(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】電池モジュール及び電池モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/317 20210101AFI20221004BHJP
H01M 10/04 20060101ALN20221004BHJP
H01M 50/102 20210101ALN20221004BHJP
H01M 50/103 20210101ALN20221004BHJP
【FI】
H01M50/317 101
H01M10/04 Z
H01M50/102
H01M50/103
(21)【出願番号】P 2018239487
(22)【出願日】2018-12-21
【審査請求日】2021-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100190470
【氏名又は名称】谷澤 恵美
(72)【発明者】
【氏名】濱岡 賢志
(72)【発明者】
【氏名】井上 拓
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-185904(JP,A)
【文献】特開2018-200829(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M50/30-50/392
H01M10/00-10/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電極が積層された電極積層体と、前記電極積層体を取り囲むように配置され、前記電極積層体に設けられた複数の内部空間とそれぞれ連通された複数の第1連通孔を有する枠体とを有するモジュール本体と、
前記モジュール本体に取り付けられ、前記複数の第1連通孔とそれぞれ連通された複数の第2連通孔を有する圧力調整弁と、を備え、
前記圧力調整弁は、射出成形品であるケースを備え、
前記ケースは、金型からの抜き方向に沿って延在する外壁面を有し、
前記外壁面は、前記抜き方向に対して傾斜している第1領域と、前記抜き方向に対して傾斜していない第2領域と、を含んで
おり、
前記外壁面は、互いに反対側を向く一対の外壁面部分を有し、
前記一対の外壁面部分は、それぞれ第2領域を含んでいる、電池モジュール。
【請求項2】
前記一対の外壁面部分は、互いに異なる数の前記第2領域を含んでいる、請求項
1に記載の電池モジュール。
【請求項3】
前記第2領域は、前記外壁面の前記抜き方向における一部に設けられている、請求項1
又は2に記載の電池モジュール。
【請求項4】
前記第2領域は、前記抜き方向から見て、前記外壁面の一部に設けられている、請求項1
又は2に記載の電池モジュール。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか一項に記載の電池モジュールの製造方法であって、
前記第2領域をロボットハンドにより把持して前記圧力調整弁と前記モジュール本体とを接合する工程を含む、電池モジュールの製造方法。
【請求項6】
前記接合する工程の後に、前記モジュール本体の前記電極積層体の積層方向における位置、及び前記第2領域の前記積層方向における位置を検出し、前記モジュール本体と前記圧力調整弁との前記積層方向における接合位置を検査する工程を含む、請求項
5に記載の電池モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一側面は、電池モジュール及び電池モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ニッケル水素二次電池及びリチウムイオン二次電池といった電池モジュールはモジュール本体を備える。モジュール本体には、電極を含む電池要素が収容されている。モジュール本体には、その内部でのガス発生により内圧が所定圧より上昇した際に内圧を調整するための圧力調整弁が取り付けられている。圧力調整弁は、樹脂の射出成形品であるケースを有している。このような樹脂の射出成形品において、側壁部に抜き勾配として傾斜面を適用することが知られている(例えば特許文献1参照)。これにより、射出成型後に射出成形品を金型から容易に取り出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、圧力調整弁のケースに傾斜面を適用すると、圧力調整弁をモジュール本体に取り付ける際に、ロボットハンドによりケースを安定して把持できないおそれがある。この結果、圧力調整弁をモジュール本体の取付領域に精度よく取り付けることができないおそれがある。
【0005】
