標)」シリーズ、「LIPON(登録商標)」シリーズ、「SUNNOL(登録商標)」シリーズ、「LIPOTAC(登録商標)」シリーズ、「ENAGICOL(登録商標)」シリーズ、「LIPAL(登録商標)」シリーズ及び「LOTAT(登録商標)」シリーズ等;花王(株)製のアニオン性界面活性剤「EMAL(登録商標)」シリーズ、「LATEMUL(登録商標)」シリーズ、「VENOL(登録商標)」シリーズ、「NEOPELEX(登録商標)」シリーズ、NS SOAP、KS SOAP、OS SOAP及び「PELEX(登録商標)」シリーズ等;三洋化成工業(株)製のアニオン性界面活性剤「サンデット(登録商標)」シリーズ及び「ビューライト(登録商標)」シリーズ等;東邦化学工業(株)製のアニオン性界面活性剤「アルスコープ(登録商標)」シリーズ、「ネオスコープ(登録商標)」シリーズ、「フオスフアノール(登録商標)」シリーズ等;東京化成(株)製のアニオン性界面活性剤ヘキサデシル硫酸ナトリウム及びステアリル硫酸ナトリウム等;ライオン・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製のノニオン性界面活性剤「DOBANOX(登録商標)」シリーズ、「LEOCOL(登録商標)」シリーズ、「LEOX(登録商標)」シリーズ、「LAOL,LEOCON(登録商標)」シリーズ、「LIONOL(登録商標)」シリーズ、「CADENAX(登録商標)」シリーズ、「LIONON(登録商標)シリーズ」及び「LEOFAT(登録商標)」シリーズ等;花王(株)製のノニオン性界面活性剤「EMULGEN(登録商標)」シリーズ、「RHEODOL(登録商標)」シリーズ、「EMASOL(登録商標)」シリーズ、「EXCEL(登録商標)」シリーズ、「EMANON(登録商標)」シリーズ、「AMIET(登録商標)」シリーズ及び「AMINON(登録商標)」シリーズ等;日信化学工業(株)製のノニオン性界面活性剤「オルフィン(登録商標)」シリーズ等;第一工業製薬(株)製のカチオン性界面活性剤「カチオーゲン(登録商標)」シリーズ等;があげられる。前記界面活性剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0023】
前記水性インク全量における前記界面活性剤の配合量は、例えば、0重量%~2重量%、0重量%~1重量%、0重量%~0.5重量%である。
【0024】
前記水性インクは、さらに、インクジェットヘッドのノズル先端部における水性インクの乾燥を防止する湿潤剤を含んでもよい。
【0025】
前記湿潤剤は、特に限定されず、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール等の低級アルコール;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド;アセトン等のケトン;ジアセトンアルコール等のケトアルコール;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;ポリアルキレングリコール等のポリエーテル;アルキレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の多価アルコール;2-ピロリドン;N-メチル-2-ピロリドン;1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン;等があげられる。前記ポリアルキレングリコールは、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等があげられる。前記アルキレングリコールは、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール等があげられる。これらの湿潤剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。これらの中で、アルキレングリコール、グリセリン等の多価アルコールが好ましい。
【0026】
前記水性インク全量における前記湿潤剤の配合量は、例えば、0重量%~95重量%、5重量%~80重量%、5重量%~50重量%である。
【0027】
前記水性インクは、さらに、前記湿潤剤以外の水溶性有機溶剤を含んでもよい。前記湿潤剤以外の水溶性有機溶剤としては、例えば、記録媒体上での乾燥速度を調整する浸透剤があげられる。
