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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】積層フィルムおよび包装容器
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/36 20060101AFI20221004BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20221004BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20221004BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20221004BHJP
   C09J 123/36 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
B32B27/36
B32B27/32 101
B32B9/00 A
B65D65/40 D
C09J123/36
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018184274
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020049896
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 幸子
(72)【発明者】
【氏名】菅野 雅恵
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-138638(JP,A)
【文献】特開2016-000464(JP,A)
【文献】特開2018-126971(JP,A)
【文献】特開2013-235763(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105482383(CN,A)
【文献】特開2008-163121(JP,A)
【文献】特開昭59-47244(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00- 43/00
B65D65/00- 65/46
C09J 1/00- 5/10
9/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンテレフタレートからなる基材フィルム層に酸化アルミニウムからなる酸化金属蒸着層が設けられたガスバリアフィルム部と、
前記酸化金属蒸着層上に形成された接着層と、
ポリプロピレンからなり、前記接着層上に形成された熱可塑性樹脂層と、
を備え、
前記接着層が、無水マレイン酸グラフト重合ポリプロピレンを主成分とする層を有し、
前記無水マレイン酸グラフト重合ポリプロピレンの無水マレイン酸グラフト率が0.1wt%以上1wt%以下である、
積層フィルム。
【請求項2】
前記基材フィルム層と前記酸化金属蒸着層との間に、3官能オルガノシラン及びその加水分解物からなる群から選ばれる1種以上と、アクリルポリオールとイソシアネート化合物との複合物を含有するプライマー層を有する、
請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記酸化金属蒸着層上に設けられたガスバリア被覆層をさらに有し、
前記ガスバリア被覆層が、
一般式Si(OR(但し、Rは、CH,C、またはCOCH)で表されるケイ素化合物またはその加水分解物と、
一般式(RSi(OR(但し、Rは、CH,C、またはCOCH、Rは有機官能基、nは1以上)で表されるケイ素化合物またはその加水分解物と、
水酸基を有する水溶性高分子と、を含有する、
請求項2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれかに記載の積層フィルムを製袋してなる包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルム、ならびに、この積層フィルムを用いた包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、食品、医薬品等の包装に用いられる包装材料には、内容物の変質や腐敗等を抑制し、かつ内容物の機能や性質を保持することが求められる。このような包装材料の一つとして、水蒸気、酸素等の、内容物を変質させる気体の進入を防止するガスバリア性積層フィルムが知られている。
例えば、特許文献1には、ポリエステルフィルム等の基材フィルム層の外面に、金属酸化物や金属の蒸着層からなるバリア層が形成され、バリア層の内面に接着層を介してシーラント層が積層された積層フィルムが記載されている。
【0003】
このような積層フィルムには、レトルト処理等の高温の殺菌処理を行ってもデラミネーション(積層された層の剥離)を起こさない、すなわち、レトルト耐性を有することが求められる場合がある。内容物が食酢、オイル等を含む液体調味料や、アルコールを含有する浴用剤や、強い浸透力を有する揮発性物質を含む湿布薬等である場合は、これらの内容物に起因するデラミネーションを起こさない程度の内容物耐性も求められる。
【0004】
積層フィルムの一般的な構成として、複数のフィルムをウレタン2液硬化タイプ等のドライラミネート用接着剤を用いて貼り合わせた構成が知られている。
このような構成において、充分なレトルト耐性および内容物耐性を積層フィルムに付与するには、長時間にわたる接着剤養生が必要であり、短時間での製造は困難である。また、製造時に積層フィルムがロール状に巻かれる場合は、養生時の熱でフィルムが巻き締まることが負荷となり、フィルムが破損することがある。
【0005】
レトルト包材に用いられる積層フィルムの他の構成として、無機酸化物層をバリア層とすることが知られている。このバリア層は透明性を有するため、電子レンジによる加熱が可能であることや、環境負荷が小さい等の利点がある。
このバリア層と、上述のドライラミネートとを組み合わせるにあたり、特許文献2には、接着層に無水マレイン酸グラフト重合ポリプロピレンを用い、グラフト率を調整することによりバリア層に対する接着性を改良することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-46006号公報
【文献】特許第3430551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、積層フィルムにおけるバリア層の複合化に伴い、バリア層と接着層とが隣接しない構成が取られることが少なくない。特許文献2に記載の技術では、このような構成において接着性を向上させることができない場合がある。
【0008】
上記事情を踏まえ、本発明は、幅広い種類の透明バリアフィルムとの接着性に優れ、簡便に製造できる積層フィルムを提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、レトルト耐性及び内容物耐性に優れた包装容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一の態様は、ポリエチレンテレフタレートからなる基材フィルム層に酸化アルミニウムからなる酸化金属蒸着層が設けられたガスバリアフィルム部と、酸化金属蒸着層上に形成された接着層と、ポリプロピレンからなり、接着層上に形成された熱可塑性樹脂層とを備え、接着層が、無水マレイン酸グラフト重合ポリプロピレンを主成分とする層を有し、無水マレイン酸グラフト重合ポリプロピレンの無水マレイン酸グラフト率が0.1wt%以上、1wt%以下である積層フィルムである。
