(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】ピストンポンプ、昇圧液体供給システム及び液体噴射装置
(51)【国際特許分類】
F04B 53/16 20060101AFI20221004BHJP
【FI】
F04B53/16 D
(21)【出願番号】P 2018238425
(22)【出願日】2018-12-20
【審査請求日】2021-08-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】前野 潤
(72)【発明者】
【氏名】定木 啓
(72)【発明者】
【氏名】田中 貴博
(72)【発明者】
【氏名】田畠 一二三
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-153033(JP,A)
【文献】特開2003-148329(JP,A)
【文献】実公昭48-038961(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 23/00-23/14
F04B 53/00-53/22
B41J 2/175
B05B 9/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダの内部に供給された液体をピストンによって昇圧するピストンポンプであって、
昇圧された前記液体を外部に吐出する吐出流路を有するヘッド部と、
前記ヘッド部と異なる部材であり、前記シリンダの内部に前記液体を導入する導入流路を有する導入流路形成部材と
を備
え、
前記導入流路形成部材が前記シリンダであり、
前記導入流路は、前記シリンダの軸心に対して交差する方向に延伸して設けられると共に前記シリンダの内壁面に接続されており、
前記シリンダの内壁面に当接して前記シリンダの内部に収容された筒状のスリーブを備え、
前記スリーブは、前記導入流路に接続されると共に前記スリーブの周壁を貫通して設けられた貫通孔を有し、
前記貫通孔は、前記スリーブの軸心に沿った方向を長軸方向とする長孔であると共に、前記スリーブの軸心を中心とする周方向に3つ以上設けられ、
複数の前記貫通孔の1つに前記導入流路が連通されている
ことを特徴とするピストンポンプ。
【請求項2】
液体を噴射するノズルに前記液体を昇圧して供給する昇圧液体供給システムであって、 前記液体を昇圧するピストンポンプとして請求項
1記載のピストンポンプを備えることを特徴とする昇圧液体供給システム。
【請求項3】
液体を噴射するノズルと、前記ノズルに前記液体を昇圧して供給する昇圧液体供給システムとを備える液体噴射装置であって、
前記昇圧液体供給システムとして、請求項
2記載の昇圧液体供給システムを備えることを特徴とする液体噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピストンポンプ、昇圧液体供給システム及び液体噴射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、水に換えて液体窒素を噴射することによって、対象物の加工や洗浄を行う方法が開示されている。水を用いるウォータジェット法では、切削片等や汚れが水に交じることから、水自体の処理に配慮する必要があり、大量の二次廃棄物が発生する場合がある。一方で、噴射後に気化する液体窒素を用いる場合には、液体窒素は切削片や汚れと分離して気化するため、二次廃棄物を発生させることなく、加工や洗浄が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、液体窒素等の低温液化ガスをノズルから噴射する場合には、低温液化ガスを液体状態のまま昇圧する。例えば、このような低温液化ガスの昇圧はピストンポンプによって行われる。しかしながら、ピストンポンプで低温液化ガスを昇圧すると、低温液化ガスの温度が上昇する。このため、シリンダ内に低温液化ガスを導入する導入流路とシリンダ内から昇圧した低温液化ガスを吐出する吐出流路とが併設されている場合には、吐出流路を流れる昇圧後の低温液化ガスによって、導入流路を流れる低温液化ガスが昇温してしまう。昇圧前の低温液化ガスが昇温されると、ピストンポンプにおいて密度が低い低温液化ガスを昇圧することになり、ピストンポンプにおける効率が低下する。なお、このような問題は、沸点が低い低温液化ガスを昇圧するピストンポンプで顕著なるが、水を昇圧するピストンポンプでも同様に発生する。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、液体を昇圧するピストンポンプやこのピストンポンプを用いて液体の昇圧を行う昇圧液体供給システム及び液体噴射装置において、導入流路を通じてシリンダに供給される液体の高密度化を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0007】
