(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】往復動工具
(51)【国際特許分類】
B23D 51/16 20060101AFI20221004BHJP
B23D 51/10 20060101ALI20221004BHJP
B27B 19/09 20060101ALI20221004BHJP
B27B 19/04 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
B23D51/16
B23D51/10
B27B19/09
B27B19/04
(21)【出願番号】P 2019522041
(86)(22)【出願日】2018-04-27
(86)【国際出願番号】 JP2018017227
(87)【国際公開番号】W WO2018221105
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2019-11-29
(31)【優先権主張番号】P 2017108373
(32)【優先日】2017-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017254184
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018069786
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094983
【氏名又は名称】北澤 一浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095946
【氏名又は名称】小泉 伸
(74)【代理人】
【識別番号】100192337
【氏名又は名称】福本 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100206092
【氏名又は名称】金 佳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100208535
【氏名又は名称】松坂 光邦
(72)【発明者】
【氏名】門前 哲也
(72)【発明者】
【氏名】仲野 領祐
【審査官】荻野 豪治
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-023189(JP,A)
【文献】特開2009-298589(JP,A)
【文献】特開2002-283135(JP,A)
【文献】実公平05-006015(JP,Y2)
【文献】特開2015-229223(JP,A)
【文献】特開2002-098573(JP,A)
【文献】特開2011-115913(JP,A)
【文献】特開2010-208316(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D 45/00 - 65/04
B25F 5/00
B27B 3/12
B27B 3/26
B27B 19/04
B27B 19/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ハウジングと、
前記本体ハウジングに収容され回転軸を有するモータと、
前後方向に往復動可能に前記本体ハウジングによって支持され、先端工具を保持する
往復動部であって、
ガイドを有する往復動部と、
前記モータの駆動力によって
上下方向に延びる軸線を中心として第1方向に回転する第1回転体
であって、
前記モータの駆動力によって前記軸線を中心として回転する第1ギヤ部と、前記軸線に対して偏心した位置に設けられ前記ガイドと係合して前記往復動部を前後方向に駆動する突出部と、前記第1ギヤ部と一体に回転する第1ウェイト部と、を有する第1回転体と、
前記モータの駆動力によって前記軸線を中心として前記第1方向とは反対の第2方向に回転する第2回転体
であって、
前記モータの駆動力によって前記軸線を中心として回転する第2ギヤ部と、前記第2ギヤ部と一体に回転する第2ウェイト部と、を
有する第2回転体と、
を備え、
前記往復動部を前後方向に駆動するための前記突出部を含む前記第1回転体及び前記第2回転体は、前記第1回転体の重心
から前記軸線
までの径方向距
離と前記第1回転体の質量との積
が、前記第2回転体の重心
から前記軸線
までの径方向距
離と前記第2回転体の質量との積
と等しく
なるように構成されるとともに、前記
往復動部が
前記往復動するとき、前記第1回転体の重心及び前記第2回転体の重心
が、前後方向において
、前記
往復動部
の移動方向とは逆方向に移動する
ように構成されたことを特徴とする往復動工具。
【請求項2】
前記突出部は、前記第1ギヤ部から前記ガイドに向かって突出するピンと、前記ピンと前記ガイドとの間に設けられ前記ピンを中心として回転可能な接続部と、を有し、
前記ピンの質量及び前記接続部の質量は前記第1回転体の質量に含まれることを特徴とする請求項1に記載の往復動工具。
【請求項3】
前記第1回転体は、前記軸線を中心に前記第1ギヤ部と一体回転可能なオービタルガイドを、さらに有し、
前記オービタルガイドは、前記軸線を中心とする円形状をなし、外縁部の前記
上下方向における厚みが周方向において変化するように形成され、
前記本体ハウジングには、前記
往復動部を摺動可能に支持する支持部が設けられ、
前記支持部は、前記外縁部の厚み方向端部の一部に接触可能な受部と揺動軸とを有し、前記オービタルガイドが回転する場合において、前記外縁部の前記厚み方向端部と前記受部との前記
上下方向における接触位置の変化にともなって、前記揺動軸を中心として前記本体ハウジングに対して揺動可能に構成され、
前記オービタルガイドの質量は前記第1回転体の質量に含まれることを特徴とする請求項1又は2に記載の往復動工具。
【請求項4】
前記外縁部は周方向において最も厚みが大きい最厚部と最も厚みが小さい最薄部とを有し、
前記
往復動部が
前記往復動において最も前方又は
最も後方に位置するとき、前記
上下方向視で前記最厚部と前記最薄部とを結ぶ直線は、前記
前後方向とは異なる方向に延び、
前記オービタルガイドには、前記最薄部よりも前記オービタルガイドの径方向内側に部分的に増肉された増肉部が設けられることを特徴とする請求項3に記載の往復動工具。
【請求項5】
前記
第2回転体の重心から前記軸線までの径方向距離は、前記
第1回転体の重心から前記軸線までの径方向距離よりも長いことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の往復動工具。
【請求項6】
前記
上下方向に直交する方向に関して、前記第2ウェイト部の重心は、前記第1ウェイト部の重心よりも前記軸線から遠い位置に位置することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の往復動工具。
【請求項7】
前記第1ウェイト部と前記第1ギヤ部とは一体に構成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の往復動工具。
【請求項8】
前記第2ウェイト部と前記第2ギヤ部とは一体に構成されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の往復動工具。
【請求項9】
前記第2ギヤ部は前記第1ギヤ部よりも強度が小さいことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の往復動工具。
【請求項10】
前記第2ギヤ部は、前記
上下方向において前記
往復動部から離間するにしたがって小径となるように形成されることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の往復動工具。
【請求項11】
前記ガイドには、
左右方向に延びて前記突出部が移動可能な溝部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の往復動工具。
【請求項12】
前記モータの駆動力を受けて前記軸線を中心に回転する第3ウェイト部を有する第3回転体を、さらに有することを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の往復動工具。
【請求項13】
前記第3回転体は、前記第1方向に回転し、
前記
往復動部が
前記往復動するとき、前記第1回転体の重心、前記第2回転体の重心及び前記第3回転体の重心は、前後方向において
、前記
往復動部
の移動方向とは逆方向に移動することを特徴とする請求項12に記載の往復動工具。
【請求項14】
本体ハウジングと、
前記本体ハウジングに収容され回転軸を有するモータと、
第1位置と第2位置との間で往復動可能に前記本体ハウジングによって支持されて先端工具を保持可能な出力部と、
前記モータの駆動力を受けて前記往復動の方向と交差する所定方向に延びる軸線を中心に第1方向に回転する第1ギヤ部と、前記第1ギヤ部に設けられ前記第1ギヤ部と一体に回転する第1ウェイト部と、を有する第1回転体と、
前記モータの駆動力の伝達経路上において前記第1ギヤ部と前記出力部との間に介在し、前記第1ギヤ部の回転運動を前記出力部の往復動に変換する運動変換機構と、
前記モータの駆動力を受けて前記軸線を中心に前記第1方向とは反対の第2方向に回転する第2ウェイト部を有する第2回転体と、を備え、
前記第1回転体の重心の前記軸線からの径方向距離である第1距離と前記第1回転体の質量との積は前記第2回転体の重心の前記軸線からの径方向距離である第2距離と前記第2回転体の質量との積と略等しく、
前記軸線と直交する方向に関して、前記第2ウェイト部の重心は、前記第1ウェイト部の重心よりも前記軸線から遠い位置にあり、
前記出力部が前記第1位置に位置するとき、前記第1回転体の重心及び前記第2回転体の重心は、前後方向において前記出力部から最も離間し、
前記出力部が前記第2位置に位置するとき、前記第1回転体の重心及び前記第2回転体の重心は、前後方向において前記出力部に最も近接することを特徴とする往復動工具。
【請求項15】
本体ハウジングと、
前記本体ハウジングに収容され回転軸を有するモータと、
第1位置と第2位置との間で往復動可能に前記本体ハウジングによって支持されて先端工具を保持可能な出力部と、
前記モータの駆動力を受けて前記往復動の方向と交差する所定方向に延びる軸線を中心に第1方向に回転する第1ギヤ部と、前記第1ギヤ部に設けられ前記第1ギヤ部と一体に回転する第1ウェイト部と、を有する第1回転体と、
前記モータの駆動力の伝達経路上において前記第1ギヤ部と前記出力部との間に介在し、前記第1ギヤ部の回転運動を前記出力部の往復動に変換する運動変換機構と、
前記モータの駆動力を受けて前記軸線を中心に前記第1方向とは反対の第2方向に回転する第2ウェイト部を有する第2回転体と、を備え、
前記第1回転体は、前記軸線を中心に前記第1ギヤ部と一体回転するオービタルガイドを、さらに有し、
前記オービタルガイドは、前記軸線を中心とする円形状をなし、外縁部の前記軸線方向における厚みが周方向において変化するように形成され、
前記本体ハウジングには、前記出力部を摺動可能に支持する支持部が設けられ、
前記支持部は、前記外縁部の厚み方向端部の一部に接触可能な受部と揺動軸とを有し、前記オービタルガイドが回転する場合において、前記外縁部の前記厚み方向端部と受部との前記軸線方向における接触位置の変化にともなって、前記揺動軸を中心として前記本体ハウジングに揺動可能に構成され、
前記外縁部は周方向において最も厚みが大きい最厚部と、前記最厚部と反対側に位置して最も厚みが小さい最薄部を有し、
