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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】制御盤の交換方法
(51)【国際特許分類】
   H02B 3/00 20060101AFI20221004BHJP
   H02B 1/01 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
H02B3/00 D
H02B3/00 E
H02B1/01 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018222209
(22)【出願日】2018-11-28
(65)【公開番号】P2020089124
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】辻村 政則
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-82877(JP,A)
【文献】特開2017-46458(JP,A)
【文献】特開2016-152768(JP,A)
【文献】特開2014-147143(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 3/00
H02B 1/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天面を開放する第1の開口および底面を開放する第2の開口を備えた枠型をなすチャンネルベースの上に設置された既設の制御盤の近傍に、当該チャンネルベースの設置面との間に所定の空間を確保した状態で新たな制御盤を仮設置し、
前記チャンネルベースと仮設置された前記新たな制御盤との間を除く任意の位置に、前記チャンネルベースの天面と同等の高さに位置づけられるガイド面を備えた移動ガイド部材を設置し、
前記既設の制御盤を前記ガイド面に沿って前記第1の開口の一部が外部に開放される位置に移動させ、
前記第2の開口を介して前記チャンネルベース内に引き回されたケーブルを、外部に開放された前記第1の開口を介して前記新たな制御盤に引き回して接続し、
前記既設の制御盤に接続されているケーブルを当該既設の制御盤から取り外した後に、当該既設の制御盤を撤去し、
前記第1の開口を閉塞する位置に前記新たな制御盤を移動させる、
ことを特徴とする制御盤の交換方法。
【請求項2】
前記移動ガイド部材は、平坦な天面および底面を備え、当該天面と当該底面との対向方向に直交する長さ方向の寸法が当該天面と当該底面との間隔よりも長い略棒形状をなすそれぞれが独立した複数の部材であって、長さ方向を平行に揃えた状態で設置し、
前記既設の制御盤は、前記移動ガイド部材の長さ方向に沿って前記第1の開口の一部が外部に開放される位置に移動させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の制御盤の交換方法。
【請求項3】
前記移動ガイド部材は、平坦な天面および底面を備え、当該天面と当該底面との対向方向に直交する長さ方向の寸法が当該天面と当該底面との間隔よりも長い略棒形状をなす複数の部材を、長さ方向を平行に揃えた状態で、長さ方向における少なくとも一端側が連結部材によって連結された部材であって、長さ方向を前記既設の制御盤の移動方向に沿って設置し、
前記既設の制御盤は、前記移動ガイド部材の長さ方向に沿って前記第1の開口の一部が外部に開放される位置に移動させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の制御盤の交換方法。
【請求項4】
前記新たな制御盤は、前記チャンネルベースの天面と同等の高さに位置づけられる仮設置面を備えた仮設部材の上に仮設置する、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の制御盤の交換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、既設の制御盤を新たな制御盤に交換する、制御盤の交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、既設の制御盤を新たな制御盤に交換する各種の技術があった。具体的には、従来、たとえば、既設の制御盤(旧配電盤)と、当該既設の制御盤の前面に対向するように仮設置した新たな制御盤(新配電盤)との間にガイドレールを設置し、新たな制御盤に新ケーブルを接続した後に既設の制御盤に接続された旧ケーブルを取り外し、旧ケーブルが取り外された既設の制御盤を撤去した後に、ガイドレールを介して新たな制御盤を既設の制御盤の跡位置へ移動させるようにした技術があった(たとえば、下記特許文献1を参照。)。
