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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】鉛蓄電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/466 20210101AFI20221004BHJP
   H01M 10/14 20060101ALI20221004BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20221004BHJP
   H01M 50/463 20210101ALI20221004BHJP
   H01M 50/417 20210101ALN20221004BHJP
   H01M 50/446 20210101ALN20221004BHJP
   H01M 50/443 20210101ALN20221004BHJP
   H01M 50/434 20210101ALN20221004BHJP
【FI】
H01M50/466
H01M10/14 Z
H01M50/403 C
H01M50/463 B
H01M50/417
H01M50/446
H01M50/443 M
H01M50/434
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019550935
(86)(22)【出願日】2018-10-05
(86)【国際出願番号】 JP2018037304
(87)【国際公開番号】W WO2019087685
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-07-06
(31)【優先権主張番号】P 2017211363
(32)【優先日】2017-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 賢
(72)【発明者】
【氏名】京 真観
(72)【発明者】
【氏名】和田 秀俊
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-043462(JP,U)
【文献】特開2001-210302(JP,A)
【文献】特開平07-105929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40
H01M 10/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の正極板および複数の負極板がセパレータを介して積層された極板群を有する鉛蓄電池の製造方法であって、
前記セパレータを、互いに対向する第1領域と第2領域とを有する袋状に加工すること、を含み、
前記セパレータを袋状に加工することは、前記第1領域内の少なくとも一部と、前記第2領域内の少なくとも一部と、を含む接合部を形成すること、を含み、
前記第1領域内に、第1のリブが複数設けられ、
前記第2領域内に、第2のリブが複数設けられ、
前記接合部を形成することは、前記第1領域と前記第2領域を同じ主面に有し、平行な対辺を有する四角形状の1枚のセパレータシートを、前記対辺に垂直な方向から傾いた方向を軸として二つ折りにして、前記第1領域と前記第2領域とを対向させることを含み、
前記セパレータシートは、前記第1領域内の少なくとも前記接合部が設けられる領域、および、前記第2領域内の少なくとも前記接合部が設けられる領域において、前記第1のリブおよび前記第2のリブが、共に同一方向に、前記主面上を直線状に延伸し、
前記接合部を形成することは、前記第1のリブの少なくとも1つと前記第2のリブの少なくとも1つが前記接合部において交差するように、前記第1領域と前記第2領域とを対向させることを含む、鉛蓄電池の製造方法。
【請求項2】
前記セパレータシートの前記第1領域内の少なくとも前記接合部が設けられる領域、および、前記第2領域内の少なくとも前記接合部が設けられる領域において、前記第1のリブおよび前記第2のリブが、共に前記対辺に平行な方向に前記主面上を延伸している、請求項に記載の鉛蓄電池の製造方法。
【請求項3】
前記セパレータシートの前記第1領域内の少なくとも前記接合部が設けられる領域、および、前記第2領域内の少なくとも前記接合部が設けられる領域において、前記第1のリブおよび前記第2のリブが、共に前記対辺に垂直な方向に前記主面上を延伸している、請求項に記載の鉛蓄電池の製造方法。
【請求項4】
前記第1領域の外形が四角形であり、前記四角形を構成する少なくとも2辺の近傍の領域に、前記接合部が設けられる、請求項1~のいずれか1項に記載の鉛蓄電池の製造方法。
【請求項5】
前記第1領域内および前記第2領域内に、前記接合部が設けられる接合領域と、前記接合領域から離間した極板領域とが、それぞれ設けられており、
前記第1のリブは、前記第1領域内の前記接合領域に一定の間隔で設けられる複数の第1の接合リブと、前記第1領域内の前記極板領域に一定の間隔で設けられる複数の第1の極板リブと、を含み、
前記第1の接合リブが設けられる間隔が、前記第1の極板リブが設けられる間隔よりも狭い、請求項1~のいずれか1項に記載の鉛蓄電池の製造方法。
【請求項6】
前記第2のリブは、前記第2領域内の前記接合領域に一定の間隔で設けられる複数の第2の接合リブと、前記第2領域内の前記極板領域に一定の間隔で設けられる複数の第2の極板リブと、を含み、
前記第2の接合リブが設けられる間隔が、前記第2の極板リブが設けられる間隔よりも狭い、請求項に記載の鉛蓄電池の製造方法。
【請求項7】
前記第1領域の裏面に第3領域を、および、前記第2領域の裏面に第4領域を、それぞれ有し、
前記第3領域内に、第3のリブが複数設けられ、
前記第4領域内に、第4のリブが複数設けられている、請求項1~のいずれか1項に記載の鉛蓄電池の製造方法。
【請求項8】
前記第3のリブが、少なくとも前記第1領域内の前記接合部が設けられる領域に対応する前記第3領域内に設けられている、請求項に記載の鉛蓄電池の製造方法。
【請求項9】
前記接合部を形成することは、圧着または溶着により前記第1領域内の少なくとも一部と前記第2領域内の少なくとも一部とを接合することを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の鉛蓄電池の製造方法。
【請求項10】
袋状に加工された前記セパレータ内に前記負極板が収容されるように、前記負極板を配置すること、をさらに含む、請求項1~のいずれか1項に記載の鉛蓄電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉛蓄電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉛蓄電池は、車載用、産業用の他、様々な用途で使用されている。鉛蓄電池は、負極板と、正極板と、負極板および正極板の間に介在するセパレータと、電解液とを含む。電解液には、一般に、硫酸水溶液が利用される。
【0003】
特許文献1には、袋状のポリエチレン製セパレータに負極板を収容し、且つ、袋状のセパレータは、負極板側にリブを有する例が開示されている。この例では、リブは、袋状のセパレータの内側に形成される。
【0004】
セパレータを袋状に形成する場合、一般に、セパレータをU字状に折り曲げ、両側縁部を接合する。両側縁部の接合の方法として、ギアシール、ヒートシール、および超音波シールによる方法、あるいは、接着材または接着テープを用いる方法が挙げられる(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-22796号公報
【文献】特開2009-245901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に例示されている、内側にリブが形成された袋状のセパレータの製造において、セパレータの両側縁部を接合する場合に、接合面上にリブが形成されているものを用いることができる。
【0007】