前記出力部が前記第1位置又は前記第2位置に位置するとき、前記軸線方向視で前記最厚部と前記最薄部とを結ぶ直線は、前記往復動方向とは異なる方向に延び、
前記オービタルガイドには、前記最薄部よりも前記オービタルガイドの径方向内側に部分的に増肉された増肉部が設けられ、
前記出力部が前記第1位置に位置するとき、前記第1回転体の重心及び前記第2回転体の重心は、前後方向において前記出力部から最も離間し、
前記出力部が前記第2位置に位置するとき、前記第1回転体の重心及び前記第2回転体の重心は、前後方向において前記出力部に最も近接することを特徴とする往復動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は往復動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、木材、鋼材、金属パイプ等(被切断材)を切断する電動工具として先端工具に鋸刃を採用した往復動工具が広く用いられている。このような先端工具に鋸刃を採用した往復動工具としては、モータと、モータの回転力を受け回転するギヤと、ギヤの回転運動を往復動に変換する運動変換機構と、ハウジングに往復動可能に支持され先端に鋸刃を装着可能な出力部と、を備えたセーバソーが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
このような往復動工具においては、出力部の往復動に伴いハウジングに発生する振動が作業者に伝わってしまい作業性及び加工精度に影響を与える可能性があった。
【0004】
そこで、特許文献1に記載されたセーバソーにおいては、出力部の往復動に伴いハウジングに発生する振動が作業者に伝わることを低減するために、往復動方向に平行な面上において回転するバランスウェイトをギヤに設けることで前後方向の振動を打ち消す構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたセーバソーにおいては、出力部の往復動方向に直交する方向の振動がバランスウェイトによって発生してしまい、作業性及び加工精度に影響を与える可能性があった。
【0007】
そこで本発明は、作業時に発生する振動を低減し、作業性及び加工精度を向上可能な往復動工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は、本体ハウジングと、前記本体ハウジングに収容され回転軸を有するモータと、第1位置と第2位置との間で往復動可能に前記本体ハウジングによって支持される出力部と、前記モータの駆動力を受けて所定方向に延びる軸線を中心に第1方向に回転する第1ギヤ部と、前記第1ギヤ部に設けられ前記第1ギヤ部と一体に回転する第1ウェイト部と、を有する第1回転体と、前記モータの駆動力の伝達経路上において前記第1ギヤ部と前記出力部との間に介在し、前記第1ギヤ部の回転運動を前記出力部の往復動に変換する運動変換機構と、前記モータの駆動力を受けて前記軸線を中心に前記第1方向とは反対の第2方向に回転する第2ウェイト部を有する第2回転体と、を備え、前記出力部が前記第1位置に位置するとき、前記第1回転体の重心及び前記第2回転体の重心は、前記出力部から最も離間し、前記出力部が前記第2位置に位置するとき、前記第1回転体の重心及び前記第2回転体の重心は、前記出力部に最も近接することを特徴とする往復動工具を提供している。
【0009】
上記の構成によれば、出力部が第1位置に位置するとき、第1回転体の重心及び第2回転体の重心は、出力部から最も離間し、出力部が第2位置に位置するとき、第1回転体の重心及び第2回転体の重心は、出力部に最も近接するため、出力部の往復動によって往復動工具本体に発生する往復動方向の振動を抑制することが可能となる。また、第1回転体の重心と第2回転体の重心とが互いに逆方向に回転するため、往復動方向と直交する方向の振動が往復動工具に発生することを抑制することが可能となる
【0010】
上記構成において、前記第1回転体は、前記軸線方向に前記第1ギヤ部から突出する突出部と、前記突出部の突出端に設けられ前記運動変換機構に接続される接続部と、をさらに有し、前記第2回転体は、前記第2ウェイト部が設けられ、前記モータの駆動力を受けて前記第2ウェイト部と一体に前記軸線を中心に前記第2方向に回転する第2ギヤ部を、さらに有することが好ましい。
【0011】
このような構成によれば、一体として回転する第1ギヤ部、突出部及び接続部の合成体(第1回転体)の重心と、第2回転体の重心とが互いに逆方向に回転するため、往復動工具本体に発生する振動を好適に抑制することが可能となる。
【0012】
また、前記第1回転体は、前記軸線を中心に前記第1ギヤ部と一体回転可能な回転部材を、さらに有し、前記回転部材は、前記軸線を中心とする円形状をなし、外縁部の厚みが周方向において変化するように形成され、且つ、重心が前記軸線上に位置するように形成されていることが好ましい。
【0013】
このような構成によれば、回転部材の重心が軸線上に位置するように形成されているため、往復動工具に発生する振動を抑制することが可能となる。また、回転部材の重心が軸線上に位置するように設計することで、第1回転体及び第2回転体の各ウェイトの質量等を微調整するだけの簡易な方法で振動を低減する構成を実現することが可能となる。
【0014】
また、前記第1回転体の重心の前記軸線からの距離である第1距離は、前記第2回転体の重心の前記軸線からの距離である第2距離と異なることが好ましい。
【0015】
このような構成によれば、往復動工具のハウジングの形状に沿うように、第1回転体及び第2回転体の有する各ウェイトの大きさ及び配置等を決めることができ、設計の自由度を向上させることが可能となる。特に、第2回転体の重心を軸線に近づけることにより、往復動工具本体のサイズを小型化することが可能となる。
【0016】
また、前記第2距離は、前記第1距離よりも短いことが好ましい。
【0017】
このような構成によれば、運動変換機構を介して出力部と繋がる第1回転体の重心ではなく、第2回転体の重心を軸線に近づける配置であるため、往復動工具本体のサイズを小型化することが可能となる。
【0018】
また、前記第1ウェイト部の質量と前記第1距離との積は、前記第2ウェイト部の質量と前記第2距離との積と等しいことが好ましい。
【0019】
このような構成によれば、第1回転体及び第2回転体の回転時に発生する各遠心力を相殺することができ、往復動工具本体に発生する振動を抑制することが可能となる。
【0020】
また、前記第1回転体及び前記第2回転体の回転による前記第1回転体及び前記第2回転体の重心の前記往復動方向における移動は、前記出力部の前記往復動方向における移動とは逆方向であることが好ましい。
【0021】
このような構成によれば、往復動方向において、第1回転体の重心及び第2回転体の重心が出力部とは反対方向に移動するため、出力部の往復動によって生じる振動を好適に抑制することが可能となる。
【0022】
また、前記第2ギヤ部は、前記軸線方向において、前記第1ギヤ部よりも前記出力部から離間していることが好ましい。
【0023】
このような構成によれば、運動変換機構や出力部と繋がっていない比較的簡易な第2ギヤ部が動力伝達機構全体の外側に配置されるため、ハウジングの外形を小さくすることが可能となる。
【0024】
また、前記モータは、前記回転軸に固定されるピニオン、をさらに有し、前記第1ギヤ部と前記第2ギヤ部とは、それぞれ前記ピニオンに噛合するとともに、前記回転軸を中心として対向配置されることが好ましい。
【0025】
このような構成によれば、ピニオンから他部材を介さずに直接第1ギヤ部及び第2ギヤ部に対する駆動力の伝達が可能である。また、効率的な配置であり、往復動工具の設計を軽量且つコンパクトにすることが可能となる。
【0026】
また、前記第2ギヤ部は、前記軸線方向において前記出力部から離間するにしたがって小径となるように形成されることが好ましい。
【0027】
このような構成によれば、第2ギヤ部が軸線方向において出力部から離間するにしたがって小径となることにより、ハウジングの外形を小さくすることが可能となる。
【0028】
また、前記運動変換機構には、前記往復動方向及び前記軸線方向に直交する方向に延びて前記接続部が摺動可能な溝部が形成されていることが好ましい。
【0029】
このような構成によれば、第1ギヤ部の回転運動の往復動への変換、駆動力の伝達が簡易な構成によって実現できる。
【0030】
また、前記モータの駆動力を受けて前記軸線を中心に回転する第3ウェイト部を有する第3回転体を、さらに有することが好ましい。
【0031】
このような構成によれば、第1ウェイト部、第2ウェイト部及び第3ウェイト部という、3つのバランスウェイトにより、出力部の往復動に伴う振動の発生を抑制することが可能となる。また、ウェイトを3つにすることにより、それぞれのウェイトの質量、大きさを抑えることができ、往復動工具本体を小型化することが可能となる。
【0032】
また、前記第3ウェイト部は、前記第1方向に回転し、前記出力部が第1位置に位置するとき、前記第1ウェイト部の重心、前記第2ウェイト部の重心及び前記第3ウェイト部の重心は、前記出力部から最も離間し、前記出力部が第2位置に位置するとき、前記第1ウェイト部の重心、前記第2ウェイト部の重心及び前記第3ウェイト部の重心は、前記出力部に最も近接していることが好ましい。
【0033】
このような構成によれば、出力部が第1位置に位置するとき、第1回転体の重心、第2回転体の重心及び第3回転体の重心は、出力部から最も離間し、出力部が第2位置に位置するとき、第1回転体の重心、第2回転体の重心及び第3回転体の重心は、出力部に最も近接するため、出力部の往復動によって往復動工具本体に発生する往復動方向の振動を抑制することが可能となる。
【0034】
また、前記第1回転体、前記第2回転体及び前記第3回転体の回転による前記第1ウェイト部の重心、前記第2ウェイト部の重心及び前記第3ウェイト部の重心の前記往復動方向における移動は、前記出力部の前記往復動方向における移動とは逆方向であり、前記第2ウェイト部は、前記軸線方向において、前記第1ウェイト部と前記第3ウェイト部との間に位置することが好ましい。
【0035】
このような構成によれば、往復動方向において、第1回転体の重心、第2回転体の重心及び第3回転体の重心が出力部とは反対方向に移動するため、出力部の往復動によって生じる振動を抑制することが可能となる。また、第2ウェイト部が軸線方向において第1ウェイト部と第3ウェイト部との間に位置するため、第1回転体及び第3回転体が発生させる、往復動方向まわりのモーメントを、互いに打ち消す方向に発生させることが可能となる。そのため、往復動方向と直交する方向の振動を低減させる効果を維持しつつ、往復動工具本体を往復動方向まわりに回転させる振動の発生も低減、防止することが可能となる。
本発明はさらに、本体ハウジングと、前記本体ハウジングに収容され回転軸を有するモータと、前後方向に往復動可能に前記本体ハウジングによって支持され、先端工具を保持する往復動部であって、ガイドを有する往復動部と、前記モータの駆動力によって上下方向に延びる軸線を中心として第1方向に回転する第1回転体であって、前記モータの駆動力によって前記軸線を中心として回転する第1ギヤ部と、前記軸線に対して偏心した位置に設けられ前記ガイドと係合して前記往復動部を前後方向に駆動する突出部と、前記第1ギヤ部と一体に回転する第1ウェイト部と、を有する第1回転体と、前記モータの駆動力によって前記軸線を中心として前記第1方向とは反対の第2方向に回転する第2回転体であって、前記モータの駆動力によって前記軸線を中心として回転する第2ギヤ部と、前記第2ギヤ部と一体に回転する第2ウェイト部と、を有する第2回転体と、を備え、前記往復動部を前後方向に駆動するための前記突出部を含む前記第1回転体及び前記第2回転体は、前記第1回転体の重心から前記軸線までの径方向距離と前記第1回転体の質量との積が、前記第2回転体の重心から前記軸線までの径方向距離と前記第2回転体との積と等しくなるように構成されるとともに、前記往復動部が前記往復動するとき、前記第1回転体の重心及び前記第2回転体の重心が、前後方向において、前記往復動部の移動方向とは逆方向に移動するように構成されたことを特徴とする往復動工具を提供している。
