(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】エアバッグ用基布
(51)【国際特許分類】
B60R 21/235 20060101AFI20221004BHJP
B60R 21/232 20110101ALI20221004BHJP
D03D 1/02 20060101ALI20221004BHJP
D03D 1/04 20060101ALI20221004BHJP
D03D 11/00 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
B60R21/235
B60R21/232
D03D1/02
D03D1/04
D03D11/00 Z
(21)【出願番号】P 2019177699
(22)【出願日】2019-09-27
【審査請求日】2021-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】柿本 憲志
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-064283(JP,A)
【文献】特表2009-536125(JP,A)
【文献】特開2007-137259(JP,A)
【文献】特開2017-124530(JP,A)
【文献】特開2006-274452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/235
B60R 21/232
D03D 1/02
D03D 1/04
D03D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
経糸と緯糸とを織り込んで、2層の織物層とした袋部と1層の織物層とした閉じ部とを設ける袋織りにより形成されるとともに、位置決め孔を有してなるエアバッグ用基布において、
前記位置決め孔が、周縁を前記閉じ部により形成され、該閉じ部の内側を、前記経糸と緯糸とを織り込まない非織込部により、形成されていることを特徴とするエアバッグ用基布。
【請求項2】
前記位置決め孔が、前記非織込部の領域を円形として、前記非織込部の周縁に前記閉じ部を配設させて、形成されていることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ用基布。
【請求項3】
前記エアバッグ用基布が、車両のサイドウインドの上縁側に配設されるとともに、前記サイドウインドの車体側部材に取り付けるための取付タブ、を縫合により取り付けて構成されるカーテンエアバッグとして使用され、
前記位置決め孔が、前記取付タブの縫合時における前記エアバッグ用基布に対する前記取付タブの取付位置に対応して、配設されていることを特徴とする請求項1若しくは請求項2に記載のエアバッグ用基布。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経糸と緯糸とを織り込んで、2層の織物層とした袋部と1層の織物層とした閉じ部とを設ける袋織りにより形成されるとともに、位置決め孔を有してなるエアバッグ用基布に関し、車両に搭載されるカーテンエアバッグ等に使用されるエアバッグ用基布に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カーテンエアバッグとして使用されるエアバッグ用基布では、経糸と緯糸とを織り込んでなる袋織りにより形成されて、2層の織物層からなって、膨張用ガスを流入させて膨張させる部位となる袋部と、袋部の周囲に配置されて、1層の織物層とした閉じ部と、を備えて構成されるものがあった(例えば、特許文献1参照)。さらに、このエアバッグ用基布では、車両のサイドウインドを覆うカーテンエアバッグとして使用できるように、車両のサイドウインドの上縁側の車体側部材に取り付けるための取付タブを取り付けていた。そして、取付タブを、工業用ミシン等を使用する縫合により取り付ける際の位置決めのために、取付タブの取付位置の周囲には、位置決め孔が配設されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような位置決め孔は、従来、多数のエアバッグ用基布を並設させて袋織りで形成した後の裁断に使用するレーザー加工機により、形成されていた。なお、エアバッグ用基布を袋織りで形成する際には、多数のエアバッグ用基布を形成して、レーザー加工機のレーザー加工により、所定形状に、各エアバッグ用基布を裁断していた。
