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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】間接転写プリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/325 20060101AFI20221004BHJP
   B65H 23/188 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
B41J2/325 A
B65H23/188
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018226438
(22)【出願日】2018-12-03
(65)【公開番号】P2020089979
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】星野 文哉
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-132148(JP,A)
【文献】特開2007-001048(JP,A)
【文献】特開2013-189308(JP,A)
【文献】特開2006-321071(JP,A)
【文献】特許第3063421(JP,B2)
【文献】特開昭63-257660(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/325
B65H 23/188
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に剥離可能な転写層が少なくとも設けられた中間転写フィルムを用い、
インクリボンを加熱して前記中間転写フィルム上に画像形成するためのサーマルヘッドと、
前記中間転写フィルム上に形成された画像を被転写体に再転写するための再転写手段と、前記中間転写フィルムを搬送するための搬送パルスを生成する搬送制御部と、
前記搬送パルスの数に応じて前記中間転写フィルムを往復搬送可能な搬送手段と、
前記中間転写フィルムに設けられたセンサマークを検出する、少なくとも2箇所に設けられたセンサと、
前記中間転写フィルムと常時接触するローラシャフトの少なくとも1本に連結され、該ローラシャフトの回転角を検出するロータリーエンコーダと、
前記中間転写フィルムが搬送されたときに前記ロータリーエンコーダにより検出された回転角のデータと、その際に供給された搬送パルス数のデータとを使用して演算と判定を行う演算判定部と、を備えた間接転写プリンタであって、
イニシャライズ動作時において、少なくとも2箇所の前記センサ間を前記センサマークが通過する様に前記中間転写フィルムを搬送し、通過に必要とされた搬送パルス数と、前記ロータリーエンコーダで検出した回転角から、前記演算判定部において所定数の規定搬送パルスあたりの回転角を算出して規定回転角とし、
前記中間転写フィルムへの画像形成時に、前記搬送手段に前記規定搬送パルス分の搬送パルスが供給されるごとに、前記演算判定部においてそのときのロータリーエンコーダの実際の回転角と前記規定回転角とを比較し、その差が所定の許容値以下の場合は搬送誤差なしと判定し、所定の限界値よりも大きい場合は搬送エラーと判定し、前記許容値よりも大きく前記限界値以下である場合は補正可能と判定し、
前記搬送制御部において、前記判定結果に基づいて、搬送誤差なしと判定された場合は当該規定搬送パルスの次に供給される規定搬送パルスの数を変更せず、
搬送エラーと判定された場合は画像形成動作を中止し、
補正可能と判定された場合は当該規定搬送パルスの次に供給される規定搬送パルスの数を、前記規定回転角と前記ロータリーエンコーダの実際の回転角の差が小さくなる様に修正することを特徴とする間接転写プリンタ。
【請求項2】
前記センサが、前記中間転写フィルムの経路の前記サーマルヘッドに対して上流側と下流側にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1に記載の間接転写プリンタ。
【請求項3】
前記中間転写フィルムへの画像形成時に、次の画像形成時に使用される前記センサマークを前記中間転写フィルムにサーマルヘッドにより転写記録することを特徴とする請求項1または2に記載の間接転写プリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばカード、小冊子、帳票類、成形品、紙製品等の加工対象物に画像を転写する間接転写プリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクリボンを用いて、サーマルヘッド印字による画像形成を行なう手法は既に公知の技術であり、カードへの印字や写真画像の出力、シール類への印字など多様な用途に用いられている。しかし、これらの印字手法の多くは、特定の受像層を媒体表面に設ける必要があり、その組合せが限定されるという問題があった。
