(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】包装袋
(51)【国際特許分類】
B65D 81/34 20060101AFI20221004BHJP
B65D 30/02 20060101ALI20221004BHJP
B65D 33/01 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
B65D81/34 W
B65D30/02
B65D33/01
(21)【出願番号】P 2018090603
(22)【出願日】2018-05-09
【審査請求日】2021-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】下野 貴裕
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-516853(JP,A)
【文献】特開2007-015772(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0152724(US,A1)
【文献】特開2017-159912(JP,A)
【文献】特表2008-536765(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0052224(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0188914(US,A1)
【文献】特開2017-149450(JP,A)
【文献】特開2015-113131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/34
B65D 30/02
B65D 33/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ基材層とシーラント層を有する表面積層体と裏面積層体のシーラント層同士を対向させ、周縁を熱シールして収納部を形成してなる包装袋であって、前記収納部を形成する表面積層体には、加熱によって発生した水蒸気によって包装袋の内圧が高まった時に自動的に水蒸気を開放するための通蒸機構を有し、該通蒸機構は、サイドシール部から張り出した
突起状シール部を形成し、該突起状シール部内の表面積層体に全貫通孔または半貫通孔の蒸気抜き孔を設けたものであり、前記表面積層体
、裏面積層体の、周縁シール部および前記突起状シール部および包装袋の開封位置を除く部分
のみの、前記基材層とシーラント層の間にマイクロ波によって発熱するマイクロ波発熱インキ層を設けたことを特徴とする包装袋。
【請求項2】
表面積層体および裏面積層体を構成する基材層が、水蒸気および酸素の透過を抑制するガスバリア層を含むことを特徴とする請求項1に記載の包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物を収納した状態で電子レンジで加熱することのできる包装袋において、過加熱によるピンホールの発生の少ない包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軟包装袋に食品を収納した後、レトルト殺菌処理を施して長期保存を可能としたレトルト食品が広く普及している。層構成中にアルミニウム箔を用いた軟包装袋は、袋のまま電子レンジで加熱することができないため、袋ごと湯煎するか、あるいは一旦開封して内容物を他の容器に移してから電子レンジで加熱する必要があった。
【0003】
しかし近年アルミニウム箔を用いないで、長期保存性を担保出来る包装袋が実用化されたため、包装袋のまま電子レンジで加熱する調理方法が一般的になりつつある。
【0004】
合成樹脂フィルム等を用いた軟包装材料を用いて作成された包装袋に内容物を収納し、開封することなく、そのまま電子レンジで加熱調理することのできる包装体が提案されている。特許文献1に記載された自動調圧機能を有する包装用袋は、電子レンジ等による加熱に際し袋内が所定の内圧に達したときに、袋の特定の部位から袋内の圧力を確実に自動的に逃がすことができ、かつ製造工程的にも有利な自動調圧機能を有する包装用袋である。
【0005】
特許文献1に記載された包装用袋は、基材フィルム(1a)/シーラント層(1b)の層構成を有する第1フィルムと基材フィルム(2a)/シーラント層(2b)/シーラント層(2c)の層構成を有する第2フィルムとが、シーラント層1b、2cが対向するように配置された状態でヒートシールされた構造の袋であり、第2フィルムには、基材フィルム(2a)/シーラント層(2b)の層構成の部分のみを貫通して厚み方向に打抜きまたは切り込みによる小開口が設けられていることを特徴とする包装袋である。
【0006】
特許文献1に記載された包装袋は、理想的な加熱条件下においては、その機能を十分に発揮するものであるが、加熱時間設定ミスや、部分的な加熱むらによって過加熱が生じた場合に、包装袋の一部が溶融してピンホールが発生する危険性を孕んでいた。
【0007】
この過加熱によるピンホールを防ぐ手段としては、包装袋を2重にして中間に空気層を設けることにより、空気層の断熱効果によって包装袋の溶融が防止できることは、以前から知られていた。しかし包装袋を2重にすることは、材料コストや製造コストの上昇が避けられず、好ましい手段とは言えないものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第3942709号公報
