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特許7151651揺動かしめ装置の芯出し方法、揺動かしめ装置の製造方法、ハブユニット軸受の製造方法、車両の製造方法、揺動かしめシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】揺動かしめ装置の芯出し方法、揺動かしめ装置の製造方法、ハブユニット軸受の製造方法、車両の製造方法、揺動かしめシステム
(51)【国際特許分類】
   B21J 9/02 20060101AFI20221004BHJP
   B21K 1/05 20060101ALI20221004BHJP
   B21D 39/00 20060101ALI20221004BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
B21J9/02 A
B21K1/05
B21D39/00 D
G01B11/00 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019131936
(22)【出願日】2019-07-17
(62)【分割の表示】P 2019513855の分割
【原出願日】2018-10-24
(65)【公開番号】P2019188476
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-10-22
(31)【優先権主張番号】P 2017229787
(32)【優先日】2017-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】菊池 徳将
(72)【発明者】
【氏名】萩原 信行
(72)【発明者】
【氏名】丸野 哲朗
【審査官】山本 裕太
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2004/001247(WO,A1)
【文献】特開平03-110038(JP,A)
【文献】特開2015-077616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21J 9/02
B21K 1/05
B21D 39/00
G01B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
揺動かしめ装置の芯出し方法であって、
前記揺動かしめ装置は、
フレームと、
前記フレームに対して、基準軸周りに回転可能に支持される回転体と、
凹球面を有し、前記フレームに固定された凹球面座と、
前記凹球面上でスライド可能な凸球面を有する凸球面座であり、前記回転体の回転に伴って振れ回り運動する、前記凸球面座と、
前記凸球面座に取り付けられる成形型と、
ワークピースを保持するワークホルダと、
を備え、
前記方法は、
前記凸球面座にレーザヘッドを取り付ける工程と、前記ワークホルダにセンサを取り付ける工程と、を有する準備工程と、
前記凸球面座が前記振れ回り運動している状態で、前記レーザヘッドからのレーザ光によって前記センサの受光面を照射する、照射工程と、
前記センサからの、前記受光面における前記レーザ光の照射位置の軌跡に関する情報に基づいて、前記揺動かしめ装置を機械的に調整する、調整工程と、
を含み、
前記調整工程は、前記振れ回り運動に伴う前記レーザ光の前記照射位置の軌跡が、楕円形状から円形状に近づくように、前記基準軸と直交する方向における、前記フレームに対する前記回転体の支持位置を調整すること、を含む、
揺動かしめ装置の芯出し方法。
【請求項2】
基準軸を有するフレームと、
前記フレームに固定され、前記基準軸の方向に関する一方側の側面に、前記基準軸と同軸の凹球面部を有する環状の凹球面座と、
前記凹球面部に球面係合した凸球面部を有する凸球面座と、
前記フレームに対して、前記基準軸と同軸の中心軸を中心とする回転を可能に支持された回転体と、
前記基準軸に対して傾斜した状態で前記凹球面座の内側を挿通し、かつ、前記基準軸の方向に関する一方側部が前記凸球面座に対して固定されると共に、前記基準軸の方向に関する他方側部が前記回転体の円周方向1箇所に対して回転可能に支持された揺動シャフトと、
前記凸球面座に取り付けられた成形型と、
前記基準軸の方向に関して前記成形型を挟んで前記回転体と反対側に配置され、かつ、前記基準軸の方向に関して前記フレームとの相対移動が可能であると共に、ワークピースを保持するためのワークホルダと、
を備えた揺動かしめ装置を、請求項1に記載の揺動かしめ装置の芯出し方法を実施して製造する、
揺動かしめ装置の製造方法。
【請求項3】
軸部材と、該軸部材に外嵌され、かつ、該軸部材の軸方向端部に設けられた筒部を径方向外方に塑性変形させて形成したかしめ部により軸方向端面を抑え付けられた内輪と、を備えた、ハブユニット軸受の製造方法であって、
請求項1に記載の芯出し方法を用いて、揺動かしめ装置を機械的に調整する工程と、
機械的に調整された前記揺動かしめ装置を用いて前記かしめ部を形成する工程であり、前記内輪を外嵌した前記軸部材を前記ワークホルダに対して、該軸部材の中心軸が前記基準軸と同軸になるように保持し、かつ、前記回転体を回転させながら、前記基準軸の方向に関して前記フレームと前記ワークホルダとを相対移動させることにより、前記軸部材の軸方向端部に設けられた筒部に前記成形型を押し付けることで、前記筒部を径方向外方に塑性変形させて前記かしめ部を形成する、前記工程と、
を含む、
ハブユニット軸受の製造方法。
【請求項4】
ハブユニット軸受を備えた車両の製造方法であって、前記ハブユニット軸受を、請求項3に記載のハブユニット軸受の製造方法により製造する、
車両の製造方法。
【請求項5】
揺動かしめシステムであって、
揺動かしめ装置と芯出し装置とを備え、
前記揺動かしめ装置は、
フレームと、
前記フレームに対して、基準軸周りに回転可能に支持される回転体と、
凹球面を有し、前記フレームに固定された凹球面座と、
前記凹球面上でスライド可能な凸球面を有する凸球面座であり、前記回転体の回転に伴って振れ回り運動する、前記凸球面座と、
前記凸球面座に取り付けられる成形型と、
ワークピースを保持するワークホルダと、
を備え、
前記芯出し装置は、
前記凸球面座に取り付けられるレーザヘッドと、
前記レーザヘッドからのレーザ光を受ける受光面を有し、前記ワークホルダに保持されるセンサと、
前記センサからの出力信号に基づいて、前記受光面における前記レーザ光の照射位置の軌跡を表示するディスプレイと、
を備え、
前記揺動かしめ装置は、前記振れ回り運動に伴う前記レーザ光の前記照射位置の軌跡が、楕円形状から円形状に近づくように、前記基準軸と直交する方向における、前記フレームに対する前記回転体の支持位置が調整されるように構成されている、
