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特許7151263樹脂シート積層体および保護フィルムセット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】樹脂シート積層体および保護フィルムセット
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/023 20190101AFI20221004BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20221004BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
B32B7/023
G02B5/30
G09F9/00 302
G09F9/00 342
G09F9/00 360Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018152640
(22)【出願日】2018-08-14
(65)【公開番号】P2020026103
(43)【公開日】2020-02-20
【審査請求日】2021-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】山本 勝洋
(72)【発明者】
【氏名】塩本 健悟
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/126454(WO,A1)
【文献】特開2018-107259(JP,A)
【文献】特開2011-162650(JP,A)
【文献】特開2017-116882(JP,A)
【文献】国際公開第2017/026211(WO,A1)
【文献】特開2005-173462(JP,A)
【文献】特開2007-284588(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 7/023
G02B 5/30
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有する透光性樹脂シートと、該透光性樹脂シートの両面に、それぞれ、剥離可能に積層された保護フィルムとを有し、
前記透光性樹脂シートは、前記保護フィルムを剥離させた状態で、投射型表示器が備える透光性カバー部材として使用されるものであり、
前記両面の前記保護フィルムの反射率が異なることを特徴とする樹脂シート積層体。
【請求項2】
波長550nmの光の反射率は、前記両面の前記保護フィルムのうち、一方の前記保護フィルムの表面が、他方の前記保護フィルムの表面と比較して低く設定されている請求項1に記載の樹脂シート積層体。
【請求項3】
前記波長550nmの光の反射率は、一方の前記保護フィルムの表面において、5.0%以下であり、一方の前記保護フィルムの表面における反射率と、他方の前記保護フィルムの表面における反射率との差が0.4%以上である請求項2に記載の樹脂シート積層体。
【請求項4】
透光性を有する透光性樹脂シートの両面に、それぞれ、剥離可能に積層される一対の保護フィルムを備える保護フィルムセットであって、
前記透光性樹脂シートは、前記保護フィルムを剥離させた状態で、投射型表示器が備える透光性カバー部材として使用されるものであり、
一方の面に積層される前記保護フィルムと、他方の面に積層される前記保護フィルムとは、その反射率が異なることを特徴とする保護フィルムセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂シート積層体および保護フィルムセットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車に搭載して用いられるヘッドアップディスプレイ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のヘッドアップディスプレイ装置は、レーザ光源からの赤(R)、緑(G)、青(B)のレーザ光をそれぞれ照射して、フロントガラスをスクリーンとして、当該スクリーン上に画像を形成することができるものである。また、このヘッドアップディスプレイ装置は、レーザ光源がハウジングに収納されている。そして、ハウジングには、レーザ光がスクリーンに向かって出射(透過)される、透光性を有する出射窓が設けられている。
【0004】
この出射窓として、偏光子で構成された偏光層と、この偏光層を被覆して設けられた樹脂層とを備え、前記樹脂層が、主としてポリカーボネート樹脂で構成され、偏光層の遅相軸が偏光層の吸収軸とほぼ同一の方向に配置されているカバー部材(透光性樹脂シート)を用いることが提案されている(例えば、特許文献2参照)
【0005】
また、かかる構成のカバー部材は、中央部に凹部が形成されるように湾曲させた湾曲状態で、出射窓として、ハウジングに対して装着されている。
【0006】
したがって、このカバー部材(出射窓)は、このものを透過したレーザ光により表示される画像の表示品位を保つために、縦横方向および上下(表裏)方向の双方において、誤挿入することなく、ハウジングに対して装着されることが求められる。そのため、カバー部材は、ハウジングが備える出射窓の形状に裁断される前には、一般的に、縦横方向が判別可能なように、長尺シートとして構成され、さらに、上下方向が判別可能なように、カバー部材(長尺シート)の上面(表面)および下面(裏面)に、互いに色調が異なる剥離可能な保護フィルムが積層されている。
