(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】走行作業機
(51)【国際特許分類】
A01C 11/02 20060101AFI20221004BHJP
A01B 69/02 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
A01C11/02 330M
A01C11/02 330Z
A01B69/02 A
A01B69/02 Z
(21)【出願番号】P 2019142315
(22)【出願日】2019-08-01
【審査請求日】2021-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【氏名又は名称】松田 正道
(74)【代理人】
【識別番号】110000899
【氏名又は名称】特許業務法人新大阪国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 悠太
(72)【発明者】
【氏名】飛田 秀平
(72)【発明者】
【氏名】田中 誠治
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 慎
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-117558(JP,A)
【文献】特開2009-207361(JP,A)
【文献】実開昭62-046265(JP,U)
【文献】特開2017-087936(JP,A)
【文献】登録実用新案第3044567(JP,U)
【文献】特開2015-201155(JP,A)
【文献】特開2008-263821(JP,A)
【文献】特開2004-105142(JP,A)
【文献】米国特許第04365672(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 11/02
A01B 69/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御装置(100)で自動的に操縦可能にした機体の側部左右に線引きマーカ(65L),(65R)を側方への張出と上昇収納に切換可能に設けた走行作業機において、
前記線引きマーカ(65L),(65R)の張出した際のその前方を照射するセンサ(93L),(93R)を設け、該センサ(93L),(93R)で、張出し中の方の前記線引きマーカ(65L),(65R)の先端付近の前方に障害物を検出すると、前記制御装置(100)が線引きマーカ昇降モータ(87)を駆動して前記張出し中の方の線引きマーカ(65L),(65R)を上昇収納させ、
自律走行モードにおいては、走行作業機は、圃場Fにおいて、予定走行経路に沿って自動直進モードおよび自動旋回動作モードを繰り返しながら作業を自動で行い、
自動直進モードで進行してきた走行作業機は、予め設定された所望の旋回開始位置P1に近づいた位置で操縦者により操作具48が操作されると、自動旋回を開始し、
前記旋回開始位置P1は、今回の直進走行時における植付工程よりも1つ前の植付工程である前工程における直進走行距離に基づいて、前記旋回開始位置P1を判定し、
位置取得装置150によって、走行作業機の現在位置から旋回開始位置P1までの距離が所定の距離D以下である場合に、旋回開始位置P1に近づいたと判定する、ことを特徴とする走行作業機。
【請求項2】
前記左右線引きマーカ(65L),(65R)は片側だけを張り出させると共にその張出側の前記センサ(93L),(93R)のみが前記照射作動することを特徴とする請求項1に記載の走行作業機。
【請求項3】
前記センサ(93L),(93R)は、移植作業時のみ作動することを特徴とする請求項1或いは請求項2の何れか1項に記載の走行作業機。
【請求項4】
ハンドル(35)を立設するハンドルポスト(34)の外装壁(96)の、操縦席(41)側に液体容器(98)の底部を受ける受部(96a)と、前記液体容器(98)の上部を前記外装壁(96)側に引き寄せる容器挟み(97)を設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の走行作業機。
【請求項5】
前記受部(96a)は前記液体容器(98)の底部凹みを受ける突出部で構成され、前記外装壁の面に前記液体容器(98)の外周を嵌める凹み部(96b)を形成したことを特徴とする請求項4に記載の走行作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場を往復走行しながら農作業を行う走行作業機で、作業者が搭乗して操縦操作したり自動的に設定された目標走行経路を自動操舵で走行したりする走行作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
圃場で使用する走行作業機の自動操舵システムとして、特許文献1や特許文献2に記載された技術が知られている。
【0003】
これらの走行作業機は、測位ユニットで圃場における機体位置を検出し、直進走行と旋回走行を繰り返しながら圃場内を往復走行することによって隈なく作業するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4638998号公報
【文献】特許第6320212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
走行作業機が苗移植機の場合には、線引きマーカを機体側方に張り出して圃場面に溝軌跡を描き、その溝軌跡を旋回後の移植走行の目標走行線としているが、畔近くを走行して移植する場合には作業者が気付かずに線引きマーカが畔に近づき過ぎて接触し破損する恐れがある。
【0006】