【0003】
また、具体的には、従来、たとえば、設置床下からの新設ケーブルを、既設の制御盤から突出したチャンネルベースの余剰開口部を通して新たな制御盤の制御機器に接続し、既設ケーブルを既設の制御盤から取り外してから既設の制御盤を撤去し、既設の制御盤が設置されていた位置に新たな制御盤を移動するようにした技術があった(たとえば、下記特許文献2を参照。)。
【0004】
また、具体的には、従来、たとえば、床に形成されたケーブルピットに相対向する開口部と、最下部の前面に設けられたケーブル布設用穴と、ケーブル布設用穴を開放可能に閉塞する閉塞部材とを備えた筐体を有する制御盤およびその取替方法に関する技術があった(たとえば、下記特許文献3を参照。)。
【0005】
また、具体的には、従来、たとえば、制御盤(配電盤)の底部における四隅に設けられて当該制御盤の底部の水平状態を維持したまま当該制御盤を上下動させる上下動機構と、配電盤の下部に設けられて上下動機構を駆動する駆動機構と、を備えた制御盤および当該制御盤の取替え工法に関する技術があった(たとえば、下記特許文献4を参照。)。
駆動機構
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-152768号公報
【文献】特開2015-082877号公報
【文献】特開2014-147143号公報
【文献】特開2007-97340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1や特許文献2に記載された従来の技術は、いずれも、新たな制御盤を既設の制御盤の位置に移動させるために、専用の設備を用いなくてはならず、作業が煩雑であるという問題があった。また、上述した特許文献3に記載された従来の技術も同様に、交換を想定した専用の筐体を有する制御盤の交換に限定され、このような筐体を備えていない既設の制御盤の交換をすることは難しいという問題があった。
【0008】
さらに、上述した特許文献3に記載された従来の技術は、新ケーブルを接続するまでの間に新たな制御盤をどのように仮設しておくのかについて言及がなく、実用化においては不十分であるという問題があった。また、上述した特許文献4に記載された従来の技術は、上下動機構および駆動機構をあらかじめ備えた配電盤における交換技術であって、これらの機構を備えていない既設の制御盤の交換をすることは難しいという問題があった。
【0009】
また、上述した従来の技術は、いずれも、移動に際して既設の制御盤を上方へ移動させることを想定した技術であって、既設の制御盤の上方に充分な作業空間を確保できない作業環境において制御盤を交換することが難しいという問題があった。
【0010】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、既設の制御盤の設置環境にかかわらず、制御盤の交換作業を円滑かつ効率よくおこなうことができる制御盤の交換方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明にかかる制御盤の交換方法は、天面を開放する第1の開口および底面を開放する第2の開口を備えた枠型をなすチャンネルベースの上に設置された既設の制御盤の近傍に、当該チャンネルベースの設置面との間に所定の空間を確保した状態で新たな制御盤を仮設置し、前記チャンネルベースと仮設置された前記新たな制御盤との間を除く任意の位置に、前記チャンネルベースの天面と同等の高さに位置づけられるガイド面を備えた移動ガイド部材を設置し、前記既設の制御盤を前記ガイド面に沿って前記第1の開口の一部が外部に開放される位置に移動させ、前記第2の開口を介して前記チャンネルベース内に引き回されたケーブルを、外部に開放された前記第1の開口を介して前記新たな制御盤に引き回して接続し、前記既設の制御盤に接続されているケーブルを当該既設の制御盤から取り外した後に、当該既設の制御盤を撤去し、前記第1の開口を閉塞する位置に前記新たな制御盤を移動させる、ことを特徴とする。