しかしながら、接合面上にリブが形成されたセパレータを重ね合わせて両側縁部を接合すると、リブの配置によっては、十分な接合強度が得られないことがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面は、複数の正極板および複数の負極板がセパレータを介して積層された極板群を有する鉛蓄電池の製造方法であって、
前記セパレータを、互いに対向する第1領域と第2領域とを有する袋状に加工すること、を含み、
前記セパレータを袋状に加工することは、前記第1領域内の少なくとも一部と、前記第2領域内の少なくとも一部と、を含む接合部を形成すること、を含み、
前記第1領域内に、第1のリブが複数設けられ、
前記第2領域内に、第2のリブが複数設けられ、
前記接合部を形成することは、前記第1のリブの少なくとも1つと前記第2のリブの少なくとも1つが前記接合部において交差するように、前記第1領域と前記第2領域とを対向させることを含む、鉛蓄電池の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、鉛蓄電池で用いる袋状セパレータの接合部の強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一側面に係る鉛蓄電池の製造方法で用いる鉛蓄電池用セパレータの外観を模式的に示す正面図である。
図2】鉛蓄電池用セパレータを袋状に加工する前のセパレータシートを示す模式図である。
図3】セパレータシートを重ね合わせたときの内リブの状態を示す模式図である。
図4図2の別態様を示す、鉛蓄電池用セパレータを袋状に加工する前のセパレータシートを示す模式図である。
図5図2の別態様を示す、鉛蓄電池用セパレータを袋状に加工する前のセパレータシートを示す模式図である。
図6図2の別態様を示す、鉛蓄電池用セパレータを袋状に加工する前のセパレータシートを示す模式図である。
図7】袋状セパレータを用いた鉛蓄電池の一部を切り欠いた斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一側面に係る鉛蓄電池の製造方法は、複数の正極板および複数の負極板がセパレータを介して積層された極板群を有する鉛蓄電池の製造方法であって、セパレータを、互いに対向する第1領域と第2領域とを有する袋状に加工すること、を含む。セパレータを袋状に加工することは、第1領域内の少なくとも一部と、第2領域内の少なくとも一部と、を含む接合部を形成すること、を含む。第1領域内に、第1のリブが複数設けられ、第2領域内に、第2のリブが複数設けられる。接合部を形成することは、第1のリブの少なくとも1つと第2のリブの少なくとも1つが接合部において交差するように、第1領域と第2領域とを対向させることを含む。
【0012】
本発明の上記側面によれば、第1領域内および第2領域内に設けられた所定の領域内(好ましくは、内周縁部)に、第1領域と第2領域を袋状に綴じるための接合部が形成される。
【0013】
具体的には、例えば、第1領域と第2領域を同じ主面に有する1枚のセパレータシートを二つ折りにし、第1領域と前記第2領域とを対向させることによって、接合部を形成することができる。この場合、一枚のセパレータシートをU字形状に重ね合わせることによって、折り曲げた部分が下端部となり、左側端部側および右側端部側に接合部が設けられ、上端部に開口を有する袋状セパレータを製造できる。しかしながら、セパレータシートの右側端部(または左側端部)を折り曲げ部分とし、左側端部側(または右側端部側)および下端部側に接合部を形成することにより、袋状セパレータを製造してもよい。あるいは、第1領域を主面に有する第1ハーフシートと、第2領域を主面に有する第2ハーフシートを積層して、第1領域と前記第2領域とを対向させることによって、袋状セパレータを製造してもよい。この場合、2枚のハーフシートを重ね合わせ、左側端部側、右側端部側、および、下端部側に接合部を形成し、袋状セパレータを製造することができる。袋状セパレータは、鉛蓄電池の正極板または負極板を収容するために用いられる。
【0014】
ここで、袋状セパレータにおいて、正極板または負極板を挿入するための開口が設けられた方向をセパレータの上側(鉛直方向)とし、その反対側を下側と定義する。また、このようにセパレータの上下を定義したときに、向かって左に位置する方向をセパレータの左側とし、向かって右に位置する方向をセパレータの右側とする。
【0015】
また、リブとは、セパレータの一面から突出する突起部分を指し、セパレータと極板の密着を抑制し、セパレータの酸化劣化による破れ、および/または浸透短絡を抑制するために設けられる。リブは、所定のパターンでセパレータの表面に設けられる。
【0016】
袋状セパレータの外形形状は、第1領域の外形に相似した形状に形成され得る。好ましくは、第1領域の外形が四角形状であるとよい。この場合、袋状セパレータは、略四角形の外形を有する。当該四角形を構成する少なくとも2辺の近傍の領域に、接合部が設けられることによって、セパレータシート(または、2枚のハーフシート)を袋状に加工することができる。袋状セパレータの外形は、四角形に限られるものではなく、任意の形状(例えば、多角形または円弧形状など)であってもよい。多角形を構成する辺は、厳密な直線である必要はなく、曲線部分や屈折した部分を有していてもよい。例えば、外形形状が略三角形の袋状セパレータを、折り曲げにより作製する場合、接合領域は三角形の一辺に対応する一端部側に設けられていればよい。
【0017】
第1領域と第2領域は、袋状セパレータの互いに対向する内表面を構成する。好ましくは、セパレータシートまたはハーフシートは、第1領域内および第2領域内に、接合領域と極板領域とを有する。接合領域は、第1領域と第2領域とを袋状に綴じる接合部を含む領域であり、接合に係る位置決めマージンなどを考慮し、接合部よりも広い領域に設定されている。好ましくは、接合領域は、セパレータシートまたはハーフシートの端部側に設けられ、当該端部までの距離が所定の距離内にある周辺領域を接合領域とすることができる。これに対し、極板領域は、接合領域から離隔した領域であり、袋状セパレータに正極板または負極板を収容したときに、当該正極板または負極板と対向する領域である。
【0018】
接合領域がセパレータシートまたはハーフシートの端部側に設けられている場合、当該端部を含むように接合部を設けるとよい。あるいは、接合領域内において、接合部は、袋状セパレータの端部の輪郭(すなわち、セパレータシートまたはハーフシートの端部の輪郭)と平行に延伸して形成されていてもよいし、袋状セパレータの端部の輪郭と異なる任意の輪郭形状で延伸して形成されていてもよい。
【0019】
第1領域内には第1のリブが複数、第2領域内には第2のリブが複数設けられている。接合後の袋状セパレータの内表面を第1面および第2面とする。接合後の袋状セパレータにおいて、第1領域は第1面上にあり、第2領域は第2面上にある。第1のリブは、第1面上の第1領域内の極板領域に形成されていることで、正極板および負極板のいずれか一方の極板が第1面と密着するのを抑制することができる。同様に、第2のリブは、第2面上の第2領域内の極板領域に形成されていることで、上記いずれか一方の極板が第2面と密着するのを抑制することができる。極板領域に設けられた第1のリブおよび第2のリブは、正極板または負極板を収容したときにセパレータの酸化劣化による破れおよび/または浸透短絡を抑制する。以降において、第1のリブおよび第2のリブを、「内リブ」と総称する。
一般に、第1のリブおよび第2のリブは、複数のリブが、所定の領域内にそれぞれ、隣接するリブと平行に一定の間隔を有するように、線状のパターンで配置される。
【0020】
第1のリブおよび第2のリブ(内リブ)は、第1領域内および第2領域内の接合領域にも形成されている。接合領域に内リブが形成されている場合、第1のリブと第2のリブとが、第1領域と第2領域を対向させ、接合部を形成する際に重ね合わされ得る。しかしながら、この重ね合わされ方によっては、十分な接合強度が得られないことがある。
【0021】