本発明の一側面は、モジュール本体に対する圧力調整弁の取付け精度を向上させることが可能な電池モジュール及び電池モジュールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る電池モジュールは、複数の電極が積層された電極積層体と、電極積層体を取り囲むように配置され、電極積層体に設けられた複数の内部空間とそれぞれ連通された複数の第1連通孔を有する枠体とを有するモジュール本体と、モジュール本体に取り付けられ、複数の第1連通孔とそれぞれ連通された複数の第2連通孔を有する圧力調整弁と、を備え、圧力調整弁は、射出成形品であるケースを備え、ケースは、金型からの抜き方向に沿って延在する外壁面を有し、外壁面は、抜き方向に対して傾斜している第1領域と、抜き方向に対して傾斜していない第2領域と、を含んでいる。
【0007】
この電池モジュールでは、圧力調整弁の外壁面は、抜き方向に対して傾斜している第1領域に加えて、抜き方向に対して傾斜していない第2領域を含んでいる。第1領域は傾斜しているため、例えばロボットハンドにより安定して把持し難い。これに対し、第2領域は傾斜していないので、例えばロボットハンドにより安定して把持し易い。従って、第2領域によれば、例えば、ロボットハンドにより圧力調整弁を安定して把持した状態で、モジュール本体に対して圧力調整弁を取り付けることができる。この結果、モジュール本体に対する圧力調整弁の取付け精度を向上させることができる。
【0008】
この電池モジュールでは、外壁面は、互いに反対側を向く一対の外壁面部分を有し、一対の外壁面部分は、それぞれ第2領域を含んでいてもよい。この場合、例えばロボットハンドを各第2領域に当接させることで、圧力調整弁を挟み込んで把持することができる。よって、圧力調整弁を更に安定して把持することができる。この結果、モジュール本体に対する圧力調整弁の取付け精度を更に向上させることができる。
【0009】
この電池モジュールでは、一対の外壁面部分は、互いに異なる数の第2領域を含んでいてもよい。この場合、一対の外壁面部分を容易に区別することができる。これにより、圧力調整弁を逆方向に取付ける取付け不良の発生を抑制することができる。
【0010】
この電池モジュールでは、第2領域は、外壁面の抜き方向における一部に設けられていてもよい。この場合、第2領域が外壁面の抜き方向における全部に設けられている場合に比べて、ケースを射出成形の金型から容易に抜き出すことができる。
【0011】
この電池モジュールでは、第2領域は、抜き方向から見て、外壁面の一部に設けられていてもよい。この場合、第2領域が、抜き方向から見て、外壁面の全部に設けられている場合に比べて、ケースを射出成形の金型から容易に抜き出すことができる。
【0012】
本発明の一側面に係る電池モジュールの製造方法は、上記電池モジュールの製造方法であって、第2領域をロボットハンドにより把持して圧力調整弁とモジュール本体とを接合する工程を含む。
【0013】
この製造方法では、抜き方向に対して傾斜していない第2領域R2にロボットハンドを当接させることで、ロボットハンドにて圧力調整弁を安定して把持することができる。この結果、モジュール本体に対する圧力調整弁の取付け精度を向上させることができる。
【0014】
この製造方法では、接合する工程の後に、モジュール本体の電極積層体の積層方向における位置、及び第2領域の積層方向における位置を検出し、モジュール本体と圧力調整弁との積層方向における接合位置を検査する工程を含んでもよい。この場合、第2領域は抜き方向に対して傾斜していないので、圧力調整弁の位置の検出精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一側面によれば、モジュール本体に対する圧力調整弁の取付け精度を向上させることが可能な電池モジュール及び電池モジュールの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】一実施形態に係る電池モジュールを備えた蓄電装置を示す概略断面図である。
【
図4】電池モジュールの一部を示す分解斜視図(一部断面図を含む)である。
【
図9】モジュール本体の接合用突起と圧力調整弁の接合用突起とを接合する方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら実施形態が詳細に説明される。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。
【0018】
図1は、実施形態に係る電池モジュールを備えた蓄電装置を示す概略断面図である。蓄電装置1は、例えばフォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の車両のバッテリとして使用される。蓄電装置1は、複数(ここでは3つ)の電池モジュールとしてのバイポーラ電池2を備えている。バイポーラ電池2は、例えばニッケル水素二次電池である。
