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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】圧電素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 41/047 20060101AFI20221004BHJP
   H01L 41/083 20060101ALI20221004BHJP
   H01L 41/09 20060101ALI20221004BHJP
   H04R 17/00 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
H01L41/047
H01L41/083
H01L41/09
H04R17/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018163433
(22)【出願日】2018-08-31
(65)【公開番号】P2020035968
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】北島 正裕
【審査官】加藤 俊哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-029050(JP,A)
【文献】国際公開第2014/208376(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 41/047
H01L 41/083
H01L 41/09
H04R 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対する一対の主面と、互いに対向する一対の端面と、互いに対する一対の側面と、を有している圧電素体と、
前記圧電素体内において一対の前記主面に対向方向において互いに対向して配置されている第1内部電極及び第2内部電極と、
複数の金属層が積層されて形成されていると共に、少なくとも一対の前記主面上に配置されている第1外部電極及び第2外部電極であって、前記第1内部電極と接続されている前記第1外部電極、及び、前記第2内部電極と接続されている前記第2外部電極と、を備え、
前記主面上に配置されている前記第1外部電極及び前記第2外部電極において、一対の前記端面の対向方向の端部には、合金で形成されている接合部材が設けられており、
前記第1外部電極及び前記第2外部電極は、少なくとも一方の前記主面上において、一対の前記端面の対向方向で所定の間隔を空けて離間して配置されており、
一方の前記主面上の前記第1外部電極と前記第2外部電極との間において、一方の前記主面の自然面が前記第1外部電極及び前記第2外部電極から露出しており、
前記自然面には、合金で形成されている粒子状の合金部が複数設けられている、圧電素子。
【請求項2】
前記接合部材の前記圧電素体に対する密着性は、前記第1外部電極及び前記第2外部電極の前記圧電素体に対する密着性に比べて低い、請求項1に記載の圧電素子。
【請求項3】
複数の前記合金部のうちの少なくとも一部は、前記自然面において、隣り合う少なくとも二つの結晶粒の表面で構成される凹部に配置されている、請求項1又は2に記載の圧電素子。
【請求項4】
一方の前記主面上において対向する前記第1外部電極及び前記第2外部電極のそれぞれの端面は、一対の前記側面の対向方向から見て、前記第1外部電極と前記第2外部電極との間の距離が前記主面側よりも前記第1外部電極及び前記第2外部電極のそれぞれの表面側の方が大きくなるように傾斜している、請求項1~3のいずれか一項に記載の圧電素子。
【請求項5】
一方の前記主面上の前記第1外部電極と前記第2外部電極との間の前記主面側の距離は、15μm以上50μm以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の圧電素子。
【請求項6】
前記接合部材は、一対の前記主面の対向方向において、前記接合部材が設けられている前記第1外部電極及び前記第2外部電極の表面よりも突出している、請求項1~のいずれか一項に記載の圧電素子。
【請求項7】
互いに対する一対の主面と、互いに対向する一対の端面と、互いに対する一対の側面と、を有している圧電素体と、
前記圧電素体内において一対の前記主面に対向方向において互いに対向して配置されている第1内部電極及び第2内部電極と、
複数の金属層が積層されて形成されていると共に、少なくとも一対の前記主面上に配置されている第1外部電極及び第2外部電極であって、前記第1内部電極と接続されている前記第1外部電極、及び、前記第2内部電極と接続されている前記第2外部電極と、を備え、