本発明は、機体の側部に線引きマーカを張出・収納可能に設け、該線引きマーカが描いた溝軌跡を追走して農作業を行う苗移植機において、圃場の畔近くを走行する場合に線引きマーカが畔に当って損傷しないようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
【0008】
第1の本発明は、
制御装置(100)で自動的に操縦可能にした機体の側部左右に線引きマーカ(65L),(65R)を側方への張出と上昇収納に切換可能に設けた走行作業機において、
前記線引きマーカ(65L),(65R)の張出した際のその前方を照射するセンサ(93L),(93R)を設け、該センサ(93L),(93R)で、張出し中の方の前記線引きマーカ(65L),(65R)の先端付近の前方に障害物を検出すると、前記制御装置(100)が線引きマーカ昇降モータ(87)を駆動して前記張出し中の方の線引きマーカ(65L),(65R)を上昇収納させ、
自律走行モードにおいては、走行作業機は、圃場Fにおいて、予定走行経路に沿って自動直進モードおよび自動旋回動作モードを繰り返しながら作業を自動で行い、
自動直進モードで進行してきた走行作業機は、予め設定された所望の旋回開始位置P1に近づいた位置で操縦者により操作具48が操作されると、自動旋回を開始し、
前記旋回開始位置P1は、今回の直進走行時における植付工程よりも1つ前の植付工程である前工程における直進走行距離に基づいて、前記旋回開始位置P1を判定し、
位置取得装置150によって、走行作業機の現在位置から旋回開始位置P1までの距離が所定の距離D以下である場合に、旋回開始位置P1に近づいたと判定する、ことを特徴とする走行作業機である。
第2の本発明は、
前記左右線引きマーカ(65L),(65R)は片側だけを張り出させると共にその張出側の前記センサ(93L),(93R)のみが前記照射作動することを特徴とする第1の本発明の走行作業機である。
第3の本発明は、
前記センサ(93L),(93R)は、移植作業時のみ作動することを特徴とする第1或いは2の何れかの本発明の走行作業機である。
第4の本発明は、
ハンドル(35)を立設するハンドルポスト(34)の外装壁(96)の、操縦席(41)側に液体容器(98)の底部を受ける受部(96a)と、前記液体容器(98)の上部を前記外装壁(96)側に引き寄せる容器挟み(97)を設けたことを特徴とする第1乃至3の何れかの本発明の走行作業機である。
第5の本発明は、
前記受部(96a)は前記液体容器(98)の底部凹みを受ける突出部で構成され、前記外装壁の面に前記液体容器(98)の外周を嵌める凹み部(96b)を形成したことを特徴とする第4の本発明の走行作業機である。
本発明に関連する第1の発明は、制御装置(100)で自動的に操縦可能にした機体の側部左右に線引きマーカ(65L),(65R)を側方への張出と上昇収納に切換可能に設けた走行作業機において、前記線引きマーカ(65L),(65R)の張出した際のその前方を照射するセンサ(93L),(93R)を設け、該センサ(93L),(93R)で、張出し中の方の前記線引きマーカ(65L),(65R)の先端付近の前方に障害物を検出すると、前記制御装置(100)が線引きマーカ昇降モータ(87)を駆動して前記張出し中の方の線引きマーカ(65L),(65R)を上昇収納させることを特徴とする走行作業機とする。
【0009】
本発明に関連する第2の発明は、前記左右線引きマーカ(65L),(65R)は片側だけを張り出させると共にその張出側の前記センサ(93L),(93R)のみが前記照射作動することを特徴とする本発明に関連する第1の発明の走行作業機とする。
【0010】
本発明に関連する第3の発明は、前記センサ(93L),(93R)は、移植作業時のみ作動することを特徴とする本発明に関連する第1或いは2の何れかの発明の走行作業機とする。
【0011】
本発明に関連する第4の発明は、ハンドル(35)を立設するハンドルポスト(34)の外装壁(96)の、操縦席(41)側に液体容器(98)の底部を受ける受部(96a)と、前記液体容器(98)の上部を前記外装壁(96)側に引き寄せる容器挟み(97)を設けたことを特徴とする本発明に関連する第1乃至3の何れかの発明の走行作業機とする。
【0012】
本発明に関連する第5の発明は、前記受部(96a)は前記液体容器(98)の底部凹みを受ける突出部で構成され、前記外装壁の面に前記液体容器(98)の外周を嵌める凹み部(96b)を形成したことを特徴とする本発明に関連する第4の発明の走行作業機とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によって、畔近くの移植走行で線引きマーカ65L,65Rが畔などの障害物に当たる怖れがあると線引きマーカ65L,65Rが上昇収納して破損することを防いで安全に移植作業を続けられる。
さらに、たとえば、圃場の中央付近などの旋回開始位置P1以外で自動旋回スイッチ48が操作(すなわち、誤操作)されても旋回動作モードを実行しないことで、誤操作を防止することができる。
本発明に関連する第1の発明で、制御装置100で自動操縦する機体の左右に設ける線引きマーカ65L,65Rは、移植作業時に機体の側方へ張り出して溝軌跡を描くが、線引きマーカ65L,65Rの張出方向をセンサ93L,93Rで監視し、線引きマーカ65L,65Rの先端付近に障害物を検出すると制御装置100が線引きマーカ昇降モータ87を駆動して線引きマーカ65を上昇収納するので、畔近くの移植走行で線引きマーカ65L,65Rが畔などの障害物に当たる怖れがあると線引きマーカ65L,65Rが上昇収納して破損することを防いで安全に移植作業を続けられる。
【0014】
本発明に関連する第2の発明で、本発明に関連する第1の発明の効果に加えて、線引きマーカ65L,65Rを張り出した側のセンサ93L,93Rが照射してその障害物検出データのみを制御装置100に入力するので、制御プログラムが簡略になり、制御処理が早くなる。
【0015】
