(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】システム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20221004BHJP
【FI】
B41J2/175 171
B41J2/175 121
B41J2/175 119
B41J2/175 117
B41J2/175 301
(21)【出願番号】P 2018067572
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2021-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】田邉 裕磨
【審査官】加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-247936(JP,A)
【文献】特開2008-246788(JP,A)
【文献】特開平10-029318(JP,A)
【文献】特開2001-310481(JP,A)
【文献】米国特許第09150011(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留する第1貯留室、上記第1貯留室に貯留された液体が流出する第1流出口、及び上記第1貯留室を大気に連通させる第1大気連通口を有するカートリッジと、
上記カートリッジが接続可能であり、液体を貯留する第2貯留室、接続された上記カートリッジの上記第1貯留室から液体が上記第2貯留室へ流入する流入口、上記第2貯留室に貯留された液体が流出する第2流出口、上記第2貯留室を大気に連通させる第2大気連通口、及び上記第2大気連通口を塞ぎ、大気の通過を許容する半透膜を有するタンクと、
上記タンクの上記第2流出口から流出した液体を
ノズルから吐出する
ヘッドと、を備え、
上記半透膜は
、上記ヘッドにおいて上記ノズルが開口する面より下方、上記第1流出口より下方、かつ上記流入口より下方にあり、
上記半透膜の上記第2貯留室側の面の全てが液体に浸った状態で、上記第2貯留室の大気との連通が遮断されているシステム。
【請求項2】
上記半透膜の上記第2貯留室を向く面は、下方を向いている請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
上記第2貯留室に貯留された液体の液面の上下方向の位置が所定位置になったことを検知する検知部を備える請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
上記所定位置は、上記半透膜よりも下方である請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
上記第2貯留室は、
上記流入口を有する第1部分と、
上記第1部分より下方であって、上記第1部分より水平断面積が大きく、上記第2流出口を有する第2部分と、を有する請求項1から4のいずれかに記載のシステム。
【請求項6】
上記半透膜は、上記第2部分に設けられている請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
上記カートリッジは、水平方向に沿って上記タンクと接続される請求項1から6のいずれかに記載のシステム。
【請求項8】
上記カートリッジは、上下方向から見て、上記タンクと重複していない請求項1から7のいずれかに記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カートリッジからタンクへ液体が流通するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、タンクに貯留された液体が消費される度にカートリッジから液体を逐次タンクへ供給することによって、タンクに貯留された液体の液面を一定に保つことができる構成として、いわゆるチキンフィード方式でカートリッジからタンクへ液体が供給されるシステムが開示されている(特許文献1)。
【0003】
チキンフィード方式では、タンクは、カートリッジの下方にある。タンクは、大気と連通する大気連通口を備える。また、タンクは、大気流路及び液体流路の2本の流路を通じてカートリッジと連通している。タンク内の液体が消費されて液体の液面が大気流路の下端にある開口よりも低くなると、空気が大気連通口からタンクに入り込み、タンクに入り込んだ空気が大気流路を通じてカートリッジに入り込む。そして、カートリッジに入り込んだ空気の体積分の液体がカートリッジから液体流路を通じてタンクへ供給される。液体の液面が大気流路の開口に達すると、液体の供給は停止される。このようにして、タンク内の液体の液面が一定に維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、チキンフィード方式では、タンク内に、大気流路及び液体流路を配置するスペースが必要となる。