(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】蓄熱体、および、化学蓄熱反応器
(51)【国際特許分類】
F28D 20/00 20060101AFI20221004BHJP
【FI】
F28D20/00 G
(21)【出願番号】P 2018211931
(22)【出願日】2018-11-12
【審査請求日】2021-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【氏名又は名称】田邊 淳也
(72)【発明者】
【氏名】望月 美代
(72)【発明者】
【氏名】山内 崇史
(72)【発明者】
【氏名】山下 真彦
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-197966(JP,A)
【文献】特開2002-195711(JP,A)
【文献】特開平11-257757(JP,A)
【文献】特開2009-115366(JP,A)
【文献】特開2018-059684(JP,A)
【文献】特表2013-504415(JP,A)
【文献】特開昭61-072975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 20/00 - 20/02
C09K 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学蓄熱反応器に用いる蓄熱体であって、
反応媒体と結合することで発熱し、前記反応媒体が脱離することで蓄熱する蓄熱材と、
前記蓄熱材の外面を覆い、前記蓄熱材の通過を制限し、前記反応媒体の通過を許容する複数の孔が形成されている蓄熱材拘束カバーと、を備え、
前記蓄熱材拘束カバーは、前記蓄熱材拘束カバーの外面から突出する凸部と、前記蓄熱材拘束カバーに隣接する他の蓄熱材拘束カバーに設けられた凸部に係合可能な凹部と、を有
し、
前記凹部は、貫通孔であって、
前記凸部は、前記他の蓄熱材拘束カバーに設けられた貫通孔に挿通されると、前記他の蓄熱材拘束カバーの内側に突出するように形成されている、
蓄熱体。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄熱体であって、
前記凸部は、前記蓄熱材拘束カバーの周方向に沿って並ぶように複数配置されている、
蓄熱体。
【請求項3】
請求
項2に記載の蓄熱体であって、
複数の前記凸部のうちの一つは、複数の前記凸部のうちの他の一つに対して前記蓄熱材拘束カバーの周方向に90°移動した位置に配置されている、
蓄熱体。
【請求項4】
化学蓄熱反応器に用いる蓄熱体であって、
反応媒体と結合することで発熱し、前記反応媒体が脱離することで蓄熱する蓄熱材と、
前記蓄熱材の外面を覆い、前記蓄熱材の通過を制限し、前記反応媒体の通過を許容する複数の孔が形成されている蓄熱材拘束カバーと、を備え、
前記蓄熱材拘束カバーは、
前記蓄熱材拘束カバーの外面から突出する凸部と、
前記蓄熱材拘束カバーに隣接する他の蓄熱材拘束カバーに設けられた凸部に係合可能な凹部であって、前記凹部が設けられた位置の内周面側が内側に突出し、前記蓄熱材拘束カバー内の蓄熱材が前記蓄熱材拘束カバー内で移動することを規制する凹部と、を有する、
蓄熱体。
【請求項5】
請求項1から請求項4
のいずれか一項に記載の蓄熱体であって、
前記凸部は、前記蓄熱材拘束カバーの軸線方向に沿って並ぶように複数配置されている、
蓄熱体。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の蓄熱体であって、
前記凸部と前記凹部とは、前記蓄熱材拘束カバーの軸線を介して対向している、
蓄熱体。
【請求項7】
化学蓄熱反応器であって、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の蓄熱体と、
前記蓄熱体を収容する反応容器と、を備える、
化学蓄熱反応器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄熱体、および、化学蓄熱反応器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蓄熱材と反応媒体との化学反応を利用して熱を出し入れする化学蓄熱反応器が知られている。化学蓄熱反応器では、蓄熱材は、反応媒体と結合することで発熱し反応媒体が脱離することで蓄熱する。例えば、特許文献1には、平板状の蓄熱材と蓄熱材を支持する支持部とからなる蓄熱体を複数備える化学蓄熱反応器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の化学蓄熱反応器では、複数の蓄熱体は積層されて用いられるため、複数の蓄熱体を連結するための拘束治具が必要となり、化学蓄熱反応器を構成する部品点数が多くなる。このため、化学蓄熱反応器が重くなる。また、特許文献1に記載の化学蓄熱反応器では、平板状に形成されている蓄熱体において複数の箇所を均等に拘束する必要があり、製造プロセスが複雑になる。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、化学蓄熱反応器に用いる蓄熱体において、簡易な構成で複数の蓄熱体を簡便に連結することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、化学蓄熱反応器に用いる蓄熱体が提供される。蓄熱体は、反応媒体と結合することで発熱し、前記反応媒体が脱離することで蓄熱する蓄熱材と、前記蓄熱材の外面を覆い、前記蓄熱材の通過を制限し、前記反応媒体の通過を許容する複数の孔が形成されている蓄熱材拘束カバーと、を備え、前記蓄熱材拘束カバーは、前記蓄熱材拘束カバーの外面から突出する凸部と、前記蓄熱材カバーに隣接する他の蓄熱材拘束カバーに設けられた凸部に係合可能な凹部と、を有する。
