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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】ヒートシンク付き絶縁回路基板
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20221004BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20221004BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20221004BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20221004BHJP
   B32B 7/027 20190101ALI20221004BHJP
   B32B 15/04 20060101ALI20221004BHJP
   B32B 15/20 20060101ALI20221004BHJP
   H01L 23/40 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
H01L23/36 C
H01L23/12 J
H05K7/20 D
H05K1/02 F
B32B7/027
B32B15/04 B
B32B15/04 A
B32B15/20
H01L23/40 F
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019059725
(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2019176152
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】P 2018061989
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】湯本 遼平
(72)【発明者】
【氏名】大開 智哉
(72)【発明者】
【氏名】北原 丈嗣
(72)【発明者】
【氏名】長友 義幸
【審査官】正山 旭
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-219852(JP,A)
【文献】特開2016-167502(JP,A)
【文献】特開2010-098057(JP,A)
【文献】特開2012-094867(JP,A)
【文献】特開2013-055237(JP,A)
【文献】特開2009-125753(JP,A)
【文献】特開2016-189421(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/107642(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/36
H01L 23/12
H05K 7/20
H05K 1/02
B32B 7/027
B32B 15/04
B32B 15/20
H01L 23/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス基板、前記セラミックス基板の一方の面に接合された回路層、および前記セラミックス基板の他方の面に接合された銅又は銅合金からなる金属層を備える絶縁回路基板と;前記金属層に接合されたヒートシンクと;を備えるヒートシンク付き絶縁回路基板であって、
前記ヒートシンクは、前記金属層に接合されたアルミニウム又はアルミニウム合金からなる厚さT1の第1金属層と、前記第1金属層の前記金属層とは反対側の面に接合されたセラミックス板材と、前記セラミックス板材の前記第1金属層とは反対側の面に接合されたアルミニウム又はアルミニウム合金からなる厚さT2の第2金属層と、を有し、
前記第1金属層の前記厚さT1及び前記第2金属層の前記厚さT2がいずれも0.8mm以上3.0mm以下であり、厚さ比率T1/T2が1.0以上であることを特徴とするヒートシンク付き絶縁回路基板。
【請求項2】
前記回路層は銅又は銅合金により構成され、
前記セラミックス基板及び前記セラミックス板材は窒化珪素により構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のヒートシンク付き絶縁回路基板。
【請求項3】
前記金属層と前記第1金属層とは、固相拡散接合していることを特徴とする請求項1または2に記載のヒートシンク付き絶縁回路基板。
【請求項4】
セラミックス基板、前記セラミックス基板の一方の面に接合された回路層、および前記セラミックス基板の他方の面に接合された銅又は銅合金からなる金属層を備える絶縁回路基板と;前記金属層に接合されたヒートシンクと;を備えるヒートシンク付き絶縁回路基板であって、
前記ヒートシンクは、前記金属層に接合されたアルミニウム又はアルミニウム合金からなる厚さT1の第1金属層と、前記第1金属層の前記金属層とは反対側の面に接合されたセラミックス板材と、前記セラミックス板材の前記第1金属層とは反対側の面に接合されたアルミニウム又はアルミニウム合金からなる厚さT2の第2金属層と、を有し、
