(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】車速制限装置
(51)【国際特許分類】
F02D 29/02 20060101AFI20221004BHJP
B60W 30/18 20120101ALI20221004BHJP
B60W 40/02 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
F02D29/02 311F
B60W30/18
B60W40/02
(21)【出願番号】P 2019158370
(22)【出願日】2019-08-30
【審査請求日】2021-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128509
【氏名又は名称】絹谷 晴久
(74)【代理人】
【識別番号】100119356
【氏名又は名称】柱山 啓之
(72)【発明者】
【氏名】長田 英樹
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-107602(JP,A)
【文献】特開2009-120111(JP,A)
【文献】特開2005-128790(JP,A)
【文献】特開2012-167560(JP,A)
【文献】特開2010-265903(JP,A)
【文献】国際公開第2014/002207(WO,A1)
【文献】特開2018-122818(JP,A)
【文献】特許第5278134(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 29/02
B60W 30/18
B60W 40/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の車速を検出する車速検出器と、
前記車速検出器で検出された前記車速が制限車速以上か否かを判定し、前記車速検出器で検出された前記車速が前記制限車速以上の場合に、前記自車両に搭載された機関の出力を低下させる機関出力低下装置と、
キーオフ操作に応じて、前記車速検出器による前記車速の検出を停止させるキーオフ信号を生成するキーオフ信号生成装置と、
を備える車速制限装置であって、
前記車速検出器で検出された前記車速を基に前記自車両が走行中か否かを判定し、前記自車両が走行中の場合に、前記キーオフ信号生成装置による前記キーオフ信号の生成を禁止するキーオフ信号生成禁止装置を更に備える
事を特徴とする車速制限装置。
【請求項2】
前記自車両の車位置を測定する車位置測定装置を更に備え、
前記キーオフ信号生成禁止装置は、前記車位置測定装置で測定された前記車位置を基に前記自車両が高速道路上に位置するか否かを更に判定し、前記自車両が走行中の場合でも、前記自車両が高速道路上に位置しない場合は、前記キーオフ信号生成装置による前記キーオフ信号の生成を許可する
請求項1に記載の車速制限装置。
【請求項3】
前記キーオフ信号生成禁止装置は、前記車速検出器で検出された前記車速が前記制限車速以上と成る状態が所定時間内で連続するか否かを更に判定し、前記自車両が走行中で、前記自車両が高速道路上に位置する場合でも、前記車速検出器で検出された前記車速が前記制限車速以上と成る状態が所定時間内で連続しない場合は、前記キーオフ信号生成装置による前記キーオフ信号の生成を許可する
請求項2に記載の車速制限装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
自車両の車速を制限する車速制限装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な車両には、不慮の事故を防止すべく、車速を制限する車速制限装置が搭載されている。車速制限装置は、車速を検出すると共に、車速が制限車速以上か否かを判定し、車速が制限車速以上の場合に、車両に搭載された機関の出力を低下させる事によって車速を制限している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2014/2207号
【文献】特開2018-122818号公報
【文献】特許第5278134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車速は、車速検出器によって検出されるが、車速検出器による車速の検出は、キーオフ操作に応じて生成されるキーオフ信号を基に停止される。そのため、車両が走行している最中にキーオフ操作を行うと、車速検出器による車速の検出が停止し、車速制限装置による車速の制限が無効化されてしまう可能性がある。
【0005】
以上の事情に鑑み、車両の走行中にキーオフ操作で車速の制限を無効化する事が出来ない車速制限装置を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
自車両の車速を検出する車速検出器と、前記車速検出器で検出された前記車速が制限車速以上か否かを判定し、前記車速検出器で検出された前記車速が前記制限車速以上の場合に、前記自車両に搭載された機関の出力を低下させる機関出力低下装置と、キーオフ操作に応じて、前記車速検出器による前記車速の検出を停止させるキーオフ信号を生成するキーオフ信号生成装置と、を備える車速制限装置であって、前記車速検出器で検出された前記車速を基に前記自車両が走行中か否かを判定し、前記自車両が走行中の場合に、前記キーオフ信号生成装置による前記キーオフ信号の生成を禁止するキーオフ信号生成禁止装置を更に備える車速制限装置を提供する。