【0010】
本発明の第二の態様は、本発明の積層フィルムを製袋してなる包装容器である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の積層フィルムは、幅広い種類の透明バリアフィルムとの接着性に優れ、簡便に製造できる。
また、本発明の包装容器は、レトルト耐性及び内容物耐性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る積層フィルムを模式的に示す断面図である。
図2】本発明の変形例に係る積層フィルムを模式的に示す断面図である。
図3】本発明の変形例に係る積層フィルムを模式的に示す断面図である。
図4】本発明の変形例に係る積層フィルムを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態について、図1から図4を参照して説明する。
図1は、本実施形態の積層フィルム1の構成を模式的に示す断面図である。積層フィルム1は、ガスバリアフィルム部10に、接着層20及び熱可塑性樹脂層30がこの順に積層されて構成されている。ガスバリアフィルム部10は、基材フィルム層11の接着層20側の面に、プライマー層12と、酸化金属蒸着層13と、ガスバリア被覆層14とがこの順に積層されて構成されている。
【0014】
基材フィルム層11としては、例えば、樹脂フィルムを用いることができる。
樹脂フィルムを形成する樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレン-2、6-ナフタレート、ポリブチレンテレフタレートやこれらの共重合体等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ナイロン-6、ナイロン-66、ナイロン-12等のポリアミド系樹脂;ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体等の水酸基含有重合体等が挙げられる。中でも、PETやポリアミド系樹脂が好ましく用いられる。これらの樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】
基材フィルム層11は、延伸フィルムであってもよく、未延伸フィルムであってもよい。なかでも、機械的強度や寸法安定性に優れる点から、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムが好ましく、二軸延伸フィルムがより好ましい。
基材フィルム層11は、1枚の基材フィルムからなる単層構成であってもよく、2枚以上の基材フィルムが積層された複層構成であってもよい。
【0016】
基材フィルム層11の厚さは特に限定されないが、例えば3~200μmとすることができ、6~30μmが好ましい。
【0017】
プライマー層12は、3官能オルガノシラン及びその加水分解物からなる群から選ばれる1種以上と、アクリルポリオールと、イソシアネート化合物との複合物を含有する層である。3官能オルガノシランは、下記の式(1)で表される化合物であることが好ましい。
Si(OR・・・(1)
ただし、式(1)中、Rはアルキル基、ビニル基、イソシアネート基を有するアルキル基、グリシドキシ基を有するアルキル基、およびエポキシ基を有するアルキル基のいずれかであり、Rはアルキル基である。
【0018】
としてのアルキル基、ビニル基、イソシアネート基を有するアルキル基、グリシドキシ基を有するアルキル基及びエポキシ基を有するアルキル基は、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。また、環状構造を有していてもよい。
【0019】
式(1)で表される化合物としては、例えば、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン等が挙げられる。中でも、R中にイソシアネート基を有するイソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシ基を有するグリシドオキシトリメトキシシラン、エポキシ基を有するエポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシランが特に好ましい。
【0020】
3官能オルガノシランの加水分解物は、3官能オルガノシランに酸やアルカリ等を直接添加して加水分解を行う方法等、公知の方法で得ることができる。
【0021】
アクリルポリオールとは、アクリル酸誘導体モノマーを単独重合又は共重合させて得られる高分子化合物、もくしはアクリル酸誘導体モノマー及びその他のモノマーとを共重合させて得られる高分子化合物のうち、末端に水酸基を有し、イソシアネート化合物のイソシアネート基と反応するものである。
アクリル酸誘導体モノマーとしては、例えば、エチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート等が挙げられる。
他のモノマーとしては、例えば、スチレンが挙げられる。
【0022】
アクリルポリオールとしては、エチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレートから選ばれる1種のアクリル酸誘導体モノマーの単独重合体や、これらアクリル酸誘導体とスチレンの共重合体が好ましい。
【0023】
アクリルポリオールの水酸基価は、イソシアネート化合物との反応性に優れる点から、5~200KOHmg/gが好ましい。
アクリルポリオールと3官能オルガノシランとの質量比は、1/1~100/1が好ましく、2/1~50/1がより好ましい。
【0024】
イソシアネート化合物は、2以上のイソシアネート基を有し、アクリルポリオールと反応してウレタン結合を形成する化合物であり、基材フィルム層11と酸化金属蒸着層13との密着性を高める架橋剤もしくは硬化剤として作用する。
イソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等の芳香族系イソシアネート化合物、キシレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサレンジイソシアネート(HMDI)等の脂肪族系イソシアネート化合物、それら芳香族系又は脂肪族系イソシアネート化合物とポリオールとを重合して得られる、イソシアネート基を有する重合体、及びそれらの誘導体等が挙げられる。イソシアネート化合物としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
アクリルポリオールとイソシアネート化合物との配合比としては、アクリルポリオール由来の水酸基の数に対するイソシアネート化合物由来のイソシアネート基の数の比が50倍以下であることが好ましく、イソシアネート基と水酸基が当量であることが特に好ましい。これにより、イソシアネート化合物が少なすぎて硬化不良が生じたり、イソシアネート化合物が多すぎてブロッキングが発生して加工し難くなったりすることを抑制しやすい。
【0026】
複合物は、3官能オルガノシラン及びその加水分解物からなる群から選ばれる1種以上と、アクリルポリオールと、イソシアネート化合物とを溶媒中で反応させることで得られる。
