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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】無線ICタグ付き容器
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/077 20060101AFI20221004BHJP
   G06K 19/07 20060101ALI20221004BHJP
   B65D 39/00 20060101ALI20221004BHJP
   B65D 51/24 20060101ALI20221004BHJP
   B65D 55/06 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
G06K19/077 304
G06K19/07 160
G06K19/077 248
G06K19/077 220
G06K19/077 272
B65D39/00 100
B65D51/24 200
B65D55/06
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019550401
(86)(22)【出願日】2018-10-30
(86)【国際出願番号】 JP2018040266
(87)【国際公開番号】W WO2019088076
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-09-22
(31)【優先権主張番号】P 2017210591
(32)【優先日】2017-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】篠原 健志
(72)【発明者】
【氏名】中林 貴光
【審査官】甲斐 哲雄
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0183135(US,A1)
【文献】国際公開第2017/184603(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/116672(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/00-19/18
B65D 39/00
B65D 51/24
B65D 55/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体、および、前記容器本体の開封部を封止する封止部を有する容器と、
前記容器に取り付けられた無線ICタグおよびキャップシールと、を備え、
前記容器本体は、前記開封部から延びる首部を備え、
前記無線ICタグは、非接触通信のためのアンテナと、断線検知のための配線と、前記アンテナおよび前記配線に接続されたICチップと、を備え、
前記キャップシールは、前記首部を囲む筒部であって、前記首部の側面に沿って配置された金属部を有する前記筒部と、前記筒部が有する2つの筒端の一方である第1端に接続されて当該第1端で前記筒部を塞ぐ頂面部と、を備え、
前記筒部は、前記第1端から延びる1以上の絶縁部を有し、前記金属部と前記絶縁部との接続によって当該筒部の周方向に沿った閉環を構成しており、
前記無線ICタグは、前記封止部上を跨いで前記首部を挟むように配置され、前記首部と前記筒部との間に前記無線ICタグの一部が挟まれ、前記ICチップは、前記キャップシールから露出されている
無線ICタグ付き容器。
【請求項2】
前記無線ICタグは、
第1面と、前記第1面とは反対側の面である第2面とを有する基材を備え、
前記アンテナは、
前記第1面に位置するコイル部であって、前記第1面内にて途切れた部分を有する前記コイル部と、
前記第2面に位置し、前記コイル部の前記途切れた部分を繋ぐように前記基材を挟んで前記コイル部と重なるジャンパー線と、
前記基材を貫通して前記ジャンパー線の端部を前記コイル部に電気的に接続する接続導体と、を備え、
前記ジャンパー線は、前記キャップシールから露出されている
請求項1に記載の無線ICタグ付き容器。
【請求項3】
前記アンテナの一部は、前記キャップシールに覆われている
請求項1または2に記載の無線ICタグ付き容器。
【請求項4】
記ICチップは、前記筒部が有する前記2つの筒端の他方である第2端から露出されている
請求項1~3のいずれか一項に記載の無線ICタグ付き容器。
【請求項5】
記無線ICタグは、前記断線検知のための配線が密集している配線密集部分を有し、当該配線密集部分は、前記頂面部と前記封止部との間に挟まれている
請求項1~4のいずれか一項に記載の無線ICタグ付き容器。
【請求項6】
前記無線ICタグは、第1面と、前記第1面とは反対側の面である第2面とを有する基材を備え、
前記アンテナと、前記断線検知のための配線が密集している部分とが、前記基材を介して互いに重なっている
請求項1~3のいずれか一項に記載の無線ICタグ付き容器。
【請求項7】
前記無線ICタグは、第1面と、前記第1面とは反対側の面である第2面とを有する基材を備え、
前記アンテナと、前記断線検知のための配線が密集している部分とが、前記基材を介して互いに重ならない位置に配置されている
請求項1~5のいずれか一項に記載の無線ICタグ付き容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャップシールと無線ICタグとを備える無線ICタグ付き容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、商品は、例えば、工場において生産され、販売店において消費者に販売されている。販売店における販売業者は、消費者に対して、正規の工場で生産され、正規の流通ルートを経て販売された商品に関して、商品の品質を保証している。すなわち、正規に販売された商品を偽造された商品と区別して、商品の品質を一定以上に保つことにより、消費者に対して商品の信頼性を向上している。
【0003】
特に、商品が、著名なブランド品のように、偽造防止のための対策を強く要する物品である場合、例えば、高級酒などの高価な商品である場合、以下の対策が実施されている。すなわち、瓶等の容器の開封部の周囲をキャップシールで被覆することによって、容器内への外気の侵入を抑えるとともに、容器が未開封であることを示している。更に、高いセキュリティ機能を有し固有のタグID番号が記憶された無線ICタグをキャップシールに備えることで、商品の偽造を防止している。
【0004】
特許文献1の無線ICタグ付きキャップにおいては、瓶のキャップの開封時に、キャップに備えられた無線ICタグのアンテナが破断されないため、キャップの開封後にも無線ICタグと外部装置との通信が可能である。これにより、キャップが開封された後にも、外部装置は、無線ICタグから、キャップの開封済みフラグや商品の情報を読み出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-114066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
無線ICタグを備えるキャップシールは、例えば、開封部付近の容器側面を覆う筒部と、筒部の一端に接続されて開封部付近の容器頂部を覆う頂面部とを有し、無線ICタグは頂面部に備えられている。筒部がシュリンクフィルムから構成されている場合、容器へのキャップシールの取り付けの際には、容器の外径よりも大きい内径を有する筒状に形成された筒部に容器の開封部付近が挿入された後、筒部が加熱されることによって収縮し、これによってキャップシールが容器に密着した形状に成形される。
【0007】
ここで、加熱によりキャップシールを容器に密着させる工程においては、容器内の内容物も少なからず加熱される。そのため、内容物が、ワイン等のように、熱によって品質の変化しやすい性質を有する場合には、金属製の筒部および頂面部を用い、加圧によってキャップシールを容器に密着させることが好ましい。
【0008】
筒部が金属製である場合、筒部に閉環状の導電路が形成されて筒部が1巻のコイルを構成しているように見做せる。そのため、頂面部に無線ICタグを配置すると、金属製の頂面部と無線ICタグとが重なり、さらに、上記コイルの中心軸上に無線ICタグが位置する構成となる。その結果、上記コイルに流れる誘導電流に起因した電磁界の変化が、無線ICタグの通信特性を低下させる要因となる。
【0009】