前記主面上に配置されている前記第1外部電極及び前記第2外部電極において、一対の前記端面の対向方向の端部には、合金で形成されている接合部材が設けられており、
前記金属層は、Crを含んで形成されているCr層を含み、
前記接合部材は、Auを含んでおり、
前記接合部材が前記Cr層を覆っている、圧電素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の圧電素子として、例えば、特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に記載の圧電素子は、圧電素体と、圧電素子に電圧を印加する第1の電極及び第2の電極と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2011/145453号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
圧電素子では、第1の電極及び第2の電極が、複数の金属層が積層されて形成されることがある。このような構成では、圧電素子に変位が生じた場合、活性部上に位置する第1の電極及び第2の電極の端部において、変位に起因して金属層間に剥離が生じ得る。これにより、圧電素子の信頼性が低下し得る。
【0005】
本発明の一側面は、信頼性の向上が図れる圧電素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る圧電素子は互いに対する一対の主面と、互いに対向する一対の端面と、互いに対する一対の側面と、を有している圧電素体と、圧電素体内において一対の主面に対向方向において互いに対向して配置されている第1内部電極及び第2内部電極と、複数の金属層が積層されて形成されていると共に、少なくとも一対の主面上に配置されている第1外部電極及び第2外部電極であって、第1内部電極と接続されている第1外部電極、及び、第2内部電極と接続されている第2外部電極と、を備え、主面上に配置されている第1外部電極及び第2外部電極において、一対の端面の対向方向の端部には、合金で形成されている接合部材が設けられている。
【0007】
本発明の一側面に係る圧電素子では、主面上に配置されている第1外部電極及び第2外部電極において、一対の端面の対向方向の端部には、合金から形成されている接合部材が設けられている。この構成では、第1外部電極と第2外部電極との間の圧電素体の活性部において変位が生じたときに、活性部上に位置する上記端部の金属層間において剥離が生じることを、接合部材によって抑制できる。したがって、圧電素子では、信頼性の向上が図れる。
【0008】
一実施形態においては、接合部材の圧電素体に対する密着性は、第1外部電極及び第2外部電極の圧電素体に対する密着性に比べて低くてもよい。この構成では、活性部に変位が生じたときに、接合部材が活性部の変位を拘束(阻害)しない。したがって、圧電素子では、活性部の変位を効率的に得ることができる。
【0009】
一実施形態においては、第1外部電極及び第2外部電極は、少なくとも一方の主面上において、一対の端面の対向方向で所定の間隔を空けて離間して配置されており、一方の主面上の第1外部電極と第2外部電極との間において、一方の主面の自然面が第1外部電極及び第2外部電極から露出していてもよい。この構成では、露出する主面にマイクロクラックが生じていない。これにより、主面にパーティクル(脱粒)が発生し難い。したがって、圧電素子では、パーティクルに起因する不具合の発生(他の装置への影響)を抑制できる。その結果、圧電素子では、信頼性の向上が図れる。
【0010】
一実施形態においては、自然面には、合金で形成されている粒子状の合金部が複数設けられていてもよい。この構成では、圧電素子がランド電極等にはんだによって実装されるときに、はんだが濡れ拡がって主面である自然面にはんだが流れ出た場合、合金部によってはんだの濡れ広がりを阻止できる。したがって、圧電素子では、第1外部電極と第2外部電極とが短絡することを抑制できる。その結果、圧電素子では、信頼性の向上が図れる。
【0011】
一実施形態においては、複数の合金部のうちの少なくとも一部は、自然面において、隣り合う少なくとも二つの結晶粒の表面で構成される凹部に配置されていてもよい。この構成では、合金部が上記凹部以外の位置に配置されている場合に比べて、合金部が剥離し難い。したがって、圧電素子では、合金部が上記凹部に配置されていることにより、合金部と自然面との密着性の向上が図れる。その結果、合金部によって、はんだの濡れ広がりを確実に阻止できる。
【0012】
