(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】表面検査装置、表面検査方法、鋼材の製造方法、鋼材の品質管理方法、及び鋼材の製造設備
(51)【国際特許分類】
G01N 21/892 20060101AFI20221004BHJP
【FI】
G01N21/892 B
(21)【出願番号】P 2020006688
(22)【出願日】2020-01-20
【審査請求日】2021-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 紘明
(72)【発明者】
【氏名】久嶋 希望
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-036175(JP,A)
【文献】特開昭60-181879(JP,A)
【文献】特開昭58-079146(JP,A)
【文献】特開昭53-012383(JP,A)
【文献】実開平06-019369(JP,U)
【文献】特開昭61-081076(JP,A)
【文献】特開2010-071721(JP,A)
【文献】特開2008-107311(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84-G01N 21/958
G01B 9/00-G01B 9/10
G01B 11/00-G01B 11/30
G02B 5/20-G02B 5/28
G06T 1/00-G06T 7/90
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼材の検査対象部位に線状の斜光照明光を照射する斜光ライン光源と、
前記線状の斜光照明光の延伸方向に対して平行な方向に視野を有し、前記検査対象部位からの前記斜光照明光の反射光を受光して前記検査対象部位の画像を撮影するラインセンサと、
前記画像の前記延伸方向における反射光の輝度むらを補正する補正手段と、
前記補正手段によって補正された画像を用いて前記検査対象部位における表面欠陥を検出する画像処理手段と、
を備え
、
前記補正手段は、前記ラインセンサによって撮影されたアナログ形態の輝度信号を処理する、又は、前記ラインセンサの受光光量を制御することにより、前記反射光の輝度むらを補正する、表面検査装置。
【請求項2】
前記補正手段は、前記ラインセンサの受光素子の入射光量に対する感度を調整することにより、前記反射光の輝度むらを補正する、請求項
1に記載の表面検査装置。
【請求項3】
前記補正手段は、前記ラインセンサへの入射光量を遮光する光学フィルタを前記斜光ライン光源と前記ラインセンサとの間に設置することにより、前記反射光の輝度むらを補正する、請求項
1に記載の表面検査装置。
【請求項4】
前記光学フィルタは、前記延伸方向に沿って透過光量が変化する光学フィルタである、請求項
3に記載の表面検査装置。
【請求項5】
前記光学フィルタは、前記延伸方向の透過光量を電気的に制御可能な光学フィルタである、請求項
3に記載の表面検査装置。
【請求項6】
前記光学フィルタは、前記延伸方向の入射光量を所定割合遮光する光学フィルタである、請求項
3に記載の表面検査装置。
【請求項7】
斜光ライン光源を用いて鋼材の検査対象部位に線状の斜光照明光を照射する照射ステップと、
前記線状の斜光照明光の延伸方向に対して平行な方向に視野を有するラインセンサを用いて、前記検査対象部位からの前記斜光照明光の反射光を受光して前記検査対象部位の画像を撮影する撮影ステップと、
前記画像の前記延伸方向における反射光の輝度むらを補正する補正ステップと、
前記補正ステップにおいて補正された画像を用いて前記検査対象部位における表面欠陥を検出する検出ステップと、
を含
み、
前記補正ステップは、前記ラインセンサによって撮影されたアナログ形態の輝度信号を処理するステップ、又は、前記ラインセンサの受光光量を制御することにより、前記反射光の輝度むらを補正するステップを含む、表面検査方法。
【請求項8】
請求項1~
6のうち、いずれか1項に記載の表面検査装置を用いて鋼材の表面欠陥を検出しながら鋼材を製造するステップを含む鋼材の製造方法。
【請求項9】
請求項1~
6のうち、いずれか1項に記載の表面検査装置を用いて表面欠陥の有無に基づいて鋼材を分類することによって鋼材の品質を管理するステップを含む鋼材の品質管理方法。
【請求項10】
請求項1~