0.2≦T1≦0.5(mm)、0.3≦T2≦0.6(mm)、厚さ比率T1/T2<1.0であることを特徴とするヒートシンク付き絶縁回路基板。
【請求項5】
前記回路層は銅又は銅合金により構成され、
前記セラミックス基板及び前記セラミックス板材は窒化珪素により構成されている
ことを特徴とする請求項4に記載のヒートシンク付き絶縁回路基板。
【請求項6】
前記金属層と前記第1金属層とは固相拡散接合していることを特徴とする請求項4または5に記載のヒートシンク付き絶縁回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大電流、高電圧を制御する半導体装置に用いられるパワーモジュール用基板等の絶縁回路基板にヒートシンクが接合されたヒートシンク付き絶縁回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化珪素を始めとするセラミックス基板からなる絶縁層の一方の面に回路層が接合されるとともに、他方の面にアルミニウム板を介してアルミニウム系のヒートシンクが接合されたヒートシンク付絶縁回路基板が知られている。
【0003】
例えば特許文献1に開示されているヒートシンク付絶縁回路基板は、セラミックス基板からなる絶縁層の一方の面に純アルミニウム板、アルミニウム合金板、純銅板、銅合金板等のいずれかからなる回路層が接合され、絶縁層の他方の面に純アルミニウム又はアルミニウム合金の金属板からなる金属層が接合され、この金属層に、アルミニウム又はアルミニウム合金で構成されたヒートシンクが直接接合されている。
【0004】
このようなヒートシンク付き絶縁回路基板において、セラミックス基板とアルミニウム板のような熱膨張係数の異なる部材の接合による反りが発生するおそれがある。そのような反りを防止するため、ヒートシンクの材料として、特許文献2に開示される多孔質炭化珪素成形体にアルミニウムを主成分とする金属を含浸させてなる低膨張係数の複合体を用いることが考えられる。
【0005】
特許文献3は、第1のセラミックス基板の一方の面に第1の金属板が接合され、第1のセラミックス基板の他方の面と第2のセラミックス基板の一方の面に第2に金属板が接合され、第2のセラミックス基板の他方の面に複数のフィンを有する板状の放熱部材が接合されてなる金属-セラミックス接合基板(ヒートシンク付き絶縁回路基板)を開示している。この金属-セラミックス接合基板は、第1のセラミックス基板および第2のセラミックス基板をカーボン製の鋳型内に間隔を開けて配置し、アルミニウム合金溶湯を鋳型に流し込んで冷却、固化させることにより形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-60215号公報
【文献】特開2000-281465号公報
【文献】特開2017-212316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献3に開示されている金属-セラミックス接合基板は、2枚のセラミックス基板を鋳型内に間隔を開けて配置して、溶融状態のアルミニウム合金を鋳型に流し込むことにより製造されるため、全ての金属板、放熱部材およびフィンが同じアルミニウム合金となる。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、絶縁回路基板の金属層と異なる組成の金属からなるヒートシンクが接合されてなるヒートシンク付き絶縁回路基板の反りを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本件発明者らは、鋭意研究の結果、絶縁回路基板の金属層と異なる組成の金属からなるヒートシンクを金属層に接合すると、接合によって生じるヒートシンク付き絶縁回路基板の変形が、諸条件によってヒートシンクの絶縁回路基板側が凸状となるように反る場合と、凹状となるように反る場合とがあることを見出した。
【0010】
本発明の第1の態様に係るヒートシンク付き絶縁回路基板は、セラミックス基板、前記セラミックス基板の一方の面に接合された回路層、および前記セラミックス基板の他方の面に接合された銅又は銅合金からなる金属層を備える絶縁回路基板と;前記金属層に接合されたヒートシンクと;を備える。前記ヒートシンクは、前記金属層に接合されたアルミニウム又はアルミニウム合金からなる厚さT1の第1金属層と、前記第1金属層の前記金属層とは反対側の面に接合されたセラミックス板材と、前記セラミックス板材の前記第1金属層とは反対側の面に接合されたアルミニウム又はアルミニウム合金からなる厚さT2の第2金属層と、を有し、前記第1金属層の前記厚さT1及び前記第2金属層の前記厚さT2がいずれも0.8mm以上3.0mm以下であり、厚さ比率T1/T2が1.0以上である。
【0011】