一実施形態においては、一方の主面上において対向する第1外部電極及び第2外部電極のそれぞれの端面は、一対の側面の対向方向から見て、第1外部電極と第2外部電極との間の距離が主面側よりも第1外部電極及び第2外部電極のそれぞれの表面側の方が大きくなるように傾斜していてもよい。この構成では、第1外部電極及び第2外部電極のそれぞれの端面は、一対の側面の対向方向から見て、テーパー状を呈している。これにより、圧電素子では、主面上に配置されている第1外部電極及び第2外部電極の端部に、接合部材を適切に設けることができる。
【0013】
一実施形態においては、一方の主面上の第1外部電極と第2外部電極との間の主面側の距離は、15μm以上50μm以下であってもよい。圧電素子は、小型化が図られている。小型の圧電素子において、第1外部電極と第2外部電極との間の距離が大きいと、活性部において不均一な変位が生じ、変位にばらつきが生じ得る。そのため、圧電素子では、第1外部電極と第2外部電極との間の距離を15μm以上50μm以下としている。この構成では、圧電素子を小型化した場合であっても、変位のばらつきの影響を抑制できる。したがって、圧電素子では、信頼性の向上が図れる。
【0014】
一実施形態においては、接合部材は、一対の主面の対向方向において、接合部材が設けられている第1外部電極及び第2外部電極の表面よりも突出していてもよい。この構成では、圧電素子がランド電極等にはんだによって実装されるときに、はんだが第1外部電極と第2外部電極との間に濡れ拡がることを接合部材によって抑制できる。したがって、圧電素子では、第1外部電極と第2外部電極とが短絡することを抑制できる。その結果、圧電素子では、信頼性の向上が図れる。
【0015】
一実施形態においては、金属層は、Crから形成されているCr層を含み、接合部材は、Auを含んでおり、接合部材がCr層を覆っていてもよい。この構成では、Cr層の酸化を接合部材によって抑制できる。したがって、圧電素子では、信頼性の向上が図れる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一側面によれば、信頼性の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1(a)及び図1(b)は、一実施形態に係る圧電素子の斜視図である。
図2図2は、図1(a)におけるII-II線に沿った断面構成を示す図である。
図3図3は、凹部断面構成を示す図である。
図4図4は、凹部の平面図である。
図5図5は、圧電素子の実装構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0019】
図1に示されるように、圧電素子1は、圧電素体3と、第1外部電極5及び第2外部電極7と、を備えている。圧電素子1は、例えば、磁気ディスクを備えたディスク装置などに適用される。すなわち、デュアル・アクチュエータ方式のディスク装置において、ボイスコイルモータ以外の第二のアクチュエータとして、圧電素子1が用いられる。圧電素子1は、例えば、長さ(一対の端面3c,3d(後述)の対向方向の寸法):0.8mm~1.0m、幅(一対の側面3e,3f(後述)の対向方向の寸法):0.2mm~0.5mm、高さ(一対の主面3a,3b(後述)の対向方向の寸法):40μm~200μmである。
【0020】
圧電素体3は、一対の主面3a,3bと、一対の端面3c,3dと、一対の側面3e,3fと、を有している。本実施形態では、圧電素体3は、直方体形状を呈している。一対の主面3a,3bのそれぞれは、略長方形状を呈している。一対の端面3c,3dは、主面3a,3bの長辺方向において対向している。一対の側面3e,3fは、主面3a,3bの短辺方向において対向している。
【0021】
圧電素体3は、圧電セラミック材料からなる。圧電セラミック材料としては、PZT[Pb(Zr、Ti)O]、PT(PbTiO)、PLZT[(Pb、La)(Zr、Ti)O]、又はチタン酸バリウム(BaTiO)などが挙げられる。本実施形態では、圧電素体3は、圧電セラミック材料を含むセラミックグリーンシートの焼結体である圧電素体層が積層されて構成されている。圧電素体3では、複数の圧電素体層の積層方向が一対の主面3a,3bの対向方向と一致する。実際の圧電素体3では、各圧電素体層は、各圧電素体層の間の境界が視認できない程度に一体化されている。
【0022】
圧電素体3は、第1内部電極9と、第2内部電極11と、備えている。第1内部電極9及び第2内部電極11は、例えば、平面視で、略長方形状を呈している。第1内部電極9と第2内部電極11とは、一対の主面3a,3bの対向方向において、互いに対向して配置されている。第1内部電極9及び第2内部電極11は、積層型の電子素子の内部電極として通常用いられる導電性材料(例えば、Ni、Pt又はPdなど)からなる。第1内部電極9及び第2内部電極11は、上記導電性材料を含む導電性ペーストの焼結体として構成される。
【0023】