揺動かしめシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば軸部材の軸方向端部に設けられた筒部を径方向外方に塑性変形させてかしめ部を形成するための揺動かしめ装置の芯出し方法などに関する。
本願は、2017年11月30日に出願された特願2017-229787号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
ハブユニット軸受は、自動車の車輪を懸架装置に対して回転可能に支持するために用いられる。一般に、ハブユニット軸受は、予圧を付与された状態で使用される。従来、ハブ輪の軸方向端部をかしめる方法として、揺動回転するかしめ型をハブ輪の軸方向端部に押し付ける揺動かしめが広く知られている。このような揺動かしめを行うための揺動かしめ装置として、成形型と共に振れ回り運動をする、シャフト付球面座を備えたものが知られている(たとえば、特許文献1参照)。このシャフト付球面座は、成形型が取り付けられる凸球面座に、揺動シャフトの軸方向一方側部が固定されたものである。凸球面座は、フレームに固定された凹球面座に球面係合している。この球面係合によって、シャフト付球面座がフレームの基準軸の周りで振れ回り運動することが許容される。また、凹球面座によって、成形型に加わる加工反力を効率良く支承可能である。揺動シャフトは、フレームの基準軸に対して傾斜して配置され、かつ、軸方向他方側部が、フレームに対して回転可能に支持された回転体の円周方向1箇所に、回転可能に支持されている。この回転体を回転させることに基づいて、シャフト付球面座を、フレームの基準軸の周りで振れ回り運動させられるようになっている。
【0003】
このような揺動かしめ装置を用いて、かしめ加工を行う際には、フレームの基準軸と同軸に保持されたハブ輪6の円筒部8に成形型を押し付けた状態で、回転体を回転させることに基づき、シャフト付球面座および成形体を、フレームの基準軸の周りで振れ回り運動させる。これにより、円筒部8を径方向外方に塑性変形されかしめ部9が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-91067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような揺動かしめ装置では、凹球面座と回転体との同軸度が悪くなっていると、その分、成形型の振れ回り運動の中心軸が傾くなどして、かしめ部の加工精度が悪くなる。この結果、かしめ部が、内輪の軸方向内端面を抑え付ける力が円周方向に関して不均一になって、転動体の予圧も円周方向に関して不均一になる可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、凹球面座と回転体との同軸度を良好にできる手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の対象となる揺動かしめ装置は、フレームと、凹球面座と、凸球面座と、回転体と、揺動シャフトと、成形型と、ワークホルダとを備えている。前記フレームは、基準軸を有している。前記凹球面座は、環状に構成されており、前記フレームに固定され、前記基準軸の方向に関する一方側の側面に、前記基準軸と同軸の凹球面部を有している。前記凸球面座は、前記凹球面部に球面係合した凸球面部を有している。前記回転体は、前記フレームに対して、前記基準軸と同軸の中心軸を中心とする回転を可能に支持されている。前記揺動シャフトは、前記基準軸に対して傾斜した状態で前記凹球面座の内側を挿通し、かつ、前記基準軸の方向に関する一方側部が前記凸球面座に対して固定されると共に、前記基準軸の方向に関する他方側部が前記回転体の円周方向1箇所に対して回転可能に支持されている。前記成形型は、前記凸球面座に取り付けられている。前記ワークホルダは、ワークピースを保持するためのものであり、前記基準軸の方向に関して前記成形型を挟んで前記回転体と反対側に配置され、かつ、前記基準軸の方向に関して前記フレームとの相対移動が可能である。
【0008】
本発明の揺動かしめ装置の芯出し方法は、準備工程と、回転体芯出し工程とを備える。前記準備工程では、前記フレームと、前記凹球面座と、前記凸球面座と、前記回転体と、前記揺動シャフトと、前記ワークホルダとを、互いに組み立てると共に、前記凸球面座に、前記揺動シャフトの中心軸線上にレーザ光線を発射するレーザヘッドを取り付け、かつ、前記ワークホルダに、前記基準軸に対して直交する平坦面状のレーザ照射面を有する受光ユニットを取り付ける。前記回転体芯出し工程では、前記準備工程の終了後、前記レーザヘッドから発射されたレーザ光線を前記レーザ照射面に照射しつつ、前記回転体を回転させることにより、前記レーザ照射面に対する前記レーザ光線の照射位置を変化させ、かつ、該照射位置の軌跡を確認する作業を、前記基準軸に直交する仮想平面内での、前記フレームに対する前記回転体の支持位置を調節しながら、該照射位置の軌跡が所望形状に変わるまで繰り返し行う。
【0009】
本発明の揺動かしめ装置の芯出し方法では、次のような構成を採用することができる。すなわち、前記揺動かしめ装置は、前記凸球面座に前記成形型を取り付ける際に、前記凸球面座に設けられた凸球面座側係合部に、前記成形型に設けられた成形型側係合部を係合させること基づいて、前記揺動シャフトと前記成形型とを同軸に配置することが可能なものである。前記準備工程では、前記凸球面座側係合部に、前記レーザヘッドに設けられたヘッド側係合部を係合させることに基づいて、前記レーザヘッドから発射されるレーザ光線を、前記揺動シャフトの中心軸線上に発射できるようにした状態で、前記凸球面座に前記レーザヘッドを取り付ける。
【0010】
本発明の揺動かしめ装置の芯出し方法では、次のような構成を採用することができる。すなわち、前記揺動かしめ装置は、前記ワークホルダに取り付けられたアダプタを備えたもので、該アダプタは、ワークピースを同軸に保持可能なものであり、かつ、前記揺動かしめ装置は、前記ワークホルダに前記アダプタを取り付ける際に、前記ワークホルダに設けられたワークホルダ側係合部に、前記アダプタに設けられたアダプタ側係合部を係合させること基づいて、前記ワークホルダと前記アダプタとを同軸に配置することが可能なものである。前記受光ユニットは、前記レーザ照射面を有するセンサを備えたもので、該センサは、前記レーザ照射面に対する前記レーザ光線の照射位置を、前記レーザ照射面に設定された直交座標の座標データとして取得可能なものである。前記準備工程では、前記ワークホルダ側係合部に、前記受光ユニットに設けられた受光ユニット側係合部を係合させることに基づいて、前記レーザ照射面を前記基準軸に対して直交させ、かつ、前記直交座標の原点を前記ワークホルダの中心軸上に配置した状態で、前記ワークホルダに前記受光ユニットを取り付ける。