溶媒としては、各成分を溶解及び希釈できるものであれば特に限定されず、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;メチルエチルケトン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等が挙げられる。溶媒は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。3官能オルガノシラン等を加水分解するために塩酸等の水溶液を用いる場合は、共溶媒として、イソプロピルアルコール等と極性溶媒である酢酸エチルとを任意に混合した溶媒を用いることが好ましい。
【0027】
複合物を調製する際には、3官能オルガノシランとアクリルポリオールの反応を促進させるために、反応液に触媒を添加してもよい。触媒としては、反応性及び重合安定性の点から、塩化錫(SnCl、SnCl)、オキシ塩化錫(SnOHCl、Sn(OH)Cl)、錫アルコキシド等の錫化合物が好ましい。これらの触媒は、各成分の配合時に直接添加してもよく、またメタノール等の溶媒に溶かして添加してもよい。
触媒の添加量は、3官能オルガノシラン及びその加水分解物の合計量に対して、モル比で1/10~1/10000が好ましく、1/100~1/2000がより好ましい。
【0028】
また、複合物を含む液の安定性を向上させるために、金属アルコキシド又はその加水分解物を加えてもよい。
金属アルコキシドとしては、テトラエトキシシラン〔Si(OC〕、トリプロポキシアルミニウム〔Al(OC〕等、一般式:M(OR)(ただし、MはSi、Al、Ti又はZrであり、Rはメチル基、エチル基等のアルキル基である。)で表される化合物が挙げられる。なかでも、水系の溶媒中で比較的安定である点から、テトラエトキシシラン、トリプロポキシアルミニウム、又はそれらの混合物が好ましい。
【0029】
金属アルコキシドの加水分解物を得る方法は、3官能オルガノシランの加水分解物を得る方法と同様である。金属アルコキシドの加水分解は、3官能オルガノシランの加水分解と同時に行ってもよく、3官能オルガノシランの加水分解とは別に行ってもよい。
3官能オルガノシランと金属アルコキシドとのモル比は、液安定性の点から、10:1~1:10が好ましく、1:1が特に好ましい。
【0030】
プライマー層12には、各種添加剤を添加してもよい。添加剤としては、例えば、3級アミン、イミダゾール誘導体、カルボン酸の金属塩化合物、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩等の硬化促進剤や、フェノール系、硫黄系、ホスファイト系等の酸化防止剤、レベリング剤、流動調整剤、触媒、架橋反応促進剤、充填剤等が挙げられる。
【0031】
プライマー層12の形成方法は特に限定されない。例えば、必要に応じて使用する触媒の存在下で3官能オルガノシランを加水分解した液、又は3官能オルガノシランを金属アルコキシドとともに加水分解した液に、アクリルポリオールやイソシアネート化合物を混合した溶液を基材フィルム層11に塗工し、乾燥する方法が挙げられる。また、必要に応じて使用する触媒、金属アルコキシドの存在下、溶媒中で3官能オルガノシランとアクリルポリオールを混合した液、又はさらに加水分解反応を行った液に、イソシアネート化合物を加えた溶液を基材フィルム層11に塗工し、乾燥する方法であってもよい。
【0032】
塗工方法としては特に限定されず、例えば、ディッピング法、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、エアナイフコート、コンマコート、ダイコート、スクリーン印刷法、スプレーコート、グラビアオフセット法等が挙げられる。
乾燥方法としては、熱風乾燥、熱ロール乾燥、高周波照射、赤外線照射、UV照射等、熱をかけて溶媒分子を除去する方法であればよく、これら2つ以上を組み合わせてもよい。
【0033】
酸化金属蒸着層13は、金属酸化物の蒸着により形成される層である。金属酸化物としては、例えば、酸化珪素、酸化アルミニウム等が挙げられ、酸化アルミニウムが好ましい。
酸化金属蒸着層13の形成方法としては、特に限定されず、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法等が挙げられる。
【0034】
酸化金属蒸着層13の厚さは、100~500Åが好ましく、150~300Åがより好ましい。酸化金属蒸着層13の厚さが下限値以上であれば、バリア性が確保される。酸化金属蒸着層13の厚さが上限値以下であれば、透明性が確保される。
【0035】
ガスバリア被覆層14は接着層20と接触する層である。
ガスバリア被覆層14は、酸化珪素成分、ビニルアルコール成分、イソシアネート成分及びシランカップリング剤成分を含有する構成である。
【0036】
酸化珪素成分としては、一般式Si(OR(但し、Rは、CH,C、またはCOCH)で表されるケイ素化合物及びその加水分解物を使用できる。具体的には、金属アルコキシドであるテトラアルコキシシラン等のアルキルシリケート、アルキルトリアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン及びその加水分解物等を例示できる。
ビニルアルコール成分としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
【0037】
イソシアネート成分としては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
シランカップリング剤成分としては、例えば、一般式:(RSi(OR(ただし、RはCH、C、またはCOCH、Rは有機官能基、nは1以上)で表されるエポキシシランカップリング剤、アミンシランカップリング剤、ビニルシランカップリング剤、アクリルシランカップリング剤等を例示できる。あるいは、式(NCO-RSi(OR(但し、Rは、(CH)n、nは、1以上)で表される三量体1,3,5-トリス(3-トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートも使用できる。
なお、イソシアネート基を有するシランカップリング剤を、イソシアネート化合物とシランカップリング剤の両方を兼ねる化合物として使用してもよい。
【0038】
ガスバリア被覆層14を、飛行時間型2次イオン質量分析装置(TOF-SIMS)で測定すると、酸化珪素成分、ビニルアルコール成分、イソシアネート成分及びシランカップリング剤成分が検出される。TOF-SIMSとは、表面にイオンを照射した際に発生する2次イオンのマススペクトルを測定し、表面の構成元素や化学構造に関する情報を得ることができる表面分析法である。
【0039】
ガスバリア被覆層14には、本発明の効果を損なわない範囲で、隣接する層との密着性、濡れ性、収縮によるクラック発生の抑制を考慮して、コロイダルシリカやスメクタイト等の粘土鉱物、安定化剤、着色剤、粘度調整剤等の公知の添加剤が加えられてもよい。
【0040】
ガスバリア被覆層14の厚さは、0.01~50μmが好ましい。ガスバリア皮膜層14の厚さが下限値以上であれば、優れたガスバリア性が得られやすい。ガスバリア皮膜層14の厚さが上限値以下であれば、クラックが生じることを抑制しやすい。
【0041】
ガスバリア被覆層14の形成方法は特に限定されず、例えば、上述した各成分を溶媒中で混合して酸化金属蒸着層13上に塗工し、乾燥する方法が挙げられる。酸化珪素成分として金属アルコキシドを用いる場合、金属アルコキシドは水系溶媒中では均一分散しにくいため、加水分解して用いてもよい。
