(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】マルチプレクサ
(51)【国際特許分類】
H03H 9/72 20060101AFI20221004BHJP
H03H 9/64 20060101ALI20221004BHJP
H04B 1/00 20060101ALI20221004BHJP
H04B 1/52 20150101ALI20221004BHJP
【FI】
H03H9/72
H03H9/64 Z
H04B1/00 257
H04B1/52
(21)【出願番号】P 2019154606
(22)【出願日】2019-08-27
【審査請求日】2021-03-25
(31)【優先権主張番号】P 2018210507
(32)【優先日】2018-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100189430
【氏名又は名称】吉川 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100190805
【氏名又は名称】傍島 正朗
(72)【発明者】
【氏名】向井 孝雄
【審査官】志津木 康
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/020595(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/142812(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/142794(WO,A1)
【文献】特開2012-147175(JP,A)
【文献】国際公開第2018/003297(WO,A1)
【文献】特開2007-074698(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H3/007-H03H3/10
H03H9/00-H03H9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通端子と第1端子とを結ぶ第1経路上に配置された第1送信フィルタと、
前記共通端子と第2端子とを結ぶ第2経路上に配置された第2送信フィルタと、
前記共通端子と第3端子とを結ぶ第3経路上に配置された受信フィルタと、を備え、
前記第1送信フィルタの通過帯域に含まれる周波数の第1送信信号と前記第2送信フィルタの通過帯域に含まれる周波数の第2送信信号とから生じる相互変調歪の周波数が前記受信フィルタの通過帯域に含まれ、
前記第1送信フィルタは、前記第1経路上に配置された1以上の直列腕共振回路と、前記第1経路上の対応するノードとグランドとを結ぶ経路上に配置された1以上の並列腕共振回路と、を有し、
前記第1送信フィルタの前記1以上の直列腕共振回路および前記1以上の並列腕共振回路のうち、前記共通端子に最も近い共振回路
は、第1の直列腕共振回路であり、
前記第1の直列腕共振回路と、前記第1の直列腕共振回路に接続された第1の並列腕共振回路とは、互いに直列に接続された複数の分割共振子からなる分割共振子群によって構成されている、
マルチプレクサ。
【請求項2】
前記相互変調歪の周波数が、前記第1送信信号の周波数の2倍から前記第2送信信号の周波数を減じた周波数である、
請求項1に記載のマルチプレクサ。
【請求項3】
前記第2送信フィルタは、前記第2経路上に配置された1以上の直列腕共振回路と、前記第2経路上の対応するノードとグランドとを結ぶ経路上に配置された1以上の並列腕共振回路と、を有し、
前記第2送信フィルタの前記1以上の直列腕共振回路および前記1以上の並列腕共振回路のうち、前記共通端子に最も近い共振回路のうち少なくとも1つの共振回路は、互いに直列に接続された複数の分割共振子からなる分割共振子群によって構成されている、
請求項1または2に記載のマルチプレクサ。
【請求項4】
共通端子と第1端子とを結ぶ第1経路上に配置された第1送信フィルタと、
前記共通端子と第2端子とを結ぶ第2経路上に配置された第2送信フィルタと、
前記共通端子と第3端子とを結ぶ第3経路上に配置された受信フィルタと、を備え、
前記第1送信フィルタの通過帯域に含まれる周波数の第1送信信号と前記第2送信フィルタの通過帯域に含まれる周波数の第2送信信号とから生じる相互変調歪の周波数が前記受信フィルタの通過帯域に含まれ、
前記第1送信フィルタは、前記第1経路上に配置された1以上の直列腕共振回路と、前記第1経路上の対応するノードとグランドとを結ぶ経路上に配置された1以上の並列腕共振回路と、を有し、
前記第1送信フィルタの前記1以上の直列腕共振回路および前記1以上の並列腕共振回路の各々は、IDT(Inter Digital Transducer)電極を有する弾性波共振子で構成され、
前記第1送信フィルタの前記1以上の直列腕共振回路および前記1以上の並列腕共振回路のうち前記共通端子に最も近い共振回路
は、第1の直列腕共振回路であり、
前記第1の直列腕共振回路、および、前記第1の直列腕共振回路に接続された第1の並列腕共振回路のIDT電極のデューティーは、前記第1送信フィルタの他のいずれの共振回路のIDT電極のデューティーより小さい、
マルチプレクサ。
【請求項5】
