IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 豊田合成株式会社の特許一覧

特許7151585近赤外線センサのシール構造、及び近赤外線センサのシール方法
<>
  • 特許-近赤外線センサのシール構造、及び近赤外線センサのシール方法 図1
  • 特許-近赤外線センサのシール構造、及び近赤外線センサのシール方法 図2
  • 特許-近赤外線センサのシール構造、及び近赤外線センサのシール方法 図3
  • 特許-近赤外線センサのシール構造、及び近赤外線センサのシール方法 図4
  • 特許-近赤外線センサのシール構造、及び近赤外線センサのシール方法 図5
  • 特許-近赤外線センサのシール構造、及び近赤外線センサのシール方法 図6
  • 特許-近赤外線センサのシール構造、及び近赤外線センサのシール方法 図7
  • 特許-近赤外線センサのシール構造、及び近赤外線センサのシール方法 図8
  • 特許-近赤外線センサのシール構造、及び近赤外線センサのシール方法 図9
  • 特許-近赤外線センサのシール構造、及び近赤外線センサのシール方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】近赤外線センサのシール構造、及び近赤外線センサのシール方法
(51)【国際特許分類】
   G01J 1/02 20060101AFI20221004BHJP
   G01J 1/04 20060101ALI20221004BHJP
   B60R 13/00 20060101ALI20221004BHJP
   G01S 7/481 20060101ALI20221004BHJP
   H01H 35/00 20060101ALN20221004BHJP
【FI】
G01J1/02 C
G01J1/02 P
G01J1/04 E
B60R13/00
G01S7/481 Z
H01H35/00 S
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019060969
(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2020159932
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-05-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 明弘
(72)【発明者】
【氏名】奥村 晃司
【審査官】今浦 陽恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-119304(JP,A)
【文献】特開2004-306888(JP,A)
【文献】特開2002-131413(JP,A)
【文献】特開平10-170653(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0200259(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0200121(US,A1)
【文献】国際公開第2018/052057(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/00 - 1/60
G01S 7/48 - 7/51
G01S 17/00 - 17/95
B60R 13/00
H01H 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近赤外線を車外へ向けて送信し、かつ車外の物体に当たって反射された近赤外線を受信する近赤外線センサと、前記近赤外線の送信方向における前記近赤外線センサの前方に開口部を有する外装部材と、近赤外線を透過する透過部を有するセンサカバーとを備え、
前記近赤外線センサは、前記開口部よりも車内側に設定された搭載位置に配置され、
前記透過部は前記開口部よりも車外側に配置され、
前記センサカバーと前記外装部材との間であって、前記開口部を取り囲む箇所には、環状のシール部が配置されている近赤外線センサのシール構造。
【請求項2】
前記センサカバーは、前記外装部材に取り外し可能に取り付けられており、
前記シール部は、前記センサカバーに固定されている請求項1に記載の近赤外線センサのシール構造。
【請求項3】
前記センサカバーのうち、前記透過部の周辺部分であって、車内側の面には締結部が設けられ、
前記外装部材における前記開口部の周囲には被締結部が設けられ、
前記締結部が前記被締結部に対し締結解除可能に締結され、
前記シール部は、前記開口部と、前記締結部の前記被締結部に対する締結箇所との間に配置されている請求項1又は2に記載の近赤外線センサのシール構造。
【請求項4】
前記外装部材は、前記開口部の周縁部から車内側へ突出し、かつ突出側の端部に取り付け孔を有する筒状壁部を有し、
前記近赤外線センサは外周にフランジ部を有し、