このような構造のヒートシンク付き絶縁回路基板においては、ヒートシンクにおいてアルミニウム又はアルミニウム合金からなる第1金属層と第2金属層との間にセラミックス板材が配設されることによりヒートシンクの線膨張係数を小さくでき、銅または銅合金からなる金属層を有する絶縁回路基板との線膨張差を小さくできる。これにより、ヒートシンク付き絶縁回路基板の高温時と低温時との反り変化量を抑制できる。
【0012】
このヒートシンク付き絶縁回路基板においてヒートシンクの第1金属層の厚さT1及び第2金属層の厚さT2のいずれかが0.8mm未満であるか、または、厚さ比率T1/T2が1.0未満である場合、反り変化量が負の値となり、その値も大きくなる。これは、ヒートシンク付き絶縁回路基板が、285℃の高温から30℃の低温に変化する際に、回路層側に凸からヒートシンク側に凸の方向に大きく変形することを意味する。このような場合、素子下のはんだ外周部に圧縮応力がかかるので、冷熱サイクルが負荷された際に、素子下のはんだの接合率が低下する。
【0013】
ここで、第1金属層の厚さT1または第2金属層の厚さT2のいずれかが3.0mmを超えると、ヒートシンクの線膨張が増大して、絶縁回路基板とヒートシンクとの線膨張差が拡大し、冷熱サイクルにおいて絶縁回路基板のセラミックス基板が割れる可能性がある。このため、第1金属層の厚さT1及び第2金属層の厚さT2は3.0mm以下とする。
【0014】
本発明の第2の態様に係るヒートシンク付き絶縁回路基板は、セラミックス基板、前記セラミックス基板の一方の面に接合された回路層、および前記セラミックス基板の他方の面に接合された銅又は銅合金からなる金属層を備える絶縁回路基板と;前記金属層に接合されたヒートシンクと;を備える。前記ヒートシンクは、前記金属層に接合されたアルミニウム又はアルミニウム合金からなる厚さT1の第1金属層と、前記第1金属層の前記金属層とは反対側の面に接合されたセラミックス板材と、前記セラミックス板材の前記第1金属層とは反対側の面に接合されたアルミニウム又はアルミニウム合金からなる厚さT2の第2金属層と、を有し、0.2≦T1≦0.5(mm)、0.3≦T2≦0.6(mm)、厚さ比率T1/T2<1.0である。
【0015】
このような構成のヒートシンク付き絶縁回路基板においては、第1金属層の厚さT1が0.2mm未満の場合、絶縁回路基板とヒートシンクとの接合性が悪化する。これは、セラミックス板材と第1金属層との接合時にろう材に含まれるSiが拡散し、第1金属層の絶縁回路基板側の面に凹凸ができるためと考えられる。厚さT1が0.5mmを超える場合、厚さT2が0.3≦T2≦0.6(mm)の範囲外となる場合、や、厚さ比率T1/T2が1.0以上となる場合には、反り変化量が負の値となり、その値も大きくなる。これは、ヒートシンク付き絶縁回路基板が、285℃の高温から30℃の低温に変化する際に、回路層側に凸からヒートシンク側に凸の方向に大きく変形することを意味する。このような場合、素子下のはんだ外周部に圧縮応力がかかるので、冷熱サイクルが負荷された際に、素子下のはんだの接合率が低下する。
【0016】
本発明のヒートシンク付き絶縁回路基板の好ましい態様としては、前記回路層は銅又は銅合金により構成され、前記セラミックス基板及び前記セラミックス板材は窒化珪素により構成されているとよい。
【0017】
本発明のヒートシンク付き絶縁回路基板の好ましい態様としては、前記金属層と前記第1金属層とは固相拡散接合しているとよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、金属層を有する絶縁回路基板と、絶縁回路基板の金属層とは異なる組成の金属層を有するヒートシンクとが接合されてなるヒートシンク付き絶縁回路基板の反りを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態に係るヒートシンク付き絶縁回路基板を用いたパワーモジュールを示す断面図である。
図2】上記第1実施形態におけるヒートシンク付き絶縁回路基板を回路層側から見た平面図である。
図3A図1に示すヒートシンク付き絶縁回路基板の製造方法を説明する断面図である。
図3B図1に示すヒートシンク付き絶縁回路基板の製造方法を説明する断面図である。
図3C図1に示すヒートシンク付き絶縁回路基板の製造方法を説明する断面図である。
図4】本発明の第2実施形態に係るヒートシンク付き絶縁回路基板を用いたパワーモジュールを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0021】
[絶縁回路基板の概略構成]
本発明に係るヒートシンク付き絶縁回路基板100は、図1に示すように絶縁回路基板1にヒートシンク2が接合されてなり、例えばパワーモジュール用基板として用いられる。この場合、図1に二点鎖線で示すように、パワーモジュール用基板としてのヒートシンク付き絶縁回路基板100上に素子30が搭載されて、パワーモジュールとなる。
【0022】
この素子30は、半導体を備えた電子部品であり、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、FWD(Free Wheeling Diode)等の種々の半導体素子が選択される。
