(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】回路装置及び電子制御ユニットと回路装置との接続構造
(51)【国際特許分類】
H01R 31/08 20060101AFI20221004BHJP
H01R 12/73 20110101ALI20221004BHJP
【FI】
H01R31/08 N
H01R12/73
(21)【出願番号】P 2019047232
(22)【出願日】2019-03-14
【審査請求日】2021-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】菊田 高宗
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-116767(JP,A)
【文献】特開2004-030993(JP,A)
【文献】実開平04-134075(JP,U)
【文献】米国特許第07963776(US,B1)
【文献】実開昭51-077594(JP,U)
【文献】米国特許第04054939(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/73
H01R 31/08
H01R 29/00
H01R 11/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層体と複数の端子とを備え、
前記積層体は複数の層を含み、
前記積層体には、前記複数の層を貫通する孔が複数形成されており、
前記複数の層はそれぞれが、導体によって形成された接続部材を有し、
前記接続部材は、複数の前記孔それぞれに対応する位置に設けられた複数の接続部と前記複数の接続部同士をつなぐ連結部とを有し、
前記複数の端子は前記複数の層にそれぞれ対応する複数の種類の端子を含み、
前記複数の種類の端子はそれぞれが複数の前記孔のうち任意の孔に挿入されて前記複数の層のうちいずれか1つの対応する層の前記接続部と選択的に接続可能であ
り、
前記複数の層は第1層と第2層とを有し、
前記複数の種類の端子は第1層用端子と第2層用端子とを含み、
前記第2層は前記第1層よりも前記端子が挿入される側に位置し、
前記第1層用端子は前記第1層に接続される端子であり、
前記第2層用端子は前記第2層に接続される端子であり、前記第1層用端子よりも短く、
前記第1層に形成された前記孔は、前記第2層に形成された前記孔よりも小さく、
前記第1層用端子は前記第1層に形成された前記孔の1つ及び前記第2層に形成された前記孔の1つを貫通しつつ前記第1層に接続され、
前記第2層用端子は前記第2層に形成された前記孔の別の1つを貫通しつつ前記第2層に接続されており、前記第1層に形成された前記孔よりも大きく形成されている、回路装置。
【請求項2】
請求項1に記載の回路装置であって、
前記複数の種類の端子は、被覆付端子を含み、
前記被覆付端子は、端子本体と絶縁被覆とを有し、
前記端子本体は、前記複数の層のうちの接続相手である1つの層に対応する第1部分と、前記複数の層のうちの接続相手ではない層に対応する第2部分とを有し、
前記絶縁被覆が前記第2部分の周囲に形成されている、回路装置。
【請求項3】
請求項1
又は請求項2に記載の回路装置であって、
前記複数の層における各層の厚みが異なっている、回路装置。
【請求項4】
請求項1から請求項
3のいずれか1項に記載の回路装置であって、
前記複数の層は、前記接続部材における電圧値が相互に異なる複数の電圧層を含む、回路装置。
【請求項5】
積層体と複数の端子とを備え、
前記積層体は複数の層を含み、
前記積層体には、前記複数の層を貫通する孔が複数形成されており、
前記複数の層はそれぞれが、導体によって形成された接続部材を有し、
前記接続部材は、複数の前記孔それぞれに対応する位置に設けられた複数の接続部と前記複数の接続部同士をつなぐ連結部とを有し、
前記複数の端子は前記複数の層にそれぞれ対応する複数の種類の端子を含み、
前記複数の種類の端子はそれぞれが複数の前記孔のうち任意の孔に挿入されて前記複数の層のうちいずれか1つの対応する層の前記接続部と選択的に接続可能であ
り、
前記複数の層は、前記接続部材における電圧値が相互に異なる複数の電圧層を含み、
前記複数の電圧層は、前記端子が挿入される側から順に前記電圧値が高くなるように積層されている、回路装置。
【請求項6】
請求項
5に記載の回路装置であって、
前記複数の電圧層は、第1の電圧値を有する第1のバッテリに接続された第1電圧層と、前記第1の電圧値よりも低い第2の電圧値を有する第2のバッテリに接続された第2電圧層とを含む、回路装置。
【請求項7】
請求項1から請求項
6のいずれか1項に記載の回路装置であって、
前記複数の層は通信層を含む、回路装置。
【請求項8】
請求項
7に記載の回路装置
と、
電子制御ユニット
と、を備え、