【0007】
しかしながら、上下方向を判別する場合、カバー部材が透光性を有するため、上面および下面に保護フィルムが積層された状態では、互いに異なる色が混ざり合うことに起因して、上下の色調が同一のものとなり、カバー部材から保護フィルムの少なくとも一部を剥離させるまで、上下の判別が困難であると言う問題があった。
【0008】
なお、このような問題は、上述したヘッドアップディスプレイ装置が備える出射窓(カバー部材)に積層(貼付)される保護フィルムばかりでなく、スマートフォン、PC用ディスプレイ、カーナビゲーションシステム、クラスターおよびセンターインフォメーションディスプレイ等が備える表示部(透光性樹脂シート)に積層される保護フィルムについても同様に生じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2015-225244公報
【文献】特開2017-116882公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、透光性樹脂シートの上面と下面との両面に、それぞれ、保護フィルムを積層した状態で、透光性樹脂シートの上下方向を判別可能な樹脂シート積層体、および、かかる樹脂シート積層体を作製することができる保護フィルムセットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的は、下記(1)~()に記載の本発明により達成される。
(1) 透光性を有する透光性樹脂シートと、該透光性樹脂シートの両面に、それぞれ、剥離可能に積層された保護フィルムとを有し、
前記透光性樹脂シートは、前記保護フィルムを剥離させた状態で、投射型表示器が備える透光性カバー部材として使用されるものであり、
前記両面の前記保護フィルムの反射率が異なることを特徴とする樹脂シート積層体。
【0012】
(2) 波長550nmの光の反射率は、前記両面の前記保護フィルムのうち、一方の前記保護フィルムの表面が、他方の前記保護フィルムの表面と比較して低く設定されている上記(1)に記載の樹脂シート積層体。
【0013】
(3) 前記波長550nmの光の反射率は、一方の前記保護フィルムの表面において、5.0%以下であり、一方の前記保護フィルムの表面における反射率と、他方の前記保護フィルムの表面における反射率との差が0.4%以上である上記(2)に記載の樹脂シート積層体。
【0015】
) 透光性を有する透光性樹脂シートの両面に、それぞれ、剥離可能に積層される一対の保護フィルムを備える保護フィルムセットであって、
前記透光性樹脂シートは、前記保護フィルムを剥離させた状態で、投射型表示器が備える透光性カバー部材として使用されるものであり、
一方の面に積層される前記保護フィルムと、他方の面に積層される前記保護フィルムとは、その反射率が異なることを特徴とする保護フィルムセット。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、透光性樹脂シートの上面と下面との両面に、それぞれ、積層された保護フィルムは、その反射率が互いに異なるものとなっている。したがって、この反射率の異なりに基づいて、透光性樹脂シートの上面と下面との両面に、それぞれ、保護フィルムを積層した状態で、表面に積層されている保護フィルムと、裏面に積層されている保護フィルムとを、判別することができることから、結果的に、透光性樹脂シートの上下方向を判別し得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の樹脂シート積層体が備える透光性樹脂シートを、カバー部材として有する、自動車のヘッドアップディスプレイの実施形態を示す側面図である。
図2図1中の一点鎖線で囲まれた領域[A]の拡大断面図である。
図3図2中のカバー部材の拡大断面図である。
図4図3に示すカバー部材に保護フィルムが積層された樹脂シート積層体を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の樹脂シート積層体および保護フィルムセットを添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0019】
まず、本発明の樹脂シート積層体および保護フィルムセットを説明するのに先立って、本発明の樹脂シート積層体が備える透光性樹脂シートを、カバー部材(透光性カバー部材)として有する、自動車のヘッドアップディスプレイ(投射型表示器)について説明する。
【0020】
<ヘッドアップディスプレイ>
図1は、本発明の樹脂シート積層体が備える透光性樹脂シートを、カバー部材として有する、自動車のヘッドアップディスプレイの実施形態を示す側面図である。図2は、図1中の一点鎖線で囲まれた領域[A]の拡大断面図である。図3は、図2中のカバー部材の拡大断面図、図4は、図3に示すカバー部材に保護フィルムが積層された樹脂シート積層体を示す拡大断面図である。なお、以下では、説明の都合上、図1図4中の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言う。また、図1図2中の左側を「前」または「前方」、右側を「後」または「後方」と言う。また、図3図4中では、理解を容易にするため、カバー部材を平坦な状態で図示するとともに、厚さ方向を誇張して模式的に図示している。