【0028】
前記浸透剤は、例えば、グリコールエーテルがあげられる。前記グリコールエーテルは、例えば、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコール-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコール-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコール-n-ヘキシルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールエチルエーテル、トリエチレングリコール-n-プロピルエーテル、トリエチレングリコール-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコール-n-プロピルエーテル、プロピレングリコール-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコール-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコール-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールエチルエーテル、トリプロピレングリコール-n-プロピルエーテル及びトリプロピレングリコール-n-ブチルエーテル等があげられる。前記浸透剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0029】
前記水性インク全量における前記浸透剤の配合量は、例えば、0重量%~20重量%、0重量%~15重量%、1重量%~4重量%である。
【0030】
前記水性インクは、必要に応じて、さらに、従来公知の添加剤を含んでもよい。前記添加剤としては、例えば、pH調整剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、防黴剤等があげられる。前記粘度調整剤は、例えば、ポリビニルアルコール、セルロース、水溶性樹脂等があげられる。
【0031】
前記水性インクは、例えば、前記顔料、前記樹脂及び前記水と、必要に応じて他の添加成分とを、従来公知の方法で均一に混合し、フィルタ等で不溶解物を除去することにより調製できる。
【0032】
(処理剤)
つぎに、前記処理剤について説明する。前記処理剤は、樹脂と、水と、を含む。
【0033】
前記処理剤に含まれる前記樹脂としては、例えば、カチオン性ポリマー等があげられる。前記カチオン性ポリマーとしては、例えば、ウレタン構造を含むカチオン性ポリマー、ポリアミン、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリビニルピリジン、ポリエチレンイミン-エピクロルヒドリン反応物、ポリアミド-ポリアミン樹脂、ポリアミド-エピクロルヒドリン樹脂、カチオンデンプン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアミジン、カチオンエポキシ樹脂、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリビニルホルムアミド、アミノアセタール化ポリビニルアルコール、ポリビニルベンジルオニウム、ジシアンジアミド・ホルマリン重縮合物、ジシアンジアミド・ジエチルトリアミン重縮合物、エピクロルヒドリン・ジメチルアミン付加重合物、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド・SO共重合物、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合物、及びこれらの誘導体等があげられる。また、前記カチオン性ポリマーとしては、例えば、ジメチルアミノエチル-メタクリレート(DM)、メタクリロイロキシエチル-トリメチルアンモニウム-クロライド(DMC)、メタクリロイロキシジエチル-ベンジルジメチル-アンモニウムクロライド(DMBC)、ジメチルアミノエチル-アクリレート(DA)、アクリロイロキシエチル-トリメチルアンモニウム-クロライド(DMQ)、アクリロイロキシエチル-ベンジルジメチル-アンモニウムクロライド(DABC)、ジメチルアミノプロピル-アクリルアミド(DMAPAA)、アクリルアミドプロピル-トリメチルアンモニウム-クロライド(DMAPAAQ)等の水溶性モノマーの少なくとも一つからなる単一のモノマー重合体又は複数種のモノマーの共重合体等もあげられる。これらの中でも、ウレタン構造を含むカチオン性ポリマー、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミンが好ましく、ウレタン構造を含むカチオン性ポリマーが特に好ましい。前記カチオン性ポリマーの最低造膜温度は、25℃以下であることが好ましい。