例えば、接合形成の際、第1領域の接合領域内において隣接する第1のリブの間の谷間に、第2領域の接合領域内の第2のリブがはまり込む(あるいは、第2領域の接合領域内隣接する第2のリブの間の谷間に、第1領域の接合領域内の第1のリブがはまり込む)ように、第1領域と第2領域とが重ね合わされることがあり得る。この場合、接合強度は、第1のリブと第2のリブが重なり合う場合よりも低下する。特に、接合の方法がギアシール等の圧着法による場合は、接合強度の低下傾向が大きくなる。しかしながら、接合装置による接合部の位置決め精度等を考慮すると、第1のリブの谷間に第2のリブがはまり込む(あるいは、第2のリブの谷間に第1のリブがはまり込む)状況を完全に防ぐことは困難であり、接合強度がばらつく一因となる。この結果、鉛蓄電池としての性能にもばらつきが生じることとなる。
【0022】
これは、溶着と接着とを問わず、内リブが設けられた袋状セパレータを製造する場合に共通の問題であるが、ギアシール法等の圧着に基づく接合法または熱溶着法など、接合部を所定の厚みに圧縮して接合を行う方法において顕著であり、第1のリブと第2のリブのうち一方のリブの谷間に他方のリブがはまり込むことによって、圧着前の接合部の厚みが想定より薄くなる。この結果、所定の厚みに圧縮する際の圧縮率が低下し、接合強度の低下を招き易くなる。
【0023】
そこで、本発明の一側面は、接合部を形成するに際して、第1のリブの少なくとも1つと第2のリブの少なくとも1つが接合部において交差するように、第1領域と第2領域とを対向させること、を含む。内リブの配置に応じて、第1のリブと第2のリブが交差するように第1領域と第2領域を対向させることにより、隣接するリブ間の谷間に他のリブがはまり込むのを抑制できる。リブのはまり込みが抑制された状態で接合を形成することで、袋状セパレータの接合部の強度のばらつきが低減され、接合強度を維持できる。
【0024】
ここで、第1のリブと第2のリブが「交差」するとは、第1領域と第2領域が対向し、第1のリブと第2のリブとが少なくとも点で接触する状態をいう。第1のリブと第2のリブとは、線あるいは面で接触していてもよい。なお、少なくとも点で接触する箇所は、1箇所に限られない。リブの線状のパターンは、直線でもよく、曲線でもよい。また、直線又は曲線の一部が欠けた点線であってもよい。リブのパターンは、それぞれが平行な直線で構成された複数のリブからなるストライプ状のパターンが、リブの製造が容易であり好ましい。第1のリブと第2のリブとを交差させる角度については、第1のリブのパターンと第2のリブのパターンとが、好ましくは0.2°以上、より好ましくは0.3°以上の角度で交差させるとよい。交差角が0.2°以上であれば、十分な接合強度が得られる。
【0025】
接合部の形成方法によっては、接合部において第1のリブと第2のリブを交差させたか否かを、製造後の袋状セパレータの接合部の状態に基づいて判別しづらい場合も考えられる。この場合においても、接合部周辺の領域における第1のリブと第2のリブの配置から、接合部において第1のリブと第2のリブを交差させたか否かを推定することが可能である。例えば、接合領域において、第1のリブと第2のリブが、それぞれ、一定の方向に延伸する直線状に、一定の間隔で複数形成されている場合には、接合部においても同様に、第1のリブと第2のリブが、接合領域におけるリブ延伸方向と同じ方向に延伸する直線状に、接合領域におけるリブ間隔と同じリブ間隔で形成されていると推定することができる。すなわち、接合部の周辺領域におけるリブパターンから接合部におけるリブパターンを内挿または外挿し、第1のリブと第2のリブの交差を推定することが可能である。
【0026】
第1のリブおよび第2のリブの配置パターンとして、例えば、略平行な対辺を有する四角形(長方形、台形または平行四辺形)のセパレータシートを考える場合、セパレータシート内の、第1領域内の少なくとも接合部が設けられる領域(接合領域)、および、第2領域内の少なくとも接合部が設けられる領域(接合領域)において、第1のリブおよび第2のリブが、共に同一方向に、セパレータシートの主面上を直線状に延伸している構成を採用することができる。なお、第1のリブおよび第2のリブが主面上を同一方向に延伸するとは、セパレータシートを二つ折りにする前の、第1領域および第2領域が同一平面上にある状態で、第1のリブおよび第2のリブが共に同一方向に延伸していることを意味する。第1のリブおよび第2のリブは、共に、セパレータシートの上記対辺に略平行な方向に、セパレータシートの主面上を直線状に延伸させてよい。あるいは、第1のリブおよび第2のリブは、共に、セパレータシートの上記対辺に略垂直な方向に、セパレータシートの主面上を直線状に延伸させてよい。なお、対辺に「平行」または「垂直」とは、リブの延伸方向が数学的な意味で厳密に平行または垂直であることを意味するものではない。これらの場合、セパレータシートを二つ折りにし、第1領域と第2領域を対向させる際に、上記対辺に垂直な方向から傾いた方向を折り曲げ軸として二つ折りにする。例えば、セパレータシートが上記対辺を長辺とする長方形であれば、セパレータシートの短辺方向から傾いた方向を軸としてセパレータシートを二つ折りにする。セパレータシートを折り曲げる軸を対称軸からずらすことによって、第1領域と第2領域を対向させたとき、第2のリブは、第1のリブの延伸方向と異なる斜め方向に、直線状に延伸させることができる。
【0027】
また、第1のリブおよび第2のリブの配置パターンとして、例えば、セパレータシート内の、第1領域内の少なくとも接合部が設けられる領域(接合領域)、および、第2領域内の少なくとも接合部が設けられる領域(接合領域)において、第1のリブおよび第2のリブが、共に同一方向であるがセパレータシートの対辺に平行な方向から傾いた方向に、セパレータシートの主面上を直線状に延伸している構成を採用することができる。この場合、セパレータシートを二つ折りにし、第1領域と第2領域を対向させる際に、上記対辺に垂直な方向を軸としてセパレータシートを二つ折りにしてよい。例えば、セパレータシートが上記対辺を長辺とする長方形であれば、セパレータシートの短辺方向を軸としてセパレータシートを二つ折りにしてよい。第1のリブおよび第2のリブが対辺に平行な方向から傾いて延伸しているため、第1領域と第2領域を対向させたとき、第2のリブは、第1のリブの延伸方向に対して斜め方向に、直線状に延伸させることができる。
【0028】
第2のリブが、第1のリブに対して傾いた方向に延伸する状態で、第1領域と第2領域を対向させることで、第1のリブと第2のリブの交差が、接合部において起き易くなる。これにより、接合強度のばらつきが低減され、接合強度を維持できる。
【0029】
また、第1のリブおよび第2のリブを、共にセパレータシートの上記対辺に平行な方向から傾いた方向に延伸させるとともに、セパレータシートの上記対辺に垂直な方向から傾いた方向を軸としてセパレータシートを二つ折りにしてもよい。第1のリブと第2のリブとが交差する角度をより大きくすることができる。これにより、第1のリブと第2のリブとを接合部においてより交差させ易く、複数の箇所で交差させることが容易となる。結果、接合強度のばらつきが一層低減され、且つ、接合強度を一層高めることができる。
【0030】
このとき、極板領域においても、第1のリブが、接合領域における第1のリブと同一方向に延伸していることが、リブ加工の容易さの点で好ましい。同様に、極板領域において、第2のリブが、接合領域における第2のリブと同一方向に延伸していることが、リブ加工の容易さの点で好ましい。
【0031】
好ましくは、第1のリブは、第1領域内の接合領域に一定の間隔で設けられる複数の第1の接合リブと、第1領域内の極板領域に一定の間隔で設けられた複数の第1の極板リブと、を含む。このとき、第1の接合リブが設けられる間隔を、第1の極板リブが設けられる間隔よりも狭くしてもよい。これにより、接合領域においてより多くの第1のリブを、第2のリブと交差させることができる。
同様に、好ましくは、第2のリブは、第2領域内の接合領域に一定の間隔で設けられる複数の第2の接合リブと、第2領域内の極板領域に一定の間隔で設けられる複数の第2の極板リブと、を含む。このとき、第2の接合リブが設けられる間隔を、第2の極板リブが設けられる間隔よりも狭くしてもよい。これにより、これにより、接合領域において第1のリブを、より多くの第2のリブと交差させることができる。