第1の発明は、シリンダの内部に供給された液体をピストンによって昇圧するピストンポンプであって、昇圧された上記液体を外部に吐出する吐出流路を有するヘッド部と、上記ヘッド部と異なる部材であり、上記シリンダの内部に上記液体を導入する導入流路を有する導入流路形成部材とを備えるという構成を採用する。
【0008】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記導入流路形成部材が上記シリンダであり、上記導入流路は、上記シリンダの軸心に対して交差する方向に延伸して設けられると共に上記シリンダの内壁面に接続されているという構成を採用する。
【0009】
第3の発明は、上記第2の発明において、上記シリンダの内壁面に当接して上記シリンダの内部に収容された筒状のスリーブを備え、上記スリーブが、上記導入流路に接続されると共に上記スリーブの周壁を貫通して設けられた貫通孔を有するという構成を採用する。
【0010】
第4の発明は、上記第3の発明において、上記貫通孔が、上記スリーブの軸心を中心とする周方向に複数設けられているという構成を採用する。
【0011】
第5の発明は、上記第3または第4の発明において、上記貫通孔が、上記スリーブの軸心に沿った方向を長軸方向とする長孔であるという構成を採用する。
【0012】
第6の発明は、液体を噴射するノズルに上記液体を昇圧して供給する昇圧液体供給システムであって、上記液体を昇圧するピストンポンプとして上記第1~第5いずれかの発明であるピストンポンプを備えるという構成を採用する。
【0013】
第7の発明は、液体を噴射するノズルと、上記ノズルに上記液体を昇圧して供給する昇圧液体供給システムとを備える液体噴射装置であって、上記昇圧液体供給システムとして、上記第6の発明である昇圧液体供給システムを備えるという構成を採用する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、シリンダの内部に液体を導入する導入流路が、吐出流路を有するヘッド部と異なる部材に設けられている。このため、本発明によれば、導入流路と吐出流路とを離間して配置することができ、吐出流路を流れる昇圧後の液体によって、導入流路を流れる昇圧前の液体が加温されることを抑止することができる。したがって、本発明によれば、液体を昇圧するピストンポンプやこのピストンポンプを用いて液体の昇圧を行う昇圧液体供給システム及び液体噴射装置において、導入流路を通じてシリンダに供給される液体の高密度化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態における液体窒素噴射装置の概略構成を示すフロー図である。
【
図2】本発明の一実施形態における液体窒素噴射装置が備えるピストンポンプの概略構成を示す断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態における液体窒素噴射装置が備えるピストンポンプの導入流路を含む拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明に係るピストンポンプ、昇圧液体供給システム及び液体噴射装置の一実施形態について説明する。
【0017】
図1は、本実施形態の液体窒素噴射装置1(液体噴射装置)の概略構成を示すフロー図である。この図に示すように、本実施形態の液体窒素噴射装置1は、貯蔵タンク2と、液体窒素昇圧システム3(昇圧液体供給システム)と、ノズル4とを備えている。
【0018】