前記搭載位置では、前記近赤外線センサの前記フランジ部よりも車外側の部分が、前記取り付け孔に挿通されて前記筒状壁部内に配置されている請求項1~3のいずれか1項に記載の近赤外線センサのシール構造。
【請求項5】
前記シール部を第1シール部とした場合において、
前記筒状壁部の前記端部と前記近赤外線センサの前記フランジ部との間には、環状の第2シール部が配置されている請求項4に記載の近赤外線センサのシール構造。
【請求項6】
近赤外線を車外へ向けて送信し、かつ車外の物体に当たって反射された近赤外線を受信する近赤外線センサと、前記近赤外線の送信方向における前記近赤外線センサの前方に開口部を有する外装部材と、近赤外線を透過する透過部を有するセンサカバーとを備える車両に適用される近赤外線センサのシール方法であって、
前記近赤外線センサは、前記開口部よりも車内側に設定された搭載位置に配置され、
前記透過部は前記開口部よりも車外側に配置され、
前記センサカバーと前記外装部材との間であって、前記開口部を取り囲む箇所には、環状のシール部が配置されている近赤外線センサのシール方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外線センサをシールする構造、及び近赤外線センサのシール方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近赤外線センサと、近赤外線の送信方向における近赤外線センサの前方に開口部を有するフロントグリル等の外装部材と、近赤外線を透過する透過部を有するセンサカバーとを備える車両が、例えば、特許文献1に記載されている。
【0003】
近赤外線センサは、近赤外線を車外へ向けて送信し、かつ車外の物体に当たって反射された近赤外線を受信する。送信及び受信された近赤外線は、上記物体の認識、車両と物体との距離の検出、車両と物体との相対速度の検出等に用いられる。
【0004】
上記近赤外線センサは、上記開口部よりも車内側に配置される。また、センサカバーの透過部は、上記開口部よりも車外側に配置されて、近赤外線センサを車外側から覆い隠す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2018/052057号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近赤外線センサにおいて近赤外線を送信及び受信する車外側の面に水が付着すると、センサ性能が影響を受けて低下するおそれがある。ところが、上記特許文献1では、近赤外線センサへの水の付着を抑制する対策についての記載が特になされていない。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、近赤外線センサの車外側の面への水の付着を抑制することのできる近赤外線センサのシール構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する近赤外線センサのシール構造は、近赤外線を車外へ向けて送信し、かつ車外の物体に当たって反射された近赤外線を受信する近赤外線センサと、前記近赤外線の送信方向における前記近赤外線センサの前方に開口部を有する外装部材と、近赤外線を透過する透過部を有するセンサカバーとを備える車両に適用される近赤外線センサのシール構造であって、前記近赤外線センサは、前記開口部よりも車内側に設定された搭載位置に配置され、前記透過部は前記開口部よりも車外側に配置され、前記センサカバーと前記外装部材との間であって、前記開口部を取り囲む箇所には、環状のシール部が配置されている。
【0009】
上記の構成によれば、センサカバーと外装部材との間であって、開口部を取り囲む箇所に配置された環状のシール部は、開口部よりも車外側から水が、センサカバーと外装部材との間を通って開口部よりも車内側へ浸入するのを規制する。従って、開口部よりも車内側に配置された近赤外線センサの車外側の面に水が付着しにくくなる。
【0010】
上記近赤外線センサのシール構造において、前記センサカバーは、前記外装部材に取り外し可能に取り付けられており、前記シール部は、前記センサカバーに固定されていることが好ましい。
【0011】
上記の構成によれば、シール部は、センサカバーに固定されていて、センサカバーと一体になっている。そのため、センサカバーの外装部材に対する取り外し及び取り付けの際には、センサカバーと一緒にシール部が、外装部材から取り外され、また外装部材に取り付けられる。従って、シール部のシール性が低下した場合には、センサカバーを交換することで、シール部も交換され、シール性を確保することが可能である。
【0012】
上記近赤外線センサのシール構造において、前記センサカバーのうち、前記透過部の周辺部分であって、車内側の面には締結部が設けられ、前記外装部材における前記開口部の周囲には被締結部が設けられ、前記締結部が前記被締結部に対し締結解除可能に締結され、前記シール部は、前記開口部と、前記締結部の前記被締結部に対する締結箇所との間に配置されていることが好ましい。