前記相互変調歪の周波数が、前記第1送信信号の周波数の2倍から前記第2送信信号の周波数を減じた周波数である、
請求項4に記載のマルチプレクサ。
【請求項6】
前記第2送信フィルタは、前記第2経路上に配置された1以上の直列腕共振回路と、前記第2経路上の対応するノードとグランドとを結ぶ経路上に配置された1以上の並列腕共振回路と、を有し、
前記第2送信フィルタの前記1以上の直列腕共振回路および前記1以上の並列腕共振回路の各々は、IDT電極を有する弾性波共振子で構成され、
前記第2送信フィルタの前記1以上の直列腕共振回路および前記1以上の並列腕共振回路のうち前記共通端子に最も近い共振回路のうちの少なくとも1つの共振回路のIDT電極のデューティーは、前記第2送信フィルタの他のいずれの共振回路のIDT電極のデューティーより小さい、
請求項4または5に記載のマルチプレクサ。
【請求項7】
前記第1送信フィルタおよび前記第2送信フィルタのうち、一方のフィルタの通過帯域は1920MHz以上1980MHz以下であり、他方のフィルタの通過帯域は1710MHz以上1785MHz以下であり、
前記受信フィルタの通過帯域は、2110MHz以上2200MHz以下である、
請求項1から6のいずれか1項に記載のマルチプレクサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチプレクサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、1つの端末で複数の周波数帯域(マルチバンド)および複数の無線方式(マルチモード)に対応した通信を行うため、例えば、弾性波共振子からなる送信フィルタおよび受信フィルタをそれぞれ含む2つのデュプレクサを共通端子に接続したクアッドプレクサが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のように、弾性波フィルタを用いて構成されたクアッドプレクサ等のマルチプレクサにおいては、弾性波フィルタ自身が有する非線形性により、相互変調歪(IMD:Intermodulation Distortion)を生じやすい。
【0005】
特に、複数の周波数帯域を同時に使用して通信を行うCA(Carrier Aggregation)に適用されるマルチプレクサでは、2つの異なる周波数帯域の送信信号から、受信信号と等しい周波数のIMDが生じることがある。そのようなIMDは、送信信号同士の干渉によって生じるため信号強度が大きく、マルチプレクサの通過特性を劣化させやすい。
【0006】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑み、複数の弾性波フィルタを有するマルチプレクサにおいてIMDの発生を低減し、通過特性に優れたマルチプレクサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係るマルチプレクサは、共通端子と第1端子とを結ぶ第1経路上に配置された第1送信フィルタと、前記共通端子と第2端子とを結ぶ第2経路上に配置された第2送信フィルタと、前記共通端子と第3端子とを結ぶ第3経路上に配置された受信フィルタと、を備え、前記第1送信フィルタの通過帯域に含まれる周波数の第1送信信号と前記第2送信フィルタの通過帯域に含まれる周波数の第2送信信号とから生じる相互変調歪の周波数が前記受信フィルタの通過帯域に含まれ、前記第1送信フィルタは、前記第1経路上に配置された1以上の直列腕共振回路と、前記第1経路上の対応するノードとグランドとを結ぶ経路上に配置された1以上の並列腕共振回路と、を有し、前記第1送信フィルタの前記1以上の直列腕共振回路および前記1以上の並列腕共振回路のうち、前記共通端子に最も近い共振回路のうち少なくとも1つの共振回路は、互いに直列に接続された複数の分割共振子からなる分割共振子群によって構成されている。
【0008】
また、本発明の一態様に係る他のマルチプレクサは、共通端子と第1端子とを結ぶ第1経路上に配置された第1送信フィルタと、前記共通端子と第2端子とを結ぶ第2経路上に配置された第2送信フィルタと、前記共通端子と第3端子とを結ぶ第3経路上に配置された受信フィルタと、を備え、前記第1送信フィルタの通過帯域に含まれる周波数の第1送信信号と前記第2送信フィルタの通過帯域に含まれる周波数の第2送信信号とから生じる相互変調歪の周波数が前記受信フィルタの通過帯域に含まれ、前記第1送信フィルタは、前記第1経路上に配置された1以上の直列腕共振回路と、前記第1経路上の対応するノードとグランドとを結ぶ経路上に配置された1以上の並列腕共振回路と、を有し、前記第1送信フィルタの前記1以上の直列腕共振回路および前記1以上の並列腕共振回路の各々は、IDT(Inter Digital Transducer)電極を有する弾性波共振子で構成され、前記第1送信フィルタの前記1以上の直列腕共振回路および前記1以上の並列腕共振回路のうち前記共通端子に最も近い共振回路のうちの少なくとも1つの共振回路のIDT電極のデューティーは、前記第1送信フィルタの他のいずれの共振回路のIDT電極のデューティーより小さい。
【発明の効果】
【0009】