【0023】
この場合、素子30は、図示を省略するが、上部に上部電極部が設けられ、下部に下部電極部が設けられており、下部電極部が回路層12上にはんだ31等により接合されることで、素子30が回路層12上に搭載される。また、素子30の上部電極部は、はんだ等で接合されたリードフレーム等を介して回路層12の回路電極部等に接続され、パワーモジュールが製造される。
【0024】
[絶縁回路基板の構成]
絶縁回路基板1は、セラミックス基板11と、セラミックス基板11の一方の面に接合された回路層12と、セラミックス基板11の他方の面に接合された金属層13とを備える。
【0025】
セラミックス基板11は、回路層12と金属層13の間の電気的接続を防止する矩形板状の絶縁基板であって、例えば窒化珪素(Si)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化アルミニウム(Al)、ジルコニア強化アルミナ基板等により形成され、その厚さは0.2mm~1.2mmである。なお、セラミックス基板11の両面に接合される回路層12及び金属層13がいずれも銅又は銅合金からなる場合には、窒化珪素により構成されることが好ましい。
【0026】
セラミックス基板11の平面サイズは特に限定されないが、本実施形態では40mm~140mm×40mm~100mmに設定されている。
【0027】
回路層12は、セラミックス基板11の上面(一方の面)に接合され、純度99質量%以上の銅又は銅合金が用いられ、その厚さは、例えば0.2mm以上2.0mm以下である。
【0028】
回路層12の平面サイズはセラミックス基板11よりも小さく、特に限定されないが、本実施形態では36mm~136mm×36mm~96mmに設定されている。
【0029】
金属層13は、セラミックス基板11の下面(他方の面)に接合され、純度99質量%以上の銅又は銅合金を用いることができる。その厚さは、例えば0.2mm以上2.0mm以下である。
【0030】
また、金属層13の平面サイズはセラミックス基板11よりも小さく、特に限定されないが、本実施形態では36mm~136mm×36mm~96mmに設定されている。なお、回路層12及び金属層13は、同じ組成で、かつ、同じ厚さ、大きさであることが好ましい。
【0031】
[ヒートシンクの構成]
ヒートシンク2は、絶縁回路基板1に接合されて、絶縁回路基板1から伝達された熱を放熱する。このヒートシンク2は、絶縁回路基板1の金属層13に接合された第1金属層21と、第1金属層21の下面(金属層13とは反対側の面)に接合されたセラミックス板材23と、セラミックス板材23の下面(第1金属層21とは反対側の面)に接合された第2金属層22とからなる。
【0032】
第1金属層21は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなり、例えば、JIS規格ではA6063合金が主として用いられる他、4N-AlやA3003、ADC12等が用いられている。本実施形態の第1金属層21の厚さT1は0.8mm以上3.0mm以下に設定されている。また、第2金属層22は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなり、その厚さT2は0.8mm以上3.0mm以下に設定されている。
【0033】
第1金属層21の厚さT1が3.0mmを超えると、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる第1金属層21の膨張の影響が大きくなり、第1金属層21がセラミックス板材23に接合されたヒートシンク2の線膨張が増大するため、冷熱サイクルにおいて、絶縁回路基板1とヒートシンク2とを接合したヒートシンク付き絶縁回路基板100の絶縁回路基板1のセラミックス基板11が割れる可能性がある。第2金属層22についても同様に、厚さT2が3.0mmを超えても、冷熱サイクルにおいてセラミックス基板11が割れる可能性がある。
【0034】
なお、第1金属層21の厚さT1及び第2金属層22の厚さT2のいずれかが0.8mm未満であるか、または、厚さ比率T1/T2が1.0未満である場合には、反り変化量が負の値となり、その値も大きくなる。これは、ヒートシンク付き絶縁回路基板が、285℃の高温から30℃の低温に変化する際に、回路層12側に凸からヒートシンク2側に凸の方向に大きく変形することを意味する。このような場合、素子30下のはんだ31外周部に圧縮応力がかかるので、冷熱サイクルが負荷された際に、素子30下のはんだ31の接合率が低下することとなる。
【0035】
セラミックス板材23は、ヒートシンク2と絶縁回路基板1との線膨張差を低減させるために設けられており、窒化アルミニウム(AlN)、窒化珪素(Si)、酸化アルミニウム(Al)、ジルコニア強化アルミナ基板等により形成され、その厚さT3は、0.2mm~1.2mmに設定されている。なお、セラミックス板材23は、その両面にアルミニウム又はアルミニウム合金からなる第1金属層21及び第2金属層22が接合されるため、窒化珪素により構成されることがより好ましい。
