IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社IHIの特許一覧

特許7151591電力需給管理システム、電力需給管理装置、及び電力需給管理方法
<>
  • 特許-電力需給管理システム、電力需給管理装置、及び電力需給管理方法 図1
  • 特許-電力需給管理システム、電力需給管理装置、及び電力需給管理方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】電力需給管理システム、電力需給管理装置、及び電力需給管理方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/46 20060101AFI20221004BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20221004BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
H02J3/46
H02J3/38 160
H02J3/38 130
H02J13/00 311R
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019064815
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020167798
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】矢野 美沙子
【審査官】佐藤 卓馬
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/203664(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/003408(WO,A1)
【文献】特開2014-200120(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/46
H02J 3/38
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統への逆潮流の認可を受けている少なくとも1つの第1発電施設と、
前記電力系統への逆潮流の認可を受けていない少なくとも1つの第2発電施設と、
前記第1発電施設から前記電力系統への逆潮流ができなくなる異常が生じた場合に、前記第2発電施設から前記電力系統への逆潮流を一時的に行わせる電力需給管理装置と、
を備える電力需給管理システム。
【請求項2】
前記電力需給管理装置は、前記第2発電施設が前記電力系統への逆潮流を行う余裕がある場合に、前記電力系統に逆潮流する電力量が、前記第1発電施設及び前記第2発電施設が接続される配電設備の容量を超えないように制御する、請求項1記載の電力需給管理システム。
【請求項3】
前記電力需給管理装置は、前記第1発電施設に異常が生じた場合に、異常が生じた前記第1発電施設以外の他の前記第1発電施設の発電量を増加させても必要な電力が賄えないときに、前記第2発電施設から前記電力系統への逆潮流を一時的に行わせる、請求項1又は請求項2記載の電力需給管理システム。
【請求項4】
前記電力需給管理装置は、異常が生じた前記第1発電施設が復帰した場合、又は異常が生じた前記第1発電施設以外の他の前記第1発電施設で必要な電力が賄えるようになった場合には、前記第2発電施設から前記電力系統への逆潮流を停止させる、請求項1から請求項3の何れか一項に記載の電力需給管理システム。
【請求項5】
前記第1発電施設及び前記第2発電施設は、再生可能エネルギー発電装置を備える、請求項1から請求項4の何れか一項に記載の電力需給管理システム。
【請求項6】
電力系統への逆潮流の認可を受けている第1発電施設から前記電力系統への逆潮流ができなくなる異常が生じた場合に、前記電力系統への逆潮流の認可を受けていない第2発電施設から前記電力系統への逆潮流を一時的に行わせる電力需給管理装置。
【請求項7】
電力系統への逆潮流の認可を受けている第1発電施設から電力需給管理装置に、前記電力系統への逆潮流ができなくなる異常が生じた旨を通知するステップと、
前記異常が生じた旨が通知された場合に、前記電力需給管理装置が、前記電力系統への逆潮流の認可を受けていない第2発電施設から前記電力系統への逆潮流を一時的に行わせるステップと、
を有する電力需給管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力需給管理システム、電力需給管理装置、及び電力需給管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力は貯蔵することが困難であるから、電力の需要と供給とのバランスを常に一致させる同時同量を達成する必要がある。例えば、一般電気事業者は数秒単位で同時同量を達成する必要があり、新電力事業者は30分単位で同時同量を達成する必要がある。新電力事業者が同時同量を達成することができなかった場合(計画値と実績値との差=インバランスが発生した場合)には、30分単位毎の電力の需要と供給との差分を調整するインバランス調整が行われる。