貯蔵タンク2は、液体窒素X(液体)を貯蔵する圧力タンクであり、液体窒素昇圧システム3と接続されている。なお、本実施形態の液体窒素噴射装置1は、この貯蔵タンク2を備えずに外部から液体窒素Xの供給を受ける構成とすることも可能である。なお、本実施形態において、貯蔵タンク2に貯蔵された液体窒素Xは、昇圧されてノズル4に供給される他、冷却材としても用いられる。以下の説明において、最終的にノズル4に供給される昇圧対象の液体窒素Xを噴射用液体窒素Yと称し、冷却材として用いられる液体窒素Xを冷却用液体窒素Zと称する。液体窒素昇圧システム3は、貯蔵タンク2から供給された噴射用液体窒素Yを一定の噴射圧にまで昇圧するものであり、ノズル4と接続されている。ノズル4は、液体窒素昇圧システム3から供給された噴射用液体窒素Yを先端部から噴射する。
【0019】
液体窒素昇圧システム3について、より詳細に説明する。液体窒素昇圧システム3は、上述のように噴射用液体窒素Yを噴射するノズル4に噴射用液体窒素Yを昇圧して供給するシステムであり、
図1に示すように、液体窒素昇圧システム3は、ブーストポンプ5と、第1熱交換器6と、ピストンポンプ7と、第2熱交換器8と、フレキシブルチューブ9を備えている。
【0020】
ブーストポンプ5は、接続配管10を介して貯蔵タンク2と接続されている。このブーストポンプ5は、接続配管10を介して供給される噴射用液体窒素Yをピストンポンプ7が吸い込み可能な圧力まで昇圧するポンプである。このブーストポンプ5としては、例えば遠心ポンプが用いられる。このようなブーストポンプ5は、接続配管11によって第1熱交換器6と接続されており、接続配管11を通じて第1熱交換器6に向けて噴射用液体窒素Yを圧送する。
【0021】
第1熱交換器6は、冷却用配管12によって貯蔵タンク2と接続されており、接続配管11を介してブーストポンプ5から供給される噴射用液体窒素Yと、冷却用配管12を介して供給される冷却用液体窒素Zとを熱交換することによって、ブーストポンプ5から供給される噴射用液体窒素Yを冷却する。このような第1熱交換器6は、例えばプレートフィン型の熱交換器である。このような第1熱交換器6は、接続配管14によってピストンポンプ7と接続されており、接続配管14を通じてピストンポンプ7に向けてブーストポンプ5で昇圧された噴射用液体窒素Yを排出する。
【0022】
本実施形態においては、ブーストポンプ5よりも第1熱交換器6がピストンポンプ7に近接して配置されている。つまり、本実施形態においては、先にブーストポンプ5で噴射用液体窒素Yが昇圧され、昇圧された噴射用液体窒素Yが第1熱交換器6で冷却されてピストンポンプ7に供給される。このため、先に冷却してからブーストポンプ5で昇圧する場合と比較して、より低温で密度の高い噴射用液体窒素Yをピストンポンプ7に供給することができる。
【0023】
なお、冷却用配管12の途中部位には、オリフィス13が設置されている。オリフィス13は、冷却用配管12の途中部位に設けられる抵抗部であり、冷却用液体窒素Zの流れに対する抵抗となっている。このオリフィス13は、冷却用配管12のオリフィス13よりも上流側の部位の圧力を維持するための絞り流路である。冷却用の液体窒素として第1熱交換器6に供給された冷却用液体窒素Zは、第1熱交換器6にて減圧される。オリフィス13によって、冷却用配管12の上流側が第1熱交換器6の内部の圧力に応じて減圧されることを防止することができる。
【0024】
ピストンポンプ7は、接続配管14を介して第1熱交換器6から供給される噴射用液体窒素Yを、ノズル4での噴射圧まで昇圧するためのポンプである。このピストンポンプ7は、送出配管15を介して第2熱交換器8と接続されており、昇圧した噴射用液体窒素Yを第2熱交換器8に圧送する。
【0025】
図2は、ピストンポンプ7の概略構成を示す断面図である。この図に示すように、ピストンポンプ7は、シリンダ7a(導入流路形成部材)と、スリーブ7bと、ピストン7cと、ヘッド部7dと、流入弁7eと、吐出弁7fと、固定部材7gとを備えている。
【0026】
シリンダ7aは、中空の筒体であり、内部が噴射用液体窒素Yの収容空間とされている。また、シリンダ7aの先端部の外周面には、固定部材7gを螺合するための雄ネジ部が形成されている。さらに、本実施形態においてシリンダ7aには、シリンダ7aの内部に噴射用液体窒素Yを導入するための導入流路7a1を備えている。
【0027】
導入流路7a1は、
図1に接続配管11に接続されており、接続配管11から昇圧用の噴射用液体窒素Yが供給される流路である。