【0036】
また、第1金属層21、第2金属層22及びセラミックス板材23の平面サイズはセラミックス基板11よりも大きく、特に限定されないが、いずれも同じ大きさに設定され、例えば50mm~180mm×60mm~140mmに設定されている。
【0037】
このため、ヒートシンク付き絶縁回路基板100を回路層12側から見た場合、図2に示すように、回路層12よりもセラミックス基板11が大きく、セラミックス基板11よりもヒートシンク2(第1金属層21,第2金属層22およびセラミックス板材23)が大きい。
【0038】
以上説明したように、ヒートシンク2は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる第1金属層21と第2金属層22との間にセラミックス板材23が配設された構成となっている。
【0039】
[ヒートシンク付き絶縁回路基板の製造方法]
次に、本実施形態のヒートシンク付き絶縁回路基板100の製造方法について説明する。
【0040】
ヒートシンク付き絶縁回路基板100の製造方法は、図3A~3Cに示すように、セラミックス基板11に銅又は銅合金からなる回路層用金属板120及び金属層用金属板130を接合する絶縁回路基板製造工程(図3A)と、セラミックス板材23にアルミニウム又はアルミニウム合金からなる第1金属層用金属板210及び第2金属層用金属板220を接合するヒートシンク製造工程(図3B)と、絶縁回路基板1とヒートシンク2とを接合する接合工程(図3C)と、を有する。以下、この工程順に説明する。
【0041】
(絶縁回路基板製造工程)
図3Aに示すように、セラミックス基板11に回路層用金属板120及び金属層用金属板130をそれぞれAg-Cu-Ti系のろう材を用いて接合する。具体的には、セラミックス基板11の両面に、それぞれAg-Cu-Ti系のろう材箔14を介在させて回路層用金属板120及び金属層用金属板130を積層し、これらの積層体をカーボン板により挟持し、積層方向に荷重をかけながら真空中で加熱することにより、セラミックス基板11と回路層用金属板120及び金属層用金属板130を接合する。これにより、セラミックス基板11の上面に回路層12が接合部(ろう付け部)を介して接合され、下面に金属層13が接合部(ろう付け部)を介して接合された絶縁回路基板1が形成される。
【0042】
セラミックス基板11と回路層12および金属層13と接合する際、積層方向への加圧力は0.1MPa~1.0MPa、加熱温度は800℃~930℃とするとよい。また、Ag-Cu-Ti系ろう材箔は、厚さ5μm~15μmであるとよい。さらに、Ag-Cu-Ti系ろう材の他、Cu-P系ろう材を用いることもできる。
【0043】
(ヒートシンク製造工程)
次に、図3Bに示すように、厚さT3が0.2mm~1.2mmのセラミックス板材23に、厚さT1が0.8mm~3.0mmの第1金属層用金属板210、及び厚さT2が0.8mm~3.0mmかつT1以下の第2金属層用金属板220を、それぞれAl-Si系のろう材を用いて接合する。
【0044】
具体的には、セラミックス板材23の両面に、それぞれAl-Si系のろう材箔14を介在させて第1金属層用金属板210及び第2金属層用金属板220を積層し、これらの積層体をカーボン板により挟持し、積層方向に荷重をかけながら真空中で加熱することにより、セラミックス板材23と第1金属層用金属板210及び第2金属層用金属板220を接合する。これにより、セラミックス板材23の一方の面(上面)に厚さT1が0.8mm~3.0mmの第1金属層21が接合部(ろう付け部)を介して接合され、他方の面(下面)に厚さT2が0.8mm~3.0mmで、かつ第1金属層21の厚さT1以下の第2金属層22が接合部(ろう付け部)を介して接合されたヒートシンク2が形成される。
【0045】
セラミックス板材23と第1金属層用金属板210および第2金属層用金属板220とを接合する際、積層方向への加圧力は0.3MPa~1.5MPa、加熱温度は630℃以上655℃以下とするとよい。また、Al-Si系ろう材箔は、厚さ5μm~15μmであるとよい。さらに、Al-Si系ろう材の他、Al-Ge系、Al-Cu系、Al-Mg系、Al-Mn系、又はAl-Si-Mg系ろう材を用いることもできる。
【0046】
(接合工程)
そして、絶縁回路基板1とヒートシンク2とを固相拡散接合する。具体的には、図3Cに示すように、絶縁回路基板1の金属層13をヒートシンク2上に積層し、これらの積層体を積層方向に加圧した状態で、真空雰囲気下で接合温度に加熱することにより、金属層13とヒートシンク2の第1金属層21とを固相拡散接合する。この場合の加圧力としては例えば0.5MPa~2.0MPa、加熱温度としては500℃~540℃とされ、この加圧及び加熱状態を30分~120分保持する。これにより、金属層13とヒートシンク2とが接合され、図1に示すように、ヒートシンク付き絶縁回路基板100が得られる。