【0012】
また、この発明にかかる制御盤の交換方法は、上記の発明において、前記移動ガイド部材は、平坦な天面および底面を備え、当該天面と当該底面との対向方向に直交する長さ方向の寸法が当該天面と当該底面との間隔よりも長い略棒形状をなすそれぞれが独立した複数の部材であって、長さ方向を平行に揃えた状態で設置し、前記既設の制御盤は、前記移動ガイド部材の長さ方向に沿って前記第1の開口の一部が外部に開放される位置に移動させる、ことを特徴とする。
【0013】
また、この発明にかかる制御盤の交換方法は、上記の発明において、前記移動ガイド部材は、平坦な天面および底面を備え、当該天面と当該底面との対向方向に直交する長さ方向の寸法が当該天面と当該底面との間隔よりも長い略棒形状をなす複数の部材を、長さ方向を平行に揃えた状態で、長さ方向における少なくとも一端側が連結部材によって連結された部材であって、長さ方向を前記既設の制御盤の移動方向に沿って設置し、前記既設の制御盤は、前記移動ガイド部材の長さ方向に沿って前記第1の開口の一部が外部に開放される位置に移動させる、ことを特徴とする。
【0014】
また、この発明にかかる制御盤の交換方法は、上記の発明において、前記新たな制御盤は、前記チャンネルベースの天面と同等の高さに位置づけられる仮設置面を備えた仮設部材の上に仮設置する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
この発明にかかる制御盤の交換方法によれば、既設の制御盤の設置環境にかかわらず、制御盤の交換作業を円滑かつ効率よくおこなうことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A】制御盤の一例を示す説明図(その1)である。
図1B】制御盤の一例を示す説明図(その2)である。
図1C】制御盤の一例を示す説明図(その3)である。
図2】制御盤の交換作業の一例を示す説明図(その1)である。
図3】制御盤の交換作業の一例を示す説明図(その2)である。
図4】制御盤の交換作業の一例を示す説明図(その3)である。
図5】制御盤の交換作業の一例を示す説明図(その4)である。
図6】制御盤の交換作業の一例を示す説明図(その5)である。
図7】制御盤の交換作業の一例を示す説明図(その6)である。
図8】制御盤の交換作業の一例を示す説明図(その7)である。
図9】制御盤の交換作業の一例を示す説明図(その8)である。
図10】制御盤の交換作業の一例を示す説明図(その9)である。
図11】制御盤の交換作業の一例を示す説明図(その10)である。
図12】移動ガイド部材の別の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる制御盤の交換方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0018】
(制御盤の構成)
まず、この発明にかかる実施の形態の制御盤の交換方法による交換対象とする制御盤の構成について説明する。この実施の形態において、既設の制御盤を新たな制御盤に交換する、制御盤の交換作業の対象とする既設の制御盤と新たな制御盤とは、同様の構成をなす。
【0019】
図1A図1Cは、制御盤の一例を示す説明図である。図1A図1Cにおいて、制御盤100は、筐体101を備えている。筐体101は、6つの方形面によって構成される直方体(長方体)形状をなす。筐体101において、互いに正対する面の外形は、同一形状をなす。具体的に、正面部と背面部、側面部どうし、天面部と底面部の外形はそれぞれ同一形状をなす。
【0020】
制御盤100は、筐体101の底面部101aを床面130上に設置されたチャンネルベース102の天面102aに当接させることによって、当該チャンネルベース102の上に設置されている。制御盤100(制御盤100の筐体101)とチャンネルベース102とは、図1Bに示すように、分離可能な別体で構成されている。
【0021】
制御盤100をチャンネルベース102の上に設置した状態における筐体101の正面部には、図示を省略する扉が設けられている。扉は、略板形状をなし、たとえば、図示を省略する蝶番などを用いて、筐体101の内側を外部に開放可能に閉塞するように設けられている。
【0022】