【0013】
上記の構成によれば、水が締結部の被締結部に対する締結箇所から浸入しても、その水が開口部よりも車内側へ浸入することが、同開口部を取り囲むシール部によって規制される。水が近赤外線センサの車外側の面に対し、さらに付着しにくくなる。
【0014】
上記近赤外線センサのシール構造において、前記外装部材は、前記開口部の周縁部から車内側へ突出し、かつ突出側の端部に取り付け孔を有する筒状壁部を有し、前記近赤外線センサは外周にフランジ部を有し、前記搭載位置では、前記近赤外線センサの前記フランジ部よりも車外側の部分が、前記取り付け孔に挿通されて前記筒状壁部内に配置されていることが好ましい。
【0015】
上記の構成によれば、近赤外線センサのうち、取り付け孔に挿通されて筒状壁部内に配置された部分、すなわち、フランジ部よりも車外側の部分は、同筒状壁部によって囲まれる。近赤外線センサの車外側の面は、筒状壁部内に位置する。そのため、開口部よりも車内側における水が、筒状壁部内に入り込むことが規制される。近赤外線センサの車外側の面に対し、水がより付着しにくくなる。
【0016】
上記近赤外線センサのシール構造において、前記シール部を第1シール部とした場合において、前記筒状壁部の前記端部と前記近赤外線センサの前記フランジ部との間には、環状の第2シール部が配置されていることが好ましい。
【0017】
上記の構成によれば、筒状壁部の突出側の端部と近赤外線センサのフランジ部との間に配置された環状の第2シール部は、取り付け孔を取り囲む。第2シール部は、開口部よりも車内側における水が、上記端部とフランジ部との間を通り、取り付け孔から筒状壁部内に入るのを規制する。従って、近赤外線センサの車外側の面に対し、水が一層付着しにくくなる。
【発明の効果】
【0018】
上記近赤外線センサのシール構造によれば、近赤外線センサの車外側の面への水の付着を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】一実施形態において、フロントグリルに対し、近赤外線センサ及びセンサカバーが取り付けられる前の状態を、斜め後側から見た斜視図。
図2】一実施形態において、近赤外線センサ及びセンサカバーが取り付けられたフロントグリルの一部を示す正面図。
図3図2の3-3線断面図。
図4図3のA部を拡大して示す部分断面図。
図5図2のフロントグリルから近赤外線センサ及びセンサカバーが取り外された状態を示す正面図。
図6図2の6-6線断面図。
図7図2の7-7線断面図。
図8】第1シール部の変形例を示す図であり、(a)は同第1シール部によってシールされた状態を示す部分断面図、(b)はシールされる前の状態を示す部分断面図。
図9】第1シール部の変形例を示す図であり、同第1シール部によってシールされる前の状態を示す部分断面図。
図10】(a),(b)はともに第1シール部の変形例を示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、車両の前方監視用の近赤外線センサを例にとり、その近赤外線センサをシールする構造に具体化した一実施形態について、図1図7を参照して説明する。
なお、以下の記載においては、車両の前進方向を前方とし、後進方向を後方として説明する。また、上下方向は車両の上下方向を意味し、左右方向は車幅方向であって車両の前進時の左右方向と一致するものとする。
【0021】
最初に、車両において、近赤外線センサ及びセンサカバーが取り付けられる対象であるフロントグリルについて説明する。続けて、近赤外線センサ、センサカバー、及び近赤外線センサのシール構造について、それぞれ説明する。
【0022】
ここで、車両の前後方向における「前」は、近赤外線センサ、センサカバー及びフロントグリルの三者の関係においては、「外」に該当する。また、上記前後方向における「後」は、上記三者の関係においては、「内」に該当する。
【0023】
<フロントグリル10>
図1及び図2に示すように、車両における車体の前端部には、外装部材としてフロントグリル10が取り付けられている。図1及び図2では、フロントグリル10については、一部が図示されている。フロントグリル10は、板状部11と、板状部11の前面に形成された複数の横格子部12とを備えている。板状部11は、起立した状態で配置されている。各横格子部12は、板状部11から前方へ突出した状態で左右方向へ延びている。複数の横格子部12は、上下方向に互いに離間している。各横格子部12は、表面にメッキが施されることにより、金属光沢を有している。
【0024】
また、図3及び図5に示すように、左右方向におけるフロントグリル10の中央部分には、横格子部12の前面よりも後側へ凹んだ段差部13が形成されている。段差部13の形成により、一部の横格子部12は、左右方向における中央部分で分断されている。
【0025】
