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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20221004BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
B41J2/14 305
B41J2/18
B41J2/14 607
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018029654
(22)【出願日】2018-02-22
(65)【公開番号】P2019142142
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2021-01-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125689
【弁理士】
【氏名又は名称】大林 章
(74)【代理人】
【識別番号】100128598
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 聖一
(74)【代理人】
【識別番号】100121108
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 太朗
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 弘
(72)【発明者】
【氏名】清水 稔弘
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-001211(JP,A)
【文献】特開昭62-174163(JP,A)
【文献】特開2008-200902(JP,A)
【文献】特開2014-117947(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0246867(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が供給される圧力室と、
前記液体を吐出するノズルと、
前記ノズルに連通する連通流路と、
前記圧力室を前記連通流路に接続する第1流路と、
前記第1流路とは異なる位置で、前記圧力室を前記連通流路に接続する第2流路と、
前記圧力室の圧力を変化させる駆動素子と、を備え、
前記第1流路は、少なくとも一部が平面視で前記駆動素子と重なり、
前記第2流路は、少なくとも一部が平面視で前記駆動素子と重なり、
前記第1流路と前記第2流路とでは、互いに流路断面積が異なる部分がある
液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記第1流路と前記第2流路とでは、前記圧力室に接続する圧力室側流路口の流路断面積が異なる
請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記第1流路の方が前記第2流路よりも前記ノズルに近い位置にあり、
前記圧力室側流路口の流路断面積は、前記第1流路の方が前記第2流路よりも大きい
請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記第1流路においては、前記圧力室側流路口の流路断面積の方が、前記連通流路に接続する連通流路側流路口の流路断面積よりも大きく、
前記第2流路においては、前記圧力室側流路口の流路断面積の方が、前記連通流路に接続する連通流路側流路口の流路断面積よりも小さい
請求項3に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記第1流路は、前記圧力室側流路口から前記連通流路側流路口に向けて流路断面積が小さくなるテーパー形状であり、
前記第2流路は、前記圧力室側流路口から前記連通流路側流路口に向けて流路断面積が大きくなるテーパー形状である
請求項4に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記第1流路のうち前記連通流路側には、前記圧力室側流路口よりも流路径が小さい絞り部があり、
前記第2流路のうち前記圧力室側には、前記連通流路側流路口よりも流路径が小さい絞り部がある
請求項4に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記第1流路は、平面視で前記ノズルに重なる
請求項1から請求項6の何れかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記第1流路は、全部が平面視で前記駆動素子と重なり、
前記第2流路は、一部が平面視で前記駆動素子と重なり、他部が前記駆動素子と重ならない
請求項1から請求項7の何れかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
複数の第1吐出部と、
複数の第2吐出部と、を具備し、
前記第1吐出部は、前記圧力室と前記ノズルと前記連通流路と前記第1流路と前記第2流路とを備え、前記第1流路と前記第2流路とが第1方向に並べて配置され、前記第1流路に近い方にノズルが配置され、
前記第2吐出部は、前記圧力室と前記ノズルと前記連通流路と前記第1流路と前記第2流路とを備え、前記第1流路と前記第2流路とが前記第1方向に並べて配置され、前記第2流路に近い方にノズルが配置され、
前記第1方向に交差する第2方向に、前記第1吐出部と前記第2吐出部とが交互に配列される
請求項1または請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項10】
液体が供給される圧力室と、
前記液体を吐出するノズルと、
前記ノズルに連通する連通流路と、
前記圧力室を前記連通流路に接続する第1流路と、
前記第1流路とは異なる位置で、前記圧力室を前記連通流路に接続する第2流路と、
前記圧力室の圧力を変化させる駆動素子と、を備え、
前記第1流路と前記第2流路とでは、互いに流路断面積が異なる部分があり、
前記第1流路の方が前記第2流路よりも前記ノズルに近い位置にあり、
前記圧力室に接続する圧力室側流路口の流路断面積は、前記第1流路の方が前記第2流路よりも大きい
液体吐出ヘッド。
【請求項11】
液体が供給される圧力室と、
前記液体を吐出するノズルと、
前記ノズルに連通する連通流路と、
前記圧力室を前記連通流路に接続する第1流路と、
前記第1流路とは異なる位置で、前記圧力室を前記連通流路に接続する第2流路と、
前記圧力室の圧力を変化させる駆動素子と、を備え、
前記第1流路と前記第2流路とでは、互いに流路断面積が異なる部分があり、