筐体101内には、制御機器103が設けられている。制御機器103は、たとえば、電磁開閉器、保護装置、配線用遮断器あるいは漏電遮断器などの遮断機によって実現することができる。また、制御機器103は、たとえば、電磁開閉器、保護装置、遮断器などの動作の監視や制御をおこなうPLC(Programmable Logic Controller)によって実現することができる。制御盤100に対する作業に際しては、扉を開放することによって筐体101内の制御機器103を外部に開放する。
【0023】
筐体101の底面部101aには、当該底面部101aを板厚方向に貫通する開口101bが設けられている。制御盤100およびチャンネルベース102が設置される床面130の下方には図示を省略するケーブル処理室が設けられており、制御盤100には、図1Cに示すように、当該ケーブル処理室から床面130を貫通する開口130aを介して引き回されたケーブル104が接続される。
【0024】
筐体101の下側に配置されるチャンネルベース102は、天面102aを開放する第1の開口102b、および、底面を開放する第2の開口(図示を省略する)を備えた矩形の枠型をなす。第1の開口102bと第2の開口とは連続している。チャンネルベース102の幅寸法および奥行き寸法は、制御盤100の筐体101の幅寸法および奥行き寸法とほぼ同寸法とされている。
【0025】
チャンネルベース102の奥行き寸法は、制御盤100の筐体101の奥行き寸法よりも長くてもよい。具体的には、たとえば、前回以前の制御盤100の交換作業に際して、交換後の制御盤100よりも交換前の制御盤100の筐体101の奥行き寸法が大きく、この交換前の制御盤100の筐体101のサイズに合わせたチャンネルベース102をそのまま利用して、交換後の制御盤100を設置した場合などに、チャンネルベース102の奥行き寸法が、制御盤100の筐体101の奥行き寸法よりも長い状況が生じる。
【0026】
制御盤100は、筐体101をチャンネルベース102の上に設置することにより、床面130からチャンネルベース102の高さの分だけ浮き上がった状態で設置されている。筐体101の底面部101aと床面130との間にチャンネルベース102を設けることにより、ケーブル処理室から引き回されたケーブル104を、筐体101内の制御機器103の位置に合わせて無理に屈曲させることなく、制御機器103に接続することができる。
【0027】
(制御盤100の交換作業の一例)
つぎに、既設の制御盤100を新たな制御盤100に交換する、制御盤100の交換作業の一例について説明する。図2図11は、制御盤100の交換作業の一例を示す説明図である。図2に示すように、交換対象とする既設の制御盤100Aは、別の制御盤100’の隣に当該別の制御盤100’と並べて配置されている。
【0028】
この発明にかかる交換方法による制御盤100の交換作業に際しては、まず、図3に示すように、交換対象とする既設の制御盤100Aの近傍に、新たな制御盤100Bを仮設置する。新たな制御盤100Bは、チャンネルベース102の天面102aと同等の高さに位置づけられる仮設置面を備えた仮設部材301の上に設置する。
【0029】
具体的に、仮設部材301は、たとえば、普通鋼を圧延加工することによって形成される圧延鋼材によって実現することができる。より具体的に、仮設部材301は、たとえば、H形鋼やI形鋼および溝形鋼(チャンネル)などのような、断面積の大きさと比較して長さ寸法が大きい棒状の鋼材である条鋼などによって実現することができる。
【0030】
仮設部材301は、既設の制御盤100Aの周囲であって、仮設部材301の上方に、新たな制御盤100Bを仮設置するスペースを確保できる位置に仮設置する。また、仮設部材301は、新たな制御盤100Bと既設の制御盤100Aとの間に別の設備や装置が介在しない状態で仮設置する。仮設部材301は、仮設部材301の上に仮設置される新たな制御盤100Bが、既設の制御盤100Aの正面部側において、既設の制御盤100Aと正対するように仮設置することが好ましい。
【0031】
新たな制御盤100Bは、既設の制御盤100Aとほぼ同じ向きで仮設置することが好ましい。具体的には、新たな制御盤100Bは、新たな制御盤100Bにおける扉の向きが、既設の制御盤100Aにおける扉の向きとほぼ同じになるように仮設置する。これにより、新たな制御盤100Bは、筐体101の背面を既設の制御盤100Aの正面に正対させた状態で仮設置される。
