(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】不燃シート
(51)【国際特許分類】
B32B 17/10 20060101AFI20221004BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20221004BHJP
B32B 27/28 20060101ALI20221004BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20221004BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20221004BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20221004BHJP
B32B 7/027 20190101ALI20221004BHJP
C09J 123/04 20060101ALI20221004BHJP
C09J 131/04 20060101ALI20221004BHJP
C09J 175/04 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
B32B17/10
B32B27/00 E
B32B27/00 D
B32B27/28 101
B32B27/36
B32B7/023
B32B7/12
B32B7/027
C09J123/04
C09J131/04
C09J175/04
(21)【出願番号】P 2018217172
(22)【出願日】2018-11-20
【審査請求日】2021-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】舩木 速人
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-170785(JP,A)
【文献】特開2015-197614(JP,A)
【文献】特開2015-141359(JP,A)
【文献】特開2015-147346(JP,A)
【文献】特開平06-171300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C09J 1/00-5/10;9/00-201/10
E04B 1/62-1/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスクロスの一方の面に、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂を含有する接着剤層を介して化粧シートが貼り付けられており、
前記化粧シートは、ポリエステル樹脂を含有する樹脂フィルムと、前記樹脂フィルムの前記ガラスクロスと反対側の面に形成された印刷インキ層と、前記印刷インキ層の前記樹脂フィルムと反対側の面に形成された表面保護層と、前記樹脂フィルムの前記ガラスクロス側の面に形成された裏面プライマー層とを有し、
前記樹脂フィルムの厚さは、0.045mm以上0.077mm以下であり、前記接着剤層の質量は、44.0g/m
2以下であり、
前記印刷インキ層は、単位面積当たりの印刷面積が50%以下であり、前記化粧シートと前記ガラスクロスの積層体の可視光領域における全光線透過率が30%以上50%以下の範囲内、かつ、拡散透過率が25%以上45%以下の範囲内であることを特徴とする不燃シート。
【請求項2】
ガラスクロスの一方の面に、ウレタン樹脂と有機質系硬化剤とを含有する接着剤層を介して化粧シートが貼り付けられており、
前記化粧シートは、ポリエステル樹脂を含有する樹脂フィルムと、前記樹脂フィルムの前記ガラスクロスと反対側の面に形成された印刷インキ層と、前記印刷インキ層の前記樹脂フィルムと反対側の面に形成された表面保護層と、前記樹脂フィルムの前記ガラスクロス側の面に形成された裏面プライマー層とを有し、
前記樹脂フィルムの厚さは、0.045mm以上0.077mm以下であり、前記接着剤層の質量は、33.0g/m
2以下であり、
前記印刷インキ層は、単位面積当たりの印刷面積が50%以下であり、前記化粧シートと前記ガラスクロスの積層体の可視光領域における全光線透過率が30%以上50%以下の範囲内、かつ、拡散透過率が25%以上45%以下の範囲内であることを特徴とする不燃シート。
【請求項3】
前記接着剤層は、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂を80.3質量%以上100質量%以下、無機顔料を19.7質量%以下含むことを特徴とする請求項1に記載の不燃シート。
【請求項4】
前記接着剤層は、前記ウレタン樹脂を84.3質量%以下、前記有機質系硬化剤を15.7質量%以上含むことを特徴とする請求項2に記載の不燃シート。
【請求項5】