前記第1流路の方が前記第2流路よりも前記ノズルに近い位置にあり、
前記第1流路は、前記圧力室に接続する圧力室側流路口から前記連通流路に接続する連通流路側流路口に向けて流路断面積が小さくなるテーパー形状であり、
前記第2流路は、前記圧力室側流路口から前記連通流路側流路口に向けて流路断面積が大きくなるテーパー形状である
液体吐出ヘッド。
【請求項12】
液体が供給される圧力室と、
前記液体を吐出するノズルと、
前記ノズルに連通する連通流路と、
前記圧力室を前記連通流路に接続する第1流路と、
前記第1流路とは異なる位置で、前記圧力室を前記連通流路に接続する第2流路と、
前記圧力室の圧力を変化させる駆動素子と、
複数の第1吐出部と、
複数の第2吐出部と、を備え、
前記第1流路と前記第2流路とでは、互いに流路断面積が異なる部分があり、
前記第1吐出部は、前記圧力室と前記ノズルと前記連通流路と前記第1流路と前記第2流路とを備え、前記第1流路と前記第2流路とが第1方向に並べて配置され、前記第1流路に近い方にノズルが配置され、
前記第2吐出部は、前記圧力室と前記ノズルと前記連通流路と前記第1流路と前記第2流路とを備え、前記第1流路と前記第2流路とが前記第1方向に並べて配置され、前記第2流路に近い方にノズルが配置され、
前記第1方向に交差する第2方向に、前記第1吐出部と前記第2吐出部とが交互に配列される
液体吐出ヘッド。
【請求項13】
請求項1から請求項12の何れかに記載の液体吐出ヘッドを備える
液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク等の液体を吐出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電素子などの駆動素子によって圧力室内のインクなどの液体をノズルから吐出させる液体吐出ヘッドが知られている。例えば特許文献1では、複数の圧電素子が配列する方向に各圧電素子に対応して複数の圧力室を配列し、複数の圧力室を2つの循環用共通流路(第1流路および第2流路)に連通するヘッドが開示されている。このヘッドでは、2つの循環用共通流路同士が連通されることで、複数の圧力室と2つの循環用共通流路との間で液体が循環する流れを形成できる。2つの循環用共通流路を連通する部分にフィルターを設けることで、循環する液体に混入する気泡や異物をフィルターで除去することによって、ノズルの吐出不良を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-117947公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1の構成では、複数の圧力室内の液体が2つの循環用共通流路を介して循環させるため、液体が循環する流路が長くなるから循環効率が低下する。循環効率が低下するほど、圧力室に連通するノズル内のメニスカス(ノズル内で露出している液体の自由表面)で乾燥が進み、液体の増粘が進行してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本発明の好適な態様に係る液体吐出ヘッドは、液体が供給される圧力室と、液体を吐出するノズルと、ノズルに連通する連通流路と、圧力室を連通流路に接続する第1流路と、第1流路とは異なる位置で、圧力室を連通流路に接続する第2流路と、圧力室の圧力を変化させる駆動素子と、を備え、第1流路と第2流路とでは、互いに流路断面積が異なる部分がある。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の第1実施形態に係る液体吐出装置の構成図である。
図2】液体吐出装置の機能的な構成図である。
図3】液体吐出部の流路構成の模式図である。
図4】液体吐出部の断面図である。
図5】圧電素子の平面図と吐出部の断面図である。
図6】吐出用駆動パルスを示す図である。
図7】循環用駆動パルスを示す図である。
図8】循環用駆動パルスによる振動板の変位を示す図である。
図9】吐出用駆動パルスの印加による吐出部の作用説明図である。
図10】循環用駆動パルスの印加による吐出部の作用説明図である。
図11】第1変形例に係る吐出部の構成を示す断面図である。
図12】第2変形例に係る吐出部の構成を示す断面図である。
図13】第2実施形態に係る液体吐出装置の構成図である。
図14】第2実施形態に係る液体吐出部の流路構成の模式図である。
図15図14の吐出部266Aの構成を示す断面図である。
図16図14の吐出部266Bの構成を示す断面図である。
図17】吐出用駆動パルスの印加による吐出部266Bの作用説明図である。
図18】循環用駆動パルスの印加による吐出部266Bの作用説明図である。
図19】第3実施形態に係る液体吐出ヘッドの液体吐出部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る液体吐出装置10の部分的な構成図である。本実施形態の液体吐出装置10は、液体の例示であるインクを媒体12に吐出するインクジェット方式の印刷装置である。媒体12は、典型的には印刷用紙であるが、樹脂フィルムまたは布帛等の任意の材質の印刷対象を媒体12とすることもできる。図1に示す液体吐出装置10は、制御ユニット20と搬送機構22とキャリッジ24と液体吐出ヘッド26とを具備する。図1では、1個の液体吐出ヘッド26をキャリッジ24に搭載した場合を例示しているが、これに限られず、複数個の液体吐出ヘッド26をキャリッジ24に搭載してもよい。液体吐出装置10にはインクを貯留する液体容器14(カートリッジ)が装着される。
【0008】
液体容器14は、液体吐出装置10の本体に着脱可能な箱状の容器からなるインクタンクタイプのカートリッジである。なお、液体容器14は、箱状の容器に限られず、袋状の容器からなるインクパックタイプのカートリッジであってもよい。また、インクを補充可能なインクタンクを液体容器14とすることもできる。液体容器14に貯留されるインクは、黒色インクであってもよく、カラーインクであってもよい。液体容器14のインクは、ポンプ(図示略)によって液体吐出ヘッド26に供給(圧送)される。
【0009】
制御ユニット20は、例えばCPU(Central Processing Unit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)等の制御装置202と半導体メモリー等の記憶装置203とを含んで構成され、記憶装置203に記憶された制御プログラムを制御装置202が実行することで液体吐出装置10の各要素を統括的に制御する。図1に示すように、媒体12に形成すべき画像を表す印刷データGがホストコンピューター等の外部装置(図示略)から制御ユニット20に供給される。制御ユニット20は、印刷データGで指定された画像が媒体12に形成されるように液体吐出装置10の各要素を制御する。