また、チキンフィード方式では、大気流路の開口は、大気連通口よりも下方に位置する必要がある。また、上述したように、チキンフィード方式では、タンク内の液体の液面は、大気流路の開口と同じ高さに維持される。つまり、チキンフィード方式では、大気流路の開口と大気連通口との間に、液体が貯留されないスペースが必要となる。そして、当該スペースの分だけ、液体の貯留量が増えないにもかかわらずタンクが大きくなってしまう。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、タンクの貯留室において液体を貯留可能な空間の割合を高くすることができるシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明に係るシステムは、液体を貯留する第1貯留室、及び上記第1貯留室を大気に連通させる第1大気連通口を有するカートリッジと、上記カートリッジが接続可能であり、液体を貯留する第2貯留室、接続された上記カートリッジの上記第1貯留室から液体が上記第2貯留室へ流入する流入口、上記第2貯留室に貯留された液体が流出する流出口、上記第2貯留室を大気に連通させる第2大気連通口、及び上記第2大気連通口を塞ぎ、大気の通過を許容する半透膜を有するタンクと、上記タンクの上記流出口から流出した液体を消費する消費部と、を備える。上記半透膜は、上記流入口より下方にある。上記半透膜の上記第2貯留室側の面の全てが液体に浸った状態で、上記第2貯留室の大気との連通が遮断されている。
【0008】
本構成によれば、半透膜が液体に浸っていない状態では、タンクの第2貯留室は第2大気連通口によって大気と連通している。そのため、カートリッジをタンクに接続したときに、カートリッジの第1貯留室からタンクの第2貯留室へ液体を供給することができる。
【0009】
また、本構成によれば、半透膜が液体に浸った状態では、第2貯留室の大気との連通が遮断される。一方で、第1貯留室は第1大気連通口によって大気と連通している。この状態において、第2貯留室から消費部へ液体が供給されたとき、大気と連通していない第2貯留室では、供給された液体の代わりに外部から気体を取り入れること(気液置換)ができない。そのため、大気と連通されているために気液置換が可能な第1貯留室から第2貯留室へ液体が供給される。これにより、第2貯留室における液面が一定に維持される一方で、第1貯留室における液面が低くなる。つまり、カートリッジの第1貯留室に貯留された液体を、タンクの第2貯留室に貯留された液体より先に消費することができる。
【0010】
また、本構成によれば、チキンフィード方式では必要であった大気流路や液体流路を、第2貯留室内の半透膜より上方に配置する必要がない。そのため、タンクの大型化を抑制できるとともに、第2貯留室の多くの部分を液体を貯留するための空間とすることができる。
【0011】
(2) 上記半透膜の上記第2貯留室を向く面は、下方を向いている。
【0012】
仮に、半透膜の第2貯留室を向く面が下方以外、例えば水平方向を向いている場合、第2貯留室に貯留されている液体の液面が高くなる程、半透膜の第2貯留室を向く面の多くの部分が液体に浸るようになる。そのため、第2貯留室に貯留されている液体の液面が高くなる程、第2大気連通口における空気の流通に対する抵抗が大きくなり、第1貯留室から第2貯留室への液体の供給速度が低下してしまう。
【0013】
しかし、本構成では、半透膜の第2貯留室を向く面は下方を向いている。そのため、半透膜の第2貯留室を向く面は、その全てが液体に浸っている状態、または、その全てが液体に浸っていない状態の2状態のみをとる。よって、半透膜が液体に浸るまでは、第2貯留室に貯留されている液体の液面の高さにかかわらず、第2大気連通口における空気の流通に対する抵抗を最小値に維持できる。その結果、第1貯留室から第2貯留室への液体の供給速度を速く維持できる。
【0014】
(3) 本発明に係るシステムは、上記第2貯留室に貯留された液体の液面の上下方向の位置が所定位置になったことを検知する検知部を備える。
【0015】
本構成によれば、カートリッジの第1貯留室に検知部を配置する必要がない。そのため、第1貯留室に貯留可能な液体の量を多くすることができる。
【0016】
また、本構成によれば、カートリッジの第1貯留室に貯留された液体を、タンクの第2貯留室に貯留された液体より先に消費することができる。そのため、第1貯留室ではなく第2貯留室に検知部を配置した場合であっても、第1貯留室から第2貯留室に供給可能な液体がなくなっていることを確実に検知することができる。
【0017】
(4) 上記所定位置は、上記半透膜よりも下方である。
【0018】
本構成によれば、検知部による検知によって、カートリッジの第1貯留室からタンクの第2貯留室に供給可能な液体がなくなっていることが判断できる。