上記構成において、前記突出部は、前記第1ギヤ部から前記ガイドに向かって突出するピンと、前記ピンと前記ガイドとの間に設けられ前記ピンを中心として回転可能な接続部と、を有し、前記ピンの質量及び前記接続部の質量は前記第1回転体の質量に含まれることが好ましい。
また、前記第1回転体は、前記軸線を中心に前記第1ギヤ部と一体回転可能なオービタルガイドを、さらに有し、前記オービタルガイドは、前記軸線を中心とする円形状をなし、外縁部の前記上下方向における厚みが周方向において変化するように形成され、前記本体ハウジングには、前記往復動部を摺動可能に支持する支持部が設けられ、前記支持部は、前記外縁部の厚み方向端部の一部に接触可能な受部と揺動軸とを有し、前記オービタルガイドが回転する場合において、前記外縁部の前記厚み方向端部と前記受部との前記上下方向における接触位置の変化にともなって、前記揺動軸を中心として前記本体ハウジングに対して揺動可能に構成され、前記オービタルガイドの質量は前記第1回転体の質量に含まれることが好ましい。
また、前記外縁部は周方向において最も厚みが大きい最厚部と最も厚みが小さい最薄部とを有し、前記往復動部が前記往復動において最も前方又は最も後方に位置するとき、前記上下方向視で前記最厚部と前記最薄部とを結ぶ直線は、前記前後方向とは異なる方向に延び、前記オービタルガイドには、前記最薄部よりも前記オービタルガイドの径方向内側に部分的に増肉された増肉部が設けられることが好ましい。
また、前記第2回転体の重心から前記軸線までの径方向距離は、前記第1回転体の重心から前記軸線までの径方向距離よりも長いことが好ましい。
また、前記上下方向に直交する方向に関して、前記第2ウェイト部の重心は、前記第1ウェイト部の重心よりも前記軸線から遠い位置に位置することが好ましい。
また、前記第1ウェイト部と前記第1ギヤ部とは一体に構成されていることが好ましい。
また、前記第2ウェイト部と前記第2ギヤ部とは一体に構成されていることが好ましい。
また、前記第2ギヤ部は前記第1ギヤ部よりも強度が小さいことが好ましい。
また、前記第2ギヤ部は、前記上下方向において前記往復動部から離間するにしたがって小径となるように形成されることが好ましい。
また、前記ガイドには、左右方向に延びて前記突出部が移動可能な溝部が形成されていることが好ましい。
また、前記モータの駆動力を受けて前記軸線を中心に回転する第3ウェイト部を有する第3回転体を、さらに有すること 前記モータの駆動力を受けて前記軸線を中心に回転する第3ウェイト部を有する第3回転体を、さらに有することが好ましい。
また、前記第3回転体は、前記第1方向に回転し、前記往復動部が前記往復動するとき、前記第1回転体の重心、前記第2回転体の重心及び前記第3回転体の重心は、前後方向において、前記往復動部の移動方向とは逆方向に移動することが好ましい。
本発明はさらに、本体ハウジングと、前記本体ハウジングに収容され回転軸を有するモータと、第1位置と第2位置との間で往復動可能に前記本体ハウジングによって支持されて先端工具を保持可能な出力部と、前記モータの駆動力を受けて前記往復動の方向と交差する所定方向に延びる軸線を中心に第1方向に回転する第1ギヤ部と、前記第1ギヤ部に設けられ前記第1ギヤ部と一体に回転する第1ウェイト部と、を有する第1回転体と、前記モータの駆動力の伝達経路上において前記第1ギヤ部と前記出力部との間に介在し、前記第1ギヤ部の回転運動を前記出力部の往復動に変換する運動変換機構と、前記モータの駆動力を受けて前記軸線を中心に前記第1方向とは反対の第2方向に回転する第2ウェイト部を有する第2回転体と、を備え、前記軸線と直交する方向に関して、前記第2ウェイト部の重心は、前記第1ウェイト部の重心よりも前記軸線から遠い位置にあり、前記出力部が前記第1位置に位置するとき、前記第1回転体の重心及び前記第2回転体の重心は、前後方向において前記出力部から最も離間し、前記出力部が前記第2位置に位置するとき、前記第1回転体の重心及び前記第2回転体の重心は、前後方向において前記出力部に最も近接することを特徴とする往復動工具を提供している。
本発明はさらに、本体ハウジングと、前記本体ハウジングに収容され回転軸を有するモータと、第1位置と第2位置との間で往復動可能に前記本体ハウジングによって支持されて先端工具を保持可能な出力部と、前記モータの駆動力を受けて前記往復動の方向と交差する所定方向に延びる軸線を中心に第1方向に回転する第1ギヤ部と、前記第1ギヤ部に設けられ前記第1ギヤ部と一体に回転する第1ウェイト部と、を有する第1回転体と、前記モータの駆動力の伝達経路上において前記第1ギヤ部と前記出力部との間に介在し、前記第1ギヤ部の回転運動を前記出力部の往復動に変換する運動変換機構と、前記モータの駆動力を受けて前記軸線を中心に前記第1方向とは反対の第2方向に回転する第2ウェイト部を有する第2回転体と、を備え、前記第1回転体は、前記軸線を中心に前記第1ギヤ部と一体回転するオービタルガイドを、さらに有し、前記オービタルガイドは、前記軸線を中心とする円形状をなし、外縁部の前記軸線方向における厚みが周方向において変化するように形成され、前記本体ハウジングには、前記出力部を摺動可能に支持する支持部が設けられ、前記支持部は、前記外縁部の厚み方向端部の一部に接触可能な受部と揺動軸とを有し、前記オービタルガイドが回転する場合において、前記外縁部の前記厚み方向端部と受部との前記軸線方向における接触位置の変化にともなって、前記揺動軸を中心として前記本体ハウジングに揺動可能に構成され、前記外縁部は周方向において最も厚みが大きい最厚部と、前記最厚部と反対側に位置して最も厚みが小さい最薄部を有し、前記出力部が前記第1位置又は前記第2位置に位置するとき、前記軸線方向視で前記最厚部と前記最薄部とを結ぶ直線は、前記往復動方向とは異なる方向に延び、前記オービタルガイドには、前記最薄部よりも前記オービタルガイドの径方向内側に部分的に増肉された増肉部が設けられ、前記出力部が前記第1位置に位置するとき、前記第1回転体の重心及び前記第2回転体の重心は、前後方向において前記出力部から最も離間し、前記出力部が前記第2位置に位置するとき、前記第1回転体の重心及び前記第2回転体の重心は、前後方向において前記出力部に最も近接することを特徴とする往復動工具を提供している。
【発明の効果】
【0036】
本発明の往復動工具によれば、作業時に発生する振動を低減し、作業性及び加工精度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明の第1の実施の形態にかかるセーバソーの内部構造を示す断面側面図である。
【
図2】本発明の第1の実施の形態にかかるセーバソーのギヤ部、プランジャ及びその周辺を示す断面詳細図である。
【
図3】本発明の第1の実施の形態にかかるセーバソーのギヤ部及びプランジャを示す分解斜視図である。
【
図4】本発明の第1の実施の形態にかかる伝達ギヤ部の重心及びカウンタウェイト部の重心の位置関係を示す断面詳細図である。
【
図5】本発明の第1の実施の形態にかかるセーバソーの往復動部分が前方位置にある場合におけるギヤ部、プランジャ及びブレード装着部の状態を示す図であり、(a)は断面詳細図、(b)はオービタルガイドの平面図である。
【
図6】本発明の第1の実施の形態にかかるセーバソーの収容部がオービタルガイドの最低位置と当接している状態を示す図であり、(a)は断面詳細図、(b)はオービタルガイドの平面図である。
【
図7】本発明の第1の実施の形態にかかるセーバソーの往復動部分が後方位置にある場合におけるギヤ部、プランジャ及びブレード装着部の状態を示す図であり、(a)は断面詳細図、(b)はオービタルガイドの平面図である。
【
図8】本発明の第1の実施の形態にかかるセーバソーの収容部がオービタルガイドの最高位置と当接している状態を示す図であり、(a)は断面詳細図、(b)はオービタルガイドの平面図である。
【
図9】本発明の第1の実施の形態にかかるセーバソーのオービタルガイドが回転する場合におけるブレードの定点の軌跡を示す図である。
【
図10】本発明の第1の実施の形態にかかるセーバソーのウェイトの重心と往復動部分の重心との位置関係を示す図であり、(a)から(d)には、ウェイトの重心が90度ずつ回転する状況が時系列に並べて示されている。また、右列各図は平面図であり、左列各図は右側面図である。
【
図11】本発明の第2の実施の形態にかかるセーバソーの内部構造を示す断面側面図である。
【
図12】本発明の第2の実施の形態にかかるセーバソーのギヤ部、プランジャ及びその周辺を示す断面詳細図である。
【
図13】本発明の第2の実施の形態にかかるセーバソーのギヤ部の分解斜視図である。
【
図14】本発明の第2の実施の形態にかかるセーバソーの内部構造を示す断面側面図であり、切替部が解除位置にあり、且つ、出力部が前方位置にある状態が示されている。
【
図15】本発明の第2の実施の形態にかかるセーバソーの内部構造を示す断面側面図であり、切替部が解除位置にあり、且つ、出力部が後方位置にある状態が示されている。
【
図16】本発明の第2の実施の形態にかかるセーバソーの内部構造を示す断面側面図であり、切替部が押圧位置にあり、且つ、出力部が前方位置にある状態が示されている。
【
図17】本発明の第2の実施の形態にかかるセーバソーの内部構造を示す断面側面図であり、切替部が押圧位置にあり、且つ、出力部が後方位置にある状態が示されている。
【
図18】本発明の第2の実施の形態にかかるセーバソーの第1回転体の重心、第2回転体の重心、第3回転体の重心及び往復動部分の重心との位置関係を示す図であり、(a)から(d)には、ウェイトの重心が90度ずつ回転する状況が時系列に並べて示されている。また、中央列各図は平面図であり、右列各図は後面図であり、左列各図は右側面図である。
【
図19】本発明の第3の実施の形態にかかるセーバソーの内部構造を示す断面側面図である。
【
図20】本発明の第3の実施の形態にかかるセーバソーのギヤ部、プランジャ及びその周辺を示す断面詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の第1の実施の形態にかかる往復動工具の一例であるセーバソー1について
図1乃至
図7を参照しながら説明する。
【0039】
以下の説明においては、
図1に示されている「上」を上方向、「下」を下方向、「前」を前方向、「後」を後方向と定義する。また、セーバソー1を後から見た場合の「右」を右方向、「左」を左方向と定義する。本明細書において寸法、数値等について言及した場合には、当該寸法及び数値等と完全に一致する寸法及び数値だけでなく、略一致する寸法及び数値等(例えば、製造誤差の範囲内である場合)を含むものとする。「同一」、「直交」、「平行」、「一致」、「面一」、「一定」、「対称」等についても、同様に「略同一」、「略直交」、「略平行」、「略一致」、「略面一」、「略一定」、「略対称」等を含むものとする。
【0040】
セーバソー1は、木材、鋼材、パイプ等(被切断材)を切断するための電動式の往復動工具である。
図1に示されているように、セーバソー1は、電池パックPを着脱可能なハウジング2と、モータ3と、制御基板4と、コントロール部5と、ギヤ部6と、プランジャ7と、ブレードQを取り付け可能なブレード装着部8とを有している。