【0008】
この構成によれば、複数の蓄熱体を連結するとき、複数の蓄熱体において一の蓄熱体の凸部と他の蓄熱体の凹部とを係合させる。これにより、ボルトなどの拘束部材を用いたりろう付などの加工を別途施したりすることなく、簡易な構成で複数の蓄熱体を簡便に連結し固定することができる。
【0009】
(2)上記形態の蓄熱体において、前記凹部は、貫通孔であって、前記凸部は、前記他の蓄熱材拘束カバーに設けられた貫通孔に挿通されると、前記他の蓄熱材拘束カバーの内側に突出するように形成されていてもよい。この構成によれば、複数の蓄熱体を連結するとき、他の蓄熱材拘束カバー内の蓄熱材は、一の蓄熱体の凸部によって移動が規制される。これにより、他の蓄熱材拘束カバーの内面と他の蓄熱材拘束カバー内の蓄熱材の外面との間に隙間が形成されるため、反応媒体の流路を他の蓄熱材拘束カバー内に確保することができる。したがって、反応媒体と蓄熱材との初期段階での水和反応を安定して行うことができる。
【0010】
(3)上記形態の蓄熱体において、前記凸部は、前記蓄熱材拘束カバーの軸線方向に沿って並ぶように複数配置されていてもよい。この構成によれば、複数の蓄熱体について、それぞれの軸線が略平行となるように一の蓄熱体の周囲に他の蓄熱体が位置するとき、他の蓄熱体が一の蓄熱体に対して軸線方向に移動することを確実に規制することができる。また、複数の蓄熱体を連結するとき凸部と凹部との係合が一か所の場合、一の蓄熱体が当該係合箇所を中心として他の蓄熱体に対して回転するおそれがある。しかしながら、この構成によれば、蓄熱体の回転を防止することができる。
【0011】
(4)上記形態の蓄熱体において、前記凸部は、前記蓄熱材拘束カバーの周方向に沿って並ぶように複数配置されていてもよい。この構成によれば、複数の蓄熱体について、それぞれの軸線が略平行となるように一の蓄熱体の周囲に複数の他の蓄熱体が位置するとき、複数の他の蓄熱体が一の蓄熱体に対して移動することを規制することができる。また、複数の蓄熱体を連結するとき凸部と凹部との係合が一か所の場合、当該係合箇所を中心として蓄熱体が回転するおそれがある。しかしながら、この構成によれば、蓄熱体の回転を防止することができる。
【0012】
(5)上記形態の蓄熱体において、複数の前記凸部のうちの一つは、複数の前記凸部のうちの他の一つに対して前記蓄熱材拘束カバーの周方向に90°移動した位置に配置されてもよい。この構成によれば、複数の蓄熱体について、一の蓄熱体の軸線から見て自身の軸線に垂直な2つの方向に他の蓄熱体が2個配置されるとき、他の蓄熱体が一の蓄熱体の軸線方向に移動することを、当該一の蓄熱体だけで防止できる。
【0013】
(6)上記形態の蓄熱体において、前記凸部と前記凹部とは、前記蓄熱材拘束カバーの軸線を介して対向していてもよい。この構成によれば、複数の蓄熱体について、それぞれの軸線が略平行となるように一の蓄熱体の両隣に2個の他の蓄熱体が位置するとき、他の蓄熱体が一の蓄熱体に対して移動することを、当該一の蓄熱体だけで防止できる。
【0014】
(7)上記形態の蓄熱体において、前記蓄熱材拘束カバーは、前記凹部が設けられた位置の内周面側が、内側に突出してもよい。この構成によれば、凹部によって、蓄熱材拘束カバー内の蓄熱材の外周面と蓄熱材拘束カバーの内周面との間に隙間が形成されるため、蓄熱材拘束カバー内に反応媒体の流路を確保することができる。したがって、蓄熱材と反応媒体との初期段階での水和反応を安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態の蓄熱体が用いられる化学蓄熱装置の模式図である。
【
図6】第2実施形態の蓄熱体が用いられる化学蓄熱反応器の断面図である。
【
図8】第3実施形態での複数の蓄熱体の組み合わせ方を説明する模式図である。
【
図9】第3実施形態の蓄熱体が用いられる化学蓄熱反応器の断面図である。
【
図10】第3実施形態の蓄熱体が用いられる化学蓄熱反応器の断面図である。
【
図12】第4実施形態の蓄熱体が用いられる化学蓄熱反応器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の蓄熱体1が用いられる化学蓄熱装置8の模式図である。
図2は、
図1のA-A線断面図である。
図3は、蓄熱体1の模式図である。
図4は、
図2のB-B線断面図である。なお、図中に示す矢印Hは、化学蓄熱反応器5の鉛直方向を示し、矢印Dは、化学蓄熱反応器5の奥行方向を示し、矢印Wは、化学蓄熱反応器5の幅方向を示す。
【0017】
第1実施形態の化学蓄熱装置8は、化学蓄熱反応器5と、蒸発凝縮器30と、を備える。化学蓄熱装置8は、化学蓄熱反応器5と蒸発凝縮器30との間での「反応媒体」としての水蒸気のやり取りによって、発熱と蓄熱とを繰り返すことが可能である。
【0018】
化学蓄熱反応器5は、反応容器10と、複数の蓄熱体1と、を備えている。
反応容器10は、直方体状に形成され、内部に蒸気流路11と、蓄熱体収容室12と、を有している。蒸気流路11は、水蒸気が流通可能な流路であり、蓄熱体収容室12を囲むように形成されている。具体的には、