【0032】
つぎに、既設の制御盤100Aを移動させる。具体的には、既設の制御盤100Aは、たとえば、図5において矢印500で示すように、既設の制御盤100Aの背面側、すなわち、既設の制御盤100Aの後方に移動させる。これにより、既設の制御盤100Aは、既設の制御盤100Aと新たな制御盤100Bとの対向方向に沿って、新たな制御盤100Bから離間する方向に移動する。
【0033】
既設の制御盤100Aの移動に際しては、当該既設の制御盤100Aの位置が鉛直方向において変化しないように、図4に示すように、既設の制御盤100Aの移動をガイドする移動ガイド部材400を設置する。移動ガイド部材400は、平坦な天面および底面を備え、天面と底面との対向方向に直交する長さ方向の寸法が、天面と底面との間隔よりも長い略棒形状をなす。既設の制御盤100Aの移動に際して、移動ガイド部材400は、底面を床面130に当接させた状態で床面130に設置する。
【0034】
具体的に、移動ガイド部材400は、たとえば、普通鋼を圧延加工することによって形成される圧延鋼材によって実現することができる。より具体的に、移動ガイド部材400は、たとえば、H形鋼やI形鋼および溝形鋼(チャンネル)などのような、断面積の大きさと比較して長さ寸法が大きい棒状の鋼材である条鋼などによって実現することができる。
【0035】
移動ガイド部材400の底面から天面までの高さ寸法は、チャンネルベース102の高さ寸法とほぼ同じとされている。移動ガイド部材400の床面130から天面までの高さ寸法は、チャンネルベース102の高さ寸法と等しいことが好ましい。これにより、既設の制御盤100Aを、移動ガイド部材400の天面上を滑らせるようにして天面に沿って移動させることで、既設の制御盤100Aを高く持ち上げることが難しい環境においても、既設の制御盤100Aの鉛直方向における位置を大きく変動させることなく、既設の制御盤100Aを安定して移動させることができる。
【0036】
移動ガイド部材400は、それぞれが独立した複数の(たとえば、2本の)部材によって実現することができる。複数の移動ガイド部材400は、軌条(レール)のように、長さ方向を平行に揃えた状態で設置する。複数の移動ガイド部材400を用いることにより、既設の制御盤100Aの下側に空間を確保した状態で、当該既設の制御盤100Aを安定して移動させることができる。
【0037】
既設の制御盤100Aは、後方に移動させるものに限らない。既設の制御盤100Aは、既設の制御盤100Aと新たな制御盤100Bとの対向方向に沿って新たな制御盤100Bに近づく方向以外の方向に移動させるものであればよい。具体的には、新たな制御盤100Bを既設の制御盤100Aの正面側に仮設置した場合、既設の制御盤100Aを側方に移動させてもよい。あるいは、この場合、既設の制御盤100Aを斜め前方や斜め後方に移動させてもよい。複数の移動ガイド部材400は、たとえば、水平面内において既設の制御盤100Aの移動方向に直交する方向(以下、適宜「移動幅方向」という)における既設の制御盤100Aの寸法と同等以下の間隔で対向し、対をなすように設置する。
【0038】
具体的には、たとえば、既設の制御盤100Aを背面側に移動させる場合は、既設の制御盤100Aの幅方向が移動幅方向となる。この場合、対をなす移動ガイド部材400は、既設の制御盤100Aの筐体101の幅寸法と同等以下の間隔で対向するように設置する。また、具体的には、たとえば、既設の制御盤100Aを側方に移動させる場合は、既設の制御盤100Aの奥行き方向(水平面内において幅方向に直交する方向)が移動方向となる。この場合、対をなす移動ガイド部材400は、既設の制御盤100Aの筐体101の奥行き寸法と同等以下の間隔で対向するように設置する。
【0039】
あるいは、具体的には、たとえば、既設の制御盤100Aを、筐体101の対角方向に移動させる場合は、筐体101の対角方向が移動方向となる。この場合、対をなす移動ガイド部材400は、既設の制御盤100Aの筐体101の対角寸法と同等以下の間隔で対向するように設置する。
【0040】
移動幅方向が、筐体101の対角方向のように、筐体101の側面(あるいは、正面や背面)の面方向に対して傾斜した方向である場合、対をなす移動ガイド部材400が対向する間隔は、既設の制御盤100Aの移動方向に応じて異なる。既設の制御盤100Aの筐体101が、幅寸法よりも奥行き寸法が小さい長方形をなす場合、移動幅方向に沿って対向する対をなす移動ガイド部材400の間隔は、既設の制御盤100Aの筐体101の対角方向に直交する方向に移動させる場合に、もっとも大きくなり得る。