【0021】
図1に示すように、ヘッドアップディスプレイ10(Head-Up Display)は、自動車100に搭載して用いられる。このヘッドアップディスプレイ10は、自動車100のダッシュボード101の上部に内蔵されている。
【0022】
図2に示すように、ヘッドアップディスプレイ10は、光源11と、反射部材12と、収納体13とを備えている。
【0023】
光源11は、赤(R)、緑(G)、青(B)それぞれの色のレーザ光LSを独立して照射することができる。そして、光源11を走査しつつ、各色のレーザ光LSの照射タイミング等を制御することにより、画像を形成することができる。
【0024】
反射部材12は、例えば、プリズムで構成されており、光源11からのレーザ光LSを反射することができる。反射部材12で反射されたレーザ光LSは、フロントガラス102をスクリーンとして、当該フロントガラス102の裏面102a(内側の面)に投影される。この投影光は、前記画像として運転手Hに認識される(図1図2参照)。
【0025】
図2に示すように、収納体13(ハウジング)は、箱状をなし、その内側に、光源11や反射部材12、その他、ヘッドアップディスプレイ10を構成する部品等を収納することができる。また、収納体13は、フロントガラス102側に向かって開口した開口部で構成された窓部131を有している。この窓部131を介して、レーザ光LSは、収納体13の外部、すなわち、フロントガラス102に向かって出射される。
【0026】
また、収納体13の窓部131には、透光性を有するカバー部材1が当該窓部131を覆うように設置されている。これにより、レーザ光LSのフロントガラス102に向けた出射が可能となるとともに、塵や埃等の異物が窓部131を介して収納体13内に侵入するのを防止することができる。したがって、光源11のレンズや反射部材12が当該異物によって曇ったり汚れたりするのを防止することができる。
【0027】
図3に示すように、カバー部材1は、光透過性を有するが、本実施形態では、第1の樹脂層2と、第2の樹脂層3Aおよび第2の樹脂層3Bと、接合層4Aおよび接合層4Bと、ハードコート層5Aおよびハードコート層5Bとを備える積層板で構成される。以下、各層について説明する。
【0028】
第1の樹脂層2は、カバー部材1の厚さ方向の中央に位置する中間層であり、その厚さtがカバー部材1の面方向に一定の部分である。
【0029】
この第1の樹脂層2は、主としてポリビニルアルコール(PVA)樹脂で構成されている。
【0030】
第1の樹脂層2は、本実施形態では、ポリビニルアルコール樹脂に、ヨウ素や二色性染料等に代表される二色性色素で染色し、ホウ素化合物等で架橋したものとなっている。なお、この場合、第1の樹脂層2におけるポリビニルアルコール樹脂の含有量は、1%以上8%以下であるのが好ましく、2%以上5%以下であるのがより好ましい。
【0031】
また、第1の樹脂層2は、前記構成材料からなるシート材(フィルム)を加工したものとなっている。すなわち、当該シート材は、カバー部材1での第1の樹脂層2の厚さtよりも厚いシート材であり、そのシート材を厚さtとなるまで一方向に向かって延伸した延伸状態とすることにより、第1の樹脂層2が得られる。これにより、第1の樹脂層2は、その層中において、ポリビニルアルコール樹脂(高分子)が延伸した一方向に沿って配列することに起因して、偏光子として機能する偏光層となる。
【0032】
厚さtとしては、特に限定されず、例えば、0.01mm以上0.03mm以下であるのが好ましい。厚さtが0.01mm未満であると、第1の樹脂層2が偏光子としての機能が十分に発揮されないおそれがあり、また、厚さtが0.03mmを超えても、それ以上の偏光子としての機能の向上は望めない。
【0033】
第1の樹脂層2の屈折率としては、特に限定されず、例えば、1.52以上1.67以下であるのが好ましく、1.54以上1.60以下であるのがより好ましい。
【0034】
図3に示すように、第1の樹脂層2の上面21側には、第2の樹脂層3Aが配置され、下面22側には、第2の樹脂層3Bが配置されている。第2の樹脂層3Aと第2の樹脂層3Bとは、配置箇所が異なり、また第2の樹脂層3Aが金属酸化物で構成される粒子31を含むこと以外は、同じ構成であるため、以下、第2の樹脂層3Aについて代表的に説明する。
【0035】
第2の樹脂層3Aは、主としてポリカーボネート樹脂で構成されている。このポリカーボネート樹脂としては、その重量平均分子量が19000以上40000以下であるのが好ましく、19500以上35000以下であるのがより好ましい。これにより、第2の樹脂層3Aは、例えば、十分な耐衝撃性を有するものとなる。
【0036】
また、第2の樹脂層3Aは、金属酸化物の粒子31を含有するポリカーボネート樹脂のシート材を加工したものである。すなわち、当該シート材は、カバー部材1での第2の樹脂層3Aの厚さt3Aよりも厚いシート材であり、そのシート材を厚さt3Aとなるまで一方向に向かって延伸した延伸状態とすることにより、第2の樹脂層3Aが得られる。これにより、第2の樹脂層3Aは、その層中において、ポリカーボネート樹脂(高分子)が延伸した一方向に沿って配列する。これにより、第2の樹脂層3Aは、リタデーション(複屈折率×厚さ)および厚さ方向位相差(Rth)を有するものとなる。なお、例えば、リタデーションとしては、2400nm以上6000nm以下となるのが好ましく、3000nm以上5600nm以下となるのがより好ましい。