【0007】
前記自車両の車位置を測定する車位置測定装置を更に備え、前記キーオフ信号生成禁止装置は、前記車位置測定装置で測定された前記車位置を基に前記自車両が高速道路上に位置するか否かを更に判定し、前記自車両が走行中の場合でも、前記自車両が高速道路上に位置しない場合は、前記キーオフ信号生成装置による前記キーオフ信号の生成を許可する事が望ましい。
【0008】
前記キーオフ信号生成禁止装置は、前記車速検出器で検出された前記車速が前記制限車速以上と成る状態が所定時間内で連続するか否かを更に判定し、前記自車両が走行中で、前記自車両が高速道路上に位置する場合でも、前記車速検出器で検出された前記車速が前記制限車速以上と成る状態が所定時間内で連続しない場合は、前記キーオフ信号生成装置による前記キーオフ信号の生成を許可する事が望ましい。
【発明の効果】
【0009】
車両の走行中にキーオフ操作で車速の制限を無効化する事が出来ない車速制限装置を提供する事が出来る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】車速制限装置の動作(車速制限動作)を説明する図である。
【
図3】車速制限装置の動作(キーオフ操作制限動作)を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態を添付図面に順って説明する。
【0012】
図1に示す様に、車速制限装置100は、自車両101の車速を制限するものであって、車速検出器102と、機関出力低下装置103と、キーオフ信号生成装置104と、キーオフ信号生成禁止装置105と、を備える。
【0013】
車速検出器102は、車速を検出するものである。車速検出器102は、例えば、車軸の回転数を基に車速を検出するものであっても、後述の車位置測定装置106で測定された車位置を基に車速を検出するものであっても良い。
【0014】
機関出力低下装置103は、車速検出器102で検出された車速が制限車速以上か否かを判定し、車速検出器102で検出された車速が制限車速以上の場合に、自車両101に搭載された機関107の出力を低下させるものである。
【0015】
機関107は、例えば、エンジンやモータである。機関107がエンジンである場合は、エンジンへの燃料の供給を減少させる事によって機関107の出力を低下させる。機関107がモータである場合は、モータへの電力の供給を減少させる事によって機関107の出力を低下させる。
【0016】
キーオフ信号生成装置104は、キーオフ操作に応じて、車速検出器102による車速の検出を停止させるキーオフ信号を生成するものである。キーオフ操作は、例えば、イグニッションキーやイグニッションスイッチをオンからオフに切り換える操作である。
【0017】
キーオフ信号が生成されると、車速検出器102による車速の検出が停止される他、機関107の主要な動作に関与しない又は関与が少ない種々の機器の動作も停止されるが、一般的に、自車両101が走行中の場合は、キーオフ信号が生成されても、機関107や機関107の主要な動作に関与する機器は直ぐに停止されない。
【0018】
自車両101が走行中に機関107や機関107の主要な動作に関与する機器が直ぐに停止されると、急減速に伴う重大な事故が発生する虞が有るので、少なくとも自車両101が安全に停車される迄は、キーオフ信号が生成されても、機関107や機関107の主要な動作に関与する機器は直ぐに停止されず、アクセル操作やブレーキ操作を行う事が出来る。
【0019】
従来の車速制限装置では、自車両101が走行中の意図的なキーオフ操作で車速検出器102による車速の検出を停止させる事によって、車速の制限を無効化する事が出来たが、制限車速以上での走行は大きな危険を伴うので、意図的なキーオフ操作で車速の制限を無効化する事が出来ない車速制限装置が望まれている。更に、種々の機器の動作が停止されると、他のシステムへの悪影響も懸念されるので、意図的なキーオフ操作で種々の機器の動作が停止される事も好ましくない。
【0020】
以上の事情に鑑み、車速制限装置100は、意図的なキーオフ操作で車速の制限を無効化する事が出来ない様に、キーオフ信号生成禁止装置105を備える。キーオフ信号生成禁止装置105は、車速検出器102で検出された車速を基に自車両101が走行中か否かを判定し、自車両101が走行中の場合に、キーオフ信号生成装置104によるキーオフ信号の生成を禁止するものである。
【0021】
機関出力低下装置103とキーオフ信号生成装置104とキーオフ信号生成禁止装置105は、一体であっても、別体であっても良い。
図1では、電子制御装置108によって一体で実現される。
【0022】
車速制限装置100では、キーオフ信号生成禁止装置105によって、自車両101が走行中の場合に、キーオフ信号生成装置104によるキーオフ信号の生成を禁止する事が出来るので、意図的なキーオフ操作で車速の制限を無効化する事が出来ず、適切な車速の制限を行う事が出来る。
【0023】
所で、自車両101が走行中の場合でも、自車両101が一般道路上を走行中の場合は、車速が制限車速以上と成る事は稀である。即ち、悪意の有る者が意図的なキーオフ操作で車速の制限を無効化しようとするのは、自車両が高速道路上を走行中の場合が圧倒的多数である。