塗工方法及び乾燥方法も特に限定されず、例えば、プライマー層12の形成において挙げた方法と同じ方法を用いることができる。
【0042】
接着層20は、無水マレイン酸グラフト重合ポリプロピレン(以下、「変性PP」と称する。)を主成分とする層を有する。
変性PPは、ポリプロピレンを無水マレイン酸によりグラフト変性したポリプロピレンである。変性PPにおけるポリプロピレンとしては、例えば、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、又はランダムポリプロピレン、プロピレン-αオレフィン共重合体等が挙げられる。αオレフィンとしては、エチレン、1-ブテン等が挙げられる。
変性PPの融点に特に制限はなく、適宜設定できるが、レトルト耐性を考慮すると100℃以上が好ましい。
【0043】
変性PPの無水マレイン酸グラフト率は、0.1~1重量%に設定されている。
無水マレイン酸グラフト率が0.1重量%未満であるとガスバリアフィルム部10との十分な接着強度が得られず、殺菌時等にデラミネーションが発生する可能性が高くなる。
一方、無水マレイン酸グラフト率が1重量%を超えると、樹脂特性が不安定となる。具体的には、グラフト化の際に使用する反応触媒がPP樹脂本体の分解を促す結果、分子量が小さくなってメルトフローレート(MFR)が極端に上昇し、製膜適性が失われてしまう。その結果、形成される接着層の皮膜強度が低下し、充分な接着強度が得られないという不具合が発生する。
【0044】
接着層20の厚さは、1~30μmが好ましく、1~15μmがより好ましい。接着層20の厚さが下限値以上であれば、ガスバリアフィルム部10と熱可塑性樹脂層30との間でデラミネーションが生じることを抑制しやすい。接着層20の厚さが上限値以下であれば、積層後のラミネーション加工における熱伝導性に優れ、適正なラミネート強度が得られる。
接着層20は、熱可塑性樹脂層30側に、変性PPを含まない層を有してもよい。例えば、変性PPとの密着性が良いポリプロピレン層を設け、このポリプロピレン層と熱可塑性樹脂層30とを接合してもよい。
【0045】
熱可塑性樹脂層30は、積層フィルム1を用いて包装容器を形成する際に、熱融着により接合される層であり、シーラント層とも呼ばれる。熱可塑性樹脂層30を形成する熱可塑性樹脂は、熱融着性のある樹脂であればよい。例えば、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリエチレン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂(EP)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸エステル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、及びそれらの金属架橋物等が挙げられる。中でも、食品包装におけるレトルト殺菌適性等を考慮すると、ポリプロピレン及び耐熱性のLLDPEが好ましい。熱可塑性樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
熱可塑性樹脂層30の厚さは、目的に応じて適宜設定でき、一般的には15~200μmの範囲である。
【0047】
上記の構成を有する積層フィルム1は、ガスバリアフィルム部10のガスバリア被覆層14上に、接着層20および熱可塑性樹脂層30を積層することにより製造できる。
接着層20は、溶融押し出しで形成してもよいし、変性PPを含む液状接着剤をガスバリア被覆層14上に塗工し、乾燥させて溶媒を飛ばすことにより形成してもよい。前者の場合は、共押出により接着層20および熱可塑性樹脂層30を同時に積層することもできる。後者の場合は、熱可塑性樹脂層30となる樹脂フィルムを、熱ラミネートにより、接着層20上に積層できる。
【0048】
液状接着剤に用いる溶媒としては、変性PPを分散又は溶解できる公知の溶媒を使用でき、例えば、トルエン(TOL)、メチルエチルケトン(MEK)、メチルシクロヘキサン(MCH)、酢酸エチル(EA)、酢酸n-プロピル(NPAC)等が挙げられる。
液状接着剤の塗工方法としては、特に限定されず、例えば、プライマー層12の形成方法で挙げた方法と同じものが挙げられる。また、塗工後の乾燥方法も特に限定されず、例えば、プライマー層12の乾燥方法で挙げた方法と同じものが挙げられる。
【0049】
完成した積層フィルム1を折り曲げたり、2枚使用したりして、対向する熱可塑性樹脂30どうしを積層フィルムの周縁に沿って熱融着すると、積層フィルムが袋状になり、本実施形態の包装容器を形成できる。
【0050】
本実施形態の積層フィルム1によれば、接着層20が変性PPを主成分とする層を有し、かつ変性PPの無水マレイン酸グラフト率が0.1~1重量%に設定されている。したがって、養生時間が必要なく、短時間で積層フィルムを製造することができ、養生時に巻き芯近くのフィルム巻き締めによって破損することがない。
【0051】
さらに、接着層20を共押出で形成する場合、接着層20の形成に有機溶媒を使用しないため、衛生面、環境面にも優れている。
接着層20におけるその無水マレイン酸グラフト率が0.1~1重量%に設定されているため、ガスバリアフィルム部がガスバリア被覆層を有する場合も有さない場合も、高い接着性を実現できる。
【0052】
本実施形態の積層フィルムの構成は、上述した構成に限られない。
図2に示す変形例の積層フィルム1Aは、プライマー層を備えない例である。ガスバリアフィルム部10Aの基材フィルム層11は、接着層側の第一面11aにプラズマ処理が施され、その上に酸化金属蒸着層13およびガスバリア被覆層14が積層されている。第一面11aにプラズマ処理が施されていることにより、プライマー層を備えなくても、基材フィルム層11と酸化金属蒸着層13の間にデラミネーションが生じることが抑制されている。
【0053】
プラズマ処理としては、リアクティブイオンエッチング(反応性イオンエッチング、RIE)モードのプラズマ処理が好ましい。例えば、公知のホロアノード・プラズマ処理装置を用いてRIE処理を行うことができる。
【0054】
図3に示す変形例の積層フィルム1Bは、ガスバリアフィルム部10Bにおいて、酸化金属蒸着層およびガスバリア被覆層に代えて、ポリカルボン酸系重合体を含有する単層のガスバリア層16を備えている。積層フィルム1Bにおいては、ポリカルボン酸系重合体により基材フィルム層11とガスバリア層16との密着性が向上し、基材フィルム層11とガスバリア層16の間にデラミネーションが生じることが抑制されているため、プライマー層12は必要ない。無水マレイン酸グラフト率が0.1~1重量%の接着層20は、ガスバリア層16とも良好な接着性を発揮する。
【0055】
ポリカルボン酸系重合体とは、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する重合体をいう。