本発明に関連する第3の発明で、本発明に関連する第1或いは2の何れかの発明の効果に加えて、センサ93L,93Rは植付クラッチ27aが入りで苗植付部4が接地で線引きマーカ65L,65Rが側方張出時すなわち移植作業時のみに作動するので、移植作業以外でセンサ93L,93Rが誤作動して線引きマーカ65L,65Rを昇降することが無いので、誤作動による危険な状態が生じない。
【0016】
本発明に関連する第4の発明で、本発明に関連する第1乃至3の何れかの発明の効果に加えて、走行作業機の操縦席41に座った作業者は、エンジンから離れたハンドルポスト34の外装壁96に設ける受部96aと容器挟み97にペットボトル等の液体容器98を保持して適宜に熱くならない飲料水で給水できる。
【0017】
本発明に関連する第5の発明で、本発明に関連する第4の発明の効果に加えて、液体容器98が受部96aと凹み部96bと容器挟み97で確実に保持されて作業中に落下することが無い。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態における走行作業機の一例を示す側面図である。
【
図3】同走行作業機の制御装置を中心とした制御系を示すブロック図である。
【
図4】同走行作業機の圃場における自律走行の説明図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る自動旋回制御の説明図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係る自動旋回制御の処理手順を示すフローチャートである。
【
図7】同自動旋回制御を開始する制御の処理手順を示すフローチャートである。
【
図8】同自動旋回制御における第1旋回動作モードから第2旋回動作モードに移行する制御の処理手順を示すフローチャートである。
【
図9】本発明の実施の形態におけるハンドルポストの拡大右側面図である。
【
図10】同ハンドルポストの部分拡大右側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して本願の開示する走行作業機の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
<走行作業機の概要>
まず、
図1および
図2を参照して実施形態に係る走行作業機の概要について説明する。以下の説明では、前後方向とは、走行作業機の直進時における進行方向であり、進行方向の前方側を「前」、後方側を「後」と規定する。走行作業機の進行方向とは、直進時において、操縦席41からハンドル35に向かう方向である(
図1および
図2参照)。
【0020】
左右方向とは、前後方向に対して水平に直交する方向であり、「前」側へ向けて左右を規定する。すなわち、操縦者(作業者ともいう)が操縦席41に座って前方を向いた状態で、左手側が「左」、右手側が「右」である。
【0021】
上下方向とは、鉛直方向である。前後方向、左右方向および上下方向は互いに直交する。各方向は説明の便宜上定義したものであり、これらの方向によって本発明が限定されるものではない。また、以下の説明では、走行作業機の本体を指して「機体」という場合がある。
【0022】
以下では、走行作業機として、走行車体2の後側に昇降リンク機構3を介して昇降可能に苗植付部4を備えて圃場に苗を受け付ける乗用型の苗移植機1として説明するが、種子を供給する播種装置を備えた乗用型の播種機でも良い。
【0023】
走行車体2は、駆動輪である左右の前輪10および後輪11を備える四輪駆動車両である。走行車体2の車体骨格を構成するメインフレーム15の前側には、苗植付部4などに駆動力を伝達するミッションケース13と、エンジン30から供給される駆動力、すなわち、エンジン30で発生した回転をミッションケース13に出力する油圧式の無段変速装置14(主変速機構)とが設けられる。
【0024】
無段変速装置14は、いわゆるHST(Hydro Static Transmission)と呼ばれる静油圧式の無段変速機である。
【0025】
ミッションケース13内には、高速モードでの路上走行時や、低速モードでの苗の植え付け時などにおける走行車体2の走行モードを切り替える副変速機構16が設けられる。ミッションケース13の左右側方には、前輪ファイナルケース10aが設けられ、左右の前輪ファイナルケース10aの操向方向を変更可能な前輪支持部からそれぞれ外向きに突出する左右の前車軸10bに前輪10が取り付けられる。
【0026】
また、メインフレーム15の後部側には、機体横方向に設けられた後部フレーム22(
図2参照)の左右両側に後輪ギアケース11aが取付けられ、後輪ギアケース11aからそれぞれ外向きに突出する左右の後車軸11bに後輪11(走行車輪)がそれぞれ取り付けられる。
【0027】
また、後部フレーム22の上部には、昇降リンク機構3を支持する左右のリンク支持フレーム23が上方に向けて突設される。左右のリンク支持フレーム23の下部側で、かつ、左右の間には、左右一対のロワリンクアーム24が設けられる。左右のロワリンクアーム24の左右の間に、油圧により作動する昇降シリンダ25(昇降装置)が設けられる。
【0028】
昇降シリンダ25の上方には、アッパリンクアーム26が設けられ、平行リンク機構である昇降リンク機構3が構成される。なお、それぞれ一端が走行車体2側に連結された、左右のロワリンクアーム24と、昇降シリンダ25と、アッパリンクアーム26の他端側とは、苗植付部4の前部に装着される。
【0029】
また、メインフレーム15上には、エンジン30が搭載される。エンジン30の回転動力が、ベルト伝動装置21およびHST14を介してミッションケース13に伝達される。ミッションケース13に伝達された回転動力は、ミッションケース13内の副変速機構16により変速された後、走行動力と外部取り出し動力に分けられる。
【0030】