本発明は、金属製のキャップシールによる無線ICタグの通信特性の低下を抑えることのできる無線ICタグ付き容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する無線ICタグ付き容器は、容器本体、および、前記容器本体の開封部を封止する封止部を有する容器と、前記容器に取り付けられた無線ICタグおよびキャップシールと、を備え、前記容器本体は、前記開封部から延びる首部を備え、前記無線ICタグは、非接触通信のためのアンテナと、断線検知のための配線と、前記アンテナおよび前記配線に接続されたICチップと、を備え、前記キャップシールは、前記首部を囲む筒部であって、前記首部の側面に沿って配置された金属部を有する前記筒部を備え、前記無線ICタグは、前記封止部上を跨いで前記首部を挟むように配置され、前記首部と前記筒部との間に前記無線ICタグの一部が挟まれ、前記ICチップは、前記キャップシールから露出されている。
【0011】
上記課題を解決する無線ICタグは、開封部および前記開封部から延びる首部を有する容器本体と、前記開封部を封止する封止部とを備える容器に、前記首部を覆うキャップシールと共に取り付けられる無線ICタグであって、非接触通信のためのアンテナと、断線検知のための配線と、前記アンテナおよび前記配線に接続されたICチップと、を備え、前記無線ICタグは、前記キャップシールと前記容器との間に挟まれるように前記無線ICタグが前記容器に取り付けられたときに、前記無線ICタグが前記封止部上を跨いで前記首部を挟むとともに、前記ICチップが前記キャップシールから露出されるように、構成されている。
【0012】
上記課題を解決する無線ICタグは、開封部および前記開封部から延びる首部を有する容器本体と、前記開封部を封止する封止部とを備える容器に、前記首部を覆うキャップシールと共に取り付けられる無線ICタグであって、非接触通信のためのアンテナと、断線検知のための配線と、前記アンテナおよび前記配線に接続されたICチップと、を備え、前記無線ICタグは、前記封止部上に配置されるように構成された部分と、当該部分から互いに反対方向へ延びる2つの延出部とを有し、一方の前記延出部は、前記キャップシールよりも長く構成され、前記ICチップが前記一方の延出部の先端領域に配置される。
【0013】
上記各構成によれば、無線ICタグのICチップがキャップシールから露出されるため、キャップシールに起因した電磁界への影響を無線ICタグに対して低減できる。その結果、無線ICタグの通信特性の低下を抑えることができる。また、ICチップがキャップシールから露出しているため、容器に対するキャップシールの取り付けの際の圧力がICチップにかかることが抑えられる。それゆえ、ICチップの機能の低下が抑えられる。
【0014】
上記無線ICタグ付き容器において、前記無線ICタグは、第1面と、前記第1面とは反対側の面である第2面とを有する基材を備え、前記アンテナは、前記第1面に位置するコイル部であって、前記第1面内にて途切れた部分を有する前記コイル部と、前記第2面に位置し、前記コイル部の前記途切れた部分を繋ぐように前記基材を挟んで前記コイル部と重なるジャンパー線と、前記基材を貫通して前記ジャンパー線の端部を前記コイル部に電気的に接続する接続導体と、を備え、前記ジャンパー線は、前記キャップシールから露出されていてもよい。
【0015】
上記構成によれば、ジャンパー線がキャップシールから露出しているため、容器に対するキャップシールの取り付けの際の加圧によってジャンパー線に変形が生じることが抑えられる。それゆえ、通信用アンテナの導通が阻害されることが抑えられる。
【0016】
上記無線ICタグ付き容器において、前記アンテナの一部は、前記キャップシールに覆われていてもよい。
上記構成によれば、無線ICタグのなかでキャップシールから露出される領域が大きくなりすぎることを抑えられる。したがって、キャップシールによって保護される領域を広く確保できる。また、キャップシールと無線ICタグとの配置に要する領域が大きくなることを抑えられる。
【0017】
上記無線ICタグ付き容器において、前記キャップシールは、前記筒部が有する2つの筒端の一方である第1端に接続されて当該第1端で前記筒部を塞ぐ頂面部を備え、前記ICチップは、前記2つの筒端の他方である第2端から露出されていてもよい。
【0018】
上記構成によれば、キャップシールが構成するコイルの中心軸上に無線ICタグが位置しないため、無線ICタグの通信特性の低下を抑えることができる。また、キャップシールに開口部を形成せずとも、キャップシールからICチップを露出させることが可能であるため、キャップシールの形成や、キャップシールとICチップとの位置合わせが容易である。
【0019】
上記無線ICタグ付き容器において、前記キャップシールは、前記筒部が有する2つの筒端の一方である第1端に接続されて当該第1端で前記筒部を塞ぐ頂面部を備え、前記無線ICタグは、前記断線検知のための配線が密集している配線密集部分を有し、当該配線密集部分は、前記頂面部と前記封止部との間に挟まれていてもよい。
【0020】
上記構成によれば、頂面部と封止部とを貫通して容器の内容物を入れ替えようとした際に、断線検知のための配線が断線される。したがって、上記断線の検知によって、内容物のすり替えを検出することができる。
【0021】
上記無線ICタグ付き容器において、前記無線ICタグは、第1面と、前記第1面とは反対側の面である第2面とを有する基材を備え、前記アンテナと、前記断線検知のための配線が密集している部分とが、前記基材を介して互いに重なっていてもよい。
【0022】
上記構成によれば、無線ICタグの小型化が可能である。
上記無線ICタグ付き容器において、前記無線ICタグは、第1面と、前記第1面とは反対側の面である第2面とを有する基材を備え、前記アンテナと、前記断線検知のための配線が密集している部分とが、前記基材を介して互いに重ならない位置に配置されていてもよい。
【0023】
上記構成によれば、アンテナの配置位置の自由度が高くなり、ひいては、ICチップの配置位置の自由度が高くなる。
上記無線ICタグ付き容器において、前記キャップシールは、前記筒部が有する2つの筒端の一方である第1端に接続されて当該第1端で前記筒部を塞ぐ頂面部を備え、前記筒部は、前記第1端から延びる1以上の絶縁部を有し、前記金属部と前記絶縁部との接続によって当該筒部の周方向に沿った閉環を構成していてもよい。
【0024】
上記構成によれば、筒部に閉環状の導電路が形成されている形態と比較して、筒部のインダクタンスを減少させることができる。そのため、無線ICタグの通信特性の低下を抑えることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、金属製のキャップシールによる無線ICタグの通信特性の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】第1の実施形態の無線ICタグ付き容器の構造を示す斜視図。
図2】第1の実施形態の容器に無線ICタグを設置した構造を示す斜視図。
図3】第1の実施形態の無線ICタグの断面構造を概略的に示す断面図。
図4】第1の実施形態の無線ICタグにおける表面の配線パターンを示す平面図。
図5】第1の実施形態の無線ICタグにおける裏面の配線パターンを示す平面図。
図6】第1の実施形態の無線ICタグにおける裏面の他の配線パターンを示す平面図。
図7】第1の実施形態の無線ICタグにおける裏面の他の配線パターンを示す平面図。
図8】第1の実施形態の無線ICタグにおける断線検知部の密集配線の一部を拡大して示す平面図。
図9】第1の実施形態のキャップシールにおける絶縁部の付近の断面構造を示す図。
図10】第1の実施形態の変形例のキャップシールにおける絶縁部の付近の断面構造を示す図。
図11】第2の実施形態の無線ICタグ付き容器の構造を示す斜視図。
図12】第2の実施形態のキャップシールにおける絶縁部の付近の断面構造を示す図。
図13】第3の実施形態の無線ICタグにおける裏面の配線パターンを示す平面図。
図14】第4の実施形態の無線ICタグにおける表面の配線パターンを示す平面図。
図15】第4の実施形態の無線ICタグにおける裏面の配線パターンを示す平面図。
図16】第4の実施形態の容器に無線ICタグを設置した構造を示す図。
図17】第4の実施形態の無線ICタグ付き容器の構造を示す斜視図。
図18】実施例の無線ICタグの平面構造を示す図。
図19】実施例の無線ICタグにおけるインレット部の配線パターンを拡大して示す図。
図20】実施例の無線ICタグ付き容器の構造を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<第1の実施形態>
図1図10を参照して、無線ICタグ付き容器、および、無線ICタグの第1の実施形態について説明する。
【0028】
(無線ICタグ付き容器)