【0047】
なお、本実施形態においては、金属層13の接合面及びヒートシンク2の接合面は、予め傷が除去されて平滑にされた後に固相拡散接合される。
【0048】
ここで、ヒートシンクがアルミニウム又はアルミニウム合金の一枚板にて構成されている場合、絶縁回路基板1の銅又は銅合金からなる金属層13との線膨張差が大きいため、高温時の膨張率や低温時の収縮率が異なり、ヒートシンク付き絶縁回路基板100の反りが大きくなる。
【0049】
これに対し、本実施形態では、絶縁回路基板1の金属層13に接合された第1金属層21と、第1金属層21に接合されたセラミックス板材23と、セラミックス板材23に接合された第2金属層22とによりヒートシンク2が構成されている。すなわち、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる第1金属層21と第2金属層22との間にセラミックス板材23が配設されているので、ヒートシンク2の線膨張係数を小さくでき、絶縁回路基板1との線膨張差を小さくできる。
【0050】
また、第1金属層21の厚さT1が0.8mm以上3.0mm以下であり、かつ第2金属層22の厚さT2以上(T1≧T2)であるので、ヒートシンク2の放熱効果を維持しつつ、ヒートシンク付き絶縁回路基板100の高温時と低温時との反り変化量が正の値(ヒートシンク側に凸から回路層側に凸の方向への形状変化)となるか、または、負の値(回路層側に凸からヒートシンク側に凸の方向への形状変化)となってもその値を小さくすることが可能となる。
【0051】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について、図面を用いて説明する。
【0052】
本実施形態のヒートシンク付き絶縁回路基板100Aは、図4に示すように、ヒートシンク2に代えて、ヒートシンク2Aを有している点で上記第1実施形態と異なる。以下、第1実施形態と同一又は略同一の部分については、同一符号を付して説明を省略又は簡略化する。
【0053】
図4に示すヒートシンク2Aは、第1金属層21Aの厚さT1が0.2mm以上0.5mm以下、第2金属層212の厚さT2が0.3mm以上0.6mm以下に設定されている。
【0054】
第1金属層の厚さT1が0.2mm未満の場合、絶縁回路基板1とヒートシンク2Aとの接合性が悪化する。これは、セラミックス板材23と第1金属層210との接合時にろう材(Al-Si系ろう材箔)に含まれるSiが拡散し、第1金属層の絶縁回路基板1側の面に凹凸ができるためと考えられる。第1金属層の厚さT1が0.5mmを超える場合、第2金属層の厚さT2が0.3≦T2≦0.6(mm)の範囲外となる場合、や、厚さ比率T1/T2が1.0以上となる場合には、反り変化量が負の値となり、その値も大きくなる。これは、ヒートシンク付き絶縁回路基板が、285℃の高温から30℃の低温に変化する際に、回路層12側に凸からヒートシンク2A側に凸の方向に大きく変形することを意味する。このような場合、素子30下のはんだ31外周部に圧縮応力がかかるので、冷熱サイクルが負荷された際に、素子30下のはんだ31の接合率が低下する。
【0055】
その他、細部構成は実施形態の構成のものに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0056】
例えば、上記実施形態では、回路層12は、銅又は銅合金からなることとしたが、これに限らず、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金により構成されてもよい。すなわち、回路層12の組成は問わない。
【0057】
また、上記実施形態では、ヒートシンク付き絶縁回路基板100,100Aをヒートシンク付きパワーモジュール用基板として用いる例を説明したが、このヒートシンク付き絶縁回路基板100,100Aは、LED素子用基板等、各種の絶縁基板として用いることもできる。
【実施例
【0058】
次に、本発明の効果について実施例を用いて詳細に説明するが、本発明は下記の各実施例に限定されるものではない。
【0059】
[第1の態様に係る実験]
実施例1-1~1-12、比較例1-1~1-4及び従来例の試料を構成する絶縁回路基板としては、厚さ0.635mm、平面サイズが120mm×90mmのセラミックス基板に厚さ0.4mmの回路層及び厚さ0.4mmの金属層を上記実施形態で述べた製造方法により製造した。回路層及び金属層については、表1に示す組成のものを用意した。
【0060】
実施例1-1~1-12及び比較例1-1~1-4の試料を構成するヒートシンクとしては、厚さ0.32mm、平面サイズが140mm×100mmのセラミックス基板に、アルミニウム又はアルミニウム合金により構成される第1金属層及び第2金属層を接合した。接合方法は、上記実施形態で述べた製造方法に準じた。第1金属層及び第2金属層については、表1に示す組成及び厚さのものを用意した。
【0061】