左右方向及び上下方向における段差部13の中央部分には、開口部14が形成されている。フロントグリル10において開口部14が形成された箇所は、近赤外線の送信方向における近赤外線センサ30の前方である。段差部13において、開口部14の周縁部からは、略四角筒状をなす有底の筒状壁部15が後方へ向けて突出している。筒状壁部15の突出側(後側)の端部16には、取り付け孔17が形成されている。
【0026】
図5及び図6に示すように、左右方向における段差部13の両側部には、前面において開口され、かつそれぞれ略上下方向に細長い凹部18が形成されている。各凹部18の内底部18aのうち、後述する第1ボス68の後側となる複数箇所には、被締結部が設けられている。被締結部は、凹部18毎の内底部18aの上端部及び下端部に形成された一対の第1締結孔19と、同内底部18aにおける各第1締結孔19の周辺部分とによって構成されている。
【0027】
図1及び図6に示すように、板状部11において各凹部18の後側となる箇所には、後方へ向けて突出する突部21が形成されている。各突部21は筒状壁部15の外部に位置している。各突部21の上部には、後方へ向けて突出する軸部22が形成されている。各突部21における軸部22の下方には、後方へ向けて突出する第2ボス23が形成されている。
【0028】
図1及び図3に示すように、フロントグリル10における開口部14よりも後側であり、かつ筒状壁部15の外部には、後方へ向けて突出する第2ボス24が形成されている。本実施形態では、第2ボス24は、フロントグリル10における開口部14及び筒状壁部15よりも上側であって、左右方向に互いに離間した2箇所に形成されている。
【0029】
<近赤外線センサ30>
近赤外線センサ30は、開口部14よりも後側に設定された搭載位置に配置されている。近赤外線センサ30は、車両の前方へ向けて近赤外線を送信し、かつ先行車両、歩行者等の車両前方の物体に当たって反射された近赤外線を受信する。近赤外線は、電磁波の一種であり、可視光の波長よりも長く、赤外線よりも短い波長を有する。近赤外線センサ30は、送信した近赤外線と受信した近赤外線とに基づき、車両前方の上記物体を認識するとともに、車両と上記物体との距離、相対速度等を検出する。
【0030】
近赤外線センサ30は、板状のフランジ部31を、自身の前端部の外周に有している。上記搭載位置では、近赤外線センサ30におけるフランジ部31よりも前側の部分が、取り付け孔17に対し、後側から挿通されて、筒状壁部15内に配置されている。また、近赤外線センサ30の前面30aは、上記開口部14から後方へ離れている。近赤外線センサ30のフランジ部31よりも後側の部分は、筒状壁部15の外部であって端部16よりも後側に位置している。
【0031】
図7に示すように、近赤外線センサ30は、左右方向における両側面に、それぞれ取り付け突部32を有している。また、図1及び図3に示すように、近赤外線センサ30は、上面の後端部であって、左右方向に互いに離間した2箇所に取り付け突部33を有している。
【0032】
図1図3及び図7に示すように、近赤外線センサ30には、一対の横ブラケット35と一対の縦ブラケット45とが取り付けられている。各横ブラケット35及び各縦ブラケット45は、金属等の硬質の材料からなる1枚の板材を曲げ加工等することによって形成されている。
【0033】
各横ブラケット35は、近赤外線センサ30の左右の側方近傍に配置されている。各横ブラケット35は、腕部36及び取り付け部38を備えている。各腕部36は、近赤外線センサ30の左右の側面に沿って前後方向へ延びている。各取り付け部38は、各腕部36の前端部に接続されており、左右方向のうち近赤外線センサ30から遠ざかる側へ延びている。
【0034】
各腕部36には孔39が形成されている。孔39にねじ41が挿通され、上記取り付け突部32に対し螺入されている。この螺入に伴う締め付けによって、各横ブラケット35が腕部36において取り付け突部32に取り付けられている。
【0035】
各取り付け部38の上部には位置決め孔42が形成されている(図6参照)。各取り付け部38の位置決め孔42の下方であって、上記第2ボス23の後側となる箇所には、第2締結孔43が形成されている。
【0036】
図1及び図3に示すように、各縦ブラケット45は、腕部46及び取り付け部48を備えている。各腕部46は、近赤外線センサ30の上面に沿って前後方向へ延びている。各取り付け部48は、各腕部46の前端部に接続されており、上方へ延びている。
【0037】
各腕部46の後端部には孔47が形成されている。孔47にねじ40が挿通され、上記取り付け突部33に対し螺入されている。この螺入に伴う締め付けによって、各縦ブラケット45が腕部36において取り付け突部33に取り付けられている。
【0038】
各取り付け部48であって、上記第2ボス24の後側となる箇所には、第2締結孔49が形成されている。