【0010】
搬送機構22は、制御ユニット20による制御のもとで媒体12をY方向に搬送する。液体吐出ヘッド26は、略箱状のキャリッジ24に搭載され、液体容器14から供給されるインクを制御ユニット20による制御のもとで媒体12に吐出する。制御ユニット20は、Y方向に交差するX方向に沿ってキャリッジ24を往復させる。搬送機構22による媒体12の搬送とキャリッジ24の反復的な往復とに並行して液体吐出ヘッド26が媒体12にインクを吐出することで媒体12の表面に所望の画像が形成される。なお、液体容器14を液体吐出ヘッド26とともにキャリッジ24に搭載することも可能である。
【0011】
液体吐出ヘッド26の吐出面260(媒体12との対向面)には、ノズル列が配置される。ノズル列は、Y方向に沿って直線状に配列された複数のノズルNの集合である。ノズルNからは、液体容器14から供給されるインクが吐出される。なお、ノズル列の数や配置は、例示したものに限られず、液体吐出ヘッド26の吐出面260に、2つ以上のノズル列を配置してもよく、複数のノズル列を例えば千鳥配列またはスタガ配列とすることも可能である。X-Y平面(媒体12の表面に平行な平面)に垂直な方向をZ方向と表記する。
【0012】
図2は、液体吐出装置10の機能的な構成図である。図2では、搬送機構22やキャリッジ24等の図示を便宜的に省略している。制御装置202が制御プログラムを実行することで、制御装置202が駆動信号生成部40と制御部50として機能する。制御部50は、駆動信号生成部40を制御する。記憶装置203には、データテーブルCが記憶されている。
【0013】
駆動信号生成部40は、駆動信号COMを生成する。駆動信号COMは、所定の周期ごとに駆動パルス(駆動波形)を含む電圧信号である。すなわち駆動信号COMは、例えば後述する図6図7に示すように、基準電位VMに対して電位差を有する電位を含む電圧信号である。駆動パルスの波形形状は任意である。例えば駆動パルスの波形形状を変えることでノズルNから吐出されるインクの吐出重量を変えることができる。また、駆動信号COMの1周期Tに複数の駆動パルスを含む構成や、波形が相違する複数の駆動信号COMを利用する構成も採用され得る。駆動信号COMを生成するためのデータ(例えば電位データ)は、データテーブルCに記憶されている。制御部50は、各駆動信号COMを生成する場合には、駆動信号COMの波形に対応するデータをデータテーブルCから読み出して、駆動信号生成部40によって駆動信号COMを生成する。
【0014】
図2に示すように、液体吐出ヘッド26は、駆動部262と液体吐出部264を具備する。駆動部262は、制御ユニット20による制御のもとで液体吐出部264を駆動する。液体吐出部264は、液体容器14から供給されるインクを複数のノズルNから媒体12に吐出する。液体吐出部264は、複数のノズルNに対応する複数の吐出部266(吐出セグメント)を包含する。各吐出部266は、駆動部262から供給される駆動信号Vに応じてノズルNからインクを吐出したり、インクを吐出しない程度に吐出部266のインクを微振動させたりすることができる。
【0015】
制御ユニット20が受信した印刷データGに応じてインクを吐出する場合は、印刷データGに応じて駆動信号生成部40が生成した駆動信号COMと、印刷データGに応じてインクの吐出の有無を指示する選択信号SIとが制御ユニット20から駆動部262に供給される。駆動部262は、駆動信号COMと選択信号SIとに応じた駆動信号Vを吐出部266ごとに生成して複数の吐出部266に並列に出力する。具体的には、駆動部262は、複数の吐出部266のうち選択信号SIがインクの吐出を指示する吐出部266には駆動信号COMを駆動信号Vとして供給し、選択信号SIがインクの非吐出を指示する吐出部266には基準電位VMを駆動信号Vとして供給する。
【0016】
図3は、液体吐出ヘッド26をZ方向の負側(媒体12とは反対側)からみた場合の液体吐出部264の流路構成の模式図である。図4は、任意の1個の吐出部266(吐出セグメント)に着目した液体吐出部264の断面図であり、液体吐出部264をX-Z平面で切断した場合の断面図である。図5は、吐出部266を拡大した断面図と圧電素子74の平面図である。図5の平面図(図5の上側の図)は、圧電素子74をZ方向から見たものであり、図5の断面図(図5の下側の図)は、吐出部266をX-Z平面で切断したものである。
【0017】
図3および図4に示すように液体吐出部264は、一方向(Y方向)に配列した複数の吐出部266を備える。1個の吐出部266は、圧電素子74と振動板73と圧力室SCと連通流路772と第1流路716と第2流路718とノズルNとを包含する部分で構成される。
【0018】
図4に示すように、液体吐出部264は、流路基板71の一方側に圧力室基板72と振動板73と圧電素子74と支持体75とが配置されるとともに、他方側に連通板77とノズル板76が配置された構造体である。流路基板71と圧力室基板72と連通板77とノズル板76とは例えばシリコンの平板材で形成され、支持体75は例えば樹脂材料の射出成形で形成される。複数のノズルNはノズル板76に形成される。ノズル板76のうち媒体12に対向する面が、液体吐出ヘッドの吐出面260を構成する。
【0019】
支持体75には、共通液室SR(リザーバー)を構成する凹部752が形成される。具体的には、凹部752と流路基板71とで囲まれる空間が、導入流路754を介して液体容器14から供給されるインクを貯留する共通液室SRとして機能する。
【0020】
圧力室基板72には、圧力室SC(キャビティ)を構成する開口部722と分岐流路714とがノズルNごとに形成される。分岐流路714は、共通液室SRから分岐して、共通液室SRを各開口部722に連通する。図3および図4では、分岐流路714を、圧力室SCよりもY-Z平面の流路面積積が小さい絞り流路として構成した場合を例示する。ただし、分岐流路714を絞り流路とせずに、圧力室SCのY-Z平面の流路面積積と同等になるようにしてもよい。インクは共通液室SRから圧力室SCへ圧送されるので、圧力室SCから共通液室SRへインクが逆流し難い構成であるが、分岐流路714を絞り流路とすることで、共通液室SRへのインクの逆流抑制効果を高めることができる。
【0021】