また、エンジン30の回転動力は、図示しない油圧ポンプに伝達される。油圧ポンプで発生した油圧は、HST14や、ハンドル35のパワーステアリング機構88(
図3参照)や、昇降シリンダ25などに供給される。
【0031】
ミッションケース13に伝達された回転動力から取り出される外部取り出し動力は、走行車体2の後部に設けられた植付クラッチケース27に伝達され、植付クラッチケース27から植付伝動軸67によって苗植付部4に伝達される。
【0032】
一方、ミッションケース13の後部には、左右のドライブシャフト42が設けられる。エンジン30からの回転動力は、ミッションケース13およびドライブシャフト42を介して左右の後輪ギアケース11aに伝動される。
【0033】
なお、左右のドライブシャフト42よりも伝動方向上手側には、左右のドライブシャフト42に対する動力伝達を入切するサイドクラッチ44(
図3参照)が配置される。
図1に示すように、操縦席41の前側下部であり、かつ、左右一側には、左右のサイドクラッチ44を入切操作するサイドクラッチペダル43aが設けられる。
【0034】
左右のサイドクラッチペダル43aのうち、旋回内側のサイドクラッチペダル43aを踏み込んでサイドクラッチ44を切状態にしてからハンドル35を操作して旋回走行すると、旋回内側の後輪11の駆動回転を完全に遮断することができる。
【0035】
これにより、ハンドル35単独の操作による旋回走行よりも旋回半径を小さくすることができ、圃場条件に適した作業条の作業開始位置を適切に選択可能となって作業精度が向上する。
【0036】
このように、旋回時に旋回内側の後輪11への伝動を停止させ、旋回半径を小さくすることができ、旋回前の作業位置と旋回後の作業位置が離れることを防止できるので、旋回後の作業開始位置の調整をやり直す操作が不要になり、作業効率や作業精度が向上する。
【0037】
なお、実施形態では、後述する自動旋回制御において、ハンドル35の操作により走行車体2を旋回操作させると、旋回内側に位置するサイドクラッチ44が切状態になり、旋回内側の後輪11への伝動を停止させるように構成されている。
【0038】
走行車体2の前側上部には、各部の操作を行う操縦パネル38を上部に配置されたボンネット39が設けられる。操縦パネル38には、後述する自動旋回制御を行うか否かを切り替える自動旋回スイッチ48や、モニタ86(
図3参照)などが設けられる。
【0039】
また、ボンネット39には、機体を操舵するハンドル35、HST14や苗植付部4を操作する変速操作レバー36、副変速機構16を操作する副変速操作レバー37などが設けられる。
【0040】
また、ボンネット39の前側には、開閉可能なフロントカバー40が設けられる。フロントカバー40の内部には、燃料タンクやバッテリ、ハンドル35の操舵に左右の前輪10および左右の前輪ファイナルケース10aの下部側を回動させる連動機構が設けられる。
【0041】
ボンネット39よりも機体後側で、かつ、エンジン30の上方位置には、エンジン30の上部および側部を覆うエンジンカバー30aが設けられ、エンジンカバー30aの上部には操縦者が着席する操縦席41が設けられる。
【0042】
操縦席41の後側であって、メインフレーム15の後端側には、施肥装置5が設けられる。施肥装置5の駆動力は、左右の後輪ギアケース11aの左右一側から施肥装置5に臨むように設けられる、施肥伝動機構によって伝達される。
【0043】
ところで、エンジンカバー30aおよびボンネット39の下部における左右両側は、略水平なフロアステップ33が形成される。フロアステップ33は、
図2に示すように、一部格子状であり、たとえば、フロアステップ33を歩く操縦者の靴などについた泥が落ちても、落ちた泥などが圃場に落下する。
【0044】
また、フロアステップ33の後方には、
図2に示すように、リヤステップ330が連接される。リヤステップ330の表面には、作業時に足が滑りにくくなるように、たとえば、複数の突起パターンが形成された滑り止め加工が施されることが好ましい。
【0045】
また、走行車体2の前側であり、かつ、左右両側には、苗枠支柱51に複数の予備苗載せ台52を上下方向に間隔を空けて配置する予備苗枠50がそれぞれ設けられ、苗植付部4に補充される苗や肥料袋などの作業資材が載置可能となっている。
【0046】
また、昇降リンク機構3の後端部には、圃場に植え付ける苗を積載する苗タンク53が、左右方向に摺動させる摺動機構と共に装着されている。苗タンク53には、上下方向に長い苗仕切フェンス54を左右方向に所定間隔を空けてそれぞれ配置される。苗タンク53の下方には、積載された苗を掻き取って圃場に植え付ける苗植付装置55が配置される。
【0047】
苗植付装置55は、苗仕切フェンス54により区切られた植付作業条数と同数、すなわち、8条同時に植え付けるものであり、植付伝動ケース56が苗タンク53の下方に間隔を空けて4つ配置され、植付伝動ケース56の左右両側に回転しながら植込杆58により苗を取って圃場に植え付ける植付ロータリ57がそれぞれ装着される。
【0048】
施肥装置5は、肥料が貯留される施肥ホッパ70が、苗植付部4の作業条数と同数(
図2に示す例では、8条分)に仕切られている。なお、8条分の施肥ホッパ70は、左右方向に長いため肥料の投入や着脱の利便性が低下するので、4条ずつに仕切られたものを左右にそれぞれ並べる、いわゆるサイド施肥構造であってもよい。
【0049】
施肥ホッパ70の下部には、肥料を設定量ずつ供給する繰出装置71が1条ごとに設けられる。繰出装置71の下方には、肥料を移動させる搬送風が通過する通風ダクト72が機体の左右方向に設けられる。繰出装置71の下方には、苗植付部4の苗植付位置の近傍に肥料を案内する施肥ホース73が設けられる。また、通風ダクト72の機体の一側端部には、ブロア用電動モータ76により作動して搬送風を発生するブロア74が設けられる。
【0050】
図1および