【0041】
ハウジング2は、セーバソー1の外郭をなしており、モータハウジング21と、ハンドルハウジング22と、ギヤハウジング23と、フロントカバー24とを有している。ハウジング2は、本発明における「本体ハウジング」の一例である。
【0042】
モータハウジング21及びハンドルハウジング22は、ハウジング2の中央部分を通り且つ左右方向に直交する分割面(仮想面)で分割された分割ハウジングとして構成されており、それぞれの分割された右側部分と左側部分とは、分割面に関して対称に構成されている。
【0043】
図1に示されているように、モータハウジング21は、円筒部211と、延出部212とを有している。
【0044】
円筒部211は、前後方向に延びる略円筒形状をなしており、モータ3と、制御基板4とを収容している。
【0045】
延出部212は、円筒部211の後部の下端から後下方へ延びる略円筒形状をなしている。
【0046】
ハンドルハウジング22は、側面視略コ字状をなしており、モータハウジング21の後方に位置している。ハンドルハウジング22は、把持部221と、第1接続部222と、第2接続部223とを有している。
【0047】
把持部221は、作業時に作業者によって把持される部分であり、上下方向に延びている。把持部の前部上部には、モータ3の始動及び停止を制御するための手動操作可能なトリガ22Aが設けられている。
【0048】
第1接続部222は、把持部221の上端部から前方に延出している。第1接続部222の前端部は、モータハウジング21の円筒部211の後部の上端部と接続されている。
【0049】
第2接続部223は、ハンドルハウジング22の下部をなし、前後方向に延びている。第2接続部223の前端部は、モータハウジング21の延出部212の後端部と接続されている。
【0050】
また、第2接続部の下端部には、電池パックPを接続可能な電池接続部223Aが設けられている。電池接続部223Aには、電池パックPの図示せぬ端子部と接続される電池接続端子部223Bが設けられている。
【0051】
ギヤハウジング23は、モータハウジング21の円筒部211から前方に延びている。ギヤハウジング23は、ギヤ部6、プランジャ7を収容している。ギヤハウジング23の前端部には、切断作業時に被切断材に当接させるベース23Aが設けられている。ギヤハウジング23のより詳細な構成については、後述する。
【0052】
フロントカバー24は、モータハウジング21の前端から前方に延び、前方に向かうに従って縮径する略円筒形状をなし、ギヤハウジング23の外周面略全域を覆っている。フロントカバー24は、例えば摩擦係数の大きい樹脂などの絶縁性及び断熱性の高い弾性部材からなる。
【0053】
モータ3は、DCブラシレスモータであり、回転軸31と、ピニオン32と、ロータ33と、ステータ34と、ファン35と、弾性体36とを有している。モータ3は、本発明における「モータ」の一例である。
【0054】
回転軸31は、前後方向に延び、前後方向に延びる軸線Aを中心として回転可能に且つハウジング2に対して前後方向に移動可能にハウジング2に支持されている。軸線Aは、左右方向に延び回転軸31の軸心を通る線である。回転軸31は、本発明における「回転軸」の一例である。
【0055】
ピニオン32は、回転軸31の前端部に回転軸31と一体に設けられており、回転軸31と一体に同軸回転する。ピニオン32は、本発明における「ピニオン」の一例である。
【0056】
ロータ33は、永久磁石を有しており、回転軸31と同軸一体回転するように回転軸31に固定されている。
【0057】
ステータ34は、前後方向に延びる略円筒形状をなしており、スター型接続された3つのステータコイルを有している。ステータ34は、モータハウジング21の円筒部211内に収容された状態でハウジング2に対して固定されている。
【0058】
弾性体36は、弾性変形可能なゴム製の部材であり、前後方向に延びる略円筒形状をなしている。本実施の形態においては、回転軸31に働くスラスト力が非常に大きくなった際に、回転軸31及び回転軸31と一体に構成された部材が後方に移動することにより、弾性体36が後方に圧縮されるため、回転軸31及びギヤ部6に加わる衝撃を緩和することができる。つまり、回転軸31及びギヤ部6の衝撃に対する耐久性を向上させることができ、回転軸31及びギヤ部6の破損及び変形を抑制することが可能となる。
【0059】
制御基板4は、前面視略環形状をなしており、モータ3の後方に設けられている。制御基板4上には、モータ3の回転軸31の位置検出のためのホール素子及びモータ3を制御するための6個のFET等が設けられている。
【0060】
コントロール部5は、コントロールボックス51と、パネル52とを有している。
【0061】
コントロールボックス51は、略直方体状に形成され、ハンドルハウジング22の第2接続部223内に配置されている。コントロールボックス51は、ユーザのトリガ22Aに対する操作及びホール素子41から出力される信号に応じて駆動信号を6個のFETに選択的に出力し、モータ3の回転方向及び回転速度等を制御する制御基板部(制御部)を収容している。制御基板部は、例えば、マイコン及び駆動信号出力回路等によって構成されている。
【0062】
パネル52は、モータハウジング21の延出部212の周壁に嵌め込まれ、コントロールボックス51と電気的に接続されている。パネル52の延出方向の端面には、作業者が視認可能な表示部が設けられており、作業者は表示部に表示されたバッテリー残量表示や切断速度表示等を確認しながら、作業を行うことが可能である。
【0063】
次に、
図1及び
図2を参照しながら、ギヤハウジング23のより詳細な構成について説明する。
【0064】
図1及び
図2に示されているように、ギヤハウジング23は、本体ケース230、プランジャカバー231、一対の摺動メタル232A、232B、ベアリング233、カバー234及び切替部235を主に有している。
【0065】
本体ケース230は、前後方向に延びる略円筒形状をなし、ギヤハウジング23内の構成要素を支持している。
【0066】
プランジャカバー231は、前後方向に延出する金属製部材である。図に詳細に表れていないが、プランジャカバー231の前部及び後部には、前後方向に延びると共に上方に窪む摺動メタル配設部が形成されている。プランジャカバー231には、揺動軸231Aが設けられている。
【0067】
揺動軸231Aは、プランジャカバー231の前部の下部に設けられ、左右方向に延びている。揺動軸231Aの左端部及び右端部は、本体ケース230に支持されている。プランジャカバー231は、揺動軸231Aの軸心を中心として、上下方向に揺動可能に構成されている。
【0068】
また、
図1に示されているように、本体ケース230とプランジャカバー231との間には、スプリング231Bが設けられている。スプリング231Bは、プランジャカバー231の後部を下方に付勢している。
【0069】
摺動メタル232A及び232Bのそれぞれは、プランジャカバー231の前部及び後部に形成された摺動メタル配設部に固定されている。摺動メタル232A及び232Bには前後方向に延びる貫通孔が形成され、当該貫通孔には、プランジャ7が挿通されている。これにより、プランジャカバー231は、摺動メタル232A及び232Bを介して、前後方向に往復摺動可能にプランジャ7を支持している。
【0070】
ベアリング233は、摺動メタル232Bの周囲に設けられている。ベアリング233の内輪部は、摺動メタル232Bの外面に固定され、且つ、ベアリング233の外輪部は、摺動メタル232Bに対して回転可能に構成されている。
【0071】
カバー234は、ギヤハウジング23の下部を形成し、断面視略台形状に形成されると共に下方に突出するように設けられている。カバー234は、ギヤ部6の下部を覆うように配置され、ギヤ部6の下部を支持している。
【0072】
切替部235は、左右に延出する軸を中心にして回転可能に本体ケース230に設けられている。切替部235は、略半月状の断面を備え、プランジャカバー231及び摺動メタル232Bを上方に押圧する押圧姿勢と、押圧を解除する解除姿勢との間で姿勢を変えることが可能に構成されている。本実施の形態においては、略半月状の断面が略前方を向いている切替部235の姿勢が押圧姿勢であり、略半月状の断面が略上方を向いている切替部235の姿勢が解除姿勢である。
【0073】
次に、
図2乃至4を参照しながら、ギヤ部6について、説明する。
【0074】
図2及び
図3に示されているように、ギヤ部6は、中間軸60と、伝達ギヤ部61と、カウンタウェイト部62とを有している。
【0075】
中間軸60は、上下方向に延びる略円柱形状をなしている。中間軸60は、大径のボールベアリング6Aと、小径のニードルベアリング6Bとによってギヤハウジング23に上下方向に延びる軸線Bを中心として回転可能に支承されている。軸線Bは、モータの回転軸31と直交し、上下方向に延び中間軸60の軸線を通る線である。
【0076】
伝達ギヤ部61は、ベベルギヤ611と、オービタルガイド612と、ピン613と、ニードルベアリング614と、コネクティングピース615とを有している。伝達ギヤ部61は、本発明における「第1回転体」の一例である。
【0077】
ベベルギヤ611は、平面視略円形状をなし、モータ3のピニオン32と噛合している。ベベルギヤ611は、モータ3の駆動力を受けて回転する。ベベルギヤ611は、中間軸60にネジ6Dによって固定されており、軸線Bを中心に、中間軸60と一体に回転可能である。ベベルギヤ611は、平面視において、反時計回り方向に回転する(
図5乃至
図8の矢印(i)乃至(iv)参照)。ベベルギヤ611は、鋼材の削り出し加工によって形成され、歯切りがなされたギヤである。ベベルギヤ611は、ウェイト611Aを有している。ベベルギヤ611は、本発明における「第1ギヤ部」の一例である。軸線Bは、本発明における「所定方向に延びる軸線」の一例である。平面視における反時計回り方向は、本発明における「第1方向」の一例である。
【0078】
ウェイト611Aは、ベベルギヤ611において、軸線Bに関してピン613の反対側に位置するように構成されている。ウェイト611Aは、ベベルギヤ611の他の部分と一体に形成された錘であり、ベベルギヤ611の一部分をなしている。言い換えると、ウェイト611Aは、ベベルギヤ611に設けられ、ベベルギヤ611と一体に回転可能である。ウェイト611Aは、ベベルギヤ611の内ウェイト611A以外の部分の合成質量よりも大きな質量を有している。ウェイト611Aは、重心611Bを有している。ウェイト611Aは、本発明における「第1ウェイト部」の一例である。
【0079】
オービタルガイド612は、軸線Bを中心にベベルギヤ611と一体回転可能に設けられている。
図3に示されているように、オービタルガイド612は、軸線Bを中心とする略円形状をなし、ベベルギヤ611と略同一の外径を有している。オービタルガイド612は、レール612Aと、ピン挿通部612Bと、減肉部612Cと、第1増肉部612Dと、第2増肉部612Eとを有している。オービタルガイド612は、本発明における「回転部材」の一例である。
【0080】
レール612Aは、オービタルガイド612の外縁部において円環状に形成されている。レール612Aの上端部は、中間軸60に対して斜めに交差する方向に延びる平面で切断したように形成されている。言い換えると、レール612Aの上端部は、左右方向及び前後方向に対して平行に延びる仮想の平面に対し、傾きを持つように形成されている。さらに、言い換えると、レール612Aは、その上下方向の厚みが周方向において変化するように形成されている。なお、以下の説明においては、上下方向におけるレール612Aの最も厚い部分を最厚部分Xと呼び、最も薄い部分を最薄部分Yと呼ぶ(