【0019】
(5) 上記第2貯留室は、上記流入口を有する第1部分と、上記第1部分より下方であって、上記第1部分より水平断面積が大きく、上記流出口を有する第2部分と、を有する。
【0020】
本構成によれば、第2貯留室のうち水平断面積の大きい第2部分に液体が貯留されるため、第2貯留室において液体を貯留可能な空間の割合を高くすることができる。
【0021】
(6) 上記半透膜は、上記第2部分に設けられている。
【0022】
本構成によれば、第1部分に液体が貯留されないため、第1部分から第1貯留室への液体の逆流を防止できる。
【0023】
(7) 例えば、上記カートリッジは、水平方向に沿って上記タンクと接続される。
【0024】
(8) 例えば、上記カートリッジは、上下方向から見て、上記タンクと重複していない。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、タンクの第2貯留室において液体を貯留可能な空間の割合を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、プリンタ部11の内部構造を模式的に示す縦断面図である。
【
図2】
図2は、インクカートリッジ30とタンク103とが接続された状態を模式的に示す縦断面図である。
【
図3】
図3は、インクカートリッジ30とタンク103とが接続された状態を模式的に示す縦断面図であり、半透膜147の第2部分162を向く面が前方を向く構成を示す。
【
図4】
図4は、インクカートリッジ30とタンク103とが接続された状態を模式的に示す縦断面図であり、半透膜147が第1部分161に設けられた構成を示す。
【
図5】
図5は、
図2とは異なる形状のインクカートリッジ30とタンク103とが接続された状態を模式的に示す縦断面図である。
【
図6】
図6は、インクカートリッジ30とタンク103とが上下方向7に沿って接続された状態を模式的に示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。また、複合機10が使用可能に水平面に設置された姿勢(
図1の姿勢であって、「使用姿勢」と表記することがある。)を基準として上下方向7が定義され、複合機10の給送トレイ15からシート12が給送される方向を後方として前後方向8が定義され、複合機10を前面から見て左右方向が定義される。
図1~
図6において、紙面の奥へ向かう向きが右向きである。本実施形態では、使用姿勢において、上下方向7が鉛直方向に相当し、前後方向8及び左右方向が水平方向に相当する。前後方向8及び左右方向9は、直交している。
【0028】
[第1実施形態]
[複合機10の全体構成]
複合機10(システムの一例)は、インクジェット記録方式でシート12に画像を記録するプリンタ部11を有している。また、複合機10は、ファクシミリ機能、スキャン機能、及びコピー機能などの各種の機能を有していてもよい。
図1に示されるように、プリンタ部11は、給送トレイ15と、排出トレイ16と、給送ローラ23と、搬送ローラ対25と、排出ローラ対27と、記録部24と、プラテン26とを有する。
【0029】
[給送トレイ15、排出トレイ16、給送ローラ23]
図1に示されるように、給送トレイ15は、各々が積層された複数のシート12を支持する。排出トレイ16は、給送トレイ15の上方に配置されている。排出トレイ16は、記録部24及びプラテン26の間から排出ローラ対27によって排出されたシート12を支持する。給送ローラ23は、不図示のモータによって駆動されることによって、給送トレイ15に支持されたシート12を搬送路17へ給送する。
【0030】
[搬送路17]
搬送路17は、ガイド部材18、19、記録部24、プラテン26等によって形成される空間を指す。ガイド部材18、19と、記録部24及びプラテン26とは、それぞれがプリンタ部11の内部において所定間隔で対向する。搬送路17は、給送トレイ15の後端部から上方に延びつつUターンし、記録部24に対面する位置を経由して排出トレイ16に至る経路である。搬送向きは、
図1において一点鎖線の矢印で示されている。
【0031】
[搬送ローラ対25]
搬送ローラ対25は、搬送路17に配置されている。搬送ローラ対25は、互いに対向する搬送ローラ25A及びピンチローラ25Bを備える。搬送ローラ25Aは、不図示のモータによって駆動される。ピンチローラ25Bは、搬送ローラ25Aの回転に伴って連れ回る。シート12は、モータの正転駆動力が伝達されて正回転する搬送ローラ25A及びピンチローラ25Bに挟持されて、搬送向きに沿って搬送される。
【0032】
[排出ローラ対27]