ポリカルボン酸系重合体としては、例えば、α,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸の単独重合体;少なくとも2種類のα,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸の共重合体;α,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸と他のエチレン性不飽和モノマーとの共重合体;アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、ペクチン等の分子内にカルボキシル基を有する酸性多糖類等が挙げられる。これらポリカルボン酸系重合体は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
α,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等が挙げられる。
α,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸と共重合可能な他のエチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル等の飽和カルボン酸ビニルエステル類、アルキルアクリレート類、アルキルメタクリレート類、アルキルイタコネート類、アクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、スチレン等が挙げられる。
【0057】
ポリカルボン酸系重合体が、α、β-モノエチレン性不飽和カルボン酸とその他のエチレン性不飽和単量体との共重合体である場合には、ガスバリア性、耐水性の観点から、α、β-モノエチレン性不飽和カルボン酸の共重合割合は、60モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましく、100モル%が特に好ましい。
【0058】
ポリカルボン酸系重合体が、α、β-モノエチレン性不飽和カルボン酸のみからなる重合体の場合には、当該重合体は、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合性単量体の重合によって得られる。当該重合体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸から選ばれる少なくとも1種の単量体の重合によって得られる重合体が好ましく、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、又はそれらの混合物がより好ましい。
【0059】
ポリカルボン酸系重合体が酸性多糖類の場合には、モノマー成分としてアルギン酸が好ましく用いられる。ポリカルボン酸系重合体の数平均分子量は、特に限定されない。ポリカルボン酸系重合体の数平均分子量は、コーティング性の観点から、2,000~10,000,000が好ましく、5,000~1,000,000がより好ましい。
【0060】
ガスバリア皮膜層14Aには、ガスバリア性を損なわない範囲で、ポリカルボン酸系重合体に他の重合体が混合されてもよい。例えば、ガスバリア皮膜層14Aが、ポリカルボン酸系重合体とポリアルコール類の混合物からなるものであってもよい。
【0061】
ポリアルコール類は、分子内に2個以上の水酸基を有する低分子化合物からアルコール系重合体を含む。ポリアルコール類は、ポリビニルアルコール(PVA)、糖類及び澱粉類を含む。前記分子内に2個以上の水酸基を有する低分子量化合物としては、例えば、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ペンタエリトリトール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
PVAのケン化度は、95%以上が好ましく、98%以上がより好ましい。PVAの平均重合度は、300~1500が好ましい。ポリカルボン酸系重合体との相溶性の観点から、ビニルアルコールを主成分とするビニルアルコール-ポリ(メタ)アクリル酸共重合体を、ポリアルコール類として用いることが好ましい。
【0062】
単糖類、オリゴ糖類及び多糖類が、糖類として使用される。これらの糖類は、特開平7-165942号公報に記載のソルビトール、マンニトール、ズルシトール、キシリトール、エリトリトール等の糖アルコール、糖アルコールの置換体、糖アルコールの誘導体を包含する。好ましい糖類は、水、アルコール、あるいは水とアルコールの混合溶剤に溶解するものである。澱粉類は、前記多糖類に含まれる。澱粉類の具体例は、例えば、小麦澱粉、トウモロコシ澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、米澱粉、甘藷澱粉、サゴ澱粉等の生澱粉(未変性澱粉)、各種の加工澱粉が挙げられる。加工澱粉の具体例は、例えば、物理的変性澱粉、酵素変性澱粉、化学変性澱粉、澱粉類にモノマーをグラフト重合したグラフト澱粉が挙げられる。これらの澱粉類のなかでも、馬鈴薯澱粉が酸で加水分解された水可溶性加工澱粉、澱粉の末端基(アルデヒド基)が水酸基に置換された糖アルコールが好ましい。澱粉類は、含水物であってもよい。これらの澱粉類は、それぞれ単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0063】
ポリカルボン酸系重合体とポリアルコール類との混合比(質量比)は、高湿度条件下でも優れた酸素ガスバリア性を有する包装容器を得るという観点から、99:1~20:80が好ましく、95:5~40:60がより好ましく、95:5~50:50がさらに好ましい。
【0064】
ガスバリア層16は、例えば、ポリカルボン酸系重合体と溶媒を含む塗液1、又は、ポリカルボン酸系重合体とポリアルコール類と溶媒を含む塗液2を、基材フィルム上に塗工し、溶媒を蒸発乾燥させることで形成される。また、ポリカルボン酸系重合体を形成するモノマーを含む塗液を基材フィルム上に塗工し、紫外線又は電子線を照射して重合を行ってポリカルボン酸系重合体とし、ガスバリア層16を形成する方法、前記モノマーを基材フィルム上に蒸着すると同時に電子線を照射して重合を行い、ポリカルボン酸系重合体としてガスバリア層16を形成する方法を用いてもよい。
【0065】
塗液1は、ポリカルボン酸系重合体が溶媒に溶解又は分散されることで調製される。溶媒としては、ポリカルボン酸系重合体を均一に溶解又は分散できるものであれば特に限定されない。溶媒の具体例は、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ジメチルスルフォキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等が挙げられる。溶媒としては、非水系溶媒又は非水系溶媒と水の混合物が好ましい。塗液1中のポリカルボン酸系重合体の濃度は、0.1~50質量%が好ましい。
【0066】
塗液2を得る方法は特に限定されない。塗液2を得る方法の具体例としては、各成分を溶媒に溶解する方法、各成分の溶液を混合する方法、ポリアルコール類溶液中でカルボキシル基を含有するモノマーを重合し、所望により重合後にアルカリで中和する方法等が挙げられる。溶媒の具体例としては、例えば、水、アルコール、水とアルコールの混合物が挙げられる。塗液2の固形分濃度は、1~30質量%が好ましい。
【0067】
塗液1や塗液2には、酸素ガスバリア性が損なわれない範囲で、他の重合体、柔軟剤、可塑剤(分子内に2個以上の水酸基を有する低分子化合物は除く)、安定剤、アンチブロッキング剤、粘着剤、モンモリロナイト等の無機層状化合物等が適宜添加されてもよい。
【0068】