前記樹脂フィルムは、ポリエステル樹脂を67.0質量%以上96.5質量%以下、無機顔料を3.5質量%以上33.0質量%以下含むことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の不燃シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不燃性を有するシート状物に関し、特に建築物の天井等に施工する膜天井用として好適に使用できる不燃シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物の天井材としては、石膏ボード等の板状の素材が用いられていた。しかし石膏ボードは重量が重い割には強度が弱いため、地震時に落下して怪我の原因となる危険性が指摘されている。このため、地震時の揺れに対しても落下し難く、また落下しても危険性が少ない膜天井が注目されるようになってきた。
【0003】
特許文献1に記載された膜天井用ガラスクロス及び膜天井は、従来の板状の天井材に替わって膜天井を採用するにあたり、天井裏の配管や配線が見えないように光遮蔽性を高めたガラスクロス及びこれを用いた膜天井である。
【0004】
一方膜天井等に用いられるシート状部材には、火災時の安全性確保のため不燃性の要請が高まっている。例えば、一定の規模・用途に供する、居室や廊下・階段等の避難経路等の膜天井等には、その要求性能に応じた防火材料を用いなければならないことが、法令(非特許文献1)で義務付けられている。
【0005】
特許文献2に記載された不燃シートは、膜天井の意匠性を高めながら、不燃性を確保する目的でなされたものであり、印刷絵柄層を有するポリエステル樹脂系フィルムをガラスクロスに貼り合せるに当たり、構成層の厚さや質量を規定することにより、不燃性を確保したものである。
【0006】
一方近年、膜天井に関して、従来の隠蔽性や遮光性に対して、逆に透光性を必要とされる用途が検討されるようになってきた。これは、天窓や照明器具を膜天井の裏側に設置して光天井とする用途や、あえて天井裏の配管等を透視できるようにした建築デザインに対する要望から生じたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第5641168号公報
【文献】特開2017-170785号公報
【非特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は、必要とされる不燃性と透光性とを兼ね備えた膜天井用不燃シートを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、ガラスクロスの一方の面に、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂を含有する接着剤層を介して化粧シートが貼り付けられており、前記化粧シートは、ポリエステル樹脂を含有する樹脂フィルムと、前記樹脂フィルムの前記ガラスクロスと反対側の面に形成された印刷インキ層と、前記印刷インキ層の前記樹脂フィルムと反対側の面に形成された表面保護層と、前記樹脂フィルムの前記ガラスクロス側の面に形成された裏面プライマー層とを有し、前記樹脂フィルムの厚さは、0.045mm以上0.077mm以下であり、前記接着剤層の質量は、44.0g/m2以下であり、前記印刷インキ層は、単位面積当たりの印刷面積が50%以下であり、前記化粧シートと前記ガラスクロスの積層体の可視光領域における全光線透過率が30%以上50%以下の範囲内、かつ、拡散透過率が25%以上45%以下の範囲内であることを特徴とする不燃シートである。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、ガラスクロスの一方の面に、ウレタン樹脂と有機質系硬化剤とを含有する接着剤層を介して化粧シートが貼り付けられており、前記化粧シートは、ポリエステル樹脂を含有する樹脂フィルムと、前記樹脂フィルムの前記ガラスクロスと反対側の面に形成された印刷インキ層と、前記印刷インキ層の前記樹脂フィルムと反対側の面に形成された表面保護層と、前記樹脂フィルムの前記ガラスクロス側の面に形成された裏面プライマー層とを有し、前記樹脂フィルムの厚さは、0.045mm以上0.077mm以下であり、前記接着剤層の質量は、33.0g/m2以下であり、前記印刷インキ層は、単位面積当たりの印刷面積が50%以下であり、前記化粧シートと前記ガラスクロスの積層体の可視光領域における全光線透過率が30%以上50%以下の範囲内、かつ、拡散透過率が25%以上45%以下の範囲内であることを特徴とする不燃シートである。
【0012】
本発明に係る不燃シートは、ガラスクロスと化粧シートを貼り合わせるための接着剤の材質と質量を規定し、化粧シートの基材となる樹脂フィルムの厚さを規定したことにより、不燃性が担保され、全光線透過率と拡散透過率を規定したことにより、光膜天井としての機能が付与できる。
【0013】
また、請求項3に記載の発明は、前記接着剤層が、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂を80.3質量%以上100質量%以下、無機顔料を19.7質量%以下含むことを特徴とする請求項1に記載の不燃シートである。
【0014】
また、請求項4に記載の発明は、前記接着剤層が、前記ウレタン樹脂を84.3質量%以下、前記有機質系硬化剤を15.7質量%以上含むことを特徴とする請求項2に記載の不燃シートである。
【0016】