このような構成によれば、第1送信フィルタを構成する共振回路のうち、共通端子に最も近い共振回路のうち少なくとも1つの共振回路、つまり、信号の電力が最も集中しやすいためにIMDが最も発生しやすい共振回路が、分割共振子群によって構成されるか、または、IDT電極のデューティーが他の共振回路のIDT電極のデューティーと比べてより小さい共振回路によって構成される。
【0010】
これにより、当該共振回路の圧電基板に占める面積が大きくなって単位面積あたりの消費電力が減るので、当該共振回路で発生するIMDは低減される。信号の電力が最も集中しやすい共振回路を分割するので、共振回路が大型化するデメリットに対してIMDを低減する効果を最大化できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】基本的なマルチプレクサの機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】マルチプレクサを構成するフィルタの通過帯域の一例を示す図である。
【
図3】フィルタの基本的な構成の一例を示す回路図である。
【
図4】弾性波共振子の基本的な構造の一例を示す模式図である。
【
図5A】マルチプレクサにおいて発生するIMDの一例を示す模式図である。
【
図5B】マルチプレクサにおいて発生するIMDの一例を示す模式図である。
【
図6】実施の形態に係るフィルタの構成の一例を示す回路図である。
【
図7】実施の形態に係るフィルタの構成の他の一例を示す回路図である。
【
図8】実施の形態に係るIMDの強度の計算例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、実施の形態および図面を用いて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置および接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。なお、以下の実施の形態において、「接続される」とは、配線導体で直接接続される場合だけでなく、他の回路素子を介して電気的に接続される場合も含まれる。
【0013】
(実施の形態)
実施の形態に係るマルチプレクサについて、クアッドプレクサの例を挙げて説明する。
【0014】
図1は、実施の形態に適用される基本的なクアッドプレクサの機能的な構成の一例を示すブロック図である。なお、
図1には、クアッドプレクサ1の共通端子Port1に接続されるアンテナ素子2も図示されている。
【0015】
クアッドプレクサ1は、一例として、LTE(登録商標)(Long Term Evolution)に対応し、3GPP(登録商標)(Third Generation Partnership Project)にて規定された後述するBandの高周波信号を通過させる。
【0016】
図1に示されるように、クアッドプレクサ1は、共通端子Port1と、4つの個別端子Port11、Port12、Port21およびPort22と、4つのフィルタ11、12、21および22と、を有する。
【0017】
共通端子Port1は、4つのフィルタ11、12、21および22に共通に設けられ、クアッドプレクサ1の内部でこれらフィルタ11、12、21および22に接続されている。また、共通端子Port1は、クアッドプレクサ1の外部でアンテナ素子2に接続される。つまり、共通端子Port1は、クアッドプレクサ1のアンテナ端子でもある。
【0018】
個別端子Port11、Port12、Port21およびPort22は、フィルタ11、12、21および22にそれぞれ対応して設けられ、クアッドプレクサ1の内部で対応するフィルタに接続されている。また、個別端子Port11、Port12、Port21およびPort22は、クアッドプレクサ1の外部で、増幅回路等(図示せず)を介してRF信号処理回路(RFIC:Radio Frequency Integrated Circuit、図示せず)に接続される。
【0019】
フィルタ11は、共通端子Port1と個別端子Port11とを結ぶ経路上に配置され、Band3における下り周波数帯を通過帯域とする受信フィルタである。
【0020】
フィルタ12は、共通端子Port1と個別端子Port12とを結ぶ経路上に配置され、Band3における上り周波数帯を通過帯域とする送信フィルタである。
【0021】
フィルタ21は、共通端子Port1と個別端子Port21とを結ぶ経路上に配置され、Band1における下り周波数帯を通過帯域とする受信フィルタである。
【0022】
フィルタ22は、共通端子Port1と個別端子Port22とを結ぶ経路上に配置され、Band1における上り周波数帯を通過帯域とする送信フィルタである。
【0023】
ここで、個別端子Port22は第1端子の一例であり、フィルタ22は、共通端子Port1と第1端子としての個別端子Port22とを結ぶ第1経路上に配置された第1送信フィルタの一例である。
【0024】
また、個別端子Port12は第2端子の一例であり、フィルタ12は、共通端子Port1と第2端子としての個別端子Port12とを結ぶ第2経路上に配置された第2送信フィルタの一例である。
【0025】
また、個別端子Port21は第3端子の一例であり、フィルタ21は、共通端子Port1と第3端子としての個別端子Port21とを結ぶ第3経路上に配置された第2送信フィルタの一例である。
【0026】