前記電子制御ユニットは前記通信層に接続されており、外部機器から送られてきた信号のうち前記通信層に接続された機器への信号を選択的に前記通信層に送る、
電子制御ユニットと回路装置との接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載された積層型ジョイントコネクタは、単層ハウジング内に複数本の積層端子を平面的に配列した単層ユニットを複数層積層して構成される積層体と、この積層体を積層方向に貫通して前記積層端子を選択的に接続する複数本の雄端子とを備えており、異なる層間の積層端子を雄端子によって接続している。
【0003】
特許文献2に記載された電気接続箱は、モジュールプレート上に配した接続部材にそれぞれ電線を接続して該モジュールプレートを複数積層することによりモジュールプレートの積層体を構成し、該モジュールプレートの積層体に層間を貫き抜ける接続バーを貫通させて該接続バーにより各層間の接続部材同士を電気接続することにより、全体で所望の回路を構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-30993号公報
【文献】特開2002-10444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の積層型ジョイントコネクタにおいて回路構成に設計変更があった場合、電線の抜き差しが必要となり、端子の接続先を確認する必要がある。同様に特許文献2に記載の電気接続箱において回路構成に設計変更があった場合、電線接続金具の取り換えが必要となり、分解の必要がある。
【0006】
そこで、回路の接続部分において設計変更に容易に対応できるようにする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の回路装置は、積層体と複数の端子とを備え、前記積層体は複数の層を含み、前記積層体には、前記複数の層を貫通する孔が複数形成されており、前記複数の層はそれぞれが、導体によって形成された接続部材を有し、前記接続部材は、複数の前記孔それぞれに対応する位置に設けられた複数の接続部と前記複数の接続部同士をつなぐ連結部とを有し、前記複数の端子は前記複数の層にそれぞれ対応する複数の種類の端子を含み、前記複数の種類の端子はそれぞれが複数の前記孔のうち任意の孔に挿入されて前記複数の層のうちいずれか1つの対応する層の前記接続部と選択的に接続可能である、回路装置である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、回路の接続部分において設計変更が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は実施形態1にかかる回路装置を示す平面図である。
【
図2】
図2は
図1におけるII-II線に沿った概略断面図である。
【
図3】
図3は積層体における一の層を示す分解斜視図である。
【
図4】回路装置を車両に適用する際の接続例を示すブロック図である。
【
図5】
図5は回路装置を車両に適用したときの配線例を示すブロック図である。
【
図6】
図6は実施形態2にかかる回路装置を示す側面図である。
【
図7】
図7は実施形態3にかかる回路装置を示す側面図である。
【
図8】
図8は実施形態4にかかる回路装置を示す分解斜視図である。
【
図9】
図9は積層体の変形例を示す分解斜視図である。
【
図10】
図10は積層体の別の変形例を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示の回路装置は、次の通りである。
(1)積層体と複数の端子とを備え、前記積層体は複数の層を含み、前記積層体には、前記複数の層を貫通する孔が複数形成されており、前記複数の層はそれぞれが、導体によって形成された接続部材を有し、前記接続部材は、複数の前記孔それぞれに対応する位置に設けられた複数の接続部と前記複数の接続部同士をつなぐ連結部とを有し、前記複数の端子は前記複数の層にそれぞれ対応する複数の種類の端子を含み、前記複数の種類の端子はそれぞれが複数の前記孔のうち任意の孔に挿入されて前記複数の層のうちいずれか1つの対応する層の前記接続部と選択的に接続可能である、回路装置である。
複数の端子として複数の層にそれぞれ対応する複数の種類の端子が設けられ、複数の種類の端子はそれぞれが複数の孔のうち任意の孔に挿入されて複数の層のうちいずれか1つの対応する層の接続部と選択的に接続可能であるため、端子の抜き差しによって所定の層に接続できるようになり、もって、回路の接続部分において設計変更に容易に対応できる。
(2)前記複数の種類の端子は、被覆付端子を含み、前記被覆付端子は、端子本体と絶縁被覆とを有し、前記端子本体は、前記複数の層のうちの接続相手である1つの層に対応する第1部分と、前記複数の層のうちの接続相手ではない層に対応する第2部分とを有し、前記絶縁被覆が前記第2部分の周囲に形成されていることも考えられる。この場合、端子本体が接続相手とならない層と接続されることを絶縁被覆によって抑制できる。