【0003】
そこで、インクリボンを用いて、特定の受像層を有する中間転写フィルム上に画像を形成し、その後、被転写体に再転写することにより、最終印画媒体の基材を選ばずに多色画像を形成することが可能な手法として、間接転写方式が提案されてきた(例えば、特許文献1)。
【0004】
このようなプリンタは、上位装置から外部バスを通じて送られてきた印画データを、バッファメモリ上に展開し、サーマルヘッドの各々の発熱素子に対して、送られてきた印画データに応じた電流パルスを供給することで発熱素子を発熱させ、インクリボンから中間転写フィルムへ画像を転写形成する。
【0005】
間接転写方式は、装置構成上の特徴として、ロール状とされた長尺の中間転写フィルムを巻き出しながら搬送し、多色印刷での色重ねのために往復移動させる機構を有する。この中間転写フィルムの搬送において、搬送誤差によるドットの位置ズレや色ズレを生じることがある。搬送誤差は様々な要因によって生じ、例えば搬送ローラのスリップや蛇行など機構に起因するもの、中間転写フィルムロールの巻緩み、巻ズレなどの媒体に起因するものなどがある。
【0006】
この搬送誤差を補正する方法として、例えば、インクリボンからセンサマークを転写し、イニシャライズ動作時に往復搬送しながらセンサでこのセンサマークを検出し、そのタイミングと搬送モータに供給する回転パルス数を比較して最適な回転パルス数となる様に補正する方法が行われている。しかしこの方法では、イニシャライズ動作時と実際に印字する際の動作で、巻緩みなどにより誤差が生じた場合に補正ができず、色ズレの原因となることがあった。
【0007】
また、例えば特許文献2には、ニップローラにフィルムの回転量をリアルタイムで検知するエンコーダを搭載し、その回転量に応じて印字のための電流印加のタイミングを制御する方式もあるが、フィルムの微妙なズレに応じて印画パルスを送り込むタイミングを変える必要があり、適切な冷却期間や補熱期間などを考慮する高度な制御が必要となるほか、濃度の補正は可能であるが、搬送誤差による位置ズレそのものの補正は困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第3063421号公報
【文献】特開昭63-257660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記事情を考慮してなされたもので、その課題とするところは、間接転写プリンタにおいて、中間転写フィルムの搬送誤差を印字動作時にリアルタイムで検出し、搬送量をリアルタイムで修正することで、搬送誤差に起因する印字位置ズレや色重ねズレを抑制することができる間接転写プリンタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の請求項1に係る発明は、
基材上に剥離可能な転写層が少なくとも設けられた中間転写フィルムを用い、
インクリボンを加熱して前記中間転写フィルム上に画像形成するためのサーマルヘッドと、
前記中間転写フィルム上に形成された画像を被転写体に再転写するための再転写手段と、前記中間転写フィルムを搬送するための搬送パルスを生成する搬送制御部と、
前記搬送パルスの数に応じて前記中間転写フィルムを往復搬送可能な搬送手段と、
前記中間転写フィルムに設けられたセンサマークを検出する、少なくとも2箇所に設けられたセンサと、
前記中間転写フィルムと常時接触するローラシャフトの少なくとも1本に連結され、該ローラシャフトの回転角を検出するロータリーエンコーダと、
前記中間転写フィルムが搬送されたときに前記ロータリーエンコーダにより検出された回転角のデータと、その際に供給された搬送パルス数のデータとを使用して演算と判定を行う演算判定部と、を備えた間接転写プリンタであって、
イニシャライズ動作時において、少なくとも2箇所の前記センサ間を前記センサマークが通過する様に前記中間転写フィルムを搬送し、通過に必要とされた搬送パルス数と、前記ロータリーエンコーダで検出した回転角から、前記演算判定部において所定数の規定搬送パルスあたりの回転角を算出して規定回転角とし、
前記中間転写フィルムへの画像形成時に、前記搬送手段に前記規定搬送パルス分の搬送パルスが供給されるごとに、前記演算判定部においてそのときのロータリーエンコーダの実際の回転角と前記規定回転角とを比較し、その差が所定の許容値以下の場合は搬送誤差なしと判定し、所定の限界値よりも大きい場合は搬送エラーと判定し、前記許容値よりも大きく前記限界値以下である場合は補正可能と判定し、