図2に示すように、苗植付部4の下方には、圃場面に接地して滑走するセンターフロート62Cと、左右2つずつのサイドフロート62L、62Rとが、軸まわりに回動自在に設けられる。なお、センターフロート62Cおよび左右のサイドフロート62L、62Rを総称してフロート62という場合がある。
【0051】
また、苗植付部4の下方において、フロート62よりも機体前側には、圃場面の凹凸を整地する整地ロータ63が設けられる。など、整地ロータ63には、左右他側の後輪ギアケース11aからロータ伝動シャフト63aを介して駆動力が伝達される。
【0052】
また、
図1に示すように、苗植付部4の左右両側には、左右いずれか一方が圃場面に接地して、次の作業条(次工程)における走行の目安とする溝を圃場面に描く線引きマーカ65L,65Rがそれぞれ設けられる。左右の線引きマーカ65L,65Rは、左右一側が接地すると他側が上方に離間収納し、旋回時に苗植付部4を上昇させたときには左右両側共に上方に離間収納し、旋回後に苗植付部4が下降すると、左右一側が上方に離間収納したままで他側が接地する。
【0053】
前記施肥ホッパ70の左右側面に超音波センサ93L,93Rを設け、線引きマーカ65L,65Rが接地する付近の前方を照射して、畔などの障害物の存在を監視している。超音波センサ93L,93Rが畔等の障害物を検出すると、後述する制御装置100が線引きマーカ昇降モータ87を駆動して、接地している方の線引きマーカー65L、65Rを上方に離間収納する。なお、超音波センサ93L,93Rは、左右線引きマーカ65L,65Rの接地した側のみに照射して障害物検出を行うことで制御装置100のデータ処理負荷を軽減している。
【0054】
また、
図1および
図2に示すように、ボンネット39の前方左右中央部には、上下方向に長いセンターマスコット66が設けられ、このセンターマスコット66を左右の線引きマーカ65L,65Rにより圃場に形成された溝軌跡に合わせて航行することにより、直前の作業条に沿わせた移植走行が可能になり、作業精度の向上や、非作業の発生防止を図ることができる。
【0055】
なお、圃場の土質によっては、左右の線引きマーカ65により形成された溝がすぐに埋もれてしまい、走行の目安が消えてしまうことがある。このような場合には、左右の線引きマーカ65L,65Rよりも機体前側に設けられた左右のサイドマーカ19L,19Rを用いるとよい。すなわち、左右のサイドマーカ19L,19Rを機体外側方向に移動させ、植え付けられた苗の上方にサイドマーカ19を位置させることで、前の作業条の苗の植え付けに沿わせた植付作業が可能になる。
【0056】
また、
図1に示すように、苗移植機1は、位置取得装置150を備える。位置取得装置150は、GPS(Global Positioning System)やGNSS(Global Navigation Satellite System)などの測位手段から測位情報を受け取り、受け取った測位情報に基づいて機体の現在の位置情報を作成し、取得する。位置取得装置150は、たとえば、取付ステー59に取り付けられ、走行車体2の上方に配置される。
【0057】
位置取得装置150による位置情報に基づいて作成される、直進制御用プログラムと、旋回制御用プログラムとは、互いに別の場所に格納される。直進制御用プログラムは、たとえば、位置取得装置150内の直進制御用ECU(Electronic Control Unit)100aに格納され、旋回制御用プログラムは、たとえば、ボンネット39に収容された旋回制御用ECU100bに格納される。なお、直進制御用ECU100aおよび旋回制御用ECU100bは、後述する制御装置100(
図3参照)に含まれる。
【0058】
図9、10は、メインフレーム15から立設するハンドル35の支持部を覆うハンドルポスト34の側面図を示している。ペットボトル等の液体容器98の底部を受ける受部96aと液体容器98の側面を嵌める凹み部96bを操縦席41側の外装壁96に形成し、その上部に平面視がU字状で液体容器98を挟む容器挟み97を設けている。この容器挟み97は外装壁96の内側に設ける圧縮ばね97aとピンと座金などで液体容器98を外装壁96に引き寄せて保持する。使用するときは、作業者が指でつまみ引き出す。さらに、上記受部96aは液体容器98の底部凹みを受ける突出部で構成されている。そのため突出部で液体容器98の底面を相対的にグリップするので車体が揺れても安定する。
【0059】
従って、操縦席41に座った作業者は、ハンドルポスト34の外装壁96に液体容器98を保持して、適宜に取り外して作業者が飲むことが出来るが、エンジン30から離れた位置であるので熱くなり難い。
<走行作業機の制御系>
次に、
図3を参照して苗移植機1の制御系について説明する。
図3は、苗移植機1における、制御装置100を中心とした制御系を示すブロック図である。苗移植機1は、電子制御によって各部を制御することが可能なものであり、各部を制御する制御装置(以下、コントローラという)100を備える。
【0060】
コントローラ100は、CPU(Central Processing Unit)などを有する処理部や、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などの記憶部、さらには入出力部が設けられ、これらは、互いに接続されて互いに信号の受け渡しが可能である。記憶部には、苗移植機1を制御するコンピュータプログラムなどが格納される。コントローラ100は、記憶部に格納されたコンピュータプログラムなどを読み出すことで、各機能を発揮させる。
【0061】
コントローラ100には、たとえば、アクチュエータ類として、スロットルモータ80、油圧制御弁81,82、植付クラッチ作動ソレノイド83、サイドクラッチ作動ソレノイド84、HSTモータ85、線引きマーカ昇降モータ87、ステアリングモータ95などが接続される。
【0062】