図2に示すように、蒸気流路11は、蓄熱体収容室12の幅方向の両側と、蓄熱体収容室12の奥行方向における蒸気配管13側とに形成されている。蒸気流路11は、蒸気配管13に接続している。
図2に示すように、蓄熱体収容室12は、蓄熱体1を収容する空間であり、反応容器10において、蒸気配管13が接続されている側とは反対側に形成されている。蓄熱体収容室12は、複数の蓄熱体1を収容可能な大きさを有する。
【0019】
蓄熱体収容室12と蒸気流路11とは、隔壁14によって区画されている。蓄熱体収容室12の幅方向において蒸気流路11と蓄熱体収容室12とを区画する隔壁14には、水蒸気が通過可能な複数の孔15が形成されている。これにより、蒸気流路11と蓄熱体収容室12との間での水蒸気の行き来は、孔15を介して行われる。
【0020】
蒸気配管13は、蒸発凝縮器30に接続する接続配管20に接続している。接続配管20には、接続配管20における水蒸気の流通を制御する開閉弁21が設けられている。
蒸発凝縮器30は、貯留する水を蒸発させて化学蓄熱反応器5に供給する水蒸気を生成する機能と、化学蓄熱反応器5から受け取った水蒸気を凝縮する機能と、水を貯留する機能と、を有する。蒸発凝縮器30は、容器31と、熱媒流路32と、蒸気配管33と、開閉弁34と、を備える。容器31は、水を貯留する。容器31では、容器31内に設けられる熱媒流路32を流れる熱媒体の熱を利用して、水から水蒸気を生成、または、水蒸気から水を生成する。蒸気配管33は、容器31と接続配管20とに接続する。蒸気配管33には、蒸気配管33における水蒸気の流通を制御する開閉弁34が設けられている。
【0021】
蓄熱体1は、蓄熱材41と、蓄熱材拘束カバー46と、を有する。
蓄熱材41は、例えば、アルカリ土類金属の酸化物の一つである酸化カルシウムの成形体である。蓄熱材41は、酸化カルシウムの粒状物を、例えば、粘土鉱物などのバインダと混練し焼成することで所定の形状となるように成形されている。本実施形態では、蓄熱材41は、円柱状に形成されている。蓄熱材41は、式(1)に示す水和反応によって発熱し、式(2)に示す脱水反応によって蓄熱するものであり、発熱と蓄熱とを可逆的に繰り返すことが可能である。
CaO + H2O →Ca(OH)2 +Q1 ・・・(1)
Ca(OH)2 +Q2 →CaO + H2O ・・・(2)
なお、式(1)のQ1は、水和反応における発熱量を示し、式(2)のQ2は、脱水反応における蓄熱量を示す。
【0022】
蓄熱材拘束カバー46は、略円筒状に形成された部材であって、蓄熱材41の外面を覆っている。蓄熱材拘束カバー46は、
図3に示すように、カバー本体部47と、凸部48と、凹部49と、を備える。本実施形態では、カバー本体部47と凸部48と凹部49とは、一体に成形されている。
【0023】
カバー本体部47は、メッシュ状のシート部材を円筒状に加工した部材であって、蓄熱材41を構成する粒状物の平均粒径より小さい微小貫通孔が、全面に多数形成されており、蓄熱材41を構成する粒状物の通過を制限する一方、水蒸気の通過を許容する。カバー本体部47は、例えば、微小貫通孔が全面に多数形成された金属材料からなるエッチングフィルタであってもよい。本実施形態では、カバー本体部47は、
図3(a)に示すように、円柱状に形成されているが、四角柱状や他の形状であってもよい。
【0024】
凸部48は、
図3(b)に示すように、カバー本体部47の外周面からカバー本体部47の径方向に沿って突出するように形成されている。凸部48は、カバー本体部47の外周面から突出する長さがカバー本体部47の厚みより長い。本実施形態では、凸部48は、
図3(a)に示すように、カバー本体部47の軸線方向に沿って並ぶように、略等間隔に3個配置されている。
【0025】
凹部49は、
図3(b)に示すように、カバー本体部47に形成されている貫通孔であって、カバー本体部47の外側と内側とを連通する。本実施形態では、凹部49は3個形成されており、3個の凸部48のそれぞれに対してカバー本体部47の軸線を介して対向する位置に配置されている。3個の凹部49のそれぞれは、隣接する別の蓄熱材拘束カバー46が有する3個の凸部48のそれぞれと係合可能である。
【0026】
本実施形態では、化学蓄熱反応器5は、4本の蓄熱体1を収容している。4本の蓄熱体1は、
図2および
図4に示すように、それぞれの軸線が略平行となるように、かつ、幅方向に並ぶように、蓄熱体収容室12に収容されている。ここで、説明の便宜上、4本の蓄熱体1を、蓄熱体収容室12に並ぶ順番にしたがって、蓄熱材41aを備える蓄熱体1a、蓄熱材41bを備える蓄熱体1b、蓄熱材41cを備える蓄熱体1c、蓄熱材41dを備える蓄熱体1dとする。なお、本実施形態では、蓄熱体1aは、
図3に示す凸部48に相当する部位を有していない。
【0027】
蓄熱体1bの凸部48bは、蓄熱体1bに隣接する蓄熱体1aの凹部49aに挿通される。これにより、凸部48bと凹部49aとが係合するため、蓄熱体1bと蓄熱体1aとは連結され固定される。この凸部48bと凹部49aとが係合する2つの蓄熱体1a、1bの関係は、蓄熱体1cの凸部48cと蓄熱体1bの凹部49bとが係合する2つの蓄熱体1b、1cの関係、および、蓄熱体1dの凸部48dと蓄熱体1cの凹部49cとが係合する2つの蓄熱体1c、1dの関係においても同様である。
【0028】