【0011】
本発明の揺動かしめ装置の芯出し方法では、次のような構成を採用することができる。すなわち、前記受光ユニットは、前記レーザ照射面を有するセンサを備えたもので、該センサは、前記レーザ照射面に対する前記レーザ光線の照射位置を、前記レーザ照射面に設定された直交座標の座標データとして取得可能なものである。前記回転体芯出し工程では、前記照射位置の軌跡を確認する作業を、前記レーザ照射面を含む仮想平面内で前記センサを回転させることにより前記レーザ照射面に設定された直交座標の向きを適宜調整すると共に、前記基準軸に直交する仮想平面内での、前記フレームに対する前記回転体の支持位置を調節しながら、該照射位置の軌跡が所望形状に変わるまで繰り返し行う。
【0012】
本発明の揺動かしめ装置の芯出し方法では、次のような構成を採用することができる。すなわち、前記回転体芯出し工程の終了後、前記基準軸に直交する仮想平面内での、前記フレームに対する前記ワークホルダの配置箇所を調節することにより、前記照射位置の軌跡の中心位置と前記ワークホルダの中心軸とを前記レーザ照射面上で一致させるワークホルダ芯出し工程を備えている。
【0013】
本発明の揺動かしめ装置の芯出し方法では、次のような構成を採用することができる。すなわち、前記受光ユニットは、前記レーザ照射面を有するセンサを備えたもので、該センサは、前記レーザ照射面に対する前記レーザ光線の照射位置を、前記レーザ照射面に設定された直交座標の座標データとして取得可能なものである。前記ワークホルダ芯出し工程では、前記レーザ照射面を含む仮想平面内で前記センサを回転させることにより前記レーザ照射面に設定された直交座標の向きを適宜調整すると共に、前記基準軸に直交する仮想平面内での、前記フレームに対する前記ワークホルダの配置箇所を調節することにより、前記照射位置の軌跡の中心位置と前記ワークホルダの中心軸とを前記レーザ照射面上で一致させる。
【0014】
本発明の揺動かしめ装置の芯出し方法では、次のような構成を採用することができる。すなわち、前記回転体芯出し工程の終了後、前記基準軸の方向に関して前記フレームと前記ワークホルダとを所定量だけ相対移動させ、該相対移動前の前記軌跡の中心位置と、該相対移動後の前記軌跡の中心位置とのずれ量が許容範囲外である場合に、該ずれ量を許容範囲内に収めるための調整作業を行う移動精度改善工程を備えている。
【0015】
本発明の揺動かしめ装置の芯出し方法では、次のような構成を採用することができる。すなわち、前記準備工程の終了後、前記回転体を回転させずに静止させたまま、前記レーザヘッドから発射されたレーザ光線を前記レーザ照射面に照射しつつ、前記揺動シャフトと前記凸球面座と前記レーザヘッドとの結合体を自転させた場合に生じる、前記レーザ照射面に対する前記レーザ光線の照射位置の変化量を確認し、該変化量が許容範囲外である場合に、該変化量を許容範囲内に収めるための調整作業(たとえば、前記凹球面部と前記凸球面部との、前記揺動シャフトの軸方向に関する位置関係の調節)を行う自転精度改善工程を備えている。
【0016】
本発明の揺動かしめ装置の製造方法は、本発明の揺動かしめ装置の芯出し方法を実施して揺動かしめ装置を製造する。
【0017】
本発明の製造方法の対象となるハブユニット軸受は、軸部材と、該軸部材に外嵌され、かつ、該軸部材の軸方向端部に設けられた筒部を径方向外方に塑性変形させて形成したかしめ部により軸方向端面を抑え付けられた内輪とを備えている。本発明のハブユニット軸受の製造方法では、該ハブユニット軸受を製造すべく、本発明の揺動かしめ装置の製造方法により製造された、揺動かしめ装置を用いる。具体的には、前記内輪を外嵌した前記軸部材を前記ワークホルダに対して、該軸部材の中心軸が前記基準軸と同軸になるように保持し、かつ、前記回転体を回転させながら、前記基準軸の方向に関して前記フレームと前記ワークホルダとを相対移動させることにより、前記軸部材の軸方向端部に設けられた筒部に前記成形型を押し付けることで、前記筒部を径方向外方に塑性変形させて前記かしめ部を形成する。
【0018】
本発明の製造対象となる車両は、ハブユニット軸受を備えている。本発明の車両の製造方法では、前記ハブユニット軸受を、本発明のハブユニット軸受の製造方法により製造する。
【0019】
本発明の別の一態様において、揺動かしめ装置の芯出し方法が提供される。前記揺動かしめ装置は、フレームと、前記フレームに対して、基準軸周りに回転可能に支持される回転体と、凹球面を有し、前記フレームに固定された凹球面座と、前記凹球面上でスライド可能な凸球面を有する凸球面座であり、前記回転体の回転に伴って振れ回り運動する、前記凸球面座と、前記凸球面座に取り付けられる成形型と、ワークピースを保持するワークホルダと、を備える。前記芯出し方法は、前記成形型に代えて、前記凸球面座にレーザヘッドを取り付ける工程と、前記ワークピースに代えて、前記ワークホルダにセンサを取り付ける工程と、を有する準備工程と、前記凸球面座が前記振れ回り運動している状態で、前記レーザヘッドからのレーザ光線によって前記センサの受光面を照射する、照射工程と、前記センサからの、前記受光面における前記レーザ光線の照射位置の軌跡に関する情報に基づいて、前記揺動かしめ装置を機械的に調整する、調整工程と、を含む。
【0020】
本発明の別の一態様において、揺動かしめ装置の芯出し装置が提供される。前記揺動かしめ装置は、フレームと、前記フレームに対して、基準軸周りに回転可能に支持される回転体と、凹球面を有し、前記フレームに固定された凹球面座と、前記凹球面上でスライド可能な凸球面を有する凸球面座であり、前記回転体の回転に伴って振れ回り運動する、前記凸球面座と、前記凸球面座に取り付けられる成形型と、ワークピースを保持するワークホルダと、を備える。前記芯出し装置は、前記成形型に代えて前記凸球面座に取り付けられるレーザヘッドと、前記レーザヘッドからのレーザ光線を受ける受光面を有し、前記ワークピースに代えて前記ワークホルダに保持されるセンサと、前記センサからの出力信号に基づいて、前記受光面における前記レーザ光線の照射位置の軌跡を表示するディスプレイと、を備える。
【0021】