スロットルモータ80は、エンジン30の吸気量を調節するスロットルを作動させることにより、エンジン30の出力軸の回転数を増減させる。油圧制御弁81は、昇降シリンダ25の伸縮動作を制御する。油圧制御弁82は、パワーステアリング機構88を制御する。植付クラッチ作動ソレノイド83は、植付クラッチ27aを作動させる。
【0063】
サイドクラッチ作動ソレノイド84は、後輪11への動力伝達状態を切り替えるサイドクラッチ44を作動させる。なお、サイドクラッチ44は、左右の後輪11にそれぞれ設けられ、サイドクラッチ作動ソレノイド84は、各サイドクラッチ44に対応して2つ設けられる。
【0064】
HSTモータ85は、HST14のトラニオンの回動角度を変更することで、HST14の斜板の傾斜角を変更する。ステアリングモータ95は、自動旋回制御が行われる場合に、走行車輪である前輪10(
図1参照)の操舵量(舵角)を調整するステアリング装置であるハンドル35を駆動するモータである。ステアリングモータ95は、ハンドル35を回動させる。線引きマーカ昇降モータ87は、線引きマーカ65を昇降し、超音波センサ93L、93Rの障害物検出信号で昇降制御する。
【0065】
また、コントローラ100には、検出装置である、回転数センサ90、操舵量センサ91、傾斜センサ92、超音波センサ93、超音波センサ93L、93Rなどが接続される。回転数センサ90は、走行車輪である左右の後輪11に対応して2つ設けられ、左右の後輪11の回転数をそれぞれ検出する。なお、回転数センサ90は、左右の前輪10の回転数を検出してもよい。
【0066】
操舵量センサ91は、ステアリング装置であるハンドル35の操作量、すなわち、前輪10の操舵量(舵角)を検出する。なお、操舵量は、ハンドル35の操作量がゼロの場合を基準として、すなわち、走行車体2の直進走行時を基準として、左右方向それぞれで検出される。傾斜センサ92は、走行車体2の傾きである傾斜角を検出する。
超音波センサ93L、93Rは、線引きマーカ65L,65Rの張出付近の前方に向けて照射して線引きマーカ65L,65Rの先端近傍の前方にある畔などの障害物を検出する。
【0067】
また、コントローラ100には、操作信号として、変速操作レバー36、副変速操作レバー37、植付部自動昇降スイッチ47、自動旋回スイッチ48、線引きマーカ自動昇降スイッチ49などから信号が入力される。
【0068】
植付部自動昇降スイッチ47は、ハンドル35の操作量、すなわち、前輪10の操舵量に連動して苗植付部4を自動的に昇降させるか否かを切り替えるスイッチである。植付部自動昇降スイッチ47が「ON」の場合には、操舵量に連動して苗植付部4を自動的に昇降させる制御が実行される。一方、植付部自動昇降スイッチ47が「OFF」の場合には、操舵量に連動して苗植付部4を自動的に昇降させる制御は、実行されない。
【0069】
線引きマーカ自動昇降スイッチ49は、ハンドル35の操作量、すなわち、前輪10の操舵量に連動して線引きマーカ65を自動的に昇降させるか否かを切り替えるスイッチである。線引きマーカ自動昇降スイッチ49が「ON」の場合には、操舵量に連動して線引きマーカ65を自動的に昇降させる制御が実行される。そして超音波センサ93L、03Rが作動する。一方、線引きマーカ自動昇降スイッチ49が「OFF」の場合には、操舵量に連動して線引きマーカ65を自動的に昇降させる制御は、実行されない。
【0070】
自動旋回スイッチ48は、ランプ付きの跳ね返りスイッチであり、自動旋回を開始または中止するかを切り替えるスイッチである。自動旋回スイッチ48は、操縦者により「ON」にされて自動旋回が行われている間は点灯し、自動旋回が終了すると、「OFF」になり、消灯する。また、自動旋回スイッチ48は、自動旋回中に操縦者により「OFF」にされ、自動旋回が中止されると、消灯する。これにより、自動旋回を行っているか否かを、操縦者が認識可能となる。
【0071】
また、コントローラ100には、位置取得装置150から機体の現在の位置情報が入力される。コントローラ100は、位置情報に基づいて、機体が自動で走行しながら作業を行う自律走行モードを実行する。コントローラ100を中心として、自動旋回スイッチ48、回転数センサ90、操舵量センサ91、ステアリングモータ95、ハンドル35および位置取得装置150は、後述する自動旋回モードの制御系Cを構成している。
<自律走行モード>
ここで、
図4を参照して、苗移植機1による、圃場における自動旋回を含む自動走行(自律走行)について説明する。
図4は、苗移植機1の圃場における自律走行の説明図である。コントローラ100(
図3参照)は、前輪10(
図1参照)の操舵量をフィードバックしながらステアリングモータ95(
図3参照)を制御してハンドル35(
図3参照)を操作する自律走行モードを有する。自律走行モードは、自動直進モードと、自動旋回モードとを含む。
【0072】
図4に示すように、自律走行モードにおいては、苗移植機1は、圃場Fにおいて、予定走行経路に沿って直進および旋回を繰り返しながら苗の植え付け作業を自動で行う。なお、コントローラ100は、上記したように、走行車体2の上方に配置された位置取得装置150によって苗移植機1の現在の位置情報を取得する。
【0073】
苗移植機1は、圃場Fにおける所定の作業エリア内を往復しながら、苗の植付を行う。この場合、直進走行については、コントローラ100が自動直進モードを実行することにより、設定された直進走行経路L1に沿って自動走行を行う。また、旋回走行については、コントローラ100が自動旋回モードを実行することにより、設定された旋回走行経路L2に沿って自動旋回を行う。
【0074】
直進走行経路L1は、走行基準となる基準線L0に対して平行である。基準線L0は、苗の植え付け方向にあわせて、圃場Fにおいて設定される。コントローラ100は、直進走行の開始位置および終了位置をそれぞれ基準始点(A点)および基準終点(B点)として取得し、A点およびB点を結ぶ線分を基準線L0として登録する。