酸素ガスバリア性の観点から、塗液1には1価及び/又は2価の金属を含む化合物を添加してもよい。1価及び/又は2価の金属の具体例としては、ナトリウム、カリウム、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、銅が挙げられる。1価及び/又は2価の金属を含む化合物の具体例としては、水酸化ナトリウム、酸化亜鉛、水酸化カルシウム、酸化カルシウムである。
塗液1への1価及び/又は2価の金属を含む化合物の添加量は、ポリカルボン酸系重合体のカルボキシル基に対して、0~70モル%が好ましく、0~50モル%がより好ましい。
【0069】
酸素ガスバリア性の向上のため、基材フィルム上に塗液2を塗工し、乾燥して得られた被膜を熱処理してもよい。この場合、熱処理条件の緩和のため、塗液2の調製の際に、水に可溶な、アルカリ金属化合物や無機酸又は有機酸の金属塩を適宜添加してもよい。金属の具体例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属が挙げられる。
【0070】
無機酸又は有機酸の金属塩の具体例としては、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、ホスフィン酸ナトリウム(次亜リン酸ナトリウム)、亜リン酸水素二ナトリウム、リン酸二ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、次亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。これらの例示された金属塩のなかでも、ホスフィン酸ナトリウム(次亜リン酸ナトリウム)、ホスフィン酸カルシウム(次亜リン酸カルシウム)等のホスフィン酸金属塩(次亜リン酸金属塩)が好ましい。無機酸及び有機酸の金属塩の添加量は、塗液2中の固形分100質量部に対して、0.1~40質量部が好ましく、1~30質量部がより好ましい。
アルカリ金属化合物の具体例としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。アルカリ金属化合物の添加量は、塗液2中のポリカルボン酸系重合体のカルボキシル基に対して、0~30モル%が好ましい。
【0071】
塗液1又は塗液2の塗工方法としては、例えば、エアーナイフコーター、キスロールコーター、メタリングバーコーター、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、デイップコーター、ダイコーター、スプレー等の装置、あるいは、それらを組み合わせた装置を用いる方法が挙げられる。
溶媒を蒸発乾燥させる方法としては、例えば、アーチドライヤー、ストレートバスドライヤー、タワードライヤー、フローティングドライヤー、ドラムドライヤー、赤外線ドライヤー等の装置、あるいは、それらを組み合わせた装置による熱風の吹き付け、赤外線照射、自然乾燥、オーブン中での乾燥等の方法が挙げられる。
【0072】
ガスバリア層16の厚さは、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、1μm以下がさらに好ましい。
【0073】
ガスバリア層16上には、亜鉛化合物を含むコーティング層を形成してもよい。
亜鉛化合物の具体例としては、亜鉛の酸化物、水酸化物、炭酸塩、有機酸塩、無機酸塩等が挙げられる。亜鉛化合物としては、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、炭酸亜鉛、酢酸亜鉛、リン酸亜鉛が好ましい。亜鉛の毒性は低く、亜鉛がレトルト臭の原因となる硫化水素と反応して生成する硫化亜鉛(白色)は包装容器の外観にほとんど影響を与えない。
【0074】
亜鉛化合物の好ましい形態は粒子である。コーティング適性及び溶媒への分散性の観点から、亜鉛化合物粒子の平均粒径は、5μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましく、0.1μm以下がさらに好ましい。
【0075】
コーティング層中の亜鉛化合物の含有量は、1m当たり亜鉛として32.7mg以上が好ましい。前記亜鉛化合物の含有量が32.7mg以上であれば、硫化水素が亜鉛化合物に吸収される効果が官能的に認知されやすい。前記亜鉛化合物の含有量は、1m当たり亜鉛として65.4mg以上がより好ましく、131mg以上がさらに好ましく、196mg以上が特に好ましい。亜鉛化合物の含有量が増大するほどレトルト臭の吸収効果も大きくなるが、内容物の風味が損なわれるおそれもある。例えば、ニンニク調味製品等の含硫化合物に由来する風味が重要な食品が、亜鉛化合物が多量に含まれる包装容器で包装される場合、当該食品の風味が損なわれることがある。従って、亜鉛化合物の含有量は、包装される内容物により適宜調節する必要がある。
【0076】
亜鉛化合物を含有するコーティング層の厚さは、0.1~10μmが好ましく、0.1~2μmがより好ましく、0.1~1μmがさらに好ましい。コーティング層の厚さが下限値以上であれば、コーティング層の厚さが安定に維持されやすい。コーティング層の厚さが上限値以下であれば、コーティング層の生産性が高くなり、またコーティング層が凝集破壊しにくくなる。
【0077】
亜鉛化合物を含むコーティング層を形成する方法としては、特に限定されず、例えば、亜鉛化合物と溶媒又は分散媒体を含むコーティング剤を塗工する方法が挙げられる。
溶媒又は分散媒体の具体例としては、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、n-ペンチルアルコール、ジメチルスルフォキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。塗工適性や製造性の観点から、溶媒又は分散媒体としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、トルエン、酢酸エチル、水が好ましい。これらの溶媒又は分散媒体は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0078】
コーティング剤には、樹脂、界面活性剤、柔軟剤、安定剤、膜形成剤、アンチブロッキング剤、粘着剤等の添加物を適宜添加してもよい。
樹脂としては、例えば、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、硝化綿、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂等の塗料用樹脂が挙げられる。
【0079】
亜鉛化合物の分散性の観点から、コーティング剤には分散剤を添加することが好ましい。分散剤の具体例としては、例えば、アクリルアミド、アクリル酸、アクリル酸エステル、アクリル酸中和物、アクリロニトリル、アジピン酸、アジピン酸エステル、アジピン酸中和物、アゼライン酸、アビエチン酸、アミノドデカン酸、アラキジン酸、アリルアミン、アルギニン、アルギニン酸、アルブミン、アンモニア、イタコン酸、イタコン酸エステル、イタコン酸中和物、エチレンオキサイド、エチレングリコール、エチレンジアミン、オレイン酸、カオリン、カゼイン、カプリル酸、カプロラクタム、キサンタンガム、クエン酸、グリシン、クリストバライト、グリセリン、グリセリンエステル、グルコース、クロトン酸、ケイ酸、サッカロース、サリチル酸、シクロヘプテン、シュウ酸、スターチ、ステアリン酸、セバシン酸、セルロース、セレシン、ソルビタン脂肪酸エステル(ソルビタンオレエート、ソルビタンステアレート、ソルビタンパーミレート、ソルビタンベヘネート、ソルビタンラウレート)、ソルビトール、ソルビン酸、タルク、デキストリン、テレフタル酸、ドロマイト、ニトロセルロース、尿素、バーミキュライト、パルチミン酸、ピネン、フタル酸、フマル酸、プロピオン酸、プロピレングリコール、ヘキサメチレンジアミン、ペクチン、ベヘン酸、ベンジルアルコール、ベンゾイン酸、ベンゾイン酸エステル、ベンゾグアナミン、ペンタエリスリトール、ベントナイト、ホウ酸、ポリジメチルシロキサン、ポリビニルアルコール、マイカ、マレイン酸、マレイン酸エステル、マレイン酸中和物、マロン酸、マンニトール、ミリスチン酸、メタクリル酸、メチルセルロース、ヤシ油、ユージノール、酪酸、リグノセルロース、リジン、リンゴ酸、リン酸、レシチン、ロジン、ワックス、これらの重合体、これらの共重合体等が挙げられる。