前記搬送制御部において、前記判定結果に基づいて、搬送誤差なしと判定された場合は当該規定搬送パルスの次に供給される規定搬送パルスの数を変更せず、
搬送エラーと判定された場合は画像形成動作を中止し、
補正可能と判定された場合は当該規定搬送パルスの次に供給される規定搬送パルスの数を、前記規定回転角と前記ロータリーエンコーダの実際の回転角の差が小さくなる様に修正することを特徴とする間接転写プリンタである。
【0011】
また、本発明の請求項2の発明は、
前記センサが、前記中間転写フィルムの経路の前記サーマルヘッドに対して上流側と下流側にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1に記載の間接転写プリンタである。
【0012】
また、本発明の請求項3に係る発明は、
前記中間転写フィルムへの画像形成時に、次の画像形成時に使用される前記センサマークを前記中間転写フィルムにサーマルヘッドにより転写記録することを特徴とする請求項1または2に記載の間接転写プリンタである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1に記載の発明によれば、イニシャライズ動作時に、搬送パルスに対する中間転写フィルムの実際の搬送量をロータリーエンコーダの回転角から算出して規定回転角を算出して、実際の画像形成動作時には、一定の規定搬送パルス数ごとに規定回転角
と実際の中間転写フィルムの搬送量を示すロータリーエンコーダの回転角を比較して、その差を評価し、イニシャライズ時の搬送動作に対しての変動を評価して、同等の搬送が行われているか、搬送エラーとすべきか、補正可能な範囲かを判定し、補正可能な範囲であれば規定搬送パルスのパルス数を修正して規定回転角に近づくようにすることで、実際の画像形成動作時にリアルタイムで搬送ズレを補正し、画像の位置ズレや色重ねズレの発生を抑制し、補正が不可能な範囲であれば搬送エラーとして動作を中止することで、品質不良の画像がプリントされてしまうことがなく、中間転写フォルムやインクリボンが無駄にならず、作業時間も削減できる。
【0014】
また請求項2に記載の発明によれば、実際に画像形成を行うときに中間転写フィルムが通過する経路中の、サーマルヘッドを上流側、下流側から挟んだ位置にセンサを設けることで、実際の画像形成時により近い状態で規定回転角を設定でき、より好ましい。
【0015】
また請求項3に記載の発明によれば、中間転写フィルムに画像形成する際に、センサマークを転写記録しておくことで、次の画面の画像形成を行う際に記録されたセンサマークを使用することができ、効率的である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の間接転写プリンタの基本構成例を示す概略図である。
図2】中間転写フィルムに形成されたドットの配置の例の模式図である。
図3】本発明の間接転写プリンタの動作の概略フローチャートである。
図4】搬送パルスの加減を行ったときの搬送長の変化を説明する説明図である。
図5】搬送パルスを調整した場合の搬送状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。なお、全ての図面を通じて、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0018】
図1は、本発明の間接転写方プリンタの基本構成例を示す概略図である。
【0019】
図1の間接転写プリンタ(以下、単にプリンタとも言う)1において、少なくとも色素を含むインク層を有するインクリボン10と、基材上に少なくとも転写層を剥離可能に設けた中間転写フィルム20と、がそれぞれの巻出部11、21から供給され、中間転写フィルム20は、搬送制御部(図示せず)から供給される搬送パルスに基づき往復搬送の搬送力を供給する主搬送ローラ30を経由してインクリボン10と対向配置され、サーマルヘッド40とプラテンローラ41に挟持されて中間転写フィルム20の転写層上に印画データに基づいた画像形成が実施される。
【0020】
ここで、インクリボン10には、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色素を含むインク層の他に、蛍光色素インク層などの特殊インク層や熱可塑性樹脂からなる接着剤層などが面順次に設けられてあっても良く、前記各種インク層を用いて、中間転写フィルム20上に画像形成した後、形成された画像上に前記接着層を熱転写して設けても良い。
【0021】