【0019】
複数のバイポーラ電池2は、金属製の導電板3を介して積層されている。導電板3は、積層方向(Z軸方向)の両端に位置するバイポーラ電池2の外側にも配置されている。バイポーラ電池2及び導電板3は、例えば積層方向から見て矩形状(平面視矩形状)である。導電板3は、隣り合うバイポーラ電池2と電気的に接続されている。これにより、複数のバイポーラ電池2が積層方向に直列接続されている。
【0020】
積層方向の一端(ここでは下端)に位置する導電板3には、正極端子4が接続されている。積層方向の他端(ここでは上端)に位置する導電板3には、負極端子5が接続されている。正極端子4及び負極端子5は、積層方向に垂直な方向(X軸方向)に延在している。このような正極端子4及び負極端子5を設けることにより、蓄電装置1の充放電を実施することができる。
【0021】
導電板3は、バイポーラ電池2において発生した熱を放出するための放熱板としても機能し得る。導電板3には、積層方向と正極端子4及び負極端子5の延在方向とに垂直な方向(Y軸方向)に延在した複数の空隙3aが設けられている。これらの空隙3aを空気等の冷媒が通過することにより、バイポーラ電池2からの熱が効率的に外部に放出される。
【0022】
また、蓄電装置1は、バイポーラ電池2及び導電板3を積層方向に拘束する拘束ユニット6を備えている。拘束ユニット6は、バイポーラ電池2及び導電板3を積層方向に挟む1対の拘束プレート7と、これらの拘束プレート7同士を締結する複数組のボルト8及びナット9とを有している。
【0023】
拘束プレート7は、鉄等の金属で形成されている。各拘束プレート7と導電板3との間には、樹脂フィルム等の絶縁フィルム10がそれぞれ配置されている。拘束プレート7及び絶縁フィルム10は、例えば平面視矩形状を有している。ボルト8の軸部8aが各拘束プレート7に設けられた挿通孔7aを挿通した状態で、軸部8aの先端部にナット9が螺合することで、バイポーラ電池2、導電板3及び絶縁フィルム10に積層方向の拘束荷重が付与される。
【0024】
図2は、バイポーラ電池2の概略断面図である。
図3は、バイポーラ電池2の概略斜視図である。
図2及び
図3において、バイポーラ電池2は、複数のセル(例えば24セル)が積層された構造(複数セル構造)を有している。バイポーラ電池2は、モジュール本体11と、このモジュール本体11の一側面に取り付けられた複数(ここでは4つ)の圧力調整弁12とを備えている。
【0025】
モジュール本体11は、複数のバイポーラ電極13(電極)がセパレータ14を介して積層された電極積層体15と、この電極積層体15を取り囲むように配置された枠体16とを備えている。複数のバイポーラ電極13の積層方向は、複数のバイポーラ電池2の積層方向(Z軸方向)と一致している。
【0026】
バイポーラ電極13及びセパレータ14は、例えば平面視矩形状を有している。セパレータ14は、積層方向に隣り合うバイポーラ電極13の間に配置されている。バイポーラ電極13は、集電体であるニッケル箔17と、当該ニッケル箔17の上面17a(一方面)に形成された正極活物質層18と、当該ニッケル箔17の下面17b(他方面)に形成された負極活物質層19とを有している。
【0027】
バイポーラ電極13の正極活物質層18は、セパレータ14を挟んで積層方向に隣り合う一方のバイポーラ電極13の負極活物質層19と対向している。バイポーラ電極13の負極活物質層19は、セパレータ14を挟んで積層方向に隣り合う他方のバイポーラ電極13の正極活物質層18と対向している。
【0028】
電極積層体15の最下層には、正極側終端電極20(電極)が配置されている。正極側終端電極20は、ニッケル箔17と、当該ニッケル箔17の上面17aに形成された正極活物質層18とを有している。電極積層体15の最上層には、負極側終端電極21(電極)が配置されている。負極側終端電極21は、ニッケル箔17と、当該ニッケル箔17の下面17bに形成された負極活物質層19とを有している。正極側終端電極20の正極活物質層18は、セパレータ14を挟んで最下層のバイポーラ電極13の負極活物質層19と対向している。負極側終端電極21の負極活物質層19は、セパレータ14を挟んで最上層のバイポーラ電極13の正極活物質層18と対向している。正極側終端電極20及び負極側終端電極21のニッケル箔17は、積層方向に隣り合う導電板3(
図1参照)に接続されている。
【0029】
正極活物質層18は、ニッケル箔17の上面17aに正極活物質を含む正極スラリーを塗工することにより形成されている。正極活物質としては、例えばコバルト(Co)酸化物コートが施された水酸化ニッケルが用いられる。負極活物質層19は、ニッケル箔17の下面17bに負極活物質を含む負極スラリーを塗工することにより形成されている。負極活物質としては、例えば水素吸蔵合金が用いられる。ニッケル箔17の縁部17cは、正極スラリー及び負極スラリーが塗工されない未塗工領域となっている。