(3)前記複数の層は第1層と第2層とを有し、前記複数の種類の端子は第1層用端子と第2層用端子とを含み、前記第2層は前記第1層よりも前記端子が挿入される側に位置し、前記第1層用端子は前記第1層に接続される端子であり、前記第2層用端子は前記第2層に接続される端子であり、前記第1層用端子よりも短いことも考えられる。この場合、第2層用端子が第1層用端子よりも短いため、第1層に接続されにくい。
(4)前記第1層に形成された前記孔は、前記第2層に形成された前記孔よりも小さく、前記第1層用端子は前記第1層に形成された前記孔の1つ及び前記第2層に形成された前記孔の1つを貫通しつつ前記第1層に接続され、前記第2層用端子は前記第2層に形成された前記孔の別の1つを貫通しつつ前記第2層に接続されており、前記第1層に形成された前記孔よりも大きく形成されていることも考えられる。この場合、第2層用端子が第1層に形成された孔を貫通しにくいため、第2層用端子が第1層に接続されにくい。
(5)前記複数の層における各層の厚みが異なっていることも考えられる。この場合、端子においても層に接続される部分の間隔が異なるため、差込不足の状態で使用されることを抑制できる。
(6)前記複数の層は、前記接続部材における電圧値が相互に異なる複数の電圧層を含むことも考えられる。この場合、端子が異なる電源電圧に選択的に接続可能となる。
(7)前記複数の電圧層は、前記端子が挿入される側から順に前記電圧値が高くなるように積層されていることも考えられる。この場合、低圧の層用の端子が高圧の層に誤って接続されることを抑制しやすい。
(8)前記複数の電圧層は、第1の電圧値を有する第1のバッテリに接続された第1電圧層と、前記第1の電圧値よりも低い第2の電圧値を有する第2のバッテリに接続された第2電圧層とを含むことも考えられる。この場合、異なる電源電圧を簡易に供給可能となる。
(9)前記複数の層は通信層を含むことも考えられる。この場合、通信層に通信線を接続できる。
(10)電子制御ユニットをさらに備え、前記電子制御ユニットは前記通信層に接続されており、外部機器から送られてきた信号のうち前記通信層に接続された機器への信号を選択的に前記通信層に送ることも考えられる。この場合、通信層に接続された機器に対する信号かを取捨選択できる。
【0011】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の回路装置の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0012】
[実施形態1]
以下、実施形態1にかかる回路装置について説明する。
図1は実施形態1にかかる回路装置10を示す平面図である。
図2は
図1におけるII-II線に沿った概略断面図である。なお
図2において端子40は断面図とされていない。
図3は積層体20における一の層22を示す分解斜視図である。
【0013】
回路装置10は、積層体20と複数の端子40とを備える。積層体20は、複数(ここでは6つ)の層22を含む。積層体20には、複数の層22を貫通する孔24が複数形成されている。各孔24には端子40が挿入可能である。積層体20における孔24の開口部が端子40を挿入する挿入口とされる。孔24に挿入された端子40は、複数の層22のいずれかと電気的に接続される。積層体20において異なる層22同士は電気的に接続されていない。ここでは各層22は、共通の構成を有している。もっとも各層は異なる構成を有していてもよい。以下では、6つの層22について区別する必要がある場合、層22a、22b、22c、22d、22e、22fと称することがある。
【0014】
各層22は、導体によって形成された接続部材26を有する。接続部材26は、複数の接続部27と複数の接続部27同士をつなぐ連結部28とを有する。複数の接続部27は、複数の孔24それぞれに対応する位置に設けられている。一の層22において複数の接続部27は連結部28によってつながっているため、複数の接続部27は同電位とされる。本例では平板状部材に複数の孔29が形成されて連結部28とされている。接続部27は、孔29の周縁部から孔29の軸方向に突出するように形成された一対の板状部を有している。板状部は板バネ状に形成されている。より詳細には、一対の板状部における基端部から中間部までの部分は、徐々に接近して孔29を塞ぐように形成されている。一対の板状部における中間部から先端部までの部分は、徐々に離間して孔29を開くように形成されている。一対の板状部が最も接近した最近接部の間隔は、端子40の厚み寸法よりも小さくなっている。最近接部よりも先端部が最近接部に端子40を誘い込む誘導部とされている。従って、端子40が孔24に挿入されると、端子40の先端が誘導部から最近接部に導かれ、最近接部が広がりつつ端子40に接触する。これにより接続部27のうち少なくとも最近接部が端子40と電気的に接続可能とされている。接続部27と連結部28とは別に成形されて溶接されていてもよい。連結部28を構成する平板状部材の一部が切り起こされることによって接続部27が形成されていてもよい。