【0075】
また、コントローラ100は、自動旋回モードとして、第1旋回動作モードと、第2旋回動作モードとを有する。コントローラ100は、第1旋回動作モードおよび第2旋回動作モードを組み合わせることで、自動旋回モードとして実行する。なお、コントローラ100は、自動旋回スイッチ48が操縦者により「ON」されると、自動旋回モードを実行する。
【0076】
第1旋回動作モードでは、コントローラ100は、苗移植機1の旋回中において、ハンドルの操舵量が所定の値になるようステアリングモータを制御する。この場合、コントローラ100は、位置取得装置150が取得した位置情報に関わらず処理を実行する。
【0077】
第2旋回動作モードでは、コントローラ100は、苗移植機1の旋回中において、位置取得装置150が取得した位置情報に基づいて、旋回走行経路L2上のいずれか所望の位置に苗移植機1が到達するようステアリングモータを制御する。
【0078】
このように、コントローラ100が、第1旋回動作モードおよび第2旋回動作モードを有し、機体の旋回中において位置情報に基づいた動作モードではない第1旋回動作モードを実行するため、自動旋回に係る制御の全てに位置情報を用いる必要がない。このため、自動旋回中に位置情報を用いる制御が一部でよくなり、簡素な制御で自動旋回を行うことができる。
【0079】
なお、コントローラ100は、自動旋回モードでは、苗移植機1の旋回中において旋回走行経路L2からずれて旋回(大回りまたは小回り)している場合には、位置取得装置150が取得した位置情報に基づいて補正する。
<自動旋回モード>
次に、
図5~
図8を参照して第1実施形態に係る自動旋回モードについて説明する。
図5は、第1実施形態に係る自動旋回制御(自動旋回モード)の説明図である。
図6は、自動旋回制御(自動旋回モード)の処理手順を示すフローチャートである。
【0080】
また、
図7は、自動旋回制御(自動旋回モード)を開始する制御の処理手順を示すフローチャートである。
図8は、第1旋回動作モードから第2旋回動作モードに移行する制御の処理手順を示すフローチャートである。
【0081】
図5に示すように、第1実施形態に係る自動旋回モードでは、自動直進モードで進行してきた苗移植機1は、予め設定された所望の旋回開始位置(苗移植機1などの農業機械の場合は、1条における作業終了位置でもある)P1に近づいた位置で操縦者により自動旋回スイッチ48(
図3参照)が押されると、自動旋回を開始する。
【0082】
自動旋回を開始すると、苗移植機1は、第1旋回動作モードによる進行を開始する。第1旋回動作モードでは、苗移植機1は、旋回走行経路L2に沿って進行し、旋回走行経路L2上の終了位置(モード終了位置)P3で第1旋回動作モードによる進行を終了する。苗移植機1は、第1旋回動作モードによる進行を終了すると、第2旋回動作モードによる進行を開始する。
【0083】
第2旋回動作モードでは、苗移植機1は、予め設定された所望の旋回終了位置(苗移植機1などの農業機械の場合は、次の条における作業開始位置でもある)P2において次の条の直進走行経路L1に沿うように徐々に位置を補正しながら進行(直進)し、第2旋回動作モードによる進行を終了すると、自動直進モードで次の条における進行を開始する。
【0084】
図6に示すように、第1実施形態では、コントローラ100は、自動旋回スイッチ48が「ON」操作されたか否かを判定する(ステップS101)。コントローラ100は、自動旋回スイッチ48が「ON」操作された場合(ステップS101:Yes)、苗移植機1が旋回開始位置P1に到達したか否かを判定する(ステップS102)。コントローラ100は、旋回開始位置P1に到達したと判定すると(ステップS102:Yes)、第1旋回動作モードの実行を開始する(ステップS103)。
【0085】
コントローラ100は、ステップ101の処理において自動旋回スイッチ48が「ON」操作されない場合(ステップS101:No)、「ON」操作されるまでかかる処理を繰り返す。また、コントローラ100は、ステップ102の処理において苗移植機1が旋回開始位置P1に到達していない場合(ステップS102:No)、旋回開始位置P1に到達するまでかかる処理を繰り返す。
【0086】
次いで、コントローラ100は、苗移植機1が第1旋回動作モードの終了位置(モード終了位置)P3に到達したか否かを判定する(ステップS104)。コントローラ100は、モード終了位置P3に到達した場合(ステップS104:Yes)、第1旋回動作モードの実行を終了し(ステップS105)、第2旋回動作モードの実行を開始する(ステップS106)。
【0087】
コントローラ100は、ステップ104の処理において苗移植機1がモード終了位置P3に到達しない場合(ステップS104:No)、モード終了位置P3に到達するまでかかる処理を繰り返す。
【0088】
次いで、コントローラ100は、苗移植機1が第2旋回動作モードの終了位置でもある旋回終了位置P2に到達したか否かを判定する(ステップS107)。コントローラ100は、旋回終了位置P2に到達した場合(ステップS107:Yes)、第2旋回動作モードの実行を終了し(ステップS108)、旋回動作モードを終了する。
【0089】
ここで、コントローラ100は、第1旋回動作モードにおいて、たとえば、機体の向きが直進走行時を0度として左右いずれか旋回する側に、たとえば70度になるようステアリングモータ95(
図3参照)を制御する。コントローラ100は、機体の向きが70度になると、直進走行に戻し始めるよう、すなわち、機体の向きが90度になるようステアリングモータ95を制御する。
【0090】