振動板73は、圧力室基板72のうち流路基板71とは反対側の表面に設置された弾性的に振動可能な板状部材である。振動板73は、圧力室基板72に積層して接合され、圧力室SCの壁面の一部(典型的には上面)を構成する。なお、本実施形態では、圧力室基板72と振動板73とを別々に形成する場合を例示するが、圧力室基板72と振動板73とを一体に形成してもよい。例えば所定の厚みの板状部材のうち開口部722に対応する領域について厚み方向の一部を選択的に除去することで、圧力室基板72と振動板73とを一体に形成することが可能である。
【0022】
以上の構成によれば、圧力室基板72の各開口部722の内側で振動板73と流路基板71とに挟まれた空間が、共通液室SRから分岐流路714を介して供給されるインクが充填される圧力室SCとして機能する。
【0023】
連通板77には、ノズルNに連通する連通流路772がノズルNごとに形成される。流路基板71には、圧力室SCを連通流路772に接続する第1流路716と、第1流路716とは異なる位置で圧力室SCを連通流路772に接続する第2流路718とが形成される。第1流路716と第2流路718は、圧力室SCごとに形成された一対の貫通孔である。本実施形態の連通流路772は、圧力室SCとほぼ同様の形状であり、X方向に長尺である。平面視において圧力室SCに一部または全部が重なるように配置される。本実施形態の圧力室SCと連通流路772の形状は、平面視で(Z方向からみて)矩形(長方形、正方形など)である。ただし、圧力室SCと連通流路772の形状は、例示したものに限られず、平行四辺形、楕円形、円形などの形状であってもよい。
【0024】
第1流路716と第2流路718とはそれぞれ、連通流路772または圧力室SCの延在方向であるX方向に交差するZ方向に延出し、連通流路772と圧力室SCとの間に配置される。このような第1流路716と第2流路718によって、ノズルNの連通流路772と圧力室SCとの間で循環するインクの流れを形成できる。なお、第1流路716と第2流路718は、Z方向に交差する方向に傾斜していてもよく、また平面視において連通流路772と圧力室SCとの間から一部がはみ出て配置されていてもよい。
【0025】
振動板73のうち圧力室基板72とは反対側の表面にはノズルNごとに圧電素子74が形成される。本実施形態の圧力室SCは、その配列方向であるY方向(第2方向の例示)の長さよりも配列方向に交差するX方向(第1方向の例示)の長さの方が長い。このような圧力室SCの形状に合わせて、圧電素子74も圧力室SCの配列方向であるY方向の長さよりも圧力室SCの配列方向に交差するX方向の長さの方が長い。
【0026】
図5に示すように、圧電素子74は、相互に対向する第1電極742と第2電極746との間に圧電体層744を介在させた積層体である。圧電素子74は、圧力室SCの圧力を変化させる駆動素子の例示である。第1電極742および第2電極746の一方に駆動信号Vが供給され、所定の基準電位VMが他方に供給されることで、第1電極742と第2電極746と圧電体層744とが平面視で(Z方向から見て)重なる能動領域が変形して振動する。この能動領域が圧電素子74として機能する。
【0027】
具体的には図5の平面図に示すように、本実施形態の第1電極742は、複数の圧電素子74に渡って連続するように振動板73の表面に形成され、複数の圧電素子74の共通電極になっている。第1電極742の表面(振動板73とは反対側の表面)には、圧電素子74ごとに個別に、圧電体層744と第2電極746とが形成される。各第2電極746は、第1電極742に対して振動板73とは反対側に積層され、各圧電体層744は、第1電極742と第2電極746とに挟まれるように積層される。
【0028】
各第2電極746は、Y方向に沿って延在する電極である。圧電体層744と第2電極746とは、圧力室SCごとに形成される。第1電極742と各第2電極746はそれぞれ、リード電極(図示略)を介して駆動部262に電気的に接続される。このような構成の本実施形態の圧電素子74では、共通電極である第1電極742に基準電位VMが供給され、個別電極である第2電極746に駆動信号Vが供給される。
【0029】
なお、本実施形態の圧電素子74では、第1電極742を複数の圧電素子74の共通電極にして、第2電極746を複数の圧電素子74に対応する個別電極にした場合を例示したが、この構成に限られず、第2電極746を複数の圧電素子74の共通電極にして、第1電極742を複数の圧電素子74に対応する個別電極にしてもよい。
【0030】
図6および図7は、本実施形態の圧電素子74を駆動する駆動パルスの具体例を示す図である。図6は、インクをノズルNから吐出させるための吐出用駆動パルスW1の例示であり、図7は、インクをノズルNから吐出させずに循環させるための循環用駆動パルスW2の例示である。図8は、循環用駆動パルスW2による振動板73の変位の例示である。図9は、図6の吐出用駆動パルスW1で圧電素子74を駆動した場合の吐出部266の作用説明図である。図10は、図7の循環用駆動パルスW2で圧電素子74を駆動した場合の吐出部266の作用説明図である。
【0031】
図6の吐出用駆動パルスW1は、媒体12への印刷時にインクをノズルNから吐出する動作、液体吐出ヘッド26のメンテナンス時にインクをノズルNから吐出して増粘インクや付着物を除去するフラッシング動作を行う場合などに用いられる。図6の吐出用駆動パルスW1は、基準電位VMに対する高位側電位VHおよび低位側電位VLを有する。
【0032】
吐出用駆動パルスW1によれば、基準電位をVMとすると、基準電位VMよりも電位を低くすることで、ノズルN内のメニスカスを圧力室SC側へ引き込むことができる。逆に、基準電位VMよりも電位を高くすることで、ノズルN内のメニスカスを圧力室SCとは反対側のノズルNの開口部(インクが吐出されるノズルNの開口部)側に押し出してインクを吐出できる。なお、吐出用駆動パルスW1の波形は図6に示すものに限られない。吐出用駆動パルスW1a、W1bの波形は、例えばノズルN内のメニスカスを圧力室SC側へ引き込む場合には基準電位VMよりも電位が高く、逆にノズルN内のメニスカスをノズルNの開口部側に押し出す場合には基準電位VMよりも電位が低い形状であってもよい。
【0033】
吐出用駆動パルスW1による駆動信号Vの供給により圧電素子74が変形することで振動板73が振動し、圧力室SCの圧力が変化する。すると、図9の矢印に示すように、圧力室SCのインクは、第1流路716および第2流路718から連通流路772に流れ、ノズルNから吐出される。吐出用駆動パルスW1の場合には、ノズルNからインクが吐出されるので、第1流路716および第2流路718には、圧力室SCに戻って循環する流れよりも、ノズルNに向かう流れが発生し易い。このため、連通流路772には、第1流路716と第2流路718の両方からノズルNに向かう流れが生じ易くなるので、第1流路716および第2流路718の一方のみを備える場合に比較して、インクの吐出量を増大できる。