また、請求項5に記載の発明は、前記樹脂フィルムが、ポリエステル樹脂を67.0質量%以上96.5質量%以下、無機顔料を3.5質量%以上33.0質量%以下含むことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の不燃シートである。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る不燃シートは、ガラスクロスと化粧シートを貼り合わせるための接着剤の材質と質量を規定し、化粧シートの基材となる樹脂フィルムの厚さを規定したことにより、不燃性が担保され、また全光線透過率と拡散透過率を規定することにより、光膜天井としての機能が付与できた。
【0018】
請求項3及び4に記載の発明において、接着剤の材質と成分を規定することにより、不燃性を保持しつつ、良好な接着性能を確保することができる。
【0019】
請求項1に記載の発明のように、印刷インキ層の、単位面積当たりの印刷面積を50%以下とした場合には、適度な光線透過率を確保できるために照明用途への使用可能性を保持しつつ、インキ層由来の絵柄(木目、抽象柄等)をデザインとしても見せることができるので、意匠性に優れた膜天井を提供することができる。
【0020】
また請求項5に記載の発明のように、前記樹脂フィルムが、ポリエステル樹脂を67.0質量%以上96.5質量%以下、無機顔料を3.5質量%以上33.0質量%以下含むものとした場合には、意匠性が向上すると共に不燃性能をより安定的なものとする効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明に係る不燃シートの層構成を模式的に示した断面説明図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る不燃シートを光天井として用いた場合の例を模式的に示した断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下図面を参照しながら、本発明に係る不燃シートについて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る不燃シート1の層構成を模式的に示した断面説明図である。本発明に係る不燃シート1の第1の実施形態においては、ガラスクロス8の一方の面に、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂を含有する接着剤層7を介して化粧シート2が貼り付けられた構造を持っている。
【0023】
化粧シート2は、ポリエステル樹脂を含有する樹脂フィルム5と、樹脂フィルム5のガラスクロス8と反対側の面に形成された印刷インキ層4と、印刷インキ層4の樹脂フィルム5と反対側の面に形成された表面保護層3と、樹脂フィルム5のガラスクロス8側の面に形成された裏面プライマー層6とを有する。
【0024】
本発明に係る不燃シート1は、樹脂フィルム5の厚さが、0.045mm以上0.077mm以下であり、接着剤層7の質量が、44.0g/m2以下であり、化粧シート2とガラスクロス8の積層体である不燃シート1の可視光領域における全光線透過率が30%以上50%以下の範囲内であり、かつ、拡散透過率が25%以上45%以下の範囲内であることを特徴とする。
【0025】
可燃物である樹脂フィルム5の厚さとエチレン-酢酸ビニル共重合樹脂接着剤層7の質量を上記の範囲に規定することにより、不燃性が担保される。また、可視光領域における全光線透過率と拡散透過率を上記の範囲に規定することにより、光天井の用途に対して、好適に用いることができる。
【0026】
ガラスクロス8と化粧シート2の貼り合わせに用いるエチレン-酢酸ビニル共重合樹脂接着剤については、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂を80.3質量%以上100質量%以下、無機顔料を19.7質量%以下含むものであることがより望ましい。この範囲に規定することにより、不燃性を担保しつつ、ガラスクロス8と化粧シート2との貼り合わせ後の接着強度を十分確保することができる。
【0027】
本発明に係る不燃シート1の第2の実施形態においては、ガラスクロス8の一方の面に、ウレタン樹脂と有機質系硬化剤とを含有する接着剤層7を介して化粧シート2が貼り付けられた構造を持っている。
【0028】
化粧シート2は、ポリエステル樹脂を含有する樹脂フィルム5と、樹脂フィルム5のガラスクロス8と反対側の面に形成された印刷インキ層4と、印刷インキ層4の樹脂フィル
ム5と反対側の面に形成された表面保護層3と、樹脂フィルム5のガラスクロス8側の面に形成された裏面プライマー層6とを有する。
【0029】
本発明に係る不燃シート1は、樹脂フィルム5の厚さが、0.045mm以上0.077mm以下であり、接着剤層7の質量が、33.0g/m2以下であり、化粧シート2とガラスクロス8の積層体である不燃シート1の可視光領域における全光線透過率が30%以上50%以下の範囲内であり、かつ、拡散透過率が25%以上45%以下の範囲内であることを特徴とする。
【0030】
可燃物である樹脂フィルム5の厚さとウレタン樹脂接着剤層7の質量を上記の範囲に規定することにより、不燃性が担保される。また、可視光領域における全光線透過率と拡散透過率を上記の範囲に規定することにより、光天井の用途に対して、好適に用いることができる。