フィルタ11とフィルタ12とは、Band3の送信信号と受信信号とを分波および合波するデュプレクサ10を構成する。フィルタ21とフィルタ22とは、Band1の送信信号と受信信号とを分波および合波するデュプレクサ20を構成する。
【0027】
このように、クアッドプレクサ1は、Band3用のデュプレクサ10の共通端子とBand1用のデュプレクサ20の共通端子とを、ノードNにおいて互いに接続し、さらに共通端子Port1に接続して構成されている。
【0028】
なお、クアッドプレクサ1において、各フィルタ11、12、21および21とノードNとを結ぶ経路上あるいはノードNと共通端子Port1とを結ぶ経路上などに、インピーダンス整合用のインダクタ等のインピーダンス素子が接続されていてもかまわない。
【0029】
ここで、クアッドプレクサ1の通過帯域であるBand1およびBand3に割り当てられた周波数帯域の具体的な範囲について説明する。なお、以下では、周波数帯域の範囲について、A以上B以下を示す数値範囲をA~Bのように簡略化して記載する。
【0030】
図2は、Band1およびBand3に割り当てられた周波数帯域を説明する図である。なお、以降、各Bandの下り周波数帯域(受信帯域)および上り周波数帯域(送信帯域)を、例えばBand1の受信帯域については「Band1Rx」のように、バンド名とその末尾に付加された受信帯域または送信帯域を示す文字RxまたはTxとで簡略化して記載する場合がある。
【0031】
図2に示されるように、Band1は、送信帯域Band1Txに1920~1980MHzが割り当てられ、受信帯域Band1Rxに2110~2170MHzが割り当てられている。Band3は、送信帯域Band3Txに1710~1785MHzが割り当てられ、受信帯域Band3Rxに1805~1880MHzが割り当てられている。したがって、フィルタ11、12、21および22のフィルタ特性としては、
図2の実線で示すような、対応するBandの送信帯域または受信帯域を通過させ、他の帯域を減衰させるような特性が求められる。
【0032】
次に、各フィルタ11、12、21および22の基本的な構成について、Band1Txを通過帯域とするフィルタ22(第1送信フィルタ)を例に挙げて説明する。なお、以下で説明するフィルタの構成は、フィルタ22だけでなく、フィルタ11、12および21に適用されてもよい。
【0033】
図3は、フィルタ22の基本的な構成の一例を示す回路図である。
図3に示されるように、フィルタ22は、直列腕共振回路111~114と並列腕共振回路121~124とを備える。直列腕共振回路111~114および並列腕共振回路121~124の各々は、例えば、弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)共振子、つまり、IDT電極を有する弾性波共振子で構成される。
【0034】
直列腕共振回路111~114は、共通端子Port1と個別端子Port22とを結ぶ経路(直列腕)上に、共通端子Port1側からこの順に互いに直列に接続されている。また、並列腕共振回路121~124は、直列腕共振回路111~114の対応する接続点と、基準端子(グランド)とを結ぶ経路(並列腕)上に互いに並列に接続されている。これにより、フィルタ22は、4段のラダー構造を有するバンドパスフィルタを構成している。
【0035】
なお、フィルタ22が有する直列腕共振回路および並列腕共振回路の数は4個ずつには限定されず、直列腕共振回路が1個以上かつ並列腕共振回路が1個以上あればよい。つまり、フィルタ22は、1段以上のラダー構造を有するフィルタであればよい。
【0036】
また、並列腕共振回路121~124は、図示していないインダクタを介して基準端子(グランド端子)に接続されていてもよい。また、直列腕上または並列腕上もしくはその両方に、インダクタおよびキャパシタ等のインピーダンス素子が挿入または接続されていてもよい。
【0037】
また、ラダー型のフィルタ構造を構成する直列腕共振回路111~114のうち、共通端子Port1に最も近い直列腕共振回路111の共通端子Port1側のノードに並列腕共振回路が接続されていてもよい。また、個別端子Port22に最も近い直列腕共振回路114の個別端子Port22側のノードに接続された並列腕共振回路124は省略されていてもよい。
【0038】
次に、フィルタ22を構成する共振回路に用いられる弾性波共振子の基本的な構造について説明する。
【0039】
図4は、弾性波共振子の基本的な構造の一例を示す模式図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図4の(b)は
図4の(a)に示した一点鎖線における断面に対応する。
図4に示される弾性波共振子30の構造は、例えば、フィルタ22を構成する直列腕共振回路111~114および並列腕共振回路121~124、およびフィルタ11、12、21を構成する共振回路のいずれの共振回路に含まれる弾性波共振子にも適用される。なお、
図4の例示は、弾性波共振子の基本的な構造を説明するためのものであって、電極を構成する電極指の本数および長さなどは、これに限定されない。
【0040】