【0034】
なお、吐出用駆動パルスW1は、図6に例示したものに限られない。例えば吐出用駆動パルスW1の波形の傾き、電位の最大値、電位の最小値、波形の振幅、波形の周波数の少なくとも1つ以上を変えることによって、ノズルNから吐出されるインクの吐出量を変えることができる。例えば波形の振幅を大きくすることで、インクの吐出量を増大できる。また、1周期Tに含まれる吐出用駆動パルスW1の数や波形の形状を変えることによって、媒体12に着弾されるインクのドットサイズを変えることもできる。
【0035】
図7の循環用駆動パルスW2は、インクをノズルNから吐出させずに各吐出部266内で循環させる場合に用いられる。例えば液体吐出ヘッド26をX方向に移動させながら、1パスごとにインクの吐出を行う場合に、パスとパスとの間で循環用駆動パルスW2により圧力室SCを振動させてインクを循環させる。また、印刷ジョブと印刷ジョブとの間でインクを循環させるようにしてもよく、メンテナンス時にインクを循環させてもよい。
【0036】
ノズルN内に形成されるメニスカスは、インクと空気との気液界面である。そのため、メニスカスでは乾燥により水分などの溶媒の蒸発が進み、インクに含まれる溶媒と溶質とのバランスが崩れ、インクの増粘や溶質の析出などが進行し易い。インクの増粘や溶質の析出などが進むと、インクがノズルNから吐出され難くなり、吐出不良やノズルNの目詰まりの原因となる虞がある。本実施形態では、ノズルNの連通流路772と圧力室SCとの間で、すなわちノズルNの近傍でインクを循環させることができるので、ノズルNのメニスカスにおけるインクの乾燥と増粘を効果的に抑制できる。また、上記フラッシング動作によって増粘インクをノズルNから排出させる場合に比較してインクの無駄な消費を抑制できる。
【0037】
循環用駆動パルスW2は、基準電位VMに対する高位側電位VHおよび低位側電位VLを有する。循環用駆動パルスW2は、吐出用駆動パルスW1よりも振幅が小さい波形である。このような波形によれば、周期Tを繰り返して複数の循環用駆動パルスW2を印加することで圧力室SCを微振動させることができるので、ノズルNからインクが吐出されずに循環する流れが形成され易くなる。図7は、1周期Tに1つの循環用駆動パルスW2を含む場合を例示しているが、1周期Tに複数の循環用駆動パルスW2を含むようにしてもよい。
【0038】
循環用駆動パルスW2を圧電素子74に印加することによって圧電素子74が変形し微振動することで、図8に示すように振動板73が微振動するので、圧力室SCの圧力を微振動させることができる。すると、図10の矢印に示すように、例えば圧力室SCのインクが第1流路716を通って連通流路772に流れると、ノズルNからインクが吐出されないので、第2流路718を通って圧力室SCに戻るというインクの流れ(Y方向を中心とする反時計回りの流れ)が発生する。これにより、ノズルNの連通流路772と圧力室SCとの間で循環するインクの流れを形成できるので、インクの乾燥と増粘を抑制できる。
【0039】
なお、循環用駆動パルスW2は、図7に例示したものに限られない。例えば図7では、高位側電位VHおよび低位側電位VLの間の電位を基準電位VMとした場合を例示したが、図7の低位側電位VLを基準電位VMとしてもよい。また、循環用駆動パルスW2の波形の傾き、電位の最大値、電位の最小値、波形の振幅、波形の周波数の少なくとも1つ以上を変えたり、1周期Tに含まれる循環用駆動パルスW2の数や波形の形状を変えたりすることによって、循環するインクの流れの流速やインクの振動周波数を変えることもできる。またインクの種類に応じて、循環用駆動パルスW2の波形や1周期Tに含まれる循環用駆動パルスW2の数を変えることもできる。例えば顔料系インクのような凝集性の高いインクの方が、染料系インクのような凝集性の低いインクよりも、ノズルNのメニスカス近傍で増粘し易い。したがって、高凝集性のインクの場合の方が、低凝集性のインクの場合よりも循環効率が高くなるように、循環用駆動パルスW2の波形の形状や1周期Tに含まれる循環用駆動パルスW2の数を変えるようにしてもよい。
【0040】
このように、本実施形態によれば、第1流路716と第2流路718によって、ノズルNの連通流路772と圧力室SCとの間で、循環するインクの流れを形成できる。したがって、1つの吐出セグメントである吐出部266の中、すなわち圧力室SCごとの個別流路の中で循環するインクの流れを形成できる。このような本実施形態によれば、上述した特許文献1のように圧力室SCごとではなく、複数の圧力室SCに連通する循環用共通流路を介してインクを循環させる場合に比較して、インクが循環する流路の長さを極めて短くできるので、インクを循環させる際には流路抵抗が低減されるから、インクの循環効率を高めることができる。
【0041】
しかも本実施形態ではノズルNのメニスカスに近い連通流路772において吐出部266ごとに循環するインクの流れを形成できるので、ノズルNのメニスカスから遠い循環用共通流路を介してインクを循環させる場合に比較して、メニスカスからのインクの乾燥とそれによる増粘を抑制する効果が極めて高い。また、本実施形態では、複数の圧力室SCを連通する循環用共通流路を備えなくても、圧力室SCごとに吐出部266の個別流路の中でインクを循環させることができる。したがって、インクをノズルNから吐出する際に、圧力室SCのインクの一部が循環用共通流路に排出されてしまうということもないので、循環用共通流路を備える場合に比較して、ノズルNからのインクの吐出量の低減を抑制できる。
【0042】
本実施形態のような構成の液体吐出ヘッド26では、圧力室SCの配列方向であるY方向における圧力室SCの長さを短くするほど、圧力室SCの配列方向に液体吐出ヘッド26を小型化できる。ところが、圧力室SCの長さを短くするほど、圧力室SCの容量も小さくなる。そのため、もし圧力室SCとノズルNとを第1流路716と第2流路718の一方だけで接続して圧力室SCを微振動させる場合には、圧力室SCの微振動がノズルNまで伝わり難くなってしまう。これに対して、本実施形態では、ノズルNの連通流路772と圧力室SCとの間を第1流路716と第2流路718によって接続するので、圧力室SCの容量を小さくしても、ノズルNの近傍で循環するインクの流れを形成し易い。したがって、本実施形態の構成によれば、圧力室SCの配列方向の長さを短くしても、ノズルNの近傍でインクを循環させることができるので、インクの増粘を抑制しつつ、液体吐出ヘッド26を圧力室SCの配列方向に小型化できる。
