(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】教材用水易解体性接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 4/04 20060101AFI20221004BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
C09J4/04
C09J11/06
(21)【出願番号】P 2019021883
(22)【出願日】2019-02-08
【審査請求日】2020-11-27
(31)【優先権主張番号】P 2018022464
(32)【優先日】2018-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】一色 絵利香
(72)【発明者】
【氏名】石▲崎▼ 謙一
(72)【発明者】
【氏名】堀江 洋慈
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 栄一
【審査官】長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-066980(JP,A)
【文献】特開昭62-153370(JP,A)
【文献】特開2000-073015(JP,A)
【文献】特開2008-229213(JP,A)
【文献】特開2000-053924(JP,A)
【文献】特開平04-070323(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 4/04
C09J 11/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤組成物であって、
前記接着剤組成物が、2-シアノアクリレート化合物と、水溶性化合物と、を含有し、
前記水溶性化合物が、スルホラン、ジメチルスルホン及びポリオキシエチレンデシルエーテルよりなる群から選ばれた少なくとも1種を含み、
前記接着剤組成物の硬化物の、JIS K 7361-1に準拠して測定される全光線透過率が80%以上であり、
前記硬化物を40℃の水に24時間浸漬した後にJIS K 7361-1に準拠して測定される全光線透過率が50%以下である
教材用水易解体性接着剤組成物。
【請求項2】
前記水溶性化合物が、スルホランを含む請求項1に記載の
教材用水易解体性接着剤組成物。
【請求項3】
前記硬化物を23℃の水に24時間浸漬した後にJIS K 7361-1に準拠して測定される全光線透過率が70%以下である請求項1又は請求項2に記載の
教材用水易解体性接着剤組成物。
【請求項4】
前記接着剤組成物の硬化物の、JIS K 7136に準拠して測定されるヘーズ値が1%以上70%以下であり、前記硬化物を40℃の水に24時間浸漬した後にJIS K 7136に準拠して測定されるヘーズ値が95%以上である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の
教材用水易解体性接着剤組成物。
【請求項5】
前記硬化物を23℃の水に24時間浸漬した後にJIS K 7136に準拠して測定されるヘーズ値が95%以上である、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の
教材用水易解体性接着剤組成物。
【請求項6】
前記水溶性化合物の含有量が、前記2-シアノアクリレート化合物及び前記水溶性化合物の合計含有量100質量部に対し、0.5質量部以上50質量部以下である請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の
教材用水易解体性接着剤組成物。
【請求項7】
前記2-シアノアクリレート化合物が、アルキル-2-シアノアクリレート化合物、又は、エーテル結合、カーボネート結合若しくはスルホニル結合を有する2-シアノアクリレート化合物である請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の
教材用水易解体性接着剤組成物。
【請求項8】
前記2-シアノアクリレート化合物が、エチル-2-シアノアクリレート、エトキシエチル-2-シアノアクリレート、メトキシエチル-2-シアノアクリレート、メトキシプロポキシプロピル-2-シアノアクリレート、テトラヒドロフルフリル-2-シアノアクリレート、グリセリンカーボネート-2-シアノアクリレート、スルホラニルメチル-2-シアノアクリレート、及び、メトキシエトキシエチル-2-シアノアクリレートよりなる群から選択される少なくとも1種の化合物である請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の
教材用水易解体性接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水易解体性接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
2-シアノアクリレート化合物を含有する接着剤組成物は、主成分である2-シアノアクリレート化合物が有する特異なアニオン重合性により、被着体表面に付着する僅かな水分等の微弱なアニオンによって重合を開始し、各種材料を短時間で強固に接合することができる。そのため、いわゆる、瞬間接着剤として、工業用、医療用、家庭用等の広範な分野において用いられている。
【0003】
