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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】電気刺激装置
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/36 20060101AFI20221004BHJP
【FI】
A61N1/36
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018191241
(22)【出願日】2018-10-09
(65)【公開番号】P2020058523
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000107804
【氏名又は名称】スミダコーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(72)【発明者】
【氏名】芳井 義治
【審査官】石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-506792(JP,A)
【文献】特開2015-024059(JP,A)
【文献】特開昭57-031873(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0215281(US,A1)
【文献】特開2004-031052(JP,A)
【文献】特表2013-508119(JP,A)
【文献】特開平05-277196(JP,A)
【文献】特開平11-347135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/00-1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁皮膜を有する芯線と、前記芯線を巻軸として、前記芯線に対して隙間無く巻回された外線とからなる基礎線材を備え、前記基礎線材をループ状に巻回することにより形成された筒部を更に有し、前記芯線の一端が前記外線の一端と電気的に接続し、前記芯線の他方が外部回路の一端に接続し、前記外線の他方が前記外部回路の他端に接続し、前記の筒部により、その中に置かれた生体に電気刺激を与えることを特徴とする電気刺激装置。
【請求項2】
前記基礎線材は2ターン以上に巻回されていることを特徴とする請求項1記載の電気刺激装置。
【請求項3】
前記基礎線材からなる前記筒部において、隣接している前記基礎線材の間に、隙間無く整列されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電気刺激装置。
【請求項4】
前記基礎線材または前記外線の少なくとも一方は、リッツ線からなることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の電気刺激装置。
【請求項5】
前記筒部において、それを支持する支持部更に備えることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の電気刺激装置。
【請求項6】
前記支持部及び前記筒部が開閉できるように設けられていることを特徴とする請求項5に記載の電気刺激装置。
【請求項7】
前記電気刺激装置においては、制御部も含まれていることを特徴とする請求項1~6の何れかに記載の電子刺激装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨折、骨粗しょうおよびその他の人体損傷や、腫瘍などを治療する電気刺激装置に関する。
【背景技術】
【0002】
骨折、骨粗しょうおよびその他の人体損傷に関しては、人体の自然治癒の過程が長く、特に、年配の人に対して、食事、運動、日光浴以外の方法は限界があるため、より早く、苦痛少ない治療方法が望まれている。また、低強度の電磁場を用いることによる癌処置療法(TTF’s:Tumor Treating Fieldsとも呼ばれる)があるが、電極の貼り付けなどにより、皮膚へ与えるダメージが大きかったことので、皮膚に負担なく、取り付け自由の電気刺激装置も望まれている。
【0003】
具体的に、従来の治療方法としては、例えば、特許文献1に示すように、可撓性コイルから発生されている磁場を利用して、患者の体の選択部分に対してPEMF(Pulsed electromagnetic field therapy )治療を行う方法がある。