6のうち、いずれか1項に記載の表面検査装置と鋼材の製造設備とを備え、前記表面検査装置は、前記鋼材の製造設備で製造された鋼材の表面を検査する、鋼材の製造設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面検査装置、表面検査方法、鋼材の製造方法、鋼材の品質管理方法、及び鋼材の製造設備に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼製品の製造ラインにおいて表面の品質保証は極めて重要である。このため、特に鋼板の分野では、様々な種類の表面欠陥を検出するために、古くからライン光源とラインセンサとを用いて表面欠陥検査の自動化が進んでいる(特許文献1参照)。しかしながら、単純にライン光源を用いて長手方向(鋼板のライン搬送方向)に沿って照明光を照射するだけでは、長手方向に長い線状の表面欠陥の検出は困難である。例えば圧延ロールと鋼板がスリップし、鋼板表面が長手方向に沿って擦れることによって発生するスリ疵は、長手方向になだらかな形状を有するため、長手方向からの照明光の照射では信号強度が小さくなる。そこで、本課題を解決するために、照明光に幅方向の成分を持たせた斜光ライン光源が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-275424号公報
【文献】特開2006-242866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、上述の通り、長手方向に長い線状の表面欠陥を検出することはできない。一方、特許文献2に記載の技術によれば、長手方向に長い線状の表面欠陥を検出することはできる。ところが、斜光ライン光源を用いるデメリットとして、鋼材の幅方向に沿って反射光の輝度むらが発生するという新たな課題があった。具体的には、
図9(a),(b)に示すように、斜光ライン光源101を用いた場合、検査対象となる鋼材Sの幅方向(X方向)に対して平行な検査線上において、幅方向中央部と幅方向端部とでは光学系が異なる。詳しくは、斜光させている方向側(
図9(b)の右側)の幅方向端部に近づくにつれて、光学系は幅方向中央部と比較して後方拡散条件に近づく。一方、斜光させている方向とは反対側(
図9(b)の左側)の幅方向位置に近づくにつれて、光学系は幅方向中央部と比較して正反射条件に近づく。後方拡散条件に近づくほど反射光の光量は小さくなり、正反射条件に近づくほど反射光の光量は大きくなる。このため、
図10に示すように、ラインセンサ102(
図9参照)の撮像視野内において斜光方向に沿って反射光の輝度むらが生じる。
【0005】
反射光の輝度むらの程度は、画角、斜光角、表面反射の拡散性、表面の鏡面性、又は長手方向の投受光角度によって異なる。特に
図11に示すように、図中矢印で示す長手方向(ライン搬送方向)において投受光角度が同一である場合、反射光の輝度むらが非常に大きく、撮像視野両端での反射光の輝度差が10倍以上となることもある。このような輝度むらが発生した場合、通常はデジタル信号処理により輝度むらを除去する。しかしながら、この方法では、輝度むらが大きくなるほど表面欠陥の検出に利用できる分解能が低下する。例えば、8ビットのデジタル画像を用いた検査で両端の輝度むらが16倍存在する場合、視野両端で補正に4ビット分の分解能を用いてしまい、結局、表面欠陥の検出に利用可能な輝度分解能はわずか4ビットとなってしまう。さらに、鋼種毎の反射特性のばらつきや経年劣化等による光源光量のばらつきを考慮すると、その補正にも分解能が必要となるため、表面欠陥の検出に利用可能な輝度分解能はさらに低下し、長手方向に長い線状の表面欠陥を精度よく検出することができない。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、鋼材の長手方向に長い線状の表面欠陥を精度よく検出可能な表面検査装置及び表面検査方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、鋼材の長手方向に長い線状の表面欠陥を精度よく検出して鋼材の製造歩留まりを向上可能な鋼材の製造方法、鋼材の品質管理方法、及び鋼材の製造設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る表面検査装置は、鋼材の検査対象部位に線状の斜光照明光を照射する斜光ライン光源と、前記線状の斜光照明光の延伸方向に対して平行な方向に視野を有し、前記検査対象部位からの前記斜光照明光の反射光を受光して前記検査対象部位の画像を撮影するラインセンサと、前記画像の前記延伸方向における反射光の輝度むらを補正する補正手段と、前記補正手段によって補正された画像を用いて前記検査対象部位における表面欠陥を検出する画像処理手段と、を備える。
【0008】
前記補正手段は、前記ラインセンサによって撮影されたアナログ形態の輝度信号を処理する、又は、前記ラインセンサの受光光量を制御することにより、前記反射光の輝度むらを補正するとよい。
【0009】
前記補正手段は、前記ラインセンサの受光素子の入射光量に対する感度を調整することにより、前記反射光の輝度むらを補正するとよい。
【0010】