表中、OFCは無酸素銅(Oxygen-Free Copper)、A6063,A3003,およびADC12はJIS(日本工業規格)に定められるアルミニウム合金、4N-Alは純度99.99%以上のいわゆる純アルミニウムを示す。
【0062】
従来例については、厚さ5.0mm、平面サイズが140mm×100mmのアルミニウム合金の一枚板により構成されるヒートシンクを製造した。
【0063】
そして、これら絶縁回路基板とヒートシンクとを上記実施形態で述べた接合方法により接合し、得られた試料について下記の実験を行った。
【0064】
(反り変化量)
得られた各試料につき、常温(30℃)から285℃に加熱した後冷却して30℃とする一連の加熱試験において、285℃加熱時の反り量、及び285℃に加熱した後冷却して30℃となった際の反り量(30℃冷却時の反り量)を測定し、285℃加熱時の反り量と30℃冷却時の反り量との変化量(反り変化量)を求めた。
【0065】
各反り量は、モアレ式三次元形状測定機(Akrometrix社製熱反り・歪み測定機 Thermoire PS200)を用いて、ヒートシンクの第2金属層の中央(100mm×80mmの範囲)を測定面として測定した。より具体的には、測定面のプロファイルから最小二乗面を求め、その面を基準として最高点と最低点との差の絶対値を各反り量とした。
【0066】
このように得られた反り量について反り状態に応じて正負を設定する。すなわち、測定面の中心が測定面の四隅が形成する面よりも回路層側に近い場合(第2金属層が回路層側に凸)を負(-)とし、測定面の中心が測定面の四隅が形成する面上となる場合及び測定面の中心が測定面の四隅が形成する面よりも回路層側から遠い場合(第2金属層がヒートシンク側に凸)は正(+)の値として設定した。
【0067】
そして、(285℃加熱時の反り量-30℃冷却時の反り量)の式から反り変化量を求めた。なお、反り変化量において符号はヒートシンク付き絶縁回路基板の反りの変化の向きを示しており、負(-)の場合は、回路層側に凸の状態からヒートシンク側に凸の状態に向かう反り変化を示す。
【0068】
(冷熱サイクル信頼性(素子下はんだの信頼性))
実施例1-1~1-12、比較例1-1~1-3および従来例について、電子部品を回路層にはんだ付けした試料をそれぞれ30個製作し、-50℃~175℃の間で1000回変化させる温度サイクル試験を実行した後のはんだの接合性について評価した。はんだとしては、Sn-3Ag-0.5Cuはんだを用いた。サイクル試験終了後に、超音波探傷で電子部品とはんだの界面を観察し、2値化した後、黒色部を接合部分とし、電子部品の面積を100%とした時の接合率を求めた。30個の試料の接合率を求め、平均値が80%以上であれば「A」、80%未満であれば「B」と評価した。
【0069】
(セラミックス割れの評価)
電子部品を回路層にはんだ付けした試料を30個製作してセラミックスの割れ発生の有無を確認した。各30個の試料のうち、はんだ付け後に絶縁回路基板のセラミックス基板が1個でも割れた場合は否「B」とし、1個も割れなかった場合は良「A」と評価した。
【0070】
(冷熱サイクル信頼性の評価(セラミックス基板の割れ))
実施例1-1~1-12、比較例1-1~1-3及び従来例のヒートシンク付き絶縁回路基板各30個に対して、-50℃~175℃の間で1000回変化させる温度サイクル試験を実行した後、絶縁回路基板のセラミックス基板に割れがあるか否かを目視にて判定した。セラミックス基板に割れが生じた個数が70%を超えた場合を否「B」、70%以下だった場合を良「A」と判定した。
【0071】
反り変化量、冷熱サイクル信頼性(素子下はんだの信頼性)の評価、セラミックス割れの評価及び冷熱サイクル信頼性の評価について、表2に結果を示す。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
表1及び表2からわかるように、実施例1-1~1-12では、反り変化量も1.5mm以下と小さく、冷熱サイクル信頼性(素子下はんだの信頼性)、セラミックス割れ及び冷熱サイクル信頼性(セラミックス基板)の各評価がいずれも良「A」であった。
【0075】
この結果から、ヒートシンクの第1金属層の厚さT1及び第2金属層の厚さT2のいずれもが0.8mm以上3.0mm以下の場合、第1金属層の厚さT1が第2金属層の厚さT2以上(T1/T2≧1)であることが有効な範囲であることがわかった。
【0076】
一方、比較例1-1及び1-4は、反り変化量が負の値で、その値も大きいことから、285℃の高温から30℃の低温に変化する際に、ヒートシンク付き絶縁回路基板が、回路層側に凸からヒートシンク側に凸の方向に大きく変形する。このような場合、素子下のはんだ外周部に圧縮応力がかかるので、冷熱サイクルが負荷された際に、素子下のはんだの接合率が低下した。そのため、冷熱サイクル信頼性(素子下はんだの信頼性)の評価が「B」となった。
【0077】
比較例1-2及び1-3は、冷熱サイクル信頼性(素子下はんだの信頼性)及びセラミックス割れの各評価が良「A」であったものの、上記冷熱サイクル試験の結果、セラミックス基板が割れたので、評価が否「B」であった。このため、第1金属層の厚さが3.5mmの場合は、有効な結果を得られないことがわかった。