第1の実施形態の無線ICタグ付き容器は、図1が示すように、容器本体30および封止部32から構成される容器と、当該容器に取り付けられた無線ICタグ10およびキャップシール20とを備える。なお、キャップシールは、カプセル(capsule)、シース(sheath)、あるいは、保護スリーブ(protective sleeve)等とも称される。
【0029】
容器本体30は、酒、ワイン、ジャム、ドレッシング、たれ、スパイスなどを収容する瓶や、プラスチック製の入れ物等である。容器本体30には、内容物を出し入れする開口が形成されている。上記開口は、蓋やコルク栓などの封止部32によって閉塞される。容器本体30における上記開口を有する部分が開封部であり、封止部32は開封部を封止している。
【0030】
容器本体30の形状、容器本体30の大きさ、および、容器本体30に収容される内容物は、特に限定されない。また、封止部32は、容器本体30の開口を塞ぐ構造を有していれば、その形状や材質は特に限定されず、封止部32は、開口に詰められる栓であってもよいし、開口に被せられる蓋であってもよい。
【0031】
図2は、無線ICタグ10およびキャップシール20のうち、無線ICタグ10のみが容器に取り付けられた状態を示す。また、図3は、無線ICタグ10におけるその延びる方向に沿った断面構造を示し、図4は、無線ICタグ10の平面構造を示す。無線ICタグ10は、インレット部Aと断線検知部Bとを備える。断線検知部Bは、断線検知部B1と断線検知部B2と断線検知部B3とから構成される。
【0032】
図2が示すように、容器本体30の開封部から延びる部分である首部31のなかの下部に、無線ICタグ10のインレット部Aが設置される。無線ICタグ10の断線検知部Bは、首部31におけるインレット部Aが配置されている部位から、封止部32を跨いで、首部31における上記部位と反対側の部位まで延びている。無線ICタグ10の断線検知部B2は、封止部32に貼り付けられる。
【0033】
詳しくは、図4に示す断線検知部Bの断線検知部B2は、封止部32上に配置され、断線検知部B1と断線検知部B3とは、首部31の外周面に配置される。これにより、断線検知部B1が有する第1線状配線16aと、断線検知部B3が有する第2線状配線16bとは、首部31の外周面に沿って位置する。
【0034】
キャップシール20は、図1が示すように、容器本体30の首部31および封止部32と、首部31および封止部32に取り付けられた無線ICタグ10とを包む。キャップシール20が被せられていることにより、容器が未開封であることが示される。キャップシール20と容器との間に無線ICタグ10の断線検知部Bが挟まれ、首部31を覆うキャップシール20の内側面に、無線ICタグ10の断線検知部B1と断線検知部B3とが貼り付けられる。
【0035】
なお、キャップシール20の内側面に予め無線ICタグ10の断線検知部B1と断線検知部B3とを接着させた一体物を容器に取り付け、その際に無線ICタグ10の断線検知部B2を封止部32に貼り付けることで、容器にキャップシール20および無線ICタグ10を取り付けてもよい。
【0036】
キャップシール20は、金属製であり、図1が示すように、無線ICタグ10のインレット部Aは、キャップシール20から露出される。あるいは、キャップシール20は、インレット部Aの上部のみを覆い、インレット部Aの中央部と下部は、キャップシール20から露出される。
【0037】
容器を開封するときには、通常、首部31を覆うキャップシール20が破られた後に、封止部32が首部31から取り外される。そのため、容器が開封されたときには、断線検知部Bが有する断線検知配線16のうち、断線検知部B1の第1線状配線16aおよび断線検知部B3の第2線状配線16bの少なくとも一方が断線する。その断線検知配線16の断線を無線ICタグ10のICチップ13が検出して記憶する。
【0038】
(無線ICタグ10)
無線ICタグ10は、RFIDシステムに利用される非接触通信部と、容器開封検知部とを備えたタグである。無線ICタグ10の構成を図3から図7に示す。図4は、無線ICタグ10の表面の配線の概要を示し、図5から図7は、無線ICタグの裏面の配線の種々の形態の概要を、表面から見た透視図で示す。
【0039】
図3が示すように、無線ICタグ10は、インレット部Aと断線検知部Bとを備える。インレット部Aおよび断線検知部Bの各々は、基材11と基材11上の配線とを含んで構成される。基材11の表面に表面用導体配線が形成されており、裏面に裏面用導体配線が形成されている。そして、表面用導体配線と裏面用導体配線とが表裏貫通接続導体14で接続される。基材11の表面は第1面の一例であり、基材11の裏面は第2面の一例である。
【0040】
[基材11と導体配線]
基材11には、例えばPET(polyethylene terephthalate)等の各種の樹脂フィルムや、紙や合成紙等が用いられる。基材11の表面および裏面に形成される導体配線は、薄膜状の導電性材料から構成された導電パターンであることが好ましい。
【0041】
薄膜状の導電性材料には、アルミニウム、銅、金、銀等の金属薄膜や金属箔、および、金属材料を含む塗布膜が含まれる。導体配線を形成する方法としては、エッチング、印刷法、メッキ法等が挙げられる。例えば、銀系の導電性ペーストを紙の基材11上にスクリーン印刷することで導体配線を形成することができる。
【0042】
上述のように、無線ICタグ10は、容器本体30を挟むように、首部31から封止部32を跨いで首部31の反対側の位置まで設置される。無線ICタグ10の断線検知部B1は首部31の外周面に設置され、断線検知部B2は封止部32に貼り付けられ、断線検知部B3は封止部32を跨いだ反対側の首部31の外周面に設置される。断線検知部B1と断線検知部B3とは、無線ICタグ10を覆うキャップシール20に接着剤で貼り付けられる。
【0043】
無線ICタグ10は、図4から図7が示すように、1つの方向に沿って延びる細長い形状を有する。
[インレット部A]
図4が示すように、無線ICタグ10のインレット部Aは、基材11の表面に位置する表面用導体配線から構成されるアンテナコイル12と、裏面に位置するジャンパー線15とを表裏貫通接続導体14で接続して形成した通信用アンテナ、および、アンテナコイル12の端部に電気接続したICチップ13を備えている。
【0044】
[通信用アンテナ]
図4が示すように、インレット部Aの通信用アンテナのアンテナコイル12は、ICチップ13の非接触通信部用電極端子に電気的に接続される。アンテナコイル12は、基材11の表面の、例えば、10μm程度の線幅を有する表面用導体配線が、複数回引き回されたループ形状を有する。アンテナコイル12と基材11の裏面に位置するジャンパー線15とが表裏貫通接続導体14で接続されることにより、通信用アンテナが構成されている。通信用アンテナのパターン形状は、所望の周波数特性や通信距離等の特性に応じて設定される。
【0045】
[表裏貫通接続導体14とジャンパー線15]
通信用アンテナの配線を基材11の表裏で立体的に交差させる部分は、基材11の表面に位置するアンテナコイル12と、表裏貫通接続導体14と、基材11の裏面に位置するジャンパー線15とから構成される。すなわち、アンテナコイル12の一方の端部を、表裏貫通接続導体14を介して、ジャンパー線15の一方の端部に接続し、ジャンパー線15をアンテナコイル12に立体的に交差させる。そして、ジャンパー線15の他方の端部を、表裏貫通接続導体14を介して、アンテナコイル12の他方の端部に接続することにより、通信用アンテナの配線が完成される。
【0046】
無線ICタグ10の断線検知部B1と断線検知部B3との長さは、キャップシール20の長さに対応しているが、無線ICタグ10のインレット部Aは、断線検知部B1の付近でキャップシール20と重なる部分を有する場合がある。そのため、ICチップ13とジャンパー線15とは、インレット部Aの中央部に対して断線検知部B1とは反対側に配置される。
【0047】
このように、インレット部Aのなかで、断線検知部B1に近い側とは反対側にICチップ13とジャンパー線15とが配置されているため、キャップシール20がインレット部Aに重なっても、キャップシール20はジャンパー線15とICチップ13との実装部分まで達しない。
【0048】
そのため、金属製のキャップシール20を容器に密着させるために圧延して装着する際に、無線ICタグ10のインレット部Aにおけるジャンパー線15とICチップ13との実装部分がその圧延のストレスを受けにくい。したがって、圧延によってジャンパー線15やICチップ13の機能が低下することが抑えられる。また、容器の開封のためにキャップシール20を引き剥がす際に、キャップシール20と一緒に無線ICタグ10の断線検知部Bも引き裂かれ、断線検知配線16が断線するが、その際に、ジャンパー線15やICチップ13が破損することも抑えられる。