前記補正手段は、前記ラインセンサへの入射光量を遮光する光学フィルタを前記斜光ライン光源と前記ラインセンサとの間に設置することにより、前記反射光の輝度むらを補正するとよい。
【0011】
前記光学フィルタは、前記延伸方向に沿って透過光量が変化する光学フィルタであるとよい。
【0012】
前記光学フィルタは、前記延伸方向の透過光量を電気的に制御可能な光学フィルタであるとよい。
【0013】
前記光学フィルタは、前記延伸方向の入射光量を所定割合遮光する光学フィルタであるとよい。
【0014】
本発明に係る表面検査方法は、斜光ライン光源を用いて鋼材の検査対象部位に線状の斜光照明光を照射する照射ステップと、前記線状の斜光照明光の延伸方向に対して平行な方向に視野を有するラインセンサを用いて、前記検査対象部位からの前記斜光照明光の反射光を受光して前記検査対象部位の画像を撮影する撮影ステップと、前記画像の前記延伸方向における反射光の輝度むらを補正する補正ステップと、前記補正ステップにおいて補正された画像を用いて前記検査対象部位における表面欠陥を検出する検出ステップと、を含む。
【0015】
本発明に係る鋼材の製造方法は、本発明に係る表面検査装置を用いて鋼材の表面欠陥を検出しながら鋼材を製造するステップを含む。
【0016】
本発明に係る鋼材の品質管理方法は、本発明に係る表面検査装置を用いて表面欠陥の有無に基づいて鋼材を分類することによって鋼材の品質を管理するステップを含む。
【0017】
本発明に係る鋼材の製造設備は、本発明に係る表面検査装置と鋼材の製造設備とを備え、前記表面検査装置は、前記鋼材の製造設備で製造された鋼材の表面を検査する。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る表面検査装置及び表面検査方法によれば、鋼材の長手方向に長い線状の表面欠陥を精度よく検出することができる。また、本発明に係る鋼材の製造方法、鋼材の品質管理方法、及び鋼材の製造設備によれば、鋼材の長手方向に長い線状の表面欠陥を精度よく検出して鋼材の製造歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態である表面検査装置の構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す表面検査装置の変形例の構成を示す模式図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施形態である表面検査装置による表面検査処理の実施例を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の第2の実施形態である表面検査装置の構成を示す模式図である。
【
図5】
図5は、
図4に示す光学フィルタの構成例を示す図である。
【
図6】
図6は、
図4に示す表面検査装置の変形例の構成を示す模式図である。
【
図7】
図7は、
図4に示す表面検査装置の変形例の構成を示す模式図である。
【
図8】
図8は、本発明の第2の実施形態である表面検査装置による表面検査処理の実施例を示す図である。
【
図9】
図9は、鋼材の幅方向における光学系の違いを説明するための図である。
【
図10】
図10は、撮像視野内の斜光方向における反射光の輝度むらを示す図である。
【
図11】
図11は、斜光ライン光源の投光角度及びラインセンサの受光角度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の第1及び第2の実施形態である表面検査装置の構成について説明する。
【0021】
〔第1の実施形態〕
まず、
図1~
図3を参照して、本発明の第1の実施形態である表面検査装置の構成について説明する。
【0022】
図1は、本発明の第1の実施形態である表面検査装置の構成を示す模式図である。
図2は、
図1に示す表面検査装置の変形例の構成を示す模式図である。
【0023】
図1に示すように、本発明の第1の実施形態である表面検査装置1は、斜光ライン光源2、ラインセンサ3、及び画像処理手段4を備えている。ここで、ライン光源は、発光面が1方向に長い線状の光源のことを示す。一方、ラインセンサは、線状の視野を持つ撮像手段のことを示す。但し、本発明におけるラインセンサは、1ラインだけとは限らない。例えば、2次元の視野を持つエリアセンサを使用する場合も、本発明における「ラインセンサ」に含まれる。なお、エリアセンサを使用する場合には、エリアセンサの視野から線状の視野のみ抽出して使用することが最も好ましい。
【0024】
斜光ライン光源2は、光源の軸方向に対して直交する方向を0°、光源の軸方向を90°としたとき、0°超え90°未満の任意の角度をなす照明光を斜光照明光Lとして鋼材Sの検査対象部位に照射する。また、本実施形態においては、鋼材Sの幅方向と斜光ライン光源2の軸方向が平行になるように、斜光ライン光源2が配置されている。即ち、鋼材Sの長手方向(ライン搬送方向)と斜光ライン光源2の軸方向とが直角に交わっている。その結果、本実施形態では、斜光ライン光源2は、鋼材Sのライン搬送方向に対して垂直な鋼材Sの検査線A上に斜光照明光Lを照射する。