【0031】
本発明に係る不燃シート1の第2の実施形態において、接着剤層7が、ウレタン樹脂を84.3質量%以下、有機質系硬化剤を15.7質量%以上含むものであることがより望ましい。この範囲に規定することにより、不燃性を担保しつつ、ガラスクロス8と化粧シート2との貼り合わせ後の接着強度を十分確保することができる。
【0032】
本発明に係る不燃シート1を構成するガラスクロス8としては、ガラス繊維を織って形成したクロスを用いる。ガラス繊維としては、例えば、Eガラス、表面処理剤(接着性を向上させる集束剤、シラン化合物等)を含むものを使用できる。ガラスクロスの組成(ガラス繊維の組成)は、例えば、Eガラスを97質量%以上99質量%以下、表面処理剤を1質量%以上3質量%以下含むものとする。また、織り方は、例えば、平織りとする。さらに、糸番手は、例えば、縦糸を68.5[tex]、横糸を68.5[tex]とし、織密度は、例えば、縦糸を42[本/25mm]以上46[本/25mm]以下、横糸を31[本/25mm]以上35[本/25mm]以下とする。また、ガラスクロスの厚さは、例えば、0.17[mm]以上0.21[mm]以下とする。さらに、ガラスクロスの質量は、例えば、190.8[g/m2]以上233.2[g/m2]以下(有機質量2.0[g/m2]以上6.4[g/m2]以下)とする。
【0033】
化粧シート2の基材となる樹脂フィルム5は、ポリエステル樹脂を含有するポリエステル樹脂系フィルムである。ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂、ポリブチレンナフタレート(PBN)樹脂等、各種ジカルボン酸とジオールの縮重合体が使用できる。
【0034】
樹脂フィルム5には、必要に応じて無機顔料(酸化チタン、酸化鉄等)を添加してもよい。樹脂フィルム5の組成は、ポリエステル樹脂を67.0質量%以上96.5質量%以下、無機顔料を3.5質量%以上33.0質量%以下含むものとするのが好ましい。また、樹脂フィルムの厚さは、0.077[mm]以下とし、厚さを薄くする。これにより、燃焼量を低下させる。なお、厚さの下限値は、例えば、樹脂フィルムの強度等を考慮して、0.045[mm]以上とする。また、樹脂フィルムの質量は、例えば、110.0[g/m2]以下(有機質量78.76[g/m2]以下)とする。
【0035】
印刷インキ層4は、不燃シートの意匠性を向上するためにウレタン樹脂系インキによる印刷で形成された層である。ウレタン樹脂系インキとしては、例えば、ウレタン樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂、有機顔料、無機顔料を含むものを使用できる。印刷インキ層の組成は、例えば、ウレタン樹脂を50.9質量%以上76.7質量%以下、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂を10.2質量%以上23.3質量%以下、有機顔料を0質量
%以上37.7質量%以下、無機顔料を0質量%以上20.0質量%以下含むものとする。
【0036】
印刷方法としては、例えば、インクジェット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法等を採用できる。また、印刷インキ層4の質量は、例えば、8.36[g/m2]以下(固形量)(有機質量6.71[g/m2]以下)とする。なお、印刷インキ層の単位面積(例えば、300mm角)当たりの印刷面積は、50%以下とするのがより好ましい。
【0037】
表面保護層3は、不燃シート1の表面を保護するためにアクリル樹脂系塗料で形成された層である。アクリル樹脂系塗料としては、例えば、紫外線硬化型、2液硬化型等の特性を有するアクリル樹脂を使用できる。また、表面保護層3には、必要に応じて無機質添加剤(シリカ等)を添加してもよい。表面保護層の組成は、例えば、アクリル樹脂を80質量%以上86質量%以下、無機質添加剤を14質量%以上20質量%以下含むものとする。また、表面保護層3の厚さは、例えば、0.044[mm]以下とする。また、質量は、17.49[g/m2]以下(固形量)(有機質量13.97[g/m2]以下)とする。
【0038】
裏面プライマー層6は、接着性の向上のためにウレタン樹脂系プライマーで形成された層である。ウレタン樹脂系プライマーとしては、例えば、ウレタン樹脂、無機顔料(シリカ等)を含むものを使用できる。裏面プライマー層6の組成は、例えば、ウレタン樹脂を56.1質量%以上68.5質量%以下、無機顔料を34.0質量%以上41.4質量%以下含むものとする。また、裏面プライマー層6の質量は、1.76[g/m2]以下(固形量)(有機質量1.10[g/m2]以下)とする。
【0039】