排出ローラ対27は、搬送路17における搬送ローラ対25より搬送向きの下流に配置されている。排出ローラ対27は、互いに対向する排出ローラ27A及び拍車27Bを備える。排出ローラ27Aは、不図示のモータによって駆動される。拍車27Bは、排出ローラ27Aの回転に伴って連れ回る。シート12は、モータの正転駆動力が伝達されて正回転する排出ローラ27A及び拍車27Bに挟持されて、搬送向きに沿って搬送される。
【0033】
[記録部24、プラテン26]
記録部24(消費部の一例)及びプラテン26は、
図1に示されるように、搬送向きにおける搬送ローラ対25及び排出ローラ対27の間に配置されている。より詳細には、記録部24及びプラテン26は、搬送ローラ対25より搬送向きの下流で、且つ排出ローラ対27より搬送向きの上流に配置されている。また、記録部24及びプラテン26は、上下方向7において互いに対向して配置されている。
【0034】
記録部24は、キャリッジ22と、キャリッジ22に搭載された記録ヘッド21とを備える。キャリッジ22は、不図示のモータの駆動力が伝達されて左右方向9に往復移動する。記録ヘッド21の下面28には、複数のノズル29が形成されている。記録ヘッド21は、ピエゾ素子等の振動素子を振動させることによって、ノズル29からインク滴を吐出する。キャリッジ22が移動する過程において、プラテン26に支持されたシート12に対して記録ヘッド21がインク滴を選択的に吐出することによって、シート12に画像が記録される。
【0035】
キャリッジ22には、インクチューブ20及びフレキシブルフラットケーブル(不図示)が接続されている。インクチューブ20は、タンク103と記録ヘッド21とを接続する。より詳細には、インクチューブ20は、タンク103に装着された各インクカートリッジ30(カートリッジの一例)に貯留されたインク(液体の一例)を記録ヘッド21に供給する。インクチューブ20は、各色(ブラック、マゼンタ、シアン、イエロー)のインクが流通する4本のチューブが束ねられたものである。フレキシブルフラットケーブルは、複合機10の動作を制御する制御基板と記録ヘッド21とを電気的に接続する。
【0036】
[タンク103]
図2に示されるタンク103は、インクカートリッジ30から供給されたインクを貯留する。
【0037】
図2に示されるように、タンク103は、内部にインクを貯留する貯留室121(第2貯留室の一例)を有する箱形状である。タンク103は、後壁151と、前壁152と、上壁153と、下壁154と、段差壁156と、左右方向9に対向した一対の側壁155とで構成されている。
【0038】
上壁153は、第1上壁153Aと、第2上壁153Bとによって構成されている。第1上壁153Aは、前壁152の上端から後方へ延びている。第2上壁153Bは、第1上壁153Aより下方且つ後方に位置しており、後壁151から前方へ延びている。段差壁156は、上下方向7及び左右方向9に延びた壁であり、第1上壁153Aの後端と第2上壁153Bの前端とを繋いでいる。
【0039】
タンク103を構成する壁のうち、少なくとも後壁151に形成された後述する液面センサ55のプリズム55Aを構成する部分は、液面センサ55の発光部55Bから出力させる光を透過する透光性を有する。
【0040】
貯留室121は、後壁151と、前壁152と、上壁153と、下壁154と、一対の側壁155とによって区画された空間であり、第1部分161と、第1部分161より下方に位置する第2部分162とで構成されている。
【0041】
第1部分161は、貯留室121のうち、
図2に示された破線130より上の部分である。第1部分161は、前壁152と、第1上壁153Aと、段差壁156と、一対の側壁155とによって区画されている。
【0042】
第2部分162は、貯留室121のうち、
図2に示された破線130より下の部分である。第2部分162は、後壁151と、前壁152と、第2上壁153Bと、下壁154と、一対の側壁155とによって区画されている。
【0043】
後壁151と前壁152との間の前後方向8の間隔は、段差壁156と前壁152との間の前後方向8の間隔より長い。よって、第2部分162の水平断面積(上下方向7に視たときに後壁151、前壁152、及び一対の側壁155で囲まれる仮想面の面積)は、第1部分161の水平断面積(上下方向7に視たときに段差壁156、前壁152、及び一対の側壁155で囲まれる仮想面の面積)より大きい。
【0044】
貯留室121の第2部分162は、流出口128を通じて、インクチューブ20に連通されている。流出口128は、貯留室121の下端を区画する下壁154付近に形成されている。つまり、第2部分162は、流出口128を有する。流出口128は、接続管107より下方に位置する。貯留室121に貯留されたインクは、流出口128から流出して、インクチューブ20を通じて記録ヘッド21へ供給される。
【0045】