【0024】
従って、車速制限装置100は、車位置測定装置106を更に備える。車位置測定装置106は、自車両の車位置を測定するものである。車位置測定装置106は、例えば、衛星測位システムの受信機である。車位置測定装置106は、車速検出器102と共に電子制御装置108に接続される。
【0025】
加えて、キーオフ信号生成禁止装置105は、車位置測定装置106で測定された車位置を基に自車両101が高速道路上に位置するか否かを更に判定し、自車両101が走行中の場合でも、自車両101が高速道路上に位置しない場合は、キーオフ信号生成装置104によるキーオフ信号の生成を許可する。
【0026】
従って、車速制限装置100では、自車両101が一般道路上を走行中の場合は、キーオフ信号生成禁止装置105によって、キーオフ信号生成装置104によるキーオフ信号の生成を許可するので、緊急時にキーオフ操作を有効に機能させる事が出来る。
【0027】
但し、自車両101が高速道路上を走行中の場合でも、緊急時にキーオフ操作を有効に機能させる必要が有るので、キーオフ信号生成禁止装置105は、車速検出器102で検出された車速が制限車速以上と成る状態が所定時間内で連続するか否かを更に判定し、自車両101が走行中で、自車両101が高速道路上に位置する場合でも、車速検出器102で検出された車速が制限車速以上と成る状態が所定時間内で連続しない場合は、キーオフ信号生成装置104によるキーオフ信号の生成を許可する。
【0028】
車速検出器102で検出された車速が制限車速以上と成る状態が所定時間内で連続しない場合は、運転者が車速の制限を意図的に突破しようと考えている可能性が低く、緊急時に自車両101を安全に停止させようとしていると考えられるので、自車両101が高速道路上を走行中の場合でも、キーオフ操作を有効に機能させる。所定時間及び所定回数は、運転者が車速の制限を意図的に突破しようと考えているか否かを特定する事が出来る様に、統計的に決定される。
【0029】
従って、車速制限装置100では、キーオフ操作を有効に機能させる必要が有る場合に、キーオフ信号生成装置104によるキーオフ信号の生成を許可するので、利便性や安全性を低下させずに、意図的なキーオフ操作で車速の制限を無効化しようとする者の行動を阻止する事が出来る。
【0030】
車速制限装置100は、以下の手順で動作する。
【0031】
図2に示す様に、ステップS101では、機関出力低下装置103が車速検出器102で検出された車速が制限車速以上か否かを判定し、車速検出器102で検出された車速が制限車速以上の場合にステップS102に進み、車速検出器102で検出された車速が制限車速未満の場合にステップS103に進む。ステップS102では、機関出力低下装置103が機関107の出力を低下させる。ステップS103では、機関出力低下装置103による機関107の出力の低下を解除する。
【0032】
車速制限装置100では、以上の動作によって車速が制限されるが、当該動作が実行されている間でも、キーオフ信号生成装置104が、キーオフ操作に応じて、車速検出器102による車速の検出を停止させるキーオフ信号を生成するので、意図的なキーオフ操作で車速検出器102による車速の検出を停止させると、ステップS101での判定が上手く行かず、車速の制限が無効化される。
【0033】
従って、
図3に示す様に、ステップS201では、キーオフ信号生成禁止装置105が車速検出器102で検出された車速を基に自車両101が走行中か否かを判定し、自車両101が走行中の場合にステップS202に進み、自車両101が停車中の場合にステップS203に進む。
【0034】
ステップS202では、キーオフ信号生成禁止装置105が車位置測定装置106で測定された車位置を基に自車両101が高速道路上に位置するか否かを更に判定し、自車両101が高速道路上に位置する場合はステップS204に進み、自車両101が高速道路上に位置しない場合はステップS203に進む。
【0035】
ステップS203では、キーオフ信号生成禁止装置105がキーオフ信号生成装置104によるキーオフ信号の生成を許可する。
【0036】
ステップS204では、キーオフ信号生成禁止装置105が車速検出器102で検出された車速が制限車速以上と成る状態が所定時間内で連続するか否かを更に判定し、車速検出器102で検出された車速が制限車速以上と成る状態が所定時間内で連続する場合はステップS205に進み、車速検出器102で検出された車速が制限車速以上と成る状態が所定時間内で連続しない場合はステップS203に進む。
【0037】
ステップS205では、キーオフ信号生成禁止装置105がキーオフ信号生成装置104によるキーオフ信号の生成を禁止する。
【0038】
尚、ステップS202及びS204の順序は問われず、またステップS202及びS204の一方又は両方は省略されても良い。
【0039】
以上の動作によって、車両の走行中のキーオフ操作に基づくキーオフ信号の生成が無効化されるので、車速制限装置100では、車両の走行中にキーオフ操作で車速の制限を無効化する事が出来ない。
【符号の説明】
【0040】
100 車速制限装置
101 自車両
102 車速検出器
103 機関出力低下装置
104 キーオフ信号生成装置
105 キーオフ信号生成禁止装置
106 車位置測定装置
107 機関
108 電子制御装置