そして、図1図6及び図7に示すように、取り付け部38毎の位置決め孔42に対し、対応する軸部22が挿通されることにより、横ブラケット35がフロントグリル10に対し位置決めされている。さらに、取り付け部38毎の第2締結孔43に対し後側から第2ねじ44が挿通され、第2ボス23に螺入されている。また、図1及び図3に示すように、取り付け部48毎の第2締結孔49に対し後側から第2ねじ51が挿通され、第2ボス24に螺入されている。図1に示すように、上記第2ねじ44,51の螺入に伴う締め付けによって、近赤外線センサ30が一対の横ブラケット35及び一対の縦ブラケット45を介して、フロントグリル10に対し、取り外し可能に取り付けられている。
【0039】
<センサカバー55>
図2図4に示すように、開口部14よりも前側には、センサカバー55の透過部54が配置されている。透過部54は、近赤外線の送信方向における近赤外線センサ30の前方に位置し、送信された近赤外線、及び車外の物体に当たって反射された近赤外線を透過する。透過部54は、近赤外線センサ30の前面30aから前方へ離間している。センサカバー55のうち、少なくとも透過部54は、外基材56、加飾層65及び内基材61を備えている。なお、図3では加飾層65の図示が省略されている。図6図10についても同様である。
【0040】
外基材56及び内基材61はともに、硬質で、近赤外線の透過性を有する透明な樹脂材料によって形成されている。ここでの透明には、無色透明のほかにも着色透明(有色透明)も含まれる。該当する樹脂材料としては、例えば、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)等が挙げられる。外基材56及び内基材61は、同一の種類の樹脂材料によって形成されてもよいし、異なる種類の樹脂材料によって形成されてもよい。
【0041】
外基材56の前面57は、平坦な面によって構成されていて、センサカバー55の意匠面を構成している。これに対し、外基材56の後部の上下方向へ互いに離間した複数箇所には、それぞれ左右方向へ延びる凹部58が形成されている。
【0042】
内基材61は、外基材56の後側に配置されている。内基材61の後面62は、平坦な面によって構成されている。内基材61の前部の上下方向へ互いに離間した複数箇所には、それぞれ左右方向へ延びる突部64が形成されている。各突部64は、外基材56の対応する凹部58に入り込んでいる。
【0043】
上記凹部58及び突部64の組み合わせは、フロントグリル10における横格子部12のうち、段差部13の形成により分断された領域、すなわち、左右方向に延びる帯状の領域に設定されている。上記組み合わせは、上下方向における横格子部12と同じ位置又は略同じ位置であって、横格子部12と同じ又は略同じ上下幅を有している。
【0044】
加飾層65は、センサカバー55を装飾するための層であり、外基材56及び内基材61の間に形成されている。加飾層65は、光輝加飾層66及び有色加飾層67によって構成されている。
【0045】
有色加飾層67は、近赤外線の光線透過率が高く、かつ可視光の光線透過率が低い材料、例えば赤外線透過インキ(IRインキ)によって形成されており、黒色、青色、赤色等をなしている。有色加飾層67は、外基材56の後面のうち、凹部58とは異なる箇所に対し、例えば、スクリーン印刷等の印刷を行うことによって形成されている。
【0046】
光輝加飾層66は、外基材56における凹部58の内壁面と、有色加飾層67の後面全体とに対し、スパッタリング、蒸着、コーティング等を行うことによって形成されている。光輝加飾層66は、上記横格子部12の金属光沢と同じ又は近い金属光沢を有するとともに、可視光を反射し、かつ近赤外線を透過する。
【0047】
図6に示すように、センサカバー55のうち、透過部54の周辺部分の後面には締結部が設けられている。締結部は、本実施形態では、内基材61の後面の四隅から後方へ向けて突出する第1ボス68によって構成されている。各第1ボス68は、上記凹部18内に入り込んでいる。そして、各第1締結孔19に対し後側から第1ねじ69が挿通され、第1ボス68に螺入されている。この螺入に伴う締め付けによって、センサカバー55がフロントグリル10に対し、取り外し可能に取り付けられている。
【0048】
<近赤外線センサ30のシール構造>
図3及び図7に示すように、近赤外線センサ30の前面30aに水が付着するのを規制するために、それぞれ弾性材料によって環状に形成された第1シール部75及び第2シール部85が設けられている。弾性材料としては、例えば、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)等のゴムを用いることができる。また、軟質ウレタン等のゴム弾性を有する合成樹脂が弾性材料として用いられてもよい。また、独立泡を有するスポンジ等の軟質の発泡体が弾性材料として用いられてもよい。なお、第1シール部75及び第2シール部85は、内部に空間を有しない構造、いわゆる中実の構造を採ってもよいし、内部に空間を有する構造、いわゆる中空の構造を採ってもよい。
【0049】
