(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】電気コネクタ及びコネクタ装置
(51)【国際特許分類】
H01R 24/50 20110101AFI20221004BHJP
【FI】
H01R24/50
(21)【出願番号】P 2020114146
(22)【出願日】2020-07-01
(62)【分割の表示】P 2018218373の分割
【原出願日】2018-11-21
【審査請求日】2021-11-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592028846
【氏名又は名称】I-PEX株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100171099
【氏名又は名称】松尾 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100183438
【氏名又は名称】内藤 泰史
(72)【発明者】
【氏名】中村 弘樹
【審査官】藤島 孝太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-045938(JP,A)
【文献】特開2017-212098(JP,A)
【文献】特開2006-049276(JP,A)
【文献】米国特許第07891979(US,B2)
【文献】特開2013-191341(JP,A)
【文献】特開2015-207350(JP,A)
【文献】特開2004-221055(JP,A)
【文献】特開2005-158656(JP,A)
【文献】国際公開第2018/074227(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/00-12/91
24/00-24/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に実装される電気コネクタであって、
相手コネクタのグランドコンタクトに嵌合される
円筒形状の第1コンタクトと、
前記相手コネクタのシグナルコンタクトに電気的に接続される第2コンタクトと、
前記第1コンタクトと前記第2コンタクトとを絶縁状態で保持する第1絶縁ハウジングと、を備え、
前記第2コンタクトは、
前記第1絶縁ハウジングの中央部分に1本配置され、前記相手コネクタのシグナルコンタクトに接触する中心導体と、該中心導体から引き出されるように延びて前記基板の端子部に接続される基板接続部と、を有し、
前記基板接続部は、前記第1コンタクトに囲まれた領域内に収容されると共に、前記相手コネクタとの嵌合方向で見ると、少なくとも一部が視認可能に配置されており、
前記第1絶縁ハウジングは、前記第1コンタクトに囲まれた領域内に設けられており、
前記第1コンタクトの
円筒形状の嵌合部には、壁面を貫通する切欠きが設けられていない、電気コネクタ。
【請求項2】
基板に実装される電気コネクタであって、
相手コネクタのグランドコンタクトに嵌合される筒状の第1コンタクトと、
前記相手コネクタのシグナルコンタクトに電気的に接続される第2コンタクトと、
前記第1コンタクトと前記第2コンタクトとを絶縁状態で保持する第1絶縁ハウジングと、を備え、
前記第2コンタクトは、
前記相手コネクタのシグナルコンタクトに接触する中心導体と、該中心導体から引き出されるように延びて前記基板の端子部に接続される基板接続部と、を有し、
前記基板接続部は、前記第1コンタクトに囲まれた領域内に収容されると共に、前記相手コネクタとの嵌合方向で見ると、少なくとも一部が視認可能に配置されており、
前記第1絶縁ハウジングは、
前記第1コンタクトに囲まれた領域内に設けられていると共に、前記基板接続部の延在方向において、前記基板接続部の先端よりも前記中心導体寄りの領域にのみ設けられて
おり、
前記第1コンタクトの筒状の嵌合部には、壁面を貫通する切欠きが設けられていない、電気コネクタ。
【請求項3】
前記第1絶縁ハウジングは、前記基板接続部の先端面と平行となるように形成された部分を有する、請求項1
又は2記載の電気コネクタ。
【請求項4】
前記基板接続部は、前記嵌合方向であって前記相手コネクタから前記基板に向かう方向である第1方向で見ると、少なくとも一部が視認可能に配置されている、請求項1
~3のいずれか一項記載の電気コネクタ。
【請求項5】
前記第1絶縁ハウジングには、前記基板接続部の少なくとも一部を外部に露出させる切欠き部が形成されている、請求項1~