【0037】
第2の樹脂層3Aの厚さt3A(第2の樹脂層3Bの厚さt3Bについても同様)は、好ましくは0.2mm以上0.35mm以下であり、より好ましくは0.23mm以上0.30mm以下である。厚さt3Aが前記下限値未満であると、第2の樹脂層3Aが前記リタデーションを有するものとなるのが望めないおそれがあり、また、厚さt3Aが前記上限値を超えても、それ以上の機能の向上を望めないおそれがある。また、厚さt3Aと厚さt3Bとは、異なっていてもよいが、同じであるのが好ましい。厚さt3Aと厚さt3Bとが同じである場合、高温下にさらされた際、反りの発生が少ないと言う利点がある。
【0038】
このような構成の第2の樹脂層3Aと、第2の樹脂層3Aから粒子31を省略した構成の第2の樹脂層3Bとは、それぞれ、その遅相軸が第1の樹脂層2の吸収軸と同じ方向となるように配置されている。すなわち、第2の樹脂層3A(第2の樹脂層3B)中において、ポリカーボネート樹脂(高分子)が一方向に沿って配列する方向と、第1の樹脂層2中において、ポリビニルアルコール樹脂が一方向に沿って配列する方向とが同一となるように、第2の樹脂層3A(第2の樹脂層3B)は、第1の樹脂層2に対して配置されている。
【0039】
なお、「遅相軸」とは、第2の樹脂層3Aや第2の樹脂層3Bを透過する光の進む速度が遅い(位相が遅れる)方位のことであり、これと反対に、光の進む速度が速い(位相が進む)方位をその位相子の「進相軸」と言う。なお、遅相軸と吸収軸とのズレは、±5度以内までなら許容される。
【0040】
そして、カバー部材1をヘッドアップディスプレイ10に用いた使用状態では、図3に示すように、ヘッドアップディスプレイ10の外部から照射される外光、すなわち、太陽光(自然光)OLは、カバー部材1を透過する際に、所定の偏光方向の光がカバー部材1で吸収され、残りの光OL’が収納体13にまで到達することとなる。これにより、太陽光OLの収納体13内への侵入が抑制され、よって、収納体13内の光源11や反射部材12等が太陽光OL(特に紫外線や熱)によって経時的に劣化するのをできる限り防止することができる。一方、光源11から発せられ、フロントガラス102上で画像を形成するレーザ光LSは、偏光光が用いられている。そのため、カバー部材1を透過しても当該カバー部材1で吸収されずにそのまま外部へ出射される。なお、レーザ光LSの偏光方向と、光OL’の偏光方向とは、同じである。このようにカバー部材1は、偏光板としても機能する。
【0041】
また、前述したように、第1の樹脂層2の両面側にそれぞれ第2の樹脂層3Aおよび第2の樹脂層3Bが設けられている。この構成は、第1の樹脂層2の片面側に第2の樹脂層3Aまたは第2の樹脂層3Bが設けられている場合に比べて、太陽光OLを吸収する効果が増大するのに寄与する。
【0042】
図2に示すように、カバー部材1は、その使用状態で収納体13側が凸、フロントガラス102側が凹となるように湾曲して窓部131に装着されている。これにより、カバー部材1は、太陽光OLを反射し易いものとなり、当該太陽光OLの収納体13内への侵入をさらに抑制することができる。また、例えば、カバー部材1がダッシュボード101から突出するのを防止することができ、よって、当該カバー部材1が運転手Hの視界を遮るのを、的確に抑制または防止することができる。
【0043】
第2の樹脂層3Aおよび第2の樹脂層3Bの屈折率としては、特に限定されず、例えば、1.58以上1.60以下であるのが好ましく、1.585以上1.595以下であるのがより好ましい。
【0044】
また、図3に示すように、第2の樹脂層3Aには、金属酸化物で構成される粒子31が分散して含有されている。かかる構成の粒子31は、太陽光OLに含まれる赤外線を吸収することができるIR(Infrared Rays)カット材として機能する。これにより、例えば、炎天下での収納体13内の温度上昇を抑制して、熱による光源11等の劣化を、的確に抑制または防止することができる。
【0045】
また、使用状態のカバー部材1は、すなわち、窓部131に装着されたカバー部材1は、金属酸化物を含有する第2の樹脂層3A側がフロントガラス102に臨み、第2の樹脂層3B側が収納体13に臨む。これにより、収納体13内からできる限り遠位で赤外線を吸収することができ、よって、収納体13内の温度上昇抑制に寄与する。
【0046】
なお、粒子31(第2の樹脂層3A)による赤外線の吸収を必要としない場合には、第2の樹脂層3Bは、粒子31の添加が省略されたものであってもよい。
【0047】
また、本実施形態では、第1の樹脂層2と第2の樹脂層3Aとは、接合層4Aを介して接合され、第1の樹脂層2と第2の樹脂層3Bとは、接合層4Bを介して接合されている。
【0048】
接合層4Aおよび接合層4Bは、それぞれ、ウレタン接着剤、エポキシ接着剤、アクリル接着剤、アクリル粘着剤等の各種接着剤または粘着剤である。これにより、各層同士の接合を確実に行なうことができ、カバー部材1は長期間の使用に耐え得るものとなる。
