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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20221004BHJP
   F25B 43/00 20060101ALI20221004BHJP
   C09K 5/04 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
F25B1/00 396B
F25B1/00 396Z
F25B43/00 E
C09K5/04 F
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018162588
(22)【出願日】2018-08-31
(65)【公開番号】P2020034249
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇津井 政彦
(72)【発明者】
【氏名】近藤 将弘
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/145826(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/136979(WO,A1)
【文献】特開2017-040464(JP,A)
【文献】特開2013-204951(JP,A)
【文献】特開平11-014199(JP,A)
【文献】特開2016-102631(JP,A)
【文献】特開2008-209059(JP,A)
【文献】特開平03-160277(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F25B 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
HFO-1123冷媒と、前記HFO-1123冷媒よりも沸点が高く、かつ前記HFO-1123冷媒よりも不均化反応を起こし難い少なくとも1種類の高沸点冷媒とを混合した非共沸混合冷媒が充填された冷媒回路と、
前記冷媒回路に接続された圧縮機と、
前記冷媒回路と前記圧縮機とに接続され、前記圧縮機から前記冷媒回路を経て流入した冷媒をガス冷媒と液冷媒とに分離するアキュムレータと、
前記圧縮機から吐出される前記非共沸混合冷媒の温度または圧力が各々の所定の閾値を超えたときに前記圧縮機を停止させる制御部と、を備え、
前記アキュムレータは、分離した前記ガス冷媒を前記アキュムレータから前記圧縮機へ送る吸入内管を有し、
前記吸入内管は、前記アキュムレータの内部に溜まった前記液冷媒を前記吸入内管に流入させる少なくとも1つの戻し穴を有し、
前記戻し穴の開口面積の総和は、0.7[mm ]を超えるように形成され、
前記非共沸混合冷媒の温度及び圧力が各々の前記閾値以下であるときに前記圧縮機の内部において前記非共沸混合冷媒の総量に対して前記HFO-1123冷媒が占める重量比が70[wt%]よりも小さくなるように、前記アキュムレータから前記圧縮機へ前記高沸点冷媒を戻すことが可能にされ、
前記制御部は、前記非共沸混合冷媒の温度が85[℃]を超えたとき、または前記非共沸混合冷媒の圧力が6.0[MPa]を超えたときに前記圧縮機を停止させる、冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記圧縮機には、潤滑油が貯留され、
前記潤滑油は、前記高沸点冷媒に対する相溶性を有し、前記高沸点冷媒の温度が0[℃]飽和圧力の状態で前記潤滑油に対する前記高沸点冷媒の溶解度が0.1[wt%]以上である、
請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、空気調和機、冷蔵機器、給湯器等の冷凍サイクル装置には、冷媒が循環する冷媒回路に、圧縮機及びアキュムレータが接続されたものがある。このような冷凍サイクル装置では、冷媒として、GWP(Global Warming Potential:地球温暖化係数)が低いHFO-1123冷媒を使用することが提案されている。HFO-1123冷媒は、高温、高圧の条件下で大きな発熱を伴う不均化反応を起こし易い。HFO-1123冷媒は、例えば、圧縮機の内部の摺動部分で発生する異常摩耗に伴う高温が着火源となって不均化反応を起こす。冷凍サイクル装置において不均化反応が生じた場合、温度や圧力の急激な上昇によって、圧縮機やこれに接続された冷媒配管が損傷するおそれがある。
【0003】
このため、HFO-1123冷媒を使用する場合は、HFO-1123冷媒と不均化反応を起こさない冷媒を混合した混合冷媒を用いることにより、HFO-1123冷媒を単体で用いる場合と比べて、HFO-1123冷媒の不均化反応が起きることを抑える技術がある。例えば、特許文献1には、HFO-1123冷媒に不均化反応を起こさないR1234yf冷媒を混合した混合冷媒を冷凍サイクル装置に用い、HFO-1123冷媒とR1234yf冷媒の合計量に対するHFO-1123冷媒の比率を所定の範囲とすることで、不均化反応を抑えることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2017/145245号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
HFO-1123冷媒に混合する冷媒として、HFO-1123冷媒よりも沸点が高く、かつ、HFO-1123冷媒よりも不均化反応を起こし難いまたは不均化反応を起こさない冷媒(以下、高沸点冷媒と称する。)をHFO-1123冷媒と混合した非共沸混合冷媒を冷凍サイクル装置に使用した場合、冷凍サイクル装置の運転時、冷媒回路に接続されたアキュムレータの内部には、非共沸混合冷媒における2つの冷媒の沸点の違いに起因して、高沸点冷媒が占める比率が大きい液冷媒が溜まる傾向がある。ここで、不均化反応を起こし難い冷媒とは、非共沸混合冷媒における比率がHFO-1123冷媒と同じであるときに、HFO-1123冷媒よりも高い温度または圧力で不均化反応を起こす冷媒である。