また、蓄熱体1bの凸部48bが蓄熱体1aの凹部49aに挿通されると、凸部48bは、蓄熱体1aが有するカバー本体部47aの内側に突出するため、蓄熱材41aに当接可能となる。これにより、蓄熱材41aは、凸部48bによって蓄熱体1b側へ移動することが規制されるため、カバー本体部47aの内周面と蓄熱材41aの外周面との間に水蒸気が流通可能な隙間40aが形成される。したがって、蓄熱体1aでは、水蒸気がカバー本体部47a内にスムーズに拡散し水蒸気と蓄熱材41aとの接触が蓄熱体1aの各所において行われるとともに、水蒸気と蓄熱材41aとの水和反応による蓄熱材41aの膨潤が隙間40aの大きさに相当する分だけ許容される。この凸部48bによってカバー本体部47aの内周面と蓄熱材41aの外周面との間に隙間40aが形成される関係は、蓄熱体1cの凸部48cによって蓄熱体1bが有するカバー本体部47bの内周面と蓄熱材41bの外周面との間に隙間40bが形成される2つの蓄熱体1b、1cの関係、および、蓄熱体1dの凸部48dによって蓄熱体1cが有するカバー本体部47cの内周面と蓄熱材41cの外周面との間に隙間40cが形成される2つの蓄熱体1c、1dの関係においても同様である。
【0029】
次に、化学蓄熱装置8の作用について説明する。
化学蓄熱反応器5を発熱させるとき、開閉弁21、34を開放し、蒸発凝縮器30の熱媒流路32に中温媒体を流すことによって容器31内の水を蒸発させる。生成された水蒸気は、接続配管20を通って反応容器10内に供給され、蒸気流路11と隔壁14の孔15とを通過して蓄熱体収容室12に流入する。蓄熱体収容室12に流入した水蒸気は、カバー本体部47の微小貫通孔を通ってカバー本体部47内に流入し、カバー本体部47内に拡散する。カバー本体部47内の水蒸気が蓄熱材41と接触すると、蓄熱材41は、式(1)に示す水和反応によって発熱する。
【0030】
化学蓄熱反応器5に蓄熱するとき、開閉弁21、34を開放し、反応容器10を、例えば、排ガスなどの高温熱源を用いて加熱する。これにより、蓄熱材41は、式(2)に示す脱水反応によって蓄熱する。蓄熱材41の脱水反応によって蓄熱材41から脱離した水蒸気は、蒸気流路11と蒸気配管13とを通って反応容器10の外部に排出され、接続配管20を通って蒸発凝縮器30に流入する。蒸発凝縮器30では、水蒸気は、熱媒流路32を流れる冷温媒体によって液化され、容器31内に水として貯留される。
【0031】
以上説明した、本実施形態の蓄熱体1によれば、複数の蓄熱体1を連結するとき、複数の蓄熱体1のうちの一の蓄熱体1の凸部48と当該一の蓄熱体1に隣接する他の蓄熱体1の凹部49とを係合させることによって一の蓄熱体1と隣接する他の蓄熱体1とを連結する。これにより、ボルトなどの拘束部材を用いたりろう付などの加工を別途施したりすることなく、簡易な構成で複数の蓄熱体1を簡便に連結し固定することができる。したがって、化学蓄熱反応器5を容易に製造することができる。また、複数の蓄熱体1を連結するためのボルトなどの拘束部材やろう付が不要となるため、化学蓄熱反応器5の軽量化が図れるとともに製造コストを低減することができる。
【0032】
また、本実施形態の蓄熱体1によれば、凸部48は、貫通孔である凹部49に挿通されると当該凹部49を有する蓄熱材拘束カバー46の内側に突出するように形成されている。これにより、凹部49を有する蓄熱材拘束カバー46内の蓄熱材41は、凸部48によって移動が規制されるため、蓄熱材拘束カバー46内において当該蓄熱材拘束カバー46の内周面と蓄熱材41の外周面との間に、水蒸気が流通可能な隙間40が形成される。したがって、蓄熱材41が発熱するとき蓄熱材41と反応する水蒸気は、隙間40を通ってカバー本体部47内にスムーズに拡散するため、水蒸気と蓄熱材41との接触が蓄熱体1内の各所において行われ、水蒸気と蓄熱材41との初期段階での水和反応を安定して行うことができる。また、蓄熱体1では、隙間40によって水蒸気と蓄熱材41との水和反応による蓄熱材41の膨潤が許容されるため、膨潤する蓄熱材41と蓄熱材拘束カバー46との接触による蓄熱材41や蓄熱材拘束カバー46の破損を防止することができる。
【0033】
また、本実施形態の蓄熱体1によれば、3個の凸部48は、筒状に形成されている蓄熱材拘束カバー46の軸線方向に沿って並ぶように配置されている。この構成によれば、他の蓄熱体1が一の蓄熱体1に対して軸線方向に移動することを確実に規制することができる。
【0034】
また、複数の蓄熱体を連結するとき凸部と凹部との係合が一か所の場合、一の蓄熱体が当該係合箇所を中心として他の蓄熱体に対して回転するおそれがある。しかしながら、本実施形態の蓄熱体1の構成によれば、凸部48と凹部49との係合が3か所設けられることとなるため、凸部48と凹部49との係合箇所を回転中心とした蓄熱体1の回転を防止することができる。
【0035】
また、本実施形態の蓄熱体1によれば、凸部48と凹部49とは、蓄熱材拘束カバー46の軸線を介して対向する位置に配置されている。この構成によれば、一の蓄熱体1の両隣に位置する2個の他の蓄熱体1が一の蓄熱体1に対して移動することを、一の蓄熱体1だけで防止できる。
【0036】
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態における蓄熱体2の模式図である。第2実施形態の蓄熱体2は、第1実施形態の蓄熱体1(
図3)と比較すると、2つの凸部が蓄熱材拘束カバーの周方向に沿って並ぶように配置されている点が異なる。
【0037】