図1又は図2に示されるように、第1外部電極5は、第1電極部分5aと、第2電極部分5bと、を有している。第1電極部分5aは、一方の主面3a上に配置されている。第1電極部分5aの他方の端面3d側の端部は、他方の端面3dよりも一方の端面3c側に位置している。すなわち、第1電極部分5aの一対の端面3c,3dの対向方向の長さは、一対の端面3c,3d間の長さよりも短い。これにより、第1電極部分5aの他方の端面3d側の端部は、後述する第2外部電極7の第3電極部分7cの一方の端面3c側の端部と離間している。第2電極部分5bは、一方の端面3c上に配置されている。第1電極部分5a及び第2電極部分5bは、一体的に形成されている。第2電極部分5bは、第1内部電極9の一端と物理的に接触している。これにより、第1外部電極5は、第1内部電極9に電気的に接続されている。
【0024】
第1外部電極5は、複数の金属層が積層されて形成されている。第1外部電極5は、第1層(Cr層)15と、第2層17と、第3層19と、から構成されている。第1層15、第2層17及び第3層19は、圧電素体3側からこの順番で配置(積層)されている。第1層15は、Crからなる。第2層17は、NiCuからなる。第3層19は、Auからなる。本実施形態では、第1層15、第2層17及び第3層19それぞれの厚みは、例えば、同等である。第1層15、第2層17及び第3層19それぞれは、例えば、スパッタリングで形成されている。
【0025】
第2外部電極7は、第1電極部分7aと、第2電極部分7bと、第3電極部分7cと、を有している。第1電極部分7aは、他方の主面3b上に配置されている。第1電極部分7aの一方の端面3c側の端部は、一方の端面3cよりも他方の端面3d側に位置している。すなわち、第1電極部分7aの一対の端面3c,3dの対向方向の長さは、一対の端面3c,3d間の長さよりも短い。これにより、第1電極部分7aの一方の端面3c側の端部は、第1外部電極5の第2電極部分5bの他方の主面3b側の端部と離間している。そのため、主面3bの一部が露出している。
【0026】
第2電極部分7bは、他方の端面3d上に配置されている。第3電極部分7cは、一方の主面3a上に配置されている。第3電極部分7cの一方の端面3c側の端部は、第1外部電極5の第1電極部分5aの他方の端面3d側の端部と離間している。第2電極部分7bは、第2内部電極11の一端と物理的に接触している。これにより、第2外部電極7は、第2内部電極11に電気的に接続されている。
【0027】
第2外部電極7は、複数の金属層が積層されて形成されている。第2外部電極7は、第1層(Cr層)21と、第2層23と、第3層25と、から構成されている。第1層21、第2層23及び第3層25は、圧電素体3側からこの順番で配置されている。第1層21は、Crからなる。第2層23は、NiCuからなる。第3層25は、Auからなる。本実施形態では、第1層21、第2層23及び第3層25それぞれの厚みは、例えば、同等である。第1層21、第2層23及び第3層25それぞれは、例えば、スパッタリングで形成されている。
【0028】
第1外部電極5及び第2外部電極7は、第1内部電極9及び第2内部電極11を介して、圧電素体3に電圧を印加するための電極として機能する。圧電素子1では、圧電素体3における、第1外部電極5の第1電極部分5aと第2内部電極11とで挟まれた領域、第1内部電極9と第2内部電極11とで挟まれた領域、及び、第2外部電極7の第2電極部分7bと第1内部電極9とで挟まれた領域が、活性部となり、電圧が印加されたときに変位する。
【0029】
図1(a)及び図2に示されるように、主面3a上において、第1外部電極5と第2外部電極7との間には、凹部30が設けられている。すなわち、主面3a上において、第1外部電極5と第2外部電極7とは、一対の端面3c,3dの対向方向において、所定の間隔をあけて離間して配置されている。凹部30は、第1外部電極5の端面3d側の端部5Eと第2外部電極7の端面3c側の端部7Eとによって画成されている。つまり、凹部30は、第1外部電極5の第1電極部分5aと第2外部電極7の第3電極部分7cとによって画成されている。凹部30の幅、すなわち、一対の端面3c,3dの対向方向における第1外部電極5と第2外部電極7との間の距離Dは、15μm以上50μm以下である。具体的には、当該距離Dは、後述する接合部材31と接合部材33との間の最短距離である。
【0030】