本発明の別の一態様において、揺動かしめ装置と芯出し装置とを備える揺動かしめシステムが提供される。前記揺動かしめ装置は、フレームと、前記フレームに対して、基準軸周りに回転可能に支持される回転体と、凹球面を有し、前記フレームに固定された凹球面座と、前記凹球面上でスライド可能な凸球面を有する凸球面座であり、前記回転体の回転に伴って振れ回り運動する、前記凸球面座と、前記凸球面座に取り付けられる成形型と、ワークピースを保持するワークホルダと、を備える。前記芯出し装置は、前記成形型に代えて前記凸球面座に取り付けられるレーザヘッドと、前記レーザヘッドからのレーザ光線を受ける受光面を有し、前記ワークピースに代えて前記ワークホルダに保持されるセンサと、前記センサからの出力信号に基づいて、前記受光面における前記レーザ光線の照射位置の軌跡を表示するディスプレイと、を備える。
【発明の効果】
【0022】
本発明の態様によれば、揺動かしめ装置に関して、凹球面座と回転体との同軸度を良好にできる。したがって、かしめ部の加工精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の実施の形態の第1例に関する、揺動かしめ装置を示す略断面図である。
図2図2は、図1の部分拡大断面図である。
図3図3は、本発明の実施の形態の第1例に関する、揺動かしめ装置によりかしめ部を形成する作業を工程順に示す要部拡大断面図である。
図4図4は、本発明の実施の形態の第1例に関する、準備工程を実行した後の揺動かしめ装置を示す略断面図である。
図5図5は、図4の部分拡大断面図である。
図6図6は、本発明の実施の形態の第1例に関して、自転精度改善工程を実行する際の、レーザ光線の照射位置を示す図であって、(a)は、照射位置が変化しない場合を示しており、(b)は、照射位置が変化する場合を示している。
図7図7は、本発明の実施の形態の第1例に関して、回転体芯出し工程を実行する際の、凹球面座と回転体との同軸度がレーザ光線の照射位置の軌跡に及ぼす影響を示す図であって、(a)は、同軸度が良い場合を示しており、(b)は、同軸度が悪い場合を示している。
図8図8は、本発明の実施の形態の第1例に関して、回転体芯出し工程の実行に伴い、レーザ光線の照射位置の軌跡の形状が、楕円形状から円形状に変化していく過程を順番に示す図である。
図9図9は、本発明の実施の形態の第1例に関して、移動精度改善工程を実行する際の、レーザ光線の照射位置の軌跡を示す図である。
図10図10は、本発明の実施の形態の第1例に関して、ワークホルダ芯出し工程を実行する際の、レーザ光線の照射位置の軌跡を示す図である。
図11図11は、ハブユニット軸受(軸受ユニット)を備える車両の部分的な模式図である。
図12図12は、ハブユニット軸受の1例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[実施の形態の第1例]
図11は、ハブユニット軸受(軸受ユニット)200を備える車両210の部分的な模式図である。本発明は、駆動輪用のハブユニット軸受、及び従動輪用のハブユニット軸受のいずれにも適用することができる。図11において、ハブユニット軸受200は、駆動輪用であり、外輪1と、ハブ2と、複数の転動体5とを備えている。外輪1は、ボルト等を用いて、懸架装置のナックル211に固定されている。車輪(および制動用回転体)212は、ボルト等を用いて、ハブ2に設けられたフランジ(回転フランジ)に固定されている。
【0025】
図12は、駆動輪用のハブユニット軸受(軸受ユニット)200の一例を示している。自動車の車輪は、ハブユニット軸受200により、懸架装置に対して回転自在に支持されている。ハブユニット軸受200は、外輪1と、ハブ2と、複数個の転動体5、5とを備えている。外輪1は、自動車などの車両の懸架装置に結合固定された状態で回転しない。ハブ2は、車輪を支持固定した状態でこの車輪と共に回転する。複列の転動体5、5は、外輪1の内周面に設けられた複列の外輪軌道3a、3bとハブ2の外周面に設けられた複列の内輪軌道4a、4bとの間に配置されている。ハブ2は、ハブ輪6内輪7とを互いに結合固定することにより構成されている。ハブ輪6は、外周面に軸方向外側(図12の左側)の内輪軌道4aを形成された軸部材である。内輪7は、外周面に軸方向内側(図12の右側)の内輪軌道4bが形成されている。このようなハブ2を構成するために、具体的には、ハブ輪6の軸方向内側部に内輪7を外嵌した状態で、ハブ輪6の軸方向内側部に設けられた円筒部8のうち、内輪7よりも軸方向内側に突出した部分を径方向外方に塑性変形させて(かしめ拡げて)形成したかしめ部9により、内輪7の軸方向内端面を抑え付けている。
【0026】
このようなハブユニット軸受を製造する際には、たとえば、ハブ輪6の中心軸に対し傾斜した中心軸を有する成形型(押型)を円筒部8に押し付けた状態で、この成形型を、ハブ輪6の中心軸の周りで、歳差運動による中心軸の軌跡の如く振れ回り運動させる揺動かしめにより、かしめ部9を形成することができる。
【0027】
揺動かしめ装置の実施の形態の第1例について、図1~10を用いて説明する。本例の揺動かしめ装置110は、たとえば、前述の図12に示したハブユニット軸受(軸受ユニット)のかしめ部9を形成するのに用いられる。揺動かしめ装置110は、フレーム10と、凹球面座15と、シャフト付球面座11と、成形型14と、回転体16と、ワークホルダ17とを備えている。
【0028】
なお、本例に関する以下の説明中、上下方向は、図1図5の上下方向を意味する。ただし、図1図5の上下方向は、必ずしも加工時の上下方向と一致するとは限らない。また、本例では、図1図5の左右方向をX方向とし、同じく表裏方向をY方向とし、同じく上下方向をZ方向とする。
【0029】
フレーム10は、上下方向(Z方向)に配置された基準軸αを有しており、この基準軸αを中心軸とする筒状に構成されている。このようなフレーム10は、図示しない基台に支持されている。
【0030】
凹球面座15は、環状に構成されており、フレーム10の上部に、基準軸αと同軸に内嵌固定されている。凹球面座15は、軸方向下側面に円環状の凹球面部18を有している。
【0031】
シャフト付球面座11は、揺動シャフト12と、凸球面座13とを有している。揺動シャフト12は、中心軸βを有している。凸球面座13は、揺動シャフト12よりも外径寸法が大きい部分球状に構成され、揺動シャフト12の軸方向下端部に同軸に固定されている。凸球面座13は、軸方向上側面に円環状の凸球面部19を有している。このようなシャフト付球面座11は、揺動シャフト12の中心軸βを、基準軸αに対して所定角度θだけ傾斜させている。また、揺動シャフト12は、凹球面座15の内側およびフレーム10の上部内側を挿通するように配置され、かつ、軸方向上側部が、フレーム10の上方に突出している。また、凸球面座13の凸球面部19は、凹球面座15の凹球面部18に球面係合している。すなわち、凸球面部19の曲率半径は、凹球面部18の曲率半径と同じか、凹球面部18の曲率半径よりも僅かに小さくなっている。凹球面部18に対する凸球面部19の球面係合によって、シャフト付球面座11が、基準軸αの周りで、歳差運動による中心軸の軌跡の如く振れ回り運動することを許容されている。