また、特許文献2に示すように、早く骨の傷を直す為に、ネジ型の電極を体内に埋め込み、それを通して患部領域に電流を流し、早期の治癒を成し遂げる。
また、特許文献3に示すように、電場の力で腫瘍細胞、特に再発膠芽腫を標的にし、その分裂を抑制するがん治療方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2002-522125号公報
【文献】特表2017-507751号公報
【文献】特表2017-522099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に示すPEMFの治療方法においては、患部、例えば折れた骨に対して磁気刺激しかを与えられないため、治癒の周期が長くなってしまう。また、特許文献2に示す方法は、手術など体に苦痛を与える治療手段が伴うため、体力が衰えた人、例えば老人などに対して、体への負担が強いられている。更に、特許文献3に示す方法においては、電極とするアレイが直接に患者の皮膚に貼り付けられるため、治療開始してから数週間以内に20%近くの患者から皮膚炎が起きるとの報告もある。そのため、患者の皮膚も耐えられるような、簡単に取り付けられる電気刺激装置が必要となる。
【0006】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものであり、より治癒時間を短く、体への負担が少ない電気刺激装置を提供するものである。
【0007】
本発明によれば、絶縁皮膜を有する芯線と、前記芯線を巻軸として、前記芯線に対して隙間無く巻回された外線とからなる基礎線材を備え、前記基礎線材をループ状に巻回することにより形成された筒部を更に有し、前記芯線の一端が前記外線の一端と電気的に繋ぎ、前記芯線の他方が外部回路の一端に接続し、前記外線の他方が前記外部回路の他端に接続し、前記の筒部により、その中に置かれた生体に電気刺激を与えることを特徴とする電気刺激装置が提供される。
【0008】
また、本発明によれば、前記基礎線材は2ターン以上に巻回されていることを特徴とする電気刺激装置が提供されている。
【0009】
また、本発明によれば、前記基礎線材からなる前記筒部において、隣接している前記基礎線材の間に、隙間無く整列されていることを特徴とする電気刺激装置が提供されている。
【0010】
また、本発明によれば、前記基礎線材または前記外線の少なくとも一方は、リッツ線からなることを特徴とする電気刺激装置が提供されている。
【0011】
また、本発明によれば、前記筒部において、それを支持する支持部が更に備えることを特徴とする電気刺激装置が提供されている。
【0012】
また、本発明によれば、前記支持部及び前記筒部が開閉できるように設けられていることを特徴とする電気刺激装置が提供されている。
【0013】
また、本発明によれば、前記電気刺激装置においては、制御部も含まれていることを特徴とする電子刺激装置が提供されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、より治癒時間を短く、生体への負担が少なく、取り付け簡単な電気刺激装置が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第一実施形態、第二実施形態の電気刺激装置の概略を説明するための図である。
図2図1に示したコイル線材を適用した電気刺激装置を説明するための模式図である。
図3】(a)は、コイル線材の一部を示した模式的な斜視図である。(b)は、(a)中に示したx,y,z座標のx-y平面でコイル線材を切断した断面図である。
図4】(a)は、巻線が芯線と所定の距離dを隔てて巻き回されていて、かつ芯線が第二絶縁膜を有する状態を示す図である。(b)は巻線が芯線と所定の距離dを隔てて巻き回されていて、かつ芯線が露出している状態を示す図である。
図5図4(a)、図4(b)に示した巻線が形成するループを示す図である。
図6】(a)は、巻線が芯線と接触して巻き回されていて、かつ芯線が第二絶縁膜を有する状態を示す図である。(b)は巻線が芯線と接触して巻き回されていて、かつ芯線が露出している状態を示す図である。