2-シアノアクリレート化合物を含有する接着剤組成物は、その硬化物が硬く、優れたせん断接着強さを有する反面、接着性があまりに強力であることから、接着剤組成物を硬化させた後に剥離又は除去しようとした場合、時間がかかったり、被着物の破損が生じたりする場合がある。
【0004】
2-シアノアクリレート化合物を含有する接着剤組成物を剥離する技術として、例えば、特許文献1には、シアノアクリレートに水溶性ポリオキシアルキレングリコール系溶剤と水溶性界面活性剤を配合してなる硬化後の水溶解性を改良したシアノアクリレート接着剤組成物を熱水または加圧熱水に浸漬して剥離することが記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、石英ガラスの被加工物を固定剤で定盤に固定し、機械加工した後に加熱によって定盤から被加工品を剥離する方法であって、固定剤が紫外線硬化樹脂であり、被加工品を定盤から剥離する前に含ハロゲン有機溶媒を含浸させることを特徴とする剥離方法が記載されており、固定剤としてシアノアクリル系接着剤を用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-73015号公報
【文献】特開2011-104747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、接着剤組成物を剥離するため、硬化物を熱水又は加圧熱水(100℃~130℃)に20分~80分間浸漬する必要があり、特許文献2に記載の技術では、硬化物を水中で水が沸騰するまで加熱し、水が沸騰してから更に約5分~約20分間保持する必要があった。
そのため、例えば、人の手指同士が接着してしまった場合には、火傷の虞があることから、これらの文献に記載された方法を採用することができず、また、工業的用途の仮接着に用いた場合には、剥離に必要な熱量を確保及び維持するためにコスト高となるという問題があった。
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、対応するシアノアクリレート化合物のみを含有する場合に比べ、硬化した後において、水により容易に剥離又は除去することが可能な水易解体性接着剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 接着剤組成物であって、
前記接着剤組成物が、2-シアノアクリレート化合物と、
水溶性化合物と、を含有し、
前記接着剤組成物の硬化物の、JIS K 7361-1に準拠して測定される全光線透過率が80%以上であり、
前記硬化物を40℃の水に24時間浸漬した後にJIS K 7361-1に準拠して測定される全光線透過率が50%以下である
水易解体性接着剤組成物。
<2> 前記硬化物を23℃の水に24時間浸漬した後にJIS K 7361-1に準拠して測定される全光線透過率が70%以下である前記<1>に記載の水易解体性接着剤組成物。
<3> 前記接着剤組成物の硬化物の、JIS K 7136に準拠して測定されるヘーズ値が1%以上70%以下であり、前記硬化物を40℃の水に24時間浸漬した後にJIS K 7136に準拠して測定されるヘーズ値が95%以上である前記<1>又は<2>に記載の水易解体性接着剤組成物。
<4> 前記硬化物を23℃の水に24時間浸漬した後にJIS K 7136に準拠して測定されるヘーズ値が95%以上である、前記<1>~<3>のいずれか1つに記載の水易解体性接着剤組成物。
<5> 前記水溶性化合物の含有量が、前記2-シアノアクリレート化合物及び前記水溶性化合物の合計含有量100質量部に対し、0.5質量部以上50質量部以下である前記<1>~<4>のいずれか1つに記載の水易解体性接着剤組成物。
<6> 前記2-シアノアクリレート化合物が、アルキル-2-シアノアクリレート化合物、又は、エーテル結合、カーボネート結合若しくはスルホニル結合を有する2-シアノアクリレート化合物である前記<1>~<5>のいずれか1つに記載の水易解体性接着剤組成物。
<7> 前記2-シアノアクリレート化合物が、エチル-2-シアノアクリレート、エトキシエチル-2-シアノアクリレート、メトキシエチル-2-シアノアクリレート、メトキシプロポキシプロピル-2-シアノアクリレート、テトラヒドロフルフリル-2-シアノアクリレート、グリセリンカーボネート-2-シアノアクリレート、スルホラニルメチル-2-シアノアクリレート、及び、メトキシエトキシエチル-2-シアノアクリレートよりなる群から選択される少なくとも1種の化合物である前記<1>~<6>のいずれか1つに記載の水易解体性接着剤組成物。
<8> 前記水溶性化合物が、エチレンカーボネート、ジメチルスルホン、スルホラン、γ-ブチロラクトン、プロピレンカーボネート、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンジアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアセテート、ポリオキシアルキレンジアセテート、及び、脂肪酸ポリオキシエチレングリセロールボレートよりなる群から選択される少なくとも1種の化合物である前記<1>~<7>のいずれか1つに記載の水易解体性接着剤組成物。
<9> 仮固定用水易解体性接着剤組成物である前記<1>~<8>のいずれか1つに記載の水易解体性接着剤組成物。