【0032】
成形型14は、凸球面座13の軸方向下側部に対して、シャフト付球面座11(揺動シャフト12+凸球面座13)と同軸に、かつ、着脱可能に取り付けられている。成形型14は、軸方向下側面に、円環状の加工面部20を有している。
【0033】
また、図2に示すように、成形型14は、軸方向上側部に、係合部(成形型側係合部)45を有している。図示の例では、係合部45は、成形型14の軸方向上側部の径方向中央部に設けられた凸部(ボス部)である。一方、凸球面座13は、軸方向下側部に、係合部(凸球面座側係合部)37を有している。図示の例では、係合部37は、凸球面座13の軸方向下側面の径方向中央部に設けられた凹部である。本例では、凸球面座13に成形型14を取り付ける際に、係合部37(凹部)に係合部45(凸部)を係合(凹凸係合)させることに基づいて、シャフト付球面座11(揺動シャフト12+凸球面座13)と成形型14とを同軸に配置できるようになっている。なお、本発明を実施する場合には、係合部45を凹部とし、係合部37を凸部とすることもできる。
【0034】
回転体16は、フレーム10の上方に配置された状態で、フレーム10に対し、ヘッドケース21および軸受装置22を介して、フレーム10と同軸に、かつ、回転のみ可能に支持されている。すなわち、ヘッドケース21は、筒状の周壁部23を有している。回転体16は、周壁部23の内側に、軸受装置22を介して、回転のみ可能に支持されている。ヘッドケース21は、回転体16の回転中心軸を基準軸αと同軸に配置した状態で、フレーム10の上面に、ボルトなどの固定部材を用いて固定されている。フレーム10に対するヘッドケース21の固定位置は、基準軸αに直交する仮想平面(X-Y平面)内で調節可能になっている。また、回転体16には、この回転体16を、基準軸αと同軸の回転中心軸を中心として回転駆動するための図示しないモータの出力部が、直接又は図示しない減速機を介して接続されている。
【0035】
回転体16は、径方向外側部の円周方向1箇所に、基準軸αに対して揺動シャフト12の中心軸βと同じ角度θだけ傾斜した、保持孔24を有している。揺動シャフト12の軸方向上側部は、保持孔24の内側に、転がり軸受25を介して回転可能に支持されている。また、この状態で、揺動シャフト12は、保持孔24に対して軸方向下側へ変位すること、すなわち保持孔24から脱落することを阻止されている。
【0036】
このために本例では、転がり軸受25として、ラジアル荷重の支承能力に加えて、アキシアル荷重の支承能力を有するもの、具体的には、自動調心ころ軸受を使用している。この自動調心ころ軸受は、外輪26の内周面と内輪27の外周面との間に、それぞれが転動体である複数個の球面ころ28を配置したもので、外輪26と内輪27との間に作用するラジアル荷重およびアキシアル荷重を支承可能である。また、外輪26と内輪27との中心軸同士が傾斜した場合でも、外輪26の内周面と内輪27の外周面との間で球面ころ28の転動を円滑に行わせることができる特性、すなわち自動調心性を有している。このような自動調心ころ軸受のより具体的な構成については、従来から各種知られているため、説明は省略する。なお、本発明を実施する場合、転がり軸受25としては、深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受などを使用することもできる。
【0037】
また、保持孔24を、軸方向上側の大径孔部と、軸方向下側の小径孔部とを、軸方向上側を向いた段差面29を介して接続することにより構成された、段付孔としている。保持孔24の大径孔部に外輪26を内嵌し、かつ、保持孔24の段差面29に外輪26の軸方向下端面を当接させている。これにより、保持孔24に対して外輪26が、軸方向下側への変位することを阻止している。また、内輪27に対して揺動シャフト12の軸方向上側部を、軸方向の相対変位を可能に内嵌(挿通)し、かつ、揺動シャフト12の軸方向上側部に設けられた雄ねじ部30に螺合したナット31を、内輪27の軸方向上端面に当接させている。これにより、内輪27に対して揺動シャフト12が、軸方向下側へ変位することを阻止している。このような構成を採用することにより、揺動シャフト12が、保持孔24に対して軸方向下側へ変位することを阻止している。
【0038】
また、本例では、雄ねじ部30に対するナット31の螺合位置(螺合量)を調節することにより、凸球面部19と凹球面部18との、揺動シャフト12の軸方向位置に関する位置関係を変えることで、凸球面部19と凹球面部18との球面係合部に存在する隙間(係合代)を調節し、この隙間の適正化を図れるようになっている。
【0039】
ワークホルダ17は、成形型14の下方に、基準軸αと同軸に配置されている。また、ワークホルダ17は、移動テーブル32により、フレーム10に対する上下方向(Z方向)の移動を可能に設けられている。すなわち、移動テーブル32は、フレーム10内の下部に配置され、かつ、フレーム10に対して基準軸αに沿った上下方向の移動を可能に設けられている。移動テーブル32には、この移動テーブル32を上下方向に移動させるための図示しない油圧機構が接続されている。
【0040】
ワークホルダ17は、上端が開口した有底円筒状に構成されており、基準軸αと同軸に配置された状態で、移動テーブル32の上面に、ボルトなどの固定部材を用いて固定されている。移動テーブル32の上面に対するワークホルダ17の固定位置は、基準軸αに直交する仮想平面(X-Y平面)内で調節可能になっている。また、ワークホルダ17は、アダプタ46を介して、ワークピースを同軸に保持可能である。アダプタ46は、ワークホルダ17に対して同軸に、かつ、着脱可能に取り付けられている。アダプタ46は、ワークピースの種類に応じた形状を有する治具であり、該ワークピースを同軸に保持可能である。
【0041】
また、図2に示すように、アダプタ46は、軸方向下側部に、係合部(アダプタ側係合部)47を有している。図示の例では、係合部47は、アダプタ46の軸方向下側面の径方向中央部に設けられた凹部である。一方、ワークホルダ17は、底板部の上側面に、係合部(ワークホルダ側係合部)43を有している。図示の例では、係合部43は、ワークホルダ17の底板部の上面の径方向中央部に設けられた凸部である。本例では、ワークホルダ17にアダプタ46を取り付ける際に、係合部43(凸部)に係合部47(凹部)を係合(凹凸係合)させることに基づいて、ワークホルダ17とアダプタ46とを同軸に配置できるようになっている。なお、本発明を実施する場合には、係合部47を凸部とし、係合部43を凹部とすることもできる。