接合部における第1のリブと第2のリブの交差箇所が増加することによって、接合強度を高く維持できる。
【0032】
好ましくは、セパレータは、第1領域の裏面に第3領域を、および、第2領域の裏面に第4領域を、それぞれ有し、第3領域内に、第3のリブが複数設けられ、第4領域内に、第4のリブが複数設けられている。接合後の袋状セパレータの外表面を第3面および第4面とする。接合後の袋状セパレータにおいて、第3領域は第3面上にあり、第4領域は第4面上にある。第3のリブおよび第4のリブは、正極板および負極板のいずれか他方の、セパレータの袋に収容されない極板が、セパレータと密着するのを抑制する。極板領域に設けられた第3のリブおよび第4のリブは、いずれか他方の極板との接触によるセパレータの酸化劣化による破れおよび/または浸透短絡を抑制する。以降において、第3のリブおよび第4のリブを、「外リブ」と総称する。
【0033】
内リブおよび外リブを設けた袋状セパレータにより、電池の性能を高めることができる。しかしながら、この場合、充放電特性を高く維持するためにはセパレータ総厚を抑える必要があり、セパレータのベース部分の厚みを薄くせざるをえなくなる。この結果、セパレータ端部の接合強度が低下し易く、接合強度のばらつきの問題がより深刻となる。
【0034】
第3のリブは、第1領域内の接合領域に対応する第3領域内の領域(即ち、第1領域内の接合領域の裏面側の領域)に設けられていてもよい。また、第4のリブは、第2領域内の接合領域に対応する第4領域内の領域(即ち、第2領域内の接合領域の裏面側の領域)に設けられていてもよい。この場合、圧着等により接合を形成する際には第3のリブまたは第4のリブ(外リブ)も一緒に圧縮される。これにより、圧縮率を高め、接合強度を稼ぐことが可能になる一方で、接合端部の位置決めのばらつきに伴う接合強度のばらつきもより顕著になる。しかしながら、第1のリブと第2のリブとを接合部において交差させることによって、隣接するリブ間の谷間に他のリブがはまり込むのを抑制でき、接合強度を高く維持できる。
【0035】
このようにして、第1のリブと第2のリブとが接合部において交差するように、第1領域と第2領域とを対向させ、接合部を形成することによって、袋状セパレータの接合強度のばらつきが低減され、接合強度を維持できる。上記の効果を奏するのは、ギアシールによる圧着法に限られず、熱溶着等においても、効果が得られる。接合部を形成することは、圧着または溶着により第1領域内の少なくとも一部と第2領域内の少なくとも一部とを接合することを含んでいてよい。
【0036】
本発明の一態様において、鉛蓄電池の製造方法は、袋状に加工されたセパレータ内に負極板が収容されるように負極板を配置すること、をさらに含むことができる。負極板の収容方法としては、セパレータシートの第1領域内の極板領域、または第2領域内の極板領域に負極板を押し当てた後、セパレータを二つ折りにし、第1領域と第2領域の間に負極板が挟まれた状態で接合部を形成することができる。この場合、接合部の形成と、負極板の袋状セパレータへの収容とは、並行して行われる。しかしながら、接合を形成し、セパレータを袋状に加工した後に、負極板を袋状セパレータに収容してもよい。
【0037】
袋状セパレータは、鉛蓄電池で用いるセパレータとして、負極板を収容する場合に効果的であり、耐浸透短絡性を高めることができる。
【0038】
以下、本発明の実施形態に係る鉛蓄電池の製造方法について、特にセパレータの態様を、図面を参照して詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また、以降の図面では、セパレータの接合領域における内リブの様子を強調して記載しており、実際のセパレータの各部の構成比率と、図面上の対応する各部の構成比率は一致しないことがある。
【0039】
図1に、本発明の実施形態に係る方法で用いる鉛蓄電池用セパレータを袋の外側から見た模式的な概略図を示す。図2に、図1のセパレータを袋状に加工する前のセパレータシートを模式的に示す。セパレータ100は、微多孔膜で構成された袋状のベース部101と、ベース部101の内表面(第1面または第2面)から突出する内リブ102a~102dと、ベース部101の外表面(第3面)から突出する外リブ104a、104bとを備える。ただし、内リブ102a~102dは袋状のセパレータの内部にあることから、図1では示されていない。セパレータ100内に負極板が収容される場合、内リブ102a~102dが負極板側に位置し、外リブ104a、104bが正極板側に位置する。セパレータ100内に正極板が収容される場合、外リブ104a、104bが負極板側に位置し、内リブ102a~102dが正極板側に位置する。セパレータ100内に負極板が収容される構成と、セパレータ100内に正極板が収容される構成のどちらも可能である。
【0040】
セパレータ100は、ポリマー材料で形成され得る。少なくともベース部は、多孔性のシートであり、多孔性のフィルムと呼ぶこともできる。セパレータ100は、ポリマー材料で形成されたマトリックス中に分散した充填剤(例えば、シリカなどの粒子状充填剤、および/または繊維状充填剤)を含んでもよい。セパレータ100は、耐酸性を有するポリマー材料で構成することが好ましい。このようなポリマー材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンが好ましい。
【0041】
ベース部101の平均厚みは、例えば、0.15mm以上0.3mm以下であり、0.18mm以上0.27mm以下であることが好ましい。ベース部の平均厚みがこのような範囲である場合、充放電特性を高く維持しながら、内リブおよび必要に応じて外リブの高さを確保し易くなる。ベース部の平均厚みは、セパレータの断面写真において、任意に選択した5箇所についてベース部の厚みを計測し、平均化することにより求められる。
【0042】
セパレータ100は、極板領域106と、セパレータの左側端部側に設けられた接合領域108aと、セパレータの右側端部側に設けられた接合領域108bとを有する。接合領域108a、108bのそれぞれに、第1面と第2面との接合(接合部)109a、109bが形成されている。
【0043】
極板領域106の第1面および第2面上には、内リブ102a(第1の極板リブ)および内リブ102b(第2の極板リブ)が設けられ(図2図5参照)、極板領域106の第3面上には、外リブ104aが設けられている。鉛蓄電池を構成した際には、極板領域106において、セパレータ100が正極板または負極板と対向する。このとき、内リブ102a、102b、および、外リブ104aは、ベース部101が正極板または負極板と直接接触するのを防ぐ。一方で、接合領域108a、108bの第1面および第2面上には、内リブ102c(第1の接合リブ)および内リブ102d(第2の接合リブ)が設けられている(図2図5参照)。また、接合領域108a、108bの第3面上には、外リブ104bが設けられている。
【0044】
図1に示すセパレータ100は、内リブ102a~102d、および、外リブ104a、104bを予め形成した一枚のセパレータシートをU字形状に折り曲げ、二つ折りにし、左端部側および右側端部側を例えばギアシール等の方法により接合することにより形成される。図2に、二つ折りにして左右端部側に接合を形成する前の長方形のセパレータシート110を模式的に示す。なお、図2は、セパレータシートを内リブ102a~102dが形成された面から見た概略図であり、外リブ104a、104bは裏面側に存在するため図示していない。
【0045】
セパレータシート110は、第1領域(図2において、セパレータシートの短辺に平行な軸Xより上方の領域)と、第2領域(図2において、軸Xより下方の領域)を有する。第1領域と第2領域を対向させるとき、第1領域が袋状セパレータの第1面となり、第2領域が袋状セパレータの第2面となる。
【0046】