蓄熱体2は、蓄熱材41と、蓄熱材拘束カバー56と、を備える。蓄熱材拘束カバー56は、略円筒状の部材であって、蓄熱材41を収容可能に形成されている。蓄熱材拘束カバー56は、カバー本体部47と、凸部48、58と、凹部49、59と、を有する。
【0038】
凸部58は、
図5(b)に示すように、カバー本体部47の外周面からカバー本体部47の径方向に沿って突出するように形成されている。凸部58は、カバー本体部47の外周面から突出する長さがカバー本体部47の厚みより長い。本実施形態では、凸部58は、
図5(b)に示す蓄熱体2の軸線に垂直な断面図において、凸部48に対して蓄熱材拘束カバー56の周方向に、時計回りに90°移動した位置に配置されている。本実施形態では、凸部58は、カバー本体部47の軸線方向に沿って並ぶように、略等間隔に、3個配置されている。なお、ここで言う90°は、目視レベルでの90°であって、厳密に90°でなくてもよく、例えば、90°±10°を意味する。
【0039】
凹部59は、
図5(b)に示すように、カバー本体部47に形成されている貫通孔であって、カバー本体部47の外側と内側とを連通する。本実施形態では、凹部59は、
図5(b)に示す断面図において、凹部49に対して蓄熱材拘束カバー56の周方向に、時計回りに90°移動した位置に配置されている。これにより、凹部59は、凸部58に対して蓄熱材拘束カバー46の軸線を介して対向する位置に配置されることとなる。凹部59は、
図5(a)に示すように、3個形成されている。3個の凹部59のそれぞれは、別の蓄熱材拘束カバー46が有する3個の凸部58のそれぞれと係合可能である。なお、ここで言う90°は、目視レベルでの90°であって、厳密に90°でなくてもよく、例えば、90°±10°を意味する。
【0040】
図6は、第2実施形態の蓄熱体2が用いられる化学蓄熱反応器5の断面図である。本実施形態では、化学蓄熱反応器5は、8本の蓄熱体2を収容している。8本の蓄熱体2は、
図6に示すように、それぞれの軸線が略平行となるように、かつ、幅方向に4本並べられた蓄熱体2が高さ方向に2列に並ぶように、蓄熱体収容室12に収容されている。
【0041】
ここで、説明の便宜上、蓄熱体収容室12に並ぶ順番にしたがって、8本の蓄熱体2を、蓄熱材41aを備える蓄熱体2a、蓄熱材41bを備える蓄熱体2b、蓄熱材41cを備える蓄熱体2c、蓄熱材41dを備える蓄熱体2d、蓄熱材41eを備える蓄熱体2e、蓄熱材41fを備える蓄熱体2f、蓄熱材41gを備える蓄熱体2g、蓄熱材41hを備える蓄熱体2hとする。なお、本実施形態では、蓄熱体2a、2b、2c、2dは、
図5に示す凸部58に相当する部位を有していない。また、蓄熱体2a、2eは、
図5に示す凸部48に相当する部位を有していない。
【0042】
蓄熱体2fの凸部58fは、高さ方向において蓄熱体2fに隣接する蓄熱体2bの凹部59bに挿通される。これにより、凸部58fと凹部59bとが係合するため、蓄熱体2fと蓄熱体2bとは高さ方向において連結され固定される。この凸部58fと凹部59bとが係合する2つの蓄熱体2b、2fの関係は、蓄熱体2eの凸部58eと蓄熱体2aの凹部59aとが係合する2つの蓄熱体2a、2eの関係、蓄熱体2gの凸部58gと蓄熱体2cの凹部59cとが係合する2つの蓄熱体2c、2gの関係、および、蓄熱体2hの凸部58hと蓄熱体2dの凹部59dとが係合する2つの蓄熱体2d、2hの関係においても同様である。
【0043】
また、蓄熱体2fの凸部48fは、幅方向において蓄熱体2fに隣接する蓄熱体2eの凹部49eに挿通される。これにより、凸部48fと凹部49eとが係合するため、蓄熱体2fと蓄熱体2eとは幅方向において連結され固定される。この凸部48fと凹部49eとが係合する2つの蓄熱体2e、2fの関係は、蓄熱体2bの凸部48bと蓄熱体2aの凹部49aとが係合する2つの蓄熱体2a、2bの関係、蓄熱体2cの凸部48cと蓄熱体2bの凹部49bとが係合する2つの蓄熱体2b、2cの関係、蓄熱体2dの凸部48dと蓄熱体2cの凹部49cとが係合する2つの蓄熱体2c、2dの関係、蓄熱体2gの凸部48gと蓄熱体2fの凹部49fとが係合する2つの蓄熱体2f、2gの関係、および、蓄熱体2hの凸部48hと蓄熱体2gの凹部49gとが係合する2つの蓄熱体2h、2gの関係においても同様である。
【0044】
また、蓄熱体2aの凹部49a、59aのそれぞれに、蓄熱体2bの凸部48bと蓄熱体2eの凸部58eとが挿通されると、凸部48b、58eは、蓄熱体2a内においてカバー本体部47aの内周面から飛び出し、蓄熱体2a内での蓄熱材41aの蓄熱体2b、2e側への移動を規制する。これにより、蓄熱材41aの外周面とカバー本体部47aの内周面との間には、水蒸気が流通可能な隙間40aが形成される。この凸部48b、58eによってカバー本体部47a内に水蒸気が流通可能な隙間40aが形成される3つの蓄熱体2a、2b、2eの関係は、蓄熱体2cの凸部48cと蓄熱体2fの凸部58fとによってカバー本体部47b内に隙間40bが形成される3つの蓄熱体2b、2c、2fの関係、蓄熱体2dの凸部48dと蓄熱体2gの凸部58gとによってカバー本体部47c内に隙間40cが形成される3つの蓄熱体2c、2d、2gの関係、蓄熱体2hの凸部58hによってカバー本体部47d内に隙間40dが形成される2つの蓄熱体2d、2hの関係、蓄熱体2fの凸部48fによってカバー本体部47e内に隙間40eが形成される2つの蓄熱体2e、2fの関係、蓄熱体2gの凸部48gによってカバー本体部47f内に隙間40fが形成される2つの蓄熱体2f、2gの関係、および、蓄熱体2hの凸部48hによってカバー本体部47g内に隙間40gが形成される2つの蓄熱体2g、2hの関係においても同様である。