4のいずれか一項記載の電気コネクタ。
【請求項6】
前記切欠き部は、前記基板接続部における前記端子部との接触領域を外部に露出させるように形成されている、請求項
5記載の電気コネクタ。
【請求項7】
基板に実装された第1コネクタと、信号伝送部材に接続されると共に前記第1コネクタに嵌合される第2コネクタと、を備えるコネクタ装置であって、
前記第1コネクタは、
円筒形状のグランドコンタクトである第1コンタクトと、シグナルコンタクトである第2コンタクトと、前記第1コンタクト及び前記第2コンタクトを絶縁状態で保持する第1絶縁ハウジングと、を有し、
前記第2コネクタは、前記第1コンタクトに嵌合される
円筒形状の第3コンタクトと、前記第2コンタクトに電気的に接続される第4コンタクトと、前記第3コンタクト及び前記第4コンタクトを絶縁状態で保持する第2絶縁ハウジングと、を有し、
前記第2コンタクトは、
前記第2絶縁ハウジングの中央部分に1本配置され、前記第4コンタクトに接触する中心導体と、該中心導体から引き出されるように延びて前記基板の端子部に接続される基板接続部と、を有し、
前記基板接続部は、前記第1コネクタと前記第2コネクタとが嵌合した状態において、前記第3コンタクトに囲まれた領域内に収容されると共に、前記第1コネクタと前記第2コネクタとが嵌合していない状態において、前記第2コネクタとの嵌合方向で見ると、少なくとも一部が視認可能に配置されており、
前記第1絶縁ハウジングは、前記第1コンタクトに囲まれた領域内に設けられており、
前記第1コンタクトの
円筒形状の嵌合部には、壁面を貫通する切欠きが設けられていない、コネクタ装置。
【請求項8】
基板に実装された第1コネクタと、信号伝送部材に接続されると共に前記第1コネクタに嵌合される第2コネクタと、を備えるコネクタ装置であって、
前記第1コネクタは、筒状のグランドコンタクトである第1コンタクトと、シグナルコンタクトである第2コンタクトと、前記第1コンタクト及び前記第2コンタクトを絶縁状態で保持する第1絶縁ハウジングと、を有し、
前記第2コネクタは、前記第1コンタクトに嵌合される筒状の第3コンタクトと、前記第2コンタクトに電気的に接続される第4コンタクトと、前記第3コンタクト及び前記第4コンタクトを絶縁状態で保持する第2絶縁ハウジングと、を有し、
前記第2コンタクトは、前記第4コンタクトに接触する中心導体と、該中心導体から引き出されるように延びて前記基板の端子部に接続される基板接続部と、を有し、
前記基板接続部は、前記第1コネクタと前記第2コネクタとが嵌合した状態において、前記第3コンタクトに囲まれた領域内に収容されると共に、前記第1コネクタと前記第2コネクタとが嵌合していない状態において、前記第2コネクタとの嵌合方向で見ると、少なくとも一部が視認可能に配置されており、
前記第1絶縁ハウジングは、前記第1コンタクトに囲まれた領域内に設けられていると共に、前記基板接続部の延在方向において、前記基板接続部の先端よりも前記中心導体寄りの領域にのみ設けられており、
前記第1コンタクトの筒状の嵌合部には、壁面を貫通する切欠きが設けられていない、コネクタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気コネクタ及びコネクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
信号伝送部材に接続されたプラグコネクタと、基板に実装されたリセプタクルコネクタとが嵌合することにより、信号伝送部材と基板の電気回路とを電気的に接続するコネクタ装置が知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1のリセプタクルコネクタは、プラグコネクタの筒状の導体に係合する外導体と、外導体の内部においてプラグコネクタの導体と接触する内導体と、絶縁体とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記特許文献1に記載されたリセプタクルコネクタにおいては、内導体が、基板の端子に接触可能となるように外側(外導体方向)に引き出された引き出し部を有している。引き出し部は、外導体よりも外側にまで引き出されている。このような構成においては、プラグコネクタとリセプタクルコネクタとが嵌合した状態において、プラグコネクタの導体(外導体)とリセプタクルコネクタの引き出し部とが近接することとなる。これにより、プラグコネクタの外導体とリセプタクルコネクタの引き出し部とで電磁結合が発生し易くなり、電磁界の漏れが生じ、プラグコネクタとリセプタクルコネクタとの挿入損失が増加してしまう。