【0003】
具体的には、新電力事業者による発電量が不足した場合には、新電力事業者が一般電気事業者から不足分の電力を買い取ることで、電力の需要と供給との差分が調整される。これに対し、新電力事業者による発電量が余った場合には、一般電気事業者が新電力事業者から余剰分を買い取ることで、電力の需要と供給との差分が調整される。
【0004】
以下の特許文献1には、従来の電力制御システムの一例が開示されている。具体的に、以下の特許文献1には、同時同量の原則の下、電力の需要を設定された目標値内に制御するとともに、目標値の設定に電力の供給能力を反映可能な広域多拠点電力制御システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6381739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、再生可能エネルギー発電施設が急激に増加している。このような発電施設の急激な増加により、配電設備の容量の制限や需給バランスの崩れを懸念して、逆潮流の認可がおりない発電施設が増えている。
【0007】
ここで、逆潮流の認可を受けている発電施設が停止した場合には、配電設備の容量に空きが生ずることになる。しかしながら、現状では、配電設備の容量の空きがあるにも拘わらず、逆潮流の認可を受けていない発電施設ではインバランス調整を行うことができないことから、逆潮流の認可を受けていない発電施設を有効に活用できているとは言えない状況である。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、逆潮流の認可を受けていない発電施設を有効に活用することができる電力需給管理システム、電力需給管理装置、及び電力需給管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の一態様による電力需給管理システム(1)は、電力系統(PS)への逆潮流の認可を受けている少なくとも1つの第1発電施設(20a~20c)と、前記電力系統への逆潮流の認可を受けていない少なくとも1つの第2発電施設(10)と、前記第1発電施設から前記電力系統への逆潮流ができなくなる異常が生じた場合に、前記第2発電施設から前記電力系統への逆潮流を一時的に行わせる電力需給管理装置(30)と、を備える。
【0010】
また、本発明の一態様による電力需給管理システムは、前記電力需給管理装置が、前記第2発電施設が前記電力系統への逆潮流を行う余裕がある場合に、前記電力系統に逆潮流する電力量が、前記第1発電施設及び前記第2発電施設が接続される配電設備の容量を超えないように制御する。
【0011】
また、本発明の一態様による電力需給管理システムは、前記電力需給管理装置が、前記第1発電施設に異常が生じた場合に、異常が生じた前記第1発電施設以外の他の前記第1発電施設の発電量を増加させても必要な電力が賄えないときに、前記第2発電施設から前記電力系統への逆潮流を一時的に行わせる。
【0012】
また、本発明の一態様による電力需給管理システムは、前記電力需給管理装置が、異常が生じた前記第1発電施設が復帰した場合、又は異常が生じた前記第1発電施設以外の他の前記第1発電施設で必要な電力が賄えるようになった場合には、前記第2発電施設から前記電力系統への逆潮流を停止させる。
【0013】
また、本発明の一態様による電力需給管理システムは、前記第1発電施設及び前記第2発電施設は、再生可能エネルギー発電装置を備える。
【0014】
本発明の一態様による電力需給管理装置(30)は、電力系統(PS)への逆潮流の認可を受けている第1発電施設(20a~20c)から前記電力系統への逆潮流ができなくなる異常が生じた場合に、前記電力系統への逆潮流の認可を受けていない第2発電施設(10)から前記電力系統への逆潮流を一時的に行わせる。
【0015】
本発明の一態様による電力需給管理方法は、電力系統(PS)への逆潮流の認可を受けている第1発電施設(20a~20c)から電力需給管理装置(30)に、前記電力系統への逆潮流ができなくなる異常が生じた旨を通知するステップ(S11)と、前記異常が生じた旨が通知された場合に、前記電力需給管理装置が、前記電力系統への逆潮流の認可を受けていない第2発電施設(10)から前記電力系統への逆潮流を一時的に行わせるステップ(S15)と、を有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、逆潮流の認可を受けていない発電施設を有効に活用することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態による電力需給管理システムの要部構成を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態による電力需給管理方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態による電力需給管理システム、電力需給管理装置、及び電力需給管理方法について詳細に説明する。