第2上壁153Bには連通口124(第2大気連通口の一例)が形成されている。連通口124は第2上壁153Bを貫通している。連通口124には、半透膜147が貼り付けられて閉塞されている。つまり、半透膜147は、第2部分162に設けられている。半透膜147は、その両面(上面及び下面)が上下方向7と直交するように連通口124に貼り付けられている。つまり、半透膜147の第2部分162を向く面(下面)は下方を向いており、半透膜147の下面の裏面である上面は上方を向いている。半透膜147は、インクの通過を制限し、且つ、大気の通過を許容する。連通口124及び半透膜147を通じて、貯留室121の第2部分162がタンク103の外部(大気)と連通される。
【0046】
[接続管107]
図2に示されるように、前壁152における段差壁156と前後方向8に対向する部分(換言すると前壁152における第2上壁153Bより上方の部分)からは、接続管107(管の一例)が前方へ延びている。つまり、接続管107は、前後方向8に延びている。接続管107は、複合機10に装着されたインクカートリッジ30のインク供給部34に対応する位置に配置されている。
【0047】
接続管107は、円管状の樹脂からなるものである。接続管107の突出先端には開口109が形成されている。また、前壁152における段差壁156と前後方向8に対向する部分に、流入口126が形成されている。つまり、第1部分161は、流入口126を有する。流入口126は、半透膜147、連通口124、及び流出口128より上方にある。流入口126によって、接続管107の内部空間107Aと貯留室121の第1部分161とが連通されている。
【0048】
[液面センサ55]
図2に示される液面センサ55(検知部の一例)は、インクが接触しているか否かによって異なる反射率を有するプリズム55Aを利用して、貯留室121におけるインクの液面が所定位置P1になったことを検知するものである。
【0049】
図2に示されるように、所定位置P1は、上下方向7において、半透膜147より下方、且つ、流出口128より上方の位置である。本実施形態において、所定位置P1は、上下方向7において、タンク103の貯留室121の第2部分162の位置である。すなわち、液面センサ55は、第2部分162に貯留されたインクの液面を検知するものである。
【0050】
液面センサ55は、プリズム55Aと、発光部55Bと、受光部(不図示)とを備える。貯留室121の第1部分161を区画する後壁151のうち、所定位置P1及びその近傍に亘る部分が、プリズム55Aを構成している。発光部55B及び受光部は、プリズム55Aの後方にプリズム55Aと対面して配置されている。発光部55Bは、プリズム55Aへ向けて光を照射する。受光部は、発光部55Bから照射されてプリズム55Aで反射した光を受け、受けた光の強度に基づいた信号を制御基板へ出力する。
【0051】
貯留室121に貯留されたインクの液面が所定位置P1より高いとき、発光部55Bから照射される光の光路上において、プリズム55Aにインクが接触する。このとき、発光部55Bからプリズム55Aへ照射された光は、プリズム55Aを透過して貯留室121に進入するため、受光部へ到達しない。このとき、受光部は、ローレベル信号を制御基板へ出力する。一方、貯留室121に貯留されたインクの液面が所定位置P1以下のとき、発光部55Bから照射される光の光路上において、プリズム55Aにインクが接触しない。このとき、発光部55Bからプリズム55Aへ照射された光は、プリズム55Aで反射して受光部へ到達する。このとき、受光部は、ハイレベル信号を制御基板へ出力する。
【0052】
制御基板に実装されているコントローラは、液面センサ55からローレベル信号を受信した後にハイベル信号を受信したことに応じて、例えば、インクカートリッジ30の貯留室32に貯留されているインクがタンク103に供給できなくなった旨の報知を行う。報知方法としては、例えば、複合機10が有するディスプレイなどを通じてユーザに報知する。つまり、コントローラは、タンク103の貯留室121に貯留されたインクの残量に基づいて、インクカートリッジ30の貯留室32に貯留されているインクがタンク103に供給できるか否かを判断する。
【0053】
[インクカートリッジ30]
インクカートリッジ30は、インクが貯留される容器である。インクカートリッジ30は、
図2に示されるように、筐体31及びインク供給部34を有する。筐体31は、略直方体形状である。なお、異なる色のインクが貯留される各インクカートリッジ30の外形形状は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。筐体31は、後壁40と、前壁41と、上壁39と、下壁42と、左右方向に対向した一対の側壁37とで構成されている。筐体31の内部空間が、インクを貯留する貯留室32(第1貯留室の一例)である。
【0054】