【0049】
なお、通信用アンテナの通信周波数としては、13.56MHz帯、900MHz帯、2.45GHz帯、5.8GHz帯等のように、小さいアンテナによる通信が可能な周波数帯が使用される。こうした通信アンテナを備える無線ICタグ10が通信可能な距離は、数cmから1m程度である。そして、ICチップ13の駆動用のエネルギーは、通信用アンテナに近接するリーダ装置から電磁波として放射されるため、エネルギー源として機能する電池をインレット部Aは内蔵していない。そのため、インレット部Aが破壊されない限り、無線ICタグ10は半永久的に使用される。
【0050】
[ICチップ13]
ICチップ13が有する非接触通信部用電極端子には、アンテナコイル12が電気接続される。また、ICチップ13の容器開封検知部用電極端子には、断線検知配線16が電気接続される。
【0051】
ICチップ13とアンテナコイル12とは、はんだによって接続されてもよいし、異方性導電ペースト(ACP:Anisotropic Conductive Paste)、あるいは、異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)等の金属粒子を含有するバインダーによって接続されてもよい。
【0052】
ICチップ13の大きさは、例えば平面視で1辺が0.05mm~0.5mmの四角形であればよく、ICチップ13の厚さは、例えば0.1mmであればよい。ICチップ13は、ベアチップでも良いし、各種のICパッケージやチップサイズパッケージ(CSP)のように封止材で封止されていてもよい。
【0053】
ICチップ13が有する非接触通信部は、所定の通信方式を用いて、RFIDシステムのリーダ装置と通信し、容器本体30に充填された内容物の情報、および、容器の開封の有無の情報を上記リーダ装置に送信する。
【0054】
また、ICチップ13が有する容器開封検知部用電極端子には、基材11の裏面の断線検知配線16が、表裏貫通接続導体14を介して、電気接続される。そして、ICチップ13は、上記端子に電気接続した断線検知配線16の抵抗値を監視する機能を有する。ICチップ13は、断線検知配線16の抵抗値が所定の値である第1の値から、第1の値とは異なる第2の値に変わったときに、断線検知配線16が断線し商品が開封されたと判定する容器開封検知部を有する。そして、容器開封検知部が断線検知配線16の断線、すなわち、容器の開封の有無を記憶する。
【0055】
[断線検知部B]
図5図6図7が示すように、断線検知部Bにおける基材11の裏面には、裏面用導体配線によって断線検知配線16が形成されている。断線検知部Bは、容器本体30の首部31に配置される断線検知部B1と、封止部32に配置される断線検知部B2と、容器本体30に対して断線検知部B1とは反対側で首部31に配置される断線検知部B3とから構成される。
【0056】
断線検知部B1および断線検知部B3においては、基材11に複数のスリット11aが形成されている。各スリット11aは、基材11の縁から内側に向けて延びている。各スリット11aは、基材11に形成された切れ込みであり、基材11を厚さ方向において貫通してもよいし、貫通していなくてもよい。断線検知部B1および断線検知部B3においては、スリット11aの端部の先に位置する基材11の中央部に断線検知配線16が配置されている。
【0057】
スリット11aは、キャップシール20が引き裂かれて容器が開封される際に、キャップシール20と一緒に無線ICタグ10の断線検知部Bが引き裂かれて断線検知配線16が断線されるように、無線ICタグ10の破断を誘導する。そのために、断線検知部B1および断線検知部B3は、キャップシール20の、容器本体30に向けられる面に接着剤で接着される。
【0058】
[断線検知配線16]
断線検知配線16は、ICチップ13が有する一対の容器開封検知部用電極端子に、基材11の表面の配線および表裏貫通接続導体14を介して接続されている。断線検知配線16は、一端から他端まで一つながりの1本の配線から構成される。
【0059】
詳細には、図5が示すように、断線検知配線16は、断線検知部B1の第1線状配線16aと、断線検知部B2の密集配線17と、断線検知部B3の第2線状配線16bとを含む1本の配線である。
【0060】
[断線検知部B2]
無線ICタグ10の断線検知部Bの断線検知部B2は、封止部32を覆う位置に設置される。断線検知部B2では、断線検知配線16が密集配線17を構成する。
【0061】
断線検知部B2の密集配線17は、図5図6図7が示すように、封止部32の上を複数回にわたり横切る折れ線形状や螺旋形状のパターンを構成している。より詳しくは、密集配線17は、例えば図5または図6が示すように、複数の屈曲部を有したつづら折り状の折れ線形状、言い換えればメアンダ状のパターンを構成している。また、密集配線17は、例えば図7が示すように、封止部32の上を複数回にわたり横切る螺旋形状のパターンを構成してもよい。
【0062】
図8が示すように、断線検知部B2の密集配線17は、配線幅Wの配線である導体線が、隣り合う導体線との間に配線間距離D1を隔てて並ぶように構成される。配線間距離D1と隣り合う2つの導体線の配線幅Wの合計であるD1+2×Wを、第2距離D2と定義する。第2距離D2は、0.225mm以上3mm以下であることが好ましい。
【0063】
容器本体30であるワインボトル等に保存されたワイン等の内容物を偽物にすり替える方法として、以下の方法がある。すなわち、容器本体30の開口を塞ぐコルク栓などの封止部32に筒状の針Nが刺され、針Nを通じて本物の内容物が容器本体30から取り出され、かつ、偽物の内容物が容器本体30に注入される。
【0064】
本実施形態においては、針Nが封止部32に刺さったときに、封止部32に設置した断線検知部B2の密集配線17が断線させられる。その密集配線17の断線をICチップ13が検知して記憶する。これにより、容器本体30の内容物のすり替えをICチップ13が検出して記憶することができる。
【0065】
密集配線17では第2距離D2が針Nの直径Dia以下であることが好ましい。第2距離D2が0.225mm以上3mm以下であれば、第2距離D2が針Nの直径Dia以下になる可能性が高まるため、針Nにより密集配線17が断線されやすくなる。
【0066】
密集配線17の配線幅Wは、密集配線17を構成するすべての部分において一定の値でなくてもよく、また、配線間距離D1は、互いに隣り合う導体線間のすべてにおいて一定の値でなくてもよい。配線幅Wや配線間距離D1が一定でない場合であっても、密集配線17の各部で第2距離D2が上述した範囲に含まれていればよい。
【0067】
上述のように、断線検知部B2は封止部32に配置され、断線検知部B1と断線検知部B3とは、首部31の外周面に配置される。すなわち、断線検知部Bは、封止部32を跨いで容器本体30の首部31を挟むように配置される。これにより、断線検知部B1の第1線状配線16aと、断線検知部B3の第2線状配線16bとは、首部31の外周面に沿って位置する。
【0068】
したがって、容器を開封すると、第1線状配線16aおよび第2線状配線16bの少なくとも一方が断線し、それを無線ICタグ10のICチップ13が検出することができる。これにより、容器の開封をICチップ13が検出して記憶することができる。第1線状配線16aと第2線状配線16bとが首部31を挟んで配置されるため、容器の開封に際しての断線検知配線16の断線の確実性が高められる。
【0069】
(キャップシール20)
先の図1に示したように、キャップシール20は、封止部32の上に配置された無線ICタグ10の断線検知部B2を覆う頂面部22と、容器本体30の首部31を囲む筒状を有する筒部21とを備えたカップ状の形状を有する。換言すれば、頂面部22は、筒部21が有する2つの筒端の一方に接続されて、当該筒端で筒部21を塞ぎ、キャップシール20の頂部を構成する。筒部21において、頂面部22が接続される筒端が第1端であり、第1端と反対側の筒端が第2端である。
【0070】
[筒部21]
筒部21は、容器本体30を囲む金属部21aと、筒部21の軸方向に沿って延びる帯状の絶縁部21bとを有している。筒部21の長さは、容器本体30の首部31の長さに応じて変わるが、ワインやブランデー用の容器本体30の場合、50mmから70mm程度になる。
【0071】