図3参照)。
【0081】
また、レール612Aの上端は、ギヤハウジング23のベアリング233と当接可能に構成されている。詳細には、切替部235が解除姿勢であるとき、レール612Aの上端はベアリング233と当接し、ベアリング233を介してプランジャカバー231の後部を支持する。ベベルギヤ611が回転するとき、ベアリング233は、回転しながらレール612Aの形状に沿ってレール612Aの高さに応じて上下方向に往復動を行う。このベアリング233の上下方向の往復動によって、ギヤハウジング23のプランジャカバー231は、揺動軸231Aの軸心を中心として、上下方向に揺動する。また、本体ケース230とプランジャカバー231との間に設けられたスプリング231Bがプランジャカバー231の後部を下方に付勢するため、切替部235が解除姿勢である場合において、ベアリング233とレール612Aの上面とが好適に当接し、出力部に取付けられたブレードQに好適にオービタル運動をさせることが可能となる。
【0082】
また、切替部235が押圧姿勢であるとき、レール612Aの上端はベアリング233と離間する。そのため、ベベルギヤ611が回転しても、ベアリング233の上下方向の位置は、一定に保たれる。
【0083】
ピン挿通部612Bは、レール612Aよりもオービタルガイド612の径方向内方に位置している。ピン挿通部612Bは、レール612Aの周方向において、レール612Aの最厚部分Xから略60度ずれた位置に位置している。ピン挿通部612Bには、上下方向に延びるピン挿通孔612aが形成されている。ピン挿通部612Bにおけるピン挿通孔612aの周囲の部分は、オービタルガイド612の上面から上方に盛り上がっている。このように、本実施の形態においては、ピン挿通孔612aの周囲の部分を盛り上げることで、ピン挿通孔612aを形成したことによるオービタルガイド612(単体)の重心位置の変化(移動)を抑制するように構成されている。
【0084】
減肉部612Cは、レール612Aよりもオービタルガイド612の径方向内方に位置し、平面視略台形状に型抜されている。減肉部612Cは、レール612Aの周方向において、レール612Aの最厚部分Xと略同じ位置に位置している。
【0085】
第1増肉部612Dは、レール612Aよりもオービタルガイド612の径方向内方に位置している。第1増肉部612Dは、レール612Aの周方向においてレール612Aの最薄部分Yから略60度ずれ、且つ、軸線Bに関してピン挿通部612Bと対称な位置に位置している。
【0086】
第2増肉部612Eは、レール612Aよりもオービタルガイド612の径方向内方に位置している。第2増肉部612Eは、レール612Aの周方向においてレール612Aの最薄部分Yと略同じ位置、且つ、軸線Bに関して減肉部612Cと対称な位置に位置している。
【0087】
上述のように、レール612Aの厚みがレール612Aの周方向において変化するように形成されているため、増肉や減肉をしない場合には、オービタルガイド(単体)の重心は、軸線Bに対して最厚部分X側(軸線Bに対して最薄部分とは反対側)に位置することになる。一方、本実施の形態においては、減肉部612C、第1増肉部612D及び第2増肉部612Eを設けることにより、オービタルガイド612(単体)の重心が、軸線B上に位置するように構成されている。このように、オービタルガイド612の重心が軸線B上に位置するように構成されているため、セーバソー1に発生する振動を抑制することが可能となる。また、オービタルガイド612の重心が軸線B上に位置するように設計することで、伝達ギヤ部61及びカウンタウェイト部62の各ウェイトの質量等を微調整するだけの簡易な方法で振動を低減する構成を実現することが可能となる。
【0088】
ピン613は、上下方向に延びる略円柱形状をなしている。ピン613の下部は、ベベルギヤ611の軸線Bに関して偏心した位置に圧入により固定されている。ピン613の上部は、ベベルギヤ611の上面からオービタルガイド612のピン挿通部612Bのピン挿通孔612aを介して軸線B方向に突出している。ピン613は、本発明における「突出部」の一例である。
【0089】
ニードルベアリング614は、ピン613の上部に設けられている。言い換えると、ニードルベアリング614は、ピン613の突出端に設けられている。ニードルベアリング614は、ピン613に対して回転可能である。
【0090】
コネクティングピース615は、上下方向に延びる略円筒形状に形成されている。コネクティングピース615の内周面には、ニードルベアリング614が回転可能に設けられている。これにより、コネクティングピース615は、ピン613に対して回転可能である。ニードルベアリング614及びコネクティングピース615は、本発明における「接続部」の一例である。
【0091】
カウンタウェイト部62は、ベベルギヤ611の下方において、モータ3の回転軸31の軸線Aに関してベベルギヤ611と上下に対向するように配置される。カウンタウェイト部62は、ベベルギヤ620と、ウェイト62A(斜線部分)とを有している。カウンタウェイト部62は、本発明における「第2回転体」の一例である。
【0092】
ベベルギヤ620は、その後部においてピニオン32と噛合し、ボールベアリング6Cを介して中間軸60に対して軸線Bを中心に回転可能に構成されている。ベベルギヤ620は、平面視において、時計回り方向に回転する。ベベルギヤ620の有する歯の数は、ベベルギヤ611の有する歯の数と等しい。平面視における時計回り方向は、本発明における「第2方向」の一例である。ベベルギヤ620は、本発明における「第2ギヤ部」の一例である。
【0093】
ウェイト62Aは、カウンタウェイト部62の他の部分と一体に形成された錘であり、カウンタウェイト部62の一部分をなしている。ウェイト62Aは、カウンタウェイト部63におけるウェイト62A以外の部分の合成質量よりも大きな質量を有している。ウェイト62Aは、重心62Bを有している。
【0094】
ここで、
図4を参照しながら、伝達ギヤ部61の重心61Gと、カウンタウェイト部62の重心62Gとの関係について、説明する。
【0095】
図4に示されているように、伝達ギヤ部61、つまり、平面視における反時計回り方向に一体に回転するベベルギヤ611(ウェイト611Aを含む)、オービタルガイド612、ピン613、ニードルベアリング614及びコネクティングピース615の合成体としての重心61Gは、軸線Bから中間軸60の径方向に距離R1だけ離れた位置に位置する。なお、ウェイト611A(単体)の重心611Bは、軸線Bから中間軸60の径方向に距離D1だけ離れた位置に位置している。R1とD1とは、位置が異なる。
【0096】
また、カウンタウェイト部62(ウェイト62A)、つまり、平面視における時計回り方向に一体に回転するカウンタウェイト部62の合成体としての重心62Gは、軸線Bから中間軸60の径方向に距離R1だけ離れた位置に位置する。なお、ウェイト62A(単体)の重心62Bは、軸線Bから中間軸60の径方向に距離D2だけ離れた位置に位置している。R2とD2とは、位置が異なる。
【0097】
本実施の形態においては、D1とD2を異ならせる、すなわちベベルギヤ611に設けられたウェイト611Aの軸線Bからの径方向距離と、カウンタウェイト部62のウェイト62Aの軸線Bからの径方向距離を異ならせることで、距離R1を、距離R2と異なるように構成されている。特に、重心61Gは、重心62Gよりも軸線Bの近くに位置するように構成されている。言い換えると、軸線Bに直交する方向(前後方向)において、重心61Gと軸線Bとの距離は、重心62Gと軸線Bとの距離よりも短い。また、軸線B方向(上下方向)において、重心61Gから軸線Aまでの距離は、重心62Gから軸線Aまでの距離よりも長い。つまり、上下方向における重心61Gと軸線Aとの距離は、上下方向における重心62Gと軸線Aとの距離よりも長い。また、ベベルギヤ611に設けられたウェイト611Aの軸線Aからの軸線B方向距離と、カウンタウェイト部62のウェイト62Aの軸線Aからの軸線B方向距離も異なっており、このことも各重心の位置設定に作用している。
【0098】
また、伝達ギヤ部61と、カウンタウェイト部62との間には、以下の関係が成り立つ。G1×R1=G2×R2 ここで、G1は、伝達ギヤ部61の合成体としての質量であり、R1は、上述のように重心61Gの軸線Bからの距離である。また、G2は、カウンタウェイト部62の合成体としての質量であり、R2は、上述のように重心62Gの軸線Bからの距離である。すなわち、重心61Gの軸線Bからの距離R1と伝達ギヤ部61の合成体としての質量との積は、重心62Gの軸線Bからの距離R2とカウンタウェイト部62の合成体としての質量との積に等しくなるように構成されている。このような構成によれば、伝達ギヤ部61及びカウンタウェイト部62が同一の大きさの角速度で互いに反対方向に回転したとき、伝達ギヤ部61に発生する遠心力の大きさと、カウンタウェイト部62に発生する遠心力の大きさと等しくすることが可能となる。
【0099】
次に、
図1乃至
図4を参照しながら、プランジャ7及びブレード装着部8について、説明する。
【0100】
プランジャ7は、モータ3の駆動力の伝達経路上においてベベルギヤ611とブレード装着部8との間に介在し、ベベルギヤ611の回転運動をブレード装着部8の往復動に変換する。プランジャ7は、前後方向に延び、プランジャカバー231の前部及び後部に配置された一対の摺動メタル232A、232Bを介して、プランジャカバー231に対して前後方向に移動可能に支持されている。また、プランジャ7は、プランジャカバー231の揺動軸231Aを中心とする揺動に伴って、上下に揺動可能である。プランジャ7には、ピンガイド71が設けられている。プランジャ7は、前後方向において、ピンガイド71と一体に軸線Cに沿って移動する。ここで、軸線Cは、プランジャの軸心を通る線である。プランジャ7は、本発明における「運動変換機構」の一例である。
【0101】
ピンガイド71は、プランジャ7の前後方向における中間部に位置している。ピンガイド71の下部には、左右方向に延びるとともに上方に窪むガイド溝71aが形成されている。ガイド溝71aの前後方向の幅は、ピン613の直径よりも僅かに大きく形成されている。コネクティングピース615は、ガイド溝71aに接続され、ピン613の上部は、ニードルベアリング614及びコネクティングピース615とともに、左右方向に移動可能にガイド溝71aに収容されている。つまり、ピン613は、ピンガイド71に対して前後方向の移動が規制され、左右方向の移動が許容されている。より詳細には、コネクティングピース615がピン613の上部に対して回転することにより、ピン613、ニードルベアリング614及びコネクティングピース615は、ガイド溝71aを左右方向に移動する。また、ピンガイド71は、ピン613に対して上下方向に移動可能である。
【0102】
ブレード装着部8は、プランジャ7の前端部に設けられ、材料を切断するためのブレードQを装着可能に構成されている。ブレード装着部8は、軸線Cに沿って往復動可能にハウジング2に支持されている。ブレード装着部8は、本発明における「出力部」の一例である。
【0103】
次に、
図5乃至
図9を参照しながら、切替部235が解除位置にある場合における、本実施の形態にかかるセーバソー1を用いた被切断材(例えば、金属パイプ)の切断作業及び切断作業時のセーバソー1の動作について、説明する。なお、以下の説明においては、
図5(b)に示されるように、オービタルガイド612のピン挿通部612Bが軸線Bに対して略後方に位置する状態を基準(位相角0度)として説明する。