凹部30は、一対の側面3e,3fの対向方向において、一方の側面3eから他方の側面3fにわたって帯状に延在している(図4参照)。図3に示されるように、凹部30は、テーパー状を呈している。凹部30は、上記距離Dよりも、第1外部電極5の表面5s側の位置と第2外部電極7の表面7s側の位置との間の距離の方が大きい。具体的には、凹部30は、圧電素体3側から第1外部電極5の表面5s及び第2外部電極7の表面7s側に向かって徐々に寸法が大きくなっている。すなわち、凹部30の内側面(端面)30b,30eは、一対の側面3e,3fの対向方向から見て、第1外部電極5と第2外部電極7との間の距離が主面3a側よりも第1外部電極5の表面5s及び第2外部電極7の表面7s側の方が大きくなるように傾斜している。凹部30の内側面30b,30eは、主面3aに対して所定の角度を成して傾斜している。
【0031】
凹部30は、圧電素体3を露出させている。具体的には、凹部30は、圧電素体3の一方の主面3aを露出させる。露出する一方の主面3aは、自然面である。自然面は、研磨されていない面である。自然面は、圧電素体3を焼成で形成するときに、焼成により成長した結晶粒の表面によって構成されている面である。図3に示されるように、自然面は、結晶粒の形状に起因して、なだらかな凹凸を有する。自然面は、マイクロクラックが生じていない(発生数が非常に少ない)面である。圧電素体3(圧電素体層)は、複数の結晶粒からなり、図3では、複数の結晶粒の一部のみを図示している。
【0032】
図3に示されるように、第1外部電極5の端部5E(図2参照)には、接合部材31が設けられている。接合部材31は、第1部材32及び第2部材34を有している。
【0033】
第1部材32は、凹部30の開口縁部30aに設けられている。本実施形態では、開口縁部30aは、一対の端面3c,3dの対向方向において、開口端30cから所定距離だけ外側(端面3c側)の領域である。本実施形態では、第1部材32は、一方の側面3eから他方の側面3fにわたって設けられている。第1部材32は、一対の主面3a,3bの対向方向において、第1外部電極5(第3層19)の表面5sよりも突出している。第1部材32の厚み、すなわち第1外部電極5と第1部材32に頂部との間の距離は、例えば、1μmである。第1部材32は、合金で形成されている。第1部材32は、第1外部電極5及び第2外部電極7の構成材料からなる。本実施形態では、第1部材32は、例えば、Au、NiCu、Crを含んでいる。
【0034】
第2部材34は、凹部30の内側面30bに設けられている。本実施形態では、第2部材34は、圧電素体3の主面3aから凹部30の開口端30cまで延びていると共に、一方の側面3eから他方の側面3fにわたって設けられている。第2部材34は、凹部30を画成する第1外部電極5の端部5Eの端面を覆っている。すなわち、第2部材34は、第1層15、第2層17及び第3層19の端面を覆っている。第2部材34の端部(第1部材32と接続される端部とは反対側の端部)は、主面3aに接合されている。第2部材34の主面3aに対する密着性は、第1外部電極5の主面3aに対する密着性に比べて低い。すなわち、接合部材31の圧電素体3に対する密着性は、第1外部電極5の圧電素体3に対する密着性に比べて低い。第2部材34は、合金で形成されている。第2部材34は、第1外部電極5及び第2外部電極7の構成材料からなる。本実施形態では、第2部材34は、例えば、Au、NiCu、Crを含んでいる。本実施形態では、第1部材32と第2部材34とは、一体に形成されている。
【0035】
第2外部電極7の端部7E(図2参照)には、接合部材33が設けられている。接合部材33は、第1部材36及び第2部材38を有している。
【0036】
第1部材36は、凹部30の開口縁部30dに設けられている。本実施形態では、開口縁部30dは、一対の端面3c,3dの対向方向において、開口端30fから所定距離だけ外側(端面3d側)の領域である。本実施形態では、第1部材36は、一方の側面3eから他方の側面3fにわたって設けられている。第1部材36は、一対の主面3a,3bの対向方向において、第2外部電極7(第3層25)の表面7sよりも突出している。第1部材36の厚み、すなわち第2外部電極7と第1部材36に頂部との間の距離は、例えば、1μmである。第1部材36は、合金で形成されている。第1部材36は、第1外部電極5及び第2外部電極7の構成材料からなる。本実施形態では、第1部材36は、例えば、Au、NiCu、Crを含んでいる。
【0037】
第2部材38は、凹部30の内側面30eに設けられている。本実施形態では、第2部材38は、圧電素体3の主面3aから凹部30の開口端30fまで延びていると共に、一方の側面3eから他方の側面3fにわたって設けられている。第2部材38は、凹部30を画成する第2外部電極7の端部7Eの端面を覆っている。すなわち、第2部材38は、第1層21、第2層23及び第3層25の端面を覆っている。第2部材38の端部(第1部材36と接続される端部とは反対側の端部)は、主面3aに接合されている。第2部材38の主面3aに対する密着性は、第2外部電極7の主面3aに対する密着性に比べて低い。すなわち、接合部材33の圧電素体3に対する密着性は、第2外部電極7の圧電素体3に対する密着性に比べて低い。第2部材38は、合金で形成されている。第2部材38は、第1外部電極5及び第2外部電極7の構成材料からなる。本実施形態では、第2部材38は、例えば、Au、NiCu、Crを含んでいる。本実施形態では、第1部材36と第2部材38とは、一体に形成されている。