【0080】
コーティング適性の観点から、コーティング剤中の亜鉛化合物の含有量は、1~50質量%が好ましい。
【0081】
コーティング剤の塗工方法としては、特に限定されず、例えば、前記した塗液1又は塗液2の塗工方法で挙げた方法と同じ方法が挙げられる。
コーティング剤の塗工後の乾燥方法としては、特に限定されず、例えば、塗液1又は塗液2の塗工後の乾燥方法と同じ方法が挙げられる。乾燥条件も特に限定されずない。乾燥温度は、40~350℃が好ましく、45~325℃がより好ましく、50~300℃がさらに好ましい。乾燥時間は、0.5秒~10分間が好ましく、1秒~5分間がより好ましく、1秒~1分間がさらに好ましい。
【0082】
図4に示す変形例の積層フィルム1Cは、ガスバリアフィルム部10Cにおいて、酸化金属蒸着層およびガスバリア被覆層に代えて、金属酸化物とリン化合物の反応物を含有するガスバリア層17を備えている。積層フ金属酸化物とリン化合物の反応物を用いることで、基材フィルム層11とガスバリア層17との密着性が向上し、それらの間でデラミネーションが起きることが抑制されやすくなるため、プライマー層12は必要ない。
無水マレイン酸グラフト率が0.1~1重量%の接着層20は、ガスバリア層17とも良好な接着性を発揮する。
ガスバリア層17は、単層構成でもよいし、多層構成でもよい。
【0083】
金属酸化物を構成する金属原子としては、原子価が2価以上(例えば、2~4価や3~4価)の金属原子が挙げられる。具体的な金属原子としては、例えば、Mg、Ca、Zn、Al、Si、Ti、Zr等が挙げられる。特に、金属原子としてAlを用いることが好ましい。
金属原子の表面には、通常、水酸基が存在する。
金属酸化物は、加水分解可能な特性基が金属原子に結合した化合物を原料として用いて、これを加水分解縮合させることで、化合物の加水分解縮合物として合成することができる。
化合物を加水分解縮合させる方法としては、液相合成法、具体的にはゾルゲル法を採用することができる。
【0084】
合成された金属酸化物は微小な粒子となる。金属酸化物の粒子の形状は特に限定されず、例えば、球状、扁平状、多面体状、繊維状、針状等の形状が挙げられる。粒子を繊維状又は針状の形状にすると、バリア性及び耐熱水性がさらに優れるので好ましい。
金属酸化物の粒子の大きさも特に限定されず、ナノメートルサイズからサブミクロンサイズのものが使用できる。バリア性と透明性により優れることから、金属酸化物の平均粒径は、1~100nmが好ましい。
【0085】
リン化合物は、例えばリン酸、ポリリン酸、亜リン酸、ホスホン酸及びそれらの誘導体のような、金属酸化物と反応可能な部位を1以上有するものである。反応可能な部位としては、リン原子に直接結合したハロゲン原子や、リン原子に直接結合した酸素原子が挙げられる。
これらハロゲン原子や酸素原子は、金属酸化物の表面に存在する水酸基と縮合反応(加水分解縮合反応)を起こすことで、結合することができる。
【0086】
金属酸化物とリン化合物との反応物は、金属酸化物の粒子同士が、リン化合物に由来するリン原子を介して結合された構造を有することができる。
具体的には、金属酸化物の表面に存在する官能基(例えば、水酸基)と、リン化合物における金属酸化と反応可能な部位(例えば、リン原子に直接結合したハロゲン原子や、リン原子に直接結合した酸素原子)とが縮合反応(加水分解縮合反応)を起こし、結合する。
反応生成物は、例えば、金属酸化物とリン化合物とを含む塗液を基材の表面に塗工し、形成した塗膜を熱処理することにより得られる。金属酸化物の粒子同士が、リン化合物に由来するリン原子を介して結合される反応を進行させる。
【0087】
熱処理の温度は、110℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましく、140℃以上がさらに好ましく、170℃以上が特に好ましい。熱処理温度が下限値以上であれば、反応時間が短くなり、生産性が向上する。また、熱処理温度は、基材フィルム層11の種類等によって異なるが、220℃以下が好ましく、190℃以下がより好ましい。
熱処理は、空気中、窒素雰囲気下、又はアルゴン雰囲気下等で実施することができる。熱処理の時間は0.1秒~1時間が好ましく、1秒~15分がより好ましく、5~300秒がさらに好ましい。
【0088】
ガスバリア層17には、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルの部分けん化物、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、でんぷん等の多糖類、多糖類から誘導される多糖類誘導体、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、(ポリ)アクリル酸/メタクリル酸、及びそれらの塩、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、イソブチレン-無水マレイン酸交互共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体のけん化物等が含まれてもよい。
【0089】
ガスバリア層17は、800~1400cm-1の範囲における赤外線吸収スペクトルの赤外線吸収が最大となる波数が1080~1130cm-1の範囲にあることが好ましい。
吸収ピークが、一般に各種の原子と酸素原子との結合に由来する吸収が見られる800~1400cm-1の領域において最大吸収波数の吸収ピークとして現れる場合には、より優れたバリア性と耐熱水性が発現される。この要件を満たす金属酸化物を構成する金属原子としては、例えばAl等が挙げられる。
【0090】
ガスバリア層17の厚さの上限は、4.0μmが好ましく、2.0μmがより好ましく、1.0μmがさらに好ましく、0.9μmが特に好ましい。ガスバリア層17を薄くすることによって、印刷、ラミネート等の加工時における寸法変化を低く抑えることができる。さらに、ガスバリア性を発揮する部分の柔軟性が増し、その力学的特性を、基材フィルム層11自体の力学的特性に近づけることができる。
ガスバリア層17の厚さの下限は、0.1μmが好ましく、0.2μmがより好ましい。
【0091】
上述した各積層フィルム1、1A、1B、および1Cを用いて形成された包装容器は、ガスバリア性を発揮する層の構成に関係なく高い密着性が確保され、優れた耐熱性を有する。その結果、内容物充填後にレトルト殺菌等の加熱処理を行う場合にも、レトルトインパクトによく耐え、加熱処理時によっても性能が劣化しにくい。さらに、揮発性物質を含む内容物を収容する場合もデラミネーションの発生が充分に抑制される。