【0041】
移動ガイド部材400を、それぞれが分離独立した部材によって実現することにより、既設の制御盤100Aの大きさや移動方向および既設の制御盤100Aの周囲の状況などに応じて、対をなす移動ガイド部材400の間隔を任意に調整することができる。そして、これにより、常に、既設の制御盤100Aが安定する状態で当該既設の制御盤100Aを支持することができる。
【0042】
このように、従来の方法とは異なり、既設の制御盤100Aの任意の方向への移動を可能とすることにより、制御盤100の交換作業にかかる自由度を確保することができる。そして、これにより、既設の制御盤100Aの移動方向が制限されることによって狭小な空間で作業をせざるを得ない場合と比較して、作業性を向上させ、作業効率の向上を図ることができる。
【0043】
既設の制御盤100Aは、既設の制御盤100Aが載置されているチャンネルベース102の第1の開口102bが、ケーブル104を通すことができる程度に開放されるまで移動させる。また、既設の制御盤100Aは、筐体101の底面部101aの開口の内側の縁とチャンネルベース102との間に、既設のケーブル104を挟み込まない程度に移動させる。これにより、図6において斜線で示すように、新たな制御盤100Bに接続するケーブル700を通すためのケーブル布設ルート600を確保することができる。
【0044】
そして、確保したケーブル布設ルート600を介して、図7に示すように、新たな制御盤100Bに接続するケーブル700を、ケーブル処理室から引き回して接続する。その後、図8に示すように、既設の制御盤100Aに接続されているケーブル104を、既設の制御盤100Aから取り外し、撤去する。これにより、ケーブル処理室から引き回されたケーブル700のみが、新たな制御盤100Bに接続された状態となる。
【0045】
つぎに、図9に示すように、既設の制御盤100Aを撤去する。そして、新たな制御盤100Bを、図10に矢印1000で示す方向に移動させる。具体的には、図10および図11に示すように、既設の制御盤100Aが設置されていた位置に、新たな制御盤100Bを移動させる。新たな制御盤100Bの移動に際しては、新たな制御盤100Bを仮設置した位置と、既設の制御盤100Aが設置されていた位置と、の間に、移動ガイド部材400と同様の移動ガイド部材(図示を商略する)を設置する。
【0046】
この際、新たな制御盤100Bを仮設置した位置と既設の制御盤100Aが設置されていた位置との間に、既設の制御盤100Aの位置を移動させる際にもちいた移動ガイド部材400を設置してもよい。これにより、制御盤100の交換作業に用いる部材の数を抑えることができる。移動ガイド部材400は、新たな制御盤100Bの移動に先立って撤去してもよい。
【0047】
これにより、新たな制御盤100Bの鉛直方向における位置が大きく変動することを防止できる。そして、これにより、新たな制御盤100Bの設置位置の上方に充分な空間を確保できない環境においても、新たな制御盤100Bを確実に移動させることができる。
【0048】
新たな制御盤100Bは、新たな制御盤100Bに接続されたケーブル700を、ケーブル処理室側から引っ張りながら移動させる。これにより、新たな制御盤100Bに接続されたケーブル700がチャンネルベース102内で過剰に折り曲げられた状態となることを回避できる。そして、これによって、ケーブル700を介して新たな制御盤100Bに出力される制御信号を、確実に新たな制御盤100Bに伝達することができる。
【0049】
(移動ガイド部材の別の構成)
つぎに、移動ガイド部材の別の構成について説明する。上述した実施の形態においては、それぞれが分離独立した部材によって、対をなす移動ガイド部材400を実現する例について説明したが、これに限るものではない。
【0050】
図12は、移動ガイド部材の別の構成を示す説明図である。図12に示すように、対をなす移動ガイド部材400は、長さ方向における一端側において、連結部材1200によって連結されている。対をなす移動ガイド部材400を連結する連結部材1200は、当該移動ガイド部材400と同じ鋼材によって実現することができる。対をなす移動ガイド部材400を長さ方向における一端側において連結した場合、対をなす移動ガイド部材400と連結部材1200とは、略コの字形状をなす。