【0034】
前記ウレタン構造を含むカチオン性ポリマーは、自家調製してもよいし、市販品を用いてもよい。
【0035】
前記ウレタン構造を含むカチオン性ポリマーは、例えば、エマルション(ウレタンエマルション)であってもよい。
【0036】
前記ウレタン構造を含むカチオン性ポリマーは、前記ウレタン構造以外の部分に、アクリル構造及びスチレン構造の少なくとも一方を含むことが好ましく、アクリル構造を含むことがより好ましい。
【0037】
前記ウレタン構造を含むカチオン性ポリマーは、例えば、エマルションであり、且つ、前記ウレタン構造以外の部分に、アクリル構造及びスチレン構造の少なくとも一方を含むことが好ましく、アクリル構造を含むこと(ウレタンアクリルエマルションであること)がより好ましい。前記ウレタンアクリルエマルションの市販品としては、例えば、ジャパンコーティングレジン(株)製の「モビニール(登録商標)6910」;第一工業製薬(株)製の「スーパーフレックス(登録商標)620」、「スーパーフレックス(登録商標)650」;等があげられる。
【0038】
前記ウレタン構造を含むカチオン性ポリマーにおいて、前記ウレタン構造部分の占める割合が、10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましい。なお、前記ウレタン構造を含むカチオン性ポリマーが、前記ウレタンエマルションである場合には、前記ウレタン構造部分の占める割合とは、前記ウレタンエマルションの固形分に占める前記ウレタン構造部分の割合である。
【0039】
前記ウレタン構造を含むカチオン性ポリマーの重量平均分子量は、例えば、1000~500000、3000~500000である。なお、前記ウレタン構造を含むカチオン性ポリマーが、前記ウレタンエマルションである場合には、前記重量平均分子量とは、前記ウレタンエマルションの固形分の重量平均分子量である。
【0040】
前記ウレタン構造を含むカチオン性ポリマーにおいて、前記ウレタン構造は、脂肪族イソシアネートと、ポリエーテル系ポリオール又はポリエステル系ポリオールと、から得られたものであることが好ましい。
【0041】
前記処理剤は、さらに、前述の水性インクにおいて例示したのと同様の界面活性剤、水溶性有機溶剤及び添加剤を含んでもよい。
【0042】
前記処理剤は、例えば、前記樹脂及び前記水と、必要に応じて他の添加成分とを、従来公知の方法で均一に混合することにより調製できる。
【0043】
本発明のインクセットにおいて、前記水性インク全量における前記顔料の配合量(A)、前記水性インク全量における前記樹脂の配合量(B)、前記処理剤全量における前記樹脂の配合量(C)は、下記条件(1)~(3)を満たすように、適宜調整すればよい。前記顔料の配合量(A)、前記樹脂の配合量(B)及び前記樹脂の配合量(C)は、例えば、固形分量である。

条件(1):0.9≦(B+C)/A
条件(2):3≦A≦9
条件(3):B<9
【0044】
本発明のインクセットは、水性インクにおける顔料の配合量と、水性インク及び処理剤における樹脂の配合量とが所定の条件を満たすことで、布帛への画像形成において、高い耐擦過性と手触りの変化の抑制とを両立可能で、メンテナンス性が高く、且つ、記録用紙への画像形成にも適用可能である。前記布帛は、編物及び織物の双方を含む。前記布帛の材質は、天然繊維であっても、合成繊維であってもよい。前記天然繊維としては、例えば、綿、絹等があげられる。前記合成繊維としては、例えば、ウレタン、アクリル、ポリエステル、ナイロン等があげられる。
【0045】
本発明のインクセットにおいて、さらに、下記条件(4)を満たすことが好ましい。下記条件(4)を満たせば、例えば、布帛への画像形成後において、前記布帛が硬くなるのを効果的に抑制可能である。なお、(B+C)/Aは、2を超えてもよいが、3以下であることが好ましい。