弾性波共振子30は、圧電体層39上にIDT電極33を形成し、保護層34で被覆して構成されている。一例として、圧電体層39は、タンタル酸リチウムまたはニオブ酸リチウムなどを含有する圧電材料で構成され、IDT電極33は、銅、アルミニウムなどの金属またはこれらの合金で構成されてもよい。保護層34は、二酸化ケイ素などを主成分とする保護材料で構成されてもよい。圧電体層39は、シリコン基板などで構成された支持基板上に形成されていてもよく、圧電体層39自体が支持基板であってもよい。
【0041】
IDT電極33は、互いに対向する1対の櫛歯状電極30a、30bからなる。櫛歯状電極30aは、互いに平行な複数の電極指31aと、複数の電極指31aを接続するバスバー電極32aとで構成される。櫛歯状電極30bは、互いに平行な複数の電極指31bと、複数の電極指31bを接続するバスバー電極23bとで構成される。電極指31a、31bは、X軸方向と直交する方向に沿って形成されている。IDT電極33にて励振される弾性波は、圧電体層39をX軸方向に伝搬する。
【0042】
IDT電極33の形状および大きさを規定するパラメータを電極パラメータと言う。電極パラメータの一例として、電極指31aまたは電極指31bの弾性波の伝搬方向における繰り返し周期である波長λ、弾性波の伝搬方向に見て電極指31a、31bが重複する長さである交叉幅L、電極指31a、31bのライン幅W、および隣り合う電極指31a、31b間のスペース幅Sが挙げられる。
【0043】
電極指31a、31bを合わせた電極指の本数の1/2である対数N、電極指31a、31bを合わせた電極指の繰り返し周期である電極ピッチ(W+S)、電極ピッチに占めるライン幅Wの割合であるデューティーW/(W+S)も、電極パラメータの一例である。
【0044】
次に、マルチプレクサにおいて発生するIMDについて、
図1のクアッドプレクサ1の構成および
図2の周波数帯域の例を用いて説明する。
【0045】
図5Aは、Band1の送信信号B1TxとBand3の送信信号B3Txとを、クアッドプレクサ1を介して1つのアンテナ素子2から同時に送信する場合に、クアッドプレクサ1において発生するIMDの例を示している。
【0046】
図5Bは、Band1の送信信号とBand3の送信信号とを、それぞれクアッドプレクサ1a、1bを介して2つのアンテナ素子2a、2bから同時に送信する場合に、クアッドプレクサ1a、1bにおいて発生するIMDの例を示している。なお、クアッドプレクサ1a、1bは、いずれもクアッドプレクサ1と同じ構成を有する。
【0047】
図5Aおよび
図5Bのいずれにおいても、実際に送信される程度の強度の送信信号B1Tx、B3Txが、直接またはアンテナ素子2a、2b間の結合を介して、クアッドプレクサ1、1a、1bの回路部分C、Ca、Cb(網掛けで示す)に集中する。そのため、送信信号B1Tx、B3TxのIMDは、回路部分C、Ca、Cbにおいて発生しやすい。
【0048】
例えば、送信信号B1Txの周波数fB1Txの2倍から送信信号B3Txの周波数fB3Txを減じた周波数2fB1Tx-fB3Txは、Band1の受信信号B1Rxの周波数fB1Rxと重複する。送信信号B1Tx、B3TxからBand1Rxに含まれるIMDが発生すると、発生したIMDによって受信信号B1Rxが妨害され、Band1での受信感度が劣化する。
【0049】
回路部分C、Ca、CbにおいてIMDを発生させやすい非線形素子は、例えば、フィルタ22を構成する共振回路のうち共通端子Port1に最も近い共振回路に含まれる弾性波共振子である。
図3の例では、フィルタ22を構成する直列腕共振回路111~114および並列腕共振回路121~124のうちで、直列腕共振回路111および並列腕共振回路121は、共通端子Port1に直接接続されていることから、共通端子Port1に最も近い共振回路である。
【0050】
共通端子Port1に最も近い共振回路は、複数の信号の電力(例えば、送信信号B1Tx、B3Txの電力)が集中しやすい。そのため、当該共振回路に含まれる弾性波共振子に非線形の応答が生じるような大きな電力が集中することによって、IMDは発生する。
【0051】
そこで、実施の形態では、フィルタ22における共通端子Port1に最も近い共振回路に含まれる弾性波共振子を、他の共振回路に含まれる弾性波共振子と比べて、圧電基板に占める単位面積あたりの消費電力(以下、単に消費電力と言う)が大きくなりにくい構造とする。なお、共通端子Port1に最も近い共振回路が複数ある場合(例えば、
図3の直列腕共振回路111および並列腕共振回路121)、共通端子Port1に最も近い共振回路のうちの少なくとも1つ(全部でもよい)に含まれる弾性波共振子に、消費電力が大きくなりにくい構造を適用する。
【0052】
図6は、実施の形態に係るフィルタの構成の一例を示す回路図である。
図6に示されるように、フィルタ22aは、
図3のフィルタ22と比べて、直列腕共振回路111aおよび並列腕共振回路121a(太線で示す)の各々が、分割共振子群で構成されている点で相違する。
【0053】
分割共振子群とは、互いに直列接続された複数の弾性波共振子からなる共振回路であって、当該複数の弾性波共振子間を接続する接続ノードには、当該複数の弾性波共振子以外の回路素子およびグランドは接続されていない構成を有するものと定義される。
【0054】