また、中間転写フィルム20には、前記色素を含むインク層の受容層の他に、剥離層、保護層、印刷層、OVD(Optical Variable Device)層、中間層などの各種層が設けられてあってもよい。
【0022】
上述のようにして、中間転写フィルム20の画像形成された部分は、ヒートローラ50の部位まで搬送され、搬送テーブル80によって搬送された被転写体70に対向配置され
、再転写手段であるヒートローラ50によって中間転写フィルム20から被転写体70に対して画像が再転写される。その後、インクリボン10、中間転写フィルム20はそれぞれの巻取部12、22に巻き取られる。ただし中間転写フィルム20は、次の画面への画像形成を行う場合はサーマルヘッド40の位置まで巻戻される。
【0023】
中間転写フィルム20が通過する経路中の、サーマルヘッド40に対して下流側で通常状態では常時中間転写フィルム20に接しているローラシャフト31に、ロータリーエンコーダ32が連結され、ローラシャフト31と共に回転してその回転角を検出することができる。
【0024】
また中間転写フィルム20が通過する経路の、サーマルヘッド40に対して上流側と下流側にセンサs1、s2が設けられ、中間転写フィルム20に設けられたセンサマークを読み取り、イニシャライズ動作や画像記録動作の際に中間転写フィルムの位置合わせを行うことができる。
【0025】
イニシャライズ動作の際には、中間転写フィルム20を巻戻し方向または巻出し方向あるいはその両方向に適宜搬送して、センサマークをセンサs1、s2の両方を通過させて検出し、センサマークの位置を基準として中間転写フィルム20の位置合わせを行うことができる。
【0026】
ロータリーエンコーダ32は、図1に示す様にサーマルヘッドの下流側のローラシャフト31に連結するだけでなく、上流側のローラシャフトに連結されても良く、また上流側、下流側の両方に、すなわち2箇所に設けても良い。ロータリーエンコーダ32の出力は演算判定部(図示せず)において搬送ズレの算出と判定に用いられる。
【0027】
中間転写フィルムのセンサマークは、製造時に一定ピッチのセンサで検出可能な黒パッチを印刷するなどして設けることができる。また印画動作中にサーマルヘッドでインクリボンから墨インクを転写してセンサマークを設けることもできる。またこれらを組み合わせて使用することもでき、例えばあらかじめ印刷で設けたセンサマークをサーマルヘッドでの印画の位置合わせに用い、その際にサーマルヘッドで設けた別のセンサマークをヒートローラでの再転写の位置合わせに用いる、といった使用方法を採用することもできる。
【0028】
図2は、上記のような構成の間接転写プリンタで中間転写フィルム20に形成された画像の画素であるドットの配置の例の模式図である。中間転写フィルム20の搬送ムラなどがない場合、ドットは図2(a)の様にムラなく均一に2次元に配列され、搬送方向のピッチaは一定である。これに対し、途中で搬送ムラが生じると、例えば図2(b)のように搬送方向のピッチがa→a´に変動するため、ドットの配列に乱れが生じ、印画ムラとなって見えてしまう。またそれに応じて中間転写フィルムが搬送される長さも変動する。さらに、色重ねにより次の色のドットが重なると、ドットの重なり方が変化するため、色ムラとなって認識されてしまうことになる。
【0029】
この搬送ムラが生じる原因は様々であり、例えば中間転写フィルムの製造時の巻き取りテンションのバラツキや、輸送時の衝撃、保存環境の不良などといった、実際の使用前に生じた原因によるもののほか、間接転写プリンタでの使用中に、間接転写プリンタ特有の動作である中間転写フィルムの巻出し、巻戻しを伴う往復移動の際に、巻ズレや巻戻し時のテンション不足などが生じて、それを原因として生じることもある。搬送ムラは、サーマルヘッドによる印画時のように微細なピッチで中間転写フィルムを搬送しながら印画する際に特に影響が出やすい。
【0030】
この様な搬送ムラを効果的に補正する方法について、図3の本発明の間接転写プリンタ
の動作の概略フローチャートを用いて詳細に説明する。
【0031】
間接転写プリンタでの印画に際しては、まずイニシャライズ動作で各機構部分の初期化を行うと共に、中間転写フィルムを往復移動させ、センサマークの検出を行う。このときのセンサマークは、前述の様なあらかじめ印刷で形成されたもの、サーマルヘッドによる熱転写で間接転写プリンタの前回の使用時に設けたもの、のどちらでも使用することができる。
【0032】
ただし、あらかじめ印刷で設けたセンサマークは中間転写フィルム全体に亘って設けられているのに対し、サーマルヘッドで設けたセンサマークは、サーマルヘッドで画像形成された使用済みの部分にしか設けられていないため、サーマルヘッドで設けたセンサマークを使用すると、同じセンサで同時に中間転写フィルムの未使用部分の頭出しも行うことができるため効率的である。