【0015】
各層22の接続部材26は一定位置に支持されている。一定位置は、接続部材26における孔29の位置が合った位置である。ここでは、各層22がハウジング30を有している。ハウジング30は、接続部材26を収容可能である。ハウジング30に収容された接続部材26はハウジング30内の一定位置に支持される。そしてハウジング30同士が位置決めされつつ重なることによって積層体20において各層22の接続部材26が一定位置に支持される。従って、ハウジング30は接続部材26を一定位置に支持する支持部材として機能する。
【0016】
ハウジング30は箱32と蓋36とを有する。箱32は一方が開口した直方体箱状に形成されている。箱32の内部に接続部材26を収容することが可能である。蓋36は方形平板状に形成されている。箱32の内部に接続部材26が収容された状態で、蓋36が箱32の開口部を塞ぐことが可能である。ここでは箱32のうち積層方向を向く面が開口している。このため箱32のうち開口部と反対側に位置する底板には複数の孔33が形成されている。また蓋36にも複数の孔37が形成されている。箱32の底板における孔33、及び蓋36における孔37は接続部材26における孔29に対応する位置に形成されている。つまり箱32の底板における孔33、及び蓋36における孔37は配列が同じであり、接続部材26における孔29と共に積層体20における孔24一部をなしている。また複数のハウジング30間で孔33、37の配列が同じである。
【0017】
なお積層方向一端に位置するハウジング30以外のハウジング30における蓋36は省略されていてもよい。この場合、蓋36が省略されたハウジング30に対して開口部側に重なるハウジング30が、蓋36が省略されたハウジング30の開口部を塞ぐ蓋となることができる。
【0018】
複数のハウジング30が積層される場合、積層されたハウジング30同士を固定する固定部が設けられていると良い。例えば箱32の隅などに固定部としてねじ穴が形成されて、複数のハウジング30がねじ止めされていてもよい。また例えば固定部として箱32同士を合体させる凸部と凹部とが形成されていてもよい。
【0019】
複数の端子40は複数の層22にそれぞれ対応する複数の種類の端子40a、40b、40c、40d、40e、40fを含む。複数の種類の端子40a、40b、40c、40d、40e、40fはそれぞれが複数の孔24のうち任意の孔24に挿入されて複数の層22のうちいずれか1つの対応する層22a、22b、22c、22d、22e、22fの接続部27と選択的に接続可能である。ここでは端子40aが層22aに接続され、端子40bが層22bに接続され、端子40cが層22cに接続され、端子40dが層22dに接続され、端子40eが層22eに接続され、端子40fが層22fに接続されるものとして説明する。
【0020】
複数の種類の端子40a、40b、40c、40d、40e、40fは、被覆付端子である。被覆付端子は、端子本体42と絶縁被覆46とを有する。端子本体42は、導体によって形成されている。端子本体42は、接続相手である層22に対応する第1部分と、接続相手ではない層22に対応する第2部分とを有する。絶縁被覆46が第2部分の周囲に形成されている。複数の種類の端子40a、40b、40c、40d、40e、40fにおいて端子本体42は共通の形状に形成されている。共通の形状である端子本体42に対して絶縁被覆46が設けられる位置が異なることによって、各層22に対応可能な複数の種類の端子40a、40b、40c、40d、40e、40fを得ることができる。
【0021】
このように複数の種類の端子40a、40b、40c、40d、40e、40fは積層体20に差し込まれることによって、所定の層22に接続可能である。また複数の種類の端子40a、40b、40c、40d、40e、40fは積層体20から抜かれることによって、所定の層22との接続状態を解消可能である。このため、複数の種類の端子40a、40b、40c、40d、40e、40fが積層体20に対して脱着されることによって、回路装置10における設計変更に対応可能となる。
【0022】
複数の端子40は保持部材50に保持されている。例えば複数の端子40は、機器単位、システム単位などにグループ分けされて、グループごとに別の保持部材50に保持されることが考えられる。これにより、保持部材50に保持された複数の端子40が積層体20に対して一括して着脱可能となる。端子40は保持部材50から所定の長さ分突出している。保持部材50は端子40が所定の長さ分だけ積層体20に差し込まれた状態で、積層体20における表面に接触するものであってもよい。この場合、保持部材50は、積層体20に対する端子40の差込量が過多となることを抑制する。保持部材50は、機器の一部であることも考えられるし、機器から延びる電線の端部に設けられたコネクタハウジングであることも考えられる。