【0025】
ラインセンサ3は、検査線Aに対して平行な線上に配列された複数の受光素子31、複数の受光素子31毎に設けられた複数の増幅器32、及びAD変換機33を備えている。
【0026】
複数の受光素子31は、検査線A上に照射された斜光照明光Lの反射光を受光し、反射光の輝度を示すアナログ信号を増幅器32に出力する。
【0027】
複数の増幅器32は、増幅器32間でそれぞれ異なるゲインで受光素子31から出力されたアナログ信号を増幅した後、AD変換機33に出力する。増幅器32間でそれぞれ異なるゲインでアナログ信号を増幅することにより、検査線Aの方向における反射光の輝度むらを補正することができる。なお、各増幅器32のゲインは、画角、斜光角、表面反射の拡散性、表面の鏡面性、又は長手方向の投受光角等の条件により変化する反射光の輝度むらがある程度均一であれば一定でよい。
【0028】
AD変換機33は、増幅器32から出力されたアナログ形態の電気信号をデジタル形態の電気信号に変換し、デジタル形態の電気信号を検査線Aにおける鋼材Sの画像信号として画像処理手段4に出力する。
【0029】
画像処理手段4は、AD変換機33から出力された検査線Aにおける鋼材Sの画像信号を用いて検査線Aにおける鋼材Sの表面欠陥を検出する。
【0030】
なお、鋼材Sの表面検査を実施する中で条件の変化により反射光の輝度むらの程度が変化する場合には、フィードバック制御を行いデジタル信号時の輝度むらを変化させることが好ましい。フィードバック制御を行える表面検査装置1の例として、
図2の構成を示す。
図2における表面検査装置1は、
図1の斜光ライン光源2、ラインセンサ3、及び画像処理手段4に加えて、フィードバック制御を行うためのコントローラ5を備えている。具体的には、
図2に示すように、コントローラ5が、得られたデジタル信号時での反射光の輝度むらに基づいて、輝度むらを抑制するように各増幅器32のゲインを変化させる。このような処理によれば、条件の変化によらず反射光の輝度むらを抑制し、均一な信号を取得することができる。
【0031】
斜光ライン照明を用いて鋼材の表面に斜光照明光を照射してその反射光を撮像した結果と、輝度むらを抑制するように増幅器のゲインを調整して反射光を受光した結果を
図3(a),(b)に示す。
図3(a)に示すように増幅器のゲインを調整しない場合、反射光の輝度むらが観測された。これに対して、
図3(b)に示すように増幅器のゲインを調整した場合には、反射光の輝度むらが抑制された。これにより、輝度分解能を全て表面欠陥の検出に用いることができる。
【0032】
〔第2の実施形態〕
次に、
図4~
図8を参照して、本発明の第2の実施形態である表面検査装置の構成について説明する。
【0033】
図4は、本発明の第2の実施形態である表面検査装置の構成を示す模式図である。
図5は、
図4に示す光学フィルタの構成例を示す図である。
図6は、
図4に示す表面検査装置の変形例の構成を示す模式図である。
図7は、
図4に示す表面検査装置の変形例の構成を示す模式図である。
【0034】
図4に示すように、本発明の第2の実施形態である表面検査装置1は、斜光ライン光源2、ラインセンサ3、画像処理手段4、及び光学フィルタ6を備えている。なお、斜光ライン光源2の構成は、本発明の第1の実施形態である表面検査装置1における斜光ライン光源2と同じ構成であるので、以下ではその説明を省略する。
【0035】
ラインセンサ3は、検査線Aに対して平行な線上に配列された複数の受光素子31及びAD変換機33を備えている。
【0036】
複数の受光素子31は、光学フィルタ6を介して検査線A上に照射された斜光照明光Lの反射光を受光し、反射光の輝度を示すアナログ形態の電気信号をAD変換機33に出力する。
【0037】
AD変換機33は、複数の受光素子31から出力されたアナログ形態の電気信号をデジタル形態の電気信号に変換し、デジタル形態の電気信号を検査線Aにおける鋼材Sの画像信号として画像処理手段4に出力する。
【0038】
画像処理手段4は、AD変換機33から出力された検査線Aにおける鋼材Sの画像信号を用いて検査線Aにおける鋼材Sの表面欠陥を検出する。
【0039】
光学フィルタ6は、ラインセンサ3の受光部の前に配置され、ラインセンサ3の受光光量を光学的に調整することにより反射光の輝度むらを補正する。光学フィルタ6としては、例えば、
図5(a)に示すような透過光量が鋼材Sの幅方向に沿って段階的に変化する光学フィルタや、
図5(b)に示すようなは鋼材Sの幅方向の位置毎の透過光量を電気的に制御可能な光学フィルタが使用できる。また、