直列腕共振回路111aは、互いに直列に接続された複数の分割共振子111a1、111a2、111a3および111a4からなる分割共振子群で構成される。並列腕共振回路121aは、互いに直列に接続された複数の分割共振子121a1、121a2および121a3からなる分割共振子群で構成される。なお、分割共振子111a1~111a4および121a1~121a3の各々もIDT電極を有する弾性波共振子であり、例えば、
図4に示される構造を有する。
【0055】
一般に、互いに直列に接続された複数の分割共振子からなる分割共振子群では、単一の弾性波共振子と同じ容量を得るために、個々の分割共振子に単一の弾性波共振子の容量より大きい容量を持つ弾性波共振子が用いられる。そのため、分割共振子群で構成した共振回路は、単一の弾性波共振子で構成された同じ容量の共振回路と比べて、共振回路の圧電基板に占める面積が大きくなって単位面積あたりの消費電力が減るので、当該共振回路で発生するIMDは低減される。
【0056】
フィルタ22aの例では、分割共振子群で構成された直列腕共振回路111aおよび並列腕共振回路121aは、単一の弾性波共振子で構成された直列腕共振回路111および並列腕共振回路121と比べて、圧電基板に占める面積が大きくなって単位面積あたりの消費電力が減るので、IMDは低減される。また、共通端子Port1に最も近く、そのため信号の電力が最も集中しやすい直列腕共振回路111aおよび並列腕共振回路121aを分割共振子群で構成するので、共振回路が大型化するデメリットに対してIMDを低減する効果を最大化できる。
【0057】
図7は、実施の形態に係るフィルタの構成の他の一例を示す回路図である。
図7に示されるように、フィルタ22bは、
図3のフィルタ22と比べて、直列腕共振回路111bおよび並列腕共振回路121b(太線で示す)のIDT電極のデューティーが、直列腕共振回路111および並列腕共振回路121のIDT電極のデューティーよりそれぞれ小さく構成されている点で相違する。
【0058】
一般に、IDT電極のデューティーを小さくすると、弾性波共振子の共振特性は高周波側へシフトする。共振特性のこのような変動は、例えば、IDT電極の対数および交差幅を一定とした場合、電極指の繰り返し周期を広げることで相殺できる。そのため、IDT電極のデューティーを小さくし、かつ共振特性の変動を相殺するために電極指の繰り返し周期を広げた弾性波共振子は、弾性波共振子の圧電基板に占める面積が大きくなって単位面積あたりの消費電力が減るので、当該弾性波共振子で発生するIMDは低減される。
【0059】
フィルタ22bの例では、直列腕共振回路111bおよび並列腕共振回路121bのIDT電極のデューティーを、他の共振回路のIDT電極のデューティーより小さく構成する。直列腕共振回路111bおよび並列腕共振回路121bによれば、IDT電極のデューティーがより大きい他の共振回路と比べて、圧電基板に占める面積が大きくなって単位面積あたりの消費電力が減るので、IMDは低減される。また、共通端子Port1に最も近く、そのため信号の電力が最も集中しやすい直列腕共振回路111bおよび並列腕共振回路121bのIDT電極のデューティーを小さくするので、共振回路が大型化するデメリットに対してIMDを低減する効果を最大化できる。
【0060】
なお、上記では、フィルタ22について、共通端子Port1に最も近い共振回路のうち少なくとも1つの共振回路を、分割共振子群で構成する例(フィルタ22a)およびIDT電極のデューティーを他の共振回路のIDT電極のデューティーより小さくする例(フィルタ22b)を挙げて説明した。同様の構成は、フィルタ22には限られず、フィルタ12に適用されてもよいし、フィルタ22、12の両方に適用されてもよい。
【0061】
次に、クアッドプレクサ1において、フィルタ22に代えてフィルタ22a、22bを用いた場合のIMDの低減効果について、シミュレーションの結果に基づいて説明する。
【0062】
シミュレーションでは、フィルタ22(
図3)を用いたクアッドプレクサ1(
図5A)、および、クアッドプレクサ1のフィルタ22をフィルタ22a(
図6)およびフィルタ22b(
図7)で置き換えたクアッドプレクサ(図示せず)におけるIMDを比較した。以下では、フィルタ22、22aおよび22bを用いたクアッドプレクサを、それぞれ比較例、実施例1および実施例2として参照する。
【0063】
表1に、比較例、実施例1および実施例2において直列腕共振回路111、111a、111bに含まれる弾性波共振子および並列腕共振回路121、121a、121bに含まれる弾性波共振子に設定した電極パラメータを示す。なお、分割共振子群で構成される直列腕共振回路111aおよび並列腕共振回路121aについては、分割共振子群に含まれる分割共振子の個数を分割数として示すとともに、個々の分割共振子に設定した電極パラメータを示している。実施例1および実施例2では、網掛けで強調した電極パラメータが比較例から変更される。
【0064】
【0065】
表1に示されていない直列腕共振回路112~114および並列腕共振回路122~124の各々に含まれる弾性波共振子の電極パラメータは、比較例、実施例1および実施例2において同一とした。特に、直列腕共振回路112~114および並列腕共振回路122~124の各々に含まれる弾性波共振子のデューティーおよび分割数を、比較例、実施例1および実施例2のすべてで、それぞれ0.5および1とした。ここで、分割数が1の弾性波共振子は、分割されていない単一の弾性波共振子を意味する。