【0049】
接合層4Aの厚さt4A、接合層4Bの厚さt4Bとしては、特に限定されず、例えば、0.005mm以上0.02mm以下であるのが好ましく、0.006mm以上0.015mm以下であるのがより好ましい。厚さt4A、厚さt4Bが前記下限値未満であると、接着力の低下を招くことがあり、また、厚さt4A、厚さt4Bが前記上限値を超えても、それ以上の接着力の向上を望めない。また、厚さt4Aと厚さt4Bとは、異なっていてもよいが、同じであるのが好ましい。
【0050】
接合層4Aや接合層4Bの屈折率としては、特に限定されず、例えば、1.46以上1.55以下であるのが好ましく、1.461以上1.545以下であるのがより好ましい。
【0051】
さらに、第2の樹脂層3A上には、ハードコート層5Aが設けられている。これにより、比較的傷がつき易い第2の樹脂層3Aを保護することができる。なお、ハードコート層5Aは、紫外線硬化性樹脂で構成され、当該ハードコート層5Aとなるワニス状の材料を第2の樹脂層3A上に塗布して、この塗布されたものに紫外線を照射することにより硬化したものである。
【0052】
同様に、第2の樹脂層3B上にも、ハードコート層5Bが設けられている。これにより、比較的傷がつき易い第2の樹脂層3Bを保護することができる。ハードコート層5Bも、紫外線硬化性樹脂で構成され、当該ハードコート層5Bとなるワニス状の材料を第2の樹脂層3B上に塗布して、この塗布されたものに紫外線を照射することにより硬化したものである。なお、カバー部材1では、ハードコート層5Bを省略することもできる。
【0053】
ハードコート層5Aおよびハードコート層5Bを構成する紫外線硬化性樹脂としては、例えば、アクリル系化合物を主成分とする紫外線硬化性樹脂、ウレタンアクリレートオリゴマーまたはポリエステルウレタンアクリレートオリゴマーを主成分とする紫外線硬化性樹脂、エポキシ系樹脂、ビニルフェノール系樹脂の群から選ばれる少なくとも1種を主成分とする紫外線硬化性樹脂等が挙げられる。そして、これらの中でもアクリル系化合物を主成分とする紫外線硬化性樹脂が好ましい。これにより、各樹脂層との密着性を向上することができる。
【0054】
ハードコート層5Aの厚さt5A、ハードコート層5Bの厚さt5Bとしては、特に限定されず、例えば、0.002mm以上0.020mm以下であるのが好ましく、0.003mm以上0.015mm以下であるのがより好ましい。また、厚さt5Aと厚さt5Bとは、異なっていてもよいが、同じであるのが好ましい。
【0055】
ハードコート層5Aやハードコート層5Bの屈折率としては、特に限定されず、例えば、1.40以上1.60以下であるのが好ましく、1.450以上1.595以下であるのがより好ましい。
【0056】
以上のような構成のカバー部材1は、その総厚tが例えば0.4mm以上1.0mm以下であるのが好ましく、0.4mm以上0.8mm以下であるのがより好ましい。これにより、カバー部材1をできる限り薄いものとすることができるとともに、自動車100内での通常の使用に耐え得る程度の剛性を有するものとすることができる。
【0057】
また、カバー部材1は、その平面視で長方形をなすものであり、縦が50mm以上200mm以下であるのが好ましく、60mm以上190mm以下であるのがより好ましく、横が100mm以上400mm以下であるのが好ましく、130mm以上380mm以下であるのがより好ましい。
【0058】
さて、かかる構成のカバー部材1では、前述の通り、第1の樹脂層2および第2の樹脂層3A、3Bは、それぞれ、一方向に向かって延伸した延伸状態とすることにより形成されたものである。そのため、ポリビニルアルコール樹脂およびポリカーボネート樹脂(高分子)が、それぞれ、これらの層中において、延伸した一方向(延伸方向)に沿って配列している。そして、このように各層中において、高分子が延伸方向に沿って配列することに起因して形成された、第1の樹脂層2の吸収軸と、第2の樹脂層3A、3Bの遅相軸とが、同じ方向となるように配置されている。そのため、カバー部材1は、縦横方向において、誤挿入することなく、収納体13が備える窓部131に対して装着されることが求められる。
【0059】
さらに、例えば、第2の樹脂層3A、3Bでは、層中におけるポリカーボネート樹脂は、厚さ方向に対しても配向性を備えた状態で、延伸方向に沿って配列しており、この厚さ方向に対する配向の度合いに応じて、厚さ方向位相差(Rth)が設定される。また、本実施形態では、第2の樹脂層3Aは、粒子31を含有し、第2の樹脂層3Bは、粒子31を含有しない構成となっている。これらのことから、カバー部材1は、ヘッドアップディスプレイ10の表示品位を一定に保つために、上下(表裏)方向においても、誤挿入することなく、窓部131に対して装着されることが求められる。なお、第2の樹脂層3Aを、粒子31を含有しない構成とした場合においても、厚さ方向位相差(Rth)に起因する、ヘッドアップディスプレイ10の表示品位を一定に保つ観点から、上下方向における誤挿入を防止することが求められる。
【0060】