【0006】
このため、アキュムレータから圧縮機へ吸入される非共沸混合冷媒に占めるHFO-1123冷媒の比率が高くなってしまう。非共沸混合冷媒に占めるHFO-1123冷媒の比率と、非共沸混合冷媒に不均化反応が発生する温度及び圧力との間には、HFO-1123冷媒の比率が高くなるほど、不均化反応が発生する温度及び圧力が低くなる関係がある。したがって、圧縮機内での非共沸混合冷媒に占めるHFO-1123冷媒の比率が大きくなることにより、非共沸混合冷媒に不均化反応が起きる温度、圧力が低下するので、圧縮機の内部で不均化反応が起こり易くなる問題がある。
【0007】
一方、冷凍サイクル装置では、圧縮機の使用上における冷媒の温度及び圧力の各上限値がある。冷凍サイクル装置では、圧縮機から吐出される冷媒の温度及び圧力をセンサによって検出することで、温度及び圧力が各上限値を超えるおそれがある場合に、制御回路によって圧縮機を停止させる保護制御を行っている。このため、HFO-1123冷媒を含む非共沸混合冷媒を使用する際、HFO-1123冷媒が不均化反応を起こす温度及び圧力が、保護制御によって圧縮機を停止させる温度及び圧力よりも高い場合には、圧縮機の内部で不均化反応が発生する前に圧縮機が停止されるので、圧縮機の内部で不均化反応が発生することを抑えられる。しかしながら、上述のように非共沸混合冷媒に占めるHFO-123冷媒の比率の変化に伴って、非共沸混合冷媒が不均化反応を起こす温度、圧力が低下して圧縮機を保護制御で停止させる温度や圧力よりも低くなった場合は、圧縮機を停止させる保護制御では不均化反応の発生を防ぐことができない問題がある。
【0008】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、圧縮機の内部でHFO-1123冷媒と高沸点冷媒とを混合した非共沸混合冷媒に不均化反応が生じることを抑えることができる冷凍サイクル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の開示する冷凍サイクル装置の一態様は、HFO-1123冷媒と、前記HFO-1123冷媒よりも沸点が高く、かつ前記HFO-1123冷媒よりも不均化反応を起こし難い少なくとも1種類の高沸点冷媒とを混合した非共沸混合冷媒が充填された冷媒回路と、前記冷媒回路に接続された圧縮機と、前記冷媒回路と前記圧縮機とに接続され、前記圧縮機から前記冷媒回路を経て流入した冷媒をガス冷媒と液冷媒とに分離するアキュムレータと、前記圧縮機から吐出される前記非共沸混合冷媒の温度または圧力が各々の所定の閾値を超えたときに前記圧縮機を停止させる制御部と、を備え、前記アキュムレータは、分離した前記ガス冷媒を前記アキュムレータから前記圧縮機へ送る吸入内管を有し、前記吸入内管は、前記アキュムレータの内部に溜まった前記液冷媒を前記吸入内管に流入させる少なくとも1つの戻し穴を有し、前記戻し穴の開口面積の総和は、0.7[mm ]を超えるように形成され、前記非共沸混合冷媒の温度及び圧力が各々の前記閾値以下であるときに前記圧縮機の内部において前記非共沸混合冷媒の総量に対して前記HFO-1123冷媒が占める重量比が70[wt%]よりも小さくなるように、前記アキュムレータから前記圧縮機へ前記高沸点冷媒を戻すことが可能にされ、前記制御部は、前記非共沸混合冷媒の温度が85[℃]を超えたとき、または前記非共沸混合冷媒の圧力が6.0[MPa]を超えたときに前記圧縮機を停止させる。
【発明の効果】
【0010】
本願の開示する冷凍サイクル装置の一態様によれば、圧縮機の内部でHFO-1123冷媒と高沸点冷媒とを混合した非共沸混合冷媒に不均化反応が生じることを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施例の冷凍サイクル装置全体を示す模式図である。
図2図2は、実施例の冷凍サイクル装置の室外機及び室内機の制御回路を示すブロック図である。
図3図3は、実施例の冷凍サイクル装置の室外機及び室内機の接続状態を示す模式図である。
図4図4は、実施例の冷凍サイクル装置のアキュムレータを示す模式図である。
図5図5は、実施例で用いる非共沸混合冷媒について、不均化反応を起こす圧力と、HFO-1123冷媒の比率との関係を説明するためのグラフである。
図6図6は、実施例におけるアキュムレータの戻し穴の開口面積の総和と、圧縮機の内部の非共沸混合冷媒におけるHFO-1123冷媒の重量比との関係を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本願の開示する冷凍サイクル装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例によって、本願の開示する冷凍サイクル装置が限定されるものではない。
【実施例
【0013】
実施例の冷凍サイクル装置では、HFO-1123冷媒と、HFO-1123冷媒よりも沸点が高く、かつHFO-1123冷媒よりも不均化反応を起こし難いまたは不均化反応を起こさない少なくとも1種類の高沸点冷媒とを混合した非共沸混合冷媒が用いられる。高沸点冷媒としては、例えば、R32冷媒等が用いられる。ここで、不均化反応を起こし難い冷媒とは、非共沸混合冷媒における比率がHFO-1123冷媒と同じであるときに、HFO-1123冷媒よりも高い温度または圧力で不均化反応を起こす冷媒である。また、非共沸混合冷媒は、HFO-1123冷媒と、2種類以上の高沸点冷媒とが混合されてもよい。2種類以上の高沸点冷媒を混合する組み合わせとしては、例えば、HFO-1123冷媒と、R32冷媒と、R1234yf冷媒とが混合されてよい。この組み合わせの場合、HFO-1123冷媒が少なくとも40[wt%]、R32冷媒が少なくとも40[wt%]、R1234yf冷媒が少なくとも15[wt%]である。以下、単に冷媒と記載した場合には、上述した非共沸混合冷媒を指している。