図2に示すように、第1領域内の極板領域106に内リブ102aが、第2領域内上の極板領域106に内リブ102bが設けられている。第1領域内の接合領域108a、108bに内リブ102cが、第2領域内の接合領域108a、108bに内リブ102dが設けられている。内リブ102a~102dは、それぞれ、セパレータシートの長辺に平行な方向に、所定の間隔で、直線状のストライプパターンで形成されている。図2では、接合領域108a、108bに設けられた内リブ102c、102dのリブ間隔を、極板領域106に設けられた内リブ102a、102bのリブ間隔よりも狭くしている。
【0047】
本実施形態において、図2に示すセパレータシートを二つ折りにして、図1に示す袋状のセパレータ100を形成する場合、セパレータシートの短辺に平行な軸Xを軸としてセパレータシートを折り曲げるのではなく、図2の鎖線で示すように、短辺に平行な方向から僅かにずれた軸Yを軸として、セパレータシートを折り曲げ、接合領域108a、108bの左右端部側を接合する。この結果、第1領域と第2領域とを対向させ、袋状セパレータを形成したとき、内リブ102a~102dは、鉛直方向から僅かに傾いた方向に延伸する。また、第1面上の内リブ102a、102cと、第2面上の内リブ102b、102dとは、互いに逆の方向に鉛直方向から傾いて延伸するため、第1領域と第2領域とを対向させたとき、各接合領域108a、108bにおいて、内リブ102cと内リブ102dを交差させることができる。このとき、極板領域106においても、内リブ102aと内リブ102bが交差する。そして、接合を形成する際に、内リブ102cと内リブ102dとの交差が少なくとも1箇所、接合部に含まれるようにする。
【0048】
接合領域108a、108bの左右端部側を接合させる際に、内リブ102cと内リブ102dを接合部で交差させることによって、内リブ102cの1つが第2領域上に所定の間隔で設けられた内リブ102dの間の谷間にはまり込む、あるいは、内リブ102dの1つが第1領域上に所定の間隔で設けられた内リブ102cの間の谷間にはまり込むのを抑制し易くなる。この結果、接合強度のばらつきが低減され、接合強度を維持できる。
【0049】
図3に、第1領域と第2領域を対向させたときの、接合領域108aにおけるセパレータシートの内リブの状態を示す。図3では、記載が煩雑になるのを避けるため、外リブの記載を省略している。
【0050】
図2に示すセパレータシートを二つ折りにしたとき、折り曲げる軸がセパレータシートの短辺に平行な軸Xからずれており、且つずれ角が小さい場合、内リブ102c、102dの位置関係によっては、図3(a)に示すように、内リブ102cと内リブ102dは重なり合わないことがある。この場合、内リブ102cの間の谷間に、内リブ102dが嵌まり込み、内リブ102dの間の谷間に、内リブ102cが嵌まり込んでいる。
【0051】
一方、ずれ角が大きい場合、図3(b)に示すように、内リブ102c、102dの位置関係によらず、内リブ102cと内リブ102dが交差する。この場合に、接合強度を高く維持できる。
【0052】
セパレータシートを二つ折りにする場合に、折り曲げる軸のずれ角が同じであっても、セパレータシートを折り曲げる位置(セパレータシートの長手方向における位置)によっては、内リブ102cに対する内リブ102dの相対位置が左右方向にばらつく。ずれ角が小さい場合であっても、内リブ102cと内リブ102dとを接合部で交差させることは可能である。しかしながら、折り曲げ位置次第で、内リブ102cと内リブ102dとが交差する場合と、交差しない場合(図3(a))との両方が起こり得るため、接合強度にばらつきが生じ得る。しかしながら、Xを軸としてセパレータシートを折り曲げる場合と比べると、接合強度のばらつきは低減されている。
【0053】
内リブ102cが設けられた間隔をDとし、内リブ102cの長さをLとする。セパレータシートを折り曲げる軸Yの短辺に平行な方向Xからのずれ角をθとすると、内リブ102cと内リブ102dとは、互いに反対方向にθだけ傾くため、交差角は2θとなる。この場合、
tan2θ ≧ D/L
を満たすとき、内リブ102cを内リブ102dと、1箇所以上で確実に交差させることができ、接合強度を高く、且つ接合強度のばらつきを低く維持できる。この場合、端部側から数えて2番目に位置する内リブ102dが含まれるように、接合部のセパレータシート端部からの幅を設定すると、接合部には、内リブ102cと内リブ102dとの交差箇所が少なくとも1箇所含まれる。最も端部側に位置する内リブ102dの当該端部までの距離をWとすると、接合部は、端部を含み、幅D+W以上の領域に設定すればよい。また、接合されない部分が生じることを防ぐため、接合部の幅はセパレータ端部のずれ(二つ折りにしたときのセパレータの接合部側の端部の長さをLとして、Ltan2θ)を超えるように設定することが好ましい。
【0054】
図4図5は、図2とは別のセパレータシートの態様を示す概略図である。図4に示すセパレータシート111では、内リブ102a~102dを、図2のようにセパレータシートの長辺に平行な方向(鉛直方向)に延伸させるのではなく、長辺に平行な方向から僅かに傾けた方向に延伸させている。この場合に、セパレータシートの短辺に平行な方向な軸Xを軸としてセパレータシート111を二つ折りにすると、第1領域内の内リブ102a、102cと、第2領域内の内リブ102b、102dとは、互いに逆の方向に鉛直方向から傾いて延伸する。したがって、第1領域と第2領域を対向させ、左右端部側に接合を形成したとき、接合領域108a、108b内の接合部において、内リブ102cと内リブ102dとを交差させることができる。また、このとき、極板領域106において、内リブ102aと内リブ102bとが交差する。
【0055】
図4において、セパレータシート111を二つ折りにする軸を、図2に示す軸Yのように、セパレータシートの短辺に平行な方向から傾けてもよい。内リブ102cと内リブ102dとが交差する角度をより大きくでき、接合部において、内リブ102cと内リブ102dとを交差させ易くなる。
【0056】
図5に示すセパレータシート112は、接合領域における内リブ102c、102dを、直線ではなく、波打ちながら実質的に鉛直方向に延伸する曲線のストライプパターンとしたものである。この場合に、セパレータシートの短辺に平行な方向を軸としてセパレータシートを二つ折りにし、第1領域と第2領域を対向させると、接合領域108a、108bにおいて、一本の内リブ102cを、一又は複数の内リブ102dと、複数の箇所で交差させることができる。また、一本の内リブ102dを、一又は複数の内リブ102cと、複数の箇所で交差させることができる。交差箇所が増えることから、接合強度のばらつきがより低減され、高い接合強度を維持できる。
【0057】
接合領域における内リブの平均高さは、端部での突刺強度の点から0.05mm以上であることが好ましく、接合エネルギー不足等による接合不良を抑制する点で0.5mm以下が好ましい。極板領域の内リブの平均高さは正極板に対向する場合は酸化劣化抑制のため0.3mm以上が好ましく、負極板に対向する場合は浸透短絡抑制のため0.05mm以上が好ましい。一方で、極板領域における内リブの平均高さは、放電容量を高く維持する観点から、0.5mm以下が好ましい。なお、内リブの高さとは、内リブの所定の位置におけるセパレータシートのベース部の主面(第1領域または第2領域)から内リブの頂部までの距離を言う。内リブの平均高さは、ベース部の一方の主面において、内リブの任意に選択される10箇所において計測した内リブの高さを平均化することにより求められる。
【0058】