【0005】
しかし、レーザー加工による孔開け加工により位置決め孔を形成する場合には、位置決め孔の配置位置に、周囲に無用の穴を明けずに、曲線状の丸穴の外周縁に沿うように、円弧状にレーザー光を当てて行うことから、時間がかかり、さらに、1枚のエアバッグ用基布自体に設ける位置決め孔の数も、多いことから、工数がかかり、袋織りによって形成されるエアバッグ用基布には、簡便に、位置決め孔を配設できなかった。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、簡便に、位置決め孔を配設できるエアバッグ用基布を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るエアバッグ用基布では、経糸と緯糸とを織り込んで、2層の織物層とした袋部と1層の織物層とした閉じ部とを設ける袋織りにより形成されるとともに、位置決め孔を有してなるエアバッグ用基布において、
前記位置決め孔が、周縁を前記閉じ部により形成され、該閉じ部の内側を、前記経糸と緯糸とを織り込まない非織込部により、形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るエアバッグ用基布では、位置決め孔が、エアバッグ用基布を製造する袋織りの際に、袋織りで形成する閉じ部を、位置決め孔の外周縁を囲うように、形成し、そして、位置決め孔の内側領域において、袋織りで使用する経糸と緯糸とを織り込まない非織込部を設けて、形成されている。このような位置決め孔では、例えば、位置決めピンを挿入させる際、単に経糸と緯糸とが交差しているような非織込部に位置決めピンを挿入させれば、位置決め孔の外周縁の閉じ部側に、非織込部の領域内の経糸と緯糸とをずらすだけで、容易に、位置決めピンを挿入させることができる。そして、このような位置決め孔は、レーザー加工等の孔開け加工をせずに、エアバッグ用基布の袋織り時、単に、閉じ部と非織込部とを形成するだけで、簡単に形成できる。
【0009】
したがって、本発明に係るエアバッグ用基布では、別途、孔開け加工を行わずに、簡便に、位置決め孔を配設することができる。
【0010】
そして、本発明に係るエアバッグ用基布では、前記位置決め孔が、前記非織込部の領域を円形として、前記非織込部の周縁に前記閉じ部を配設させて、形成されていることが望ましい。
【0011】
このような構成では、位置決め孔に、断面円形の位置決めピン等を挿入する際、挿入時の中心側から外周縁側に、均等の略放射状に、非織込部の経糸と緯糸とをずらし易く、すなわち、挿入する位置決めピンに対応して、安定して、位置決め孔の中心を配置させることができ、エアバッグ用基布を、位置決め孔の位置で位置規制する所定の配置位置に、配置させることができて、その後のエアバッグ用基布に対する縫合作業等を、精度良く、行うことができる。
【0012】
そして、本発明に係るエアバッグ用基布では、車両のサイドウインドの上縁側に配設されるとともに、前記サイドウインドの車体側部材に取り付けるための取付タブ、を縫合により取り付けて構成されるカーテンエアバッグとして使用される場合には、
前記位置決め孔が、前記取付タブの縫合時における前記エアバッグ用基布に対する前記取付タブの取付位置に対応して、配設されていることが望ましい。
【0013】
このような構成では、袋織りからなるエアバッグ用基布を、取付タブを取り付けてカーテンエアバッグとして使用する場合、多数の取付タブを取り付けることとなるが、取り付ける取付タブの取付位置に対応して、位置決め孔が配設されていることから、各位置決め孔に対して、対応する位置決めピンを挿入させて、エアバッグ用基布を縫合作業用の作業台上に載せれば、各取付タブの取付位置を、精度良く、作業台上に配置させることができることから、その後、円滑に、各取付タブをエアバッグ用基布の所定取付位置に縫合できて、カーテンエアバッグを容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態のエアバッグ用基布からなるカーテンエアバッグを使用したカーテンエアバッグ装置の車内側から見た車両への搭載状態を示す概略正面図である。