【0005】
本開示は上記実情に鑑みてなされたものであり、挿入損失を抑制可能な電気コネクタ及びコネクタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る電気コネクタは、基板に実装される電気コネクタであって、相手コネクタのグランドコンタクトに篏合される筒状の第1コンタクトと、相手コネクタのシグナルコンタクトに電気的に接続される第2コンタクトと、第1コンタクトと第2コンタクトとを絶縁状態で保持する第1絶縁ハウジングと、を備え、第2コンタクトは、相手コネクタのシグナルコンタクトに接触する中心導体と、該中心導体から引き出されるように延びて基板の端子部に接続される基板接続部と、を有し、基板接続部は、第1コンタクトに囲まれた領域内に収容されると共に、少なくとも一部が外部に露出している。
【0007】
本開示の一態様に係る電気コネクタでは、中心導体から引き出されるように延びて基板の端子部に接続される基板接続部が、相手コネクタのグランドコンタクトに篏合される筒状の第1コンタクトに囲まれた領域内に収容されている。これにより、本開示の電気コネクタが相手コネクタと篏合した状態において、中心導体と接続されている基板接続部は、相手コネクタのグランドコンタクトから離間した位置に配置されることとなる。このことで、相手コネクタのグランドコンタクトと基板接続部とで電磁結合が発生しにくい構成となり、電気コネクタと相手コネクタとの挿入損失を抑制することができる。さらに、本開示の一態様に係る電気コネクタでは、基板接続部の少なくとも一部が外部に露出している。これにより、本開示の一態様に係る電気コネクタのように、基板接続部が第1コンタクトに囲まれた領域内に収容されている(すなわち引き出し長さが小さい)構成を採用していても、基板接続部の位置を容易に確認することができる。
【0008】
基板接続部は、相手コネクタとの嵌合方向であって相手コネクタから基板に向かう方向である第1方向で見ると、少なくとも一部が視認可能に配置されていてもよい。これにより、電気コネクタを基板に実装する際、及び、電気コネクタに対して相手コネクタを嵌合させる際において、基板接続部の位置を容易且つ確実に確認することができる。
【0009】
第1絶縁ハウジングには、基板接続部の少なくとも一部を外部に露出させる切欠き部が形成されていてもよい。このような構成が採用されることにより、第1絶縁ハウジングによって第1コンタクト及び第2コンタクトの間を確実に絶縁しながら、第1絶縁ハウジングにおける、基板接続部の露出に必要な部分のみを切欠いて基板接続部の一部を確実に露出させることができる。
【0010】
切欠き部は、基板接続部における端子部との接触領域を外部に露出させるように形成されていてもよい。これにより、基板接続部と端子部との接触箇所を確実に視認することができる。
【0011】
第1絶縁ハウジングは、基板接続部の延在方向において、基板接続部の先端よりも中心導体寄りの領域にのみ設けられていてもよい。これにより、例えば第1絶縁ハウジングに切欠きを形成する場合と比較して、基板接続部の一部を露出させるための第1絶縁ハウジングの構成を簡易化することができ、第1絶縁ハウジングの製造容易性を向上させることができる。
【0012】
本開示の一態様に係るコネクタ装置は、基板に実装された第1コネクタと、信号伝送部材に接続されると共に第1コネクタに篏合される第2コネクタと、を備えるコネクタ装置であって、第1コネクタは、筒状のグランドコンタクトである第1コンタクトと、シグナルコンタクトである第2コンタクトと、第1コンタクト及び第2コンタクトを絶縁状態で保持する第1絶縁ハウジングと、を有し、第2コネクタは、第1コンタクトに篏合される筒状の第3コンタクトと、第2コンタクトに電気的に接続される第4コンタクトと、第3コンタクト及び第4コンタクトを絶縁状態で保持する第2絶縁ハウジングと、を有し、第2コンタクトは、第4コンタクトに接触する中心導体と、該中心導体から引き出されるように延びて基板の端子部に接続される基板接続部と、を有し、基板接続部は、第1コネクタと第2コネクタとが嵌合した状態において、第3コンタクトに囲まれた領域内に収容されると共に、第1コネクタと第2コネクタとが嵌合していない状態において、少なくとも一部が外部に露出している。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、電気コネクタ及びコネクタ装置における挿入損失を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るコネクタ装置の斜視図である。
