(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】シートベルトリトラクタ
(51)【国際特許分類】
B60R 22/46 20060101AFI20221004BHJP
【FI】
B60R22/46
(21)【出願番号】P 2018196023
(22)【出願日】2018-10-17
【審査請求日】2021-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】318002149
【氏名又は名称】Joyson Safety Systems Japan株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】市田 敦
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-052328(JP,A)
【文献】特表2014-533627(JP,A)
【文献】特開2005-035517(JP,A)
【文献】特開2000-198417(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0082127(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 22/00-22/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプール及びロッキングベースを支持するフレームと、
ウェビングを巻き取る、第1内孔を有した筒状の該スプールと、
該スプールと同軸に隣接配置され、第2内孔を有し、トーションバーによってスプールと連結された該ロッキングベースと、
該スプールの第1内孔及びロッキングベースの第2内孔に挿通され、該スプールに対し一端側が回転不能に連結され、該ロッキングベースに対し他端側が回転不能に連結された該トーションバーと、
該ロッキングベースがロックされた状態においてウェビングに所定値以上の引張力が加えられると該トーションバーがねじり変形するシートベルトリトラクタであって、
前記ロッキングベースの外周面に雄ネジが設けられており、
該雄ネジにストップギア及び位置決め部材の内周面の雌ネジがそれぞれ螺合しており、
該ストップギアは、外周から突設された凸部を有しており、
該凸部が前記第1内孔の内周面にスプールの軸心線方向と平行方向に延設された溝に係合し、該ストップギアが前記スプールと常に一体に回転するように構成されており、
該位置決め部材は前記スプールに対し非係合となっており、
車両衝突前の状態にあっては、該ストップギアと該位置決め部材とは所定距離離隔しており、
EA動作によって該スプールが回転し、かつ該ロッキングベースが回転を停止している時に、前記ストップギアが該スプールと共に回転して該ロッキングベースに沿って前記位置決め部材に向って螺進するシートベルトリトラクタ。
【請求項2】
前記ロッキングベースの前記雄ネジと前記位置決め部材との摺動部に摺動抵抗を持つことを特徴とする請求項1に記載のシートベルトリトラクタ。
【請求項3】
前記位置決め部材は、車両衝突前において、前記スプールに当接しないことを特徴とする請求項1または2に記載のシートベルトリトラクタ。
【請求項4】
前記ロッキングベースは、フランジ部と、該フランジ部の中央部から突設された、前記第2内孔を有した筒状のシャフト部と、該シャフト部の突出方向先端側の外周面に設けられた前記雄ネジとを有しており、
該雄ネジに前記ストップギア及び位置決め部材の内周面の前記雌ネジがそれぞれ螺合していることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のシートベルトリトラクタ。
【請求項5】
前記ストップギアは、車両衝突前の状態にあっては、前記シャフト部外周面の前記雄ネジのうち該シャフト部の基端側に位置しており、
前記位置決め部材は該ストップギアよりも該シャフト部の先端側に位置しており、
EA動作によって、前記トーションバーがねじれながら前記スプールが回転し、かつロッキングベースが回転を停止している時に、該ストップギアが該位置決め部材に向って螺進して位置決め部材に当接することを特徴とする請求項4に記載のシートベルトリトラクタ。
【請求項6】
前記ストップギアは、外周面の周方向の複数個所に前記凸部が設けられており、