【0042】
次に、本例の揺動かしめ装置110を製造する際に実施する、芯出し方法について説明する。本例の揺動かしめ装置110の芯出し方法は、準備工程と、自転精度改善工程と、回転体芯出し工程と、移動精度改善工程と、ワークホルダ芯出し工程とを備えている。
【0043】
図4に示すように、揺動かしめシステム100は、揺動かしめ装置110と芯出し装置120とを備える。前述したように、揺動かしめ装置110は、フレーム10と、回転体16と、凹球面座15と、凸球面座13と、成形型14と、ワークホルダ17とを備える。回転体16は、フレーム10に対して、基準軸周りに回転可能に支持される。凹球面座15は、凹球面(凹球面部)18を有し、フレーム10に固定されている。凸球面座13は、凹球面18上でスライド可能な凸球面(凸球面部)19を有し、回転体16の回転に伴って振れ回り運動する。成形型14は、凸球面座13に取り付けられる。
【0044】
芯出し装置120は、レーザヘッド35と、センサ40を有する受光ユニット38と、ディスプレイ50とを備える。レーザヘッド35は、成形型14に代えて凸球面座13に取り付けられる。センサ40は、レーザヘッド35からのレーザ光線を受ける受光面41を有する。センサ40は、ワークピースに代えてワークホルダ17に保持される。センサ40は、受光面41におけるレーザ光線の照射位置に関する情報(位置情報)を出力する。ディスプレイ50は、センサ40からの出力信号に基づいて、受光面41におけるレーザ光線の照射位置(及び照射位置の軌跡)を表示する。ディスプレイ50は、例えば、コンピュータ(CPU、プロセッサ、回路)、及びメモリ等を含むコントローラを有することができる。
【0045】
(準備工程)
準備工程では、図4および図5に示すように、上述した揺動かしめ装置110を構成する各部材のうち、成形型14およびアダプタ46以外の各部材同士を組み立てる。具体的には、フレーム10と、凹球面座15と、シャフト付球面座11と、ヘッドケース21と、軸受装置22と、回転体16と、転がり軸受25と、ナット31と、移動テーブル32と、ワークホルダ17と、前記モータ(および減速機)と、前記油圧機構とを、互いに組み立てる。本例では、この段階で、少なくともフレーム10と凹球面座15との同軸度、すなわち、基準軸αと凹球面部18の中心軸との同軸度が十分に高くなるように、フレーム10および凹球面座15が加工されている。本例では、この状態を、各部材間の芯出しの基準とする。
【0046】
また、準備工程では、図4および図5に示すように、凸球面座13に、揺動シャフト12の中心軸β線上にレーザ光線を発射するレーザユニット33(レーザヘッド35)を取り付ける。
【0047】
レーザユニット33は、凸球面座13の軸方向下側部に対して、同軸に、かつ、着脱可能に取り付けられる段付円柱状の取付ツール(ヘッドアダプタ)34と、レーザヘッド35とを備えている。一例において、レーザユニット33は発振器(レーザ発生器)が内蔵されたタイプである。他の例において、レーザユニット33は、別に設けられた不図示の光源(レーザ発振器)に接続される。レーザヘッド35は、取付ツール34の軸方向下側部に同軸に保持されており、取付ツール34の中心軸線に沿ってレーザ光線LBを発射可能である。
【0048】
また、図5に示すように、取付ツール34は、軸方向上側部に、係合部(ヘッド側係合部)36を有している。図示の例では、係合部36は、取付ツール34の軸方向上側部の径方向中央部に設けられた凸部(ボス部)である。本例では、凸球面座13に取付ツール34を取り付ける際に、係合部37(凹部)に係合部36(凸部)を係合(凹凸係合)させることに基づいて、凸球面座13と取付ツール34(レーザヘッド33)とを同軸に配置できるようになっている。すなわち、このように同軸に配置した状態で、レーザヘッド35から、揺動シャフト12の中心軸β線上にレーザ光線LBを発射できるようになっている。凸球面座13に設けられた係合部37は、成形型14とレーザユニット33との両方に対して適用可能である。レーザユニット33(レーザヘッド35)は、成形型14と同じ係合部37に取り付けることができる。なお、本発明を実施する場合で、前述したように係合部37を凸部とする場合には、係合部36を凹部とする。
【0049】
また、準備工程では、図4および図5に示すように、ワークホルダ17に、基準軸αに対して直交する平坦面状の受光面(レーザ照射面)41を有する受光ユニット38を取り付ける。
【0050】
受光ユニット38は、ワークホルダ17の底板部の上側面に対して、同軸に、かつ、着脱可能に取り付けられる円柱状の取付ツール(センサアダプタ)39と、センサ40とを備えている。センサ40は、取付ツール39の軸方向上側部に同軸に保持されている。具体的には、センサ40は、軸方向下側部を、取付ツール39の軸方向上側面の径方向中央部に設けられた保持凹孔44に内嵌保持されている。また、センサ40は、CCD、CMOSなどの平面的なイメージセンサであり、軸方向上側面に、中心軸に直交する平坦面状のレーザ照射面41を有している。センサ40は、レーザ照射面41に対するレーザ光線LBの照射位置を、このレーザ照射面41に設定された直交座標(X-Y座標)の座標データとして取得可能である。この直交座標の原点は、レーザ照射面41の径方向中央部(センサ40の中心軸上)に設定されている。
【0051】
また、図5に示すように、取付ツール39は、係合部(受光ユニット側係合部)42を有している。図示の例では、係合部42は、取付ツール39の軸方向下側面の径方向中央部に設けられた凹部である。本例では、ワークホルダ17に取付ツール39を取り付ける際に、係合部43(凸部)に係合部42(凹部)を係合(凹凸係合)させることに基づいて、ワークホルダ17と取付ツール39(受光ユニット38)とを同軸に配置できるようになっている。すなわち、このように同軸に配置した状態で、レーザ照射面41が、ワークホルダ17の中心軸(=基準軸α)に対して直交し、かつ、レーザ照射面41に設定された直交座標の原点が、ワークホルダ17の中心軸上に配置されるようになっている。ワークホルダ17に設けられた係合部43は、ワークピース用のアダプタ46と受光ユニット38用の取付ツール(センサアダプタ)39との両方に対して適用可能である。受光ユニット38(センサ40)は、ワークピースと同じ係合部43に取り付けることができる。なお、本発明を実施する場合で、前述したように係合部43を凹部とする場合には、係合部42を凸部とする。
【0052】
(自転精度改善工程)