【0066】
このように、実施例1では、フィルタ22aを構成する共振回路のうち、直列腕共振回路111aおよび並列腕共振回路121aが分割共振子群によって構成されている。また、実施例2では、フィルタ22bを構成する共振回路のうち、直列腕共振回路111bおよび並列腕共振回路121bのIDT電極のデューティーが他の共振子のIDT電極のデューティーより小さい。
【0067】
比較例、実施例1および実施例2について、個別端子Port21におけるBand1の受信帯域(2110~2170MHz)におけるIMDの強度を計算した。IMDの強度の計算では、
図5Bの構成におけるクアッドプレクサ1aへの適用を想定し、フィルタ22およびフィルタ12の出力端におけるBand1およびBand3の送信信号の信号強度をそれぞれ25dBmおよび10dBmとした。
【0068】
図8は、IMDの強度の計算例を示すグラフである。
図8に見られるように、実施例1でのIMDの強度は、Band1の受信帯域の全域で、また、実施例2でのIMDの強度は、Band1の受信帯域のほとんどの部分で、比較例のIMDの強度と比べて低減(改善)している。
【0069】
この結果から、共通端子に最も近く、信号の電力が集中しやすいためにIMDが発生しやすい共振回路を分割共振子群にて構成するか、または当該共振回路のIDT電極のデューティーを他の共振回路のIDT電極のデューティーと比べて小さくすることが、IMDの低減に有効であることが確かめられた。
【0070】
(まとめ)
本発明の一態様に係るマルチプレクサは、共通端子と第1端子とを結ぶ第1経路上に配置された第1送信フィルタと、前記共通端子と第2端子とを結ぶ第2経路上に配置された第2送信フィルタと、前記共通端子と第3端子とを結ぶ第3経路上に配置された受信フィルタと、を備え、前記第1送信フィルタの通過帯域に含まれる周波数の第1送信信号と前記第2送信フィルタの通過帯域に含まれる周波数の第2送信信号とから生じる相互変調歪の周波数が前記受信フィルタの通過帯域に含まれ、前記第1送信フィルタは、前記第1経路上に配置された1以上の直列腕共振回路と、前記第1経路上の対応するノードとグランドとを結ぶ経路上に配置された1以上の並列腕共振回路と、を有し、前記第1送信フィルタの前記1以上の直列腕共振回路および前記1以上の並列腕共振回路のうち、前記共通端子に最も近い共振回路のうち少なくとも1つの共振回路は、互いに直列に接続された複数の分割共振子からなる分割共振子群によって構成されている。
【0071】
このような構成によれば、第1送信フィルタにおいて共通端子に最も近い共振回路のうち少なくとも1つの共振回路、つまり、信号の電力が集中しやすいためにIMDが発生しやすい共振回路が、分割共振子群によって構成されている。これにより、当該共振回路を単一の弾性波共振子で構成する場合と比べて、当該共振回路の圧電基板に占める面積が大きくなる。その結果、単位面積あたりの消費電力が減ることにより、当該共振回路で発生するIMDは低減される。信号の電力が最も集中しやすい共振回路を分割共振子群によって構成するので、共振回路が大型化するデメリットに対してIMDを低減する効果を最大化できる。
【0072】
また、IMDの周波数が、第1送信信号の周波数の2倍から第2送信信号の周波数を減じた周波数であるとしてもよい。
【0073】
一例として、第1送信信号および第2送信信号がLTE(登録商標)におけるBand1およびBand3のそれぞれの送信信号である場合、IMDのそのような周波数は、Band1の受信帯域の周波数と重複する。よって、そのような周波数のIMDが低減されることで、Band1の受信感度の劣化が抑制される。
【0074】
また、前記第2送信フィルタは、前記第2経路上に配置された1以上の直列腕共振回路と、前記第2経路上の対応するノードとグランドとを結ぶ経路上に配置された1以上の並列腕共振回路と、を有し、前記第2送信フィルタの前記1以上の直列腕共振回路および前記1以上の並列腕共振回路のうち、前記共通端子に最も近い共振回路のうち少なくとも1つの共振回路は、互いに直列に接続された複数の分割共振子からなる分割共振子群によって構成されていてもよい。
【0075】
このような構成によれば、第1送信フィルタについて説明したIMDの低減効果と同様の効果を、第2送信フィルタにおいても得ることができる。
【0076】
また、本発明の一態様に係るマルチプレクサは、共通端子と第1端子とを結ぶ第1経路上に配置された第1送信フィルタと、前記共通端子と第2端子とを結ぶ第2経路上に配置された第2送信フィルタと、前記共通端子と第3端子とを結ぶ第3経路上に配置された受信フィルタと、を備え、前記第1送信フィルタの通過帯域に含まれる周波数の第1送信信号と前記第2送信フィルタの通過帯域に含まれる周波数の第2送信信号とから生じる相互変調歪の周波数が前記受信フィルタの通過帯域に含まれ、前記第1送信フィルタは、前記第1経路上に配置された1以上の直列腕共振回路と、前記第1経路上の対応するノードとグランドとを結ぶ経路上に配置された1以上の並列腕共振回路と、を有し、前記第1送信フィルタの前記1以上の直列腕共振回路および前記1以上の並列腕共振回路の各々は、IDT電極を有する弾性波共振子で構成され、前記第1送信フィルタの前記1以上の直列腕共振回路および前記1以上の並列腕共振回路のうち前記共通端子に最も近い共振回路のうち少なくとも1つの共振回路のIDT電極のデューティーは、前記第1送信フィルタの他のいずれの共振回路のIDT電極のデューティーより小さい。