【0023】
<車両における回路装置>
上記回路装置10を車両に適用する例について説明する。
図4は回路装置10を車両に適用する際の接続例を示すブロック図である。ここでは回路装置10が適用される車両が、ハイブリッド車、電気自動車などのように複数のバッテリ60、61を有する車両である事例を用いて説明する。
【0024】
回路装置10において、層22a、22b、22c、22dが電圧層であり、層22eがグランド層であり、層22fが通信層である。このように複数の層22は、複数の電圧層22a、22b、22c、22dとグランド層22eと通信層22fとを含んでいる。回路装置10に対して、通信層22f側から端子40が挿入される。回路装置10において、端子40の挿入口側から通信層22f、グランド層22e、複数の電圧層22d、22c、22b、22aの順に積層されている。
【0025】
複数の電圧層22a、22b、22c、22dは、端子40の挿入口側(
図4に示す例では通信層22fの側)から順に電圧値が高くなるように積層されている。従って、ここでは電圧層22d、電圧層22c、電圧層22b、電圧層22aの順に電圧値が高くなっている。例えば複数の電圧層22d、22c、22b、22aにおける電圧値は順に、3.3ボルト、5ボルト、12ボルト、24ボルトである。このように複数の層22は、接続部材26における電圧値が相互に異なる複数の電圧層を含んでいる。例えば、3.3ボルト及び5ボルトの電圧層は通信用電源として用いられ、12ボルト及び24ボルトの電圧層は通信用以外の電源として用いられることが考えられる。
【0026】
複数の電圧層は、第1電圧層と第2電圧層とを含む。第1電圧層は第1の電圧値を有する第1のバッテリ60に接続された電圧層である。第2電圧層は、第1の電圧値よりも低い第2の電圧値を有する第2のバッテリ61に接続されている。例えば第1のバッテリ60は、駆動用バッテリであり、第2のバッテリ61は補機バッテリである。第1のバッテリ60における第1の電圧値は例えば数百ボルトである。第2のバッテリ61における第2の電圧値は例えば12ボルトである。
【0027】
図4に示す例では、電圧層22aが駆動用バッテリ60に接続され、電圧層22b、22c、22dが補機バッテリ61に接続されている。従ってここでは、電圧層22aが第1電圧層であり、電圧層22b、22c、22dが第2電圧層である。電圧層22aについては変圧器(DC-DCコンバータ)64を介して駆動用バッテリ60と接続されることが考えられる。これにより、駆動用バッテリ60の電圧値を電圧層22aにおける所定の電圧値に変換することができる。また、補機バッテリ61の電圧値と異なる電圧値に設定されている電圧層22c、22dについてもそれぞれDC-DCコンバータ65、66を介して補機バッテリ61と接続されることが考えられる。これにより、補機バッテリ61の電圧値をそれぞれの電圧層22c、22dにおける所定の電圧値に変換することができる。
【0028】
なお、バッテリ60、61から各電圧層22a、22b、22c、22dへの電源供給は積層体20における端子40の挿入口からされてもよい。つまりバッテリ60、61からの電源を供給する電線の端部に設けられた端子40が積層体20における孔24に差し込まれて、所定の電圧層22a、22b、22c、22dに接続されていてもよい。また各電圧層22a、22b、22c、22dは、バッテリ60、61からの電源を供給する電線の端部に設けられた端子が接続されるバッテリ接続口を別に有していてもよい。
【0029】
通信層22fには電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)70が接続されている。このように回路装置10はECU70をさらに備えることが考えられる。ECU70は、外部機器から送られてきた信号のうち通信層22fに接続された機器への信号を選択的に通信層22fに送る。これにより通信層22fに接続された機器が不要な信号を受け取りにくくなる。
図4に示す例では、ECU70における端子40は、積層体20における端子40の挿入口に差し込まれて通信層22fに接続されている。もっとも通信層22fは、ECU70における端子と接続するためのECU接続口を別に有していてもよい。
【0030】
グランド層22eには回路装置10における各電圧層22a、22b、22c、22dに接続された機器のマイナス側の配線が接続される。ここでは回路装置10にグランド層22eが1つのみ設けられている。グランド層22eは例えば車体アースに接続される。グランド層22eと車体アースとの接続に用いられる配線の端部の端子は、積層体20における端子40の挿入口とは別に設けられたアース端子接続口に接続されている。もちろんグランド層22eと車体アースとの接続に用いられる配線の端部の端子は積層体20における端子40の挿入口に差し込まれてグランド層22eに接続されていてもよい。グランド層22eは、電線を介してバッテリのマイナス側に接続されてもよい。