金属部21aは、圧延等によって引き延ばされた金属からなるシートから構成されており、容器本体30における首部31の側面に沿って配置される。金属部21aを構成する金属は特に限定されず、例えば、アルミニウムや錫等が挙げられる。金属部21aは、単一のシート状の部材であって、筒部21の周方向に容器本体30の外周を一巻きして絶縁部21bの位置で途切れている。
【0072】
絶縁部21bは、絶縁性接着剤である樹脂から構成されている。こうした樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂が挙げられる。特に、エポキシ樹脂は、絶縁性が高いため、絶縁部21bの材料として好適に用いられる。絶縁部21bの抵抗率は、10Ωm以上であることが好ましい。
【0073】
絶縁部21bは、筒部21の軸方向における一方の端部から他方の端部まで、直線状に延びている。すなわち、絶縁部21bは、筒部21の有する2つの筒端を結んでいる。
図9は、絶縁部21bの付近における筒部21の径方向に沿った断面構造を示す。図9が示すように、筒部21の周方向における金属部21aの両端部の各々は絶縁部21bに接着されている。金属部21aの上記両端部である2つの端部は、その間に絶縁部21bを挟んで重なる部分を有する。上記2つの端部は絶縁部21bによって絶縁される。このように、金属部21aと絶縁部21bとによって筒部21の周方向に沿った閉環が構成されている。
【0074】
筒部21の外側から見て、絶縁部21bは、筒部21の周方向における金属部21aの端部からはみ出していることが好ましく、また、筒部21の内側から見ても、絶縁部21bは、筒部21の周方向における金属部21aの端部からはみ出していることが好ましい。こうした構成によれば、容器へのキャップシール20の取り付けに際して、筒部21に変形が生じた場合であっても、金属部21aの両端部が互いに接触することが的確に抑えられる。
【0075】
上記構成によれば、金属部21aにおける筒部21の周方向に延びる導電路が絶縁部21bによって遮られる。すなわち、筒部21の周方向に沿った伝導が絶縁部21bによって遮られる。そのため、筒部21に閉環状の導電路が形成されている構成と比較して、筒部21のインダクタンスを減少させることができる。したがって、無線ICタグ10とリーダ装置等の外部機器との非接触通信に際して、筒部21に起因した電磁界への影響を無線ICタグ10に対して低減できる。その結果、無線ICタグ10の通信距離等の通信特性の低下を抑えることができる。
【0076】
ここで、絶縁部21bは、筒部21の2つの筒端間に延びていればよく、絶縁部21bは、筒部21の延びる方向、すなわち、筒部21の軸方向に沿って直線状に延びてもよいし、その他の構成を有していてもよい。例えば、筒部21の外側から見て、絶縁部21bは、筒部21の延びる方向に対して傾斜した方向に延びてもよいし、曲線状に延びてもよいし、図柄を構成するように延びていてもよい。
【0077】
なお、筒部21と頂面部22との接続部分の構成は特に限定されない。例えば、筒部21の端部が径方向の内側に張り出すように折り曲げられ、この折り曲げられた部分に筒部21の外側もしくは内側から頂面部22が貼り付けられていてもよい。あるいは、頂面部22の端部が筒部21の軸方向に延設され、この延設された部分に、筒部21の内側面もしくは外側面が貼り付けられていてもよい。
【0078】
[変形例]
金属部21aと絶縁部21bとの位置関係は、上記構成に限らず、図10に示す構成であってもよい。すなわち、金属部21aの両端部は、絶縁部21bの表面において筒部21の周方向に沿って並んでいる。2つの端部が離れていれば、これらの端部の間は絶縁部21bで埋められていてもよいし、隙間が空いていてもよい。
【0079】
こうした構成においては、筒部21の外側から見て、筒部21の周方向における金属部21aの両端部の間に絶縁部21bが挟まれている。要は、筒部21の周方向に沿った伝導が絶縁部21bによって遮られるように、金属部21aと絶縁部21bとが接続されていればよい。
【0080】
また、筒部21の周方向に並ぶ複数の絶縁部21bが設けられていてもよい。すなわち、金属部21aが、筒部21の周方向に複数の部分に分割されており、金属部21aの隣り合う2つの部分の端部が絶縁部21bに接着されることにより閉環が形成される。換言すれば、複数の絶縁部21bが設けられ、筒部21の周方向に隣り合う金属部21aの2つの部分が絶縁部21bで繋がれるように、金属部21aの各部分と絶縁部21bとが配置される。
【0081】
このように、金属部21aを複数の部分に分割して絶縁する構成であれば、筒部21の周方向に延びる導電路がより細かく分断されるため、無線ICタグ10の通信特性が金属部21aに影響されて低下することをさらに抑制することができる。
【0082】
(キャップシール20の容器への取り付け)
キャップシール20の容器への取り付けは、例えば、以下の手順で行われる。すなわち、まず、先の図2に示したように、容器本体30および封止部32に対し、断線検知部B2を封止部32に貼り付けて無線ICタグ10を配置する。
【0083】
一方で、筒部21と頂面部22とを接合してキャップシール20を組み立てる。そのキャップシール20の筒部21を、封止部32および首部31と、これらの上に配置した無線ICタグ10とに被せる。次に、カシメ加工等による圧延加圧によってキャップシール20の筒部21を容器本体30に密着させる。
【0084】
図1は、キャップシール20が圧延されて容器本体30に密着している例を示す。無線ICタグ10の断線検知部Bは、キャップシール20の内側面と容器本体30の外周面との間に挟まれてキャップシール20によって覆われる。無線ICタグ10のインレット部Aの少なくとも一部は、キャップシール20から露出している。特に、インレット部Aのジャンパー線15とICチップ13とは、キャップシール20から露出される。
【0085】
キャップシール20が、無線ICタグ10の断線検知部Bを覆っているため、容器本体30の開封の際にキャップシール20と一緒に断線検知部Bが引き裂かれる。また、無線ICタグ10のインレット部A、特に、ジャンパー線15およびICチップ13が、キャップシール20から露出しているため、金属製のキャップシール20を圧延して容器に取り付ける際に、圧延のストレスによってジャンパー線15およびICチップ13が破壊されることが抑えられる。
【0086】
なお、キャップシール20の組み立てと容器への取り付けとを並行して行ってもよい。例えば、筒部21に容器本体30の首部31を通した後に、筒部21に頂面部22を接合してキャップシール20を完成させてもよい。
【0087】
あるいは、金属部21aを容器本体30の首部31に巻き付けた後に、絶縁部21bによって金属部21aの端部の接着を行うことにより、筒部21を形成し、その筒部21に頂面部22を接合してキャップシール20を完成させてもよい。
【0088】
あるいは、予め無線ICタグ10を内側面に接着させたキャップシール20を容器に取り付けてもよい。
なお、無線ICタグ10のなかでキャップシール20から露出しているインレット部Aには、無線ICタグ10を外部から保護するための保護層等の層が積層されていてもよい。
【0089】
以上説明したように、第1の実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)無線ICタグ付き容器は、キャップシール20が引き裂かれて容器から取り外される際に、キャップシール20と共に無線ICタグ10の断線検知部Bも引き裂かれ、断線検知配線16が断線するように構成されている。そして、無線ICタグ10のICチップ13が、断線検知部Bの断線を検知して容器の開封を記憶する。これにより、容器の開封の前後において、無線ICタグ10との通信により容器の開封状態を管理することができる。また、無線ICタグ10の断線検知部Bがキャップシール20で覆われていてキャップシール20と一緒に引き裂かれるため、無線ICタグ10のみを容器から取り外して偽の商品の容器に取り付ける偽造が困難である。
【0090】
(2)針Nが封止部32に刺されて内容物が差し替えられる場合にも、封止部32とキャップシール20の頂面部22とに挟まれた断線検知部B2の密集配線17が断線させられる。無線ICタグ10は、その断線検知部B2の断線を検知して容器の開封を記憶することで、内容物のすり替えを検出して記憶することができる。
【0091】
(3)ICチップ13が、キャップシール20の筒部21の下端から露出し、容器本体30の外周面に沿って配置される。そのため、従来のように、頂面部22と無線ICタグとが重なり、筒部21が構成するコイルの中心軸上に無線ICタグが位置する形態と比較して、キャップシール20に起因した電磁界への影響を無線ICタグ10に対して低減できる。その結果、無線ICタグ10の通信特性の低下を抑えることができる。