【0077】
このような構成によれば、第1送信フィルタにおいて共通端子に最も近い共振回路のうち少なくとも1つの共振回路、つまり、信号の電力が集中しやすいためにIMDが発生しやすい共振回路のIDT電極のデューティーが、他の共振回路のIDT電極のデューティーより小さく構成されている。これにより、当該共振回路を他の共振回路と同じIDT電極のデューティーで構成する場合と比べて、当該共振回路の電極指の繰り返し周期を大きくできるので、当該共振回路の圧電基板に占める面積が大きくなる。その結果、単位面積あたりの消費電力が減ることにより、当該共振回路で発生するIMDは低減される。信号の電力が最も集中しやすい共振回路のIDT電極のデューティーを小さくするので、共振回路が大型化するデメリットに対してIMDを低減する効果を最大化できる。
【0078】
また、IMDの周波数が、第1送信信号の周波数の2倍から第2送信信号の周波数を減じた周波数であるとしてもよい。
【0079】
一例として、第1送信信号および第2送信信号がLTE(登録商標)におけるBand1およびBand3のそれぞれの送信信号である場合、IMDのそのような周波数は、Band1の受信帯域の周波数と重複する。よって、そのような周波数のIMDが低減されることで、Band1の受信感度の劣化が抑制される。
【0080】
また、前記第2送信フィルタは、前記第2経路上に配置された1以上の直列腕共振回路と、前記第2経路上の対応するノードとグランドとを結ぶ経路上に配置された1以上の並列腕共振回路と、を有し、前記第2送信フィルタの前記1以上の直列腕共振回路および前記1以上の並列腕共振回路の各々は、IDT電極を有する弾性波共振子で構成され、前記第2送信フィルタの前記1以上の直列腕共振回路および前記1以上の並列腕共振回路のうち前記共通端子に最も近い共振回路のうち少なくとも1つの共振回路のIDT電極のデューティーは、前記第2送信フィルタの他のいずれの共振回路のIDT電極のデューティーより小さくてもよい。
【0081】
このような構成によれば、第1送信フィルタについて説明したIMDの低減効果と同様の効果を、第2送信フィルタにおいても得ることができる。
【0082】
また、前記第1送信フィルタおよび前記第2送信フィルタのうち、一方のフィルタの通過帯域は1920MHz以上1980MHz以下であり、他方のフィルタの通過帯域は1710MHz以上1785MHz以下であり、前記受信フィルタの通過帯域は、2110MHz以上2200MHz以下であってもよい。
【0083】
このような構成によれば、第1フィルタの通過帯域および第2フィルタの通過帯域は、Band1の送信帯域Band1TxおよびBand3の送信帯域Band3Txの一方および他方である。また、受信フィルタの通過帯域は、Band1の受信帯域Band1Rxである。つまり、第1送信フィルタおよび第2送信フィルタはBand1の送信フィルタおよびBand3の送信フィルタの一方および他方として用いられ、受信フィルタはBand1の受信フィルタとして用いられる。
【0084】
ここで、Band1の送信信号の周波数の2倍からBand3の送信信号の周波数を減じた周波数は、Band1の受信信号の周波数と重複する。そのため、Band1の送信信号とBand3の送信信号とを同時に送信する場合、Band1の送信信号とBand3の送信信号とが互いに妨害波となって高いレベルのIMDがBand1の受信帯域Band1Rx内に発生する。
【0085】
そこで、第1送信フィルタまたは第1送信フィルタおよび第2送信フィルタの両方にIMDを低減する対策を施したフィルタを用いる。これにより、Band1の受信帯域Band1Rx内に生じるIMDを低減し、例えば、Band1の受信感度の劣化を抑制することができる。
【0086】
以上、本発明の実施の形態に係るマルチプレクサについて説明したが、本発明は、個々の実施の形態には限定されない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の一つ又は複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、低雑音性に優れたマルチプレクサとして、携帯電話などの通信機器に広く利用できる。
【符号の説明】
【0088】
1、1a、1b クアッドプレクサ
2、2a、2b アンテナ素子
10、20 デュプレクサ
11 フィルタ
12 フィルタ(第2送信フィルタ)
21 フィルタ(受信フィルタ)
22、22a、22b フィルタ(第1送信フィルタ)
30 弾性波共振子
30a、30b 櫛歯状電極
31a、31b 電極指
32a、32b バスバー電極
33 IDT電極
34 保護層
39 圧電体層
111、111a、111b、112~114 直列腕共振回路
111a1~111a4、121a1~121a3 分割共振子
121、121a、121b、122~124 並列腕共振回路