【0043】
ところで、もし圧力室SC側から連通流路772側に渡って、第1流路716と第2流路718の流路断面積が同等の場合には、図10の矢印とは逆向きの流れ(Y方向を中心とする時計回りの流れ)、すなわち圧力室SCのインクが第2流路718を通って連通流路772に流れ、第2流路718を通って圧力室SCに戻るというインクの流れも発生し得る。このような流れによるインクの循環でもインクの増粘を抑制できるが、連通流路772と圧力室SCとの間で逆向きに循環するインクの流れが発生し得る構成よりも、一方向に循環するインクの流れが形成され易い構成の方が、短時間で効率よく循環するインクの流れを形成できる。
【0044】
そこで、本実施形態では、例えば図5に示すように、第1流路716と第2流路718とでは、互いに流路断面積が異なる部分があるように構成することで、一方向に循環するインクの流れが形成され易くなるようにしている。ここでの流路断面積は、第1流路716と第2流路718とのそれぞれが延びる方向に交差する流路断面の断面積であり、第1流路716と第2流路718とをそれぞれ、X-Y平面で切断した場合の流路断面の断面積である。
【0045】
このように、第1流路716と第2流路718とで、互いに流路断面積が異なる部分があると、圧電素子74による圧力室SCの振動の伝わり方を異ならせることができる。そして、圧力室SCのインクは、第1流路716と第2流路718とのうち圧力室SCの振動が伝わり易い方に流れ易くなる。したがって、圧力室SCのインクは、第1流路716と第2流路718のうち、振動が伝わり易い方から連通流路772に流れ、他方から圧力室SCにインクが戻るという流れが形成され易くなる。このように、ノズルNの連通流路772と圧力室SCとの間で一方向に循環するインクの流れが形成され易くなる。したがって、第1流路716と第2流路718とで流路断面積が同等の場合に比較して、ノズルNの連通流路772と圧力室SCとの間で循環するインクの流れを短時間で効率よく形成でき、インクの循環効率を高めることができる。
【0046】
具体的には図5に示すように、第1流路716のうち圧力室SCに接続する圧力室側流路口716aの流路断面積A1は、第2流路718のうち圧力室SCに接続する圧力室側流路口718aの流路断面積A2よりも大きい。このように、第1流路716と第2流路718とで圧力室SCに接続する圧力室側流路口の流路断面積が異なるようにすることで、インクを循環させる際に、圧力室SCのインクは、流路断面積が大きい第1流路716に流れ出し易く、流路断面積の小さい第2流路718から圧力室SCにインクが流れ込み易くなる。したがって、第1流路716が往路で第2流路718が復路となって、ノズルNの連通流路772と圧力室SCとの間で一方向に循環するインクの流れを生じさせ易い。
【0047】
また、本実施形態の吐出部266では、第1流路716の方が第2流路718よりもノズルNに近い位置にある。図5では、第1流路716が平面視でノズルNに重なる場合を例示する。このように、ノズルNに近い第1流路716の方が第2流路718よりも圧力室側流路口の流路断面積が大きいから、ノズルNからインクを吐出する際に、圧力室SCからのインクは、ノズルNに近い第1流路716の方に流れ込み易くなるので、ノズルNからのインクの吐出量を増大できる。なお、ノズルNの位置は、図5の例示に限られず、連通流路772に対してどの位置にノズルNが連通していてもよい。例えば平面視で第2流路718に重なるようにノズルNが配置されていてもよく、平面視で連通流路772の中央にノズルNが連通されていてもよい。本実施形態によれば、連通流路772と圧力室SCとの間でインクを循環させることができるから、連通流路772に対してどの位置にノズルNが連通していても、ノズルNのメニスカスにおけるインクの乾燥と増粘を効果的に抑制できる。
【0048】
図5の第1流路716と第1流路718とはそれぞれ、圧力室SCに接続する圧力室側流路口716aから連通流路772に接続する連通流路側流路口716bまで流路断面積が変わらない。このような構成に限られず、例えば図11の第1変形例に係る吐出部266または図12の第2変形例に係る吐出部266に示すように、第1流路716および第2流路718のそれぞれについて、圧力室側流路口と連通流路側流路口とで流路断面積が異なるようにしてもよい。
【0049】
図11の吐出部266または図12の吐出部266では、第1流路716のうち圧力室側流路口716aの流路断面積A1の方が、連通流路772に接続する連通流路側流路口716bの流路断面積B1よりも大きい。これにより、圧力室SCのインクは第1流路716を通って連通流路772に流れ易くなる。他方、第2流路718は、圧力室側流路口718aの流路断面積A2の方が、連通流路772に接続する連通流路側流路口718bの流路断面積B2よりも小さい。これにより、連通流路772のインクは第2流路718を通って圧力室SCに戻り易くなる。
【0050】
図11または図12の構成によれば、インクを循環させる際には、圧力室SCのインクは第1流路716を通って連通流路772に流れ、連通流路772のインクは第2流路718を通って圧力室SCに戻るという一方向に循環するインクの流れが形成され易くなるので、インクの循環効率を高めることができる。
【0051】
なお、図11の第1流路716は、圧力室側流路口716aから連通流路側流路口716bに向けて流路断面積が小さくなるテーパー形状である。これにより、圧力室SCから第1流路716を通る液体の流速を高めることができる。第2流路718は、圧力室側流路口718aから連通流路側流路口718bに向けて流路断面積が大きくなるテーパー形状である。これにより、連通流路772から第2流路718を通るインクの流速を高めることができる。したがって、ノズルNの連通流路772と圧力室SCとの間で循環するインクの流速を高めることができるので、循環効率を高めることができる。
【0052】
また、図12は、第1流路716のうち連通流路772側には、圧力室側流路口716aよりも流路径が小さい絞り部716cがあるから、圧力室SCから第1流路716を通るインクの流速を高めることができる。他方、第2流路718のうち圧力室SC側には、連通流路側流路口718bよりも流路径が小さい絞り部718cがあるから、連通流路772から第2流路718を通るインクの流速を高めることができる。したがって、循環するインクの流速を高めることができるので、ノズルNの連通流路772と圧力室SCとの間で循環効率を高めることができる。
【0053】