第1シール部75は、センサカバー55及びフロントグリル10とは別の部材によって構成されている。第1シール部75は、センサカバー55及びフロントグリル10の間であって、開口部14を取り囲む箇所に配置されている。本実施形態では、第1シール部75は、センサカバー55における透過部54よりも外周側の部分の後面と、フロントグリル10における段差部13の前面のうち、開口部14の周縁部に対し外周側に隣接する箇所との間に配置されている。しかも、第1シール部75は、凹部18よりも開口部14寄りの箇所に配置されている。この配置により、第1シール部75は、開口部14と、第1ボス68の第1締結孔19に対する締結箇所との間に位置している。
【0050】
第1シール部75は、本実施形態では、センサカバー55に対し、加硫接着、接着剤を用いた接着、粘着剤を用いた粘着等の固定手段によって固定されている。第1シール部75は、第1ねじ69を用いた締結により弾性変形させられた状態で段差部13の前面に押し付けられている。
【0051】
第2シール部85は、フロントグリル10及び近赤外線センサ30とは別の部材によって構成されている。第2シール部85は、筒状壁部15における端部16の後面と、近赤外線センサ30におけるフランジ部31の前面との間に配置されている。第2シール部85は、第2ねじ44,51を用いた締結により弾性変形させられた状態で、端部16の後面とフランジ部31の前面とに押し付けられている。
【0052】
次に、上記のように構成された本実施形態の作用について説明する。また、上記作用に伴う効果についても併せて説明する。
近赤外線センサ30から近赤外線が送信されると、その近赤外線は、図4に示す透過部54における内基材61、加飾層65及び外基材56を順に透過する。透過部54を透過した近赤外線は、先行車両、歩行者等を含む車両前方の物体に当たって反射された後、透過部54における外基材56、加飾層65及び内基材61を順に透過する。透過部54を透過した近赤外線は、近赤外線センサ30によって受信される。近赤外線センサ30では、送信及び受信された上記近赤外線に基づき、物体の認識や、車両と同物体との距離、相対速度等の検出が行われる。
【0053】
センサカバー55は、送信及び反射された近赤外線が透過する際の妨げとなりにくい。近赤外線のうち、センサカバー55によって減衰される量を許容範囲にとどめることができる。そのため、近赤外線センサ30に、上記検出等の機能を適正に発揮させることができる。
【0054】
また、センサカバー55に対し前側から可視光が照射されると、その可視光は外基材56を透過し、加飾層65で反射される。車両前方からセンサカバー55を見ると、外基材56を通して、その外基材56の後側(奥側)に加飾層65が位置するように見える。加飾層65のうち有色加飾層67については、その有色加飾層67の有する色が見える。また、加飾層65のうち光輝加飾層66については、金属のように光り輝いて見える。このように、加飾層65によってセンサカバー55が装飾され、同センサカバー55及びその周辺部分の見栄えが向上する。
【0055】
特に、加飾層65は、外基材56及び内基材61の間に形成されていて、凹凸状をなしている。そのため、車両の前方からは、光輝加飾層66が、有色加飾層67よりも前側(手前)に位置しているように見える。従って、センサカバー55及びその周辺部分の見栄えがさらに向上する。
【0056】
また、図2及び図4に示すように光輝加飾層66が、横格子部12のうち、段差部13により分断された領域に位置する。車両の前方からは、左右方向における段差部13の両側の横格子部12が、光輝加飾層66を挟んで一直線状に繋がっているように見える。そのため、センサカバー55とフロントグリル10との一体感がさらに高められ、意匠性がさらに良好なものとなる。
【0057】
なお、可視光の加飾層65での上記反射は、近赤外線センサ30よりも前側で行われる。加飾層65は、近赤外線センサ30を覆い隠す機能を発揮する。そのため、センサカバー55の前側からは、近赤外線センサ30が見えにくい。従って、近赤外線センサ30がセンサカバー55を介して透けて見える場合に比べて意匠性が向上する。
【0058】
ところで、図3及び図7に示すように、降雨時等には、水が、開口部14よりも前側からセンサカバー55とフロントグリル10との間を通って開口部14よりも後側へ浸入し、近赤外線センサ30の前面30aに付着するおそれがある。
【0059】
この点、本実施形態では、センサカバー55とフロントグリル10との間であって、開口部14を取り囲む箇所に環状の第1シール部75が配置されている。この第1シール部75は、開口部14よりも前側から水が、センサカバー55及びフロントグリル10の間を通って開口部14よりも後側へ浸入するのを規制する。従って、開口部14よりも後側に配置された近赤外線センサ30の前面30aに水が付着しにくい。
【0060】
さらに、本実施形態では、第1シール部75が、開口部14と、第1ボス68の第1締結孔19に対する締結箇所との間に配置されている。そのため、水が上記締結箇所から浸入しても、その水が開口部14よりも後側へ浸入することが第1シール部75によって規制される。従って、水が上記前面30aに対し、さらに付着しにくくなる。