前記スプールの前記内孔には複数条の前記溝が設けられている請求項1~5のいずれか1項に記載のシートベルトリトラクタ。
【請求項7】
前記トーションバーの前記一端は、多角形、または歯車形状部となっており、前記第1内孔の奥部に設けられたセレーション部に係合していることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のシートベルトリトラクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車等の車両に用いられるEAストップ機構付きのシートベルトリトラクタに関するものであり、特にスプールにトーションバーが組み込まれたシートベルトリトラクタに関する。
【背景技術】
【0002】
プリテンショナ付きのシートベルトリトラクタとして、トーションバーをスプールの内孔に挿通し、該トーションバーの一端をスプールに固定可能とし、トーションバーの他端をシートベルトリトラクタのフレームに係止可能としたシートベルトリトラクタが公知である(特許文献1,2)。車両の衝突時等の緊急時には、スプールがプリテンショナによって回転駆動されてウェビングが巻き取られる。その後、該スプールに対しウェビング巻出し方向の力が加えられることによりトーションバーがねじられ、スプールが徐々に回転し、ウェビングが徐々に引き出される。これにより、乗員の身体に加えられる運動エネルギーの一部がトーションバーのねじりによって吸収され、衝撃が緩和される。
【0003】
特許文献1には、トーションバーのねじり量を該トーションバーに螺合したストッパの移動によって制限することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-222100号公報
【文献】特開2017-154525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のシートベルトリトラクタは、ストッパの位置がずれてしまい、トーションバーのねじれ量が目的量から乖離するおそれがあった。即ち、特許文献1においては、ロッキングベースとストッパのネジ部の位相管理については考慮されておらず、ロッキングベースのフランジ部とストッパを所定の離隔距離になるように組み付けた場合、ストッパのギア部のロッキングベースに対する位相(角度)は規制できない。一方、ロッキングベースに対するスプールの位相は、両端をそれぞれロッキングベース・スプールに多角形形状で嵌合するトーションバーにより規制される。このため、ロッキングベース・ストッパ・スプール・トーションバーの4部品を組み付ける際、ストッパをスプールに嵌合できる位置までいずれかの方向に回転させる必要があり、その際ストッパが螺進することでロッキングベースのフランジ部から離隔距離にズレ・バラつきが生じる。トーションバー端部が六角形の場合、最大60度(360度÷6)のバラつきが生じる。
【0006】
本発明は、EA作動時のトーションバーのねじれ量が正確に目的量となるEAストッパ付きシートベルトリトラクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のシートベルトリトラクタは、スプール及びロッキングベースを支持するフレームと、ウェビングを巻き取る、第1内孔を有した筒状の該スプールと、該スプールと同軸に隣接配置され、第2内孔を有し、トーションバーによってスプールと連結された該ロッキングベースと、該スプールの第1内孔及びロッキングベースの第2内孔に挿通され、該スプールに対し一端側が回転不能に連結され、該ロッキングベースに対し他端側が回転不能に連結された該トーションバーと、該ロッキングベースがロックされた状態においてウェビングに所定値以上の引張力が加えられると該トーションバーがねじり変形するシートベルトリトラクタであって、前記ロッキングベースの外周面に雄ネジが設けられており、該雄ネジにストップギア及び位置決め部材の内周面の雌ネジがそれぞれ螺合しており、該ストップギアは、外周から突設された凸部を有しており、該凸部が前記第1内孔の内周面にスプールの軸心線方向と平行方向に延設された溝に係合し、該ストップギアが前記スプールと常に一体に回転するように構成されており、該位置決め部材は前記スプールに対し非係合となっており、車両衝突前の状態にあっては、該ストップギアと該位置決め部材とは所定距離離隔しており、EA動作によって該スプールが回転し、かつ該ロッキングベースが回転を停止している時に、前記ストップギアが該スプールと共に回転して該ロッキングベースに沿って前記位置決め部材に向って螺進する。