条件(4):(B+C)/A≦2
【0046】
[画像形成方法及びインクジェット記録装置]
つぎに、本発明の画像形成方法について説明する。
【0047】
本発明の画像形成方法は、
本発明のインクセットを用いて、布帛及び記録用紙を含む記録媒体に画像を形成する画像形成方法であって、
前記記録媒体に前記水性インクをインクジェット方式により吐出して画像を印刷する画像印刷工程を含み、
前記記録媒体が前記布帛の場合、さらに、
前記布帛に前記処理剤を付与する処理剤付与工程を含み、
前記処理剤付与工程において、前記布帛の面積あたりの前記処理剤の付与量を、4.7mg/cm(30mg/inch)~50mg/cm(320mg/inch)とする、
ことを特徴とする。
【0048】
本発明の画像形成方法における前記インクセットは、前述の本発明のインクセットと同様であり、その説明を援用できる。
【0049】
本発明の画像形成方法は、例えば、つぎに説明する本発明のインクジェット記録装置を用いて実施可能である。
【0050】
本発明のインクジェット記録装置は、インクセット収容部と、インク吐出手段と、処理剤付与手段と、制御手段と、を含むインクジェット記録装置であって、前記インクセット収容部に、本発明のインクセットが収容され、前記インクセットを構成する前記水性インクが、前記インク吐出手段によって前記記録媒体に吐出され、前記インクセットを構成する前記処理剤を、前記処理剤付与手段によって前記記録媒体に付与可能であり、前記制御手段は、前記記録媒体の種類に応じて、前記処理剤付与手段による付与を制御することを特徴とする。
【0051】
図1に、本発明のインクジェット記録装置の一例の構成を示す。図示のとおり、このインクジェット記録装置1は、4つのインクカートリッジ2と、インク吐出手段(インクジェットヘッド)3と、ヘッドユニット4と、キャリッジ5と、駆動ユニット6と、プラテンローラ7と、パージ装置8と、を主要な構成要素として含む。また、図1には示していないが、このインクジェット記録装置1は、適宜の位置に、前記処理剤付与手段及び前記制御手段を有する。なお、図1には示していないが、このインクジェット記録装置1は、さらに、適宜の位置に、後述の乾燥手段を含んでもよい。
【0052】
4つのインクカートリッジ2は、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの4色の水性インクを、それぞれ1色ずつ含む。例えば、前記4色の水性インクのうちの少なくとも一つが、本発明のインクセットを構成する水性インクである。本例では、4つのインクカートリッジ2のセットを示したが、これに代えて、水性イエローインク収納部、水性マゼンタインク収納部、水性シアンインク収納部及び水性ブラックインク収納部を形成するようにその内部が間仕切りされた一体型のインクカートリッジを用いてもよい。前記インクカートリッジの本体としては、例えば、従来公知のものを使用できる。
【0053】
ヘッドユニット4に設置されたインクジェットヘッド3は、記録媒体(例えば、布帛F)に記録(画像印刷)を行う。なお、前記記録媒体は、記録用紙等の布帛F以外の記録媒体であってもよい。キャリッジ5には、4つのインクカートリッジ2及びヘッドユニット4が搭載される。駆動ユニット6は、キャリッジ5を直線方向に往復移動させる。駆動ユニット6としては、例えば、従来公知のものを使用できる(例えば、特開2008-246821号公報参照)。プラテンローラ7は、キャリッジ5の往復方向に延び、インクジェットヘッド3と対向して配置されている。
【0054】
パージ装置8は、インクジェットヘッド3の内部に溜まる気泡等を含んだ不良インクを吸引する。パージ装置8としては、例えば、従来公知のものを使用できる(例えば、特開2008-246821号公報参照)。
【0055】
パージ装置8のプラテンローラ7側には、パージ装置8に隣接してワイパ部材20が配設されている。ワイパ部材20は、へら状に形成されており、キャリッジ5の移動に伴って、インクジェットヘッド3のノズル形成面を拭うものである。図1において、キャップ18は、水性インクの乾燥を防止するため、記録(画像印刷)が終了するとリセット位置に戻されるインクジェットヘッド3の複数のノズルを覆うものである。
【0056】