【
図2】実施形態のエアバッグ用基布からなるカーテンエアバッグを平らに展開した状態の正面図である。
【
図4】
図3のIV-IV部位を示す拡大概略断面図である。
【
図5】実施形態の位置決め孔に、位置決めピンを挿入する状態を順に示す正面図である。
【
図6】実施形態の位置決め孔に、位置決めピンを挿入する状態を示す断面図である。
【
図7】実施形態のエアバッグ用基布に取付タブを取り付けてカーテンエアバッグを製造する作業を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態のエアバッグ用基布20は、
図1に示すカーテンエアバッグ装置Sのカーテンエアバッグ15に使用される。実施形態のカーテンエアバッグ装置Sは、前後2つのサイドウインドW1,W2を有した二列シートタイプの車両Vに搭載されている。このカーテンエアバッグ装置Sは、カーテンエアバッグ15と、インフレーター9と、エアバッグカバー6と、を備えて構成されている。エアバッグ15は、車両Vの車内側におけるサイドウインドW1,W2の上縁WU側において、フロントピラー部FPの下縁側から、ルーフサイドレール部RRの下縁側を経て、リヤピラー部RPの上方の領域まで、折り畳まれて収納されている。
【0016】
なお、エアバッグカバー6は、フロントピラー部FPに配置されるフロントピラーガーニッシュ2と、ルーフサイドレール部RRに配置されるルーフヘッドライニング3と、のそれぞれの下縁2a,3aから、構成されて、展開膨張時のエアバッグ15を車内側下方へ突出可能とするために、エアバッグ15に押されて車内側に開き可能に、構成されている。
【0017】
インフレーター9は、エアバッグ15に膨張用ガスを供給するもので、略円柱状のシリンダタイプとして、先端側に、膨張用ガスを吐出可能な図示しないガス吐出口を、配設させて、ガス吐出口付近を含めた先端側を、エアバッグ15の後述する接続口部24に挿入させ、接続口部24の外周側に配置されるクランプ10を用いて、エアバッグ15に対して連結されている。このインフレーター9は、取付ブラケット11を利用して、車両Vのボディ1側のインナパネル1aの後サイドウインドW2の上方となる位置に、取り付けられている。また、インフレーター9は、図示しないリード線を介して、車両Vの図示しない制御装置と電気的に接続されており、制御装置が、車両Vの側面衝突や斜突、ロールオーバーを検知した際に、制御装置からの作動信号を入力させて、作動する。
【0018】
エアバッグ15は、
図2,3に示すように、ポリエステルやポリアミド等の糸を使用した袋織りにより形成されるエアバッグ用基布20と、エアバッグ用基布20に取り付けられる取付タブ44(A~E)と、エアバッグ用基布20の後述する接続口部24内に配設されるインナチューブ48と、を備えて構成されている。
【0019】
エアバッグ用基布20は、膨張用ガスを流入させて車内側壁部22aと車外側壁部22bとを離すように膨らみ可能なガス流入部22と、膨張用ガスを流入させない非流入部30と、を備えて構成されている。
【0020】
ガス流入部22は、経糸VSと緯糸HS(
図4,5参照)とを織り込む袋織りによる織物層51aを、二層とするように織り込んでなる袋部51から構成されている。そして、実施形態のガス流入部22は、
図1,2に示すように、サイドウインドW1,W2の車内側を覆うように、折畳状態から展開膨張する展開膨張部25と、エアバッグ用基布20の上縁20aの前後方向の中央付近から上方へ突出して、インフレーター9と接続される接続口部24と、を備えて構成されている。展開膨張部25は、エアバッグ用基布20の上縁20aに、接続口部24からの膨張用ガスを前後両側に供給可能なガス供給路部26、を配設させるとともに、前サイドウインドW1の車内側を覆い可能な前膨張部27、後サイドウインドW2からリヤピラー部RPの車内側を覆い可能な後膨張部28、及び、中間ピラー部CPから後サイドウインドW2の前部側の車内側を覆い可能な中間膨張部29、を配設させて構成されている。