図7】支持部を備える電気刺激装置を生体に取り付けた場合の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、以下に説明する部材の形状、寸法、配置等については、本発明の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
また、全ての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。また、本明細書では上下方向を規定して説明する場合があるが、これは構成要素の相対関係を説明するために便宜的に設定するものであり、本発明に係る製品の製造時や使用時の方向を限定するものではない。
【0017】
図1は、本実施形態の基礎線材10を用いた電気刺激装置1の概略を示す図である。
基礎線材10は、後に詳述するように、芯線に対して、外線が巻き回されて構成されている。図1に示す電気刺激装置1は、人体の骨部位5に基礎線材10を巻き回して構成されている。また図1においては、骨部位5周囲の筋肉、血管または皮膚などの人体部位が未図示である。
また、基礎線材10の芯線21や、外線22(図2等)の表面が第一絶縁膜221(図3(a)、図3(b)等)により被覆されているため、基礎線材10と骨部位5、または人体部位とは互いに絶縁されている。
本実施形態では、図1に示す電気刺激装置1にあっては、骨部位5は、電気刺激装置1から引き起こされた電流Iの流路となり、誘起電流iは、骨部位5中に流れる。
【0018】
基礎線材10は、骨部位5に対し、骨部位5の長さ方向に大凡基礎線材10の太さ分ずつずらしながら導線の周方向に巻き回される。本明細書では、このような外線の巻き回し方法を螺旋状に巻くとも記す。
【0019】
本実施形態では、基礎線材10を芯線21と、外線22とにより形成している。芯線21には第一引出線212が接続されていて、外線22には第二引出線222が接続されている。第一引出線212、第二引出線222は、芯線21及び外線22を図2に示す外部回路8に接続するための導線である。
【0020】
以下、本実施形態の基礎線材10、基礎線材10を用いた電気刺激装置1ついて説明する。
【0021】
・第一実施形態
<基礎線材>
先ず、第一実施形態の基礎線材10の電気的な特性について、図面を用いて説明する。
【0022】
図2は、図1に示した基礎線材10を適用した電気刺激装置1を説明するための模式図である。図2に示すように、基礎線材10は、芯線21と、芯線21に螺旋状に巻き回される外線22とにより構成されている。芯線21と外線22は別個の導線であって、それぞれの一方の端部p1、p2が、点Pにおいて接続されている。また、芯線21の端部p1と異なる側の端部p3、外線22の端部p2と異なる側の端部p4は、例えば図2に示す外部回路8と接続する第一引出線212、第二引出線222の端部である。外部回路8は、芯線21、外線22に入力される電気的な信号(例えば電流)を送るための回路であって、このような外部回路8は、電流を流す電源機器として機能する。電気刺激装置1は、基礎線材10が巻き回されることによって構成される筒部20の内部に電場を形成する。
また、芯線21と外線22は別個の導線に限りなく、一本の導線からなり、点Pにおいて折り返られていることも可能である。
【0023】
図3(a)、図3(b)、図4(a)、図4(b)及び図5は、図1に示した基礎線材10の形状を説明するための図である。このうち、図3(a)は、基礎線材10の一部を示した模式的な斜視図である。図3(b)は、図3(a)中に示したx,y,z座標のx-y平面で基礎線材10を切断し、切断面を-zの方向に見た断面図である。図4(a)から図5は、いずれも図3(a)に示した基礎線材10をx-z平面で切断し、切断面をy方向に見た模式的な断面図である。図4(a)、図4(b)は、いずれも外線22が芯線21と所定の距離dを隔てて巻き回されている状態を示している。図4(a)は芯線21が第二絶縁膜211を有する例を示し、図4(b)は外線22が露出している例を示している。図5は、図4(a)、図4(b)の芯線21の図示を省いて外線22が形成するループを示している。図3(a)から図5は、いずれも模式的な図である。
【0024】
第一実施形態の基礎線材10は、図3(a)、図3(b)示すように、可撓性及び導電性を有する芯線21と、第一絶縁膜221が導電性のワイヤ線に被覆形成された外線22と、を有している。芯線21の一方の端部p1(図2)と外線の一方の端部p2(図2)とが電気的に接続されて、かつ外線22が芯線21の周囲に巻き回されて芯線を共有の中心軸とする複数のループrを形成する。