図3は、導入流路7a1を含む拡大断面図である。この図に示すように、導入流路7a1は、シリンダ7aの先端部近くに配置されており、シリンダ7aの軸心に対して直交(交差)する方向に延伸して設けられている。この導入流路7a1は、シリンダ7aの内壁面に接続され、スリーブ7bの後述する貫通孔7b2に連通されている。
【0028】
さらに、シリンダ7aは、導入流路7a1が内部に形成されると共に、流入弁7eが収容された突出部7a2を備えている。この突出部7a2は、シリンダ7aの軸心に沿った方向から見て、シリンダ7aの周方向に一か所のみ設けられており、シリンダ7aの外周面からシリンダ7aの径方向外側に向けて突出して設けられている。
【0029】
スリーブ7bは、シリンダ7aの内部に嵌合された筒状部材であり、シリンダ7aの内壁面に外周面が当接された状態でシリンダ7aの内部空間に収容されている。また、
図3に示すように、スリーブ7bの周壁7b1の先端部には、周壁7b1をスリーブ7bの軸心を中心とする径方向に貫通する貫通孔7b2が設けられている。貫通孔7b2は、スリーブ7bの軸心を中心とする周方向に等間隔で複数設けられている。各々の貫通孔7b2は、スリーブ7bの軸心に沿った方向を長軸方向とする長孔とされている。このように複数設けられた貫通孔7b2の1つが、上述した導入流路7a1の開口端に接続されている。
【0030】
ピストン7cは、シリンダ7aに囲まれた空間に往復同可能に配置された棒状部材である。ピストン7cは、不図示の動力源から動力を伝達されることによって、シリンダ7aの軸心に沿った方向に移動される。
【0031】
ヘッド部7dは、固定部材7gによってシリンダ7aの片側の端面に配して圧接されるように配置された円柱状の部材である。このヘッド部7dは、
図3に示すように、内部に吐出流路7d1が設けられている。吐出流路7d1は、シリンダ7aの内部で昇圧された噴射用液体窒素Yをヘッド部7dの外部に吐出するための流路である。この吐出流路7d1は、
図1に示す送出配管15と接続されており、昇圧した噴射用液体窒素Yを送出配管15に供給する。
【0032】
また、
図3に示すように、ヘッド部7dは、先端部よりもシリンダ7aの軸心を中心とする径方向外側に膨出された大径部7d2を有している。この大径部7d2は、シリンダ7a側の面がシリンダ7aの端面と当接され、この面と反対側の面が固定部材7gと当接されている。本実施形態では、この大径部7d2がシリンダ7aと固定部材7gとによって挟持されることによって、ヘッド部7dがシリンダ7aに対して固定されている。
【0033】
流入弁7eは、ヘッド部7dのシリンダ7a側の端部に設けられており、導入流路7d1における逆流を防止する。吐出弁7fは、ヘッド部7dのシリンダ7aと反対側の端部である先端部に対して設けられており、吐出流路7d2における逆流を防止する。
【0034】
固定部材7gは、ヘッド部7dをシリンダ7aに固定する部材である。この固定部材7gは、1つの部材であるが、
図3に示すように、噴射用液体窒素Yが吐出される側に位置する天壁部7g1と、天壁部7g1よりもシリンダ7a側に配置される囲壁部7g2とに分けて説明する。
【0035】
天壁部7g1は、中央部にヘッド部7dの先端部が挿通可能とされた貫通孔7g3を有している。囲壁部7g2は、天壁部7g1のシリンダ7a側の面からシリンダ7a側に延出して設けられた部位であり、径方向における中央部に開口部7g4が設けられている。囲壁部7g2は、外径寸法が天壁部7g1の外形寸法と同一に設定されており、外壁面が天壁部7g1の外壁面と面一とされている。一方、囲壁部7g2の開口部7g4の直径寸法(すなわち囲壁部7g2の内径寸法)は、天壁部7g1の貫通孔7g3の直径寸法(すなわち天壁部7g1の内径寸法)よりも大きく設定されている。このため、全体として筒状とされた固定部材7gの内壁面には、天壁部7g1と囲壁部7g2との境界部分に段差部が設けられている。
【0036】
開口部7g4の内径寸法は、ヘッド部7dの大径部7d2の外径寸法よりも大きく設定されている。また、開口部7g4の深さ寸法は、ヘッド部7dの大径部7d2の長さ寸法よりも大きく設定されている。このため、
図3に示すように、開口部7g4の内部には、ヘッド部7dの大径部7d2の全体が収容されている。
【0037】
また、囲壁部7g2の内壁面には、シリンダ7aの雄ネジ部に螺合するための雌ネジ部が設けられている。この囲壁部7g2の雌ネジ部がシリンダ7aの雄ネジ部に螺合されることによって、固定部材7gがシリンダ7aに対して固定される。