【文献】特開2017-159912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は、そのまま電子レンジで加熱した場合に、発生した水蒸気を自動的に逃がす通蒸機能を有する包装袋において、過加熱によるピンホールが発生し難い包装袋を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、それぞれ基材層とシーラント層を有する表面積層体と裏面積層体のシーラント層同士を対向させ、周縁を熱シールして収納部を形成してなる包装袋であって、前記収納部を形成する表面積層体には、加熱によって発生した水蒸気によって包装袋の内圧が高まった時に自動的に水蒸気を開放するための通蒸機構を有し、該通蒸機構は、サイドシール部から張り出した突起状シール部を形成し、該突起状シール部内の表面積層体に全貫通孔または半貫通孔の蒸気抜き孔を設けたものであり、前記表面積層体、裏面積層体の、周縁シール部および前記突起状シール部および包装袋の開封位置を除く部分のみの、前記基材層とシーラント層の間にマイクロ波によって発熱するマイクロ波発熱インキ層を設けたことを特徴とする包装袋である。
【0011】
本発明に係る包装袋は、基材層とシーラント層の間に部分的にマイクロ波によって発熱するマイクロ波発熱インキ層を設けたことにより、電子レンジで加熱された際、このマイクロ波発熱インキ層が発熱すると共に蒸発して空隙を生じる。このため、過加熱が生じた場合であっても、この空隙が断熱効果を発揮して、積層体の溶融によるピンホールの発生を未然に防止する。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、表面積層体および裏面積層体を構成する基材層が、水蒸気および酸素の透過を抑制するガスバリア層を含むことを特徴とする請求項1に記載の包装袋である。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る包装袋は、電子レンジで加熱した際に発生する水蒸気を逃がすための通蒸機構を収納部に備えているため、包装袋のまま電子レンジで加熱調理することができる。
【0014】
シール部分および開封位置を除く基材層とシーラント層の間に、マイクロ波によって発熱するマイクロ波発熱インキ層を設けたことにより、電子レンジで加熱された際、このマイクロ波発熱インキ層が発熱すると共に蒸発して空隙を生じる。このため、過加熱が生じた場合であっても、この空隙が断熱効果を発揮して、積層体の溶融によるピンホールの発生を未然に防止する。
【0015】
請求項2に記載の発明のように、表面積層体および裏面積層体を構成する基材層が、水蒸気および酸素の透過を抑制するガスバリア層を含む場合には、包装体の長期保存が可能となり、さまざまな用途に展開出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明に係る包装袋の一実施態様を模式的に示した平面説明図である。
【
図2】
図2は、
図1のA-A´断面を模式的に示した断面説明図である。
【
図3】
図3は、本発明に係る包装袋を構成する表面積層体及び裏面積層体の一例における層構成を模式的に示した断面説明図である。
【
図4】
図4は、本発明に係る包装袋を構成する表面積層体及び裏面積層体の他の例における層構成を模式的に示した断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下図面を参照しながら、本発明に係る包装袋について詳細に説明する。
図1は、本発明に係る包装袋1の一実施態様を模式的に示した平面説明図である。また、
図2は、
図1
のA-A´断面を模式的に示した断面説明図である。また、
図3は、本発明に係る包装袋を構成する表面積層体2及び裏面積層体3の一例における層構成を模式的に示した断面説明図である。
【0018】
本発明に係る包装袋1は、基材層15と、シーラント層18を少なくとも有する表面積層体2と裏面積層体3のシーラント層同士を対向させ、周縁を熱シールして収納部8を形成してなる包装袋である。収納部8を形成する表面積層体2には、加熱によって発生した水蒸気によって包装袋の内圧が高まった時に自動的に水蒸気を開放するための通蒸機構11を有し、該通蒸機構は、サイドシール部4、5から張り出した突起状のシール部12を形成し、該突起状シール部12内の表面積層体2に全貫通孔または半貫通孔の蒸気抜き孔13を設けたものである。
【0019】
表面積層体2および裏面積層体3の、周縁シール部4~7および突起状シール部12および包装袋の開封位置を除く部分の、基材層15とシーラント層18の間にマイクロ波によって発熱するマイクロ波発熱インキ層17を設けたことを特徴とする。
【0020】
包装袋1を電子レンジで加熱すると、マイクロ波発熱インキ層17がマイクロ波を吸収して発熱し、分解または蒸発してガスを発生するので、積層体の層間に空隙を生じる。この空隙は、断熱効果を有するので、電子レンジで過剰に加熱した場合に、積層体が溶融してピンホールが発生するのを抑制する効果を発揮する。
【0021】
このようなマイクロ波発熱インキ層17は、特許文献2に記載されたような、導電性有機化合物と樹脂を含むインキ組成物を塗布することによって得られる。導電性有機化合物としては、ポリアニリン類、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアセチレン類、ポリイソチアナフテン類、ポリチエニレンビニレン類、ポリパラフェニレン類、ポリパラフェニレンビニレン類、ポリフルオレン類、ポリカルバゾール類、ポリアセン類、ポリチアジル類、ポリエチレンビニレン類、ポリフェニレンスルフィド類、ポリペリナフタレン類、ポリアクリロニトリル類、ポリオキサジアゾール類、ポリインドール類、ポリアズレン類、ポリフラン類、フタロシアニン類およびその誘導体、ポリシラン類、ポリゲルマン類、ポルフィリン類およびその誘導体、グラフェン類またはその誘導体、ペリレン誘導体、テトラチアフルバレン誘導体、含硫黄系複素環化合物、含酸素系複素環化合物、含窒素系複素環化合物、テトラシアノキノジメタン誘導体、フラーレン類、カーボンナノチューブ類、キノン類よりなる群から選択される少なくとも1種を用いることができる。