【0025】
芯線21に要求される可撓性は、芯線21を環状にして筒部20を形成することが可能な程度であればよく、筒部20の径は基礎線材10を適用して構成される電気刺激装置1の用途により決定する。芯線21が形成すべき筒部20の径が小さいほど芯線21には大きな可撓性が要求される。外線22は、ワイヤ線220と、ワイヤ線220を被覆するように形成(被覆形成)された第一絶縁膜221によって構成されている。
【0026】
芯線21及びワイヤ線220は、例えば、直径0.025~3.2mmの軟銅線(断面が円形状)であってもよい。また、第一絶縁膜221は、例えば厚さ0.003mm~0.035mm程度の高分子化合物を溶かしたワニスの絶縁被膜であってもよい。高分子化合物には、ポリビニルホルマール、ポリウレタン、ポリアミドイミド、ポリエステル、ナイロン等を用いるものであってもよい。
また、第二絶縁膜211は、例えば厚さ0.003mm~0.1mm程度の高分子化合物を溶かしたワニスでもよい。高分子化合物には、ポリビニルホルマール、ポリウレタン、ポリアミドイミド、ポリエステル、ナイロン等を用いるものであってもよい。
また、第一実施形態は、芯線21及びワイヤ線220を断面が円形状のものに限定するものではない。芯線21及びワイヤ線220の断面は、楕円や矩形であってもよいし、多角形であってもよい
【0027】
第一実施形態は、芯線21とワイヤ線220とが絶縁されていればよく、芯線21が絶縁膜により被覆されているものであっても、被覆されていないものであってもよい。図4(a)は、芯線21が、第二絶縁膜211により被覆されている状態を示している。
【0028】
芯線21の表面に第二絶縁膜211が形成されている場合、図4(a)に示すように、複数のループrの少なくとも一部の外線の内周面S(図5)と第二絶縁膜211の表面211aの最短距離dが、第一絶縁膜221及び第二絶縁膜211の厚さt1、t2のいずれか厚いものの厚さより小さくなっている。つまり、上記の絶縁被膜の数値の例を基準にすると、最短距離dは、0.003mm以下から0.035mm以下の数値をとり得る。図4(a)に示した例では、厚さt1、厚さt2のうち、厚さt2は厚さt1よりも充分大きく、最短距離dが厚さt2よりも小さくなっていることが明らかである。
【0029】
図5に示すように、外線22の内周面Sは、外線22の周面のうち、芯線21に向かう側の面であって、芯線21に直接または第二絶縁膜211を介して接触し得る面の範囲をいう。
また、「複数のループrの少なくとも一部」は、複数のループrのうちの一部または全部をいい、ループrの全てにおいて内周面Sと表面211aとの距離が最短距離d以上であることを除くものである。また、最短距離とは、ループrの内周面S上の各点のうち、表面211aと最も近くにある点と表面211aとの距離を指す。したがって、第一実施形態のこのような構成は、内周面S上に表面211aとの距離が最短距離dよりも長い点があることを除外するものではない。
【0030】
ただし、第一実施形態は、芯線21の表面に第二絶縁膜211が形成されている場合、複数のループrの少なくとも一部の外線22の内周面Sが全周に亘って第二絶縁膜211の表面211aと接触していることが好ましい。
また、第一実施形態では、図4(b)に示すように、芯線21の表面が露出している場合、複数のループrの少なくとも一部の外線22の内周面Sと芯線21の表面211aとの最短距離dが第一絶縁膜221の厚さt1より小さくなっている。ここでいう最短距離は、ループrの内周面S上の各点のうち、表面21aと最も近くにある点と表面21aとの距離を指す。第一実施形態では、芯線21の表面が露出している場合、複数のループrの少なくとも一部の外線22の内周面Sが全周に亘って芯線21の表面21aと接触していることが好ましい。
【0031】
さらに、第一実施形態は、上記条件により、内周面Sと表面211aまたは芯線21の表面21aとの距離が「0」、即ち内周面Sと表面211aとが接触していてもよい。図6(a)、図6(b)は、いずれも外線22が芯線21と接触して巻き回されている状態を示している。図6(a)は芯線21が第二絶縁膜211を有する例を示し、図6(b)は外線22が露出している例を示している。芯線21が第二絶縁膜211と接触する例では、複数のループrの少なくとも一部の外線22の内周面Sの少なくとも一部が第二絶縁膜211の表面211aまたは芯線21の表面21aと接触している。