【0051】
対をなす移動ガイド部材400は、長さ方向における両端側において、連結部材1200によって連結されていてもよい。対をなす移動ガイド部材400を長さ方向における両端側において連結した場合、対をなす移動ガイド部材400と連結部材1200とは、略「ロ」の字形状をなす。
【0052】
このように、対をなす移動ガイド部材400を連結部材1200によって連結して一体化することによって、対をなす移動ガイド部材400の間隔を常に一定に維持することができる。これにより、対をなす移動ガイド部材400の設置にかかる作業者の負担軽減を図ることができる。また、対をなす移動ガイド部材400の運搬にかかる作業者の負担軽減を図ることができる。
【0053】
上述した実施の形態においては、電磁開閉器、保護装置、遮断器およびPLCなどによって実現される制御機器103を筐体101内に収容する制御盤100の交換方法について説明したが、この発明にかかる交換対象とする制御盤100は、このような制御盤100に限るものではない。この発明にかかる制御盤100の交換方法は、たとえば、高圧の電気を受電し、二次側に接続された電気設備に応じた電圧に変換してから分電盤へと分配する配電盤などの各種の盤の交換に適用することができる。
【0054】
以上説明したように、この実施の形態の制御盤100の交換方法は、チャンネルベース102の上に設置された既設の制御盤100Aの近傍に、当該チャンネルベース102の設置面との間に所定の空間を確保した状態で新たな制御盤100Bを仮設置し、チャンネルベース102と仮設置された新たな制御盤100Bとの間を除く任意の位置に、チャンネルベース102の天面と同等の高さに位置づけられるガイド面を備えた移動ガイド部材400を設置する。
【0055】
そして、既設の制御盤100Aをガイド面に沿って第1の開口102bの一部が外部に開放される位置に移動させ、第2の開口を介してチャンネルベース102内に引き回されたケーブル104を、外部に開放された第1の開口102bを介して新たな制御盤100Bに引き回して接続してから、既設の制御盤100Aに接続されているケーブル104を当該既設の制御盤100Aから取り外した後に、当該既設の制御盤100Aを撤去する。その後、第1の開口102bを閉塞する位置に新たな制御盤100Bを移動させる、ようにしたことを特徴としている。
【0056】
この発明にかかる実施の形態の制御盤100の交換方法によれば、チャンネルベース102の天面と同等の高さに位置づけられるガイド面を備えた移動ガイド部材400を用いることにより、制御盤100の交換のための専用の機構をあらかじめ備えていない既設の制御盤100Aを、鉛直方向における位置を大きく変動させることなく移動させることができる。これにより、既設の制御盤100Aの上方に充分な作業空間を確保できない場合など、既設の制御盤100Aの設置環境にかかわらず、既設の制御盤100Aを移動させることができる。
【0057】
また、この発明にかかる実施の形態の制御盤100の交換方法によれば、チャンネルベース102と仮設置された新たな制御盤100Bとの間を除く任意の位置に移動ガイド部材400を設置し、第1の開口102bの一部が外部に開放される位置まで既設の制御盤100Aを移動させればよいため、既設の制御盤100Aの周囲に充分な空間がなくても、既設の制御盤100Aとケーブル104との接続を解除する前に、新たな制御盤100Bとケーブル104とを接続することができる。これにより、制御盤100が長時間使用できなくなることを回避できる。
【0058】
また、この発明にかかる実施の形態の制御盤100の交換方法によれば、移動ガイド部材400を、チャンネルベース102とは別体とすることにより、既設の制御盤100Aの周囲の状況に応じて、移動ガイド部材400を任意の位置に設置することができる。これにより、制御盤100の交換作業における高い自由度を確保することができ、作業性の向上を図ることができる。
【0059】
また、これにより、「既設の制御盤100Aの後方のみ」あるいは「既設の制御盤100Aの前方のみ」のように、既設の制御盤100Aの退避位置を特定の場所のみに制限することなく制御盤100の交換作業をおこなうことができるので、制御盤100の交換作業における高い自由度を確保することができ、作業性の向上を図ることができる。