【0045】
以上説明した、本実施形態の蓄熱体2によれば、凸部48と凸部58とは、筒状に形成されている蓄熱材拘束カバー56の周方向に沿って並ぶように配置されている。これにより、一の蓄熱体2の周囲に位置する複数の他の蓄熱体2が一の蓄熱体2に対して移動することを規制することができる。
【0046】
また、本実施形態の蓄熱体2によれば、凸部58は、
図5(b)に示すように、蓄熱体2の軸線に垂直な断面図において、凸部48に対して蓄熱材拘束カバー56の周方向に、時計回りに90°移動した位置に配置されている。これにより、本実施形態のように、一の蓄熱体2の軸線から見て自身の軸線に垂直な2つの方向のそれぞれに他の蓄熱体2が2個配置されるとき、他の蓄熱体2が一の蓄熱体2の軸線方向に移動することを、当該一の蓄熱体2だけで防止できる。
【0047】
<第3実施形態>
図7は、第3実施形態における蓄熱体3の模式図である。第3実施形態の蓄熱体3は、第1実施形態の蓄熱体1(
図3)と比較すると、一つの蓄熱材拘束カバーに収容される蓄熱材の数が異なる。
【0048】
蓄熱体3は、3個の蓄熱材61、62、63と、蓄熱材拘束カバー46と、を備える。
蓄熱材61、62、63のそれぞれは、円柱状に形成されている。蓄熱材61、62、63は、例えば、酸化カルシウムの成形体である。蓄熱材61、62、63は、水和反応によって発熱し、脱水反応によって蓄熱するものであり、発熱と蓄熱とを可逆的に繰り返すことが可能である。
蓄熱材拘束カバー46に挿入されるときの蓄熱材61、62、63は、焼成によって成形された状態のものである。このため、蓄熱材拘束カバー46内の蓄熱材61、62、63は、水和反応によって膨張する。そこで、本実施形態では、蓄熱材61、62、63は、水和反応による膨張を考慮して、水和反応後の蓄熱材61、62、63のそれぞれの軸線方向の長さの合計が蓄熱材拘束カバー46の軸線方向の長さと同じ程度となるような大きさで、蓄熱材拘束カバー46内に配置される。このため、最初に発熱する前の、製造されたばかりの蓄熱体3では、蓄熱材61、62、63の軸線方向の長さの合計は、蓄熱材拘束カバー46の軸線方向の長さより短くなっている。また、蓄熱材61、62、63の外径も、蓄熱材拘束カバー46の内径より短くなっている。
【0049】
本実施形態では、蓄熱材61、62、63を収容する蓄熱材拘束カバー46として、
図7に示す4種類の蓄熱材拘束カバー46が用いられる。
図7(a)に示す蓄熱体3aの蓄熱材拘束カバー46aは、カバー本体部47と、3つの凹部49と、を備える。3つの凹部49は、他の蓄熱体3が有する凸部48が挿通可能に形成されている。
図7(a)に示す点線矢印A1、A2、A3のように他の蓄熱体3の3つの凸部48が3つの凹部49に挿通されると、蓄熱材61a、62a、63aのそれぞれは、挿通された凸部48と蓄熱材拘束カバー46aの内面との間に挟まれ移動が規制される。
【0050】
図7(b)に示す蓄熱体3bの蓄熱材拘束カバー46bは、カバー本体部47と、3つの凸部48と、3つの凹部49と、を備える。3つの凸部48は、他の蓄熱体3が有する3つの凹部49に挿通可能に形成されている。3つの凹部49は、他の蓄熱体3が有する凸部48が挿通可能に形成されている。
図7(b)に示す点線矢印B1、B2、B3のように他の蓄熱体3の3つの凸部48が3つの凹部49に挿通されると、蓄熱材61b、62b、63bのそれぞれは、挿通された凸部48と蓄熱材拘束カバー46bの内面との間に挟まれ移動が規制される。
【0051】
図7(c)に示す蓄熱体3cの蓄熱材拘束カバー46cは、カバー本体部47と、3つの凸部48と、3つの凸部68と、3つの凹部49と、を備える。3つの凸部48と3つの凸部68とは、蓄熱材拘束カバー46cの軸線を挟んで配置され、他の蓄熱体3が有する3つの凹部49に挿通可能に形成されている。3つの凹部49は、他の蓄熱体3が有する凸部48が挿通可能に形成されている。
図7(c)に示す点線矢印C1、C2、C3のように他の蓄熱体3の3つの凸部48が3つの凹部49に挿通されると、蓄熱材61c、62c、63cのそれぞれは、挿通された凸部48と蓄熱材拘束カバー46cの内面との間に挟まれ移動が規制される。
【0052】
図7(d)に示す蓄熱体3dの蓄熱材拘束カバー46dは、カバー本体部47と、3つの凸部48と、3つの凹部49と、を備える。3つの凸部48は、他の蓄熱体3が有する3つの凹部49に挿通可能に形成されている。3つの凹部49は、3つの凸部48と、と同じ側に形成されており、他の蓄熱体3が有する凸部68が挿通可能に形成されている。
図7(d)に示す点線矢印D1、D2、D3のように他の蓄熱体3の3つの凸部68が3つの凹部49に挿通されると、蓄熱材61d、62d、63dのそれぞれは、挿通された凸部68と蓄熱材拘束カバー46dの内面との間に挟まれ移動が規制される。
【0053】
図8は、本実施形態での複数の蓄熱体3の組み合わせ方を説明する模式図である。本実施形態では、