【0032】
以上のように、第一実施形態は、外線22と芯線21とが近接または接触しているため、外線22の単位長さ当たりの巻数を増やして電気刺激装置としての感度を高めながら、ワイヤ線220の高抵抗化を抑えることができる。なお、外線22と芯線21との間の寄生容量は、第一絶縁膜221あるいは第二絶縁膜211の膜厚、さらには第一絶縁膜221、第二絶縁膜211及びワイヤ線220の誘電率等によって調整することができる。第二絶縁膜211、第一絶縁膜221は、その材質が同じであってもよいし、異なるものであってもよい。また、膜厚を寄生容量等に応じて調整するものであってもよい。
【0033】
また、上記のように定められた最短距離dは、外線22が芯線21または第二絶縁膜211に接触するように巻き回し、その後スプリングバック等により若干元に戻った場合に生じる程度の値となる。また、最短距離dが0である場合、巻き回された外線22は加熱処理等によってそのままの状態を維持しているものと考えられる。このような第一実施形態の基礎線材10は、外線22の巻き回しにおいて芯線21または第二絶縁膜211との間の距離のばらつきが小さく、電気刺激装置に用いた場合に電気刺激装置の製品ばらつきを低減することに有効である。
【0034】
さらに、第一実施形態の基礎線材10は、任意の長さになるように成形することが可能であって、任意の箇所に巻きまわして使用することが可能である。このため、基礎線材10を測定対象となる電流が流れる任意の部位に直接巻き回して使用することができる。
【0035】
また、第一実施形態の基礎線材10は、図4(a)から図6(b)に示すように、複数のループrを形成する外線22が、少なくとも一部の範囲に亘って隣接する他のループrの外線22と接触している。つまり、第一実施形態では、複数のループrの各々が、隣接する他のループrと密着するように形成されている。「密着」は、複数のループrに対してループの列を圧縮する方向の力を加えた場合に各ループrが接触し、かつ、力を解除した場合に各ループrが互いに離れる方向の力を受ける状態をいう。
【0036】
少なくとも一部の範囲とは、複数のループrが配置されている範囲のうちの一部または全部をいう。すなわち、第一実施形態は、ループrが配置されている範囲のうちの一部において、互いに隣接するループrが接触していない状態にあることを排除するものではない。
【0037】
このような構成により、第一実施形態は、ワイヤ線220の長さを最小限に抑えながら、単位長さ当たりの外線数を増やすことができる。
また、外線22に関しては、1本の導線からなっても良いが、複数の導線を互いに平行するように、芯線21に対して隙間なく巻回して形成されても良い。
【0038】
<電気刺激装置>
以下、基礎線材10を使う電気刺激装置1に関して説明する。
電気刺激装置1は、図2に示すように、絶縁皮膜211を有する芯線21と、芯線21を巻軸として、芯線21に対して隙間無く巻回された外線22とからなる基礎線材10を備え、基礎線材10をループ状に巻回することにより形成された筒部20を更に有し、芯線21の一端p1が外線22の一端p2と電気的に繋ぎ、芯線21の他方端部p3が外部回路8の一端に接続し、外線22の他方端部p4が外部回路8の他端に接続し、筒部20により、その中に置かれた生体に電気刺激を与える。
【0039】
具体的言えば、電気刺激装置1は、芯線21及び巻線22の端部p1、p2が接続されていて、他方の端部p3、p4がそれぞれ第一引出線212、第二引出線222に接続されている。そして、第一引出線212、第二引出線222に電気信号(電流)を流す電源機器として機能する外部回路8が接続されている。
また、基礎線材10を用い、1ターン以上を巻回し、筒部20が形成されている。この時、この筒部20においては、隣接している基礎線材10の外周面において、互いに隙間無く整列されていることが好ましい。
【0040】
また、第一実施形態の電気刺激装置1は更に樹脂製の支持部30を有することが好ましい。この場合、基礎線材10がこの支持部30の外周面に巻回され、筒部20が形成されている。また、このような電気刺激装置1を人体の所定部位、例えば、腕部、腿部、頭部などに取り付け、外部回路8から所定の周波数の電流を基礎線材10に流すことにより、筒部20内に、筒部20の軸方向に沿って電場が発生する。また、この電場内の位置人体部位、たとえば骨部位5などにおいて、上記電場の強場所から弱場合に向け、電流iが流れている。こうする事により、所定の人体部位、例えば骨部位5などには、所定の電気刺激することも可能となる。