<10> 教材用水易解体性接着剤組成物である前記<1>~<9>のいずれか1つに記載の水易解体性接着剤組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、対応するシアノアクリレート化合物のみを含有する場合に比べ、硬化した後において、水により容易に剥離又は除去することが可能な水易解体性接着剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施形態に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本願明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本発明において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
また、本発明において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。
【0012】
(水易解体性接着剤組成物)
本発明の水易解体性接着剤組成物(以下、単に「接着剤組成物」ともいう。)は、接着剤組成物であって、前記接着剤組成物が、2-シアノアクリレート化合物と、水溶性化合物と、を含有し、前記接着剤組成物の硬化物の、JIS K 7361-1に準拠して測定される全光線透過率が80%以上であり、前記硬化物を40℃の水に24時間浸漬した後にJIS K 7361-1に準拠して測定される全光線透過率が50%以下である。
【0013】
本発明者らが鋭意検討した結果、前記構成をとることにより、硬化した後に水により剥離又は除去可能な水易解体性接着剤組成物を提供できることを見出した。
これによる優れた効果の作用機構は明確ではないが、以下のように推定している。
水溶性化合物を含有し、前記接着剤組成物の硬化物の、JIS K 7361-1に準拠して測定される全光線透過率が80%以上であり、かつ、前記硬化物を40℃の水に24時間浸漬した後にJIS K 7361-1に準拠して測定される全光線透過率が50%以下であることにより、硬化物の吸水及び膨潤による変形、並びに、解体が生じやすく、また、接着界面への水の浸透、及び、接着力の低下が生じやすいため、硬化した後における水による剥離又は除去性(本発明において「水易解体性」ともいう。)に優れると推定される。
本発明の接着剤組成物は、水易解体性に優れるため、熱水又は加圧熱水により短時間で容易に剥離又は除去可能であることは勿論、例えば、常温(15℃~25℃)からぬるま湯程度の温度(30℃~45℃)範囲の水に浸漬等することにより、剥離又は除去することも可能である。
【0014】
<全光線透過率(40℃浸漬後)>
本発明の接着剤組成物の硬化物を40℃の水に24時間浸漬した後にJIS K 7361-1に準拠して測定される全光線透過率は、50%以下であり、水による剥離性の観点から、40%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましい。下限値は0%以上であることが好ましい。
【0015】
<全光線透過率(23℃浸漬後)>
本発明の接着剤組成物の硬化物を23℃の水に24時間浸漬した後にJIS K 7361-1に準拠して測定される全光線透過率は、特に常温(15℃~25℃)の水による剥離性の観点から、70%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましく、30%以下であることが更に好ましい。下限値は0%以上であることが好ましい。
【0016】
<全光線透過率(浸漬前)>
本発明の接着剤組成物の硬化物の23℃又は40℃におけるJIS K 7361-1に準拠して測定される全光線透過率は、特に常温(15℃~25℃)の水による剥離性の観点から、80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。上限値は100%以下であればよい。
【0017】
<ヘーズ値(40℃浸漬後)>
本発明の接着剤組成物の硬化物を40℃の水に24時間浸漬した後にJIS K 7136に準拠して測定されるヘーズ値は、水による剥離性の観点から、95%以上であることが好ましく、98%以上であることが好ましく、99%以上であることがより好ましい。
上記ヘーズ値の上限は、特に限定されず、100%以下であればよい。
【0018】
<ヘーズ値(23℃浸漬後)>
本発明の接着剤組成物の硬化物を23℃の水に24時間浸漬した後にJIS K 7136に準拠して測定されるヘーズ値は、特に常温(15℃~25℃)の水による剥離性の観点から、90%以上であることが好ましく、95%以上であることが好ましく、98%以上であることがより好ましい。
上記ヘーズ値の上限は、特に限定されず、100%以下であればよい。
【0019】
<全光線透過率及びヘーズの測定方法>
上記全光線透過率及び上記ヘーズは、下記の方法により測定される。
接着剤組成物を直径50mmのポリエチレン容器に約4g流し込み、N,N-ジメチル-p-トルイジンを3μL~4μL添加し撹拌した後、完全に硬化するまで静置して、直径50mmの硬化物を作製する。
硬化後、容器から硬化物を取り出し、それを2分割した半円型のものを、それぞれ試験片として試験及び評価に使用する。
その後、作製した半円型の2つの前記試験片のうち一方の試験片を試験片(A)として試験を行う。
まず、試験片Aの全光線透過率を、JIS K7361-1に準拠して、ヘーズメーター(NHD-2000、日本電色工業(株)製)を用いて測定する。