【0092】
本発明の積層フィルムおよび包装容器について、実施例を用いてさらに説明する。本発明は、以降の記載によってその技術的範囲が狭く解釈されることはない。
【0093】
(実施例1)
ガスバリアフィルム部の構成を、基材フィルム層、プライマー層、酸化金属蒸着層、およびガスバリア被覆層が順に積層されたガスバリアフィルム部10の構成とした。ガスバリア被覆層側に絵柄インキを積層した後、その上に、(イ)(無水マレイン酸グラフト重合ポリプロピレン、融点:106℃、密度:0.89g/cm、MFR:12g/10min)を溶融押出し法により20μm厚みで全面に積層し、接着層を形成した。次に、レトルト殺菌用の無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP、厚さ70μm、東レフィルム加工社製、商品名「ZK500」)の一方の表面にコロナ放電処理を施し、その処理面を接着層側にして貼り合わせ、熱ラミネート法により、ガスバリアフィルム部に接着層を介して熱可塑性樹脂層を積層して実施例1の積層フィルムを得た。
【0094】
実施例1の積層フィルムを2枚準備し、それらの熱可塑性樹脂層同士が接するように重ね合わせ、周縁の三方をヒートシールして実施例1の包装容器(横100mm×縦150mm)を作製した。さらに、開口部から、酢、油、食塩及び香辛料を含む調味液100gを包装容器内に充填し、上部をヒートシールして密封した。
ヒートシール条件は、シール温度 180℃、シール時間 3秒、シール圧力 0.3MPaとした。
【0095】
(実施例2)
ガスバリアフィルム部の構成を、基材フィルム層(プラズマ処理あり)、酸化金属蒸着層、ガスバリア被覆層が順に積層されたガスバリアフィルム部10Aの構成とした。接着層を形成する接着剤として、(ロ)(無水マレイン酸グラフト重合ポリプロピレン、融点:161℃、密度:0.88g/cm、MFR:9g/10min)と、FL02C(ポリプロピレン(変性PPでない) 融点:138℃、密度:0.89g/cm、MFR:18g/10min、日本ポリプロ社製)とを用い、溶融押出し法により各10μm厚みで全面に積層した以外は、実施例1と同様にして実施例2の積層フィルムおよび包装容器を作製した。
【0096】
(実施例3)
ガスバリアフィルム部の構成を、基材フィルム層11およびガスバリア層16が順に積層されたガスバリアフィルム部10Bの構成とした。接着層を形成する接着剤として、商品名「ユニストール R-300」(無水マレイン酸グラフト重合ポリプロピレン、融点:140℃、固形分濃度:18質量%、平均粒子径:10μm、三井化学(株)社製)を用い、ガスバリアフィルム部上に1.5g/m塗工した。その他の点は実施例1と同様にして実施例3の積層フィルムおよび包装容器を作製した。
【0097】
(実施例4)
ガスバリアフィルム部の構成を、基材フィルム層11およびガスバリア層17が順に積層されたガスバリアフィルム部10Cの構成とした。接着層を形成する接着剤として、「ユニストール R-300」と、FL02Cとを用い、溶融押出し法により各10μm厚みで全面に積層した以外は、実施例1と同様にして実施例4の積層フィルムおよび包装容器を作製した。
【0098】
(比較例1)
接着層を形成する接着剤として、(ハ)融点:140℃、密度:0.88g/cm、MFR:9g/10min)を用い、溶融押出し法により20μm厚みでガスバリアフィルム部の全面に積層した以外は、実施例1と同様にして比較例1の積層フィルムおよび包装容器を作製した。
【0099】
(比較例2)
接着層を形成する接着剤として、(ニ)(無水マレイン酸グラフト重合ポリプロピレン、融点:140℃、密度:0.88g/cm、MFR:20g/10min)を用いた以外は、比較例1と同様にして比較例2の積層フィルムおよび包装容器を作製した。
【0100】
各実施例および比較例の積層フィルムおよび包装容器を用いて、以下の評価を行った。
(無水マレイン酸グラフト率の定量分析)
各例の接着剤における変性PP試料のH-NMR、マレイン酸部位をメチルエステル化した後のH-NMRをそれぞれ測定し、H-NMRのピークの差から無水マレイングラフト率をwt%単位で算出した。
【0101】
(ラミネート強度の測定)
各例の積層フィルムから幅15mmの試験片を切り出した。引っ張り試験機を用い、JIS-K6854に準拠して、室温(20℃、30%RH)の条件で初期のラミネート強度(ガスバリアフィルム部とシーラント層間)を測定した。
【0102】
(内容物耐性)
各例の包装容器を室温(20℃、30%RH)の条件で半年間保存した後、包装容器の未接合部分から幅15mmの試験片を切り出し、初期のラミネート強度と同様にして保存後のラミネート強度(ガスバリアフィルム部とシーラント層間)を測定した。
また、保存後の包装容器の外観を目視で確認し、ガスバリアフィルム部とシーラント層との剥離(デラミネーション)の有無を確認した。デラミネーションが生じていないものを「○(良好、good)」、デラミネーションが生じているものを「×(不良、bad)」の2段階で評価した。
【0103】
(レトルト耐性)
各例の包装容器を121℃、30分の条件でレトルト殺菌処理した後、包装容器の未接合部分から幅15mmの試験片を切り出し、初期のラミネート強度と同様にして滅菌後のラミネート強度(ガスバリアフィルム部とシーラント層間)を測定した。
また、レトルト殺菌処理後の包装容器の外観を目視で確認し、デラミネーションの有無を確認した。デラミネーションが生じていないものを「○(良好、good)」、デラミネーションが生じているものを「×(不良、bad)」の2段階で評価した。
【0104】
(塗工適性)
各例の積層フィルム製造時において、ガスバリア部に液状接着剤を塗工したときの状態を目視により確認し、以下の基準に従って評価した。
○:耳切れ(エッジ切れ)や接着剤の厚みムラを認めない。
×:耳切れおよび接着剤の厚みムラのいずれかを認める。
【0105】
結果を表1に示す。表1には、各例の無水マレイン酸グラフト率も記載している。
【0106】
【表1】
【0107】
表1に示すように、無水マレイン酸グラフト率が所定範囲内の変性PPを接着層の主成分とする各実施例では、初期ラミネート強度が高く、包装容器の内容物耐性及びレトルト耐性が優れていた。
一方、無水マレイン酸グラフト率が所定範囲より低い変性PPを接着層の主成分とする比較例1では、初期ラミネート強度が劣っており、包装容器の内容物耐性及びレトルト耐性も不充分であった。また、無水マレイン酸グラフト率が所定範囲より高い変性PPを接着層の主成分とする比較例2では、初期ラミネート強度、包装容器の内容物耐性及びレトルト耐性接着性が不十分であり、塗工適性も悪かった。
【0108】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の技術範囲は上記実施形態等の内容に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において各構成要素に種々の変更を加えたり、削除したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0109】
1、1A、1B、1C 積層フィルム
10、10A、10B、10C、 ガスバリアフィルム部
11 基材フィルム層
12 プライマー層
13 酸化金属蒸着層
14 ガスバリア被覆層
16 ガスバリア層
17 ガスバリア層
20 接着層
30 熱可塑性樹脂層
図1
図2
図3
図4