【0021】
非流入部30は、ガス流入部22の周縁に配置される境界部31と、境界部31からガス流入部22内に進入して、ガス供給路部26の下方側において、前膨張部27、後膨張部28、及び、中間膨張部29を区画する区画部33と、ガス流入部22内に配設される厚さ規制部35,36と、を備えて構成されている。これらの境界部31、区画部33、及び、厚さ規制部35,36は、経糸VSと緯糸HSとを織り込んでなる袋織りの織物層を1層とするように織り込まれた閉じ部54から形成されている(
図4参照)。
【0022】
さらに、エアバッグ用基布20の非流入部30としては、ガス流入部22の周縁の境界部31から外縁側に延びる周縁部38、を備えて構成されている。周縁部38は、エアバッグ用基布20の周囲の上縁20a、下縁20b、前縁20c、及び、後縁20dに配設されて、これらの縁20a,20b,20c,20dを構成している。周縁部38は、経糸VSと緯糸HSとを織り込む袋織りによる織物層52aを、二層とするように織り込んでなる端縁部52から構成されている(
図4参照)。
【0023】
なお、実施形態では、経糸VSと緯糸HSとに、350dtexの繊度のポリアミド製の原糸を使用して、経糸VSの1インチ当たりの打ち込み本数を135本とし、緯糸HSの1インチ当たりの打ち込み本数を121本とし、そして、閉じ部54は、1×1組織等の平織りから形成され、袋部51と周縁部38との各織物層51a,52aは、1×2組織等の斜文織りとしている。なお、後述する位置決め孔42の閉じ部56は、閉じ部54と同様に、1×1組織等の平織りから形成されている。
【0024】
インナチューブ48は、ポリアミド等の糸を使用した平織り等により形成された布材からなり、三叉状に分岐されるように形成されて、接続口部24内に配設されている。接続口部24内に配設されたインナチューブ48は、接続口部24の開口24a側から接続口部24内に流入する膨張用ガスを、下端側の前後の開口48a,48bからガス供給路部26の前端26aの前方や後端26b側に流して、前膨張部27と後膨張部28とに、流すこととなる。
【0025】
取付タブ44(A~E)は、ポリアミド等の糸を使用した平織り等により形成された布材からなり、エアバッグ用基布20の前縁20c側と上縁20a側との周縁部38に、縫合糸64を使用する縫合により、取り付けられている。取付タブ44は、エアバッグ用基布20に取り付けられる取付基部46と、取付基部46から延びる本体45と、を備えて構成され、本体45には、エアバッグ15をサイドウインドW1,W2の上縁WU側に取り付ける取付ボルト等の取付具8を挿通させる取付孔45aが、配設されている。なお、本体45は、板金等の当板7を配設されて、取付具8により、当板7とともに、サイドウインドW1,W2の上縁WU側のインナパネル1aに取り付けられることとなる。
【0026】
また、前端側の取付タブ44Aは、エアバッグ用基布20の前縁20c側から、本体45を前方に長く延ばして、膨張完了時のエアバッグ15の下縁側にテンションを発生させるためのテンションベルトとして使用できるように、配設され、他の取付タブ44B,44C,44D,44Eは、エアバッグ用基布20の上縁20a側から、本体45を上方に延ばすように、配設されている。
【0027】
そして、エアバッグ用基布20には、各取付タブ44(A~E)の取付位置、詳しくは、取付基部46の取付位置40(A~E)、に対応して、縫合時の位置決め孔42が、配設されている。取付タブ44Aの取付位置40Aに配設される位置決め孔42は、取付基部46Aの中央に配置された位置決め孔46aに対応して、配設され、他の取付タブ44(B~E)の取付位置40(B~E)に配設される位置決め孔42は、取付位置40(B~E)の前後両側に配設されている。
【0028】
そして、各位置決め孔42は、
図4,5に示すように、周縁を閉じ部56により形成され、閉じ部56の内側を、経糸VSと緯糸HSとを単に交差させるだけで織り込まない非織込部58により、形成されている。また、実施形態の位置決め孔42は、非織込部55の領域を円形として、周縁に閉じ部56を配設させて、形成されている。位置決め孔42は、エアバッグ用基布20の外周縁における膨張用ガスを流入させない非流入部30の周縁部38に配設されており、周縁部38が、2層の織物層52aを配設させて構成されていることから、位置決め孔42付近では、