本例のインクジェット記録装置1においては、4つのインクカートリッジ2は、ヘッドユニット4と共に、1つのキャリッジ5に搭載されている。ただし、本発明は、これに限定されない。インクジェット記録装置1において、4つのインクカートリッジ2の各カートリッジは、ヘッドユニット4とは別のキャリッジに搭載されていてもよい。また、4つのインクカートリッジ2の各カートリッジは、キャリッジ5には搭載されず、インクジェット記録装置1内に配置、固定されていてもよい。これらの態様においては、例えば、4つのインクカートリッジ2の各カートリッジと、キャリッジ5に搭載されたヘッドユニット4とが、チューブ等により連結され、4つのインクカートリッジ2の各カートリッジからヘッドユニット4に前記水性インクが供給される。また、これらの態様においては、4つのインクカートリッジ2に代えて、ボトル形状の4つのインクボトルを用いてもよい。この場合、前記インクボトルには、外部から内部にインクを注入するための注入口が設けられていることが好ましい。
【0057】
このインクジェット記録装置1を用いた画像形成は、例えば、つぎのようにして実施される。
【0058】
まず、前記制御手段により、前記記録媒体の種類に応じて、前記処理剤付与手段による付与を制御する。具体的には、前記記録媒体が前記布帛の場合、前記処理剤を付与することを選択し、且つ、前記布帛の面積あたりの前記処理剤の付与量を、4.7mg/cm~50mg/cmとする。一方、前記記録媒体が、記録用紙等の布帛以外の記録媒体である場合、前記制御手段は、例えば、前記処理剤を付与するか否かを、ユーザに任意に選択させる。本発明において、前記処理剤の付与は、例えば、スプレー方式、スタンプ塗布、刷毛塗り、ローラ塗布、ディッピング(前記処理剤への浸漬)、インクジェット方式等により実施できる。前記処理剤の付与は、前記記録媒体の記録面(画像形成面)の全面でもよく、一部でもよい。一部に付与する場合、前記記録媒体の記録面(画像形成面)の少なくとも水性インクによる画像印刷部分が付与部となる。一部に付与する場合、付与部の大きさは、画像印刷部分よりも大きい方がよい。例えば、図3(a)に示すように、記録媒体Fに対し、文字(X)の画像を印刷する場合は、前記文字の線幅よりも大きな線幅で付与部30を形成するように前記処理剤を付与することが好ましい。また、図3(b)に示すように、記録媒体Fに対し、図柄の画像を印刷する場合は、前記図柄よりも大きな付与部40を形成するように前記処理剤を付与することが好ましい。
【0059】
本発明の画像形成方法は、前記記録媒体が前記布帛の場合、さらに、前記処理剤付与工程で付与した処理剤を乾燥させる乾燥工程を含んでもよい。前記乾燥工程は、例えば、後述の画像印刷工程前に実施してもよいし、前記画像印刷工程の後に実施してもよい。なお、本発明の画像形成方法において、前記乾燥工程の実施は、任意であり、前記記録媒体が前記布帛の場合においても、前記乾燥工程を実施しなくてもよい。
【0060】
前記乾燥は、例えば、風乾(自然乾燥)であってもよいし、市販のアイロン、ホットプレス機、ドライヤー、オーブン、ベルトコンベアオーブン等の乾燥手段を用いた乾燥であってもよい。前記乾燥時の温度は、例えば、130℃~220℃であり、前記乾燥の時間は、例えば、30秒~120秒である。前記乾燥温度は、例えば、乾燥雰囲気の温度でもよいし、前記乾燥手段の設定温度でもよい。
【0061】
図2に示すように、前記乾燥工程は、例えば、図1に示す本発明のインクジェット記録装置1が備えた、乾燥手段23を用いて実施してもよい。図2において、図1と同一部分には、同一符号を付している。なお、図2において、符号21及び符号24は、それぞれ、図1では図示を省略した供給トレイ及び排出トレイを示し、符号3Aは、インクジェットヘッド3の下面に形成された複数のノズルを示す。また、前記乾燥工程は、例えば、インクジェット記録装置外部で実施してもよい。
【0062】
前記乾燥工程においては、例えば、前記付与した処理剤の重量を、付与時における前記処理剤の付与量の50%以下まで減少させてもよく、30%以下まで減少させてもよい。前記乾燥工程は、例えば、前記処理剤中の溶剤(例えば、前記水、前記水溶性有機溶剤等)を揮発させる溶剤揮発工程、前記処理剤の重量を減少させる重量減少工程と言うこともできる。
【0063】
つぎに、インクジェットヘッド3から、前記記録媒体に、前記水性インクを吐出して画像を印刷する。このとき、前記処理剤付与工程において前記処理剤を付与することが選択された場合には、前記処理剤の付与部に、前記水性インクを吐出する。