図2図5において、内リブ102a~102dのパターンとしてストライプ状のパターンを例示した。しかしながら、内リブのパターンは特に制限されない。内リブは、ランダムに形成されていてもよく、ストライプ状、曲線状、格子状などに形成されていてもよい。また、図5に例示するように、内リブのパターンは、極板領域と接合領域とで異なっていてもよい。電解液をより拡散し易くする観点からは、第1領域内または第2領域内の少なくとも極板領域において、複数の内リブがストライプ状に並ぶように形成することが好ましい。ストライプ状の内リブの向きは特に制限されず、例えば、複数の内リブは、高さ方向や幅方向に沿って形成してもよい。充電時に発生するガスの滞留による内部抵抗の上昇を抑制する観点からは、複数の内リブを、高さ方向に沿ってストライプ状に形成することが好ましい。一方で、充電時に発生する高濃度硫酸の沈降を抑制し、成層化を抑制する観点からは、複数の内リブを、幅方向に沿ってストライプ状に形成することが好ましい。なお、高さ方向とは、袋状セパレータの開口がある方向であり、幅方向とは、高さ方向に垂直な方向を指す。
【0059】
図6は、図2図4および図5とは別のセパレータシートの態様を示す概略図である。図6は、セパレータシート114を第3領域(第4領域)側から見た図であるが、右上の直角三角形の領域を紙面側に折り返すことによって、第1領域(第2領域)側の状態が併せて示されている。セパレータシート114の紙面側が外表面となり、紙面の裏面側が内表面となるようにセパレータシートを二つ折り(山折り)にして第1領域と第2領域とを対向させることで、袋状のセパレータが形成される。このとき、二つ折りにしたセパレータシート114の互いに対向する内表面の一方が第1面を、他方が第2面を構成する。二つ折りにしたセパレータシート114の外表面のうち、第1面の離面に位置する外表面が第3面を、第2面の離面に位置する外表面が第4面を構成する。
【0060】
図6に示すセパレータシート114では、複数の外リブ104aおよび104bが、高さ方向(シートの長辺に平行な方向)に沿ってストライプ状に並ぶように形成されている。一方、複数の内リブ102eが、幅方向(シートの短辺に平行な方向)に沿ってストライプ状に並ぶように形成されている。内リブ102eの間隔は、接合領域および極板領域ともに同じである。一方、接合領域の外リブ104bの間隔を、極板領域の外リブ104aよりも狭くしている。セパレータシート114は、負極板を袋状のセパレータに収容する場合に好適に用いられる。セパレータシート114も、セパレータシートの短辺に平行な方向から僅かにずれた方向Yを軸として、セパレータシートを折り曲げ、接合部を形成することで、対向する内リブ102e同士を交差させることができる。
【0061】
図2および図4図6に示すセパレータシートを用いることで、複数の内リブは、袋状セパレータの高さ方向から僅かに傾いた方向に延伸する場合や、あるいは、幅方向から僅かに傾いた方向に延伸する場合が考えられるが、その場合であっても上述の効果が得られる。
【0062】
ストライプ状または格子状の内リブの間隔は、極板領域において、突刺強度、耐酸化性、耐浸透短絡性の観点から、0.5mm以上10mm以下であることが好ましい。例えば、極板領域の面積の70%以上にこのような間隔で内リブが形成されていることが好ましい。
【0063】
これに対し、接合領域における内リブは、極板領域における内リブの間隔よりも密にすることが、内リブを確実に交差させることができ、また、交差箇所を増やすことができるため、好ましい。具体的に、ストライプ状または格子状の内リブの間隔は、接合領域において、極板領域における内リブの間隔より狭く、0.5mm以上2.0mm以下であることが好ましい。
なお、内リブの間隔とは、隣接する第1のリブまたは第2のリブの頂部間距離(より具体的には、内リブを横切る方向における隣接する内リブの中心間距離)である。
【0064】
外リブの平均高さは、極板領域においては正極板と対向する場合は酸化劣化抑制のため0.3mm以上であることが好ましく、負極板と対向する場合は浸透短絡抑制のため0.05mm以上であることが好ましい。一方で、極板領域における外リブの平均高さは、充放電特性を高く維持する観点から、0.5mm以下が好ましい。接合領域の外リブの平均高さは、端部での突刺強度の点から0.05mm以上であることが好ましく、接合エネルギー不足等による接合不良を抑制する点で0.5mm以下が好ましい。
なお、外リブの平均高さは、内リブの場合に準じて求められる。外リブの高さは、内リブの場合に準じて、外リブの所定の位置におけるセパレータシートのベース部の主面(第3領域または第4領域)から外リブの頂部までの距離を言う。
【0065】
外リブのパターンや向きは、内リブ同様、特に制限されない。例えば、内リブについて上述したものから選択することができる。ストライプ状や格子状の外リブの間隔は、極板領域において、突刺強度、耐酸化性、耐浸透短絡性の観点から、0.5mm以上10mm以下であることが好ましい。例えば、極板領域の面積の70%以上にこのようなピッチの外リブが形成されていることが好ましい。
【0066】
これに対し、接合領域における外リブの間隔は、圧着法等で接合する場合の圧縮率を稼ぎ、接合強度を高める観点から、極板領域における外リブの間隔より狭く、0.5mm以上2.0mm以下であることが好ましい。
なお、外リブの間隔とは、隣接する第3のリブまたは第4のリブの頂部間距離(より具体的には、外リブを横切る方向における隣接する外リブの中心間距離)である。
【0067】
上述した内リブの間隔および高さの範囲、および、外リブの間隔および高さの範囲は、特に断らない限り、特にセパレータが負極板を収容する場合に好適な範囲である。セパレータが正極板を収容する場合には、極板領域における内リブの間隔および高さの範囲として、極板領域における上述した外リブの間隔および高さの範囲を選択し、極板領域における外リブの間隔および高さの範囲として、極板領域における上述した内リブの間隔および高さの範囲を選択することができる。
【0068】
セパレータは、例えば、造孔剤(ポリマー粉末などの固形造孔剤、および/またはオイルなどの液状造孔剤など)とポリマー材料などとを含む樹脂組成物を、シート状に押し出し成形した後、造孔剤を除去して、ポリマー材料のマトリックス中に細孔を形成することにより得られる。リブは、例えば、押出成形する際に形成してもよく、シート状に成形した後または造孔剤を除去した後に、リブと対応する溝を備えたローラー等により転写することにより形成してもよい。充填剤を用いる場合には、樹脂組成物に添加することが好ましい。
【0069】
以下、本実施形態の方法で製造した袋状セパレータを用いた鉛蓄電池の一例について、主要な構成要件ごとに詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また、鉛蓄電池のセパレータとしては、上述の袋状セパレータを用いるため、セパレータ以外の構成要件について説明する。
【0070】
(電解液)
電解液は、水溶液に硫酸を含む。電解液は、必要に応じてゲル化させてもよい。電解液は、必要に応じて、鉛蓄電池に利用される添加剤を含むことができる。
化成後で満充電状態の鉛蓄電池における電解液の20℃における比重は、例えば、1.10g/cm3以上1.35g/cm3以下である。
【0071】
(正極板)
鉛蓄電池の正極板には、ペースト式とクラッド式がある。
ペースト式正極板は、正極集電体と、正極電極材料とを具備する。正極電極材料は、正極集電体に保持されている。ペースト式正極板では、正極電極材料は、正極板から正極集電体を除いたものである。正極集電体は、負極集電体と同様に形成すればよく、鉛または鉛合金の鋳造や、鉛または鉛合金シートの加工により形成することができる。
【0072】
クラッド式正極板は、複数の多孔質のチューブと、各チューブ内に挿入される芯金と、芯金が挿入されたチューブ内に充填される正極電極材料と、複数のチューブを連結する連座とを具備する。クラッド式正極板では、正極電極材料は、正極板から、チューブ、芯金、および連座を除いたものである。
【0073】
正極集電体に用いる鉛合金としては、耐食性および機械的強度の点で、Pb-Ca系合金、Pb-Ca-Sn系合金が好ましい。正極集電体は、組成の異なる鉛合金層を有してもよく、合金層は複数でもよい。芯金には、Pb-Ca系合金やPb-Sb系合金を用いることが好ましい。
【0074】
正極電極材料は、酸化還元反応により容量を発現する正極活物質(二酸化鉛もしくは硫酸鉛)を含む。正極電極材料は、必要に応じて、アンチモン(Sb)などの他の添加剤を含んでもよい。
【0075】