準備工程が終了したならば、つぎに、自転精度改善工程を実行する。自転精度改善工程では、回転体16を回転させずに静止させたまま、レーザヘッド33から発射したレーザ光線LBをレーザ照射面41に照射しつつ、シャフト付球面座11を自転させる。
【0053】
この際に、レーザ照射面41に対するレーザ光線LBの照射位置λが変化しなければ、すなわち、この照射位置λが図6(a)に示すように1点に留まれば、シャフト付球面座11の自転精度が良好になっていることになる。これに対して、レーザ照射面41に対するレーザ光線LBの照射位置λが変化すれば、すなわち、この照射位置λの軌跡が、図6(b)に示すような円、又は、非円形の輪を描けば、シャフト付球面座11の自転精度が悪くなっていることになる。ここで、このような自転精度の悪化は、凹球面部18と凸球面部19との球面係合部にがたつきがあることによって生じる場合が多い。
【0054】
何れにしても、シャフト付球面座11の自転精度が過度に悪くなっていると、必要なかしめ加工精度を得られなくなる可能性がある。そこで、本例では、シャフト付球面座11の自転精度を、レーザ照射面41に対するレーザ光線LBの照射位置λの変化量(たとえば、この照射位置λの軌跡の外接円の直径など)によって確認する。この確認は、センサ40の出力データを利用して行う。確認した変化量が許容範囲外である(シャフト付球面座11の自転精度が過度に悪くなっている)場合には、この変化量を許容範囲内に収めるための調整作業を行う。具体的には、凹球面部18と凸球面部19との球面係合部のがたつきを抑えるべく、雄ねじ部30に対するナット31の螺合位置(螺合量)を調節することに基づいて、凹球面部18と凸球面部19との球面係合部に存在する隙間を適度に小さくする。すなわち、凹球面部18に対する凸球面部19の摺動抵抗が過度に大きくならない程度に、前記隙間を小さくする。なお、レーザ照射面41に対するレーザ光線LBの照射位置λの変化量は、レーザヘッド33と受光ユニット38との間隔によって変わる場合があるため、その場合には、この間隔を考慮して、当該変化量の許容範囲を設定しておく。
【0055】
(回転体芯出し工程)
自転精度改善工程が終了したならば、つぎに、回転体芯出し工程を実行する。回転体芯出し工程では、レーザヘッド33から発射したレーザ光線LBをレーザ照射面41に照射しつつ、回転体16を回転させることに基づいて、シャフト付球面座11を、歳差運動による中心軸の軌跡の如く振れ回り運動させる。すると、レーザ照射面41に対するレーザ光線LBの照射位置λが変化し、レーザ照射面41に照射位置λの軌跡が描かれる。
【0056】
この際、凹球面座15の中心軸(基準軸α)と回転体16の回転中心軸とが一致している(同軸度が良くなっている)と、図7(a)に模式的に示すように、照射位置λの軌跡は、円形状になる。これに対して、凹球面座15の中心軸と回転体16の回転中心軸とがずれている(同軸度が悪くなっている)と、図7(b)に模式的に示すように、照射位置λの軌跡は、楕円形状になる。この楕円形状の長軸の方向は、凹球面座15の中心軸と回転体16の回転中心軸とがずれている方向である。凹球面座15の中心軸と回転体16の回転中心軸とがずれていると、その分、成形型14の振れ回り運動の中心軸が基準軸αに対して傾くなどして、かしめ加工の精度が悪くなる。
【0057】
そこで、本例では、照射位置λの軌跡をディスプレイ(モニター、表示部)50に表示して確認する。確認した照射位置λの軌跡が、たとえば図8(a)に示すような楕円形状、すなわち、長軸の方向がX方向およびY方向のそれぞれに対して傾いている楕円形状である場合には、フレーム10に対するヘッドケース21の固定位置(フレーム10に対する回転体16の支持位置)をX方向やY方向に動かし、その都度、シャフト付球面座11を振れ回り運動させて、照射位置λの軌跡を確認する。たとえば、フレーム10に対するヘッドケース21の固定位置をX方向の一方側に動かした結果、図8(b)に示すように、照射位置λの軌跡の形状が、円形状に対してより遠ざかれば(楕円形状の長軸の長さと短軸の長さとの差が大きくなるようであれば)、当該固定位置をX軸方向の他方側に動かすことで、図8(c)に示すように、照射位置λの軌跡の形状を、円形状に近づけることができる(楕円形状の長軸の長さと短軸の長さとの差を小さくすることができる)。この点については、フレーム10に対するヘッドケース21の固定位置をY方向に動かす場合についても同様である。このようなX方向およびY方向に関する固定位置の調整を、図8(d)に示すように、照射位置λの軌跡が、所望形状である円形状になるまで、すなわち、凹球面座15の中心軸(基準軸α)と回転体16の回転中心軸とが一致する(同軸度が良くなる)まで繰り返し行う。なお、本発明を実施する場合、前記所望形状は、完全な円形状ではなく、円に近い楕円形状(たとえば、長軸の長さと短軸の長さとの比が、予め定めた1に近い値になる、楕円形状)とすることもできる。
【0058】
また、本発明を実施する場合には、ここでの調整作業の容易化を図るべく、次のような構成を採用することができる。すなわち、前記センサ40を円柱状に構成することにより、このセンサ40を、保持凹孔44に対して、自身の中心軸を中心として(レーザ照射面41を含む仮想平面内で)回転可能とする。このようにセンサ40を回転させることにより、レーザ照射面41に設定された直交座標(照射位置λのデータ処理を行うソフトウエア上の直交座標)の向きを調整し、この直交座標のX軸(又はY軸)を、楕円形状の長軸方向に合わせる。すなわち、図1および図4に示したX方向およびY方向を設定し直す。このようにすれば、ヘッドケース21の固定位置の調節は、X方向(またはY方向)に関して行うだけで、照射位置λの軌跡を円形状にすることができる。
【0059】
何れにしても、本例では、照射位置λの軌跡が円形状になったら、その固定位置を最終的な固定位置とする。
【0060】
(移動精度改善工程)
回転体芯出し工程が終了したならば、つぎに、移動精度改善工程を実行する。移動精度改善工程では、フレーム10に対して移動テーブル32(ワークホルダ17)を上方(又は下方)に所定量だけ移動させる。これと共に、この移動前の照射位置λの軌跡(円形状)の中心座標と、この移動後の照射位置λの軌跡(円形状)の中心座標とを、それぞれ確認する。この確認は、センサ40の出力データを利用して行う。
【0061】