コントローラ100は、第1旋回動作モードから第2旋回動作モードに移行する場合、機体の向きが次の条の直進走行経路L1に対して、たとえば0~20度範囲内に入るようステアリングモータ95を制御する。コントローラ100は、第2旋回動作モードの開始時に機体の向きを0~20度範囲内に入れておくことで、第2旋回動作モードにおいて位置取得装置150(
図3参照)が取得する位置情報に基づいて直進走行経路L1に沿うよう機体の向きを補正して旋回動作を完了する。
【0091】
コントローラ100は、ステップS107の処理において苗移植機1が旋回終了位置P2に到達しない場合(ステップS107:No)、旋回終了位置P2に到達するまでかかる処理を繰り返す。コントローラ100は、旋回動作モードを終了すると、自動直進モードの実行を開始する。
【0092】
また、
図7に示すように、コントローラ100は、
図6に示すステップS101の処理において、自動直進モードによる進行中、位置取得装置150が取得した位置情報に基づいて、苗移植機1の現在位置から旋回開始位置P1までの距離が所定の距離D以下であるか否かを判定する(ステップS1011)。コントローラ100は、測位情報に基づいて走行距離を算出し、苗移植機1の現在位置から旋回開始位置P1までの距離が所定の距離D以下であるか否かを判定する。なお、コントローラ100は、走行車輪の回転数に基づいて走行距離を算出してもよい。
【0093】
コントローラ100は、今回の直進走行時における植付工程よりも1つ前の植付工程である前工程における走行距離に基づいて上記判定を行う。
【0094】
今回の植付工程における旋回開始位置P1は、今回の植付工程において、前工程における走行距離分、進んだ付近であると予測することができる。例えば、今回の植付工程において実際に旋回が開始される位置は、前工程における走行距離に対して、±5m程度の範囲内であると予測することができる。
【0095】
そのため、コントローラ100は、前工程における走行距離に基づいて旋回開始位置P1を予測する。具体的には、コントローラ100は、今回の植付工程において直進した距離が、前工程における走行距離となる位置を旋回開始位置P1と予測し、苗移植機1の現在位置から旋回開始位置P1までの距離が所定の距離D以下である場合に、旋回位置付近、すなわち畦際であると判定する。
【0096】
なお、旋回開始位置P1は、測位情報に基づいた座標によって認識されてもよい。
【0097】
コントローラ100は、旋回開始位置P1までの距離が所定の距離D以下である場合(ステップS1011:Yes)、自動旋回スイッチ48が「ON」操作されると、第1旋回動作モードを実行する(ステップS1012)。
【0098】
コントローラ100は、ステップS1011の処理において旋回開始位置P1までの距離が所定の距離Dを超える場合(ステップS1011:No)、自動旋回スイッチが「ON」操作されても、第1旋回動作モードを実行しないで(ステップS1013)、自動直進モードを継続する。
【0099】
また、第1旋回動作モードの終了位置P3は、回転数センサ90(
図3参照)により検出(カウント)された後輪11(
図1参照)の回転数に基づいて設定される。
図8に示すように、コントローラ100は、
図6に示すステップS103の処理において、第1旋回動作モードの実行を開始すると、これに伴い、後輪11の回転数のカウントを開始し(ステップS1031)、後輪11の回転数が所定の値(カウント値)になったか否かを判定する(ステップS1032)。
【0100】
コントローラ100は、後輪11の回転数が所定のカウント値になった場合(ステップS1032:Yes)、終了位置P3に到達したと判断して第1旋回動作モードの実行を終了するとともに第2旋回動作モードを実行する(ステップS1033)。コントローラ100は、ステップS1032の処理において後輪11の回転数が所定のカウント値でない場合(ステップS1032:No)、所定のカウント値になるまでかかる処理を繰り返す。
【0101】
以上説明したように、苗移植機1の旋回開始時には第1旋回動作モードを実行し、旋回終了時には第2旋回動作モードを実行することで、より簡素な制御で自動旋回を行うことができる。
【0102】
また、第1旋回動作モードの開始に伴い後輪11の回転数のカウントを開始し、後輪11の回転数が所定のカウント値になると第2旋回動作モードに移行するため、自動旋回中に位置情報を用いる制御が一部でよくなり、簡素な制御で自動旋回を行うことができる。
【0103】
また、苗移植機1の現在位置から旋回開始位置P1まで距離が短い場合には自動旋回スイッチ48が「ON」操作されると第1旋回動作モードを実行する。一方、苗移植機1の現在位置から旋回開始位置P1まで距離が長い場合には自動旋回スイッチ48が操作されても第1旋回動作モードを実行しない。このように、たとえば、圃場の中央付近などの旋回開始位置P1以外で自動旋回スイッチ48が操作(すなわち、誤操作)されても第1旋回動作モードを実行しないことで、誤操作を防止することができる。
【0104】
また、旋回終了位置P2に向けた第2旋回動作モードが終了するとそのまま自動直進モードに移行して自動直進を開始するため、作業を継続的に行うことができ、作業性を向上させることができる。
【0105】
なお、第1旋回動作モードを実行してから第2旋回動作モードを実行するが、変形例として、たとえば、第2旋回動作モードを実行してから第1旋回動作モードを実行して旋回終了位置P2に到達させてもよい。
【0106】
なお、以上の説明では、センサを超音波センサとしたが、本願発明のセンサは超音波センサに限らず、赤外線センサや近距離電波センサなど、障害物を検知できるセンサなら適宜選択可能である。
【符号の説明】
【0107】
4 植付部
27a 植付クラッチ
34 ハンドルポスト
35 ハンドル
41 操縦席
49 線引きマーカ自動昇降スイッチ
65L,65R 線引きマーカ
87 マーカ昇降モータ
93L,93R 超音波センサ
96 外装壁
96a 受部
96b 凹み部
97 容器挟み
98 液体容器
100 制御装置