【0064】
本例では、前記処理剤を付与することが選択された場合において、前記処理剤を、前記水性インクの吐出に先立ち前記記録媒体に付与する前処理剤として使用している。ただし、本発明は、これに限定されない。本発明では、前記記録媒体に前記水性インクを先に吐出した後、前記処理剤を付与してもよいし、前記記録媒体への前記処理剤の付与と前記水性インクの吐出とを同時に行ってもよい。
【0065】
このようにして画像が形成された前記記録媒体は、インクジェット記録装置1から排出される。本発明によれば、布帛への画像形成において、高い耐擦過性と手触りの変化の抑制とを両立可能で、メンテナンス性が高く、且つ、記録用紙への画像形成にも適用可能である。なお、図1においては、記録媒体Fの供給機構及び排出機構の図示を省略している。
【0066】
図1に示す装置では、シリアル型インクジェットヘッドを採用するが、本発明は、これに限定されない。前記インクジェット記録装置は、ライン型インクジェットヘッドを採用する装置であってもよい。
【0067】
本発明の画像形成方法は、前記記録媒体が前記布帛の場合、さらに、前記布帛を水で洗浄する洗浄工程を含み、前記洗浄工程を、前記画像印刷工程の後に実施してもよい。
【実施例
【0068】
つぎに、本発明の実施例について比較例と併せて説明する。なお、本発明は、下記の実施例及び比較例により限定及び制限されない。
【0069】
〔水性インクの調製〕
インク組成(表1)における、CAB-O-JET(登録商標)250C又は顔料分散液を除く成分を、均一に混合しインク溶媒を得た。つぎに、水に分散させたCAB-O-JET(登録商標)250C又は前記顔料分散液に、前記インク溶媒を加え、均一に混合した。その後、得られた混合物を、東洋濾紙(株)製のセルロールアセテートタイプメンブレンフィルタ(孔径3.00μm)でろ過することで、表1に示すインクジェット記録用水性シアンインクC1~C13を得た。
【0070】
【表1】
【0071】
〔処理剤の調製〕
処理剤組成(表2)の各成分を、均一に混合して、11種の処理剤1~11を得た。
【0072】
【表2】
【0073】
[実施例1~11及び比較例1~5]
〔インクセットの構成〕
表3に示すように、表1に示す水性シアンインクと、表2に示す処理剤とを組み合わせることで、実施例1~11及び比較例1~5のインクセットを得た。
【0074】
〔インクセットの評価〕
実施例1~11及び比較例1~5のインクセットについて、(a)布帛における耐擦過性評価、(b)記録用紙における耐擦過性評価、(c)インクのメンテナンス性評価及び(d)布帛における触感評価を、下記方法により実施した。
【0075】
(a)布帛における耐擦過性評価
布帛(A4サイズ(297mm×210mm)の綿)の記録面(画像形成面)の画像形成部分に、スプレーを用いて、処理剤を付与した。このとき、処理剤の付与量は、前記布帛全体に対して約2.5gとした。ついで、アイロンを用いて、160℃、60秒の条件で、前記布帛を乾燥させた。つぎに、前記布帛の記録面(画像形成面)の画像形成部分に水性シアンインク0.1gをスプレーで塗布した後、ドライヤーで乾燥することで、評価サンプルを作製した。前記評価サンプルの画像形成部分を綿棒で擦ったときに前記綿棒に付着するインク量を目視で観察し、下記評価基準に従って評価した。
【0076】
布帛における耐擦過性評価 評価基準
A:綿棒の擦過表面部において、約20%未満の面積に水性インクの付着が見られた。
B:綿棒に擦過表面部において、約20%~50%の面積に水性インクの付着が見られた。
C:綿棒に擦過表面部において、約50%を超える面積に水性インクの付着が見られた。
【0077】
(b)記録用紙における耐擦過性評価
コピー用紙(アスクル(株)製の「マルチペーパー スーパーホワイト+」)上に、バーコーター((株)安田精機製作所製のロッドNo.3)を用いて、水性シアンインクを塗布し、評価サンプルを作製した。前記評価サンプルを十分に乾燥させた後、インク塗布部を綿棒で擦ったときに前記綿棒に付着するインク量を目視で観察し、下記評価基準に従って評価した。
【0078】
記録用紙における耐擦過性評価 評価基準
A:綿棒の擦過表面部において、水性インクの付着が見られない、又は約10%未満の面積に水性インクの付着が見られた。
B:綿棒の擦過表面部において、水性インクの付着が見られ、付着面積が約10%~30%未満であった。