【0014】
実施例の冷凍サイクル装置としては、建物の屋上に設置される1台の室外機に、建物の各階に1台ずつ設置される各室内機が並列に接続され、全ての室内機で同時に冷房運転または暖房運転を行うことが可能な空気調和装置を一例として説明する。図1は、実施例の冷凍サイクル装置全体を示す模式図である。図2は、実施例の冷凍サイクル装置の室外機及び室内機の制御回路を示すブロック図である。図3は、実施例の冷凍サイクル装置の室外機及び室内機の接続状態を示す模式図である。
【0015】
(冷凍サイクル装置の構成)
図1及び図3に示すように、実施例の冷凍サイクル装置1は、建物の屋上に設置される1台の室外機2と、建物の各階に設置され、室外機2に液管8及びガス管9を介して並列に接続された3台の室内機5a~5cと、を備えている。液管8は、一端が室外機2の閉鎖弁25に接続され、他端が分岐して室内機5a~5cの各液管接続部53a~53cにそれぞれ接続されている。ガス管9は、一端が室外機2の閉鎖弁26に接続され、他端が分岐して室内機5a~5cの各ガス管接続部54a~54cにそれぞれ接続されている。以上により、冷凍サイクル装置1が有する冷媒回路100が構成されている。
【0016】
まずは、室外機2について説明する。室外機2は、圧縮機21と、四方弁22と、室外熱交換器23と、室外膨張弁24と、液管8の一端が接続された閉鎖弁25と、ガス管9の一端が接続された閉鎖弁26と、冷媒貯留器であるアキュムレータ28と、室外ファン27と、を備えている。室外ファン27を除くこれら各部は、後述する各冷媒配管を介して相互に接続されており、冷媒回路100の一部をなす室外機冷媒回路20を構成している。
【0017】
圧縮機21は、インバータにより回転数が制御されるモータ(図示せず)によって駆動されることで、運転容量を可変できる能力可変型の圧縮機である。圧縮機21の冷媒吐出側は、後述する四方弁22のポートaと吐出管41を介して接続されている。圧縮機21の冷媒吸入側は、アキュムレータ28の冷媒流出側と吸入管42を介して接続されている。このように圧縮機21は、冷媒が充填された冷媒回路100に接続されている。また、圧縮機21の内部には、摺動部分(図示せず)を潤滑する潤滑油としての冷凍機油が貯留されている。
【0018】
四方弁22は、冷媒の流れる方向を切り換えるための弁であり、4つのポートa、b、c、dを有している。ポートaは、上述したように圧縮機21の冷媒吐出側に吐出管41で接続されている。ポートbは、室外熱交換器23の一方の冷媒出入口に冷媒配管43で接続されている。ポートcは、アキュムレータ28の冷媒流入側に冷媒配管46で接続されている。そして、ポートdは、閉鎖弁26に室外機ガス管45で接続されている。
【0019】
室外熱交換器23は、室外機2の内部に取り込まれた外気を、冷媒と後述する室外ファン27による送風によって熱交換させる。室外熱交換器23の一方の冷媒出入口は、上述のように四方弁22のポートbに冷媒配管43で接続されており、他方の冷媒出入口が室外機液管44を介して閉鎖弁25に接続されている。
【0020】
室外膨張弁24は、室外機液管44に設けられている。室外膨張弁24は、電子膨張弁であり、その開度が調整されることにより、室外熱交換器23に流入する冷媒量、または、室外熱交換器23から流出する冷媒量を調整する。室外膨張弁24の開度は、冷凍サイクル装置1が冷房運転を行っている場合に全開とされる。また、冷凍サイクル装置1が暖房運転を行っている場合は、後述する吐出温度センサ33が検出した圧縮機21の吐出温度に応じて、室外膨張弁24の開度を制御することにより、冷媒の吐出温度が、圧縮機21の使用上の上限値を超えないように調整される。
【0021】
室外ファン27は、樹脂材で形成されており、室外熱交換器23の近傍に配置されている。室外ファン27は、ファンモータ(図示せず)によって回転されることで、吸込口(図示せず)から室外機2の内部へ外気を取り込み、室外熱交換器23において冷媒と熱交換した外気を、吹出口(図示せず)から室外機2の外部へ放出する。
【0022】
上述のように、アキュムレータ28の冷媒流入側は四方弁22のポートcに冷媒配管46を介して接続されるとともに、アキュムレータ28の冷媒流出側が圧縮機21の冷媒吸入側に吸入管42を介して接続されている。
【0023】
(アキュムレータの構成)
図4は、実施例の冷凍サイクル装置1のアキュムレータ28を示す模式図である。図4に示すように、アキュムレータ28の内部には、冷媒回路100から冷媒が流入する流入管29と、アキュムレータ28の下部に溜まった液冷媒と冷凍機油を戻す戻し穴30aを有する流入内管30に吸入して、ガス冷媒と共に圧縮機21へ戻す吸入内管30が設けられている。図1及び図4に示すように、流入管29は、一端が冷媒配管46に接続されており、他端がアキュムレータ28の上面を貫通してアキュムレータ28の内部に開放されている。吸入内管30は、両端が上方に向けられたU字状に形成されている。吸入内管30は、一端が、吸入管42に接続されており、他端が、流入管29の下端よりも上方の位置で開口するように延ばされている。吸入内管30は、円形状をなす複数の戻し穴30aを有しており、複数の戻し穴30aが吸入内管30の上下方向に所定の間隔をあけて形成されている。複数の戻し穴30aの詳細については後述する。なお、アキュムレータ28の内部の構造は、図4に示す構造に限定されるものではない。