【0031】
図5は回路装置10を車両90に適用したときの配線例を示すブロック図である。
図5に示す例では車両90に複数(ここでは3つ)の回路装置10が搭載されている。3つの回路装置について区別が必要な場合、回路装置10a、10b、10cと称する。複数の回路装置10はそれぞれ駆動用バッテリ60及び補機バッテリ61と接続されている。これにより各回路装置10における電圧層22a、22b、22c、22dに電源が供給される。また複数の回路装置10におけるECU70は、それぞれセントラルECU72に接続されている。そして車両において複数の回路装置10のそれぞれに対して複数の機器80が接続されている。例えば複数の機器80は、自身の近くに位置する回路装置10と接続されることが考えられる。また例えば複数の機器80は、自身と同じ空間(例えば、エンジンルーム、インストルメントパネル内、ドア、車室、トランクルームなど)に位置する回路装置10と接続されることが考えられる。
【0032】
図5に示す例では、車両90の前部に搭載される機器80a、80b、80c(例えば、ヘッドランプ、センサ等)は、車両90の前部に搭載される回路装置10aに接続されている。またドアに搭載される機器80d、80e、80f(例えば、ドアロック、パワーウインドウ、サイドミラー等)は、ドアに搭載される回路装置10bに接続されている。車両90の後部に搭載される機器80g、80h、80i(例えば、テールランプ、センサ等)は、車両90の後部に搭載される回路装置10cに接続されている。
【0033】
以上のように構成された回路装置10によると、複数の端子40として複数の層22にそれぞれ対応する複数の種類の端子40a、40b、40c、40d、40e、40fが設けられ、複数の種類の端子40a、40b、40c、40d、40e、40fはそれぞれが複数の挿入口のうち任意の挿入口に挿入されて複数の層22のうちいずれか1つの対応する層22の接続部27と選択的に接続可能であるため、端子40の抜き差しによって所定の層22に接続できるようになり、もって、回路の接続部分において設計変更に容易に対応できる。端子本体42と絶縁被覆46とを有する被覆付端子が採用されているため、端子本体42が接続相手とならない層22と接続されることを絶縁被覆46によって抑制できる。
【0034】
複数の層22は、接続部材26における電圧値が相互に異なる複数の電圧層22a、22b、22c、22dを含むため、端子40が異なる電源電圧に選択的に接続可能となる。複数の電圧層22a、22b、22c、22dは、端子40が挿入される側から順に電圧値が高くなるように積層されているため、低圧の層22d用の端子40dが高圧の層22aに誤って接続されることを抑制しやすい。複数の電圧層22a、22b、22c、22dは、第1の電圧値を有する第1のバッテリ60に接続された第1電圧層22aと、第1の電圧値よりも低い第2の電圧値を有する第2のバッテリ61に接続された第2電圧層22b、22c、22dとを含むため、異なる電源電圧を簡易に供給可能となる。
【0035】
また複数の層22は通信層22fを含むため、通信層22fに通信線を接続できる。電子制御ユニット70は通信層22fに接続されており、外部機器から送られてきた信号のうち通信層22fに接続された機器80への信号を選択的に通信層22fに送るため、通信層22fに接続された機器80に対する信号かを取捨選択できる。
【0036】
[実施形態2]
実施形態2にかかる回路装置について説明する。
図6は実施形態2にかかる回路装置110を示す側面図である。なお、本実施形態の説明において、これまで説明したものと同様構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。以下の各実施形態の説明においても同様である。
【0037】
実施形態1では接続部材26が板バネ状に形成されていたが、本例では端子140が板バネ状に形成されている。より詳細には、本例では、導体板に複数の孔29が形成されて接続部材126とされている。複数の接続部材126の間が絶縁部138によって絶縁されている。これにより隣り合う層122の接続部材126同士が接続されることが抑制される。例えば複数の接続部材126の間に絶縁板が配置されたり、接続部材126の表面に絶縁被膜が形成されたりして、絶縁部138が形成される。絶縁部138は接続部材126における孔29を塞がないように設けられる。換言すると、絶縁部138にも孔29に対応する孔が形成される。
【0038】