接着剤層7は、ガラスクロス8と化粧シート2とを接着するために合成樹脂系接着剤(エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂系接着剤またはウレタン樹脂系接着剤)で形成される層である。エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂系接着剤としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、無機顔料(シリカ等)を含むものを使用できる。エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂系接着剤の組成は、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂を80.3質量%以上100質量%以下、無機顔料(シリカ等)を0質量%以上19.7質量%以下含むものとするのが好ましい。また、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂系接着剤の質量は、44.0[g/m2]以下(固形量)(有機質量44.0[g/m2]以下)とする。
【0040】
接着剤層7として、ウレタン樹脂系接着剤を使用する場合には、ウレタン樹脂を84.3質量%以下、有機質系硬化剤を15.7質量%以上含むものとするのが好ましい。また、ウレタン樹脂系接着剤の質量は、33.0[g/m2]以下(固形量)(有機質量33.0[g/m2]以下)とする。有機質系硬化剤としては、各種イソシアネート、具体的にはトリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)などのモノマー類、これらの重合体、もしくは誘導体の、1種または2種以上を用いることができる。
【0041】
不燃シート1は、ガラスクロス8と化粧シート2の積層体であり、透光性を有しており、全光線透過率を30%以上50%以下、かつ、拡散透過率を25%以上45%以下の範囲内とする。この範囲内において、光天井として必要な諸性能を満たすことが可能となる。
【0042】
図2は、本発明に係る不燃シートを光天井として用いた場合の例を模式的に示した断面説明図である。天井スラブ10に取付けた照明器具11から発した光は、不燃シート1によって拡散され、あたかも天井全体が照明器具であるかのように感じられる。不燃シート
1には、模様が印刷されているので、意匠的にも優れた効果を発揮する。
以下実施例に基いて、本発明に係る不燃シートについてさらに具体的に説明する。
【実施例】
【0043】
<実施例1>
樹脂フィルムとして、厚さ0.06mm、質量75[g/m2]、有機質量71.2[g/m2]のポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂フィルムを使用した。その一方の面に、スクリーン印刷法により印刷インキ層を形成した。絵柄は木目柄とした。この時、印刷インキ層の組成は、ウレタン樹脂73.6質量%、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂18.0質量%、有機顔料3.9質量%、無機顔料4.5質量%含むものとした。質量は、5.2g/m2(固形量)(有機質量4.9g/m2)とした。また、300mm角当たりの印刷面積は23%であった。
【0044】
続いて、印刷インキ層の上に表面保護層を形成した。表面保護層は、アクリル樹脂83.2質量%、無機質添加剤16.8質量%含むものとし、厚さは0.01mm、質量は9.6[g/m2](固形量)(有機質量8.2[g/m2])とした。
【0045】
裏面プライマー層は、ウレタン系樹脂62.3質量%、無機顔料を37.7質量%含むものとした。質量は、1.6[g/m2](固形量)(有機質量1.0[g/m2])とした。続いて、裏面プライマー層の上に接着剤層を設けた。接着剤層は、エチレン-酢酸ビニル共重合系樹脂を100質量%、無機顔料を0質量%含むものとした。接着剤層の質量は、40.0[g/m2](固形量)(有機質量40.0[g/m2])とした。
【0046】
ガラスクロスは、Eガラス98質量%、表面処理剤を2質量%含むものとした。織り方は平織りとし、糸番手は、縦糸を68.5[tex]、横糸を68.5[tex]とした。織密度は、縦糸を44[本/25mm]、横糸を33[本/25mm]とした。厚さは0.190[mm]とし、質量は、212.0[g/m2](有機質量4.2[g/m2])とした。
【0047】
<評価>
(不燃試験)
上記の不燃シートに対し、コーンカロリーメーターを用いた試験方法(ISO5660-1に準拠)にて燃焼性を確認した。結果、総発熱量は3.2[MJ/m2]であり、8[MJ/m2]を下回った。また、10秒以上継続して200[kW/m2]を超えることは無かった。また、加熱開始後20分間裏面に達する亀裂も発生しなかった。このように、本実施例に基づく不燃シートは、不燃材の規格を満足していることが確認できた。
【0048】
(光透過性)
本実施例の不燃シートは、紫外可視近赤外分光光度計UV-3600(島津製作所社製)を用いた評価の結果、全光線透過率は34%、拡散透過率は31%であった。また、印刷インキ層の300mm角当たりの印刷面積は23%であり、本実施例の不燃シートは、照明用途として使用した際に、十分な光透過性と面光源としての発光特性、および印刷インキ層由来のデザイン性を有していることが確認できた。
【符号の説明】
【0049】
1・・・不燃シート
2・・・化粧シート
3・・・表面保護層
4・・・印刷インキ層
5・・・樹脂フィルム
6・・・裏面プライマー層
7・・・接着剤層
8・・・ガラスクロス
10・・・天井スラブ
11・・・照明器具
12・・・光