また、本実施形態では、圧電素子74が第1流路716と第2流路718に平面視で重なる場合を例示したが、これに限られるものではない。例えば圧電素子74は、第1流路716に平面視で重なり、第2流路718に平面視で重なる部分と重ならない部分があるように構成してもよい。例えば平面視において圧電素子74が第1流路716から第2流路718の途中まで延在するように構成してもよい。このような構成によれば、圧電素子74による圧力室SCの振動が第2流路718よりも第1流路716に大きく伝わり易い。そのため、圧力室SCのインクは、第1流路716と第2流路718のうち圧力室SCの振動が伝わり易い第1流路716の方に流れ易くなる。したがって、インクを循環させる際には、ノズルNの連通流路772と圧力室SCとの間で循環するインクの流れが形成され易いため、循環効率を高めることができる。また、インクを吐出させる際には、圧力室SCから第1流路716を通るインクの量を増やすことができるので、ノズルNからのインクの吐出量を増大させることができる。
【0054】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態について説明する。以下に例示する各形態において作用や機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。図13は、本発明の第2実施形態に係る液体吐出装置10の部分的な構成図であり、図1に対応する。図14は、第2実施形態に係る液体吐出ヘッド26における液体吐出部264の流路構成の模式図であり、図3に対応する。図15は、図14の吐出部266Aの構成を示す断面図であり、図16は、図14の吐出部266Bの構成を示す断面図である。
【0055】
第2実施形態では、第1流路716に近い方にノズルNが配置される吐出部266A(第1吐出部の例示)と、第2流路718に近い方にノズルNが配置される吐出部266B(第2吐出部の例示)を用いた液体吐出ヘッド26を例示する。具体的には図14に示す液体吐出部264は、圧力室SCの配列方向であるY方向(第2方向の例示)に吐出部266Aと吐出部266Bとが交互に配置され、各吐出部266Aおよび各吐出部266Bはそれぞれ、分岐流路714を介して共通液室SRに連通する。
【0056】
図15に示す吐出部266Aは、図5の吐出部266と同様の構成である。吐出部266Aは、図5の吐出部266と同様に、圧力室SCとノズルNと連通流路772と第1流路716と第2流路718とを備える。吐出部266Aの第1流路716と第2流路718とは、Y方向に交差するX方向(第1方向の例示)に並べて配置される。吐出部266Aは、第1流路716の方が第2流路718よりも圧力室側流路口の流路断面積が大きく、ノズルNは第1流路716に平面視で重なる。
【0057】
他方、図16に示す吐出部266Bは、図5の吐出部266とは異なる構成部分がある。吐出部266Bは、図5の吐出部266と同様に、圧力室SCとノズルNと連通流路772と第1流路716と第2流路718とを備える。吐出部266Aの第1流路716と第2流路718とは、X方向に並べて配置される。ただし、吐出部266Bは、第2流路718の方が第1流路716よりも圧力室側流路口の流路断面積が大きく、ノズルNは第2流路718に平面視で重なる点で、図5の吐出部266の構成と異なる。すなわち、第2流路718のうち圧力室側流路口718aの流路断面積A2は、第1流路716のうち圧力室側流路口716aの流路断面積A1よりも大きい。
【0058】
このような構成の吐出部266Aと吐出部266Bとを、圧力室SCの配列方向であるX方向に交互に配置することによって、図13および図14に示すようにノズルNを千鳥配列にすることができる。具体的にはノズルNは、圧力室SCの配列方向に沿う2列のノズル列になり、その2列のノズル列のそれぞれのノズルNは、圧力室SCの配列方向において1つの圧力室SC置きに配列される。しかも、各ノズル列は、圧力室SCの配列方向にずれるので、2列の各ノズルNは、図13および図14に示すような千鳥配列(またはスタガ配列)になる。
【0059】
ここで、吐出部266Aおよび吐出部266Bによるインクの流れについて説明する。図17および図18は、図16の吐出部266Bのインクの流れを示す作用説明図である。図17は、ノズルNからインクを吐出する場合であり、図18は、ノズルNからインクを吐出せずにインクを循環させる場合である。なお、吐出部266AでノズルNからインクを吐出する場合のインクの流れは図9と同様であり、吐出部266AでノズルNからインクを吐出せずに循環させるインクの流れは図10と同様である。
【0060】
各吐出部266Aからインクを吐出する場合には、図6の吐出用駆動パルスW1で圧電素子74を駆動して圧力室SCを振動させる。すると、図9の矢印に示すように、圧力室SCのインクは、第1流路716および第2流路718から連通流路772に流れ、ノズルNから吐出される。各吐出部266Aでインクを循環させる場合には、図7の循環用駆動パルスW2で圧電素子74を駆動して圧力室SCを微振動させる。すると、図10の矢印に示すように、圧力室SCのインクは、第2流路718よりも流路断面積が大きい第1流路716に流れ易くなるので、圧力室SCのインクは第1流路216を通って連通流路772に流れ、第2流路718を通って圧力室SCに戻る流れが発生し易い。このように、各吐出部266Aでは、第1流路216が往路で第2流路718が復路となって、ノズルNの連通流路772と圧力室SCとの間で循環するインクの流れ(Y方向を中心とする反時計回りの流れ)が発生し易い。
【0061】
他方、各吐出部266Bからインクを吐出する場合には、図6の吐出用駆動パルスW1で圧電素子74を駆動して圧力室SCを振動させる。すると、図17の矢印に示すように、圧力室SCのインクは、第1流路716および第2流路718から連通流路772に流れ、ノズルNから吐出される。各吐出部266Bでインクを循環させる場合には、図7の循環用駆動パルスW2で圧電素子74を駆動して圧力室SCを微振動させる。すると、図18の矢印に示すように、圧力室SCのインクは、第1流路716よりも流路断面積が大きい第2流路718に流れ易くなるので、圧力室SCのインクは第2流路218を通って連通流路772に流れ、第1流路716を通って圧力室SCに戻る流れが発生し易い。このように、各吐出部266Bでは、第2流路218が往路で第1流路716が復路となって、ノズルNの連通流路772と圧力室SCとの間で循環するインクの流れ(Y方向を中心とする時計回りの流れ)が発生し易い。
【0062】