次に、試験片Aのヘーズを、JIS K7136に準拠して、ヘーズメーター(NHD-2000、日本電色工業(株)製)を用いて測定し、以下の式から算出する。
ヘーズ(%)=(全光線透過率-平行線透過率)/全光線透過率
いずれの試験においても、試験片を、ヘーズメーターの光源に垂直になるようにして試験片を押し付けた状態で測定する。
上記測定後、試験片Aは、温度23℃で、80mLの蒸留水に浸す。24時間静置後、試験片を蒸留水から取り出し、表面の水を良くふき取る。その後、上記全光線透過率の測定方法及びヘーズ値の測定方法と同様の方法により、全光線透過率(23℃浸漬後)及びヘーズ値(23℃浸漬後)を測定する。
同様に、同じ配合組成で作製した試験片Aを、温度40℃で、80mLの蒸留水に浸す。24時間静置後、試験片を蒸留水から取り出し、表面の水を良くふき取る。その後、上記全光線透過率の測定方法及びヘーズ値の測定方法と同様の方法により、全光線透過率(40℃浸漬後)及びヘーズ値(40℃浸漬後)を測定する。
【0020】
<2-シアノアクリレート化合物>
本発明の接着剤組成物は、2-シアノアクリレート化合物を含有する。
2-シアノアクリレート化合物としては、この種の接着剤組成物に一般に使用される2-シアノアクリレート化合物を特に限定されることなく用いることができる。この2-シアノアクリレート化合物としては、2-シアノアクリル酸のメチル、エチル、クロロエチル、n-プロピル、i-プロピル、アリル、プロパルギル、n-ブチル、i-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル、フェニル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロフルフリル、ヘプチル、2-エチルヘキシル、n-オクチル、2-オクチル、n-ノニル、オキソノニル、n-デシル、n-ドデシル、メトキシエチル、メトキシプロピル、メトキシイソプロピル、メトキシブチル、エトキシエチル、エトキシプロピル、エトキシイソプロピル、プロポキシメチル、プロポキシエチル、イソプロポキシエチル、プロポキシプロピル、ブトキシメチル、ブトキシエチル、ブトキシプロピル、ブトキシイソプロピル、ブトキシブチル、メトキシエトキシエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、ヘキサフルオロイソプロピル、フェニルエチル、フェノキシエチル、アルコキシポリエチレンオキシエチル、アルコキシポリプロピレンオキシプロピル、テトラヒドロフルフリル、グリセリンカーボネート、2-スルホラニルメチル、3-スルホラニルメチル等のエステルが挙げられる。
【0021】
また、2-シアノアクリレート化合物としては、水易解体性の観点から、アルキル-2-シアノアクリレート化合物、又は、エーテル結合、カーボネート結合若しくはスルホニル結合を有する2-シアノアクリレート化合物であることが好ましく、エーテル結合、カーボネート結合若しくはスルホニル結合を有する2-シアノアクリレート化合物であることがより好ましく、エーテル結合若しくはスルホニル結合を有する2-シアノアクリレート化合物であることが特に好ましい。
【0022】
中でも、2-シアノアクリレート化合物としては、水易解体性の観点から、エチル-2-シアノアクリレート、エトキシエチル-2-シアノアクリレート、メトキシエチル-2-シアノアクリレート、メトキシプロポキシプロピル-2-シアノアクリレート、テトラヒドロフルフリル-2-シアノアクリレート、グリセリンカーボネート-2-シアノアクリレート、スルホラニルメチル-2-シアノアクリレート、及び、メトキシエトキシエチル-2-シアノアクリレートよりなる群から選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
【0023】
【0024】
本発明の接着剤組成物に用いられる2-シアノアクリレート化合物は、1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の接着剤組成物における2-シアノアクリレート化合物の含有量は、水易解体性、接着性及び硬化性の観点から、接着剤組成物の全質量に対し、40質量%以上99.5質量%以下であることが好ましく、50質量%以上99.5質量%以下であることがより好ましく、60質量%以上90質量%以下であることが更に好ましく、70質量%以上85質量%以下であることが特に好ましい。
【0025】
<水溶性化合物>
本発明の接着剤組成物は、水溶性化合物を含有する。
水溶性化合物は、前記2-シアノアクリレート化合物に溶解可能であることが好ましい。
本発明において、水溶性化合物が、2-シアノアクリレート化合物に溶解可能であるとは、使用する2-シアノアクリレート化合物100質量部に対し、使用する水溶性化合物1質量部を25℃において混合撹拌し、目視により相分離が見られず、均一な混合物を形成できることを表す。
また、本発明において、「水溶性化合物」とは、水と任意の混合比で混和し溶液となるか、又は、水に対する溶解度(25℃)が1g/100g以上の化合物を意味する。
【0026】
本発明に用いられる水溶性化合物は、低分子化合物であっても、高分子化合物であってもよい。前記低分子化合物は、分子量1,000未満であることが好ましく、前記高分子化合物は、重量平均分子量1,000以上であることが好ましく、重量平均分子量1,000以上1,000,000以下であることがより好ましい。