端子140は端子本体142と絶縁被覆46とを備える。端子本体142は、複数の接点部143と連結板部144とを有する。接点部143は、接続部材126の孔29に差し込まれて、接続部材126と電気的に接続される部分である。接点部143は板バネ状に形成されている。複数の接点部143は一の方向に沿って並んでいる。連結板部144は複数の接点部143同士をつないでいる。例えば端子本体142は導体板が折り曲げられて形成される。絶縁被覆46は端子本体142のうち接続相手となる層122に対応する接点部143を除いた部分に形成される。
【0039】
[実施形態3]
実施形態3にかかる回路装置について説明する。
図7は実施形態3にかかる回路装置210を示す側面図である。
【0040】
本例では、複数の層222における各層222の厚みが異なっている。ここでは、
図6に示す例と同様に端子240が板バネ状に形成されている例で説明する。もちろん、図
2に示す例と同様に、接続部材
126が板バネ状に形成されていてもよい。
【0041】
図7に示す例では接続部材126の厚みは同じである。
図7に示す例では絶縁部238の厚みが異なることによって、複数の層222における各層222の厚みが異なっている。もちろん、接続部材126の厚みが異なることによって、複数の層222における各層222の厚みが異なっていてもよい。
【0042】
複数の層222における各層222の厚みが異なっていることに対応するため、端子本体242において接点部243間の間隔が異なる。ここでは接点部243を結ぶ連結板部244の長さが異なる。これにより、積層体220における下の層222に接続される端子240が当該層222よりも上の層222まで差し込まれた状態において、つまり端子240が差込不足にある状態において端子240と積層体220とががたつきやすい。この結果、積層体220に対して端子240が差込不足の状態で使用されることを抑制できる。
【0043】
図7に示す例では、複数の層222は厚みの薄い順に並んでいるが、このことは必須の構成ではない。複数の層の順番は適宜設定可能である。
【0044】
[実施形態4]
実施形態4にかかる回路装置について説明する。
図8は実施形態4にかかる回路装置310を示す分解斜視図である。
【0045】
回路装置310における複数の層は第1層322aと第2層322bとを含む。第2層322bは第1層322aよりも端子が挿入される側に位置する層である。第1層322aに形成された孔324aは、第2層322bに形成された孔324bよりも小さい。
【0046】
回路装置310における複数の種類の端子は第1層用端子340aと第2層用端子340bとを含む。第1層用端子340aは第1層322aに接続される端子である。第1層用端子340aは第2層322bに形成された孔324b及び第1層322aに形成された孔324aを貫通しつつ第1層322aに接続される。第1層用端子340aのうち第1層322aに接続されない部分、より具体的には第1層用端子340aが第1層322aに接続された状態で第2層322bにおける孔324bに収まる部分には、端子本体342の周囲に絶縁被覆46が形成されている。第2層用端子340bは第2層322bに接続される端子である。第2層用端子340bは第2層322bに形成された孔324bを貫通しつつ第2層322bに接続されている。第2層用端子340bは、第1層用端子340aよりも短い。また第2層用端子340bは、第1層322aに形成された孔324aよりも大きく形成されている。
【0047】
このように第2層用端子340bが第1層用端子340aよりも短いと、第2層用端子340bが第1層322aに接続されにくい。また第2層用端子340bが第1層322aに形成された孔324aよりも大きいと、第2層用端子340bが第1層322aに形成された孔324aを貫通しにくいため、第2層用端子340bが第1層322aに接続されにくい。
【0048】
本例では孔324a、324bの形状が軸方向から見てT字状に形成されている。これに合わせて端子340a、340bの形状も軸方向から見てT字状に形成されている。もちろん、軸方向から見た孔324a、324b及び端子340a、340bの形状はT字状である必要はなく、例えば方形状、円形状などであってもよい。第1層用端子340aは第1層322aに形成された孔324aに対応した大きさが軸方向に連続するように形成されているが、このことは必須の構成ではない。
【0049】
[付記]
実施形態1において、一のハウジング30に一の接続部材26が収容されるものとして説明したが、このことは必須ではない。
図9に示すように一のハウジング430に複数の接続部材26が積層状態で収容されていてもよい。この場合、積層体は一のハウジング430のみを有していてもよいし、複数のハウジングを有していてもよい。積層体が複数のハウジングを有する場合、複数のハウジングには、収容する接続部材26の数が異なるハウジングが含まれていてもよい。
【0050】
箱432において