C:綿棒の擦過表面部において、水性インクの付着が見られ、付着面積が約30%以上であった。
【0079】
(c)インクのメンテナンス性評価
ブラザー工業(株)製のインクジェットプリンタ搭載デジタル複合機DCP-J4225Nのインク流路に水性シアンインクを充填し、2日間放置した後、ピンチェックパターンを印刷して、ピン抜けがあるかを確認した。さらに、パージを2回行い、再度ピンチェックパターンを印刷して、ピン抜けがあるかを確認し、下記評価基準に従って評価した。
【0080】
インクのメンテナンス性評価 評価基準
G :2日放置後にピン抜けが無い、又は、2回のパージでピン抜けが解消した。
NG:2回のパージ後もピン抜けが解消しなかった。
【0081】
(d)布帛における触感評価
(a)布帛における耐擦過性評価における評価サンプルと、処理剤の付与及び水性シアンインクの塗布を行っていない元の布帛と、を素手で触り、前記評価サンプルが、前記元の布帛と比べ、手触りが硬くなっているかを確認し、下記評価基準に従って評価した。
【0082】
布帛における触感評価 評価基準
A:手触り(硬さ)に変化が無かった。
B:手触りが若干硬くなったが、実用上問題ないレベルであった。
C:手触りが明らかに硬くなった。
【0083】
実施例1~11及び比較例1~5のインクセットの構成及び評価結果を、表3に示す。
【0084】
【表3】
【0085】
表3に示すとおり、実施例1~11では、布帛における耐擦過性、記録用紙における耐擦過性、インクのメンテナンス性及び布帛における触感の全ての評価結果が良好であった。
【0086】
処理剤に含まれる樹脂を、カチオン性ウレタンアクリルエマルションとした実施例1~4及び6~11では、当該樹脂を、カチオン性ポリアリルアミンとした実施例5と比べて、布帛における耐擦過性の評価結果が、さらに優れていた。
【0087】
(B+C)/A≦2を満たす実施例1及び3~11では、(B+C)/A=2.3である実施例2と比べて、布帛における触感の評価結果が、さらに優れていた。
【0088】
一方、0.9>(B+C)/Aであり、前記条件(1)を満たさない比較例1~4では、布帛における耐擦過性の評価結果が悪かった。また、B=9であり、前記条件(3)を満たさない比較例5では、インクのメンテナンス性の評価結果が悪かった。
【0089】
上記の実施形態及び実施例の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載し得るが、以下には限定されない。
【0090】
(付記1)
布帛及び記録用紙を含む記録媒体への画像の形成に用いられるインクセットであって、
インクジェット記録用水性インクと、処理剤と、を含み、
前記水性インクは、顔料と、樹脂と、水と、を含み、
前記処理剤は、樹脂と、水と、を含み、
下記条件(1)~(3)を満たすことを特徴とするインクセット。

条件(1):0.9≦(B+C)/A
条件(2):3≦A≦9
条件(3):B<9
A:前記水性インク全量における前記顔料の配合量(重量%)
B:前記水性インク全量における前記樹脂の配合量(重量%)
C:前記処理剤全量における前記樹脂の配合量(重量%)
【0091】
(付記2)
さらに、下記条件(4)を満たす、付記1記載のインクセット。

条件(4):(B+C)/A≦2
A:前記水性インク全量における前記顔料の配合量(重量%)
B:前記水性インク全量における前記樹脂の配合量(重量%)
C:前記処理剤全量における前記樹脂の配合量(重量%)
【0092】
(付記3)
前記顔料の平均粒子径が、110nm以下である、付記1又は2記載のインクセット。
【0093】
(付記4)
前記処理剤に含まれる前記樹脂が、カチオン性ポリマーである、付記1~3のいずれかに記載のインクセット。
【0094】
(付記5)
前記カチオン性ポリマーが、ウレタン構造を含むカチオン性ポリマーである、付記4記載のインクセット。
【0095】
(付記6)
前記ウレタン構造を含むカチオン性ポリマーが、エマルションである、付記5記載のインクセット。
【0096】
(付記7)
前記ウレタン構造を含むカチオン性ポリマーが、前記ウレタン構造以外の部分に、アクリル構造及びスチレン構造の少なくとも一方を含む、付記5又は6記載のインクセット。
【0097】
(付記8)
前記ウレタン構造を含むカチオン性ポリマーが、前記ウレタン構造以外の部分に、アクリル構造を含む、付記7記載のインクセット。