【0024】
上述のように形成されたアキュムレータ28は、冷媒配管46からアキュムレータ28の内部に流入した冷媒をガス冷媒と液冷媒とに分離してガス冷媒を圧縮機21に吸入させる。また、アキュムレータ28では、圧縮機21から冷媒回路100を経て流入した冷凍機油が、戻し穴30aを通して液冷媒と共に吸入内管30に吸引され、ガス冷媒と共に液冷媒及び冷凍機油を圧縮機21へ戻る。
【0025】
また、室外機2は、上述した構成に加えて、各種のセンサを有している。図1に示すように、吐出管41には、圧縮機21から吐出される冷媒の圧力である吐出圧力を検出する吐出圧力センサ31と、圧縮機21から吐出される冷媒の温度を検出する吐出温度センサ33が設けられている。冷媒配管46におけるアキュムレータ28の冷媒流入口の近傍には、圧縮機21に吸入される冷媒の圧力を検出する吸入圧力センサ32と、圧縮機21に吸入される冷媒の温度を検出する吸入温度センサ34とが設けられている。
【0026】
室外機液管44における室外熱交換器23と室外膨張弁24との間には、室外熱交換器23に流入する冷媒の温度、または室外熱交換器23から流出する冷媒の温度を検出するための熱交温度センサ35が設けられている。そして、室外機2の吸込口(図示せず)の近傍には、室外機2の内部に流入する外気の温度、すなわち外気温度を検出する外気温度センサ36が設けられている。
【0027】
また、室外機2は、制御部としての室外機制御回路200を備えている。室外機制御回路200は、室外機2の電装品箱(図示せず)に格納されている制御基板に搭載されている。図2に示すように、室外機制御回路200は、CPU210と、記憶部220と、通信部230と、センサ入力部240と、を有している。
【0028】
記憶部220は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)を有しており、室外機2の制御プログラムや各種センサからの検出信号に対応した検出値、圧縮機21や室外ファン27の制御状態等を記憶する。通信部230は、室内機5a~5cとの通信を行うインターフェイスである。センサ入力部240は、室外機2の各種センサが検出した検出結果を取り込んでCPU210に出力する。
【0029】
CPU210は、上述した室外機2の各センサが検出した検出結果を、センサ入力部240を介して取り込む。また、CPU210は、室内機5a~5cから送信される制御信号を、通信部230を介して取り込む。CPU210は、取り込んだ検出結果及び制御信号に基づいて、圧縮機21及び室外ファン27の駆動制御を行う。また、CPU210は、取り込んだ検出結果及び制御信号に基づいて、四方弁22の切り換え制御を行う。さらに、CPU210は、取り込んだ検出結果及び制御信号に基づいて、室外膨張弁24の開度を調整する。
【0030】
次に、3台の室内機5a~5cについて説明する。3台の室内機5a~5cは、室内熱交換器51a~51cと、室内膨張弁52a~52cと、分岐した液管8の他端が接続された液管接続部53a~53cと、分岐したガス管9の他端が接続されたガス管接続部54a~54cと、室内ファン55a~55cと、を備えている。そして、室内ファン55a~55cを除くこれら各部は、後述する各冷媒配管を介して相互に接続されて、冷媒回路100の一部をなす室内機冷媒回路50a~50cを構成している。
【0031】
なお、室内機5a~5cの構成は同じであるので、室内機5aの構成についてのみ説明を行い、室内機5b、5cについての説明を省略する。図1では、室内機5aの各構成部に付けた符号の末尾を、aからb及びcにそれぞれ変更したものが、室内機5aの各構成部と対応する室内機5b、5cの各構成部となる。
【0032】
室内熱交換器51aは、吸込口(図示せず)から室内機5aの内部に取り込まれた室内空気を、冷媒と後述する室内ファン55aによる送風によって熱交換させる。室内熱交換器51aは、一方の冷媒出入口と液管接続部53aが室内機液管71aで接続されており、他方の冷媒出入口とガス管接続部54aが室内機ガス管72aで接続されている。室内熱交換器51aは、室内機5aが冷房運転を行う場合に蒸発器として機能し、室内機5aが暖房運転を行う場合に凝縮器として機能する。
【0033】
室内膨張弁52aは、室内機液管71aに設けられている。室内膨張弁52aは、電子膨張弁であり、室内熱交換器51aが蒸発器として機能する場合、すなわち室内機5aが冷房運転を行う場合、室内熱交換器51aの冷媒出口(ガス管接続部54a側)での冷媒過熱度が目標冷媒過熱度となるように調整される。ここで、目標冷媒過熱度とは、室内機5aで十分な冷房能力が発揮されるための冷媒過熱度である。また、室内膨張弁52aは、室内熱交換器51aが凝縮器として機能する場合、すなわち室内機5aが暖房運転を行う場合、室内熱交換器51aの冷媒出口(液管接続部53a側)での冷媒過冷却度が平均冷媒過冷却度となるように調整される。
【0034】
室内ファン55aは、樹脂材で形成されており、室内熱交換器51aの近傍に配置されている。室内ファン55aは、ファンモータ(図示せず)によって回転されることで、吸込口(図示せず)から室内機5aの内に室内空気を取り込み、室内熱交換器51aにおいて冷媒と熱交換した室内空気を吹出口(図示せず)から室内へ供給する。
【0035】