【0104】
切断作業を行う場合、作業者は、ブレード装着部8にブレードQを装着し、被切断材にベース23Aを押し当てる。この状態で、トリガ22Aに対して引操作を行うと、コントロールボックス51に収容された制御部が6個のFETを制御し、電池パックPの電力がモータ3へ供給され、モータ3が駆動を開始する。モータ3が駆動を開始すると、回転軸31及びピニオン32が回転し、ピニオン32と噛合するベベルギヤ611が上下方向に延びる軸線Bを中心として回転を開始する。このベベルギヤ611の回転によって、ピン613が軸線Bを中心とした周回運動を行う。このピン613の周回運動における前後方向の成分のみがピンガイド71に伝達され、プランジャ7、ピンガイド71、ブレード装着部8及びブレード装着部8に装着されたブレードQのそれぞれが最も前方に位置する状態(以下の説明においては、前方位置と呼ぶ、
図7)と、それぞれが最も後方に位置する状態(以下の説明においては、後方位置と呼ぶ、
図5)との間を一体に前後方向(
図5の軸線C方向)に往復動する。以下の説明においては、プランジャ7、ピンガイド71ブレード装着部8及びブレードQを一体として捉え、「往復動部分」と呼ぶことがある。前方位置は、本発明における「第1位置」の一例であり、後方位置は、本発明における「第2位置」の一例である。
【0105】
これと同時に、ベベルギヤ611は、噛合するピニオン32によって駆動される。ベベルギヤ611とカウンタウェイト部62との歯の数は等しいため、カウンタウェイト部62は、ベベルギヤ611と逆方向に、同じ大きさの角速度で回転する。ベベルギヤ611及びカウンタウェイト部62それぞれの回転に伴い、伝達ギヤ部61の合成体としての重心61G及びカウンタウェイト部62の合成体としての重心62Gは、軸線Bを中心として互いに逆方向に、且つ、同じ大きさの角速度で回転し、円運動を行う。
【0106】
また、ベアリング233の外輪部は、レール612Aの上端に回転しながら当接し、レール612Aの形状に沿って、上下方向に往復動する。このベアリング233の上下方向の往復動によって、ギヤハウジング23のプランジャカバー231及びプランジャ7は、揺動軸231Aの軸心を中心として、上下方向に揺動する。このため、切断作業におけるブレードQは、左右側面視において、楕円運動、いわゆるオービタル運動を行いながら、被切断材を切断する。これにより、ブレードQが後方に移動する際に被切断材に勢いよく食い込み、作業効率が向上する。
【0107】
より詳細には、
図5(b)に示されているように、オービタルガイド612は、レール612Aの最厚部分Xがベアリング233から離間し且つレール612Aの最薄部分Yがベアリング233に近接するように、矢印(i)方向に回転をする。この状態において、プランジャ7及びプランジャカバー231は、揺動軸231Aを中心に
図5(a)の反時計回り方向に回動する。また、
図9の矢印(i)に示すように、ブレード装着部8に装着されたブレードQの任意の定点は、オービタルガイド612の回転に伴い、上方に移動する。つまり、ブレードQは、上方に揺動する。
【0108】
基準(位相角0度)となる
図5(b)の状態から、オービタルガイド612が120度回転すると、
図6(b)に示されるように、ベアリング233とレール612Aの最薄部分Yとが当接する。
図9に示されているように、当該状態において、ブレードQの任意の定点は、上死点(最も高い位置)に位置する。この状態から、
図6(b)に示されるように、オービタルガイド612は、レール612Aの最薄部分Yがベアリング233から離間し且つレール612Aの最厚部分Xがベアリング233に近接するように、矢印(ii)方向に回転をする。この状態において、プランジャ7及びプランジャカバー231は、揺動軸231Aを中心に
図6(a)の時計回り方向に回動を始める。また、
図9の矢印(ii)に示すように、ブレード装着部8に装着されたブレードQの任意の定点は、オービタルガイド612の回転に伴い、下方に移動を始める。つまり、ブレードQは、下方に揺動する。
【0109】
図6に示されている状態から、オービタルガイド612がさらに60度回転すると、ピン613が軸線Bに対して略前方に位置し、往復動部分が前方位置に位置する状態となる(
図7(b))。この状態から、オービタルガイド612がさらに回転すると、ピン613が後方に移動するに伴い、往復動部分が後方に移動する。また、レール612Aの最薄部分Yがベアリング233から離間し且つレール612Aの最厚部分Xがベアリング233に近接するように、矢印(iii)方向に回転するため、プランジャ7及びプランジャカバー231は、揺動軸231Aを中心に時計回り方向に揺動し続ける。このときに、
図9の矢印(iii)に示すように、ブレード装着部8に装着されたブレードQの任意の定点は、下方に移動しつつ、後方に移動する。言い換えると、ブレードQが時計回り方向に揺動しつつ、後方に移動する。このときに、ブレードQが被切断材に勢いよく食い込み、作業効率が向上する。
【0110】
図7に示されている状態からオービタルガイド612がさらに120度回転すると、
図8(b)に示されるように、ベアリング233とレール612Aの最厚部分Xとが当接する。
図9に示されているように、当該状態において、ブレードQの任意の定点は、下死点(最も低い位置)に位置する。この状態から、
図8(b)に示されるように、オービタルガイド612は、レール612Aの最厚部分Xがベアリング233から離間し且つレール612Aの最薄部分Yがベアリング233に近接するように、矢印(iv)方向に回転をする。この状態において、プランジャ7及びプランジャカバー231は、揺動軸231Aを中心に
図8(a)の反時計回り方向に回動を始める。また、
図9の矢印(iv)に示すように、ブレード装着部8に装着されたブレードQの任意の定点は、オービタルガイド612の回転に伴い、上方に移動を始める。つまり、ブレードQは、上方に揺動する。
【0111】
次に、
図10を参照しながら、本発明の効果について、詳細に説明する。
【0112】
図10には、伝達ギヤ部61の合成体としての重心61Gとカウンタウェイト部62の合成体としての重心62Gの平面視及び右側面視における位置関係が示されている。
図10(a)から(d)は、重心61G及び重心62Gが周回する様子を90度ずつ時系列に並べたものである。
図10(a)には、プランジャ7が後方位置にある状態が示され、
図10(c)には、プランジャ7が前方位置にある状態が示されている。
図10(b)及び
図10(d)は、プランジャ7が前方位置と後方位置との中間にある状態が示されている。
【0113】
ここで、
図10中の重心7Gは、プランジャ7の重心である。
図10の右欄には、平面視における重心61G、重心62G及び重心7Gの位置関係が示されている。
図7の左欄には、右側面視における重心61G、重心62G及び重心7Gの位置関係が示されている。また、各図において重心61G、重心62Gの軌道を示すとともに、各重心に発生する慣性力又は遠心力の大きさと方向とが太い黒塗りの矢印で示されている。
【0114】
図10(c)に示されているように、プランジャ7が前方位置にある場合、重心61GC及び重心62Gは、それぞれの回転軌道における最後部に位置している。また、
図10(a)に示されているように、プランジャ7が後方位置にある場合、重心61G及び重心62Gは、それぞれの回転軌道における最前部に位置している。
【0115】
つまり、ピンガイド71、プランジャ7、ブレード装着部8及びブレード装着部8に装着されたブレードQが前方位置又は後方位置にあるとき、重心61G及び重心62Gは、軸線Bに対して重心7Gとは反対方向に位置している。言い換えると、ブレード装着部8が前方位置に位置するとき、重心61G及び重心62Gは、ブレード装着部8から最も離間し、ブレード装着部8が後方位置に位置するとき、重心61G及び重心62Gは、ブレード装着部8に最も近接している。このような構成によれば、ブレード装着部8(往復動部分)の往復動によってセーバソー1本体に発生する往復動方向の振動を抑制することが可能となる。
【0116】
また、右側面視において、重心61Gと重心62Gの移動方向は、ピンガイド71、プランジャ7、ブレード装着部8及びブレードQの移動方向とは、逆となる。言い換えると、
図10(a)乃至(d)の左欄に示されているように、重心61G及び重心62Gの移動方向は、右側面視において、プランジャ7の重心7Gの移動方向に対して、逆方向を向いている。したがって、重心61G及び重心62Gに発生する慣性力、つまり遠心力の前後方向の成分は、プランジャ7の往復動によって発生する慣性力とは逆方向を向く。これにより、ハウジング2に発生する往復動方向の振動を抑制することが可能となる。
【0117】
本実施の形態においては、往復動部分の内、プランジャ7の重心7Gに起因する往復動方向の振動を低減するように構成したが、上述のように、重心61G及び重心62Gに発生する遠心力の前後方向の成分は、往復動部分の往復動によって発生する慣性力とも逆を向いている。このため、往復動部分を構成するプランジャ7、ピンガイド71、ブレード装着部8及びブレードQの各質量によって発生する慣性力の和の大きさと、重心61G及び重心62Gに生じる遠心力の前後方向の成分の和とが等しくなるように構成することが好ましい。
【0118】
また、
図10(b)及び
図10(d)に太い矢印で示すように、重心61G及び重心62Gに発生する遠心力は、左右方向の成分において互いに逆方向となり、大きさが等しい。そのため、ハウジング2に発生する左右方向への振動は、低減又は防止される。
【0119】
上述のように、伝達ギヤ部61とカウンタウェイト部62との2つの逆回転する回転体により、往復動の振動を防止、抑制するだけでなく、セーバソー1の左右方向の振動も防止、抑制することが可能である。また、軸線Bと重心61Gとの距離と、軸線Bと重心62Gとの距離とを異ならせることが可能であり、ハウジング2の形状に合わせて、自由にベベルギヤ611の形状及び配置を設計することができる。また、バランスウェイトをウェイト611Aとウェイト61Bとの2つのウェイトに分割することにより、設計の自由度が増すとともに、ベベルギヤ611及びウェイト611Aを小さくすることが可能となる。
【0120】
また、カウンタウェイト部62は、軸線B方向において、ベベルギヤ611よりもプランジャ7及びブレード装着部8から離間している。このような構成によれば、プランジャ7やブレード装着部8と繋がっていない比較的簡易なカウンタウェイト部62が動力伝達機構全体の外側に配置されるため、ハウジング2の外形を小さくすることが可能となる。
【0121】
また、カウンタウェイト部62は、上述のように、荷重を他部材に伝達する機能を備える必要がなく、削り出しによって加工された材料に比較して強度の劣る部材としてもよい。これによって製造コスト安価にできる。カウンタウェイト部62は、微細な孔を多数有し、潤滑油を含浸させてあるため、駆動時には、遠心力を用いて潤滑油を移動させ、ギヤ部6を構成する各部品に供給することができる。また、カバー234の矩形形状は、カウンタウェイト部62からしみ出して前後左右に飛散する潤滑油を上方にガイドする働きを有している。このようにして、潤滑油を供給することは、セーバソー1の内部機構全体の長寿命化、円滑な駆動に資する。
【0122】
また、本実施の形態においては、ピニオン32から他部材を介さずに直接、ベベルギヤ611及びカウンタウェイト部62に対する駆動力の伝達が可能である。また、2つのギヤに駆動力を直接伝達する効率的な配置であり、軽量且つコンパクトな設計とすることができる。
【0123】