図4に示すように、経糸VSと緯糸HSとを織り込んだ一層の織物層とした円環状の閉じ部56の周囲に、2層の織物層52aを設けた端縁部52が、配設され、閉じ部56の内側に、経糸VSと緯糸HSとを単に格子状に配設させただけの円形の非織込部58を、配設させて構成されている。
【0029】
なお、実施形態の場合、位置決め孔42における非織込部58の内径寸法d0は、約6mmとし、後述する位置決めピン61の外径寸法D0は、約5mmとしている。
【0030】
このエアバッグ用基布20に取付タブ44を取り付ける際には、まず、各位置決め孔42に、縫合作業時に使用する作業台60に設けられた位置決めピン61を挿入させる。その際、
図5のA,Bに示すように、位置決めピン61の先細り状のテーパ部61bの先端61aが、経糸VSと緯糸HSとの格子状の隙間に進入し、さらに、押し込まれる先端61aの周囲の経糸VSと緯糸HSとが、非織込部58の外周縁の閉じ部56側に押し付けられて、
図5のCや
図6のA,Bに示すように、位置決めピン61の本体61cが、押し付けられた経糸VSと緯糸HSとを介在させて、閉じ部56の内周側に接するように、配置されて、位置決め孔42への位置決めピン61の挿入作業が完了する。そして、他の位置決め孔42にも、対応する位置決めピン61を挿入させて、エアバッグ用基布20を作業台60上にセットすれば、作業台60上で、各取付タブ44(A~E)の取付位置40(A~E)を、精度よく配置させることができて、その後、各取付タブ44(A~E)の取付基部46を対応する取付位置40(A~E)に配置し、そして、
図7のA,Bに示すように、所定の縫合糸64を使用した工業用ミシンによる自動縫製により、各取付基部46をエアバッグ用基布20に縫合すれば、各取付タブ44をエアバッグ用基布20に取り付けてなるカーテンエアバッグ15を製造することができる。
【0031】
その後、接続口部24にインナチューブ48を配設し、各取付タブ44に当板7を取り付けて、カーテンエアバッグ15を折り畳み、そして、接続口部24に、取付ブラケット11を組み付けたインフレーター9を挿入させて、エアバッグ組付体を形成する。このように形成したエアバッグ組付体では、各当板7を、取付タブ44とともに、取付具8を使用して、インナパネル1aに取り付け、さらに、インフレーター9に組み付けた取付ブラケット11をインナパネル1aにボルト12止めし、そして、インフレーター9に図示しない制御装置から延びる作動用のリード線を結線すれば、車両Vに取り付けることができて、カーテンエアバッグ装置Sを車両Vに搭載することができる(
図1参照)。
【0032】
カーテンエアバッグ装置Sの車両Vへの搭載後において、車両Vの側面衝突時、斜突時、もしくは、ロールオーバー時に、制御装置からの作動信号を受けてインフレーター9が作動されれば、インフレーター9から吐出される膨張用ガスが、接続口部24を経てガス供給路部26に流れ、さらに、ガス供給路部26から各膨張部27,28,29に流れて、カーテンエアバッグ15が、ピラーガーニッシュ2やルーフヘッドライニング3の下縁2a,3aからなるエアバッグカバー6を押し開いて、
図1の二点鎖線に示すように、サイドウインドW1,W2、中間ピラー部CP、及び、リヤピラー部RPの車内側Iを覆うように、大きく展開膨張することとなる。
【0033】
そして、実施形態のエアバッグ用基布20では、位置決め孔42が、エアバッグ用基布20を製造する袋織りの際に、袋織りで形成する閉じ部56を、位置決め孔42の外周縁を囲うように、形成し、そして、位置決め孔42の内側領域において、袋織りで使用する経糸VSと緯糸HSとを織り込まない非織込部58を設けて、形成されている。このような位置決め孔42では、
図5のA~Cや