上述した構成に加えて、室内機5aには各種のセンサが設けられている。室内機液管71aにおける室内熱交換器51aと室内膨張弁52aとの間には、室内熱交換器51aに流入、または室内熱交換器51aから流出する冷媒の温度を検出する液側温度センサ61aが設けられている。室内機ガス管72aには、室内熱交換器51aから流出、または室内熱交換器51aに流入する冷媒の温度を検出するガス側温度センサ62aが設けられている。室内機5aの吸込口(図示せず)の近傍には、室内機5aの内部に流入する室内空気の温度、すなわち吸込温度を検出する吸込温度センサ63aが設けられている。室内機5aの吹出口(図示せず)の近傍には、室内熱交換器51aで冷媒と熱交換を行って室内機5aから室内に放出される空気の温度、すなわち吹出温度を検出する吹出温度センサ64aが設けられている。
【0036】
また、室内機5aは、室内機制御回路500aを備えている。室内機制御回路500aは、室内機5aの電装品箱(図示せず)に格納された制御基板に搭載されており、図2に示すように、CPU510aと、記憶部520aと、通信部530aと、センサ入力部540aと、を備えている。
【0037】
記憶部520aは、ROMやRAMを有しており、室内機5aの制御プログラムや各種センサからの検出信号に対応した検出値、使用者による空調運転に関する設定情報等を記憶する。通信部530aは、室外機2及び他の室内機5b、5cとの通信を行うインターフェイスである。センサ入力部540aは、室内機5aの各種センサが検出した検出結果を取り込んでCPU510aに出力する。
【0038】
CPU510aは、上述した室内機5aの各センサが検出した検出結果を、センサ入力部540aを介して取り込む。また、CPU510aは、使用者がリモコン(図示せず)を用いて設定した運転情報やタイマー運転設定等を含んだ信号をリモコン受光部(図示せず)を介して取り込む。また、CPU510aは、運転開始/停止信号や運転情報(設定温度や室内温度等)を含んだ制御信号を、通信部530aを介して室外機2に送信すると共に、室外機2が検出した吐出圧力等の情報を含む制御信号を、通信部530aを介して室外機2から受信する。CPU510aは、取り込んだ検出結果やリモコン及び室外機2から送信された信号に基づいて、室内膨張弁52aの開度調整や室内ファン55aの駆動制御を行う。なお、冷凍サイクル装置1の制御回路は、上述の室外機制御回路200と室内機制御回路500a~500cとによって構成される。
【0039】
(室外機及び室内機の配置)
以上のように構成された冷凍サイクル装置1は、図3に示すように、建物600に設置されている。具体的には、室外機2が屋上(RF)に配置されており、室内機5aが3階(3F)、室内機5bが2階(2F)、室内機5cが1階(1F)に、それぞれ設置されている。室外機2と室内機5a~5cとは、上述した液管8とガス管9とで相互に接続されており、これら液管8とガス管9とが、建物600の壁面内や天井裏に埋設されている。
【0040】
(冷凍サイクル装置の動作)
次に、本実施形態における冷凍サイクル装置1の空調運転時の冷媒回路100における冷媒の流れや各部の動作について、図1を用いて説明する。以下、室内機5a~5cが暖房運転を行う場合について説明し、冷房/除霜運転を行う場合については詳細な説明を省略する。また、図1における矢印は、暖房運転時の冷媒の流れを示している。
【0041】
図1に示すように、室内機5a~5cが暖房運転を行う場合、室外機制御回路200のCPU210は、四方弁22を図1中に実線で示す状態、すなわち、四方弁22のポートaとポートdを連通させ、ポートbとポートcを連通させるように切り換える。これにより、冷媒回路100が、室外熱交換器23が蒸発器として機能するとともに室内熱交換器51a~51cが凝縮器として機能する暖房サイクルとなる。
【0042】
圧縮機21から吐出された高圧の冷媒は、吐出管41を流れて四方弁22に流入し、四方弁22から室外機ガス管45、閉鎖弁26、ガス管9、ガス管接続部54a~54cの順に流れて室内機5a~5cに流入する。室内機5a~5cに流入した冷媒は、室内機ガス管72a~72cを流れて室内熱交換器51a~51cに流入し、室内ファン55a~55cの回転によって室内機5a~5cの内部に取り込まれた室内空気と熱交換を行って凝縮する。このように、室内熱交換器51a~51cが凝縮器として機能し、室内熱交換器51a~51cで冷媒と熱交換を行って加熱された室内空気が吹出口(図示せず)から室内に吹き出されることによって、室内機5a~5cが設置された室内の暖房が行われる。
【0043】
室内熱交換器51a~51cから流出した冷媒は室内機液管71a~71cを流れ、室内膨張弁52a~52cを通過して減圧される。減圧された冷媒は、室内機液管71a~71cを流れて液管接続部53a~53cを介して液管8に流入する。
【0044】
液管8を流れる冷媒は、閉鎖弁25を介して室外機2に流入する。室外機2に流入した冷媒は、室外機液管44を流れ、吐出温度センサ33で検出した圧縮機21の吐出温度に応じて開度が調整された室外膨張弁24を通過するときに更に減圧される。室外機液管44から室外熱交換器23に流入した冷媒は、室外ファン27の回転によって室外機2の内部に取り込まれた外気と熱交換を行って蒸発する。室外熱交換器23から流出した冷媒は、冷媒配管43、四方弁22、冷媒配管46、アキュムレータ28、吸入管42の順に流れ、圧縮機21に吸入されて再び圧縮される。
【0045】
なお、室内機5a~5cが冷房/除霜運転を行う場合、CPU210は、四方弁22を図1中に破線で示す状態、すなわち、四方弁22のポートaとポートbとを連通させ、ポートcとポートdとを連通させるように切り換える。これにより、冷媒回路100は、室外熱交換器23が凝縮器として機能すると共に室内熱交換器51a~51cが蒸発器として機能する冷房サイクルとなる。
【0046】
(冷凍サイクル装置の特徴的な構成)