なお、本発明における高分子化合物の数平均分子量(Mn)、及び、重量平均分子量(Mw)の値は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定するものとする。
【0027】
水溶性化合物としては、特に制限はないが、水易解体性、及び、2-シアノアクリレート化合物への相溶性の観点から、エステル結合、カーボネート結合及びスルホニル結合よりなる群から選ばれた少なくとも1種の結合を有する化合物であることが好ましく、カーボネート結合及びスルホニル結合よりなる群から選ばれた少なくとも1種の結合を有する化合物であることがより好ましい。
また、水溶性高分子化合物としては、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、酢酸セルロース、セルロースアセテートブチレート等が好ましく挙げられる。
更に、水溶性化合物として、水易解体性、及び、粘性の観点から、低分子化合物、及び、高分子化合物を併用することも好ましい。
【0028】
中でも、水溶性化合物としては、水易解体性、及び、2-シアノアクリレート化合物への相溶性の観点から、エチレンカーボネート、ジメチルスルホン、スルホラン、γ-ブチロラクトン、プロピレンカーボネート、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンジアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアセテート、ポリオキシアルキレンジアセテート、脂肪酸ポリオキシエチレングリセロールボレートよりなる群から選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましく、エチレンカーボネート、ジメチルスルホン、スルホラン、プロピレンカーボネート、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンジアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアセテート、ポリオキシアルキレンジアセテート、及び、脂肪酸ポリオキシエチレングリセロールボレートよりなる群から選択される少なくとも1種の化合物であることがより好ましい。
また、汎用性の観点からは、水溶性化合物としては、エチレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホン、プロピレンカーボネート、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンジアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアセテート、及び、ポリオキシアルキレンジアセテートよりなる群から選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
【0029】
上述のポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンジアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアセテート、ポリオキシアルキレンジアセテートとしては、例えば、下記式(1)で表される構造を有する化合物が好ましい。
R-(OCH2CHX)n・(OCH2CH2)m-OR’
(式(1)中、R、R’は水素原子又は直鎖若しくは分岐の炭素数1~20のアルキル基若しくはアルキルアセテート基、Xは炭素数1~10のアルキル基、nは0~20の整数、mは0~20の整数である。)
【0030】
上述の脂肪酸ポリオキシエチレングリセロールボレートとしては、例えば、東邦化学工業(株)製、エマルボン(登録商標)T-20(ポリオキシエチレングリセロールボレート-ラウレート)、同T-40(ポリオキシエチレングリセロールボレート-パルミテート)、同T-60(ポリオキシエチレングリセロールボレート-ステアレート)、同T-66(ポリオキシエチレングリセロールボレート-ステアレート)、同T-80(ポリオキシエチレングリセロールボレート-オレート)、同T-83(ポリオキシエチレングリセロールボレート-オレート)、同T-160(ポリオキシエチレングリセロールボレートイソステアレート)等が好ましく挙げられる。
【0031】
本発明の接着剤組成物に用いられる水溶性化合物は、1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の接着剤組成物における水溶性化合物の含有量は、水易解体性の観点から、接着剤組成物の全質量に対し、0.5質量%以上50質量%以下であることが好ましく、1質量%以上40質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上35質量%以下であることが更に好ましく、10質量%以上30質量%以下であることが特に好ましい。
【0032】
<その他の成分>
本発明の接着剤組成物は、前記2-シアノアクリレート化合物及び前記水溶性化合物以外のその他の成分を含有していてもよい。
その他の成分としては、従来、2-シアノアクリル酸エステルを含有する接着剤組成物に配合して用いられている安定剤、硬化促進剤、可塑剤、増粘剤、粒子、着色剤、香料、溶剤、強度向上剤等を、目的に応じて、接着剤組成物の硬化性及び接着強さ等を損なわない範囲で適量配合することができる。
【0033】