【0060】
また、この発明にかかる実施の形態の制御盤100の交換方法によれば、移動ガイド部材400を、チャンネルベース102とは別体とすることにより、既設の制御盤100Aの移動時のみに設置すればよい。これにより、既設の制御盤100Aを一時的に移動させる余剰開口を備えていない既設のチャンネルベース102をそのまま利用して新たな制御盤100Bを設置することができる。
【0061】
このように、この発明にかかる実施の形態の制御盤100の交換方法によれば、既設の制御盤100Aが交換のための専用の機構を備えていない場合や、既設の制御盤100Aの上方に充分な作業空間を確保できない場合など、作業環境に制限を受けることなく、制御盤100の交換作業を円滑かつ効率よくおこなうことができる。
【0062】
また、この発明にかかる実施の形態の制御盤100の交換方法は、移動ガイド部材400は、平坦な天面および底面を備え、当該天面と当該底面との対向方向に直交する長さ方向の寸法が当該天面と当該底面との間隔よりも長い略棒形状をなすそれぞれが独立した複数の部材であって、長さ方向を平行に揃えた状態で設置し、既設の制御盤100Aを、移動ガイド部材400の長さ方向に沿って第1の開口102bの一部が外部に開放される位置に移動させる、ようにしたことを特徴としている。
【0063】
この発明にかかる実施の形態の制御盤100の交換方法によれば、既設の制御盤100Aの大きさや移動方向に応じて、対をなす移動ガイド部材400の間隔を任意に調整することができる。これにより、常に、移動幅方向における両端など、既設の制御盤100Aが安定する状態で当該既設の制御盤100Aを支持することができる。
【0064】
また、この発明にかかる実施の形態の制御盤100の交換方法は、平坦な天面および底面を備え、当該天面と当該底面との対向方向に直交する長さ方向の寸法が当該天面と当該底面との間隔よりも長い略棒形状をなす複数の部材を、長さ方向を平行に揃えた状態で、長さ方向における少なくとも一端側が連結部材1200によって連結された部材によって移動ガイド部材400を実現し、当該移動ガイド部材400を、長さ方向を既設の制御盤100Aの移動方向に沿って設置し、既設の制御盤100Aを、移動ガイド部材400の長さ方向に沿って第1の開口102bの一部が外部に開放される位置に移動させる、ようにしたことを特徴としている。
【0065】
この発明にかかる実施の形態の制御盤100の交換方法によれば、対をなす移動ガイド部材400を連結して一体化することによって、対をなす移動ガイド部材400の間隔を常に一定に維持することができる。これにより、対をなす移動ガイド部材400の設置にかかる作業者の負担軽減を図ることができる。
【0066】
また、この発明にかかる実施の形態の制御盤100の交換方法は、新たな制御盤100Bを、チャンネルベース102の天面と同等の高さに位置づけられる仮設置面を備えた仮設部材301の上に仮設置する、ようにしたことを特徴としている。
【0067】
この発明にかかる実施の形態の制御盤100の交換方法によれば、チャンネルベース102の天面と同等の高さに位置づけられる仮設置面を備えた仮設部材301の上に新たな制御盤100Bを仮設置することにより、ケーブル104を接続した新たな制御盤100Bを水平移動させるだけで、第1の開口102bを閉塞する位置に位置づけることができる。これにより、鉛直方向における位置を大きく変動させることなく新たな制御盤100Bを移動させることができるので、新たな制御盤100Bの移動にかかる作業負担の軽減を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上のように、この発明にかかる制御盤の交換方法は、既設の制御盤を新たな制御盤に交換する制御盤の交換方法に有用であり、特に、作業空間が狭いなどの制限がある作業環境における制御盤の交換方法に適している。
【符号の説明】
【0069】
100 制御盤
100A 既設の制御盤
100B 新たな制御盤
101 筐体
102 チャンネルベース
103 制御機器
104 ケーブル
301 仮設部材
400 移動ガイド部材
600 ケーブル布設ルート
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12