【0019】
〈電力需給管理システム〉
図1は、本発明の一実施形態による電力需給管理システムの要部構成を示すブロック図である。図1に示す通り、本実施形態の電力需給管理システム1は、発電施設10(第2発電施設)、発電施設20a~20c(第1発電施設)、及びアグリゲータ30(電力需給管理装置)を備えており、需要家ECに対して電力の供給を行う。この電力需給管理システム1は、インバランスが発生しないように、例えば、需要家ECによる電力の需要と、発電施設10及び発電施設20a~20cによる電力の供給とを管理する。
【0020】
発電施設10は、例えば太陽光発電装置、風力発電装置、地熱発電装置、その他の再生可能エネルギーを用いで発電を行う再生可能エネルギー発電装置を備える。本実施形態では、発電施設10には太陽光発電装置が設けられているとする。発電施設10は、電力系統PSに接続されている。ここで、発電施設10は、電力系統PSへの逆潮流の認可を受けていない発電施設である。
【0021】
発電施設10が電力系統PSへの逆潮流の認可を受けていないのは、逆潮流の許可を申請した時点において、例えば、配電設備の容量の制限ため、或いは、他の発電施設20a~20cとの関係において需給バランスの崩れの懸念のため、電力系統PSへの逆潮流の認可がおりなかったためである。以下、電力系統PSへの逆潮流の認可を受けていない発電施設を、「無認可発電施設」ということがある。
【0022】
発電施設10は、電力系統PSへの逆潮流の認可を受けていないため、発電施設10で発電された電力を電力系統PSに逆潮流させることができない。このため、平常運転時に発電施設10で発電された電力は、発電施設10の構内の負荷に供給されて消費される。また、発電施設10では、発電された電力が電力系統PSに逆潮流することがないように、発電量が構内の需要量を超えないように調整される。
【0023】
発電施設20a~20cは、例えば太陽光発電装置、風力発電装置、地熱発電装置、その他の再生可能エネルギーを用いで発電を行う再生可能エネルギー発電装置を備える。本実施形態では、発電施設20a,20bには太陽光発電装置が設けられており、発電施設20cには風力発電装置が設けられているとする。発電施設20a~20cは、発電施設10と同様に、電力系統PSに接続されている。ここで、発電施設20a~20cは、電力系統PSへの逆潮流の認可を受けている発電施設である。
【0024】
発電施設20a~20cが電力系統PSへの逆潮流の認可を受けることができたのは、逆潮流の許可を申請した時点において、例えば、配電設備の容量に余裕があったため、或いは、需給バランスの崩れの懸念がなかったため、電力系統PSへの逆潮流の認可がおりたためである。以下、電力系統PSへの逆潮流の認可を受けている発電施設を、「認可発電施設」ということがある。尚、発電施設10,20a~20cは、共通の配電設備(電線、変電所)に接続されているものとする。
【0025】
〈電力需給管理装置〉
アグリゲータ30は、電力需給管理システム1の核をなす装置であり、例えば、インバランスが発生しないように電力の需要及び供給を管理する。アグリゲータ30は、発電施設10,20a~20cに設けられた制御装置(図示省略)と通信可能に構成されており、発電施設10,20a~20cの発電量を示す情報を取得し、必要に応じて、発電施設10,20a~20cの動作を制御する指示を行う。また、アグリゲータ30は、需要家ECに設けられた各種の機器(図示省略)と通信可能に構成されており、需要家ECにおいて消費される電力量(消費電力量)を示す情報を取得する。
【0026】
また、アグリゲータ30は、日本卸電力取引所(JEPX:Japan Electric Power Exchange)のコンピュータと通信可能に構成されており、日本卸電力取引所に対して行った取引を示す情報(入札情報)を取得する。尚、日本卸電力取引所に対して行った取引を示す情報は、例えばキーボード等のような入力装置を用いて、アグリゲータ30に入力するようにしても良い。
【0027】
アグリゲータ30、発電施設10,20a~20cに設けられた制御装置、需要家ECに設けられた各種の機器、及び日本卸電力取引所のコンピュータは、不図示のネットワークを介して通信可能に接続されている。このネットワークは、インターネット等のワイド・エリア・ネットワーク(WAN)であっても良く、ローカル・エリア・ネットワーク(LAN)であっても良い。また、ネットワークを介した通信は、有線通信であっても良く、無線通信であっても良い。即ち、アグリゲータ30と、発電施設10,20a~20c等との間の通信形態は、特に制限されることはなく、任意の通信形態を採用することができる。