【0041】
また、骨粗しょう症などの原因に関しては、皮質骨の表面側や内面側、ないし皮質骨の内部で骨吸収が生じるため、皮質骨内に存在する骨細胞が周囲の骨を溶解することより、骨細胞が内部に存在する骨小腔の容積拡大が進行する。これに対して、電気刺激装置1による電気的刺激によって、不動化に起因する皮質骨の表面からの骨吸収が抑制されることができ、骨粗しょう症などの進行を抑制することができる。
【0042】
また、電気刺激装置1は、個人差や病状などに応じて、使用する周波数を数Hz~数kHzまでにすることもできるし、連続する交流電流でも良く、パルス状の電流でも良い。
【0043】
さらに、外部回路8は、一つの筒部20だけではなく、複数の患部に取り付けられた複数の筒部20に対して同時に同様な電流、または異なる電流を提供することもできる。また、外部回路8の小型化により、電池駆動するようなモジュールや装置にすることもできるため、携帯性が一層高くなる。
また、外部回路8においては、筒部20の芯線21と外線22を流す電流の大きさ、時間、周波数などのパラメータを制御する制御部を備えることが望ましい。さらに、この制御部は同時に複数の筒部20を制御することもでき、他のセンサー、例えば体温センサーや、生体電流センサーなどからフィードしてきたデータを基づいて上記電流、周波数などのパラメータを変更する機能を更に備えることが好ましい。
【0044】
また、図7は支持部30を備える電気刺激装置1を生体に取り付けた場合の概略図である。図7に示すように、基礎線材10がこの支持部30の外周面に巻回された電気刺激装置1を人体の胴体6に巻きつけることもできる。
【0045】
また、図7に示すように、支持部30は開閉可能な、且つ互いに固定の取付部材を備えることが好ましい。このような取付部材としては、たとえば、面ファスナのような粘着部材や、ジッパーのような軟質または硬質の嵌合部材などを用いることができる。また、支持部30の素材としては、布やナイロンなど柔らかく、絶縁性良いもので良い。
また、電気刺激装置1の形態は、図7に示すような腹巻タイプでも良いが、帽子に筒部20を入れる帽子タイプや、アームバンドタイプなど様々の形態でも良い。
また、基礎線材10を用い、1ターンを巻回し、筒部20が形成されている。また、開閉部材の周辺には、電気的に繋がる部材を用意すれば、2本以上の複数の基礎線材10を支持部30に平行に並べ、電気的に繋がる部材を用いて、複数の基礎線材を連結して、1本になるようにすれば良い。
【0046】
また、電気刺激装置1の筒部20においては、その中空部に電場しか発生しないため、たとえ筒部20により囲まれている胴体6内に埋め込み電子装置があっても、この電気刺激装置1により、埋め込みタイプの電子装置に電磁障害(EMI)が発生する可能性も低い。
【0047】
・第二実施形態
以下、第二実施形態に関して説明する。
【0048】
第二実施形態においては、使用する基礎線材10は第一実施形態の基礎線材と同じである。但し、電気刺激装置2は、支持部30を含まない点においては、第一実施形態と異なる。
【0049】
この実施形態においては、基礎線材10の外面周囲に絶縁措置を施す上、p3及びp4において、例えば、プラグやダミやコネクタのような電気接続端子部材も備えている。一方、外部回路8を含む電源装置には、これらの電気接続端子部材と電気的に接続できる、尚且つ接続部位に十分に絶縁できるような接続部材に設けられている。
【0050】
また、電気刺激装置2を取り付けるためには、まず電気接続端子部材を備えている基礎線材10を患部に対して巻きつくように、数ターン巻回してから、電気接続部材を外部回路8の接続部材に電気接続させる。
【0051】
こうすると、支持部材30は不要となるため、構成は更に簡単になり、取り付け方法も様々の人体部位に対応することもできるため、汎用性が更に高くなる。
【符号の説明】
【0052】
1、2…電気刺激装置
5…骨部位
6…胴体
8…外部回路
10…基礎線材
20…筒部
21…芯線、
22…外線
30…支持部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7