【0092】
(4)ICチップ13がキャップシール20から露出しているため、容器に対するキャップシール20の取り付けの際の圧力がICチップ13にかかることが抑えられる。それゆえ、ICチップ13の機能の低下が抑えられる。また、ジャンパー線15がキャップシール20から露出しているため、容器に対するキャップシール20の取り付けの際の加圧によってジャンパー線15に変形が生じることが抑えられる。それゆえ、通信用アンテナの導通が阻害されることが抑えられる。
【0093】
(5)筒部21の金属部21aの周方向に沿った伝導が絶縁部21bによって遮られるため、筒部21に閉環状の導電路が形成されている形態と比較して、筒部21のインダクタンスを減少させることができる。そのため、インレット部Aの通信用アンテナを介した無線ICタグ10と外部機器との非接触通信に際して、無線ICタグ10の通信特性の低下を抑えることができる。
【0094】
(6)図9に示す構成、すなわち、絶縁部21bが、筒部21の径方向に沿って金属部21aの端部間に挟まれている構成、あるいは、図10に示す構成、すなわち、絶縁部21bが、筒部21の外側から見て筒部21の周方向に沿って金属部21aの端部間に挟まれている構成によれば、上記伝導の絶縁部21bによる遮断が好適に実現できる。
【0095】
特に、図9の構成、すなわち、絶縁部21bが、金属部21aの2つの端部同士が重なる位置でこれら2つの端部の間に挟まれている構成では、金属部21aの端部同士が重なることによって筒部21の強度を高めることが可能である。そして、絶縁部21bが絶縁性接着剤から形成される構成であれば、筒部21の製造が容易である。
【0096】
また、図10の構成、すなわち、単一の金属部21aを巻いて筒形状を形成し、筒部21の周方向における金属部21aの両端を絶縁性接着剤からなる絶縁部21bで接着した構成であれば、以下の効果が得られる。すなわち、筒部21を形成する金属部21aの両端を絶縁性接着剤からなる絶縁部21bが接続することで、金属部21aの両端を重ねずに筒形状を形成することができるので、簡易な構成によって絶縁部21bを有する筒部21が実現できる。したがって、筒部21の生産効率も高められる。
【0097】
(7)キャップシール20の容器への取り付けに際して加熱を行わなくてもよいため、容器の内容物の熱による変質が抑えられる。特に、内容物がワインのように酒類である場合に有用性が高い。
【0098】
<第2の実施形態>
図11および図12を参照して、無線ICタグ付き容器、および、無線ICタグの第2の実施形態について説明する。以下では、第1の実施形態との相違点を中心に説明し、第1の実施形態と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0099】
図11および図12が示すように、第2の実施形態は、キャップシール20の構成が第1の実施形態と相違する。
第2の実施形態のキャップシール20は、筒部21と頂面部22とを備え、頂面部22の構成は、第1の実施形態と同様である。第2の実施形態のキャップシール20の筒部21は、絶縁層と金属層からなる多層構造を有した複合シートの金属層を分割して複数の金属部21aを形成したシートから構成される。
【0100】
互いに隣り合う金属部21aは、筒部21が有する2つの筒端を結ぶ隙間Sによって、筒部21の周方向に分離されている。隙間Sは、筒部21の軸方向における一方の端部から他方の端部まで延びている。絶縁層21cは隙間Sによって分断されておらず、1つの連続した層である。隙間Sは、絶縁層21c上において金属部21aを分断している。隙間Sの数が2以上である場合、2つの隙間Sで挟まれることによって区画された金属部21aが存在する。
【0101】
隙間Sは、筒部21の2つの筒端を結んでいればよく、筒部21の軸方向に平行に延びる直線状であってもよく、また、軸方向から傾斜した方向に延びてもよい。例えば、筒部21の外側から見て、隙間Sは、筒部21の軸方向に対して一定の角度で傾斜した方向に延びてもよいし、傾斜角度が場所によって異なる曲線状に延びてもよいし、隙間Sが図柄を構成してもよい。
【0102】
絶縁層21c上で金属部21aを分断する隙間Sは、例えば、絶縁層に金属層が積層された複合シートの金属層をエッチングすることで、金属層を複数の金属部21aに分割することによって形成することができる。
【0103】
図12が示すように、金属部21aは、絶縁層21cに対して筒部21の径方向の外側に位置する。すなわち、筒部21の外側から見た場合、金属部21aが視認される。そして、金属部21aの内側で、絶縁層21cが容器本体30および無線ICタグ10に接触する。
【0104】
絶縁層21cは、絶縁性の樹脂から構成される。絶縁性の樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン等が挙げられる。絶縁層21cの抵抗率は、10Ωm以上であることが好ましい。金属部21aを構成する金属としては、例えば、アルミニウム、錫、銅等が挙げられる。
【0105】
筒部21の周方向における両端部、すなわち、複合シートの両端部は、第1の実施形態と同様に絶縁性接着剤からなる絶縁部21bで接着されていてもよいし、絶縁性接着剤からなる絶縁部21bによる接着とは異なる方法によって接合されていてもよい。
【0106】
第2の実施形態のキャップシール20においては、絶縁層21cのなかで、隙間Sと対向する位置で、隙間Sによって分離された金属部21aの端部を繋いでいる部分が、絶縁部の一例である間隙絶縁部を構成する。そして、金属部21aと間隙絶縁部との接続によって、筒部21の周方向に沿った閉環が構成されている。筒部21の外側から見て、間隙絶縁部は、筒部21の周方向に沿って並ぶ金属部21aの端部間に挟まれている。
【0107】
上記構成においては、筒部21の周方向に沿った伝導が間隙絶縁部によって遮られる。そのため、筒部21に閉環状の導電路が形成されている形態と比較して、無線ICタグ10の通信特性の低下を抑えることができる。
【0108】
また、図11および図12が示すように複数の隙間Sが設けられている形態では、隙間Sが1つである形態と比較して、筒部21の周方向に延びる導電路が、より細かく分断される。その結果、筒部21のインダクタンスをより減少させることができるため、無線ICタグ10の通信特性の低下をさらに抑えることができる。そして、複合シートにおける金属部21aのパターニングによって隙間Sを形成すれば、容易に複数の隙間Sを形成することができる。
【0109】
また、キャップシール20が隙間Sで引き裂かれる際に無線ICタグ10の断線検知部B1または断線検知部B3が引き裂かれやすいように、断線検知部B1または断線検知部B3を、筒部21の外側から見て隙間Sに交差する部分を有するように構成し、当該部分をキャップシール20における隙間Sが位置する部分の内側面に接着してもよい。
【0110】
以上説明したように、第2の実施形態によれば、第1の実施形態の(1)~(5),(7)の効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
(8)絶縁層21c上の隙間Sによって金属部21aが分離されていることにより、筒部21の周方向に沿った伝導が絶縁部によって遮られた構成が実現される。これによれば、隙間Sの位置や大きさや形状等の設定によって、絶縁部の位置や大きさや形状の調整が可能である。したがって、絶縁部の位置や大きさや形状についての調整が容易であり、その自由度も高められる。
【0111】
(9)複数の隙間Sが設けられていることにより、複数の絶縁部が設けられている形態であれば、筒部21の周方向に延びる導電路がより細かく分断されるため、無線ICタグ10の通信特性の低下をさらに抑えることができる。
【0112】
<第3の実施形態>
図13を参照して、無線ICタグ付き容器、および、無線ICタグの第3の実施形態について説明する。以下では、第1の実施形態との相違点を中心に説明し、第1の実施形態と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0113】
図13は、第3の実施形態の無線ICタグ10の裏面の配線パターンを示す。第3の実施形態の無線ICタグ10においては、図13が示すように、断線検知部B4、インレット部A、断線検知部B1、封止部32に設置する断線検知部B2、断線検知部B3が、この順に繋がっている。
【0114】
すなわち、第3の実施形態は、インレット部Aが、無線ICタグ10の延びる方向において断線検知部B4と断線検知部B1との間に挟まれている点が第1の実施形態と相違する。また、第3の実施形態においては、キャップシール20の筒部21が開口部を有する。そして、キャップシール20が容器に取り付けられたとき、上記開口部からインレット部Aが露出される。