ここで、図9に示すように、これらの中心座標同士が一致せず、ずれている場合には、移動テーブル32などの各部品の、平行、直角、平面などの精度が出ていない可能性がある。当該ずれの大きさであるずれ量が過大になると、必要なかしめ加工精度を得られなくなる可能性がある。そこで、本例では、当該ずれ量が許容範囲外である場合には、このずれ量を許容範囲内に収めるための調整作業を行う。具体的には、揺動かしめ装置110を、適宜の範囲で分解し、各部品の精度を確認する。精度が出ていない部品を、精度が出ている部品に交換し、再度、準備工程からやり直す。この作業を、前記ずれ量が許容範囲内に収まるまで繰り返してから、次のワークホルダ芯出し工程を実行する。
【0062】
(ワークホルダ芯出し工程)
ワークホルダ芯出し工程では、照射位置λの軌跡(円形状)の中心位置、たとえば、直前の移動精度改善工程で確認した、移動テーブル32(ワークホルダ17)の移動後の照射位置λの軌跡(円形状)の中心位置と、レーザ照射面41に設定された直交座標の原点(ワークホルダ17の中心軸)とがずれているかを確認する。ずれている場合には、その分、かしめ加工の精度が低くなる。
【0063】
そこで、本例では、照射位置λの軌跡(円形状)の中心位置と、レーザ照射面41に設定された直交座標の原点とが、たとえば図10に示すように、X方向およびY方向のそれぞれの方向に関してずれている場合には、移動テーブル32に対するワークホルダ17の固定位置(フレーム10に対するワークホルダ17の配置箇所)を、X方向やY方向に動かし、その都度、シャフト付球面座11を振れ回り運動させて、照射位置λの軌跡(円形状)の中心位置を確認する。このような固定位置の調整を、照射位置λの軌跡(円形状)の中心位置と、レーザ照射面41に設定された直交座標の原点とが一致するまで、すなわち、凹球面座15の中心軸(基準軸α)とワークホルダ17の中心軸とが一致する(同軸度が良くなる)まで繰り返し行う。
【0064】
なお、本発明を実施する場合には、ここでの調整作業の容易化を図るべく、次のような構成を採用することができる。すなわち、回転体芯出し工程で説明したように、センサ40を、保持凹孔44に対して、自身の中心軸を中心として(レーザ照射面41を含む仮想平面内で)回転可能とする。このようにセンサ40を回転させることにより、レーザ照射面41に設定された直交座標(照射位置λのデータ処理を行うソフトウエア上の直交座標)の向きを調整し、この直交座標のX軸(又はY軸)を、前記ずれの方向に合わせる。すなわち、図1および図4に示したX方向およびY方向を設定し直す。このようにすれば、ワークホルダ17の固定位置の調節は、X方向(またはY方向)に関して行うだけで、照射位置λの軌跡(円形状)の中心位置と、レーザ照射面41に設定された直交座標の原点とを一致させることができる。
【0065】
何れにしても、本例では、照射位置λの軌跡(円形状)の中心位置と、レーザ照射面41に設定された直交座標の原点とが一致したら、その固定位置を最終的な固定位置とする。
【0066】
なお、本発明を実施する場合、自転精度改善工程は、準備工程の終了後であれば、適宜のタイミングで実行することができ、たとえば、回転体芯出し工程の次や、ワークホルダ芯出し工程の次や、移動精度改善工程の次に実行することもできる。また、移動精度改善工程は、回転体芯出し工程の終了後であれば、適宜のタイミングで実行することができ、たとえば、ワークホルダ芯出し工程の次や、自転精度改善工程の次に実行することもできる。また、自転精度改善工程、移動精度改善工程、ワークホルダ芯出し工程のそれぞれは、各部材の取付構造や各部材の精度を確認しながらの組立によって、同軸度を確保できるのであれば、適宜実行を省略することもできる。
【0067】
本例の揺動かしめ装置110により、ハブ輪6の軸方向内端部にかしめ部9を形成する際には、このかしめ部9を形成する前のハブ輪6と、ハブユニット軸受を構成するその他の部品とを組み立てた状態で、図1および図2に示すように、ワークであるハブ輪6をワークホルダ17に対して(アダプタ46を介して)同軸に保持する。この状態で、回転体16を回転させることに基づいて、シャフト付球面座11と成形型14との結合体を、凸球面部19と凹球面部18との球面係合部を支点として、基準軸αを中心に、歳差運動による中心軸の軌跡のように振れ回り運動させる。このような振れ回り運動をさせながら、移動テーブル32を上方に移動させ、図3(a)に示すように、成形型14の加工面部20を、ハブ輪6の円筒部8に押し付ける。これにより、成形型14から円筒部8に対し、上下方向に関して下方に、径方向に関して外方に、それぞれ向いた加工力を加え、かつ、この加工力を加える部分を円周方向に関して連続的に変化させる。これにより、図3(a)→図3(b)に示すように、円筒部8を径方向外方に徐々に塑性変形させてかしめ部9を形成し、このかしめ部9により内輪7の軸方向内端面を抑え付ける。
【0068】
このようにしてかしめ部9を形成する際に、成形型14は、円筒部8との接触部に作用する摩擦力に基づいて、中心軸βを中心として回転(自転)しながら、上述した振れ回り運動をする。すなわち、円筒部8に対する成形型14の接触は、転がり接触となる。このため、この接触部の摩耗や発熱を十分に抑えられる。また、円筒部8から成形型14に加わる加工反力は、凹球面座15によって効率良く支承することができる。
【0069】
さらに、本例の揺動かしめ装置は、前述した様な自転精度改善工程、回転体芯出し工程、移動精度改善工程、ワークホルダ芯出し工程を実行して製造されているため、これらの工程で調整した芯出し精度などを良好にして、かしめ部9の加工精度を高めることができる。この結果、かしめ部9が内輪7の軸方向内端面を抑え付ける力を、円周方向に関して均一にすることができ、転動体5の予圧を円周方向に関して均一にすることができる。
【符号の説明】
【0070】
1 外輪
2 ハブ
3a、3b 外輪軌道
4a、4b 内輪軌道
5 転動体
6 ハブ輪
7 内輪
8 円筒部
9 かしめ部
10 フレーム
11 シャフト付球面座
12 揺動シャフト
13 凸球面座
14 成形型
15 凹球面座
16 回転体
17 ワークホルダ
18 凹球面部
19 凸球面部
20 加工面部
21 ヘッドケース
22 軸受装置
23 周壁部
24 保持孔
25 転がり軸受
26 外輪
27 内輪
28 球面ころ
29 段差面
30 雄ねじ部
31 ナット
32 移動テーブル
33 レーザユニット
34 取付ツール
35 レーザヘッド
36 芯出し用凸部
37 凸球面座側係合部
38 受光ユニット
39 取付ツール
40 センサ
41 レーザ照射面
42 受光ユニット側係合部
43 ワークホルダ側係合部
44 保持凹孔
45 成形型側係合部
46 アダプタ
47 アダプタ側係合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図9
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図12