【0061】
また、本実施形態では、近赤外線センサ30のうち、取り付け孔17に挿通されて筒状壁部15内に配置された部分、すなわち、フランジ部31よりも前側の部分が、同筒状壁部15によって囲まれている。上記前面30aは、筒状壁部15内に位置している。そのため、降雨時等には、開口部14よりも後側における水が、筒状壁部15内に入り込むことが規制される。従って、前面30aに対し、水がより付着しにくくなる。
【0062】
また、降雨時等には、水が近赤外線センサ30と筒状壁部15との間を通って、同筒状壁部15内に浸入し、近赤外線センサ30の前面30aに付着するおそれがある。
この点、本実施形態では、筒状壁部15の突出側の端部16と近赤外線センサ30のフランジ部31との間には、取り付け孔17を取り囲む第2シール部85が配置されている。そのため、開口部14よりも後側における水が、上記端部16とフランジ部31との間を通って、取り付け孔17から筒状壁部15内に浸入することが、第2シール部85によって規制される。従って、水が近赤外線センサ30の前面30aに対し、一層付着しにくくなる。
【0063】
さらに、本実施形態では、第1シール部75がセンサカバー55に固定されていて、同センサカバー55と一体になっている。そのため、センサカバー55のフロントグリル10に対する取り外し及び取り付けの際には、センサカバー55と一緒に第1シール部75がフロントグリル10から取り外され、また、同フロントグリル10に取り付けられる。
【0064】
より具体的には、センサカバー55がフロントグリル10から取り外される際には、図1及び図6に示す複数の第1ねじ69がそれぞれ緩む側へ回転されて、第1ボス68及び第1締結孔19から取り出される。すると、凹部18の内底部18aに対する第1ボス68の締結が解除され、センサカバー55を第1シール部75と一緒にフロントグリル10から前側へ取り外すことが可能となる。
【0065】
別のセンサカバー55がフロントグリル10に取り付けられる際には、同センサカバー55が前側からフロントグリル10に近づけられる。これに伴い、第1シール部75が段差部13のうち、開口部14の周辺部分に接近する。また、各第1ボス68が、対応する凹部18に挿入される。複数の第1締結孔19に対し、それぞれ後側から第1ねじ69が挿通されて、締め付ける側へ回転される。この回転により、第1ねじ69が第1ボス68に螺入され、同第1ボス68が内底部18aに締結されて、センサカバー55が第1シール部75と一緒にフロントグリル10に取り付けられる。このときには、第1シール部75が弾性変形させられて、段差部13に押し付けられる。このようにして、センサカバー55が第1シール部75と一緒に交換される。
【0066】
従って、第1シール部75のシール性が低下した場合には、センサカバー55を上記のように交換することで、第1シール部75も交換され、シール性を確保することが可能である。
【0067】
なお、上記実施形態は、これを以下のように変更した変形例として実施することもできる。
図8(a),(b)に示すように、段差部13のうち、開口部14の周囲において後方へ向けて凹む環状凹部13aが設けられ、この環状凹部13aに第1シール部76が装着されてもよい。第1シール部76は、環状突部77及びシール部本体78を備えている。環状突部77は、内基材61の周縁部における後面から、後方へ向けて突出しており、内基材61と同様、硬質の樹脂材料によって形成されている。シール部本体78は、環状突部77の周りにウレタンシール材等の軟質のシール材が塗布及び硬化されることによって形成されている。なお、シール部本体78は、弾性材料によって形成された板材が、環状突部77に沿ってU字状に湾曲させられた状態で同環状突部77に対し、接着、粘着等の固定手段によって固定されてもよい。
【0068】
そして、センサカバー55のフロントグリル10への取り付けに際し、図8(b)において二点鎖線の矢印で示すように、シール部本体78が環状凹部13a内に挿入される。図8(a)に示すように、環状突部77も環状凹部13a内に挿入される。第1シール部76は、シール部本体78において環状突部77の外面と環状凹部13aの内壁面とに対し接触し、開口部14よりも後側への水の浸入を規制する。
【0069】
なお、上記変形例は、図示はしないが、第2シール部85にも適用可能である。
・上記図8(a),(b)とは異なり、シール部本体78は、図9に示すように、環状突部77に固定されなくてもよい。この場合、センサカバー55がフロントグリル10に取り付けられる前に、環状凹部13a内に、円形等の断面形状を有する環状のシール部本体78が挿入されて配置される。環状突部77が内基材61に形成されている点は、図8(a),(b)と同様である。
【0070】