【0030】
セパレータ14は、正極活物質層18と負極活物質層19との間に配置され、正極活物質層18と負極活物質層19とを隔離する。セパレータ14は、積層方向から見てニッケル箔17よりも小さく且つ正極活物質層18及び負極活物質層19よりも大きい。セパレータ14は、例えばシート状に形成されている。セパレータ14は、ポリエチレン(PE)またはポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、もしくはPE、PP、またはメチルセルロース等からなる不織布または織布等で形成されている。また、セパレータ14は、フッ化ビニリデン樹脂化合物等で補強されていてもよい。なお、セパレータ14の形状としては、特にシート状に限られず、袋状であってもよい。
【0031】
枠体16は、電極積層体15の周囲に配置され、各ニッケル箔17の縁部17cをそれぞれ保持する複数の一次シール部22と、これらの一次シール部22の周囲に配置された二次シール部23とを有している。
【0032】
各一次シール部22は、積層方向に沿ってニッケル箔17毎に配置されている。一次シール部22は、枠状に形成されている。一次シール部22は、ニッケル箔17の縁部17cに熱溶着により接合されている。
【0033】
積層方向に隣り合うニッケル箔17間に、ニッケル箔17、正極活物質層18、負極活物質層19及び一次シール部22が協働して内部空間Vを形成している。換言すると、積層方向に隣り合う2つのニッケル箔17、一方のニッケル箔17の正極活物質層18、他方のニッケル箔17の負極活物質層19及び一次シール部22によって囲われた空間が内部空間Vである。従って、電極積層体15には、複数の内部空間Vが設けられている。セパレータ14内を含む内部空間Vには、アルカリ性の電解液が注入されている。アルカリ性の電解液としては、例えば水酸化カリウム水溶液等を含むアルカリ溶液が用いられている。一次シール部22は、内部空間Vを封止する。バイポーラ電池2の各セルは、二つのニッケル箔17、二つのニッケル箔17の一方の正極活物質層18、二つのニッケル箔17の他方の負極活物質層19、セパレータ14及び一次シール部22により構成され、これらが協働して内部空間Vを形成している。
【0034】
二次シール部23は、角筒状を有している。二次シール部23は、内部空間Vを更に封止する。二次シール部23は、各一次シール部22に接合されている。二次シール部23は、例えば射出成形等により形成されている。
【0035】
一次シール部22及び二次シール部23は、例えばポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)または変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)等の樹脂で形成されている。
【0036】
次に、圧力調整弁12の構成について詳細に説明する。
図4は、バイポーラ電池2の一部を示す分解斜視図(一部断面図を含む)である。
図5は、圧力調整弁12の底面図(底壁部32の外壁面32a側から見た図)である。
図6は、圧力調整弁12の分解斜視図である。
図7は、ケース29の平面図である。
図8は、圧力調整弁12の断面図である。
【0037】
図3及び
図4に示されるように、枠体16を構成する一の壁部16aには、圧力調整弁12が取り付けられる複数(ここでは4つ)の取付領域24が設けられている。
図4に示されるように、一次シール部22の各取付領域24には、複数(ここでは6つ)の連通孔25(第1連通孔)がそれぞれ設けられている。連通孔25は、各取付領域24において3列2段(Y軸方向に3列、Z軸方向に2段)に配列されている。従って、連通孔25は、壁部16aにおいて12列2段に配列されている。各連通孔25は、異なるセルの内部空間Vとそれぞれ連通されている。
【0038】
二次シール部23の各取付領域24には、各連通孔25と連通された複数(ここでは6つ)の連通孔26(第1連通孔)がそれぞれ設けられている。連通孔26は、各取付領域24において3列2段に配列されている。
【0039】
連通孔25,26は、内部空間Vに電解液を注入するための注液孔として機能する。また、連通孔25,26は、電解液が注入された後は、内部空間Vで発生したガスが流れる流路となる。
【0040】
二次シール部23の各取付領域24の外側面には、略枠状の接合用突起27がそれぞれ設けられている。接合用突起27は、モジュール本体11と圧力調整弁12とを接合すると共に、各内部空間Vからのガスがそれぞれ流れる複数(ここでは6つ)の流路28を連通孔26と協働して形成する。従って、流路28は、各取付領域24において3列2段に配列されている。流路28は、X軸方向に垂直な面に沿った断面において矩形状を有している。接合用突起27は、X軸方向から見て、格子状に形成されている。