したがって、カバー部材1は、収納体13(ハウジング)が備える窓部131(出射窓)の形状に対応して裁断される前、すなわち、カバー部材1の保管・輸送時には、縦横方向が判別可能なように、長尺状をなす長尺シートとして構成され、さらに、上下(表裏)方向が判別可能なように、カバー部材1(長尺シート)の上面51(表面)および下面52(裏面)に、それぞれ、剥離することが可能な保護フィルム150Aおよび保護フィルム150Bが積層されている(図4参照)。すなわち、カバー部材1(透光性樹脂シート)は、その裁断前には、保護フィルム150A、150Bが形成(積層)された樹脂シート積層体200とした状態で、保管および/または輸送され、裁断する際に、樹脂シート積層体200から保護フィルム150A、150Bが剥離され、カバー部材1の状態として裁断される。
【0061】
ここで、カバー部材1の上面51(表面)および下面52(裏面)に、それぞれ、保護フィルム150Aおよび保護フィルム150Bを積層して、カバー部材1の上下方向を判別するための手法として、例えば、保護フィルム150Aおよび保護フィルム150Bの色調を互いに異なるものとする手法が考えられる。しかしながら、かかる手法では、カバー部材1が透光性を有するため、上面51および下面52にそれぞれ保護フィルム150Aおよび保護フィルム150Bを積層した状態では、互いに異なる色が混ざり合うことに起因して、樹脂シート積層体200の上下の色調が同一のものとなり、カバー部材1から保護フィルム150A、150Bの少なくとも一部を剥離させるまで、上下の判別が困難であると言う問題が生じる。
【0062】
さらに、上下方向を判別するための手法として、保護フィルム150Aおよび保護フィルム150Bに、それぞれ、上(裏)および下(表)のような互いに異なるマーキングを施す手法が考えられる。しかしながら、かかる手法では、カバー部材1(樹脂シート積層体200)を裁断する大きさに応じて、マーキングする位置を変更する必要性が生じ、時間と手間を要する。また、上面51および下面52にそれぞれ保護フィルム150Aおよび保護フィルム150Bを積層した後に、保護フィルム150A、150Bにマーキングを施す場合には、マーキング時の跡が上面51および下面52に転写されると言う問題が生じるおそれがある。
【0063】
これに対して、本発明では、上下方向を判別するための他の手法として、保護フィルム150Aおよび保護フィルム150Bとして、互いの反射率が異なるものを積層する手法が用いられている。すなわち、カバー部材1の両面(上面51、下面52)に、それぞれ、剥離可能に積層された保護フィルム150Aおよび保護フィルム150Bを、樹脂シート積層体200が備えるものとし、両面の保護フィルム150A、150Bの反射率を異なるもの(本発明の保護フィルムセット)とする手法が用いられている。かかる手法を用いることにより、保護フィルム150A、150Bの表面における反射率の異なりに基づいて、保護フィルム150Aと保護フィルム150Bとを区別することで、樹脂シート積層体200(カバー部材1)の上下の判別が行われる。そのため、カバー部材1が透光性を有していたとしても、保護フィルム150A、150Bの反射率に対して、反対側に位置する保護フィルム150A、150Bの反射率が影響を及ぼすことがないため、保護フィルム150Aと保護フィルム150Bとを確実に区別し得ることから、樹脂シート積層体200(カバー部材1)の上下の判別を容易に行うことができる。保護フィルム150A、150Bに対してマーキングを施す必要もないことから、マーキングを形成するための時間と手間を要することもないし、マーキング時の跡が上面51および下面52に転写されることもない。
【0064】
このような保護フィルム150A、150Bは、好ましくは波長380nm以上780nm以下の範囲内、より好ましくは550nm程度における光の反射率が異なるように設定されている。これにより、保護フィルム150A、150Bの反射率の異なりに基づいて、樹脂シート積層体200の上下の判別をより確実に行うことができるようになる。
【0065】
なお、反射率の異なりに基づく保護フィルム150A、150Bの区別は、具体的には、波長550nmの光の反射率に基づいて区別する場合、上面51および下面52の両面のうち一方の保護フィルムの表面を、他方の保護フィルムの表面と比較して、波長550nmの光の反射率が低いものとされている。これにより、保護フィルム150Aと、保護フィルム150Bとの区別を比較的容易に行うことができる。
【0066】
さらに、この場合、波長550nmの光の反射率は、一方の保護フィルムの表面において、5.0%以下であり、一方の前記保護フィルムの表面における反射率と、他方の保護フィルムの表面における反射率との差が0.4%以上であることが好ましい。これにより、反射率が低い一方の保護フィルムにおいて、写像(鮮明)性が得られず、反射率が高い他方の保護フィルムにおいて、写像(鮮明)性が得られることから、人の眼により、保護フィルム150Aと、保護フィルム150Bとの区別(識別)をより容易に行うことができる。
【0067】
また、保護フィルム150Aおよび保護フィルム150Bは、その表面粗さが異なるものであることが好ましい。反射率の他に、さらに、表面粗さが異なることで、保護フィルム150Aと保護フィルム150Bとの区別を、より容易に実施することができる。
【0068】
表面粗さを異なるものとする場合、JIS B 0601に準拠して測定される表面粗さは、一方の保護フィルムにおいて、0.04μm以上であり、一方の前記保護フィルムにおける表面粗さと、他方の保護フィルムにおける表面粗さとの差が0.1μm以上であることが好ましい。これにより、人の眼による、保護フィルム150Aと、保護フィルム150Bとの区別(識別)を、より容易に行うことが可能となる。