次に、実施例の冷凍サイクル装置1の室外機の特徴的な構成について説明する。冷凍サイクル装置1で用いられる非共沸混合冷媒は、上述したようにHFO-1123冷媒に高沸点冷媒を混合したものであり、HFO-1123冷媒と高沸点冷媒の合計量に対する比率として、例えば、高沸点冷媒の重量比が40[wt%]以上混合されることで、HFO-1123冷媒の重量比が60[wt%]以下にされている。後述するように、冷凍サイクル装置1では、室外機2が有する圧縮機21内において、非共沸混合冷媒に占めるHFO-1123冷媒の重量比の増加を抑えるようにアキュムレータ28から圧縮機21へ高沸点冷媒が戻される。
【0047】
まず、非共沸混合冷媒の総重量に対してHFO-1123冷媒が占める重量比[wt%]と、非共沸混合冷媒が不均化反応を起こす温度及び圧力との関係について、表1を参照して説明する。
【0048】
【表1】
【0049】
表1に示すように、非共沸混合冷媒は、HFO-1123冷媒が占める重量比が60[wt%]のときに不均化反応が生じる温度が130[℃]、圧力が[8.0MPa]であり、65[wt%]のときに不均化反応が生じる温度が130[℃]、圧力が[6.0MPa]である。しかし、非共沸混合冷媒においてHFO-1123冷媒が占める重量比が70[wt%]以上になったとき、非共沸混合冷媒が不均化反応を起こす温度が85[℃]、圧力が[6.0MPa]に低下する。このため、例えば、圧縮機21の内部の非共沸混合冷媒におけるHFO-1123冷媒の比率が大きい場合は、HFO-1123冷媒の比率が小さい場合に比べて、摺動部分で発生する異常摩耗に伴う高温が着火源となって非共沸混合冷媒が不均化反応を起こし易くなる。すなわち、圧縮機21の内部において、共沸混合冷媒に占めるHFO-1123冷媒の重量比の増加に伴って、圧縮機21の内部の非共沸混合冷媒に、相対的に低い温度、圧力で不均化反応が発生する傾向がある(図5参照)。本実施例では、HFO-1123冷媒の比率の一例として、重量比[wt%]が用いられるが、重量比[wt%]に限定されるものではない。
【0050】
一方、冷凍サイクル装置1では、本発明の課題で述べたように、冷凍サイクル装置1の運転時、冷媒回路100に接続されたアキュムレータ28の下部に、非共沸混合冷媒に含まれる2つの冷媒の沸点の違いに起因して、アキュムレータ28内に流入した非共沸混合冷媒のうち、高沸点冷媒の方が液化してアキュムレータ28内に留まり易い。このため、アキュムレータ28から流出するガス冷媒である非共沸混合冷媒に含まれるHFO-1123冷媒の割合が高くなる。これに伴い、アキュムレータ28内で液冷媒と分離されて圧縮機21へ吸入されるガス冷媒には、HFO-1123が多く含まれている。このため、アキュムレータ28から圧縮機21の内部に吸入される非共沸混合冷媒に占めるHFO-1123冷媒の重量比が高くなることで不均化反応が発生する温度及び圧力が低下するので、圧縮機21の内部で非共沸混合冷媒が不均化反応を起こすおそれが高まる。
【0051】
また、一般的な制御として、冷凍サイクル装置1では、圧縮機21の使用上における冷媒の温度及び圧力の各上限値があるため、制御部としての室外機制御回路200が、圧縮機21から吐出される冷媒の温度や圧力が、閾値である各上限値を超えるおそれがある場合に圧縮機21を停止させる保護制御を行っている。このような圧縮機21の破損を防ぐための保護制御により、圧縮機21の内部の非共沸混合冷媒が不均化反応を起こすことも抑えられる。
【0052】
上述の保護制御を行うために、室外機2は、吐出温度センサ33によって、圧縮機21から吐出される非共沸混合冷媒の温度を検出し、吐出圧力センサ31によって、圧縮機21から吐出される非共沸混合冷媒の圧力である吐出圧力を検出する(図1参照)。ここで、室外機制御回路200のCPU210は、吐出温度センサ33及び吐出圧力センサ31で検出した圧力及び温度を、センサ入力部240を介して取り込み、取り込んだ温度が85℃以上、あるいは、取り込んだ圧力が6.0MPa以上のいずれかであれば、圧縮機21を停止させる保護制御を実行する。
【0053】
図5は、実施例で用いる非共沸混合冷媒について、不均化反応を起こす圧力[MPa]と、HFO-1123冷媒の重量比[wt%]との関係を説明するためのグラフである。図5において、非共沸混合冷媒の温度が85[℃]のときに非共沸混合冷媒に不均化反応が生じる発生領域を、斜線部分で示す。
【0054】
図5に示すように、温度が85[℃]の非共沸混合冷媒では、高沸点冷媒の重量比[wt%]が減少し、HFO-1123冷媒の重量比が60[wt%]から70[wt%]に増加するにつれて、不均化反応が起きる圧力が低下し、HFO-1123冷媒の重量比が70[wt%]以上となれば、圧力が6.0MPa以下で不均化反応が起こる。したがって、非共沸混合冷媒の圧力が6.0[MPa]になった場合、上述の保護制御によって室外機制御回路200が圧縮機21を停止させる前に、圧縮機21の内部で非共沸混合冷媒に不均化反応が起こるおそれがある。つまり、HFO-1123冷媒の重量比が70[wt%]以上になったときは、保護制御が作動しない6.0[MPa]以下の圧力であっても不均化反応が起きてしまう。このように、圧縮機21の保護制御だけでは、冷凍サイクル装置1の運転に伴ってHFO-1123冷媒の重量比が変化する非共沸混合冷媒に不均化反応が発生することを十分に抑えることができない。
【0055】
そこで、本実施例では、アキュムレータ28内に溜まった、高沸点冷媒が占める重量比が高い液冷媒を、吸入内管30の戻し穴30aを通して、ガス冷媒および冷凍機油と共に圧縮機21へ所定量以上を戻すことで、圧縮機21の内部の非共沸混合冷媒に対して占めるHFO-1123冷媒の重量比を70[wt%]よりも小さくするように構成されている。
【0056】