安定剤としては、(1)二酸化硫黄及びメタンスルホン酸等の脂肪族スルホン酸、p-トルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸、三弗化ホウ素メタノール、三弗化ホウ素ジエチルエーテル等の三弗化ホウ素錯体、HBF4、トリアルキルボレート等のアニオン重合禁止剤、(2)ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t-ブチルカテコール、カテコール及びピロガロール等のラジカル重合禁止剤などが挙げられる。これらの安定剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
硬化促進剤は、2-シアノアクリレート系接着剤組成物のアニオン重合を促進するものであれば、いずれも使用することができる。硬化促進剤としては、例えば、ポリエーテル化合物、カリックスアレン類、チアカリックスアレン類、ピロガロールアレン類、及びオニウム塩等が挙げられる。これらの硬化促進剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
また、可塑剤としては、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、セバシン酸ジメチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソトリデシル、フタル酸ジペンタデシル、テレフタル酸ジオクチル、イソフタル酸ジイソノニル、トルイル酸デシル、ショウノウ酸ビス(2-エチルヘキシル)、2-エチルヘキシルシクロヘキシルカルボキシレート、フマル酸ジイソブチル、マレイン酸ジイソブチル、カプロン酸トリグリセライド、安息香酸2-エチルヘキシル、ジプロピレングリコールジベンゾエート等が挙げられる。これらの中では、2-シアノアクリレート化合物との相溶性がよく、かつ可塑化効率が高いという点から、アセチルクエン酸トリブチル、アジピン酸ジメチル、フタル酸ジメチル、安息香酸2-エチルヘキシル、ジプロピレングリコールジベンゾエートが好ましい。これらの可塑剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
増粘剤としては、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチルとアクリル酸エステルとの共重合体、メタクリル酸メチルとその他のメタクリル酸エステルとの共重合体、アクリルゴム、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン、セルロースエステル、ポリアルキル-2-シアノアクリル酸エステル及びエチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。これらの増粘剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
接着剤組成物に配合してもよい粒子は、接着剤組成物を使用した際の接着剤層の厚さを調整するためのものである。
前記粒子の平均粒子径は、10μm~200μmであることが好ましく、15μm~200μmであることがより好ましく、15μm~150μmであることが更に好ましい。
粒子の材質は、使用する2-シアノアクリレート化合物に不溶であり、重合等の変質を引き起こさないものであれば特に限定されない。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド等の熱可塑性樹脂;不飽和ポリエステル、ジビニルベンゼン重合体、ジビニルベンゼン-スチレン共重合体、ジビニルベンゼン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ジアリルフタレート重合体等の架橋樹脂;球状シリカ、ガラスビーズ、ガラスファイバー等の無機化合物;シリコーン化合物;有機ポリマー骨格とポリシロキサン骨格を含んでなる有機無機複合粒子等が挙げられる。
また、粒子の含有量は特に限定されないが、2-シアノアクリレート化合物の含有量を100質量部とした場合に、0.1質量部~10質量部であることが好ましく、1質量部~5質量部であることがより好ましく、1質量部~3質量部であることが更に好ましい。前記0.1質量部~10質量部の範囲であると、硬化速度や接着強さに与える影響を少なくすることができる。
本発明における粒子の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置によって測定した体積基準の平均値である。
【0038】
本発明の水易解体性接着剤組成物は、特に制限はなく、種々の用途に用いることができる。
中でも、本発明の水易解体性接着剤組成物は、接着した箇所の接着剤組成物又は不要な箇所に付着し硬化した接着剤組成物を、水により簡便に剥離又は除去することができるため、例えば、仮固定用水易解体性接着剤組成物、又は、教材用水易解体性接着剤組成物として好適に用いることができる。本発明の水易解体性接着剤組成物は、例えば、常温(15℃~25℃)からぬるま湯程度の温度(30℃~45℃)範囲の水に浸漬等することにより、剥離又は除去することが可能であるため、例えば、手指などの不要な箇所に付着し硬化しても、水により容易に剥離又は除去することができる。また、常温からぬるま湯程度の温度範囲の水により、剥離又は除去することが可能であるため、工業的用途の仮固定に用いた場合には、剥離に必要な熱量を低減することができ、コストを削減することができる。