また、ピン613の周回運動は、ガイド溝71aによって往復動運動に変換される。このように、セーバソー1においては、運動方向の変換、駆動力の伝達が簡易な機構によって実現される。
【0124】
また、本実施の形態では、ブレードQがオービタル運動を行うことによって、被切断材の切断を効率よく行うことができる。特に、すなわちブレードQが前方位置から後方位置へ移動する際、重心61G及び重心62Gに発生する遠心力が後方に向かうことにより、左右側面視においてセーバソー1を回動させ(
図1における時計回り方向にセーバソー1を回動させ)、ブレードQを下方へ移動させるモーメントが発生する。そのため、効率よく被切断材への切込みを行うことが可能となる。
【0125】
以上、本発明を第1の実施の形態をもとに説明した。本実施の形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせ等にいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0126】
本実施の形態においては、ウェイト611A及びウェイト62Aの各ウェイトは、軸線Bの周りを周回する構成であった。しかしながら、当該構成に限定されず、各ウェイトが軸線Bから偏心した重心を持ち各ウェイトが軸線Bを中心に回転又は自転する構成としても良い。
【0127】
次に、
図11乃至
図18を参照しながら、本発明の第2の実施の形態にかかる往復動工具の一例であるセーバソー100について説明する。セーバソー100は、基本的に第1の実施の形態にかかるセーバソー1と同一の構成を有しており、セーバソー100と同一の構成については、同一の参照番号を付し説明を適宜省略し、相違する構成及びより詳細に説明すべき構成について主に説明する。
【0128】
図8に示されているように、第2の実施の形態にかかる往復動工具の一例であるセーバソー100は、ギヤ部16を有している。
【0129】
図12及び
図13に示されているように、ギヤ部16は、伝達ギヤ部161と、カウンタウェイト部162と、カウンタウェイト部163とを有している。
【0130】
伝達ギヤ部161は、第1の実施の形態にかかるセーバソー1の伝達ギヤ部61と略同一の構成を有しており、その合成体としての質量及び重心位置が伝達ギヤ部61と異なる。
図12に示されているように、伝達ギヤ部161は、その合成体の重心として、重心161Gを有している。
【0131】
カウンタウェイト部162は、第1の実施の形態にかかるセーバソー1のカウンタウェイト部62と略同一の構成を有しており、その合成体としての質量及び重心位置がカウンタウェイト部62と異なる。
図12に示されているように、カウンタウェイト部162は、その合成体の重心として、重心162Gを有している。
【0132】
カウンタウェイト部163は、カウンタウェイト部162の下方に配置される。カウンタウェイト部163は、中間軸60に固定され、一体に回転可能である。カウンタウェイト部163は、中間軸60の径方向における外端部に、ウェイト163Aを有している。カウンタウェイト部163は、本発明における「第3回転体」の一例である。
【0133】
ウェイト163Aは、カウンタウェイト部163の他の部分と一体に形成された錘であり、カウンタウェイト部163の一部分をなしている。ウェイト163Aは、カウンタウェイト部163におけるウェイト163A以外の部分の合成質量よりも大きな質量を有している。また、カウンタウェイト部163は、その合成体の重心として、重心163Gを有している。
【0134】
次に、伝達ギヤ部161と、カウンタウェイト部162と、カウンタウェイト部163との間には、以下の関係が成り立つ。G4×R4=G3×R3+G5×R5 ここで、G3は、伝達ギヤ部161の合成体としての質量であり、R3は、重心161Gの軸線Bからの距離である。また、G4は、カウンタウェイト部162の合成体としての質量であり、R4は、重心162Gの軸線Bからの距離である。また。G5は、カウンタウェイト部163の合成体としての質量であり、R5は、重心163Gの軸線Bからの距離である。
【0135】
すなわち、重心162Gの軸線Bからの距離R4とカウンタウェイト部162の合成体としての質量との積は、重心161Gの軸線Bからの距離R3と伝達ギヤ部161の合成体としての質量との積に、重心163Gの軸線Bからの距離R5とカウンタウェイト部163の合成体としての質量との積を加えたものに略等しくなるように構成されている。このような構成によれば、伝達ギヤ部161、カウンタウェイト部162及びカウンタウェイト部163が同一の大きさの角速度で回転したとき、伝達ギヤ部161及びカウンタウェイト部163に発生する遠心力の大きさと、カウンタウェイト部162に発生する遠心力の大きさを釣り合せることが可能となる。
【0136】
次に、本実施の形態にかかるセーバソー100を用いた被切断材(例えば、金属パイプ)の切断作業及び切断作業時のセーバソー100の動作について、切替部235が押圧姿勢である場合と、解除姿勢である場合とに分けて、説明する。なお、第1の実施の形態における説明と重複する部分については、説明を適宜省略する。
【0137】
まず、切替部235が押圧位置にある場合について
図14及び
図15を用いて説明する。この状態においては、切替部235がプランジャカバー231の後部を上方へ押圧し、オービタルガイドのレールとベアリングとは、離間した状態が維持される。言い換えると、切替部235が押圧位置にある場合においては、プランジャ7及びプランジャカバー231は、揺動軸231Aを中心に揺動することはない。さらに言い換えると、切替部235が押圧位置にある場合においては、ブレードQの任意の定点は、上下方向に移動することはない。
【0138】
また、切替部235が解除位置にある場合について
図16及び
図17を用いて説明する。この状態においては、ブレードQが、左右側面視において、楕円運動、いわゆるオービタル運動を行いながら、被切断材を切断する。このため、ブレードQが後方に移動する際に被切断材に勢いよく食い込み、作業効率が向上する。
【0139】
次に、
図18を参照しながら、本実施の形態における効果について説明する。
【0140】
図18には、伝達ギヤ部161の合成体としての重心161G、カウンタウェイト部162の合成体としての重心162G及びカウンタウェイト部163の合成体としての重心163Gの平面視、右側面視及び後面視における位置関係が示されている。
図18(a)から(d)は、重心161G、重心162G及び重心163Gが周回する様子を90度ずつ時系列に並べたものである。
図18(a)には、プランジャ7が後方位置にある状態が示され、
図18(c)には、プランジャ7が前方位置にある状態が示されている。
図18(b)及び
図18(d)は、プランジャ7が前方位置と後方位置との中間にある状態が示されている。
【0141】
ここで、
図18中の重心7Gは、プランジャ7の重心である。
図18の中欄には、平面視における重心161G、重心162G、重心163G及び重心7Gの位置関係が示されている。
図18の左欄には、右側面視における重心161G、重心162G、重心163G及び重心7Gの位置関係が示されている。
図18の右欄には、後面視における重心161G、重心162G、重心163G及び重心7Gの位置関係が示されている。また、各図において重心161G、重心162G及び重心163Gの軌道を示すとともに、各重心に発生する慣性力又は遠心力の大きさと方向とが太い黒塗りの矢印で示されている。
【0142】
図18(c)に示されているように、プランジャ7が前方位置にある場合、重心161GC及び重心162Gは、それぞれの回転軌道における最後部に位置している。また、
図18(a)に示されているように、プランジャ7が後方位置にある場合、重心161G及び重心162Gは、それぞれの回転軌道における最前部に位置している。
【0143】
つまり、ピンガイド71、プランジャ7、ブレード装着部8及びブレード装着部8に装着されたブレードQが前方位置又は後方位置にあるとき、重心161G、重心162G及び重心163Gは、軸線Bに対して重心7Gとは反対方向に位置している。言い換えると、ブレード装着部8が前方位置に位置するとき、重心161G、重心162G及び重心163Gは、ブレード装着部8から最も離間し、ブレード装着部8が後方位置に位置するとき、重心161G、重心162G及び重心163Gは、ブレード装着部8に最も近接している。このような構成によれば、ブレード装着部8(往復動部分)の往復動によってセーバソー1本体に発生する往復動方向の振動を抑制することが可能となる。
【0144】
また、右側面視において、重心161Gと重心162Gの移動方向は、ピンガイド71、プランジャ7、ブレード装着部8及びブレードQの移動方向とは、逆となる。言い換えると、
図7(a)乃至(d)の左欄に示されているように、重心161G及び重心162Gの移動方向は、右側面視において、プランジャ7の重心7Gの移動方向に対して、逆方向を向いている。したがって、重心161G及び重心162Gに発生する慣性力、つまり遠心力の前後方向の成分は、プランジャ7の往復動によって発生する慣性力とは逆方向を向く。これにより、ハウジング2に発生する往復動方向の振動を抑制することが可能となる。
【0145】
本実施の形態においては、往復動部分の内、プランジャ7の重心7Gに起因する往復動方向の振動を低減するように構成したが、上述のように、重心161G、重心162G及び重心163Gに発生する遠心力の前後方向の成分は、往復動部分の往復動によって発生する慣性力とも逆を向いている。このため、往復動部分を構成するプランジャ7、ピンガイド71、ブレード装着部8及びブレードQの各質量によって発生する慣性力の和の大きさと、重心161G、重心162G及び重心163Gに生じる遠心力の前後方向の成分の和とが等しくなるように構成することが好ましい。
【0146】
また、
図18(b)及び
図18(d)に太い矢印で示すように、重心161G及び重心162Gに発生する遠心力は、左右方向の成分において互いに逆方向となり、大きさが等しい。そのため、ハウジング2に発生する左右方向への振動は、低減又は防止される。
【0147】
ここで、
図18に示される軸線Dを定義する。軸線Dは、中間軸60を通るように前後方向に延びている。また、軸線Dと重心163Gとの上下方向における位置は同じである(
図12参照)。
【0148】
図18(b)及び(d)に示されるように、重心161Gの円運動によって発生する、軸線DまわりのモーメントM1と、重心163Gの円運動によって発生する、軸線DまわりのモーメントM2とは、互いに逆方向となり、打消し合う。そのため、重心161G、重心162G及び重心163Gが、
図18(b)及び(d)のように、左右方向に対称的に位置する場合であっても、セーバソー100の前後方向軸、すなわち往復動方向に延びる軸を中心とした回転方向の振動は、抑制又は防止される。
【0149】
また、セーバソー100に発生する振動を低減するためには、
図18に示されるように、モーメントM1の大きさとモーメントM2の大きさとが等しくなるように構成することが好ましい。つまり、G3×R3×L1=G5×R5×L2となることが望ましい。特に、距離L1と距離L2が等しい場合、G3×R3=G5×R5であることが望ましい。
【0150】
上述のように、伝達ギヤ部161と、カウンタウェイト部162と、カウンタウェイト部163との3つの回転する回転体により、往復動の振動を防止、抑制するだけでなく、セーバソー100の左右方向の振動も防止、抑制することが可能である。また、軸線Bと重心161Gとの距離と、軸線Bと重心162Gとの距離と、軸線Bと重心163Gとの距離とを、それぞれを異ならせることが可能であり、ハウジング2の形状に合わせて、自由にベベルギヤ611の形状及び配置を設計することができる。また、