そのため、アキュムレータ28の戻し穴30aは、圧縮機21の内部の非共沸混合冷媒に対して占めるHFO-1123冷媒の重量比を70[wt%]よりも小さくするために十分な量の液冷媒を圧縮機21へ送ることが可能な大きさに形成されている。戻し穴30aの大きさ、すなわち戻し穴30aの開口面積によって、アキュムレータ28から圧縮機21へ送られる液冷媒の送り量が決まる。したがって、戻し穴30aの開口面積を、圧縮機21の内部でのHFO-1123冷媒の重量比を70[wt%]よりも小さくするために十分な大きさに確保することにより、アキュムレータ28内に溜められた高沸点冷媒を圧縮機21へ十分に戻すことが可能になる。
【0057】
図6は、実施例におけるアキュムレータ28の戻し穴30aの開口面積[mm]の総和と、圧縮機21の内部の非共沸混合冷媒におけるHFO-1123冷媒の重量比[wt%]との関係を説明するためのグラフである。図6に示すように、複数の戻し穴30aの開口面積の総和が0.7[mm]であるときに、圧縮機21の内部でHFO-1123冷媒が非共沸混合冷媒に占める重量比が70[wt%]であった。したがって、複数の戻し穴30aの開口面積の総和が0.7[mm]を超えるように複数の戻し穴30aが形成されることで、アキュムレータ28内の液冷媒の液面高さが高くなる最悪条件下においても、複数の戻し穴30aの全てから高沸点冷媒を圧縮機21へ戻すことによって、圧縮機21の内部の非共沸混合冷媒におけるHFO-1123冷媒の重量比を70[wt%]よりも小さく保つことができる。
【0058】
<前提>
戻し穴30aの大きさ、個数、位置は、後述の<最悪条件>下であっても、圧縮機21の内部で不均化反応が起こり易い温度または圧力とならないように、高沸点冷媒の戻し量が確保できるように決定される。
<最悪条件>
冷凍サイクル装置1の暖房運転時、蒸発器として機能する室外熱交換機23において、着霜や室外ファン27の異常停止等の理由により、通風量が大幅に減少して蒸発能力が低下し、蒸発しきらない非共沸混合冷媒がアキュムレータ28に流入する。
【0059】
上述のように、戻し穴30aの開口面積の大きさを決定することにより、圧縮機21の内部における、非共沸混合冷媒に対してHFO-1123冷媒が占める重量比が、例えば、温度が85[℃]以下または圧力が6.0[MPa]以下の非共沸混合冷媒が不均化反応を起こす重量比である70[wt%]よりも小さくなるように、アキュムレータ28から圧縮機21へ高沸点冷媒を戻すことが可能になる。
【0060】
なお、本実施形態では、アキュムレータ28から高沸点冷媒を圧縮機21へ所定量以上を戻すことによって、圧縮機21の内部でHFO-1123冷媒が非共沸混合冷媒に対して占める重量比を、70[wt%]よりも小さくすることに限定するものではない。圧縮機21の内部におけるHFO-1123冷媒の重量比[wt/%]は、上述の保護制御が作動する閾値である温度または圧力以下で非共沸混合冷媒が不均化反応を起こす比率よりも小さくなるように、アキュムレータ28から高沸点冷媒を圧縮機21へ所定量以上を戻すように決定されればよく、例えば、後述する戻し穴30aの大きさが、保護制御が作動する温度または圧力に応じて適宜変更されてよい。
【0061】
また、共沸混合冷媒として、HFO-1123冷媒と、2種類以上の高沸点冷媒とが混合されたものが用いられる場合にも、圧縮機21の内部で不均化反応が起きる圧力または温度は、保護制御が行われる温度または圧力以下とならないように、高沸点冷媒をアキュムレータ28から圧縮機21へ戻すことが可能な大きさに戻し穴30aが形成されている。
【0062】
(アキュムレータの戻し穴)
戻し穴30aは、プレス加工や穴あけ加工によって、吸入内管30の内部に貫通して形成されている。
【0063】
本実施例における吸入内管30は、外径が19[mm]程度であり、内径が17[mm]程度に形成されている。吸入内管30は、内部に貫通する戻し穴30aを形成することにより機械的強度が低下するので、戻し穴30aの直径を、内径の1/2以下に形成することが望ましい。なお、図4は模式図であり、実際の寸法比とは異なる。
【0064】
なお、本実施例では、複数の戻し穴30aを有するが、アキュムレータ28の構造等に応じて、1つの戻し穴30aの開口面積の総和が0.7[mm]を超えるように形成されてもよい。また、複数の戻し穴30aのうち、吸入内管30の最下端に位置する戻し穴30aの開口面積が、0.7[mm]を超えるように形成されてもよい。
【0065】
また、アキュムレータ28の吸入内管30には、図4に示すように、複数の戻し穴30aが、アキュムレータ28の上下方向に間隔をあけて配置されているので、アキュムレータ28内に溜められた液冷媒の液面高さに応じて、アキュムレータ28から圧縮機21へ戻される高沸点冷媒の戻り量を増やすことができる。
【0066】
具体的には、アキュムレータ28内の液冷媒の液面高さが低い場合には、吸入内管30の下端側の戻し穴30aから高沸点冷媒が戻される。アキュムレータ28内の液冷媒の液面高さが上昇した場合には、吸入内管30の下端側の戻し穴30aよりも上方に位置する戻し穴30aからも高沸点冷媒が戻されるので、高沸点冷媒の戻り量が増える。アキュムレータ28内の液冷媒の液面高さが更に上昇して上述した最悪条件となった場合には、吸入内管30の全ての戻し穴30aから高沸点冷媒が戻されるので、最悪条件下においても高沸点冷媒の戻り量が十分に確保される。このように、アキュムレータ28内に溜められた液冷媒の液面高さに応じて、高沸点冷媒の戻り量が制御される。アキュムレータ28内の液冷媒の量が多いほど、圧縮機21の内部におけるHFO-1123冷媒の比率が高いので、より多くの高沸点冷媒をアキュムレータ28から圧縮機21へ戻す必要がある。このため、上述のように戻り量が増えることで、圧縮機21の内部におけるHFO-1123冷媒の比率が効率的に下げられる。加えて、上述のように高沸点冷媒の戻り量が制御されることにより、アキュムレータ28内の液冷媒の貯留量が少なく、非共沸混合冷媒におけるHFO-1123冷媒の比率が正常であるとき等には、アキュムレータ28から必要量以上の液冷媒が圧縮機21へ戻ることを抑えることができる。