図8(a)に示すように、4つの蓄熱体3を、蓄熱体3a、蓄熱体3b、蓄熱体3c、蓄熱体3dの順に並べて組み合わせる。蓄熱体3aと蓄熱体3bとの組み合わせでは、蓄熱体3aの凹部49に蓄熱体3bの凸部48を点線矢印A1、A2、A3のように挿通する。また、蓄熱体3bと蓄熱体3cとの組み合わせでは、蓄熱体3bの凹部49に蓄熱体3cの凸部48を点線矢印B1、B2、B3のように挿通する。また、蓄熱体3cと蓄熱体3dとの組み合わせでは、蓄熱体3cの凹部49に蓄熱体3dの凸部48を点線矢印C1、C2、C3のように挿通するとともに、蓄熱体3dの凹部49に蓄熱体3cの凸部68を点線矢印D1、D2、D3のように挿通する。これにより、蓄熱体3aと、蓄熱体3bと、蓄熱体3cと、蓄熱体3dとは、
図8(b)のように組み合わされ、凸部48、68と凹部49との係合によって連結され固定される。
【0054】
図9は、第3実施形態の蓄熱体3が用いられる化学蓄熱反応器5の断面図である。
図9は、水和反応前の蓄熱材61、62、63が収容されている状態を示している。本実施形態の化学蓄熱反応器5では、4つの蓄熱体3は、自身の軸線方向が化学蓄熱反応器5の高さ方向に沿うように設けられる。このとき、蓄熱体3内の蓄熱材61、62、63には凸部48または凸部68が当接し、互いが離間した状態で移動が規制されている。このため、蓄熱体3を自身の軸線方向が化学蓄熱反応器5の高さ方向に沿うように設けられる場合でも、
図9に示すように、隣り合う蓄熱材61、62、63の間に、隙間60が形成される。また、蓄熱材61、62、63のそれぞれと蓄熱材拘束カバー46の内面との間にも隙間60が形成される。
【0055】
図10は、第3実施形態の蓄熱体3が用いられる化学蓄熱反応器5の断面図である。
図10では、
図9の状態から水和反応が行われた後の蓄熱材61、62、63が収容されている状態を示している。
図9の状態から水蒸気が化学蓄熱反応器5に供給されると、水和反応によって蓄熱材61、62、63は、膨張する。これにより、
図9の状態で見られた隙間60はなくなるとともに、膨張する蓄熱材61、62、63によって、凸部48または凸部68がつぶされる。
【0056】
以上説明した、本実施形態の蓄熱体3によれば、隣り合う蓄熱体3の蓄熱材拘束カバー46同士を連結し固定する凸部48または凸部68は、蓄熱材拘束カバー46に収容される蓄熱材61、62、63を互いに離間した状態で移動を規制する。水和反応前の蓄熱体3に収容されている蓄熱材61、62、63は、蓄熱材拘束カバー46の大きさに比べ小さくなっている。本実施形態では、凸部48または凸部68によって蓄熱材61、62、63が互いに離間した状態で移動を規制されることによって、蓄熱材61、62、63を蓄熱材拘束カバー46内において均一に配置することができる。
【0057】
また、本実施形態の蓄熱体3によれば、発熱時に蓄熱材拘束カバー46内に流入する水蒸気は、隙間60を通って蓄熱材拘束カバー46内に均一に拡散するため、初期段階での蓄熱材61、62、63の水和反応を安定して行うことができる。また、水蒸気が蓄熱材拘束カバー46内に均一に拡散するため、水和反応による蓄熱材61、62、63の膨張が均一に行われ、水和反応後においても蓄熱材61、62、63が蓄熱材拘束カバー46内に均一に配置された状態となる。
このように、本実施形態の蓄熱体3によれば、蓄熱体3の最初の発熱において重要となる蓄熱材61、62、63の蓄熱材拘束カバー46内での配置を均一にすることができるとともに、水蒸気を蓄熱材拘束カバー46内に均一に拡散し、蓄熱材61、62、63を均一に膨張させることができる。
【0058】
また、本実施形態の蓄熱体3によれば、水蒸気と蓄熱材61、62、63との水和反応による蓄熱材61、62、63の膨張が隙間60によって許容されるため、膨張する蓄熱材61、62、63と蓄熱材拘束カバー46との接触による蓄熱材61、62、63や蓄熱材拘束カバー46の破損を防止することができる。
【0059】
<第4実施形態>
図11は、第4実施形態における蓄熱体4の模式図である。第4実施形態の蓄熱体4は、第1実施形態の蓄熱体1(
図3)と比較すると、凹部の形状が異なる。
【0060】
蓄熱体4は、蓄熱材41と、蓄熱材拘束カバー76と、を備える。蓄熱材拘束カバー76は、略円筒状の部材であって、蓄熱材41を収容可能に形成されている。蓄熱材拘束カバー76は、カバー本体部47と、凸部78と、凹部79と、を有する。
【0061】
凸部78は、
図11(b)に示すように、カバー本体部47の外周面からカバー本体部47の径方向に沿って突出するように形成されている。凸部78は、カバー本体部47の外周面から突出する長さがカバー本体部47の厚みより短い。本実施形態では、凸部78は、
図11(a)に示すように、カバー本体部47の軸線方向に沿って並ぶように、略等間隔に、3個配置されている
【0062】
凹部79は、カバー本体部47に形成されている窪みであって、第1実施形態の凹部49のようにカバー本体部47を貫通していない。本実施形態では、凹部79は、
図11(b)に示すように、凸部78に対してカバー本体部47の軸線を介して対向する位置に配置されている。凹部79は、別の蓄熱材拘束カバー76が有する凸部78と係合可能である。凹部79が設けられた位置の内周面側は、
図11(b)に示すように、カバー本体部47の内側に突出するように形成されている。
【0063】
図12は、第4実施形態の蓄熱体4が用いられる化学蓄熱反応器5の断面図である。本実施形態では、化学蓄熱反応器5は、4本の蓄熱体4を収容している。ここで、説明の便宜上、4本の蓄熱体4を、蓄熱体収容室12に並ぶ順番にしたがって、蓄熱材41aを備える蓄熱体4a、蓄熱材41bを備える蓄熱体4b、蓄熱材41cを備える蓄熱体4c、蓄熱材41dを備える蓄熱体4dとする。なお、本実施形態では、蓄熱体4aは、凸部78に相当する部位は有していない。