【0022】
これら導電性有機化合物に加えて、ハロゲン類、ルイス酸、プロトン酸、有機カルボン酸、遷移金属ハロゲン化物、電解質アニオン、有機シアノ化合物、キノン類、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アミノ酸、核酸、界面活性剤、色素、アルキルアンモニウムイオン、四級ホスホニウム塩よりなる群から選択される少なくとも1種をドーパントとして含むこともできる。
【0023】
マイクロ波発熱インキ層17は、表面積層体2および裏面積層体3の、周縁シール部4、5、6、7および前記突起状シール部12および包装袋の開封位置を除く部分にのみ存在するので、各シール部におけるシール強度の低下や、剥離の問題は生じない。また開封位置にも存在しないので、開封時に積層体の剥離が生じて開封しずらいといった問題も生じない。
【0024】
収納部8を形成する表面積層体2には、加熱によって発生した水蒸気によって包装袋の内圧が高まった時に自動的に水蒸気を開放するための通蒸機構11を有する。本発明に係る包装袋の通蒸機構11としては、一例として
図1に示したような、サイドシール部から張り出した突起状のシール部12を形成し、突起状シール部12内の表面積層体2に全貫
通孔または半貫通孔である蒸気抜き孔13を設けたものである。
【0025】
包装袋に収納された内容物が電子レンジで加熱されて水蒸気が発生すると、収納部8の内圧が高まり、突起状シール部12に応力が集中する。その結果、突起状シール部12のシールが後退して剥離し、蒸気抜き孔13から水蒸気が放出される。
【0026】
なお、
図1に示したような通蒸機構の場合には、表面積層体2に予め蒸気抜き孔13を形成した後に、周縁のシール部や突起状シール部12を形成する。
【0027】
本発明に係る包装袋1を構成する積層体に用いる基材層15としては、耐熱性や引張強度に優れた各種合成樹脂フィルムが用いられる。具体的には、延伸ポリプロピレン樹脂(OPP)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)等のポリエステル系樹脂、ナイロン-6、ナイロン-66等のポリアミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂(PC)等の合成樹脂フィルムである。
【0028】
基材層15には、
図4に示したように、水蒸気および酸素の透過を抑制するガスバリア層16を含むことができる。ガスバリア層16としては、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコール共重合体フィルム、ガスバリア性ナイロンフィルム、ガスバリア性ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等のガスバリア性フィルムや、PETフィルム等にアルミニウム等の金属を蒸着した金属蒸着フィルムや、PETフィルムに酸化アルミニウムや酸化珪素等の無機酸化物を蒸着させた無機酸化物蒸着フィルム、あるいは、ポリ塩化ビニリデンコーティング、水溶性樹脂と無機層状化合物を含有する被膜や金属アルコキシドあるいはその加水分解物とイソシアネート化合物を反応させた被膜からなる樹脂層などのガスバリアコーティング層などを用いることができる。特にPETフィルムに蒸着層を設けたガスバリア性フィルムは、そのまま基材層として用いることができる。
【0029】
シーラント層18としては、ポリオレフィン系樹脂が一般的に使用され、具体的には、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-αオレフィン共重合体、エチレン-メタアクリル酸樹脂共重合体などのエチレン系樹脂や、ポリエチレンとポリブテンのブレンド樹脂や、ホモポリプロピレン樹脂(PP)、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-αオレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂等が使用される。
【0030】
各層の貼り合わせには、接着剤を用いたドライラミネート法や、押出機を用いた押出しラミネート法を用いることができる。以下実施例に基いて、本発明に係る包装袋についてさらに具体的に説明する。
【実施例1】
【0031】
基材層として、厚さ15μmのナイロンフィルムを使用し、裏面にマイクロ波発熱インキを用いてマイクロ波発熱インキ層を部分的に形成した。シーラント層として厚さ60μmの無延伸PP樹脂フィルム(CPP)を用いた。両者をドライラミネートして積層体とした。表面積層体となるべき積層体には、予め所定の場所に蒸気抜き孔を設けておいた。この積層体を用いて
図1に示したような包装袋を作成した。包装袋の寸法は、幅130mm、高さ135mmとした。この包装袋に市販の冷凍ハンバーグとデミグラソース(計170g)を充填し、密封シールした後、電子レンジで加熱して、ピンホールの発生の有無を確認した。加熱条件は、600W3分、4分、5分の3段階で、それぞれn=5として実験した。
【0032】
<比較例1>
比較例として、実施例1と同様の材料を用いて、マイクロ波発熱インキ層を含まない積層体を作成し、同様に包装袋を作成し、同様に評価した。その結果を表1にまとめた。
【0033】
【表1】
表1の結果から、本発明の包装袋は、過加熱時のピンホール発生確率が低いことが確認できた。
【符号の説明】
【0034】
1・・・包装袋
2・・・表面積層体
3・・・裏面積層体
4、5・・・サイドシール部
6・・・ボトムシール部
7・・・トップシール部
8・・・収納部
9・・・開封ノッチ
11・・・通蒸機構
12・・・突起状シール部
13・・・蒸気抜き孔
15・・・基材層
16・・・ガスバリア層
17・・・マイクロ波発熱インキ層
18・・・シーラント層