【0098】
(付記9)
前記ウレタン構造を含むカチオン性ポリマーにおいて、前記ウレタン構造部分の占める割合が、10%以上である、付記5~8のいずれかに記載のインクセット。
【0099】
(付記10)
前記ウレタン構造を含むカチオン性ポリマーにおいて、前記ウレタン構造部分の占める割合が、20%以上である、付記9記載のインクセット。
【0100】
(付記11)
前記ウレタン構造を含むカチオン性ポリマーの重量平均分子量が、1000~500000である、付記5~10のいずれかに記載のインクセット。
【0101】
(付記12)
前記ウレタン構造を含むカチオン性ポリマーの重量平均分子量が、3000~500000である、付記11記載のインクセット。
【0102】
(付記13)
前記ウレタン構造を含むカチオン性ポリマーにおいて、前記ウレタン構造が、脂肪族イソシアネートと、ポリエーテル系ポリオール又はポリエステル系ポリオールと、から得られたものである、付記5~12のいずれかに記載のインクセット。
【0103】
(付記14)
前記水性インクが、さらに、界面活性剤及び湿潤剤の少なくとも一方を含む、付記1~13のいずれかに記載のインクセット。
【0104】
(付記15)
付記1~14のいずれかに記載のインクセットを用いて、布帛及び記録用紙を含む記録媒体に画像を形成する画像形成方法であって、
前記記録媒体に前記水性インクをインクジェット方式により吐出して画像を印刷する画像印刷工程を含み、
前記記録媒体が前記布帛の場合、さらに、
前記布帛に前記処理剤を付与する処理剤付与工程を含み、
前記処理剤付与工程において、前記布帛の面積あたりの前記処理剤の付与量が、4.7mg/cm~50mg/cmである、
ことを特徴とする画像形成方法。
【0105】
(付記16)
さらに、前記付与した処理剤を乾燥させる乾燥工程を含む、付記15記載の画像形成方法。
【0106】
(付記17)
前記乾燥工程において、前記付与した処理剤の重量を、付与時における前記処理剤の付与量の50%以下まで減少させる、付記16記載の画像形成方法。
【0107】
(付記18)
前記乾燥工程において、前記付与した処理剤の重量を、付与時における前記処理剤の付与量の30%以下まで減少させる、付記17記載の画像形成方法。
【0108】
(付記19)
前記乾燥工程において、乾燥温度が130℃~220℃である、付記16~18のいずれかに記載の画像形成方法。
【0109】
(付記20)
前記処理剤付与工程、前記乾燥工程、前記画像印刷工程を、この順序で実施する、
付記16~19のいずれかに記載の画像形成方法。
【0110】
(付記21)
前記記録媒体が前記布帛の場合、さらに、前記布帛を水で洗浄する洗浄工程を含み、前記洗浄工程を、前記画像印刷工程の後に実施する、付記15~20のいずれかに記載の画像形成方法。
【0111】
(付記22)
インクセット収容部と、インク吐出手段と、処理剤付与手段と、制御手段と、を含み、
前記インクセット収容部に、付記1~14のいずれかに記載のインクセットが収容され、
前記インクセットを構成する前記水性インクが、前記インク吐出手段によって記録媒体に吐出され、
前記インクセットを構成する前記処理剤を、前記処理剤付与手段によって前記記録媒体に付与可能であり、
前記制御手段は、前記記録媒体の種類に応じて、前記処理剤付与手段による付与を制御することを特徴とするインクジェット記録装置。
【0112】
(付記23)
さらに、乾燥手段を含み、
前記乾燥手段は、前記処理剤が付与された後の前記記録媒体を乾燥する、付記22記載のインクジェット記録装置。
【産業上の利用可能性】
【0113】
以上のように、本発明のインクセットは、例えば、布帛への画像形成において、高い耐擦過性と手触りの変化の抑制とを両立可能で、メンテナンス性が高く、且つ、記録用紙への画像形成にも適用可能なものである。本発明のインクセットの用途は、特に限定されず、各種記録媒体への画像形成に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0114】
1 インクジェット記録装置
2 インクカートリッジ
3 インク吐出手段(インクジェットヘッド)
4 ヘッドユニット
5 キャリッジ
6 駆動ユニット
7 プラテンローラ
8 パージ装置
21 供給トレイ
23 乾燥手段
24 排出トレイ
図1
図2
図3