【0008】
本発明の一態様では、前記ロッキングベースの前記雄ネジと前記位置決め部材との摺動部に摺動抵抗を持つ。
【0009】
本発明の一態様では、前記位置決め部材は、車両衝突前において、前記スプールに当接しない。
【0010】
本発明の一態様では、前記ロッキングベースは、フランジ部と、該フランジ部の中央部から突設された、前記第2内孔を有した筒状のシャフト部と、該シャフト部の突出方向先端側の外周面に設けられた前記雄ネジとを有しており、該雄ネジに前記ストップギア及び位置決め部材の内周面の前記雌ネジがそれぞれ螺合している。
【0011】
本発明の一態様では、前記ストップギアは、車両衝突前の状態にあっては、前記シャフト部外周面の前記雄ネジのうち該シャフト部の基端側に位置しており、前記位置決め部材は該ストップギアよりも該シャフト部の先端側に位置しており、EA動作によって、前記トーションバーがねじれながら前記スプールが回転し、かつロッキングベースが回転を停止している時に、該ストップギアが該位置決め部材に向って螺進して位置決め部材に当接する。
【0012】
本発明の一態様では、前記ストップギアは、外周面の周方向の複数個所に前記凸部が設けられており、前記スプールの前記内孔には複数条の前記溝が設けられている。
【0013】
本発明の一態様では、前記トーションバーの前記一端は、多角形、または歯車形状部となっており、前記第1内孔の奥部に設けられたセレーション部に係合している。
【発明の効果】
【0014】
本発明のシートベルトリトラクタでは、車両衝突等の緊急時(以下、車両衝突という。)前の状態においては、スプール、トーションバー及びロッキングベース並びにストップギア及び位置決め部材が一体となって回転し、ウェビングの引き出し及び巻き取りが行われる。
【0015】
その後、乗員身体からウェビングに加えられる引き出し方向の力がトーションバーで設定されている荷重以上になると、ロッキングベースはロック機構の作用によって回転停止状態に保たれ、スプールがトーションバーをねじりながら回転し、ウェビングが引き出され、乗員のEA(エネルギー吸収)が行われる。
【0016】
その際、スプールの回転に伴って、ストップギアがスプールと共に回転して螺進し、位置決め部材に当接してスプールが停止する。
【0017】
本発明では、シートベルトリトラクタの製作時に、ストップギアを規定位置に配置するとともに、該ストップギアから規定距離離れた位置に位置決め部材を配置した状態で、ロッキングベース及びトーションバーをスプールに差し込み、そのまま直進させてスプールと一体化させることができる。このため、ロッキングベースにおけるストップギアと位置決め部材との距離を正確に規定距離とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施の形態に係るシートベルトリトラクタの正面側からの分解斜視図である。
【
図2】実施の形態に係るシートベルトリトラクタの背面側からの分解斜視図である。
【
図3】実施の形態に係るシートベルトリトラクタの正面図である。
【
図4】実施の形態に係るシートベルトリトラクタの左側面図である。
【
図5】実施の形態に係るシートベルトリトラクタの右側面図である。
【
図6】スプールを左側から見たスプール、トーションバー及びロッキングベースの分解斜視図である。
【
図7】スプールを右側から見たスプール及びロッキングベースの分解斜視図である。
【
図8】パドルを取り外した状態におけるスプール及びロッキングベースの正面図である。
【
図10】位置決め部材にストップギアが当接した状態のスプール及びロッキングベースの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面を参照して実施の形態について説明する。
【0020】
シートベルトリトラクタ1は、フレーム10と、該フレーム10に回転可能に保持されたスプール20と、スプール20をウェビング巻き取り方向に付勢するリターンスプリングユニット(ゼンマイバネユニット)30と、スプール20に同軸状に隣接配置され、トーションバー70によってスプール20に連結されたロッキングベース40と、スプール20のロックを起動させるロック起動ユニット50と、プリテンショナ60と、スプール20とロッキングベース40とを連結するようにスプール20及びロッキングベース40内に挿入されたトーションバー70等を備えている。