そして、センサカバー55のフロントグリル10への取り付けに際し、透過部54が段差部13に近づけられることで、環状突部77が環状凹部13a内に挿入されて、シール部本体78に差し込まれる。この差し込みにより、図9において二点鎖線で示すように、シール部本体78が断面U字状に弾性変形させられる。センサカバー55がフロントグリル10に取り付けられた状態では、第1シール部76は、上述した図8(a)と同様の状態となる。
【0071】
なお、上記変形例は、図示はしないが、第2シール部85にも適用可能である。
図10(a)に示すように、上記図8(a),(b)及び図9における環状突部77に相当する部分が軟質樹脂材料によって形成されて、環状の第1シール部81が構成されてもよい。この場合、センサカバー55がフロントグリル10に取り付けられる際に、第1シール部81が厚み方向に弾性変形して段差部13に押し付けられる。
【0072】
上記第1シール部81は、内基材61よりも軟質の樹脂材料が用いられて、二色成形法等によって内基材61に対し一体に形成されてもよい。また、上記第1シール部81及び内基材61が別々に形成されて、両者が接着、粘着等により固定されてもよい。
【0073】
なお、上記変形例は、図示はしないが、第2シール部85にも適用可能である。
図10(a)とは異なる断面形状を有する第1シール部82が用いられてもよい。図10(b)はその一例を示しており、第1シール部82として、半円形の断面形状を有するものが用いられている。そのほかにも、半円形とは異なる断面形状を有する第1シール部82が用いられてもよい。
【0074】
なお、上記変形例は、図示はしないが、第2シール部85にも適用可能である。
・上記第1シール部75は、センサカバー55に代えてフロントグリル10の段差部13に固定されてもよい。また、上記第1シール部75は、センサカバー55及びフロントグリル10のいずれに対して固定されなくてもよい。
【0075】
・第2シール部85は、筒状壁部15の端部16、及び近赤外線センサ30のフランジ部31の一方に固定されてもよい。また、第2シール部85は、上記端部16及びフランジ部31のいずれに対して固定されなくてもよい。
【0076】
・第2シール部85が省略され、第1シール部75のみによって近赤外線センサ30のシールが行われてもよい。
・透過部54における外基材56の前面57に撥水加工が施されることにより、水滴を除去する機能が透過部54に付与されてもよい。
【0077】
・センサカバー55及び近赤外線センサ30のそれぞれのフロントグリル10に対する取り付けは、クリップ、ビス、爪係合等、ねじ締結とは異なる締結手段を用いた締結によってなされてもよい。
【0078】
・上記実施形態よりも少ない数又は多い数のブラケットが用いられ、同ブラケットを介して近赤外線センサ30がフロントグリル10に対し間接に取り付けられてもよい。また、ブラケットが用いられずに、近赤外線センサ30がフロントグリル10に対し直接に取り付けられてもよい。
【0079】
・上記シール構造は、車両前方とは異なる方向へ近赤外線を送信する近赤外線センサが搭載された車両にも適用可能である。該当する近赤外線センサとしては、例えば、前側方監視用、後方監視用、及び後側方監視用の近赤外線センサが挙げられる。
【0080】
前側方監視用の近赤外線センサは、例えば、フロントバンパにおけるバンパカバーを外装部材とし、左右方向における同バンパカバーの側部に形成された開口部よりも車内側に配置される。このタイプの近赤外線センサは、例えば、斜め前方から接近する見通しのよい交差点での出合い頭の衝突、センターラインをはみ出した対向車との衝突等を軽減するシステムに使用されて、車両の側方や斜め前側方の物体を検出する役割を担う。
【0081】
後方監視用の近赤外線センサは、例えば、リヤバンパにおけるバンパカバーを外装部材とし、左右方向における同バンパカバーの中央部分に形成された開口部よりも車内側に配置される。このタイプの近赤外線センサは、例えば、所定速度以上での走行時に、後方から接近する車両を検出する役割を担う。
【0082】
後側方監視用の近赤外線センサは、リヤバンパにおけるバンパカバーを外装部材とし、左右方向における同バンパカバーの側部に形成された開口部よりも車内側に配置される。このタイプの近赤外線センサは、例えば、運転者の死角になりやすい斜め後側方の車両や、後退時に斜め後側方から接近してくる車両を検出する役割を担う。
【0083】
・上記前側方監視用及び後側方監視用の近赤外線センサは、車両の左右方向における両側部に配置されてもよいし、一方の側部にのみ配置されてもよい。
【符号の説明】
【0084】
10…フロントグリル(外装部材)、14…開口部、15…筒状壁部、16…端部、17…取り付け孔、19…第1締結孔(被締結部の一部を構成)、30…近赤外線センサ、31…フランジ部、54…透過部、55…センサカバー、68…第1ボス(締結部を構成)、75,76,81,82…第1シール部、85…第2シール部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10