【0041】
図4及び
図6に示されるように、圧力調整弁12は、ケース29と、複数(ここでは6つ)の弁体30と、カバー31とを有している。ケース29は、樹脂の射出成形品であり、例えばPP、PPSまたは変性PPE等の樹脂で形成されている。ケース29は、ケース29とカバー31とが対向する対向方向(X軸方向)から見て略矩形状に形成されている。対向方向は、モジュール本体11(壁部16a)に対する圧力調整弁12の取付方向(後述する接合用突起27の先端27aと接合用突起34の先端34aとが対向する方向)でもある。
【0042】
ケース29は、底壁部32を有している。底壁部32には、モジュール本体11の各連通孔26とそれぞれ連通された複数(ここでは6つ)の連通孔33(第2連通孔)が設けられている。連通孔33は、X軸方向に垂直な面(YZ平面)に沿った断面で円形状を有している(
図5参照)。連通孔33は、底壁部32を貫通している。連通孔33の中心軸線方向は、ケース29の金型からの抜き方向(X軸方向)と一致している。底壁部32は、モジュール本体11と対向している外壁面32aと、外壁面32aとは反対側に位置し、後述する弁体30の第1端面30aと対向している内壁面32bと、を有している。
【0043】
図5に示されるように、底壁部32の外壁面32aには、略枠状の接合用突起34が設けられている。接合用突起34は、モジュール本体11と圧力調整弁12とを接合すると共に、各内部空間Vからのガスがそれぞれ流れる複数(ここでは6つ)の流路35を形成する。接合用突起34は、モジュール本体11の接合用突起27と接合されている。接合用突起34は、接合用突起27に対応する形状及び寸法を有している。従って、流路35は、X軸方向に垂直な面(YZ平面)に沿った断面において矩形状を有している。また、接合用突起34は、X軸方向から見て、格子状に形成されている。
【0044】
図4及び
図6~
図8に示されるように、ケース29は、それぞれ底壁部32からカバー31側に突出した側壁部36及び隔壁部37を有している。本実施形態では、側壁部36及び隔壁部37は、底壁部32と一体的に形成されている。側壁部36は、複数(ここでは6つ)の弁体30を包囲するように、底壁部32の内壁面32bの縁部に立設されている。具体的には、側壁部36は、底壁部32の外周縁部の全周にわたって形成されており、ケース29の外壁を構成している。より具体的には、側壁部36は、対向方向から見て、略矩形状に形成された底壁部32の外周縁部に沿って、略矩形枠状に形成されている。
【0045】
図6及び
図7に示されるように側壁部36は、射出成形の金型からの抜き方向(X軸方向)に沿って延在する外壁面36sを有している。外壁面36sは、Z軸方向において互いに反対側を向く略矩形状の一対の第1外壁面36s1(一対の外壁面部分)と、Y軸方向において互いに反対方向を向く略矩形状の一対の第2外壁面36s2と、を有している。一対の第1外壁面36s1は、それぞれ抜き勾配が設けられ、抜き方向に対して傾斜している第1領域R1と、抜き勾配が設けられておらず、抜き方向に対して傾斜していない第2領域R2と、を含んでいる。すなわち、第1領域R1はカバー31の内面31aに対して第1外壁面36s1が傾斜した領域であり、第2領域R2はカバー31に対しての内面31aに対して第1外壁面36s1が傾斜していない(垂直)領域である。一対の第2外壁面36s2は、第1領域R1を含み、第2領域R2を含んでいない。
【0046】
抜き勾配とは、射出成形品を金型からスムーズに抜き出すために射出成形品自体に設けられる傾斜のことである。第1領域R1の抜き勾配は、例えば1度から2度である。つまり、第1領域R1は、抜き方向に対して、ケース29の外側方向に、例えば1度から2度傾斜している。第2領域R2には、抜き勾配が設けられていない。つまり、第2領域R2は、抜き方向と平行に設けられている。このため、第1領域R1と第2領域R2との間には抜き方向に沿って段差が形成されている。
【0047】
第2領域R2は、例えば圧力調整弁12をモジュール本体11に取り付ける際に、ロボットハンドが当接される当接領域として機能する。ロボットハンドは、例えば、第2領域R2に当接される平面状の当接面を有している。第2領域R2の大きさは、この当接面の大きさ以上に設定され得る。これにより、当接面を第2領域R2の周りに形成された段差にかからせず、第2領域R2のみに当接させることができる。第2領域R2は、抜き方向に対して実質的に平行であればよく、抜き方向に対して誤差の範囲で傾斜していてもよい。誤差の範囲は、例えば0.5度以下の範囲とすることができる。
【0048】