【0021】
フレーム10は、正面壁11と、該正面壁11の左側辺から前方に延出する左側壁12と、右側辺から前方へ延出する右側壁13と、各側壁12,13にそれぞれ設けられたスプール挿通穴15,16等を有する。
図2の通り、スプール挿通穴16の内周面には、鋸歯16aが設けられている。
【0022】
リターンバネユニット30は、ケース31内にゼンマイバネを収容したものであり、該ゼンマイバネの一端はスプール20の左端側の中心孔20yから突出する突軸20tに連結されている。この実施の形態では、突軸20tはトーションバー70の左端から突設されているが、スプール20から突設されてもよい。
【0023】
ロック起動ユニット50は、フレーム右側壁13に保持された振り子51(
図2)が外周面に係合するロックアッシー52を有する。ロックアッシー52の回転角加速度が所定値以上となったり、振り子51がロックアッシー52の外周面に係合したときにロックアッシー52がロッキングベース40の外周面からパウル43(
図2)を突出させて鋸歯16aに係合させる。
【0024】
ロックアッシー52及び振り子51はカバー55によって覆われている。
【0025】
このロック起動ユニット50は、周知構造のものである。
【0026】
プリテンショナ60は、車両衝突時にスプール20をウェビング巻取り方向に大トルクにて巻取り、ウェビングの緩みを除去するためのものである。このプリテンショナ60は、車両衝突時にガスを発生させるガス発生器61と、ダクト62と、ダクト62内に装填された合成樹脂等よりなる動力伝達部材等を備えている。ガス発生器61からのガス圧によって動力伝達部材が後述のパドルホイール80の外周に周回方向に送り込まれ、スプール20がウェビング巻き取り方向に回転する。この構成は、例えば特許文献2に記載のものとすることができる。
【0027】
次に、スプール20及びロッキングベース40の構造について詳細に説明する。
【0028】
図6~10に明示の通り、スプール20は、ウェビングが巻き掛けられる筒部21と、筒部21の左端側の左フランジ22と、右端側の右フランジ23とを有する。
【0029】
スプール20の左フランジ22の外周面22eは、スプール挿通孔15の内周面に対面している。左フランジ22の筒部21側の外周縁には、放射方向に張り出す外向きの鍔部22fが周設されている。鍔部22fは、スプール挿通穴15の周縁部に沿う側壁12内面に摺動自在に接している。
【0030】
スプール20の筒部21には、右端側から左端側に向って第1内孔29が設けられている。該内孔29の最奥部すなわち左端側にセレーション部29a(
図9,10)が設けられており、トーションバー70(
図7,9,10では図示略)の歯車形状部71が該セレーション部29aに係合している。
【0031】
図9,10に明示の通り、スプール20の第1内孔29は、該第1内孔29の入口側から、段差面108までの範囲が大径となっている。この大径部分の内周面に、スプール20の軸心線と平行方向に延在する係止部としての溝110が設けられている。この溝110にストップギア82の外周面の係合部としての凸部82bが該軸心線と平行方向に摺動自在に係合している。この実施の形態では、溝110は、内孔29の直径方向に対峙して2条設けられている。ストップギア82には、各溝110にそれぞれ係合するように2個の凸部82bが直径方向に対峙して設けられている。
【0032】
スプール20の右側に隣接して、ロッキングベース40が配置されている。ロッキングベース40は、フランジ部41と、該フランジ部41の中央部に連なる筒状のシャフト部42と、フランジ部41に設けられたパウル43等を有する。シャフト部42の先端側がスプール20の内孔29内に同軸状に差し込まれている。
【0033】
シャフト部42の内孔(第2内孔)の先端側の内周面にセレーション部42a(
図9,10)が設けられており、トーションバー70の右端の歯車形状部72(
図6)が該セレーション部42aに係合している。
【0034】
ロッキングベース40のシャフト部42の基端側(フランジ41側)外周に非円形部としての六角部42bが設けられている。六角部42b以外のシャフト部42の外周面に雄ネジ42cが設けられている。
【0035】
図6の通り、六角部42bにパドルホイール80(
図7~10では図示略)の六角形の内孔80aが係合しており、パドルホイール80がシャフト部42に周方向回転不能に装着されている。