【
図2】
図2は、印刷配線基板に実装されたリセプタクルコネクタの斜視図である。
【
図3】
図3は、リセプタクルコネクタを示す図であり、
図3(a)は平面図、
図3(b)は底面図、
図3(c)は斜視図、
図3(d)は
図3(a)のd-d線に沿った断面図である。
【
図4】
図4は、リセプタクルコネクタのグランドコンタクトを示す図であり、
図4(a)は平面図、
図4(b)は底面図、
図4(c)は斜視図である。
【
図5】
図5は、リセプタクルコネクタのシグナルコンタクトを示す図であり、
図5(a)は平面図、
図5(b)は底面図、
図5(c)は斜視図である。
【
図6】
図6は、リセプタクルコネクタの絶縁ハウジングを示す図であり、
図6(a)は平面図、
図6(b)は底面図、
図6(c)は斜視図である。
【
図7】
図7は、リセプタクルコネクタの製造工程を示す図であり、
図7(a),
図7(b),
図7(c),
図7(d),
図7(e),
図7(f)は製造工程を順に示す斜視図である。
【
図8】
図8は、プラグコネクタとリセプタクルコネクタとの嵌合状態を示す図であり、
図8(a)は平面図、
図8(b)は(a)のb-b線に沿った断面図である。
【
図9】
図9は、比較例に係るコネクタ装置を示す図であり、
図9(a)は比較例に係るコネクタ装置に含まれるリセプタクルコネクタの平面図、
図9(b)は比較例に係るコネクタ装置の断面図である。
【
図11】
図11は、変形例に係るリセプタクルコネクタを示す図であり、
図11(a)は平面図、
図11(b)は(a)のb-b線に沿った断面図である。
【
図12】
図12は、変形例に係るコネクタ装置を示す図であり、
図12(a)は平面図、
図12(b)は(a)のb-b線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に説明される本開示に係る実施形態は本発明を説明するための例示であるので、本発明は以下の内容に限定されるべきではない。以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0016】
[コネクタ装置の概要]
図1及び
図2を参照して、コネクタ装置1の概要について説明する。
図1に示されるように、コネクタ装置1は、リセプタクルコネクタ10(電気コネクタ,第1コネクタ)と、プラグコネクタ100(相手コネクタ,第2コネクタ)とを備えている。リセプタクルコネクタ10は、基板200(
図2参照)に、例えば半田付け等により実装されている。プラグコネクタ100は、同軸ケーブルSC(信号伝送部材)に接続されると共にリセプタクルコネクタ10に篏合される。コネクタ装置1では、同軸ケーブルSCの端末部分に取り付けられたプラグコネクタ100が、基板200に実装されたリセプタクルコネクタ10と篏合することにより、同軸ケーブルSCと基板200の電気回路とを電気的に接続する。なお、基板200は、例えば印刷配線基板であるがこれに限定されない。また、同軸ケーブルSCに替えて、種々の電子機器の信号を伝送する他の信号伝送部材を用いてもよい。
【0017】
なお、以下の説明においては、コネクタ装置1におけるリセプタクルコネクタ10及びプラグコネクタ100の嵌合方向を「Z方向」、嵌合状態における同軸ケーブルSCの軸方向を「X方向」、Z方向及びX方向に直交する方向を「Y方向」として説明する場合がある。また、Z方向に関して、例えば
図1に示した状態のプラグコネクタ100側を「上」、リセプタクルコネクタ10側を「下」として説明する場合がある。また、X方向に関して、同軸ケーブルSCにおけるプラグコネクタ100が取り付けられた端部側を「前」、反対の端部側を「後」として説明する場合がある。
【0018】
[リセプタクルコネクタ]
次に、
図3~
図7を参照して、リセプタクルコネクタ10の詳細について説明する。リセプタクルコネクタ10は、基板200(
図2参照)に実装されており、同軸ケーブルSCに取り付けられたプラグコネクタ100(
図1参照)に篏合される。
図3(a)~
図3(c)に示されるように、リセプタクルコネクタ10は、グランドコンタクト11(第1コンタクト)と、シグナルコンタクト12(第2コンタクト)と、絶縁ハウジング13(第1絶縁ハウジング)と、を備える。
【0019】