一対の第1外壁面36s1は、互いに異なる数の第2領域R2を含んでいる。本実施形態では、一方の第1外壁面36s1は、2つの第2領域R2を含み、他方の第1外壁面36s1は、1つの第2領域R2を含んでいる。一方の第1外壁面36s1において、2つの第2領域R2は互いに離間して配置されている。より具体的には、2つの第2領域R2は、抜き方向から見て、Y軸方向で互いに離間して配置されている。Z軸方向から見て、他方の第1外壁面36s1における1つの第2領域R2は、一方の第1外壁面36s1における2つの第2領域R2の間に配置されている。
【0049】
第2領域R2は、側壁部36のカバー31側の端部36aにも配置されている。端部36aにおいて第2領域R2が配置された部分の厚みは、第1領域R1が配置された部分の厚みよりも小さく、第1領域R1は第2領域R2よりも外側に位置している。第2領域R2とカバー31との間には、Y軸方向に沿って段差が形成されている。第2領域R2は、各第1外壁面36s1の抜き方向における一部に設けられている。すなわち、第2領域R2のX軸方向での長さは、側壁部36のX軸方向での長さよりも短い。第2領域R2は、側壁部36の底壁部32側の端部から離間して配置されている。
【0050】
図6~
図8に示されるように、隔壁部37は、各弁体30の側面30cを覆うように底壁部32の内壁面32bに立設されている。すなわち、隔壁部37は、各弁体30が収容される円柱状の収容空間S1を形成している。本実施形態では、隔壁部37と側壁部36の一部とが弁体30の側面30cを包囲することによって、収容空間S1を形成している。また、本実施形態では、一の弁体30を収容する隔壁部37と当該一の弁体30に隣接する位置に配置された他の弁体30を収容する隔壁部37とは、一体的に形成されている。このように、互いに異なる弁体30を収容する隔壁部37同士は、共有する部分を有していてもよい。
【0051】
本実施形態では、底壁部32の内壁面32bを基準として、側壁部36のカバー31側の端部36aは、隔壁部37のカバー31側の端部37aよりも高い位置にある。従って、ケース29にカバー31が取り付けられた状態において、カバー31が側壁部36の端部36aに接する一方で、カバー31と隔壁部37の端部37aとは互いに離間している。すなわち、カバー31と隔壁部37の端部37aとの間には空間S2が形成されている。当該空間S2は、内部空間Vから圧力調整弁12の内部に流入したガスの流路として機能する。
【0052】
弁体30は、連通孔33を塞ぐように、収容空間S1に収容されている。弁体30は、ゴム等の弾性体で形成された円柱状部材である。弁体30は、連通孔33を塞ぐ第1端面30aと、第1端面30aとは反対側に位置する第2端面30bと、第1端面30a及び第2端面30bを接続する側面30cとを有している。第1端面30aは、底壁部32の内壁面32bと対向している。第2端面30bは、カバー31と対向し、カバー31によって押圧される被押圧面である。弁体30は、第1端面30aが底壁部32の内壁面32bに対して押し付けられた状態で配置されることで、連通孔33を塞いでいる。弁体30は、内部空間Vの圧力に応じて、連通孔33を開閉させる。弁体30の側面30cと隔壁部37の内壁面又は側壁部36の内壁面との間には、隙間Gが設けられている。
【0053】
図6及び
図7に示されるように、隔壁部37の内壁面には、弁体30を位置決めするための突出部38が形成されている。突出部38は、隔壁部37の内壁面から内周側へ突出している。突出部38は、弁体30の中心位置が連通孔33の中心軸線からずれて配置された場合に、弁体30の側面30cと接触するように形成されている。このような突出部38により、弁体30の位置ずれを一定の範囲内に抑えることができる。本実施形態では、複数(ここでは6つ)の突出部38が、連通孔33の中心軸線回りに等ピッチで形成されている。
【0054】
図7及び
図8に示されるように、底壁部32は、内壁面32bに形成されたシール部39を含んでいる。シール部39は、内壁面32bからカバー31側に突出し、弁体30に押し付けられる。シール部39は、当該シール部39に対して押し付けられた弁体30の第1端面30aと接触することで、連通孔33と隙間Gとの間を開閉可能に封止している。シール部39は、内壁面32bで開口した連通孔33を囲むように形成されている。シール部39は、連通孔33の縁部に沿って、連通孔33の中心軸線を中心とする円環状に形成されている。シール部39は、連通孔33の全周を隙間無く囲むように形成されている。これにより、シール部39は、弁体30の第1端面30aと隙間無く接触しており、気密性が確保されている。
【0055】
連通孔33は、接合用突起34のバリを収容するための収容部40を含んでいる。収容部40は、連通孔33の外壁面32a側の部分に設けられている。収容部40は、連通孔33の断面積を外壁面32aに向かうにつれて拡大させるテーパ状の内面を有している。