【0028】
アグリゲータ30は、認可発電施設である発電施設20a~20cにおいて、電力系統PSへの逆潮流ができなくなる異常が生じた場合に、無認可発電施設である発電施設10から電力系統PSへの逆潮流を一時的に行わせる。これは、異常が生じた認可発電施設に代わって無認可発電施設である発電施設10から電力系統PSへの逆潮流を一時的に行わせることで、発電施設10を有効に活用するためである。尚、異常が生じた認可発電施設が停止すると配電設備の容量に空きが生ずることになるため、発電施設10から電力系統PSへの逆潮流を一時的に行わせても、配電設備の容量を超えなければ問題は生じない。
【0029】
アグリゲータ30は、例えば、発電施設10に電力系統PSへの逆潮流を行う余裕がある場合に電力系統PSへの逆潮流を行わせる。つまり、アグリゲータ30は、発電施設10の発電量が、少なくとも発電施設10の構内で必要になる電力量を上回っている場合に電力系統PSへの逆潮流を行わせる。ここで、アグリゲータ30は、発電施設10に電力系統PSへの逆潮流を行わせる場合には、発電施設10,20a~20cが接続される配電設備の容量を超えないように制御する。
【0030】
尚、電力系統PS全体が停止する可能性がある場合(例えば、災害時におけるブラックアウトが発生する場合)には、緊急を要するために、アグリゲータ30は、発電施設10に電力系統PSへの逆潮流を行う余裕が無くとも、電力系統PSへの逆潮流を行わせるようにしても良い。つまり、アグリゲータ30は、発電施設10の発電量が、発電施設10の構内で必要になる電力量を下回っていても電力系統PSへの逆潮流を行わせるようにしても良い。
【0031】
アグリゲータ30は、認可発電施設である発電施設20a~20cに異常が生じた場合に、異常が生じた発電施設(例えば、発電施設20a)以外の他の発電施設(例えば、発電施設20b,20c)の発電量を増加させても必要な電力が賄えないときに、無認可発電施設である発電施設10から電力系統PSへの逆潮流を一時的に行わせる。無認可発電施設である発電施設10は、本来であれば電力系統PSへの逆潮流が認められないため、電力系統PSへの逆潮流が認められている認可発電施設で、必要な電力を極力賄うようにしている。
【0032】
アグリゲータ30は、異常が生じた発電施設(例えば、発電施設20a)が復帰した場合、又は異常が生じた発電施設(例えば、発電施設20a)以外の他の発電施設(例えば、発電施設20b,20c)で、必要な電力が賄えるようになった場合には、無認可発電施設である発電施設10から電力系統PSへの逆潮流を停止させる。無認可発電施設である発電施設10における電力系統PSへの逆潮流は、あくまでも例外的なものであるため、発電施設10による電力系統PSへの逆潮流が必要なくなった場合には、速やかに停止させるようにしている。
【0033】
〈電力需給管理方法〉
図2は、本発明の一実施形態による電力需給管理方法の一例を示すフローチャートである。尚、図2に示すフローチャートの処理は、認可発電施設である発電施設20a~20cの何れかにおいて、電力系統PSへの逆潮流ができなくなる異常が生じた場合に開始される。尚、以下では、理解を容易にするために、電力系統PSへの逆潮流ができなくなる異常が発電施設20aで生じた場合を例に挙げて説明する。
【0034】
図2に示すフローチャートの処理が開始されると、まず、電力系統PSへの逆潮流ができなくなる異常が生じた発電施設20aからアグリゲータ30に対し、逆潮流が不可である異常(電力系統PSへの逆潮流ができなくなる異常)が生じた旨が通知される(ステップS11)。次に、上記の異常が生じていない他の認可発電施設(発電施設20b,20c)で発電量の調整が可能であるか否かがアグリゲータ30で判断される(ステップS12)。
【0035】
他の認可発電施設(発電施設20b,20c)で発電量の調整が可能であると判断した場合(ステップS12の判断結果が「YES」の場合)には、他の認可発電施設(発電施設20b,20c)の逆潮流電力量を増大させる処理が、アグリゲータ30によって行われる(ステップS13)。この処理が行われることで、発電施設20aで生じた異常によって不足する電力が、発電施設20b,20cで発電される電力によって賄われることとなる。
【0036】
これに対し、他の認可発電施設(発電施設20b,20c)で発電量の調整が不可能あると判断した場合(ステップS12の判断結果が「NO」の場合)には、無認可発電施設(発電施設10)に逆潮流するだけの発電量の余裕があるか否かがアグリゲータ30で判断される(ステップS14)。無認可発電施設(発電施設10)に逆潮流するだけの発電量の余裕は無いと判断した場合(ステップS14の判断結果が「NO」の場合)には、図2に示すフローチャートの処理が終了する。尚、この場合には、発電施設20aで生じた異常によって不足する電力の分だけインバランスが発生することとなる。