【0038】
図3及び図4に示されるように、凹部30において露出する主面3a上には、合金部40が複数設けられている。合金部40は、合金から形成されている。合金部40は、第1外部電極5及び第2外部電極7の構成材料からなる。本実施形態では、合金部40は、例えば、Au、NiCu、Crを含んでいる。合金部40は、粒子状を呈している。複数の合金部40は、主面3a上において、ランダムに配置されている(点在している)。複数の合金部40のそれぞれが設けられている領域は、少なくとも自然面である。複数の合金部40のうちの少なくとも一部は、主面3aの自然面において、隣り合う少なくとも二つの結晶粒の表面で構成される凹部に配置されている。なお、合金部40が設けられていない(合金部40から露出している)領域は、自然面であってもよく、自然面が荒らされた面であってもよい。
【0039】
図5に示されるように、圧電素子1の実装構造100では、圧電素子1は、ランド電極L1,L2にはんだS1,S2で実装される。具体的には、圧電素子1の第1外部電極5とランド電極L1とがはんだS1によって接合されており、第2外部電極7とランド電極L2とがはんだS2によって接合されている。はんだS1は、第1外部電極5の第1電極部分5a及び第2電極部分5bに設けられている。はんだS2は、第2外部電極7の第2電極部分7b及び第3電極部分7cに設けられている。
【0040】
以上説明したように、本実施形態に係る圧電素子1では、第1外部電極5の端部5Eには、合金から形成されている接合部材31が設けられており、第2外部電極7の端部7Eには、合金から形成されている接合部材33が設けられている。この構成では、第1外部電極5と第2外部電極7との間の圧電素体3において変位が生じたときに、端部5Eの第1層15、第2層17及び第3層19の層間において剥離が生じることを、接合部材31によって抑制できる。また、圧電素子1に変位が生じたときに、端部7Eの第1層21、第2層23及び第3層25の層間において剥離が生じることを、接合部材33によって抑制できる。したがって、圧電素子1では、信頼性の向上が図れる。
【0041】
本実施形態に係る圧電素子1では、接合部材31,33の圧電素体3に対する密着性は、第1外部電極5及び第2外部電極7の圧電素体3に対する密着性に比べて低い。これにより、圧電素子1では、活性部に変位が生じたときに、接合部材31,33が活性部の変位を拘束(阻害)しない。したがって、圧電素子1では、活性部の変位を効率的に得ることができる。
【0042】
本実施形態に係る圧電素子1では、一方の主面3a上の第1外部電極5と第2外部電極7との間において、一方の主面3aの自然面が第1外部電極5及び第2外部電極7から露出している。この構成では、露出する主面3aにマイクロクラックが生じていない。これにより、主面3aにパーティクル(脱粒)が発生し難い。したがって、圧電素子1では、パーティクルに起因する不具合の発生(他の装置への影響)を抑制できる。その結果、圧電素子1では、信頼性の向上が図れる。
【0043】
本実施形態に係る圧電素子1では、自然面には、合金で形成されている粒子状の合金部40が複数設けられている。この構成では、圧電素子1がランド電極L1,L2にはんだによって実装されるときに、はんだが濡れ拡がって主面3aである自然面にはんだが流れ出た場合、合金部40によってはんだの濡れ広がりを阻止できる。したがって、圧電素子1は、第1外部電極5と第2外部電極7とが短絡することを抑制できる。その結果、圧電素子1では、信頼性の向上が図れる。
【0044】
本実施形態に係る圧電素子1では、複数の合金部40は、自然面において、隣り合う少なくとも二つの結晶粒の表面で構成される凹部に配置されていることが好ましい。この構成では、合金部40が上記凹部以外の位置に配置されている場合に比べて、合金部40が剥離し難い。したがって、圧電素子1では、合金部40が上記凹部に配置されていることにより、合金部40と自然面との密着性の向上が図れる。その結果、合金部40によって、はんだの濡れ広がりを確実に阻止できる。
【0045】