【0067】
加えて、吸入内管30の上下方向に複数の戻し穴30aが配置されることで、例えば、1つの戻し穴30aがスラッジ等で詰まった場合であっても、吸入内管30の他の戻し穴30aを通して、高沸点冷媒が圧縮機21へ戻されるので、アキュムレータ28から圧縮機21へ高沸点冷媒を戻す流路を確保することができる。
【0068】
また、液冷媒に含まれる高沸点冷媒は、冷凍機油に溶解した状態で、冷凍機油と共に、吸入内管30を通して圧縮機21へ安定して送られることが望ましい。そのため、相溶性を有する冷凍機油を用いることにより、高沸点冷媒を圧縮機21へ、より一層安定的に戻すことができる。冷凍機油の相溶性は、高沸点冷媒の温度が0[℃]のときの飽和圧力の状態で冷凍機油に対する高沸点冷媒の溶解度が0.1[wt%]以上であることが好ましい。
【0069】
(アキュムレータの戻し穴の作用)
冷凍サイクル装置1の運転に伴って、アキュムレータ28内に吸入した冷媒から分離された高沸点冷媒の比率が高い液冷媒が、アキュムレータ28内に溜まる。アキュムレータ28は、液冷媒を冷凍機油と共に戻し穴30aを通して圧縮機21へ戻す。このため、圧縮機21の内部の非共沸混合冷媒は、高沸点冷媒の比率の低下に伴ってHFO-1123冷媒の比率が上昇することが抑えられ、HFO-1123冷媒が、所定の重量比[wt%]よりも小さくなることが抑えられる。このため、圧縮機21の内部の非共沸混合冷媒は、不均化反応を起こすことが抑えられる。
【0070】
上述したように実施例の冷凍サイクル装置1は、戻し穴30aが形成された吸入内管30を有するアキュムレータ28と、非共沸混合冷媒の温度または圧力が所定の閾値を超えたときに圧縮機21を停止させる室外機制御回路200と、を備える。アキュムレータ28の戻し穴30aの大きさは、圧縮機21の内部における、非共沸混合冷媒の総量に対してHFO-1123冷媒が占める比率が、非共沸混合冷媒の温度または圧力が各々の閾値以下であるときに非共沸混合冷媒が不均化反応を起こす比率よりも小さくなるように、アキュムレータ28から圧縮機21へ高沸点冷媒を戻すことが可能に形成されている。これにより、圧縮機21の内部において、非共沸混合冷媒に占めるHFO-1123冷媒の比率が大きくなることが抑えられるので、非共沸混合冷媒に不均化反応が生じる温度、圧力が低下することを抑えることができる。このため、HFO-1123冷媒と高沸点冷媒とを混合した非共沸混合冷媒を用いる場合において、非共沸混合冷媒の温度、圧力が、保護制御が行われる各々の閾値以下であるときに非共沸混合冷媒が不均化反応を起こすことを抑えることができる。すなわち、冷凍サイクル装置1は、室外機制御回路200が圧縮機21を停止させる保護制御を行う前に、圧縮機21の内部の非共沸混合冷媒が不均化反応を起こすことを抑えることができる。
【0071】
また、実施例の冷凍サイクル装置1におけるアキュムレータ28の戻し穴30aの大きさは、圧縮機21の内部において、非共沸混合冷媒に対してHFO-1123冷媒が占める重量比が70[wt%]よりも小さくなるように、アキュムレータ28から圧縮機21へ高沸点冷媒を戻すことが可能に形成されている。これにより、圧縮機21の内部の非共沸混合冷媒の温度または圧力が、室外機制御回路200が圧縮機21を停止させる所定の閾値以下のときに、圧縮機21の内部で、非共沸混合冷媒に対してHFO-1123冷媒が占める重量比が70[wt%]になることにより、非共沸混合冷媒が不均化反応を起こすことを避けることができる。
【0072】
また、実施例の冷凍サイクル装置1における室外機2の室外機制御回路200は、非共沸混合冷媒の温度が85[℃]を超えたとき、または非共沸混合冷媒の圧力が6.0[MPa]を超えたときに圧縮機21を停止させる。これにより、非共沸混合冷媒の温度が85[℃]以下または圧力が6.0[MPa]以下のときに、圧縮機21の内部の非共沸混合冷媒が不均化反応を起こさないように、アキュムレータ28から圧縮機21へ高沸点冷媒を戻すことが可能になる。
【0073】
また、実施例の冷凍サイクル装置1におけるアキュムレータ28は、戻し穴30aの開口面積の総和が0.7[mm]を超えるように形成されている。これにより、圧縮機21の内部において、非共沸混合冷媒に対してHFO-1123冷媒が占める重量比が70[wt%]よりも小さくなるように、アキュムレータ28から圧縮機21へ高沸点冷媒を戻すことができる。
【0074】
また、実施例の冷凍サイクル装置1における冷凍機油は、高沸点冷媒に対する相溶性を有し、高沸点冷媒の温度が0[℃]かつ圧力が0である飽和圧力の状態で冷凍機油に対する高沸点冷媒の溶解度が0.1[wt%]以上である。これにより、冷凍機油に溶ける高沸点冷媒の量を適正に確保することが可能になり、冷凍機油と共に高沸点冷媒を、アキュムレータ28から圧縮機21へ安定的に戻すことができる。
【0075】
なお、本発明の冷凍サイクル装置が備える圧縮機は、ロータリ圧縮機に限定されるものではなく、スクロール圧縮機等の他の圧縮機が用いられてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 冷凍サイクル装置
2 室外機
21 圧縮機
28 アキュムレータ
30 吸入内管
30a 戻し穴
100 冷媒回路
200 室外機制御回路(制御部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6