【0056】
カバー31は、ケース29の開口を塞ぐ板状部材である。カバー31は、例えばPP、PPSまたは変性PPE等の樹脂で形成されている。カバー31は、ケース29の開口端面に溶着により接合されている。カバー31は、複数の弁体30をケース29の底壁部32に押し付ける押圧部材としても機能する。カバー31は、弁体30をケースの底壁部32に押し付けた状態を維持しつつ、ケース29の開口端面に接合されている。具体的には、カバー31の内面31aの縁部は、側壁部36の端部36aに例えば超音波溶着によって接合されている。
【0057】
カバー31は、内面31aに設けられた接合用突起31bを有している。接合用突起31bは、内面31aの縁部の全周にわたって略矩形環状に形成されている。接合用突起31bの断面形状は、内面31a側からケース29側に向かって先細りとなるテーパ状に形成されている。カバー31をケース29に取り付ける際には、接合用突起31bが側壁部36の端部36aに押し付けられながら超音波溶着が実施される。これにより、接合用突起31bの先端側の一部が溶かされて、カバー31がケース29側に押し込まれる。
【0058】
図6に示されるように、カバー31には、圧力調整弁12の内部のガスを圧力調整弁12の外部に排気するための排気口41が設けられている。本実施形態では一例として、矩形板状を有するカバー31の一対の対角部のそれぞれに、X軸方向に延びる断面円形状の排気口41が設けられている。排気口41は、対向方向から見て弁体30と重ならないように配置されている。なお、排気口41が設けられる位置及び形状、並びに排気口41の個数は、この例に限られない。
【0059】
図4及び
図8に示されるように、圧力調整弁12において、ケース29の連通孔33は、二次シール部23の連通孔26及び一次シール部22の連通孔25を介してモジュール本体11の内部空間Vと連通されている。内部空間Vの圧力が設定圧よりも低いときは、連通孔33が弁体30によって塞がれた閉弁状態に維持される。内部空間Vの圧力が上昇して設定圧以上になると、弁体30が底壁部32から離間するように弾性変形し、連通孔33の閉塞が解除された開弁状態となる。その結果、内部空間Vからのガスは、弁体30の側面30cと隔壁部37の内壁面との隙間G(収容空間S1)を介して、隔壁部37とカバー31との間に形成された空間S2へと流通する。そして、当該ガスは、空間S2から排気口41を介して圧力調整弁12の外部へと排気される。
【0060】
上述のバイポーラ電池2の製造方法では、モジュール本体11と圧力調整弁12とを接合する工程が実施される。本実施形態では、熱溶着の一つである熱板溶着によってモジュール本体11と圧力調整弁12とが接合される。具体的には、
図9(A)に示されるように、モジュール本体11の接合用突起27の先端27aを熱板Hに当接することで、接合用突起27を先端27aから溶融させる。また、
図9(B)に示されるように、圧力調整弁12の接合用突起34の先端34aを熱板Hに当接することで、接合用突起34を先端34aから溶融させる。接合用突起27を溶融させる工程、及び接合用突起34を溶融させる工程は同時に行われる。続いて、
図9(C)に示されるように、接合用突起27,34が溶融している間に、モジュール本体11の接合用突起27と圧力調整弁12の接合用突起34とを押し付けることにより、接合用突起27,34同士を溶着させる。これにより、接合用突起27,34同士が接合され、その結果、モジュール本体11と圧力調整弁12とが接合される。
【0061】
次に、モジュール本体11に対する圧力調整弁12の接合位置を検査する工程が実施される。この工程では、例えば、レーザがZ軸方向に沿って照射されることにより、モジュール本体11及び圧力調整弁12のZ軸方向の位置がそれぞれ検出される。圧力調整弁12のZ軸方向の位置は、第2領域R2のZ方向の位置とすることができる。検出されたモジュール本体11及び圧力調整弁12のZ軸方向の位置がそれぞれ予め定められた範囲内であれば、合格と判定される。
【0062】
上述の接合用突起34を溶融させる工程、及びモジュール本体11と圧力調整弁12とを接合する工程では、例えば、ロボットハンドを用いて圧力調整弁12を把持する。このとき、例えば、一対の第1外壁面36s1における各第2領域R2に、ロボットハンドを当接させ、圧力調整弁12をZ軸方向に挟み込んで把持する。
【0063】
次に、本実施形態に係るバイポーラ電池2の作用・効果について説明する。
【0064】