図6のA,Bに示すように、位置決めピン61を挿入させる際、単に経糸VSと緯糸HSとが交差しているような非織込部58に位置決めピン61を挿入させれば、位置決め孔42の外周縁の閉じ部56側に、非織込部58の領域内の経糸VSと緯糸HSとをずらすだけで、容易に、位置決めピン61を挿入させることができる。そして、このような位置決め孔42は、レーザー加工等の孔開け加工をせずに、エアバッグ用基布20の袋織り時、単に、閉じ部56と非織込部58とを形成するだけで、簡単に形成できる。
【0034】
したがって、実施形態のエアバッグ用基布20では、別途、孔開け加工を行わずに、簡便に、位置決め孔42を配設することができる。
【0035】
そして、実施形態のエアバッグ用基布20では、位置決め孔42が、非織込部58の領域を円形として、非織込部58の周縁に閉じ部56を配設させて、形成されている。
【0036】
そのため、実施形態では、位置決め孔42に、断面円形の位置決めピン61を挿入する際、挿入時の中心側から外周縁側に、均等の略放射状に、非織込部58の経糸VSと緯糸HSとをずらし易く、すなわち、挿入する位置決めピン61に対応して、安定して、位置決め孔42の中心を配置させることができ、エアバッグ用基布20を、位置決め孔42の位置で位置規制する所定の配置位置に、配置させることができて、その後のエアバッグ用基布20に対する縫合作業等を、精度良く、行うことができる。
【0037】
そして、実施形態のエアバッグ用基布20では、車両VのサイドウインドW1,W2の上縁WU側に配設されるとともに、サイドウインドW1,W2の車体側部材としてのインナパネル1aに取り付けるための取付タブ44(A~E)、を縫合により取り付けて構成されるカーテンエアバッグ15として使用されている。そして、位置決め孔42が、取付タブ44(A~E)の縫合時におけるエアバッグ用基布20に対する取付タブ44(A~E)の取付位置40(A~E)に対応して、配設されている。
【0038】
そのため、実施形態では、袋織りからなるエアバッグ用基布20をカーテンエアバッグ15として使用するように構成され、カーテンエアバッグ15は、多数の取付タブ44(A~E)を取り付けて形成されるものであり、そして、エアバッグ用基布20には、取り付ける多数の取付タブ44(A~E)の取付位置40(A~E)に対応して、位置決め孔42が配設されていることから、各位置決め孔42に対して、対応する位置決めピン61を挿入させて、エアバッグ用基布20を縫合作業用の作業台60上に載せれば、各取付タブ44の取付位置40を、精度良く、作業台60上に配置させることができることから、その後、円滑に、各取付タブ44をエアバッグ用基布20の所定取付位置に縫合できて、カーテンエアバッグ15を容易に製造することができる。
【0039】
なお、実施形態では、エアバッグ用基布20を、カーテンエアバッグ15に使用するものとし、位置決め孔42を、取付タブ44の縫合時の位置決めピン61を挿入させるものとして、説明したが、位置決め孔は、エアバッグ用基布からなるエアバッグを、所定の配置位置の係止ピンや取付ピン等に挿入させて、所定位置に配置させるように使用するようにしてもよく、エアバッグ用基布から形成するエアバッグも、カーテンエアバッグに限定されるものではなく、他の歩行者用エアバッグ等のエアバッグに使用するエアバッグ用基布に、本発明を適用できる。
【0040】
また、エアバッグ用基布に設ける位置決め孔は、実施形態のように、非織込部58を円形とした場合を例示したが、位置決め孔に挿入させる位置決めピンや係止ピン・取付ピン等の形状に対応させて、長方形等の四角形、あるいは、三角形等の形状としてもよい。
【0041】
さらに、カーテンエアバッグ15に使用するエアバッグ用基布20では、袋織り時に、同時に、シリコン等のガス漏れ防止用のコーティング層を塗布される場合があるが、実施形態の経糸VSと緯糸HSとが、織り込まれずに、単に、格子状に交差するだけの非織込部58では、位置決めピン61の挿入時、コーティング層の影響を受けずに、経糸VSと緯糸HSとが容易にずれて、位置決めピン61を挿入させることができる。
【符号の説明】
【0042】
15…カーテンエアバッグ、20…エアバッグ用基布、42…位置決め孔、40…取付位置、44…取付タブ、51…袋部、51a…織物層、52…端縁部、52a…織物層、56…閉じ部、58…非織込部、61…位置決めピン、
VS…経糸、HS…緯糸、V…車両、W1,W2…サイドウインド、WU…上縁。