【0078】
従来例においては、冷熱サイクル信頼性(素子下はんだの信頼性)は良好であったものの、反り変化量が大きく、セラミックス割れ評価および冷熱サイクル信頼性評価(セラミックス基板)はいずれも良好な結果が得られなかった。
【0079】
[第2の態様に係る実験]
実施例2-1~2-11、比較例2-1~2-6の試料を構成する絶縁回路基板としては、第1の態様に係る実験と同様に、厚さ0.635mm、平面サイズが120mm×90mmのセラミックス基板に厚さ0.4mmの回路層及び厚さ0.4mmの金属層を上記実施形態で述べた製造方法により製造した。回路層及び金属層については、表3に示す組成のものを用意した。
【0080】
実施例2-1~2-11及び比較例2-1~2-6の試料を構成するヒートシンクとしては、厚さ0.32mm、平面サイズが140mm×100mmのセラミックス基板に、アルミニウム又はアルミニウム合金により構成される第1金属層及び第2金属層を接合した。接合方法は、上記実施形態で述べた製造方法に準じた。第1金属層及び第2金属層については、表3に示す組成及び厚さのものを用意した。
【0081】
表中、OFCは無酸素銅(Oxygen-Free Copper)、A6063,A3003,およびADC12はJIS(日本工業規格)に定められるアルミニウム合金、4N-Alは純度99.99質量%以上のいわゆる純アルミニウムを示す。
【0082】
そして、これら絶縁回路基板とヒートシンクとを上記各実施形態で述べた接合方法により接合し、得られた試料について上記第1の態様に係る実験と同様に反り変化量および冷熱サイクル信頼性(素子下はんだの信頼性)の評価を行うとともに、以下に示す方法で絶縁回路基板とヒートシンクとの接合性の評価を行い、これらの結果を表4に示した。
【0083】
(絶縁回路基板とヒートシンクとの接合性の評価)
絶縁回路基板とヒートシンクとの接合性の評価として、各試料を超音波画像測定機(Insight社製の超音波画像測定機IS‐200)にて絶縁回路基板の金属層とヒートシンクの第1金属層との接合界面を観察して、接合界面におけるボイド(空孔)の面積を測定した。そして、接合すべき面積に対するボイドの合計面積を各サンプルのボイド率として算出した。
ボイド率(%)={(ボイドの合計面積)/(金属層13の面積)}×100
ボイド率が5%未満であったものを「接合性」が良「A」と評価し、ボイド率が5%を超えるものを「接合性」が否「B」と評価した。
【0084】
【表3】
【0085】
【表4】
【0086】
表3及び表4からわかるように、実施例2-1~2-11では、反り変化量も絶対値で0.3mm以下と小さく、絶縁回路基板とヒートシンクとの接合性、冷熱サイクル信頼性(素子下はんだの信頼性)の各評価がいずれも良「A」であった。
【0087】
この結果から、ヒートシンクの第1金属層の厚さT1が0.2mm以上0.5mm以下および第2金属層の厚さT2が0.3mm以上0.6mm以下の場合、T1/T2<1.0であることが有効な範囲であることがわかった。
【0088】
一方、比較例2-1及び2-2は、反り変化量が負の値で、その値も大きいことから、285℃の高温から30℃の低温に変化する際に、ヒートシンク付き絶縁回路基板が、回路層側に凸からヒートシンク側に凸の方向に大きく変形する。このような場合、素子下のはんだ外周部に圧縮応力がかかるので、冷熱サイクルが負荷された際に、素子下のはんだの接合率が低下した。そのため、冷熱サイクル信頼性(素子下はんだの信頼性)の評価が「B」となった。
【0089】
比較例2-3及び2-4は、冷熱サイクル信頼性(素子下はんだの信頼性)の評価が良「A」であったものの、絶縁回路基板とヒートシンクとの接合性が悪く、その評価が否「B」であった。その原因は、第1金属層の厚さT1が0.1mmと小さいため、セラミックス板材と第1金属層との接合時にろう材に含まれるSiが拡散し、第1金属層の絶縁回路基板側の面に凹凸ができるためと考えられる。
【0090】
比較例2-5及び比較例2-6は、比較例2-1及び2-2と同様に反り変化量が負の値で、その値も大きいことから、285℃の高温から30℃の低温に変化する際に、素子下はんだの外周部に圧縮応力がかかるような変形をし、冷熱サイクル信頼性(素子下はんだの信頼性)の評価が「B」となった。
【産業上の利用可能性】
【0091】
ヒートシンク付き絶縁回路基板の反りを抑制できる。
【符号の説明】
【0092】
1 絶縁回路基板
2 2A ヒートシンク
11 セラミックス基板
12 回路層
13 金属層
14 ろう材箔
21 21A 第1金属層
22 22A 第2金属層
23 セラミックス板材
30 素子
31 はんだ
100 100A ヒートシンク付き絶縁回路基板
120 回路層用金属板
130 金属層用金属板
210 第1金属層用金属板
220 第2金属層用金属板
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4