【0069】
以上のような保護フィルム150Aと、保護フィルム150Bとは、それぞれ、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂のうちの少なくとも1種を主材料とする単層体または積層体で構成され、各層に含まれる構成材料の組み合わせを、適宜、変更することで、一方の保護フィルムの反射率と、他方の保護フィルムの反射率とに差を生じさせて、一方の保護フィルムの反射率が低く、他方の保護フィルムの反射率が高く設定されている。
【0070】
なお、本明細書において、(メタ)アクリル系樹脂とは、(メタ)アクリル酸およびその誘導体の重合体、あるいは(メタ)アクリル酸およびその誘導体と他の単量体との共重合体を意味する。ここで、(メタ)アクリル酸等と表記するときは、アクリル酸またはメタクリル酸を意味する。
【0071】
(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリアクリル酸-2-エチルヘキシル等のポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸ブチル等のポリメタクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル、ポリアクリルアミド、アクリル酸ブチル-アクリル酸エチル-アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル-スチレン共重合体、メタクリル酸メチル-スチレン共重合体、メタクリル酸メチル-アクリロニトリル共重合体、メタクリル酸メチル-α-メチルスチレン共重合体、アクリル酸ブチル-アクリル酸エチル-アクリロニトリル-2-ヒドロキシエチルメタクリレート-メタクリル酸共重合体、アクリル酸ブチル-アクリル酸エチル-アクリロニトリル-2-ヒドロキシエチルメタクリレート-アクリル酸共重合体、アクリル酸ブチル-アクリロニトリル-2-ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体、アクリル酸ブチル-アクリロニトリル-アクリル酸共重合体、アクリル酸エチル-アクリロニトリル-N,Nジメチルアクリルアミド共重合体等が挙げられる。
【0072】
また、オレフィン系樹脂としては、α-オレフィンの単独重合体またはα-オレフィンと他の共重合可能な単量体との共重合体等が挙げられ、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブテン、1,2-ポリブタジエン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。
【0073】
なお、前記共重合体は、ブロック共重合体およびランダム共重合体のうちの何れであってもよい。
【0074】
このような保護フィルム150A、150Bの具体的な構成材料の組み合わせとしては、例えば、PEを主材料とする第1層とEVAを主材料とする第2層とを備える積層体を反射率が低い一方の保護フィルムとし、PPを主材料とする第1層と(メタ)アクリル系樹脂を主材料とする第2層とを備える積層体を反射率が高い他方の保護フィルムとする組み合わせや、PEを主材料とする第1層と(メタ)アクリル系樹脂を主材料とする第2層とを備える積層体を反射率が低い一方の保護フィルムとし、PPを主材料とする第1層とEVAを主材料とする第2層とを備える積層体を反射率が高い他方の保護フィルムとする組み合わせが挙げられる。なお、保護フィルム150A、150Bを、上記のような第1層と第2層との積層体とする場合、保護フィルム150A、150Bは、第2層をカバー部材1側として、カバー部材1に貼付(積層)される。
【0075】
また、保護フィルム150A、150Bは、その平均厚さが 20μm以上100μm以下であることが好ましく、30μm以上80μm以下であることがより好ましい。これにより、前述した保護フィルム150A、150Bとしての機能を確実に発揮させることができる。
【0076】
以上、本発明の樹脂シート積層体および保護フィルムセットについて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、保護フィルムを単層体または多層体(積層体)のいずれで構成する場合であっても、構成する各層は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。
【0077】
さらに、前記実施形態では、本発明の保護フィルムセットが透光性樹脂シートに積層された樹脂シート積層体(本発明の樹脂シート積層体)における前記透光性樹脂シートを、自動車のヘッドアップディスプレイ(投射型表示器)が備えるカバー部材(透光性カバー部材)に適用した場合について説明したが、前記透光性樹脂シートは、このようなカバー部材に限らず、光透過性を有するものであれば材質に制限を受けず、例えば、スマートフォン、PC用ディスプレイ、カーナビゲーションシステム、クラスターおよびセンターインフォメーションディスプレイ等が備える表示部等であってもよい。
【実施例