ここで、工業的用途の仮固定としては、例えば、半導体ウェハ等の各種電子材料、光学材料等と、研磨用定盤等の各種治具との仮固定等が挙げられる。
また、本発明の水易解体性接着剤組成物により接着する被接着材としては、特に制限はなく、無機化合物であっても、有機化合物であっても、無機-有機複合物であってもよく、また、同じ材質であっても、異なる材質のものであってもよい。また、本発明の水易解体性接着剤組成物は、固体状の任意の形状のものを接着することができる。
【0039】
本発明の水易解体性接着剤組成物は、仮固定方法にも好適に用いることができる。
即ち、本発明の仮固定方法は、
2-シアノアクリレート化合物と、水溶性化合物とを混合し、本発明に係る水易解体性接着剤組成物を作製する工程(以下、「接着剤組成物作製工程」という。)と、
複数の部材間に上記接着剤組成物からなる接着層を形成する工程(以下、「接着層形成工程」という。)と、
上記複数の部材間に形成された上記接着層を硬化させて硬化物とし、該硬化物により上記複数の部材同士を仮接着する工程(以下、「仮接着工程」という。)と、
上記硬化物を水に接触させて解体し、上記複数の部材同士を分離する工程(以下、「分離工程」という。)と、
をこの順に有し、
前記硬化物を40℃の水に24時間浸漬したときの吸水率が5%以上である。
また、本発明の仮固定方法は、上記仮接着固定と上記分離工程との間に、仮接着した上記部材を所望の形状に加工する工程(以下、「加工工程」という。)を有していてもよい。
以下、本発明の仮固定方法が有する各工程について説明する。
【0040】
接着剤組成物作製工程は、2-シアノアクリレート化合物と、水溶性化合物とを混合し、本発明に係る水易解体性接着剤組成物を作製する工程である。
前記接着剤組成物の硬化物を40℃の水に24時間浸漬したときの吸水率は5%以上である。
本工程に用いることができる2-シアノアクリレート化合物及び水溶性化合物については上記したとおりである。
本工程において、2-シアノアクリレートと水溶性化合物とを混合、撹拌し、均一液を得ることで、接着剤組成物を作製することができる。2-シアノアクリレートと水溶性化合物とを混合する方法は特に限定されないが、室温から60℃以下の温度で、混合液を放置するか、攪拌機等を使って混合することによって作製することができる。
【0041】
接着層形成工程は、複数の部材のうち少なくとも1つの部材上、又は、複数の部材間に上記接着剤組成物からなる接着層を形成する工程である。
接着層形成工程は、例えば、固定する一方または複数の部材の被着面に接着剤組成物を塗布し、該塗布した箇所に他の部材を重ねること、及び、その繰り返しを行う工程とすることができる。本形態において、塗布するためには、被着体の形状に合わせて、ディスペンサー、コーター、ロール、はけ、へら、スプレー、塗布冶具等を用いてもよい。あるいは、予め積層した被着体を接着剤組成物に浸し、被着体の隙間に接着剤組成物を浸み込ませる方法もあげられる。被着体としては、接着剤組成物および常温からぬるま湯程度の温度の水で変質しないものであれば特に限定されず、金属、セラミックス、プラスチックなど用いることができる。
【0042】
仮接着工程は、上記複数の部材間に塗布された上記接着剤組成物を硬化させて硬化物とし、上記硬化物により上記複数の部材同士を仮接着する工程である。
上記接着剤組成物は、僅かな湿気で瞬間的に硬化可能であるため、特別な装置や特殊な条件を設ける必要なく硬化物を得ることができる。硬化反応を促進するために、被着体に影響がない範囲、例えば40℃から100℃程度に加熱して硬化を行っても良い。
【0043】
分離工程は、硬化物を水に接触させて解体し、上記複数の部材同士を分離する工程である。
分離工程においては、硬化物を水に接触させる方法としては、被着体を水に浸漬する、流水に曝す、被着体に水を噴霧する方法などがあげられる。処理時間は、水の接触方法や加熱温度にもよるが、例えば、10秒~3分の範囲であることが好ましい。また、被着体と常温からぬるま湯程度の温度の水とが接触する時、被着体に機械的な外力を加えたり、超音波を照射したりして、分離を促進することも好ましい。
【0044】
加工工程は、上記仮接着固定と上記分離工程との間に、仮接着した上記部材を所望の形状に加工する工程である。加工工程において、所望の形状に切断、研削、研磨、エッチング等の加工を施しても良い。
【実施例】
【0045】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例により限定されるものではない。また、以下において「部」及び「%」は、特に断らない限り、「質量部」及び「質量%」をそれぞれ意味する。
【0046】
1.試験方法
1-1.試験片作製
(実施例1~11、及び、比較例1~5)
表1又は表2に記載の2-シアノアクリレート化合物に、表1又は表2に記載の水溶性化合物を表1又は表2に記載の含有量となるように加え、均一になるまで撹拌し、実施例1~11、及び、比較例1~5に係る接着剤組成物を作製した。各接着剤組成物を直径50mmのポリエチレン容器に約4g流し込み、N,N-ジメチル-p-トルイジンを3μL~4μL添加し撹拌した後、完全に硬化するまで静置して、直径50mm、厚さ16±5mmの範囲内の厚さの硬化物を作製した。硬化後、容器から硬化物を取り出し、それを2分割した半円型のものを、試験及び評価に使用した。
【0047】