(グランドコンタクト)
グランドコンタクト11は、プラグコネクタ100のグランドコンタクト101(
図8(b)参照)に篏合される筒状の(詳細には、筒状の嵌合部11aを有した)グランドコンタクト部材である。グランドコンタクト11は、グランドコンタクト101(
図8(b)参照)に電気的に接続されて、グランド回路を構成する。グランドコンタクト11は、例えば薄板状の金属部材から成形されている。グランドコンタクト11は、
図4(a)~
図4(c)に示されるように、嵌合部11aと、基部11b,11bと、を有する。
【0020】
嵌合部11aは、Z方向を軸方向とする円筒形状(筒状)に形成されており、その筒孔内に絶縁ハウジング13を同軸状に収容する。嵌合部11aの内周面は、絶縁ハウジング13の切欠き部13xに対応する領域を除き、絶縁ハウジング13の外周面と接している(
図3(a)参照)。嵌合部11aの外周面には、その全周に亘って、径方向の内側(嵌合部11aの中心側)に凹んだ凹部11xが形成されている(
図3(d)参照)。嵌合部11aは、凹部11xがプラグコネクタ100のグランドコンタクト101の外周に形成された凸部101x(
図8(b)参照)と係合することにより、プラグコネクタ100のグランドコンタクト101に篏合される(詳細は後述)。嵌合部11aは、基部11b,11bから立設するように設けられている。基部11b,11bは、嵌合部11aを載置するように配置されており、Y方向で互いに対向してX方向に延びている。基部11b,11bは、
図2に示されるように、基板200のグランド端子部202に接続されるように、基板200上に配置されている。
【0021】
(シグナルコンタクト)
シグナルコンタクト12は、プラグコネクタ100のシグナルコンタクト102(
図8(b)参照)に電気的に接続される。シグナルコンタクト12は、絶縁ハウジング13に取り付けられている。シグナルコンタクト12は、例えば薄板状の金属部材から形成された信号伝送用の導体である。シグナルコンタクト12は、
図5(a)~
図5(c)に示されるように、中心導体12aと、基板接続部12bとを有する。
【0022】
中心導体12aは、プラグコネクタ100のシグナルコンタクト102(
図8(b)参照)に接触する導体である。中心導体12aは、Z方向を軸方向とする円筒形状(筒状)に形成されており、その外周面においてシグナルコンタクト102と接触する(
図8(b)参照)。中心導体12aは、絶縁ハウジング13の支持部13yに取り付けられている(
図3(c)参照)。基板接続部12bは、中心導体12aから引き出されるように延びて基板200のシグナル端子部201(
図2参照)に接続される。すなわち、基板接続部12bは、中心導体12aの下端に連続すると共に、X方向の前方(嵌合部11aに近づく方向であって同軸ケーブルSCの内部導体SC1から遠ざかる方向(
図8(b)参照))に延び基板200のシグナル端子部201(
図2参照)に接触する。基板接続部12bの形状は限定されないが、例えば、
図5(a)及び
図5(c)に示されるように、板状部材であり、平面視すると、X方向の長さがY方向の長さよりも小さい略矩形状を呈している。
【0023】
基板接続部12bは、
図3(a)に示されるように、グランドコンタクト11の嵌合部11aに囲まれた領域内に収容されると共に、その先端(前端)部分である露出部12xが外部に露出している。外部に露出しているとは、例えば、外部から視認可能であることをいう。より具体的には、基板接続部12bは、Z方向であってプラグコネクタ100から基板200に向かう方向(第1方向)で見ると、その一部である露出部12xが視認可能に配置されている。このような露出部12xの露出は、絶縁ハウジング13に切欠き部13xが形成されていることにより実現されている(詳細は後述)。露出部12xは、基板接続部12bにおけるシグナル端子部201(
図2参照)との接触領域である。
【0024】
(絶縁ハウジング)
絶縁ハウジング13は、グランドコンタクト11とシグナルコンタクト12とを絶縁状態で保持する。すなわち、絶縁ハウジング13は、グランドコンタクト11とシグナルコンタクト12との間を絶縁するための絶縁体である。絶縁ハウジング13は、
図6(a)~
図6(c)に示されるように、本体部13aと、第1延在部13b,13bと、第2延在部13cと、を有する。
【0025】
本体部13aは、後述する切欠き部13xの形成領域を除いて略円盤状に形成され、嵌合部11aの内側に収容される部材である。本体部13aの外周面は、切欠き部13xの形成領域を除き、嵌合部11aの内周面と接している(