インク供給部34は、後壁40の下端付近から後方へ突出している。インク供給部34は、円筒形状の部材である。インク供給部34の内部空間は、後壁40を貫通する流出口33を通じて貯留室32と連通している。インク供給部34の突出端は、インクカートリッジ30の外部に開口している。なお、各図には示されていないが、インク供給部34の突出端の開口は、シール部材やバルブなどによって閉じられており、使用に際して開放されるように構成されていてもよい。
【0055】
上壁39には連通口35(第1大気連通口の一例)が形成されている。連通口35は筐体31の上壁39を貫通している。連通口35を通じて、貯留室32とインクカートリッジ30の外部(大気)とが連通される。なお、連通口35は、半透膜によって閉塞されていてもよい。
【0056】
図2に示されるように、インクカートリッジ30は、前方からタンク103と接続される。詳細には、タンク103の接続管107が、インクカートリッジ30のインク供給部34の内部空間に後方から挿入されることによって、インクカートリッジ30のインク供給部34とタンク103の接続管107とが接続される。つまり、インクカートリッジ30は、前後方向8に沿って接続管107と接続される。
【0057】
インクカートリッジ30がタンク103と接続された状態において、インクカートリッジ30の後端の前後方向8の位置P2は、タンク103の前端の前後方向8の位置P3より前方に位置する。つまり、上下方向7から視た場合に、インクカートリッジ30とタンク103とは重複していない。
【0058】
図1及び
図2に示される複合機10の姿勢が、使用姿勢である。複合機10は、使用姿勢にされて、画像記録などの各種動作が実行される。ここで、未使用の複合機10に、インクカートリッジ30が装着される動作が説明される。新品のインクカートリッジ30の貯留室32には、貯留可能な最大量のインクが貯留されている。また、未使用の複合機10のタンク103の貯留室121には、インクが貯留されていない。貯留室121にインクが貯留されていないとは、未だインクカートリッジ30から貯留室121にインクが流入していない状態をいうものであり、例えば、複合機10の製造時における検査などにおいて一時的に貯留室121にインクが貯留され、その後に貯留室121からインクが除去されたときに、貯留室121に残存するインクなどは、貯留室121に貯留されているインクとはみなされないものとする。
【0059】
未使用の複合機10に、新品のインクカートリッジ30が装着された直後、すなわち、インクカートリッジ30からタンク103の貯留室121へ未だインクが流入していない状態において、インクカートリッジ30に貯留されたインクの液面の上下方向7の位置が、位置P4として
図2に1点鎖線で示されている。
【0060】
インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着されると、
図2に示されるように、開口109を通じて貯留室32と接続管107の内部空間107Aとが連通する。また、流入口126を通じて内部空間107Aと貯留室121とが連通する。
【0061】
ここで、貯留室121には未だインクが貯留されていないため、貯留室121は連通口124及び半透膜147を通じて、タンク103の外部(大気)と連通している。そのため、接続された接続管107の内部空間107Aを通じて、貯留室32に貯留されたインクが水頭差によって貯留室121へ流通する。貯留室121へインクが流入することによって貯留室121内のインクの体積が増えた分だけ、貯留室121内の空気は半透膜147及び連通口124を通じてタンク103の外部へ移動するため、貯留室121内の空気の体積は減少する。つまり、貯留室121において気液置換が生じる。
【0062】
上述した水頭差による貯留室32から貯留室121へのインクの流通によって、貯留室121に貯留されたインクの液面が上昇していく。そして、貯留室32に貯留されたインクの液面が位置P5まで下がる一方で、貯留室121に貯留されたインクの液面が位置P6(半透膜147と同じ高さ)に達すると、半透膜147の下面の全てがインクに浸った状態となる。これにより、連通口124はインクによって塞がれるため、貯留室121はタンク103の外部(大気)から遮断された状態となる。その結果、貯留室121に残留する空気(詳細には、第2部分162のうち半透膜147より上方の部分及び第1部分161に残留する空気)がタンク103の外部へ移動することができなくなる。つまり、貯留室121において気液置換が不可能となる。そのため、貯留室32に貯留されたインクの水頭差による貯留室121への流通が止まる。
【0063】