このように、吐出部266Aと吐出部266Bとは、ノズルNの連通流路772と圧力室SCとの間で第1流路716と第2流路718とを介して、Y方向を中心に互いに逆回りに循環するインクの流れが発生する。いずれの方向にインクが循環しても、吐出部266Aの中または吐出部266Bの中でインクを循環できるので、第1実施形態と同様に循環流路を短くできるから、循環効率を高めることができる。
【0063】
第2実施形態の構成によれば、圧力室SCの配列方向であるX方向に吐出部266Aと吐出部266Bとを交互に配置することによって、圧力室SCの配列方向に隣り合うノズルN同士は、平面視で1つの圧力室SCを挟んで圧力室SCの配列方向の両側に配列される。したがって、各ノズルNは、圧力室SCの配列方向において1つの圧力室SC置きに配置される。これにより、圧力室SCの配列方向に圧力室SC同士の間隔を広げなくても、圧力室SCの配列方向に隣り合うノズルN同士の間隔M’を広げることができる。この構成によれば、例えばX方向に液体吐出ヘッド26が移動することで、各ノズルNから吐出されるインクの液滴間を流れる気流が発生しても、Y方向に隣り合うノズルN同士の間隔M’が広くなるので、X方向の気流による液滴の飛行方向のずれを抑制しがら、各ノズルNからのインクの吐出量を増大できる。また、隣り合うノズルN同士の間隔M’が広くなるので、各ノズルNからインクの液滴を、隣のノズルNからインクが吐出されることによる噴流の影響を受けずに飛行させることができる。
【0064】
また、図14の構成と図3の構成を比べれば、図14の構成における圧力室SCの配列方向に隣り合う圧力室SC同士が、図3の構成と同じのピッチで配列されていても、図14の圧力室SCの配列方向であるY方向に隣り合うノズルN同士の間隔M’は、図3のY方向に隣り合うノズルN同士の間隔Mよりも広くなる。したがって、圧力室SCの配列方向に隣り合う圧力室SC同士の間隔を広げなくても、隣り合うノズルN同士の間隔Mを広くすることができるので、液体吐出ヘッド26が圧力室SCの配列方向に大型化することを避けながら、気流などによる液滴の飛行方向のずれを抑制できる。
【0065】
<第3実施形態>
本発明の第3実施形態について説明する。第1実施形態および第2実施形態の液体吐出部264では、共通液室SRからのインクがX方向から分岐流路714に供給される場合を例示したが、第3実施形態では、共通液室SRからのインクがY方向から分岐流路714に供給される場合を例示する。
【0066】
図19は、第3実施形態に係る液体吐出ヘッド26の液体吐出部264の断面図であり、図4に対応する。図19の液体吐出部264では、支持体75に形成される凹部752と流路基板71に形成される開口部712とで構成される空間が共通液室SRとして機能する。図19の分岐流路714は、Y方向に延在する接続流路713によって開口部712に連通することで、共通液室SRに接続される。接続流路713は、分岐流路714ごとに形成された貫通孔であり、開口部712は複数の分岐流路714にわたり連続する開口である。
【0067】
このような第3実施形態によれば、接続流路713を介してY方向から共通液室SRからのインクを分岐流路714に供給するように液体吐出部264を構成することで、図4の構成に比較して、流路基板71に形成される開口部712まで共通液室SRの容量を増やすことができる。また、図19に示すように、圧電素子74を分岐流路714に平面視で重なる程度まで延在するように配置してもよい。この構成によれば、圧力室SCが延在するX方向に圧電素子74を長くすることができるので、圧電素子74の変位を大きくすることができる。したがって、圧電素子74の駆動による圧力室SCの振動も大きくできるので、インクを循環させる場合には循環効率を高めることができ、インクを吐出する場合には吐出量を増大することができる。
【0068】
<変形例>
以上に例示した態様および実施形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示や上述の態様から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
【0069】
(1)上述した実施形態では、液体吐出ヘッド26を搭載したキャリッジ24をX方向に沿って反復的に往復させるシリアルヘッドを例示したが、液体吐出ヘッド26を媒体12の全幅にわたり配列したラインヘッドにも本発明を適用可能である。
【0070】
(2)上述した実施形態では、圧力室に機械的な振動を付与する圧電素子を利用した圧電方式の液体吐出ヘッド26を例示したが、加熱により圧力室の内部に気泡を発生させる発熱素子を利用した熱方式の液体吐出ヘッドを採用することも可能である。
【0071】
(3)上述した実施形態で例示した液体吐出装置10は、印刷に専用される機器のほか、ファクシミリ装置やコピー機等の各種の機器に採用され得る。もっとも、本発明の液体吐出装置10の用途は印刷に限定されない。例えば、色材の溶液を吐出する液体吐出装置は、液晶表示装置のカラーフィルターや有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等を形成する製造装置として利用される。また、導電材料の溶液を吐出する液体吐出装置は、配線基板の配線や電極を形成する製造装置として利用される。また、液体の一種として生体有機物の溶液を吐出するチップ製造装置としても利用される。
【符号の説明】
【0072】
10…液体吐出装置、12…媒体、14…液体容器、20…制御ユニット、202…制御装置、203…記憶装置、216…第1流路、218…第2流路、22…搬送機構、24…キャリッジ、26…液体吐出ヘッド、260…吐出面、262…駆動部、264…液体吐出部、266…吐出部、266A…吐出部、266B…吐出部、40…駆動信号生成部、50…制御部、71…流路基板、712…開口部、713…接続流路、714…分岐流路、716…第1流路、716a…圧力室側流路口、716b…連通流路側流路口、716c…絞り部、718…第2流路、718a…圧力室側流路口、718b…連通流路側流路口、718c…絞り部、72…圧力室基板、722…開口部、73…振動板、74…圧電素子、742…第1電極、744…圧電体層、746…第2電極、75…支持体、752…凹部、754…導入流路、76…ノズル板、77…連通板、772…連通流路、A1、A2…流路断面積、B1、B2…流路断面積、C…データテーブル、COM…駆動信号、G…印刷データ、M、M’…間隔、N…ノズル、SC…圧力室、SI…選択信号、SR…共通流路、T…周期、V…駆動信号、VH…高位側電位、VL…低位側電位、VM…基準電位、W1…吐出用駆動パルス、W2…循環用駆動パルス。
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