図3(a)参照)。本体部13aには、基板接続部12bの露出部12xを外部に露出させる切欠き部13xが形成されている。すなわち、切欠き部13xは、基板接続部12bにおけるシグナル端子部201との接触領域である露出部12xを外部に露出させるように形成されている。露出部12x及び該露出部12xに接触するシグナル端子部201における露出部12xとの接触領域が露出する(視認可能となる)ように、切欠き部13xのY方向の長さ(幅)は、露出部12x及びシグナル端子部201のY方向の長さ(幅)よりも長く形成されている(
図3(a)参照)。切欠き部13xは、本体部13aにおける露出部12xの露出に係る領域にのみ形成されていればよい。このため、
図3(a)に示されるように、X方向の位置が露出部12xと同じかそれよりも前方の本体部13aの領域であっても、絶縁ハウジング13は、露出部12xのY方向の両端部よりもY方向外方の領域については、その一部が切り欠かれていない。
【0026】
本体部13aは、
図6(a)~
図6(c)に示されるように、その中央部分に、中心導体12aを取り付けるための支持部13yを有している。支持部13yは、本体部13aの中央部分に設けられており、Z方向に延びる円柱状の部材である。第1延在部13b,13bは、本体部13aにおけるX方向の前端に連続すると共に、Y方向で互いに対向してX方向の前方に延びている。第1延在部13b,13bは、それぞれ、グランドコンタクト101の基部11b,11bの内縁に沿ってX方向の前方に延びている(
図3(c)参照)。第2延在部13cは、本体部13aにおけるX方向の後端に連続すると共に、基部11b,11bに挟まれるように基部11b,11bに沿ってX方向の後方に延びている(
図3(a)参照)。
【0027】
(リセプタクルコネクタの製造工程)
次に、
図7(a)~
図7(f)を参照して、リセプタクルコネクタ10の製造工程(成形工程)について説明する。
【0028】
リセプタクルコネクタ10の製造工程では、最初に、
図7(a)に示されるように、金型(不図示)に装着される部品であるグランドコンタクト11及びシグナルコンタクト部材112が準備される。シグナルコンタクト部材112は、後述する工程によってシグナルコンタクト12となる部材であり、基板接続部12bをより長くした延在部112bを有している。そして、
図7(b)に示されるように、金型(不図示)にグランドコンタクト11及びシグナルコンタクト部材112が装着された状態で金型(不図示)に対して樹脂(ハウジング材料)が注入される。
図7(c)は、金型に樹脂が注入されてインサート成形が完了した状態、すなわち絶縁ハウジング13が形成された状態を示している。
図7(d)に示されるように、シグナルコンタクト部材112にはカットライン112xが形成されている。
図7(e)に示されるようにカットライン112xにてカットライン112xよりも前方の領域が折り取られることにより、
図7(f)に示されるように、基板接続部12bを有するシグナルコンタクト12が形成される。以上の工程によって、リセプタクルコネクタ10が製造される。なお、説明した製造工程は一例であり、リセプタクルコネクタ10は他の製造工程によって製造されるものであってもよい。
【0029】
[コネクタ装置(リセプタクルコネクタ及びプラグコネクタの嵌合状態)]
次に、
図8(a)及び
図8(b)を参照して、リセプタクルコネクタ10及びプラグコネクタ100が互いに嵌合した状態のコネクタ装置1について詳細に説明する。
【0030】
なお、プラグコネクタ100は、
図8(b)に示されるように、グランドコンタクト101(第3コンタクト)と、シグナルコンタクト102(第4コンタクト)と、絶縁ハウジング103(第2絶縁ハウジング)とを有している。グランドコンタクト101は、グランドコンタクト11に篏合される円筒形状のコンタクト部材である。グランドコンタクト101は、同軸ケーブルSCの外部導体に接続されている。グランドコンタクト101の下端側には、その全周に亘って径方向の内側(グランドコンタクト101の円筒形状の中心側)に突出した凸部101xが形成されている。シグナルコンタクト102は、シグナルコンタクト12に電気的に接続される。シグナルコンタクト102は、絶縁ハウジング103の内部に取り付けられており、同軸ケーブルSCの内部導体SC1に接続されると共に、リセプタクルコネクタ10のシグナルコンタクト12の中心導体12aに接続される。絶縁ハウジング103は、円筒形状に形成されており、グランドコンタクト101及びシグナルコンタクト102を絶縁状態で保持する。絶縁ハウジング103の外周面はグランドコンタクト101の内周面と接している。