【0036】
このパドルホイール80の外周囲に、プリテンショナ60のダクト62から合成樹脂等よりなる動力伝達部材が供給されることにより、パドルホイール80が回転し、ロッキングベース40が回転する。
【0037】
雄ネジ42cにストップギア82及び位置決め部材86の内周面の雌ネジ82a,86aが螺合している。ストップギア82及び位置決め部材86は、該雄ネジ42cに沿って螺進可能となっている。ストップギア82の外周面には、前述の通り、凸部82bが設けられている。この実施の形態では、ストップギア82はシャフト部42の基端側に位置し、位置決め部材86はそれよりも先端側に位置している。
【0038】
位置決め部材86は、円環形であり、スプール20の内孔29の内周面には係合していない。
【0039】
トーションバー70を介してロッキングベース40をスプール20に組み付ける。この組み付けを行うに際しては、パドルホイール80をロッキングベース40の六角部42bに外嵌装着し、ストップギア82及び位置決め部材86を雄ネジ42cに螺嵌させる。この際、ストップギア82を雄ネジ42cの基端側に位置させる。また、位置決め部材86をストップギア82にほぼ当接するように位置させる。
【0040】
次いで、このロッキングベース40のシャフト部42にトーションバー70の右端側(歯車形状部72側)を挿入し、該歯車形状部72をセレーション部42aに係合させる。
【0041】
次いで、トーションバー70の歯車形状部71とスプール20のセレーション部29aとの位相を合致させる。具体的には、トーションバー70を内孔29に挿入してそのまま内孔29の奥まで直進させたならば、歯車形状部71がスプール20のセレーション部29aにそのまま(すなわち、周方向の位相調整を行うことなく)差し込まれる位相となるように、トーションバー70及びロッキングベース40の位相を合わせる。
【0042】
次いで、この状態で、ストップギア82の凸部82bの位相がスプール20の溝110の位相に合致するようにストップギア82の位相を調整する。次いで、ストップギア82と位置決め部材86との間に隙間があいていれば、位置決め部材86を回転させてストップギア82に当接させる。
【0043】
次いで、このようにストップギア82に当接した状態の位置決め部材86を規定回数だけ回転させてストップギア82から規定距離だけ離反させる。
【0044】
しかる際、このように位相決め及び位置決めされたロッキングベース40、パドルホイール80、ストップギア82、位置決め部材86及びトーションバー70の組み付け体をストップギア20の内孔29に差し込み、ストップギア82の凸部82b,82bを溝110,110に係合させながら、該組み付け体をそのまま直進させ、トーションバー70の歯車形状部71をセレーション部29aに係合させる。
【0045】
これにより、位置決め部材86とストップギア82とが規定距離だけ離反した状態にてロッキングベース40及びトーションバー70等とスプール29とが一体化される。
【0046】
このように、ロッキングベース40及びトーションバー70等が組み付けられたスプール20を備えたシートベルトリトラクタ1において、通常時にはストップギア82はロッキングベース40の雄ネジ42cの基端側に位置し、位置決め部材86は該ストップギア82から前記規定距離だけ先端側に離反している。通常時には、歯車形状部71とセレーション部29aとの係合により、前述の通り、トーションバー70及びロッキングベース40と、ロッキングベース40に螺着されたストップギア82及び位置決め部材86は、常にスプール20と一体的に回転する。
【0047】
ウェビングの引出し及び巻取りに伴ってスプール20が回転する場合、スプール20、トーションバー70、ロッキングベース40、ストップギア82及び位置決め部材86がすべて一体的に回転するので、ストップギア82と位置決め部材86との間の距離は変化しない。
【0048】
通常時におけるウェビングの引き巻き回転時の慣性力で位置決め部材86が動かないようにするために、位置決め部材86とロッキングベース42の雄ネジ42cとの摺動部に摺動抵抗剤が塗られている。
【0049】
車両衝突時には、振り子51がロックアッシー52の外周面に係合し、ロック起動ユニット50がパウル43をロッキングベース40の外周面から突出させる。突出したパウル43が右側壁13の鋸歯16aに係合する。