図5(c)に示すように、鋼材Sの幅方向の入射光量を所定割合遮光する光学フィルタを用いてもよい。
図5において、符号3aはラインセンサ3の受光面を示す。なお、
図5(c)に示すような入射光量を所定割合遮光する光学フィルタを設置した場合は、光学フィルタが設置されている部分と設置されていない部分との境界の影響が懸念されるが、ラインセンサ3と光学フィルタ6との間の距離が近ければ、境界部にはラインセンサ3の焦点が合わないため境界部が鮮明に写り込むことはなく検査に影響はない。
【0040】
画角、斜光角、表面反射の拡散性、表面の鏡面性、又は長手方向の投受光角度等の条件により反射光の輝度むらの程度が変化する場合、フィードバック制御を行いデジタル信号時の輝度むらを変化させることが好ましい。具体的には、
図6に示すように、コントローラ8が、得られたデジタル形態の電気信号に基づいてマニピュレータ7を制御することによって光学フィルタ6の幅方向の設置位置を調整することにより、反射光の輝度むらが最小となる位置にフィードバック制御してもよい。また、
図7に示すように、コントローラ8が、得られたデジタル信号に基づいて光学フィルタ6の幅方向の透過光量を電気的に制御することにより、反射光の輝度むらが最小となる透過光量をフィードバック制御してもよい。なお、光学フィルタ6を透過した後の光量が十分であれば、第1の実施形態で懸念される増幅器32毎のゲインのばらつきつきに起因するアナログノイズ差も本実施形態では改善できる。
【0041】
斜光ライン照明を用いて鋼材の表面に斜光照明光を照射してその反射光を撮像した結果と、ラインセンサの前に光学フィルタを設置して輝度むらを抑制するようにして反射光を撮像した結果を
図8(a),(b)に示す。本実施例では、光学フィルタとして透過率が均一な減光フィルタを用い、ラインセンサの正面の幅方向の輝度が高い半面のみ遮光するように設置した。
図8(a),(b)に示すように、光学フィルタを設置することにより輝度むらが抑制されている。これにより、輝度分解能を全て表面欠陥の検出に用いることができる。
【0042】
なお、本実施形態では斜交照明とラインセンサを用いる場合における視野両端での輝度むらの補正に光学フィルタを用いたが、それ以外の輝度むらも同様の考え方で補正可能である。例えば、点状光源とラインセンサを用いる場合、視野中央のみ輝度が高く、視野端で輝度が低下する場合があるが、視野端に対して視野中央のみ透過率を低下させることにより、輝度むらを低下させることが可能となる。
【0043】
また、第1及び第2の実施形態においては、鋼材Sのライン搬送方向と斜光ライン光源2の軸方向が直角になるように、斜光ライン光源2が配置されている例で説明したが、本発明はその配置に限定されない。斜光ライン光源2の軸方向と鋼材Sのライン搬送方向とが直角でなく、小さい方の角度が直角(つまり90°)以下の角度を有していても、本発明の効果を得ることができる。特に、製造ラインのレイアウト上の問題から直角とできない場合は、斜光照明の効果を期待できる範囲で小さい方の角度を直角以下としてもよい。斜光照明の効果を考慮すると、斜光ライン光源2の軸方向と鋼材Sのライン搬送方向とがなす小さい方の角度は、経験上60°以上であることが好ましく、80°以上であることがより好ましい。斜光ライン光源の配置としては、90°に近ければ近いほど、より理想的な形態となる。
【0044】
以上、本発明者らによってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述及び図面により本発明は限定されることはない。例えば、本発明の一実施形態である表面検査装置又は表面検査方法を利用して、線状の表面欠陥を検出しながら鋼材を製造することにより、線状の表面欠陥を精度よく検出して鋼材の製造歩留まりを向上できる。また、本発明の一実施形態である表面検査装置又は表面検査方法を利用して、線状の表面欠陥の有無に基づいて鋼材を分類することによって鋼材の品質を管理することができる。言い換えれば、線状の表面欠陥を精度よく検出して鋼材の製造歩留まりを向上できる。また、本発明の一実施形態である表面検査装置又は表面検査方法を利用して、公知又は既存の製造設備で製造された鋼材の表面を検査することにより、線状の表面欠陥を精度よく検出して鋼材の製造歩留まりを向上できる。このように、本実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例、及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0045】
1 表面検査装置
2 斜光ライン光源
3 ラインセンサ
4 画像処理手段
5 コントローラ
6 光学フィルタ
7 マニピュレータ
8 コントローラ
31 受光素子
32 増幅器
33 AD変換機
101 斜光ライン光源
102 ラインセンサ
L 斜光照明光
S 鋼材