図12に示されるように、重心162Gを重心161G及び重心163Gと比較して、軸線Bに近づける構成としている、つまり、ウェイト62Aを軸線Bに近づける配置としているため、セーバソー100をコンパクトにすることが可能となる。また、バランスウェイトを複数のウェイトに分割することにより設計の自由度が増すとともに、ベベルギヤ611及びウェイト611Aを小さくすることが可能となる。
【0151】
また、カウンタウェイト部162が軸線B方向において伝達ギヤ部161とカウンタウェイト部163との間に位置するため、往復動方向まわりのモーメントを、互いに打ち消す方向に発生させることが可能となる。
【0152】
また、カウンタウェイト部162及びカウンタウェイト部163は、荷重を他部材に伝達する機能を備える必要がなく、削り出しによって加工された材料に比較して強度の劣る部材とし、製造コストを抑えてもよい。カウンタウェイト部162及びカウンタウェイト部163は、微細な孔を多数有し、潤滑油を含浸させてあるため、駆動時には、遠心力を用いて潤滑油を移動させ、ギヤ部16を構成する各部品に供給することができる。このようにして、潤滑油を供給することは、セーバソー100の内部機構全体の長寿命化、円滑な駆動に資する。
【0153】
また、本実施の形態においても、ブレードQがオービタル運動を行うことによって、被切断材の切断を効率よく行うことができる。特に、ブレードQが前方へ移動して被切断材の切断を開始する際、重心161G、重心162G及び重心163Gに発生する遠心力が後方に向かうことにより、右側面視においてセーバソー100を回転させ(
図11における時計回り方向にセーバソー100を回転させ)、ブレードQを下方へ移動させるモーメントが発生する。そのため、効率的よく被切断材への切込を行うことが可能となる。さらに、本実施の形態においては、伝達ギヤ部161よりも合成体としての質量の総和の大きいカウンタウェイト部162及びカウンタウェイト部163の重心162G及び重心163Gが(つまり、カウンタウェイト部162とカウンタウェイト部163を一体として考えた場合に、その重心は、重心161Gよりも軸線Bの近くに位置する)、重心161Gよりもプランジャ7及びブレード装着部8から下方に離れているため、上記のモーメントを大きくすることが可能となる。つまり、セーバソー100は、オービタル運動を補助するようなカウンタウェイト部162及びカウンタウェイト部163が発生させるモーメントによってさらに作業効率を向上させることができる。なお、カウンタウェイト部162及びカウンタウェイト部163が発生させるモーメントは、オービタル運動の有無によらないため、オービタル運動を行う機能を有せずとも、従来技術によるセーバソーに比較して、作業効率が良い。
【0154】
以上、本発明を第2の実施の形態をもとに説明した。本実施の形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせ等にいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0155】
カウンタウェイト部163は、羽根形状に形成されるか、羽根形状の部材をさらに備える構成とすることもできる。この場合、カウンタウェイト部163が、潤滑油をカバー234内部で撹拌するとともに、効率よく潤滑油を前後左右に拡散させることが可能である。
【0156】
また、ウェイト162A及びウェイト163Aは、本実施の形態のように一体としてカウンタウェイト部162及びカウンタウェイト部163を構成する必要はなく、別体として組み立てられることによってカウンタウェイト部162及びカウンタウェイト部163を成す構成としても良い。
【0157】
次に、
図19及び
図20を参照しながら、本発明の第3の実施の形態にかかる往復動工具の一例であるセーバソー200について説明する。セーバソー200は、基本的に第1の実施の形態にかかるセーバソー1と同一の構成を有しており、セーバソー1と同一の構成については、同一の参照番号を付し説明を適宜省略し、相違する構成及びより詳細に説明すべき構成について主に説明する。また、セーバソー1、100と同一の構成については、第1及び第2の実施の形態の説明において説明した効果と同様の効果を奏する。
【0158】
図19及び
図20に示されているように、第3の実施の形態にかかる往復動工具の一例であるセーバソー200は、ハウジング220と、ギヤ部260とを有している。
【0159】
ハウジング220は、モータハウジング121と、ハンドルハウジング122、ギヤハウジング123と、フロントカバー124とを有している。
【0160】
モータハウジング121は、延出部212Aを有している。
【0161】
延出部212Aは、円筒部211の後部の下端から後下方へ延びた後、後方へ延出している。延出部212Aには、コントロール部5が収容されている。
【0162】
また、ハンドルハウジング122の第1接続部222の前部とモータハウジング121の円筒部211の後部の上部との間には、第1防振機構2Aが設けられている。また、ハンドルハウジング122の把持部221の下部とモータハウジング121の延出部212の後部の上部との間には、第2防振機構2Bが設けられている。
【0163】
第1防振機構2A及び第2防振機構2Bは、前後方向に伸縮可能な弾性体を有している。本実施の形態においては、当該弾性体が伸縮することにより、モータハウジング121とハンドルハウジング122とが互いに相対移動可能に構成されている。これにより、切断作業時に発生する振動が作業者に伝わることを抑制することが可能である。
【0164】
ギヤハウジング123は、カバー123Aを有している。
【0165】
カバー123Aは、ギヤ部26の下部を覆うように配置される。カバー123Aは、断面視略台形状に形成されると共に下方に突出するように設けられ、ギヤ部26の下部を支持している。
【0166】
フロントカバー124の下部には、前後方向に延在し、作業者が作業時において把持可能な、把持部124Aが形成されている。把持部124Aは、傾斜部124Bを含んでいる。
【0167】
傾斜部124Bは、後方に向かうに従って下方に傾斜するように形成されている。傾斜部124Bが形成されていることにより、作業者は、把持部124Aを把持する際に手の平を水平方向と平行となるように捻る必要がない。そして、本実施の形態においては、もう片方の手でハンドルハウジング122の把持部221を把持することにより、セーバソー200本体を好適に把持することが可能である。
【0168】
ギヤ部260は、伝達ギヤ部261と、カウンタウェイト部262とを有している。
【0169】
伝達ギヤ部261は、第1の実施の形態にかかるセーバソー1の伝達ギヤ部61を略同一の構成を有しており、その合成体としての質量及び重心位置が伝達ギヤ部61と異なる。
図20に示されているように、伝達ギヤ部261は、その合成体の重心として、重心261Gを有している。
【0170】
カウンタウェイト部262は、下方に向かうにしたがってその外径が細くなるように形成されている。下部におけるカウンタウェイト部262の外径は、伝達ギヤ部261の有するベベルギヤの外径よりも小さい。カウンタウェイト部262は、微細な孔を多数備える。そのため、カウンタウェイト部262は、これらの微細な孔に潤滑油を含浸させた状態での使用が可能であり、本実施の形態においてもカウンタウェイト部262には潤滑油が含浸させてある。カウンタウェイト部262は、その合成体の重心として、重心262Gを有している。
【0171】
本実施の形態において、重心262Gの軸線Bに対する距離は、重心261Gの軸線Bに対する距離と異なっている。より具体的には、重心262Gは、重心261Gよりも軸線Bに近い箇所に位置する。換言すれば、軸線Bに直交する方向(前後方向)において、重心261Gと軸線Bとの間の距離は、重心262Gと軸線Bとの間の距離よりも短い。また、軸線B方向(上下方向)において、重心261Gから軸線Aまでの距離は、重心262Gから軸線Aまでの距離よりも短い。つまり、上下方向における重心261Gと回転軸31との距離は、上下方向における重心262Gと回転軸31との距離よりも短い。
【0172】
このような構成によれば、カウンタウェイト部262の合成体としての重心262Gを軸線Bに近づける構成であるため、セーバソー200をコンパクトにすることが可能となる。また、カウンタウェイト部262の合成体としての重心262Gを軸線Bに近づけることでフロントカバー124の把持部124Aが傾斜部124Bを含むように形成することができる。また、重心262Gを軸線Bに近づけることにより、把持部124Aの領域を増やすことができ、増やした分だけ把持部124Aの前方領域を省略してセーバソー200の全長を小さくでき、把持し易く作業性の良いセーバソー200とすることができる。
【0173】
また、本実施の形態においても、ピニオン32から他部材を介さずに直接、伝達ギヤ部261及びカウンタウェイト部262に対する駆動力の伝達が可能である。また2つのギヤに駆動力を直接伝達する効率的な配置であり、軽量且つコンパクトな設計とすることができる。また、作業中の負荷を直に受ける中間軸60を2つのベアリング(ベアリング6A、ニードルベアリング6B)によって強固に支持しつつ、下方に位置するニードルベアリング6Bを小径にすることでカウンタウェイト部262を配置する空間を確保し、重心262Gを軸線Bに近づける(カウンタウェイト部262の有するウェイトを軸線Bに近づける)ことで、把持部124Aの傾斜部124Bをより後方に位置させることができ、コンパクトなセーバソー200を実現できる。
【0174】
また、本実施の形態においても、ブレードQがオービタル運動を行うことによって、被切断材の切断を効率よく行うことができる。特に、ブレードQが前方へ移動して被切断材の切断を開始する際、重心261G及び重心262Gに発生する遠心力が後方に向かうことにより、右側面視においてセーバソー200を回転させ(
図19における時計回り方向にセーバソー200を回転させ)、ブレードQを下方へ移動させるモーメントが発生する。そのため、効率的よく被切断材への切込を行うことが可能となる。さらに、本実施の形態においては、合成体としての質量の大きい(つまり、軸線Bの近くに位置する)カウンタウェイト部262の重心262Gが重心261Gよりもプランジャ7及びブレード装着部8から下方に離れているため、上記のモーメントを大きくすることが可能となる。つまり、セーバソー200は、オービタル運動を補助するようなカウンタウェイト部262が発生させるモーメントによってさらに作業効率を向上させることができる。なお、カウンタウェイト部262が発生させるモーメントは、オービタル運動の有無によらないため、オービタル運動を行う機能を有せずとも、従来技術によるセーバソーに比較して、作業効率が良い。
【0175】
以上、本発明の第3の実施の形態をもとに説明した。本実施の形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせ等にいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0176】
本実施の形態においては、往復動工具としてセーバソー1、100、200を例に説明したが、本発明はセーバソー以外のモータで駆動される往復動工具、例えば、ジグソー、レプシロソーやハンマ、ハンマドリル等の切断機にも適用可能である。
【符号の説明】
【0177】
1…セーバソー 2…ハウジング 3…モータ 4…制御基板 5…コントロール部 6…ギヤ部 7…プランジャ 8…ブレード装着部