未化成のペースト式正極板は、負極板の場合に準じて、正極集電体に、正極ペーストを充填し、熟成、乾燥することにより得られる。正極ペーストは、鉛粉、添加剤、水、硫酸を練合することで調製される。
未化成のクラッド式正極板は、芯金が挿入されたチューブに、必要に応じて添加剤と鉛粉またはスラリー状の鉛粉とを混合し、混合物を充填し、複数のチューブを連座で結合することにより形成される。
その後、未化成の正極板を化成することにより、正極板が形成される。
【0076】
(負極板)
鉛蓄電池の負極板は、負極集電体と、負極電極材料とで構成されている。負極電極材料は、負極板から負極集電体を除いたものである。負極集電体は、鉛(Pb)または鉛合金の鋳造により形成してもよく、鉛または鉛合金シートを加工して形成してもよい。加工方法としては、例えば、エキスパンド加工や打ち抜き(パンチング)加工が挙げられる。
【0077】
負極集電体に用いる鉛合金は、Pb-Sb系合金、Pb-Ca系合金、Pb-Ca-Sn系合金のいずれであってもよい。これらの鉛もしくは鉛合金は、更に、添加元素として、Ba、Ag、Al、Bi、As、Se、Cuなどからなる群より選択された少なくとも1種を含んでもよい。
【0078】
負極電極材料は、酸化還元反応により容量を発現する負極活物質(鉛もしくは硫酸鉛)を含んでおり、防縮剤、カーボンブラックのような炭素質材料、硫酸バリウムなどを含んでもよく、必要に応じて、他の添加剤を含んでもよい。
【0079】
充電状態の負極活物質は、海綿状鉛であるが、未化成の負極板は、通常、鉛粉を用いて作製される。
【0080】
負極板は、負極集電体に、負極ペーストを充填し、熟成および乾燥することにより未化成の負極板を作製し、その後、未化成の負極板を化成することにより形成できる。負極ペーストは、鉛粉と有機防縮剤および必要に応じて各種添加剤に、水と硫酸を加えて混練することで作製する。
【0081】
化成は、鉛蓄電池の電槽内に未化成の正負極板群を収容して行うことができる。必要に応じてセル間接続や蓋溶着をおこなった後に電解液を注液して電槽内で化成をおこなってもよい。また、正負極板の化成を個別に行った後に鉛蓄電池または極板群の組立をおこなってもよい。
【0082】
図7に、袋状セパレータを用いた鉛蓄電池の一例の外観を示す。
鉛蓄電池1は、極板群11と電解液(図示せず)とを収容する電槽12を具備する。電槽12内は、隔壁13により、複数のセル室14に仕切られている。各セル室14には、極板群11が1つずつ収納されている。電槽12の開口部は、負極端子16および正極端子17を具備する蓋15で閉じられる。蓋15には、セル室毎に液口栓18が設けられている。補水の際には、液口栓18を外して補水液が補給される。液口栓18は、セル室14内で発生したガスを電池外に排出する機能を有してもよい。
【0083】
極板群11は、それぞれ複数枚の負極板2および正極板3を、セパレータ4を介して積層することにより構成されている。ここでは、負極板2を収容する袋状のセパレータ4を示すが、袋状のセパレータ4が正極板3を収容していてもよい。電槽12の一方の端部に位置するセル室14では、複数の負極板2を並列接続する負極棚部6が貫通接続体8に接続され、複数の正極板3を並列接続する正極棚部5が正極柱7に接続されている。正極柱7は蓋15の外部の正極端子17に接続されている。電槽12の他方の端部に位置するセル室14では、負極棚部6に負極柱9が接続され、正極棚部5に貫通接続体8が接続される。負極柱9は蓋15の外部の負極端子16と接続されている。各々の貫通接続体8は、隔壁13に設けられた貫通孔を通過して、隣接するセル室14の極板群11同士を直列に接続している。
【0084】
[実施例]
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0085】
《鉛蓄電池A1》
(1)負極板の作製
鉛粉、水、希硫酸、カーボンブラック、有機防縮剤を混合して、負極ペーストを得た。負極ペーストを、負極集電体としてのPb-Ca-Sn系合金製のエキスパンド格子の網目部に充填し、熟成、乾燥し、未化成の負極板を得た。有機防縮剤には、リグニンスルホン酸ナトリウムを用いた。カーボンブラックおよび有機防縮剤は、それぞれ、負極電極材料100質量%に含まれる含有量が、それぞれ、共に0.2質量%となるように、添加量を調整して、負極ペーストに配合した。
【0086】
(2)正極板の作製
鉛粉と、水と、硫酸とを混練させて、正極ペーストを作製した。正極ペーストを、正極集電体としてのPb-Ca-Sn系合金製のエキスパンド格子の網目部に充填し、熟成、乾燥し、未化成の正極板を得た。
【0087】
(3)セパレータの作製
ポリエチレン製の微多孔膜で形成され、両面にリブが形成された1枚のセパレータシートを二つ折りにし、左右端部を接合し、袋状のセパレータS1とした。図2に示すセパレータシートにおいて、内リブの間隔を極板領域において2.0mm、接合領域(左右端部から5mmまでの周辺領域)において1.0mmとし、内リブの高さを極板領域および接合領域ともに0.1mmとしたものを用いた。また、外リブの間隔を極板領域において8.0mm、接合領域において1.0mmとし、外リブの高さを極板領域において0.4mm、接合領域において0.2mmとした。また、セパレータのベース部の平均厚みは、0.25mmであった。
【0088】
なお、内リブおよび外リブを含む全てのリブは、突出部の断面形状が略等脚台形状であり、リブの幅はセパレータベース面の底部において0.25mm、頂部において0.15mmとした。袋状セパレータの内表面の両面(第1面および第2面)に内リブが形成され、且つ、外表面の両面(第3面および第4面)に外リブが形成されるように、セパレータシート内の第1~第4領域にリブを配置した。セパレータシートは長辺の長さ250mm、短辺の長さ152mmの長方形状で、全てのリブはセパレータシートの長辺に平行に、直線状に延伸するストライプパターンで形成した。
【0089】
セパレータシートを二つに折る際に、セパレータシートを折り曲げる方向を短辺に平行な方向から僅かにずらし、対向する内リブ同士が重ならないように(図3(a))折り曲げた。その後、左右端部の3mmの領域をギアシール法にて接合し、袋状のセパレータを得た。折り曲げしろを除いた内リブの長さLは、第1領域および第2領域のいずれも、接合領域および極板領域ともに124mmであり、接合領域における内リブの頂部間の間隔Dは上述の通り1.0mmであった。最も端部側に位置する内リブの頂部の当該端部からの距離Wは0.4mmであった。セパレータシートを折り曲げる軸Yの、短辺に平行な方向Xからのずれ角θは、0.2°(内リブ同士のなす角2θ=0.4°)とした。
【0090】
セパレータシートの第1領域上に未化成の負極板を押し当てた状態でセパレータシートを折り曲げ、左右端部を接合し、セパレータの袋状加工と負極板の収容を並行して行った。
【0091】
(4)鉛蓄電池の作製
負極板が収容された袋状セパレータS1と正極板とを積層し、セル当たり未化成の負極板8枚と未化成の正極板8枚とで極板群を形成した。
極板群をポリプロピレン製の電槽に挿入し、電解液を注液して、電槽内で化成を施して、公称電圧12Vおよび公称容量が48Ah(5時間率)の液式の鉛蓄電池A1を組み立てた。
【0092】
《鉛蓄電池A2》
セパレータS1の作製において、セパレータシートを二つに折る際に、セパレータシートを折り曲げる軸を変更した。対向する内リブ同士が交差するように(図3(b))、セパレータシートを折り曲げる軸Yの、短辺に平行な方向Xからのずれ角θを、0.5°(内リブ同士の交差角2θ=1°)とした。これ以外については、鉛蓄電池A1と同様にして鉛蓄電池A2を作製した。
【0093】
《鉛蓄電池A3》
セパレータS1と異なる袋状セパレータを作成した。
ポリエチレン製の微多孔膜で形成され、両面にリブが形成された1枚のセパレータシートを二つ折りにし、左右端部を接合し、袋状のセパレータS2とした。図6に示すセパレータシートにおいて、内リブの間隔を極板領域および接合領域(左右端部から5mmまでの周辺領域)ともに0.5mmとし、内リブの高さを極板領域および接合領域ともに0.1mmとしたものを用いた。また、外リブの間隔を極板領域において8.0mm、接合領域において0.5mmとし、外リブの高さを極板領域において0.4mm、接合領域において0.2mmとした。また、セパレータのベース部の平均厚みは、0.25mmであった。