【0038】
このような構成のピストンポンプ7においては、ピストン7cが引かれると、流入弁7eが導入流路7a1を開放し、導入流路7a1を介して噴射用液体窒素Yがシリンダ7aの内部に供給される。その後、ピストン7cが押されると、流入弁7eが閉じることによってシリンダ7aの内部が閉空間となり、ピストン7cの移動に伴って噴射用液体窒素Yが昇圧される。シリンダ7a内の噴射用液体窒素Yが所定の圧力まで昇圧されると、吐出弁7fが吐出流路7d1を開放し、昇圧された噴射用液体窒素Yがヘッド部7dから送出配管15に供給される。
【0039】
図1に戻り、第2熱交換器8は、送出配管15から供給される昇圧後の噴射用液体窒素Yを、後冷却配管16から供給される冷却用液体窒素Zと熱交換することによって噴射温度まで冷却する熱交換器である。この第2熱交換器8は、例えばコイルチューブ型やシェルアンドチューブ型の熱交換器であり、ピストンポンプ7で昇圧された加圧状態の噴射用液体窒素Yと、後冷却配管16から供給される低圧かつ低温の冷却用液体窒素Zとを熱交換する。
【0040】
後冷却配管16は、貯蔵タンク2と第2熱交換器8とを接続する配管である。この後冷却配管16の途中部位には、オリフィス17が設けられている。オリフィス17は、後冷却配管16の途中部位に設けられる抵抗部であり、冷却用液体窒素Zの流れに対する抵抗となっている。このオリフィス17は、後冷却配管16のオリフィス17よりも上流側の部位の圧力を位置するための絞り流路である。第2熱交換器8に供給された冷却用液体窒素Zは、第2熱交換器8にて減圧される。オリフィス17によって、後冷却配管16の上流側が減圧されることが防止される。
【0041】
フレキシブルチューブ9は、第2熱交換器8とノズル4とを接続する鋼管であり、ノズル4を作業者が容易に姿勢変更なように第2熱交換器8と接続している。第2熱交換器8は、このようなフレキシブルチューブ9を介してノズル4と接続されており、昇圧後の噴射用液体窒素Yを冷却してノズル4に供給する。
【0042】
さらに、本実施形態の液体窒素噴射装置1は、ピストンポンプ7が吸引しなかった噴射用液体窒素Yをブーストポンプ5に返流する返流配管18を備えている。また、返流配管18の途中部位には、返流配管18の流路面積を調節可能なバルブ19が設けられている。なお、バルブ21に換えてオリフィスを設置しても良い。つまり、返流配管18を介して返流される噴射用液体窒素Yの流量が適正となるように、返流配管18にバルブ19やオリフィス等を設置する。
【0043】
このような構成の本実施形態の液体窒素噴射装置1では、貯蔵タンク2に貯蔵された液体窒素Xが噴射用液体窒素Yとしてブーストポンプ5に供給される。噴射用液体窒素Yは、ブーストポンプ5で昇圧された後、第1熱交換器6で冷却されて密度が高められる。第1熱交換器6で冷却された噴射用液体窒素Yは、ピストンポンプ7に供給されて昇圧される。ピストンポンプ7で昇圧された噴射用液体窒素Yは、第2熱交換器8で冷却され、その後にノズル4に供給される。
【0044】
以上のような本実施形態の液体窒素噴射装置1に備えられるピストンポンプ7によれば、シリンダ7aの内部に液体を導入する導入流路7a1が、吐出流路7d1を有するヘッド部7dと異なる部材に設けられている。このため、本実施形態のピストンポンプ7によれば、導入流路7a1と吐出流路7d1とを離間して配置することができ、吐出流路7d1を流れる昇圧後の噴射用液体窒素Yによって、導入流路7a1を流れる昇圧前の噴射用液体窒素Yが加温されることを抑止することができる。したがって、本実施形態のピストンポンプ7によれば、導入流路7a1を通じてシリンダ7aに供給される液体の高密度化を図ることが可能となる。
【0045】
また、本実施形態のピストンポンプ7においては、シリンダ7aが導入流路形成部材とされ、導入流路7a1が、シリンダ7aの軸心に対して直交する方向に延伸して設けられると共にシリンダ7aの内壁面に接続されている。このような本実施形態のピストンポンプ7によれば、シリンダ7aを導入流路形成部材として用いることができ、導入流路を形成するための専用の部材を新たに設置する必要がない。このため、部品点数を増加させることなく、導入流路をヘッド部7dと異なる部材に設けることが可能となる。
【0046】