【0115】
断線検知部B4は、キャップシール20の内側面に接着している。キャップシール20が引き裂かれて容器から取り外される際に、キャップシール20と一緒に断線検知部B4も引き裂かれ、断線検知配線16が断線するように構成されている。断線検知部B4は、断線検知配線16を構成する第3線状配線16cを有する。
【0116】
第3の実施形態によれば、キャップシール20が引き裂かれて容器から取り外される際に、断線検知部B1,B3と共に断線検知部B4も引き裂かれるので、容器の開封の検出の確実性が高められる。
【0117】
なお、キャップシール20としては、第1の実施形態のキャップシール20が適用されてもよいし、第2の実施形態のキャップシール20が適用されてもよい。
<第4の実施形態>
図14図17を参照して、無線ICタグ付き容器、および、無線ICタグの第4の実施形態について説明する。以下では、第1の実施形態との相違点を中心に説明し、第1の実施形態と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0118】
第4の実施形態は、密集配線17を有する断線検知部B2がインレット部Aと一体にされた構造を有する点が第1の実施形態と相違する。
図14は、第4の実施形態の無線ICタグ10の表面の配線パターンを示すとともに、裏面の配線パターンを透視図で示す。図15は、第4の実施形態の無線ICタグ10の裏面の配線パターンを示す。図14が示すように、基材11の表面にインレット部Aを構成するコイル部としてのアンテナコイル12が配置され、図15が示すように、基材11の裏面に密集配線17が配置される。
【0119】
そして、図16が示すように、無線ICタグ10が、容器に取り付けられる。図16が示すように、無線ICタグ10は、首部31の一方側から、封止部32を跨いで、首部31の他方側まで配置される。無線ICタグ10のアンテナコイル12と密集配線17とを有する部分は封止部32に貼り付けられる。
【0120】
図17が示すように、キャップシール20は、容器本体30の首部31と、首部31上に配置された無線ICタグ10とに被せられる。すなわち、キャップシール20と容器本体30との間に無線ICタグ10が挟み込まれる。キャップシール20は、頂部に頂面開口部23を有している。筒部21の構成は第1の実施形態と同様である。キャップシール20の頂面開口部23からは、無線ICタグ10のインレット部Aが露出される。
【0121】
ここで、頂面開口部23からは、無線ICタグ10のインレット部Aのアンテナコイル12の内径で囲まれる領域、言い換えれば、アンテナコイル12が構成するループの内側の領域が露出される。このように、アンテナコイル12の内径で囲まれる領域を露出させると、アンテナコイル12による非接触通信用の磁界にキャップシール20が与える影響が低減され、無線ICタグ10の通信特性への影響が少ない効果がある知見が得られた。このとき、無線ICタグ10のなかで頂面開口部23内に位置する部分には、ICチップ13が含まれる。すなわち、第4の実施形態においても、ICチップ13がキャップシール20から露出される。さらに、ジャンパー線15もキャップシール20から露出されてもよい。インレット部Aが金属製の頂面部と重ならないことにより、無線ICタグ10の通信特性の低下が抑えられる。
【0122】
第4の実施形態においても、キャップシール20では、第1の実施形態と同様に、筒部21の周方向に延びる導電路が、絶縁部21bによって遮られる。そのため、インレット部Aのアンテナコイル12に平行する誘導電流がキャップシール20に流れることが抑えられるため、無線ICタグ10の通信特性の低下が抑えられる。なお、第4の実施形態のキャップシール20に、第2の実施形態のキャップシール20の構成が適用されてもよい。
【0123】
第4の実施形態では、インレット部Aの裏側に密集配線17が配置されているので、第1の実施形態の図8と同様に、封止部32に筒状の針Nが刺され、針Nを介して内容物が偽物にすり替えられる際には、密集配線17またはアンテナコイル12が断線させられる。これにより、容器本体30の内容物のすり替えをICチップ13が検出して記憶することができる。
【0124】
<他の形態>
上記各実施形態は、以下のように変更して実施することが可能である。
・無線ICタグ10の基材11において、ICチップ13が配置される面は、容器本体30と反対側に向けられる面に限らず、容器本体30に向けられる面であってもよい。また、アンテナコイル12は、基材11における容器本体30に向けられる面と、容器本体30とは反対側に向けられる面とのいずれの面に配置されてもよい。すなわち、アンテナコイル12が配置される第1面と、ジャンパー線15が配置される第2面とのいずれが、容器本体30に向けられる面であってもよい。また、断線検知配線16も、基材11のいずれの面に配置されてもよい。
【0125】
・無線ICタグ10や容器の用途に応じて、無線ICタグ10のインレット部Aの表面に、あるいは、無線ICタグ10と容器本体30との間に、無線ICタグ10に耐久性を付与する層や、安定性を付与する層や、脆性を付与する層や、保護層等の層が設けられてもよい。
【0126】
・キャップシール20の絶縁部が筒部21の2つの筒端を結び、金属部と絶縁部との接続によって筒部21の周方向に沿った閉環が構成されることにより筒部21の周方向に沿った伝導が遮られていれば、絶縁部の材料や形状は、上記実施形態にて例示した材料や形状と異なっていてもよい。
【0127】
・キャップシール20は、絶縁部を有していなくてもよい。すなわち、筒部21の全体が金属から構成されていてもよい。こうした構成であっても、インレット部AのICチップ13がキャップシール20から露出していれば、従来のように金属製の頂面部とインレット部Aとが重なり、金属製の筒部が構成するコイルの中心軸上にインレット部Aが位置する形態と比較して、無線ICタグ10の通信特性の低下を抑えることはできる。
【0128】
・容器本体30は、開口部を有していればよく、容器本体30の形状や材質は特に限定されない。容器本体30がガラスのような脆性材料から構成される場合、容器本体30のなかで開口部付近の強度は低くなりやすいが、上記各実施形態のキャップシール20を取り付けることにより、金属部によって開口部付近が保護される。すなわち、キャップシール20によって開封部の付近を保護する効果も得られる。
【0129】
・上記各実施形態の無線ICタグ10の構成を、金属以外の材料を用いたキャップシール20を備える無線ICタグ付き容器に適用してもよい。また、断線検知部を有さない無線ICタグを、第4の実施形態の無線ICタグ付き容器、すなわち、キャップシール20の頂面開口部23から、少なくともインレット部Aにおけるアンテナコイル12の内側の領域を露出させた無線ICタグ付き容器に適用してもよい。
【0130】
<実施例>
図18図20を参照して、第1の実施形態の具体的な実施例を説明する。
図18が示すように、無線ICタグ10は、インレット部Aと断線検知部Bとを備えている。断線検知部Bは、断線検知部B1、断線検知部B2、および、断線検知部B3から構成される。断線検知部B2は、無線ICタグ10の延びる方向に沿って、断線検知部B1と断線検知部B3とに挟まれている。基材11は、断線検知部B2の部分で円形状を有し、断線検知部B1および断線検知部B3の各々の部分で無線ICタグ10の延びる方向に沿って延びる帯状を有する。無線ICタグ10の延びる方向において、断線検知部B1は、断線検知部B3よりも長い。断線検知部B1および断線検知部B3においては、基材11に、基材11の縁から内側に向けて延びる複数のスリット11aが設けられている。
【0131】
図18においては、基材11の表面に位置する配線を太線で示し、基材11の裏面に位置する配線を細線で示している。断線検知部Bが有する断線検知配線16は、基材11の裏面、すなわち、容器本体30に向けられる面に配置されている。断線検知配線16は一つながりの配線であり、断線検知部B1を構成する第1線状配線16aと、断線検知部B2を構成する密集配線17と、断線検知部B3を構成する第2線状配線16bとを含む。第1線状配線16aと第2線状配線16bとの各々は、無線ICタグ10の延びる方向に沿って基材11上を往復し、密集配線17は、例えばメアンダ状に屈曲している。断線検知配線16の2つの端部の各々は、第1線状配線16aから、基材11のなかでインレット部Aを構成する部分の裏面まで延びて、表裏貫通接続導体14に接続されている。
【0132】