バイポーラ電池2では、圧力調整弁12の外壁面36sは、抜き勾配が設けられ、抜き方向に対して傾斜している第1領域R1に加えて、抜き勾配が設けられておらず、抜き方向に対して傾斜していない第2領域R2を含んでいる。第1領域R1は傾斜しているため、例えばロボットハンドにより安定して把持し難い。これに対し、第2領域R2は傾斜していないので、例えばロボットハンドにより安定して把持し易い。従って、第2領域R2によれば、例えばロボットハンドにより圧力調整弁12を安定して把持した状態で、モジュール本体11に対して圧力調整弁12を取り付けることができる。この結果、モジュール本体11に対する圧力調整弁12の取付け精度を向上させることができる。
【0065】
モジュール本体11に対する圧力調整弁12の接合位置を検査する工程では、第2領域R2の位置を圧力調整弁12の位置として検出することができる。上述のように、第2領域R2は傾斜していないので、圧力調整弁12の位置の検出精度を向上させることができる。
【0066】
外壁面36sは、互いに反対側を向く一対の第1外壁面36s1を有し、一対の第1外壁面36s1は、それぞれ第2領域R2を含んでいる。このため、例えばロボットハンドを各第2領域R2に当接させることで、圧力調整弁12を挟み込んで把持することができる。よって、圧力調整弁12を更に安定して把持することができる。この結果、モジュール本体11に対する圧力調整弁12の取付け精度を更に向上させることができる。
【0067】
一対の第1外壁面36s1は、互いに異なる数の第2領域R2を含んでいる。このため、一対の第1外壁面36s1を容易に区別することができる。これにより、圧力調整弁12を逆方向に取付ける取付け不良の発生を抑制することができる。
【0068】
第2領域R2は、外壁面36sの抜き方向における一部に設けられている。このため、第2領域R2が外壁面36sの抜き方向における全部に設けられている場合に比べて、ケース29を射出成形の金型から容易に抜き出すことができる。
【0069】
モジュール本体11と圧力調整弁12とを熱溶着により接合する際、接合用突起34が溶融されることにより、側壁部36の底壁部32側の部分では、強度が低下し易い。このため、例えば、側壁部36の底壁部32側の部分をロボットハンドが把持する場合、側壁部36が変形するおそれがある。これに対し、本実施形態では、第2領域R2は、側壁部36の底壁部32側の端部から離間して配置されている。したがって、第2領域R2がロボットハンドにより把持される場合も、側壁部36が変形し難い。
【0070】
第2領域R2は、抜き方向から見て、外壁面36sの一部に設けられている。このため、第2領域R2が、抜き方向から見て、外壁面36sの全部に設けられている場合に比べて、ケース29を射出成形の金型から容易に抜き出すことができる。
【0071】
以上、実施形態について詳細に説明されたが、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0072】
例えば、第2領域R2が外壁面36sの抜き方向における全部に設けられていてもよい。また、第2領域R2が、抜き方向から見て、外壁面36sの全部に設けられていてもよい。また、第2領域R2は、側壁部36の端部36aから離間して配置されていてもよい。
【0073】
例えば、第2外壁面36s2が第1領域R1及び第2領域R2を含み、第2外壁面36s2の第2領域R2を当接領域として機能させてもよい。この場合、第1外壁面36s1が第2領域R2を含んでいなくてもよい。
【0074】
例えば、端部36aにおいて第2領域R2が配置された部分の厚みは、第1領域R1が配置された部分の厚みよりも大きく、第2領域R2は第1領域R1よりも外側に位置していてもよい。また、この場合においても、第2領域R2が、抜き方向から見て、外壁面36sの全部に設けられていてもよいし、第2領域R2は、側壁部36の端部36aから離間して配置されていてもよい。
【0075】
例えば、弁体30は、円柱状部材に限られず、例えば多角形柱状部材であってもよい。また、この場合、隔壁部37は、弁体30の形状に応じた形状の収容空間S1を形成するように形成されればよい。
【0076】
排気口41は、カバー31以外の部材(例えばケースの側壁部等)に設けられてもよい。
【0077】
上記実施形態では、電池モジュールとしてのバイポーラ電池2はニッケル水素二次電池であるが、本発明は、特にニッケル水素二次電池には限られず、リチウムイオン二次電池等にも適用可能である。また、本発明は、バイポーラ電池2以外にも、複数の電極が積層された電極積層体と電極積層体を取り囲むように配置された枠体とを有するモジュール本体を備えた電池モジュールであれば適用可能である。
【符号の説明】
【0078】
2…バイポーラ電池(電池モジュール)、11…モジュール本体、12…圧力調整弁、13…バイポーラ電極(電極)、15…電極積層体、16…枠体、20…正極側終端電極(電極)、21…負極側終端電極(電極)、25,26…連通孔(第1連通孔)、29…ケース、33…連通孔(第2連通孔)、36s…外壁面、36s1…第1外壁面(外壁面部分)、V…内部空間。