【0094】
なお、内リブおよび外リブを含む全てのリブは、突出部の断面形状が略等脚台形状であり、リブの幅はセパレータベース面の底部において0.2mm、頂部において0.1mmとした。袋状セパレータの内表面の両面(第1面および第2面)に内リブが形成され、且つ、外表面の両面(第3面および第4面)に外リブが形成されるように、セパレータシート内の第1~第4領域にリブを配置した。セパレータシートは長辺の長さ250mm、短辺の長さ152mmの長方形状で、全ての内リブはセパレータシートの長辺に垂直に、全ての外リブはセパレータシートの長辺に平行に、直線状に延伸するストライプパターンで形成した。
【0095】
セパレータシートを二つに折る際に、セパレータシートを折り曲げる方向を短辺に平行な方向から僅かにずらし、対向する内リブ同士が重ならないように折り曲げた。その後、左右端部の3mmの領域をギアシール法にて接合し、袋状のセパレータを得た。折り曲げしろを除いた内リブの長さLは、第1領域および第2領域のいずれも、接合領域および極板領域ともにセパレータシートの短辺の長さに等しい152mmであり、接合領域における内リブの頂部間の間隔Dは上述の通り0.5mmであった。最も端部側に位置する内リブの頂部の当該端部からの距離Wは0mmであった。セパレータシートを折り曲げる軸Yの、短辺に平行な方向Xからのずれ角θは、0.05°(内リブ同士のなす角2θ=0.1°)とした。なお、折り曲げしろを除いた外リブの長さは、接合領域および主領域ともに124mmであり、接合領域における外リブの頂部間の間隔は上述の通り0.5mmであった。最も端部側に位置する外リブの頂部の当該端部からの距離は0.4mmであった。
【0096】
セパレータS2に負極板を収容して極板群を形成し、鉛蓄電池A3を作製した。
《鉛蓄電池A4》
セパレータS2の作製において、セパレータシートを二つに折る際に、セパレータシートを折り曲げる軸を変更した。対向する内リブ同士が交差するように、セパレータシートを折り曲げる軸Yの、短辺に平行な方向Xからのずれ角θを、0.5°(内リブ同士の交差角2θ=1°)とした。これ以外については、鉛蓄電池A3と同様にして鉛蓄電池A4を作製した。
【0097】
《鉛蓄電池B1》
セパレータS1に正極板を収容して極板群を形成したほかは、鉛蓄電池A1と同様の方法で鉛蓄電池B1を作製した。
【0098】
《鉛蓄電池B2》
セパレータS1に正極板を収容して極板群を形成したほかは、鉛蓄電池A2と同様の方法で鉛蓄電池B2を作製した。
鉛蓄電池B1およびB2においては、セパレータシートの内リブの間隔を極板領域において8.0mm、接合領域(左右端部から5mmまでの周辺領域)において1.0mmとし、内リブの高さを極板領域において0.4mm、接合領域において0.2mmとした。また、外リブの間隔を極板領域において2.0mm、接合領域において1.0mmとし、外リブの高さを極板領域および接合領域ともに0.1mmとした。
【0099】
《鉛蓄電池B3》
セパレータS2の作成において、セパレータシートを折り曲げる方向を逆にして、セパレータS3を作成した。すなわち、セパレータS3は、内リブと外リブの関係がセパレータS2と逆であり、内リブはセパレータシートの長辺に平行に、外リブはセパレータシートの長辺に垂直に、直線状に延伸している。セパレータS3の内リブの間隔、高さ、および長さは、それぞれ、セパレータS2の外リブの間隔、高さ、および長さと同じであり、セパレータS3における外リブの間隔、高さ、および長さは、それぞれ、セパレータS2における内リブの間隔、高さ、および長さと同じである。
【0100】
セパレータS3に正極板を収容して極板群を形成したほかは、鉛蓄電池A3と同様の方法で、鉛蓄電池B3を作製した。
【0101】
《鉛蓄電池B4》
セパレータS3に正極板を収容して極板群を形成したほかは、鉛蓄電池A4と同様の方法で鉛蓄電池B4を作製した。
【0102】
[評価1:振動による下部短絡発生]
JIS D 5301:2006に規定される重負荷寿命試験を150サイクル行った後、以下の振動試験を実施し、下部短絡の発生率を比較した。
振動方向:上下の単振動
加速度:6G
振動数:30Hz
加振時間:2時間
【0103】
[評価2:耐浸透短絡性]
下記のサイクルで充放電を繰り返し、浸透短絡が発生したサイクル数を評価した。
1. 放電:9.6A(終止電圧10.5V)
2. 定抵抗放電:10Ω抵抗接続×7日間
3. 充電:14.4V/50A×60分
上記1~3を1サイクルとして繰り返し、浸透短絡の発生により充電電流および電圧のふらつきが生じた時点のサイクル数を求めた。鉛蓄電池A1のサイクル数を100とした相対比で、各鉛蓄電池の耐浸透短絡性を評価した。
【0104】
鉛蓄電池A1~A4、B1~B4の評価1、2の結果を表1に示す。
【0105】
【表1】
【0106】
表1に示すように、接合領域において内リブが交差するように配置した鉛蓄電池A2およびA4では、振動試験において下部短絡は発生しなかった。これは、袋状セパレータの接合強度が向上していることから、セパレータ端部のシール外れが発生せず、重負荷寿命試験によって電槽下部に堆積した正極活物質由来の沈殿物と負極板との接触による短絡が抑制されているためと考えられる。これに対し、鉛蓄電池A1およびA3では、20%の高確率で下部短絡が発生した。これは、袋状セパレータの接合強度が十分でないため、振動試験途中で袋状セパレータの接合が一部外れ、接合が外れた部分を介して正極活物質由来の沈殿物と負極板とが接触し、短絡に至ったものと考えられる。
【0107】
さらに、鉛蓄電池A2およびA4では、耐浸透短絡性も鉛蓄電池A1およびA3よりも向上している。これは、内リブの交差により、ギアシール後の圧着部が僅かに厚くなることで、セパレータ端部の接合領域あるいは接合領域と極板領域の間の領域において、負極板とセパレータとの間の距離が僅かに広くなることから、端部周囲での負極板とセパレータとの接触が抑制され、浸透短絡が抑制されたと考えられる。
【0108】
このように、本実施形態の袋状セパレータの製造方法は、袋状セパレータが負極板を収容する場合に顕著に効果があり、袋状セパレータに負極板を収容した構成の鉛蓄電池において生じる特有の課題を一部解決できる。
【0109】
袋状セパレータに正極板を収容して同様の方法で鉛蓄電池を製造し、同様に振動試験を行い、耐浸透短絡性を評価した場合、表1の鉛蓄電池B1~B4に示す結果となった。袋状セパレータに負極板を収容する場合と同様、接合部において内リブを交差させることによって、下部短絡は抑制される。一方、袋状セパレータに正極板を収容する場合には、セパレータ端部における負極板とセパレータとの間の距離は負極板を収容しないことで十分に確保されている。このため、接合部において内リブを交差させた鉛蓄電池B2、B4、および、接合部において内リブの交差がない鉛蓄電池B1、B3ともに、鉛蓄電池A2およびA4と同等の耐浸透短絡性が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明の一側面に係る鉛蓄電池の製造方法は、制御弁式および液式の鉛蓄電池において用いられるセパレータの製造に適用可能であり、自動車もしくはバイクなどの始動用の電源として好適に利用できる。
【符号の説明】
【0111】
1:鉛蓄電池
2:負極板
3:正極板
4:セパレータ
5:正極棚部
6:負極棚部
7:正極柱
8:貫通接続体
9:負極柱
11:極板群
12:電槽
13:隔壁
14:セル室
15:蓋
16:負極端子
17:正極端子
18:液口栓
100:セパレータ
101:ベース部
102a~102e:内リブ
104a、104b:外リブ
106:極板領域
108a、108b:接合領域
109a、109b:接合
110~112、114:セパレータシート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7