また、本実施形態のピストンポンプ7においては、シリンダ7aの内壁面に当接してシリンダ7aの内部に収容された筒状のスリーブ7bを備え、スリーブ7bは、導入流路7a1に接続されると共にスリーブ7bの周壁7b1を貫通して設けられた貫通孔7b2を有している。このため、シリンダ7aに導入流路7a1を設けかつスリーブ7bを設置した場合であっても、スリーブ7bの内部まで噴射用液体窒素Yを導入することが可能となる。
【0047】
また、本実施形態のピストンポンプ7においては、貫通孔7b2は、スリーブ7bの軸心を中心とする周方向に複数設けられている。このため、シリンダ7aに対してスリーブ7bの軸心を中心とする周方向の回転角度がどのような角度であっても、いずれかの貫通孔7b2を導入流路7a1に連通させることができる。したがって、本実施形態のピストンポンプ7によれば、シリンダ7aに対してスリーブ7bを取り付ける場合に、シリンダ7aに対するスリーブ7bの回転角度をどのような角度としても良く、ピストンポンプ7を組み立てる場合の作業性が向上される。
【0048】
また、本実施形態のピストンポンプ7においては、貫通孔7b2は、スリーブ7bの軸心に沿った方向を長軸方向とする長孔とされている。このため、スリーブ7bの軸心に沿った方向にて、貫通孔7b2の長軸寸法の分だけ、導入流路7a1と貫通孔7b2との連通可能範囲を長く確保することができる。したがって、本実施形態のピストンポンプ7によれば、ピストンポンプ7を組み立てる場合の作業性が向上される。
【0049】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0050】
例えば、上記実施形態においては、液体窒素噴射装置1及び液体窒素昇圧システム3では、単一のピストンポンプ7を備える構成を採用した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、並列にあるいは直列にピストンポンプ7を複数設置する構成を採用することも可能である。
【0051】
また、上記実施形態においては、単一の導入流路7a1を備える構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、シリンダ7aの軸心を中心とする周方向に複数の導入流路7a1を設ける構成を採用しても良い。また、このように複数の導入流路7a1を設けた場合に、全ての導入流路7a1を用いる必要はない。例えば、複数の導入流路7a1のうち、接続配管14に接続が容易な位置の導入流路7a1だけ用いるようにしても良い。
【0052】
また、上記実施形態においては、ピストンポンプ7において液体窒素Xを昇圧する構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。ピストンポンプ7で昇圧する液体は特に限定されるものではなく、例えば水をピストンポンプ7で昇圧する構成を採用することも可能である。
【0053】
また、上記実施形態においては、噴射用液体窒素Yの流れ方向にて、第1熱交換器6よりも上流側にブーストポンプ5を設置する構成を採用した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、噴射用液体窒素Yの流れ方向にて、第1熱交換器6よりも下流側にブーストポンプ5を設置する構成を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0054】
1……液体窒素噴射装置(液体噴射装置)、2……貯蔵タンク、3……液体窒素昇圧システム(昇圧液体供給システム)、4……ノズル、5……ブーストポンプ、6……第1熱交換器、7……ピストンポンプ、7a……シリンダ(導入流路形成部材)、7a1……導入流路、7a2……突出部、7b……スリーブ、7b1……周壁、7b2……貫通孔、7c……ピストン、7d……ヘッド部、7d1……吐出流路、7d2……大径部、7e……流入弁、7f……吐出弁、7g……固定部材、7g1……天壁部、7g2……囲壁部、7g3……貫通孔、7g4……開口部、8……第2熱交換器、9……フレキシブルチューブ、10……接続配管、11……接続配管、12……冷却用配管、13……オリフィス、14……接続配管、15……送出配管、16……後冷却配管、17……オリフィス、18……返流配管、19……バルブ、X……液体窒素、Y……噴射用液体窒素、Z……冷却用液体窒素