図9に示すように、接続部材26の積層方向と直交する方向を向く面が開口していてもよい。このような箱432において一対の側壁にそれぞれ孔33、37が形成される。ここで箱432における側壁とは、開口部と反対に位置する底板に直交する面である。またこのような箱432に複数の接続部材26を収容する場合、接続部材26における連結部28の縁部を支持可能な縁支持部34が箱432に形成されていてもよい。縁支持部34は、例えば箱432において孔33、37が形成されていない側壁に形成される。縁支持部34は側壁において開口部側から底板側に向けて延びる溝状に形成される。もっとも箱432において縁支持部34に代わって仕切りが設けられていてもよい。仕切りは、例えば孔33、37が形成された側壁と平行な板状に形成され、一の箱432の内部空間を積層方向に分割する。仕切りによって仕切られた各空間に接続部材26が収容される。仕切りには孔33、37に対応する孔が形成される。
【0051】
実施形態1において積層体20が6つの層22を含むように構成されていたが、このことは必須の構成ではない。積層体20は2つの層、3つの層、4つの層又は5つの層を含むように構成されていてもよいし、7つ以上の層を含むように構成されていてもよい。また実施形態1において積層体20が電圧層22a、22b、22c、22dと通信層22fとグランド層22eとを含んでいたが、このことは必須の構成ではない。電圧層22a、22b、22c、22dと通信層22fとグランド層22eとのうち電圧層22a、22b、22c、22dが省略されている場合もあり得るし、通信層22fが省略されている場合もあり得るし、グランド層22eが省略されている場合もあり得る。電圧層22a、22b、22c、22dと通信層22fとグランド層22eとのうち通信層22fとグランド層22eとの2つが省略されている場合もあり得る。積層体20は少なくとも1つの電圧層を含んでいると良い。
【0052】
実施形態1において回路装置10が複数のバッテリ60、61を備える車両90に適用されるものとして説明したが、このことは必須ではない。
図10に示すように、バッテリ62が1つしかない自動車(例えばエンジン自動車)に回路装置510が適用されてもよい。この場合に、複数の層522が複数の電圧層522a、522bを含む場合、複数の電圧層522a、522bのうち少なくとも1つがDC-DCコンバータ67、68を介して当該1つのバッテリ62に接続されていると良い。なおエンジン自動車の場合、電圧層522a、522bはオルタネータに接続されていることも考えられる。
【0053】
実施形態1においてグランド層22eが1つであるものとして説明したが、このことは必須の構成ではない。例えば、電圧層ごとにグランド層が別に設けられていてもよい。また例えば
図10に示すように、複数の電圧層522a、522bをそれぞれ挟む位置にグランド層522c、522d、522eが設けられていてもよい。
【0054】
実施形態1において接続部材26が導体板であるものとして説明したが、このことは必須の構成ではない。接続部材は導体膜などであってもよい。この場合、導体膜などである接続部材は、絶縁性を有する基板の表面に形成されているとよい。例えば、複数の孔が形成された基板の表面において全体に導体膜が形成されていることが感がられる。また例えば複数の孔が形成された基板の表面において孔の周縁に接続部が形成され、孔の周縁をつなぐように連結部が形成されていることも考えられる。
【0055】
実施形態1において示した車両に回路装置10を適用した接続例は、車両における配線システムととらえることもできる。
【0056】
なお、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0057】
10、10a、10b、10c、110、210、310、510 回路装置
20、220、420 積層体
22、122、222、522 層
22a 第1電圧層(電圧層、層)
22b、22c、22d 第2電圧層(電圧層、層)
522a、522b 電圧層(層)
22e、522c、522d、522e グランド層(層)
22f 通信層(層)
322a 第1層(層)
322b 第2層(層)
24、324a、324b 孔
26、126 接続部材
27 接続部
28 連結部
29 孔
30 ハウジング
32 箱
33 孔
34 縁支持部
36 蓋
37 孔
138、238 絶縁部
40、140、240 端子
40a、40b、40c、40d、40e、40f 複数の種類の端子
340a 第1層用端子
340b 第2層用端子
42、142、242 端子本体
143、243 接点部
144、244 連結板部
46 絶縁被覆
50 保持部材
60 第1のバッテリ
61 第2のバッテリ
62 バッテリ
64、65、66、67、68 DC-DCコンバータ
70 電子制御ユニット(ECU)
72 セントラルECU
80、80a、80b、80c、80d、80e、80f、80g、80h、80i 機器
90 車両