【0037】
これに対し、無認可発電施設(発電施設10)に逆潮流するだけの発電量の余裕があると判断した場合(ステップS14の判断結果が「YES」の場合)には、無認可発電施設(発電施設10)の発電電力を電力系統PSに逆潮流させる処理が、アグリゲータ30によって行われる(ステップS15)。このとき、発電施設10及び発電施設20b,20cで発電される電力の総和が、発電施設10,20a~20cが接続される配電設備の容量を超えないように(或いは、当初計画していた発電量以下になるように)、アグリゲータ30によって制御される。
【0038】
続いて、上記の異常が生じた認可発電施設(発電施設20a)が復帰したか、又は必要な電力(発電施設20aで生じた異常によって不足する電力)が他の発電施設(発電施設20b,20c)で賄えるようになったか、がアグリゲータ30によって判断される(ステップS16)。異常が生じた認可発電施設(発電施設20a)が復帰しておらず、且つ必要な電力が他の発電施設(発電施設20b,20c)で賄えるようになっていない場合(ステップS16の判断結果が「NO」の場合には、無認可発電施設(発電施設10)の発電電力を電力系統PSに逆潮流させる処理が行われる(ステップS15)。
【0039】
これに対し、異常が生じた認可発電施設(発電施設20a)が復帰した場合、又は必要な電力が他の発電施設(発電施設20b,20c)で賄えるようになった場合(ステップS16の判断結果が「YES」の場合)には、無認可発電施設(発電施設10)の逆潮流を停止させる処理が、アグリゲータ30によって行われる(ステップS17)。以上にて、図2に示す一連の処理が終了する。
【0040】
尚、ステップS12とステップS14との間にブラックアウトが発生する可能性を判断する判断ステップを設け、ブラックアウトが発生する可能性があると判断した場合(判断結果が「YES」の場合)には、ステップS14の処理を行わずに、ステップS15の処理を行うようにしても良い。尚、ブラックアウトが発生する可能性が無いと判断した場合(判断結果が「NO」の場合)には、ステップS14の処理を行うようにすれば良い。
【0041】
以上の通り、本実施形態では、電力系統PSへの逆潮流の認可を受けている許可発電施設(発電施設20a~20cの何れか)で電力系統PSへの逆潮流ができなくなる異常が生じた場合に、アグリゲータ30が、電力系統PSへの逆潮流の認可を受けていない無許可発電施設(発電施設10)から電力系統PSへの逆潮流を一時的に行わせるようにしている。このため、逆潮流の認可を受けていない発電施設を有効に活用することができる。その結果として、電力不足を回避することができ、インバランス料金を最小限に抑えることができる。
【0042】
以上、本発明の一実施形態による電力需給管理システム、電力需給管理装置、及び電力需給管理方法について説明したが、本発明は上記実施形態に制限されず、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上記実施形態では、1つの無許可発電施設(発電施設10)と、3つの許可発電施設(発電施設20a~20c)とを備える例について説明下が、無許可発電施設及び許可発電施設の数は任意である。
【0043】
無許可発電施設を複数備える場合において、電力系統PSへの逆潮流を行う際には、複数の無許可発電施設から電力系統PSへの逆潮流を同時に行っても良く、予め設定された優先度が高い無許可発電施設から順に電力系統PSへの逆潮流を行っても良い。或いは、無許可発電施設の発電特性に応じて適切な無許可発電施設を選択して電力系統PSへの逆潮流を行っても良い。例えば、無風の昼間は、太陽光発電装置が設けられた無許可発電施設から電力系統PSへの逆潮流を行い、風のある夜間は、風力発電装置が設けられた無許可発電施設から電力系統PSへの逆潮流を行うといった具合である。
【0044】
また、無許可発電施設及び許可発電施設は、再生可能エネルギー発電装置とともに、或いは再生可能エネルギー発電装置に代えて、固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)や蓄電池を備えるものであっても良い。また、上記実施形態では、無許可発電施設及び許可発電施設とは別にアグリゲータ30が設けられていたが、発電施設及び許可発電施設の何れかにアグリゲータ30の機能が設けられた構成であっても良い。かかる構成の場合には、アグリゲータ30の機能が設けられた発電施設がマスターとなり、他の発電施設がスレーブとなって、情報収集及び制御が行われることとなる。
【符号の説明】
【0045】
1…電力需給管理システム、10…発電施設、20a~20c…発電施設、30…電力需給管理装置、PS…電力系統
図1
図2