記録ヘッド21からインクが排出されるときに流出口128を通じて貯留室121からインクが記録ヘッド21へ流出するため、貯留室121に貯留されたインクの液面が位置P6から下降する。すると、貯留室121は、再び、連通口124及び半透膜147を通じて、タンク103の外部(大気)と連通された状態となる。これにより、貯留室32に貯留されたインクが水頭差によって貯留室121へ流通する。このインクの流通は、貯留室121に貯留されたインクの液面が位置P6まで上昇するまで継続し、貯留室121に貯留されたインクの液面が位置P6まで上昇すると停止する。以後、記録ヘッド21からインクが排出されて、貯留室121に貯留されたインクの液面が位置P6から下降する度に、貯留室121から減った分のインクが貯留室32から補充される。これにより、記録ヘッド21からインクが排出されても、貯留室121に貯留されたインクの液面は、位置P6に維持される一方で、貯留室32に貯留されたインクの液面は下降する。
【0064】
貯留室32に貯留されたインクの液面が下降して、接続管107の内部空間107Aより下方となると、換言すると位置P7に達すると、貯留室32から貯留室121へインクが流通しなくなる。また、貯留室121は、内部空間107A、貯留室32、及び連通口35を通じてタンク103の外部(大気)と連通された状態となる。以後、記録ヘッド21からインクが排出された場合に、貯留室121に貯留されたインクが消費され、貯留室121に貯留されたインクの液面が位置P6から下降する。
【0065】
貯留室121に貯留されたインクの液面が下降して、所定位置P1に達すると、液面センサ55の発光部55Bからプリズム55Aへ照射された光は、プリズム55Aで反射して受光部へ到達するようになり、受光部は、ハイレベル信号を制御基板へ出力する。制御基板に実装されているコントローラは、液面センサ55の受光部からハイベル信号を受信したことに応じて、例えば、インクカートリッジ30の貯留室32に貯留されているインクがタンク103に供給できなくなった旨の報知を行う。
【0066】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態によれば、半透膜147がインクに浸っていない状態では、タンク103の貯留室121は連通口124によって大気と連通している。そのため、インクカートリッジ30をタンク103に接続したときに、インクカートリッジ30の貯留室32からタンク103の貯留室121へインクを供給することができる。
【0067】
また、本実施形態によれば、半透膜147がインクに浸った状態では、貯留室121の大気との連通が遮断される。一方で、貯留室32は連通口35によって大気と連通している。この状態において、貯留室121から記録部24へインクが供給されたとき、大気と連通していない貯留室121では、供給されたインクの代わりに外部から気体を取り入れること(気液置換)ができない。そのため、大気と連通されているために気液置換が可能な貯留室32から貯留室121へインクが供給される。これにより、貯留室121における液面が一定に維持される一方で、貯留室32における液面が低くなる。つまり、インクカートリッジ30の貯留室32に貯留されたインクを、タンク103の貯留室121に貯留されたインクより先に消費することができる。
【0068】
また、本実施形態によれば、チキンフィード方式では必要である大気流路や液体流路を、貯留室121内の半透膜147より上方に配置する必要がない。そのため、タンク103の大型化を抑制できるとともに、貯留室121の多くの部分をインクを貯留するための空間とすることができる。
【0069】
また、仮に、半透膜147の貯留室121を向く面が下方以外、例えば水平方向を向いている場合、貯留室121に貯留されているインクの液面が高くなる程、半透膜147の貯留室121を向く面の多くの部分がインクに浸るようになる。そのため、貯留室121に貯留されているインクの液面が高くなる程、連通口124における空気の流通に対する抵抗が大きくなり、貯留室32から貯留室121へのインクの供給速度が低下してしまう。
【0070】
しかし、本実施形態では、半透膜147の貯留室121を向く面は下方を向いている。そのため、半透膜147の貯留室121を向く面は、その全てがインクに浸っている状態、または、その全てがインクに浸っていない状態の2状態のみをとる。よって、半透膜147がインクに浸るまでは、貯留室121に貯留されているインクの液面の高さにかかわらず、連通口124における空気の流通に対する抵抗を最小値に維持できる。その結果、貯留室32から貯留室121へのインクの供給速度を速く維持できる。
【0071】
また、本実施形態によれば、タンク103の貯留室121に貯留されたインクの液面を液面センサ55で検知することによって、インクカートリッジ30の貯留室32に貯留されたインクの残量が判断される。そのため、インクカートリッジ30の貯留室32に液面センサ55を配置する必要がない。そのため、貯留室32に貯留可能なインクの量を多くすることができる。