断線検知部B1に対して断線検知部B2とは反対側に、インレット部Aが位置する。インレット部Aの部分で、基材11は円形状を有する。言い換えれば、断線検知部B1に対して、インレット部Aでは基材11の幅が拡大されている。インレット部Aは、通信用アンテナと、ICチップ13とを備えている。通信用アンテナは、アンテナコイル12とジャンパー線15とが表裏貫通接続導体14によって接続された構造を有する。ICチップ13とアンテナコイル12とは、基材11の表面、すなわち、容器本体30とは反対側に向けられる面に配置されている。ジャンパー線15は、基材11の裏面に配置されている。表裏貫通接続導体14は、基材11を貫通して基材11の表面の配線と裏面の配線とを電気的に接続する。
【0133】
上記構成において、断線検知部B1とインレット部Aとが、断線検知部B2から延びる第1延出部を構成し、断線検知部B3が、断線検知部B2から第1延出部とは反対方向に延びる第2延出部を構成する。第1延出部の長さは、キャップシール20の筒部21の軸方向の長さよりも大きい。ICチップ13とジャンパー線15とは、第1延出部の先端領域に配置されている。
【0134】
図19を参照して、インレット部Aにおける配線の構成について詳述する。図19では、基材11の表面に位置する配線を、ドットを付して示し、基材11の表面に位置する配線を、外形線が一点鎖線の中空線で示す。また、ICチップ13の配置される領域を、破線で囲まれた領域Rとして示す。
【0135】
図19において、円形の配線領域は、表裏貫通接続導体14が構成する部分である。4つの表裏貫通接続導体14には、断線検知配線16の一方の端部と接続される接続導体14a、および、断線検知配線16の他方の端部と接続される接続導体14bが含まれる。接続導体14aと接続導体14bとは、基材11の表面にて接続導体14aと接続導体14bとの各々から延びる補助配線40を経由して、ICチップ13の容器開封検知部用電極端子に電気的に接続されている。
【0136】
上記4つの表裏貫通接続導体14には、さらに、アンテナコイル12とジャンパー線15とを接続する接続導体14cおよび接続導体14dが含まれる。
アンテナコイル12は、ICチップ13の非接触通信部用電極端子に接続される2つの端部である端子用端部41aと端子用端部41bとを結ぶループ形状を有し、かつ、基材11の表面において、上記ループ形状に引き回された配線が接続導体14cと接続導体14dとの間で途切れた構造を有する。端子用端部41a,41bと、接続導体14cとは、アンテナコイル12が構成する上記ループの最内周に位置し、アンテナコイル12の内側の領域に面する。接続導体14dは、アンテナコイル12が構成する上記ループの最外周に位置し、アンテナコイル12の外側の領域に面する。また、接続導体14aおよび接続導体14bと、ICチップ13とは、アンテナコイル12の内側の領域に位置する。
【0137】
ジャンパー線15は、基材11を介して、アンテナコイル12と重なっている。詳細には、ジャンパー線15は、基材11を介して、アンテナコイル12の途切れている部分を繋ぐ位置に、すなわち、接続導体14cと接続導体14dとを結ぶ位置に配置されている。接続導体14cは、アンテナコイル12の途切れている部分の一方とジャンパー線15の一方の端部とに接続され、接続導体14dは、アンテナコイル12の途切れている部分の他方とジャンパー線15の他方の端部とに接続される。これにより、端子用端部41aと端子用端部41bとの間が導通する。
【0138】
ここで、ジャンパー線15は、アンテナコイル12の下端、すなわち、アンテナコイル12に対して断線検知部Bとは反対側に位置する端部から、アンテナコイル12の内側の領域に向けて延びている。そして、アンテナコイル12の下端から上端までをアンテナコイル12の全長Lとするとき、無線ICタグ10の延びる方向において、アンテナコイル12の下端との距離が全長Lの3分の2以下である範囲に、ICチップ13とジャンパー線15とが位置している。図19に示す基準線A1は、無線ICタグ10の延びる方向におけるアンテナコイル12の下端との距離が全長Lの3分の2となる位置にて、無線ICタグ10の延びる方向と直交する方向に延びる直線である。基準線A1よりもアンテナコイル12の下端に近い領域に、ICチップ13とジャンパー線15とが位置している。ICチップ13とジャンパー線15とが、このように配置されていることによって、無線ICタグ10を容器に取り付けたときに、ICチップ13とジャンパー線15とをキャップシール20から露出させやすい。
【0139】
図20が示すように、無線ICタグ10は、封止部32上を跨いで容器本体30の首部31を挟むように配置される。そして、キャップシール20が、容器本体30および封止部32と無線ICタグ10とに被せられている。すなわち、無線ICタグ10の一部は、容器とキャップシール20との間に挟まれる。キャップシール20の筒部21は絶縁部を有さず、筒部21の全体が金属製、すなわち、筒部21の全体が金属部である。無線ICタグ10の裏面は容器に接着され、無線ICタグ10の表面のうち、キャップシール20に覆われている部分は、キャップシール20の内側面に接着されている。
【0140】
インレット部Aのうち、ICチップ13およびジャンパー線15は、キャップシール20から露出されている。詳細には、キャップシール20の筒部21は、アンテナコイル12の上端付近でアンテナコイル12の一部を覆い、ICチップ13およびジャンパー線15と共に、アンテナコイル12の内側の領域の全体が筒部21の下端から露出している。筒部21の下端は、すなわち、筒部21が有する2つの筒端のうちの、頂面部22が接続されている第1端とは反対側の第2端である。
【0141】
上記構成においては、基材11のなかで、インレット部Aを構成する円形状の部分の一部は筒部21に覆われている。言い換えれば、基材11のなかで、断線検知部B1を構成する帯状の部分と上記円形状の部分との境界部は、筒部21に覆われている。上記境界部においては、基材11の幅が急激に変わるため、基材11が破断しやすくなる傾向があるが、上記境界部が筒部21に覆われていることで、基材11が破断してインレット部Aが千切れることが抑えられる。
【0142】
また、インレット部Aは、その全体が容器本体30の首部31の外周面に位置し、容器本体30のなかで首部31から拡径していく部分である肩部33までは延びていない。容器本体30の内容物が飲料等の液体である場合、内容物の液面は、肩部33の付近に位置する場合が多い。すなわち、インレット部Aが肩部33の外周面に位置すると、インレット部Aが首部31の外周面に位置する場合よりも、インレット部Aの背後に内容物が位置する可能性が高くなる。インレット部Aの背後に液体があると、無線ICタグ10の通信距離が短くなる。本実施例では、インレット部Aの一部を筒部21と重ならせてインレット部Aが肩部33まで延びないように配置することで、無線ICタグ10の通信距離の低下を抑えている。
【0143】
また、容器の保管時や販売時に、複数の容器が並べられた場合、互いに隣接する容器の肩部33が接する場合がある。本実施例では、インレット部Aの全体が首部31の外周面に位置するため、互いに隣接する容器の肩部33が接した場合でも、無線ICタグ10が他の容器に接することが抑えられる。したがって、接触の衝撃に起因して無線ICタグ10の機能が低下することが抑えられる。
【0144】
なお、上記構成に限らず、インレット部Aは肩部33まで延びていてもよい。肩部33は首部31よりも外側に張り出しているため、インレット部Aが肩部33の外周面に位置する構成であれば、リーダ装置を容器に近づけてリーダ装置と無線ICタグ10とを通信させる際に、リーダ装置を無線ICタグ10に近づけやすい。
【符号の説明】
【0145】
10…無線ICタグ、11…基材、11a…スリット、12…アンテナコイル、13…ICチップ、14,14a,14b,14c,14d…表裏貫通接続導体、15…ジャンパー線、16…断線検知配線、16a…第1線状配線、16b…第2線状配線、16c…第3線状配線、17…密集配線、20…キャップシール、21…筒部、21a…金属部、21b…絶縁部、21c…絶縁層、22…頂面部、23…頂面開口部、30…容器本体、31…首部、32…封止部、33…肩部、A…インレット部、B,B1,B2,B3,B4…断線検知部、Dia…針の直径、D1…配線間距離、D2…第2距離、N…針、S…隙間、W…配線幅。
図1
図2
図3
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図5
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