【0064】
蓄熱体4bの凸部78bは、蓄熱体4bに隣接する蓄熱体4aの凹部79aに挿入される。これにより、凸部78bと凹部79aとが係合するため、蓄熱体4bと蓄熱体4aとは連結され固定される。この凸部78bと凹部79aとが係合する2つの蓄熱体4a、4bの関係は、蓄熱体4cの凸部78cと蓄熱体4bの凹部79bとが係合する2つの蓄熱体4b、4cの関係、および、蓄熱体4dの凸部78dと蓄熱体4cの凹部79cとが係合する2つの蓄熱体4c、4dの関係においても同様である。
【0065】
また、蓄熱体4aでは、凹部79aの内周面側は、蓄熱体4aのカバー本体部47の内側に突出しているため、蓄熱材41aは、カバー本体部47a内での蓄熱体1b側への移動が規制され、蓄熱材41aの外周面とカバー本体部47aの内周面との間には、水蒸気が流通可能な隙間70aが形成される。この凹部79aによって蓄熱材41aの外周面とカバー本体部47aの内周面との間に隙間70aが形成される構成は、蓄熱体4bにおいて凹部79bによって蓄熱材41bの外周面とカバー本体部47bの内周面との間に隙間70bが形成される構成、蓄熱体4cにおいて凹部79cによって蓄熱材41cの外周面とカバー本体部47cの内周面との間に隙間70cが形成される構成、および、蓄熱体4dにおいて凹部79dによって蓄熱材41dの外周面とカバー本体部47dの内周面との間に隙間70dが形成される構成においても同様である。
【0066】
以上説明した、本実施形態の蓄熱体4によれば、凹部79の内周面側は、カバー本体部47の内側に突出している。これにより、凹部79の内周面側によって蓄熱材41の外周面とカバー本体部47の内周面との間に隙間70が形成されるため、水蒸気と蓄熱材41との反応初期における水蒸気の流路を確保することができる。したがって、水蒸気と蓄熱材41との初期段階での水和反応を安定して行うことができる。
【0067】
また、凸部を挿通可能な凹部として貫通孔を形成する場合、貫通孔から蓄熱材が漏れ出すおそれがあるが、本実施形態の蓄熱体4によれば、凹部は、窪みであって貫通していないため、蓄熱材41の漏れを防止することができる。
【0068】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0069】
[変形例1]
第1実施形態では、化学蓄熱反応器5は、4本の蓄熱体1を備えるとした。第2実施形態では、化学蓄熱反応器5は、8本の蓄熱体2を備えるとした。しかしながら、化学蓄熱反応器5が備える蓄熱体の本数はこれに限定されない。
【0070】
[変形例2]
第1実施形態では、蓄熱材拘束カバー46は、3個の凸部48と、3個の凹部49と、を有するとした。しかしながら、凸部48の数と、凹部49の数はこれに限定されない。1つずつであってもよい。
【0071】
[変形例3]
第2実施形態では、凸部58は、蓄熱体2の軸線に垂直な断面図において、凸部48に対して蓄熱材拘束カバー56の周方向に、時計回りに90°移動した位置に配置されているとした。しかしながら、蓄熱材拘束カバー56の周方向に沿って並ぶように設けられている複数の凸部の位置関係はこれに限定されない。
【0072】
[変形例4]
第1実施形態では、凸部48と凹部49とは、蓄熱材拘束カバー46の軸線を介して対向する位置に配置されているとした。しかしながら、凸部と凹部とは、蓄熱材拘束カバーの軸線を介して対向する位置に配置されていなくてもよい。
【0073】
[変形例5]
第1実施形態では、カバー本体部47と凸部48と凹部49とは、一体に成形されているとした。しかしながら、蓄熱材カバーと凸部とは、別の部品から形成されていてもよい。この場合、蓄熱材カバーを成形した後でも凸部を追加することができ、蓄熱材拘束カバーの製作時の自由度が向上することができる。
【0074】
[変形例6]
第1実施形態では、凸部48は、カバー本体部47の外周面から突出する長さがカバー本体部47の厚みより長いとし、蓄熱材41に当接可能であるとした。しかしながら、凸部48の長さは、これに限定されない。凸部48は、蓄熱材41に刺さる程度の長さであってもよい。これにより、蓄熱材41が凸部48に固定されるため、蓄熱材41の移動が規制され、水蒸気が流通可能な隙間40を形成することができる。
【0075】
[変形例7]
第2実施形態では、凸部48と凸部58とのそれぞれが蓄熱体2の軸線に沿って並ぶように配置され、かつ、凸部48と凸部58とが蓄熱材拘束カバー56の周方向に沿って並ぶように配置されているとした。しかしながら、2つの凸部が蓄熱材拘束カバーの周方向に沿って並ぶように配置されているだけでもよい。
【0076】
[変形例8]
第1実施形態では、蓄熱材41は円柱状であって、蓄熱材拘束カバー46は略円筒状の部材であるとした。しかしながら、蓄熱材41の形状と、蓄熱材拘束カバー46の形状はこれに限定されない。
【0077】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0078】
1、2、3、4…蓄熱体
5…化学蓄熱反応器
8…化学蓄熱装置
10…反応容器
11…蒸気流路
12…蓄熱体収容室
13…蒸気配管
14…隔壁
15…孔
20…接続配管
21…開閉弁
30…蒸発凝縮器
31…容器
32…熱媒流路
33…蒸気配管
34…開閉弁
40、60、70…隙間
41、61、62、63…蓄熱材
46、56、76…蓄熱材拘束カバー
47…カバー本体部
48、58、68、78…凸部
49、59、79…凹部