【0033】
センサs1でセンサマークを検出したら、中間転写フィルムを巻取部側に搬送しセンサs2で同じセンサマークを検出する。
【0034】
その際に、主搬送ローラを駆動するために供給される搬送パルスの数をカウントし、センサマークがセンサs1からセンサs2に移動するまでの搬送パルス数NPsを求める。それと共に、そのときのローラシャフトに連結されたロータリーエンコーダでその回転角Nθsを検出する。
【0035】
続いて演算判定部で、あらかじめ定めた規定搬送パルス数nPsあたりのロータリーエンコーダの回転角、すなわち規定回転角nθsを算出し、合わせて回転角の誤差の許容値θp、限界値θrを設定する。
【0036】
イニシャライズ動作終了後、印画動作を開始する。インクリボンと中間転写フィルムを印画開始位置に搬送し、サーマルヘッドを圧接して印画を開始する。印画中には規定搬送パルス数nPs分の搬送パルスが搬送制御部から供給されるごとに、ロータリーエンコーダで検出した回転角θaを規定回転角nθsとを演算判定部で比較し、その誤差を評価する。
【0037】
イニシャライズ時と同様に搬送が行われれば、ロータリーエンコーダで検出した回転角θaと規定回転角nθsとは等しくなるが、例えば図2の例のように搬送ムラが生じるとその分搬送長が長くなり、ロータリーエンコーダで検出した回転角θaも大きくなり、逆の場合は短くなる。すなわち、ロータリーエンコーダで検出した回転角θaと規定回転角nθsとを比較することで、搬送ムラの発生を検出できる。
【0038】
そして検出された誤差が許容値θp以内の場合、すなわち
|θa-nθs|≦θp
の関係式を満たす場合は、誤差はわずかで許容範囲内であると判定し、そのまま1画面分の印画動作を継続する。
【0039】
誤差が許容値θpよりも大きく、限界値θr以下である場合、すなわち
θp<|θa-nθs|≦θr
の関係式を満たすときは、誤差はあるが補正可能な範囲であると判定し、規定搬送パルス数nPsを、誤差が小さくなる方向に必要な数kだけ増減させ、
nPs → nPs±k
と修正する。その後、印画動作を同様に続行する。
【0040】
誤差が限界値θrよりも大きい場合は、すなわち
θr<|θa-nθs|
を満たす場合は、誤差が大きく、補正が困難と判断して搬送エラーと判定し、印画動作を中止する。
【0041】
図4は、前述の動作フローにおいて、規定搬送パルスの加減を行ったときの搬送長の変化を説明する説明図である。図4(a)は、ある規定搬送パルスによる搬送中に巻緩みなどの影響で搬送長が中段のチャートのように伸びた場合を示している。このとき、規定搬送パルス数nPsを、例えばkパルス減らすことで、搬送長を本来の搬送長に近づけることができ、画像形成におけるドットの配置の乱れを抑制でき、印画ムラ、色ムラを減少させることができる。
【0042】
これは図4(b)の様に、搬送長が短くなった場合も同様であり、その場合は規定搬送パルスnPsに例えばk´パルスを加えることで搬送長を長くし、本来の搬送長に近づけることができ、画像形成におけるドットの配置の乱れを抑制でき、印画ムラ、色ムラを減少させることができる。
【0043】
この結果本発明の間接転写プリンタにおいて、図5に示す様に、中間転写フィルムの正常な搬送が行われている場合の搬送長に対し、例えば巻緩みなどの原因で搬送長が長くなる搬送ズレが生じたとき、リアルタイムで修正が行われないと中段のチャートのようにズレが累積して大きな搬送ズレとなり、位置ズレ、色ムラとなってしまうが、搬送長のズレを所定の規定搬送パルスごとにロータリーエンコーダで検出してリアルタイムで修正を加えることで、下段のチャートの様に、搬送ズレが累積することなく、ドットの位置ズレが最小限に抑えられ、色ムラの発生を大きく抑制することが可能となる。またこのとき、単に搬送パルスを減らすだけでなく、例えば搬送ムラで伸びた分を吸収する様に搬送パルスを減らすようにすることもできる。
【0044】
以上説明した様に、本発明の間接転写プリンタにおいては、実際の画像形成動作中に、所定の規定搬送パルスごとに中間転写フィルムの実際の搬送長の変動を規定搬送パルスのパルス数に反映させて、搬送ムラの発生をリアルタイムで抑制でき、搬送ムラに起因する画像の位置ズレや色重ねズレの発生を効果的に抑制することができる。
【符号の説明】
【0045】
1・・・間接転写プリンタ
10・・・インクリボン
20・・・中間転写フィルム
11、21・・・巻出部
12、22・・・巻取部
30・・・主搬送ローラ
31・・・ローラシャフト
32・・・ロータリーエンコーダ
40・・・サーマルヘッド
41・・・プラテンローラ
50・・・ヒートローラ
70・・・被転写体
80・・・搬送テーブル
図1
図2
図3
図4
図5