【0078】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0079】
1.保護フィルムの準備
まず、各実施例および各比較例の樹脂シート積層体を形成するために用いた保護フィルムとして以下に示すものを用意した。
【0080】
<LDPEフィルム1>
波長550nmの光の反射率が5.30%、表面粗さRzが0.05μmのLDPEフィルム(粘着面:アクリル系粘着剤)(色:透明、厚さ:65.0μm)
<LDPEフィルム2>
波長550nmの光の反射率が5.30%、表面粗さRzが0.04μmのLDPEフィルム(粘着面:アクリル系粘着剤)(色:青、厚さ:65.0μm)
<ポリプロピレンフィルム1>
波長550nmの光の反射率が4.90%、表面粗さRzが0.15μmのポリプロピレンフィルム(粘着面:アクリル系粘着剤)(色:透明、厚さ:45.0μm)
<LDPEフィルム3>
波長550nmの光の反射率が4.90%、表面粗さRzが0.05μmのLDPEフィルム(粘着面:アクリル系粘着剤)(色:青、厚さ:65.0μm)
<HDPEフィルム1>
波長550nmの光の反射率が4.90%、表面粗さRzが0.28μmのHDPEフィルム(粘着面:EVA系粘着剤)(色:緑、厚さ:60.0μm)
<HDPEフィルム2>
波長550nmの光の反射率が4.90%、表面粗さRzが0.16μmのHDPE(接着面:オレフィン系粘着剤)(色:白、厚さ:40.0μm)
<ポリプロピレンフィルム2>
波長550nmの光の反射率が4.30%、表面粗さRzが1.08μmのポリプロピレンフィルム(粘着面:LLDPE系粘着剤)(色:白、厚さ:50.0μm)
<LDPEフィルム4>
波長550nmの光の反射率が4.90%、表面粗さRzが0.13μmのLDPEフィルム(粘着面:オレフィン系粘着剤)(色:透明、厚さ:50.0μm)
【0081】
なお、各保護フィルムの反射率は、分光光度計(日本分光社製、「V-670」)を用いて、5度入射で、380nm~780nmの範囲内で測定した。また、各保護フィルムの表面粗さRzは、JIS B 0601に準拠して、分光光度計(東京精密社製、「HADY SURF E-35A」)を用いて、カットオフ:0.80mm、評価長さ:4.0mmの条件で測定した。
【0082】
2.樹脂シート積層体の製造
(実施例1)
透光性樹脂シートとして、縦50mm×横50mmのポリカーボネート樹脂性基板( 住友ベークライト社製、「ファインライトECLR100V2」、厚さ500μm)を用意し、この透光性樹脂シートの表面(上面)および裏面(下面)に、それぞれ、LDPEフィルム1およびポリプロピレンフィルム1を貼付(積層)することで、実施例1の樹脂シート積層体を得た。
【0083】
(実施例2~実施例4、比較例1~比較例3)
透光性樹脂シートの表面および裏面に、それぞれ、貼付する保護フィルムの組み合わせを、表1に示すように変更したこと以外は、前記実施例1と同様にして、実施例2~実施例4、比較例1~比較例3の樹脂シート積層体を得た。
【0084】
3.評価
各実施例および各比較例の樹脂シート積層体を、以下の方法で評価した。
【0085】
<1>保護フィルムの反射率の差
まず、各実施例および各比較例の樹脂シート積層体を構成する2つの保護フィルムについて、それぞれ、分光光度計(日本分光社製、「V-670」)を用いて、5度入射の反射率を380nm~780nmの範囲内で測定を行った。
【0086】
そして、各保護フィルムの反射率として、550nmの波長において評価を行い、その結果に基づいて、2つの保護フィルムにおける、反射率の差の絶対値を求めた。
【0087】
<2>保護フィルムの識別性
各実施例および各比較例の樹脂シート積層体について、それぞれ、樹脂シート積層体から保護フィルムを剥離させることなく、照度600Lxの環境下で樹脂シート積層体の表裏の判定を行った。そして、表裏が判定できたものを○、判定が困難だったものを×として評価を行った。
【0088】
以上のようにして得られた各実施例および各比較例の樹脂シート積層体における評価結果を、それぞれ、下記の表1に示す。
【0089】
【表1】
【0090】
表1に示したように、各実施例における樹脂シート積層体では、表面および裏面に、それぞれ、貼付された2つの保護フィルムの反射率が異なることに起因して、保護フィルムを剥離させることなく、樹脂シート積層体の表裏の判定を行うことができた。
【0091】
これに対して、各比較例における樹脂シート積層体では、表面および裏面に、それぞれ、貼付された2つの保護フィルムに反射率の差が認められず、その結果、樹脂シート積層体の表裏を判定することができなかった。
【符号の説明】
【0092】
1 カバー部材
2 第1の樹脂層
21 上面
22 下面
3A、3B 第2の樹脂層
31 粒子
4A、4B 接合層
5A、5B ハードコート層
51 上面
52 下面
10 ヘッドアップディスプレイ(Head-Up Display)
11 光源
12 反射部材
13 収納体
131 窓部
100 自動車
101 ダッシュボード
102 フロントガラス
102a 裏面(内側の面)
150A、150B 保護フィルム
200 樹脂シート積層体
H 運転手
LS レーザ光
OL 太陽光(自然光)
OL’ 光
総厚
、t3A、t3B、t4A、t4B、t5A、t5B 厚さ
図1
図2
図3
図4