本実施形態に係る圧電素子1では、接合部材31は、一対の主面3a,3bの対向方向において、接合部材31が設けられている第1外部電極5の表面5sよりも突出している。同様に、接合部材33は、一対の主面3a,3bの対向方向において、接合部材33が設けられている第2外部電極7の表面7sよりも突出している。この構成では、図5に示されるように、圧電素子1がランド電極L1,L2にはんだS1,S2によって実装されるときに、例えばはんだS1が第1外部電極5と第2外部電極7との間(凹部30)に濡れ拡がることを接合部材33によって抑制できる。したがって、圧電素子1では、第1外部電極5と第2外部電極7とが短絡することを抑制できる。その結果、圧電素子1では、信頼性の向上が図れる。
【0046】
本実施形態に係る圧電素子1では、一方の主面3a上の第1外部電極5と第2外部電極7との間の距離Dは、15μm以上50μm以下である。圧電素子1は、小型化が図られている。小型の圧電素子1において、第1外部電極5と第2外部電極7との間の距離Dが大きいと、活性部において不均一な変位が生じ、変位にばらつきが生じ得る。そのため、圧電素子1では、第1外部電極5と第2外部電極7との間の距離Dを15μm以上50μm以下としている。この構成では、圧電素子1を小型化した場合であっても、変位のばらつきの影響を抑制できる。したがって、圧電素子1では、信頼性の向上が図れる。
【0047】
本実施形態に係る圧電素子1では、第1外部電極5は、Crから形成されている第1層15を含み、接合部材31は、Auを含んでいる。接合部材31は、第1層15を覆っていてもよい。この構成では、第1層15の酸化を接合部材31によって抑制できる。同様に、第2外部電極7は、Crから形成されている第1層21を含み、接合部材33は、Auを含んでいる。接合部材33は、第1層21を覆っている。この構成では、第1層21の酸化を接合部材33によって抑制できる。したがって、圧電素子1では、信頼性の向上が図れる。
【0048】
本実施形態に係る圧電素子1では、一方の主面3a上において対向する第1外部電極5及び第2外部電極7のそれぞれの端面(凹部30の内側面30b,30e)は、一対の側面3e,3fの対向方向から見て、第1外部電極5と第2外部電極7との間の距離が主面3a側よりも第1外部電極5及び第2外部電極7のそれぞれの表面5s,7s側の方が大きくなるように傾斜している。この構成では、第1外部電極5及び第2外部電極7のそれぞれの端面は、一対の側面3e,3fの対向方向から見て、テーパー状を呈している。これにより、圧電素子1では、主面3a上に配置されている第1外部電極5及び第2外部電極7の端部に、接合部材31,33を適切に設けることができる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0050】
上記実施形態では、第1外部電極5の端部5Eに接合部材31が設けられており、第2外部電極7の端部7Eに接合部材33が設けられている形態を一例に説明した。しかし、第2外部電極7の第1電極部分7aの端部(端面3c側の端部)にも、接合部材が設けられていてもよい。
【0051】
上記実施形態では、第1外部電極5が、主面3a及び端面3cに配置されており、第2外部電極7が主面3a、主面3b及び端面3dに配置されている形態を一例に説明した。しかし、第1外部電極は、主面3a、主面3b及び端面3cに配置されていてもよい。この構成では、主面3b上において、第1外部電極と第2外部電極とが所定の間隔をあけて配置されていればよい。
【0052】
上記実施形態では、第1外部電極5が第1層15、第2層17及び第3層19からなり、第2外部電極7が第1層21、第2層23及び第3層25からなる形態を一例に説明した。しかし、第1外部電極5及び第2外部電極7の構成はこれに限定されない。例えば、圧電素子の第1外部電極(第2外部電極)は、第1層と、第2層と、の2層から構成されていてもよい。第1層は、例えばNiCrであり、第2層は、例えばAuからなる。第1層の厚みは、第2層の厚みよりも厚いことが好ましい。例えば、第1層の厚みは、第2層の厚みの2倍である。
【0053】
上記実施形態では、凹部30が直線状に形成されている形態を一例に説明した。しかし、凹部は、側面3eと側面3fとの間において湾曲していてもよい。
【0054】
上記実施形態では、第1外部電極5及び第2外部電極7を形成する材料の一例を挙げて説明した。しかし、外部電極を形成する材料は上記実施形態に記載の材料に限定されない。
【0055】
上記実施形態では、接合部材31及び接合部材33を形成する材料の一例を挙げて説明した。しかし、接合部材を形成する材料は上記実施形態に記載の材料に限定されない。
【符号の説明】
【0056】
1…圧電素子、3…圧電素体、3a,3b…主面、3c,3d…端面、3e,3f…側面、5…第1外部電極、5E…端部、5s…表面、7…第2外部電極、7E…端部、7s…表面、9…第1内部電極、11…第2内部電極、30b,30e…内側面(端面)、D…距離。
図1
図2
図3
図4
図5