1-2.浸水試験
1-1のように作製した試験片の片方を浸水用(A)、もう片方を試験前比較用(B、不浸水)として使用した。
試験片Aは、温度23℃の雰囲気下、80mLの蒸留水に浸した。24時間静置後、試験片を蒸留水から取り出し、表面の水を良くふき取って、23℃の試験として評価した。
同様に、同じ配合組成で作製した試験片Aを、温度40℃の雰囲気下、80mLの蒸留水に浸した。24時間静置後、試験片を蒸留水から取り出し、表面の水を良くふき取って、40℃の試験として評価した。
【0048】
2.評価方法
(1)吸水率及び溶出率
浸水試験前の試験片Aの質量(a)、その試験片Aの浸水試験後の質量(b)、更にその試験片Aの温度50℃20時間真空乾燥による脱水後の質量(c)、浸水していない試験前比較用の試験片Bの質量(d)、その試験片Bの温度50℃20時間真空乾燥による脱水後の質量(e)を、23℃の試験、又は、40℃の試験についてそれぞれ測定した。
前記a~eの値を用い、下式の通り、吸水率及び溶出率を算出した。結果は、表1の通りである。
吸水率(%):((b-c)-(a×(d-e)/d))/(a-a×(d-e/d))×100
溶出率(%):((a-c)-(a×(d-e)/d))/(a-a×(d-e/d))×100
【0049】
(2)全光線透過率及びヘーズ
全光線透過率は、JIS K7361-1に準拠して、ヘーズメーター(NHD-2000、日本電色工業(株)製)を用いて測定した。
ヘーズは、JIS K7136に準拠して、ヘーズメーター(NHD-2000、日本電色工業(株)製)を用いて測定し、以下の式から算出した。
ヘーズ(%)=(全光線透過率-平行線透過率)/全光線透過率
試験片は、1-1記載の方法で作製した直径50mm、測定個所の厚さ16±5mmの範囲内の半円型の硬化物板を、ヘーズメーターの光源に垂直になるようにして試験片を押し付けた状態で測定した。
まず浸水前の試験片を測定し、前記浸水試験と同様な方法で浸水試験後、表面の水をふき取り浸水後の試験片として測定した。結果は表2の通りである。
【0050】
【0051】
【0052】
<接着、及び、水による剥離性試験>
人の指を用いて、実施例2、3、6、7及び9~11、並びに、比較例1、2、4及び5に係る接着剤組成物を用い、3人の評価者により接着及び剥離試験を行った。
接着剤組成物1滴を人差し指にのせ、親指を軽く押し当てて薄く押し広げ、親指と人差し指とを接着した。
実施例2、3、6、7及び9~11、並びに、比較例1、2、4及び5に係る接着剤組成物は、いずれも30秒以内で親指と人差し指とが剥がれなくなった。
次に40℃の温水に接着した指をつけかるく揉み、親指と人差し指とが分離するまでの時間を測定した。3人の評価者による測定値の平均値を算出した結果を表3に示す。なお、実施例11は、1人の評価者のみの値である。
【0053】
【0054】
実施例2、3、6、7及び9~11に係る接着剤組成物を用いた場合は、対応する2-シアノアクリレート化合物のみを含有する比較例1、2、4及び5に係る組成物を用いた場合よりも早く剥がすことができた。
よって、本発明の水易解体性接着剤組成物は、対応するシアノアクリレート化合物のみを含有する場合に比べ、硬化後において、水により容易に剥離又は除去することができた。
また、表1又は表2に示す吸水率及び溶出率の少なくともいずれかの値が大きいほど、硬化後の水による剥離性により優れるものであった。
更に、表2に示す浸水後のヘーズが高いか、浸水後の全光線透過率が低いほど、硬化後の水による剥離性により優れるものであった。
【0055】
(実施例12~33、及び、比較例6)
表4又は表5に記載の2-シアノアクリレート化合物に、表4又は表5に記載の水溶性化合物を表4又は表5に記載の含有量となるように加えた以外は、実施例1と同様にして、実施例12~33、及び、比較例6に係る接着剤組成物をそれぞれ作製した。
得られた接着剤組成物を用い、実施例1と同様にして、全光線透過率及びヘーズの評価を行い、また、得られた接着剤組成物を用い、1人又は2人の評価者により行い、また、指同士を接着後2分経過後に剥離試験を行った以外は、実施例2と同様にして、接着及び剥離試験を行った。
評価結果を表4及び表5に示す。
【0056】
【0057】
【0058】
表4及び表5に記載の水溶性化合物のうち、上述したもの以外のSP値は以下の通りである。
トリエチレングリコールジメチルエーテル:8.37(cal/cm3)0.5
テトラエチレングリコールジメチルエーテル:8.55(cal/cm3)0.5
ノイゲンXL-40(ポリオキシエチレンデシルエーテル(オキシエチレン鎖の数=4)、第一工業製薬(株)製):8.96(cal/cm3)0.5(上述の式(1)において、Rの分岐数:1、X:CH3,n:4と仮定した場合。)
【0059】
表4及び表5に示すように、実施例12~33の水易解体性接着剤組成物は、硬化後の水による剥離性に優れるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の水易解体性接着剤組成物は、2-シアノアクリレート化合物を含有し、いわゆる、瞬間接着剤として一般家庭用、教材用、建築材料用、医療分野等の他、各種産業界などの広範な製品、技術分野において利用することができる。特に、仮接着用、及び、教材用に有用である。
また、本発明の水易解体性接着剤組成物は、同種の被接着材間だけでなく、特に異種の被接着材間(例えば、金属と樹脂との間)の接着に好適に使用することができる。