【0072】
また、本実施形態によれば、インクカートリッジ30の貯留室32に貯留されたインクを、タンク103の貯留室121に貯留されたインクより先に消費することができる。そのため、貯留室32ではなく貯留室121に液面センサ55を配置した場合であっても、貯留室32から貯留室121に供給可能なインクがなくなっていることを確実に検知することができる。
【0073】
また、本実施形態によれば、所定位置P1が半透膜147より下方にある。そのため、液面センサ55による検知によって、インクカートリッジ30の貯留室32からタンク103の貯留室121に供給可能なインクがなくなっていることが判断できる。
【0074】
また、本実施形態によれば、貯留室121のうち水平断面積の大きい第2部分162にインクが貯留されるため、貯留室121においてインクを貯留可能な空間の割合を高くすることができる。
【0075】
また、本実施形態によれば、第1部分161にインクが貯留されないため、第1部分161から貯留室32へのインクの逆流を防止できる。
【0076】
[変形例]
上記実施形態では、半透膜147の第2部分162を向く面は下方を向いていたが、当該面は下方以外を向いていてもよい。例えば、
図3に示されるように、半透膜147の第2部分162を向く面は前方を向いていてもよい。
【0077】
上記実施形態では、所定位置P1は、半透膜147より下方であった。しかし、所定位置P1は、半透膜147と同じ高さであってもよい。例えば、
図3に示されるように半透膜147が配置されている場合に、所定位置P1が半透膜147の上端と下端の間の位置であってもよい。
【0078】
上記実施形態では、半透膜147は貯留室121の第2部分162に設けられていたが、半透膜147は、例えば
図4に示されるように、貯留室121の第1部分161に設けられていてもよい。
【0079】
上記実施形態では、液面センサ55は、プリズム55Aを利用するものであった。しかし、液面センサ55には、他の公知の構成が採用されてもよい。例えば、被検出部を有するアームが貯留室121に設けられ、インクの液面が所定位置P1以下になればアームが回動することによって被検出部の位置が変化してもよい。アームの被検出部が光学センサによって検知されるか否かによって、インクの液面が所定位置P1以下であるかを判定することができる。
【0080】
また、液面センサ55として、貯留室121に挿入された電極棒が採用されてもよい。この場合、貯留室121に2本の電極棒が配置される。2本の電極棒は不図示の基板に実装されている。2本の電極の一方の下端は、所定位置P1よりも若干高い位置にある。2本の電極の他方の下端は、所定位置P1よりも下方に位置する。そして、2本の電極間にインクを通じて電流が流れるか否かに基づいて、貯留室121に貯留されたインクの液面が所定位置P1以下であるか否かが検知される。
【0081】
インクカートリッジ30及びタンク103の形状は、上記実施形態(
図2)に示された形状に限らない。例えば、
図5に示されるように、インクカートリッジ30が、貯留室32が上部分32Aと上部分32Aより水平断面積の小さい下部分32Bとで構成されるような形状であってもよいし、タンク103が、単なる直方体形状であってもよい。
【0082】
上記実施形態では、インクカートリッジ30は、前後方向8に沿って接続管107と接続されていた。また、上記実施形態では、上下方向7から視た場合に、インクカートリッジ30とタンク103とは重複していなかった。しかし、インクカートリッジ30は、前後方向8以外の方向に沿って接続管107と接続されていてもよいし、上下方向7から視た場合に、インクカートリッジ30とタンク103とが重複していてもよい。例えば、
図6に示されるように、インクカートリッジ30は、上下方向7に沿って接続管107と接続されてもよい。また、
図6に示される構成の場合、上下方向7から視て、インクカートリッジ30とタンク103とが重複している。
【0083】
上記実施形態では、連通口35は上壁39に形成されていた。しかし、連通口35は上壁39以外、例えば前壁41に形成されていてもよい。
【0084】
上記実施形態では、インクが液体の一例として説明され、記録部24が消費部の一例として説明されているが、これに限らない。例えば、印刷時にインクに先立ってローラによって用紙などに前処理液を塗布する装置に本発明が適用された場合、前処理液が液体の一例であり、ローラが消費部の一例である。
【符号の説明】
【0085】
10・・・複合機(システム)
24・・・記録部(消費部)
30・・・インクカートリッジ(カートリッジ)
32・・・貯留室(第1貯留室)
35・・・連通口(第1大気連通口)
103・・・タンク
121・・・貯留室(第2貯留室)
124・・・連通口(第2大気連通口)
126・・・流入口
128・・・流出口