【0050】
衝突時の車両減速度が小さい軽衝突時には、プリテンショナ60は作動しない。バウル43と鋸歯16aとの係合によりスプール20の回転が阻止され、乗員がウェビングによって拘束される。また、この軽衝突時には、上記の通り、スプール20が回転しない。そして、プリテンショナ60が作動しないからロッキングベース40も回転しない。この結果、ストップギア82及び位置決め部材86も回転せず、ストップギア82及び位置決め部材86は元位置に停止している。
【0051】
車両減速度が所定値以上となる規模の車両衝突時には、プリテンショナ60のガス発生器61が作動し、パドルホイール80を介してロッキングベース40にウェビング巻き取り方向の強力なトルクが加えられ、ロッキングベース40、トーションバー70及びスプール20が一体となってウェビング巻き取り方向に回転する。これにより、ウェビングがスプール20に巻き取られ、ウェビングのたるみが除去される。
【0052】
この状態にあっては、ロッキングベース40は鋸歯16aに拘束されることなくウェビング巻き取り方向に回転する。また、スプール20とロッキングベース40とがトーションバー70を介して一体となって同方向に同一回転速度で回転する。この場合、ストップギア82及び位置決め部材86もロッキングベース40と一体に同方向に同一回転速度で回転するので、ストップギア82及び位置決め部材86は、ロッキングベース40の雄ネジ42c上の元の位置にそれぞれ位置している。
【0053】
ウェビングの巻き取りが進行し、ウェビングのたるみが除去されると、スプール20が一旦停止し、スプール20によるウェビングの巻き取りは停止する。その後、スプール20に対しウェビングから加えられるウェビング引き出し方向の力によって、スプール20がトーションバー70をねじりながらウェビング引き出し方向に回転し始める(EA動作)。スプール20にトーションバー70を介して連結されたロッキングベース40は、プリテンショナ60の保圧作用によって、ウェビング引き出し方向への回転が阻止される。この結果、トーションバー70をねじりながらスプール20が回転(EA回転)し、ウェビングが引き出される。トーションバー70がねじれ変形することにより、乗員の前方移動の運転エネルギーが吸収される。
【0054】
また、このようにロッキングベース40が停止した状態で、スプール20がウェビング引き出し方向にEA回転すると、ストップギア82は凸部82b及び溝110を介してスプール20と一体的に回転し、位置決め部材86に向って螺進する。スプール20がEA回転しても位置決め部材86は回転せず、停止している。この結果、ストップギア82と位置決め部材86との距離が次第に小さくなる。
【0055】
やがてストップギア82が所定回数回転すると、
図10の通り、ストップギア82が位置決め部材86に当接し、それ以上の螺進が不能となる。これにより、スプール20はストップギア82及び位置決め部材86を介してロッキングベース40に回転阻止された状態となる。このように、スプール20の回転が阻止されることにより、それ以上のウェビング引き出し(EA引き出し)が停止する。
【0056】
この実施の形態では、ストップギア82が位置決め部材86に当接するまでの螺進距離は、予め設定したストップギア82と位置決め部材86間の距離に正確に合致したものとなる。
【0057】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は上記以外の態様とされてもよい。
【0058】
上記実施の形態では、位置決め部材86がストップギア82よりもシャフト部42の先端側に配置されているが、両者を逆に配置し、EA作動時に先端側のストップギア82が基端側の位置決め部材86に向って螺進するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 シートベルトリトラクタ
10 フレーム
16a 鋸歯
20 スプール
22 左フランジ
23 右フランジ
29 第1内孔
29a セレーション部
30 リターンスプリングユニット
40 ロッキングベース
41 フランジ部
42 シャフト部
42a セレーション部
42b 六角部
42c 雄ネジ
43 パウル
50 ロック起動ユニット
52 ロックアッシー
60 プリテンショナ
70 トーションバー
71,72 歯車形状部
80 パドルホイール
82 ストップギア
86 位置決め部材
110 溝