【0031】
図8(b)に示されるように、リセプタクルコネクタ10の嵌合部11aの凹部11xにより、リセプタクルコネクタ10及びプラグコネクタ100が互いに篏合された状態となる。嵌合状態においては、プラグコネクタ100のシグナルコンタクト102が、リセプタクルコネクタ10の中心導体12aと接触している。このように、同軸ケーブルSCの内部導体SC1に接続されているシグナルコンタクト102と、基板接続部12bを介して基板200のシグナル端子部201(
図2参照)に接続されている中心導体12aとが接触することにより、コネクタ装置1の信号伝送回路が構成されている。また、嵌合状態においては、プラグコネクタ100のグランドコンタクト101が、リセプタクルコネクタ10の嵌合部11aと接触している。このように、同軸ケーブルSCの外部導体に接続されているグランドコンタクト101と、基部11b,11bを介して基板200のグランド端子部202(
図2参照)に接続されている嵌合部11aとが接触することにより、コネクタ装置1のグランド回路が構成されている。
【0032】
そして、コネクタ装置1では、嵌合状態において、
図8(b)に示されるように、基板接続部12bが、プラグコネクタ100のグランドコンタクト101に囲まれた領域内に収容されており、また、嵌合していない状態において、
図3(a)に示されるように、基板接続部12bの露出部12xが外部に露出している(すなわち、視認可能に配置されている)。
【0033】
[作用効果]
次に、上述したリセプタクルコネクタ10及びコネクタ装置1の作用効果について説明する。
【0034】
最初に、
図9(a)及び
図9(b)を参照して、比較例に係るコネクタ装置501について説明する。コネクタ装置501は、本実施形態のコネクタ装置1と同様に、信号伝送部材と基板の電気回路とを電気的に接続するコネクタ装置である。コネクタ装置501のリセプタクルコネクタ510は、
図9(a)に示されるように、グランドコンタクト511と、シグナルコンタクト512と、絶縁ハウジング513とを有している。そして、シグナルコンタクト512は、中心導体512aと、中心導体512aから外方に引き出された基板接続部512bとを有している。ここで、比較例に係るコネクタ装置501では、基板にリセプタクルコネクタ510を実装する際等において、基板のシグナル端子部に接続される基板接続部512bの視認性(確認し易さ)を向上させるべく、基板接続部512bをグランドコンタクト511よりも外方にまで引き出している。すなわち、グランドコンタクト511とシグナルコンタクト512との間の領域には絶縁ハウジング513が満たされているところ、基板接続部512bの視認性を向上させるべく、基板接続部512bをグランドコンタクト511よりも外方にまで引き出している(
図9(a)参照)。このようなコネクタ装置501では、
図9(b)に示されるように、リセプタクルコネクタ510とプラグコネクタ600との嵌合状態において、基板接続部512bが、プラグコネクタ600のグランドコンタクト601に囲まれた領域を超えてさらに外方にまで延びた構成となることが考えられる。この場合、プラグコネクタ600のグランドコンタクト601とリセプタクルコネクタ510の基板接続部512bとの近接領域が大きくなり、グランドコンタクト601と基板接続部512bとで電磁結合が発生し易くなってしまう。このことで、プラグコネクタ600とリセプタクルコネクタ510との挿入損失が増加してしまう。
【0035】
上記比較例に係るコネクタ装置501の課題を解決すべく、本実施形態のコネクタ装置1のリセプタクルコネクタ10は以下の構成を有する。すなわち、リセプタクルコネクタ10は、
図3(a)に示されるように、基板200に実装される電気コネクタであって、プラグコネクタ100のグランドコンタクト101に篏合される筒状の嵌合部11aを有するグランドコンタクト11と、プラグコネクタ100のシグナルコンタクト102に電気的に接続されるシグナルコンタクト12と、グランドコンタクト11とシグナルコンタクト12とを絶縁状態で保持する絶縁ハウジング13と、を備え、シグナルコンタクト12は、プラグコネクタ100のシグナルコンタクト102に接触する中心導体12aと、該中心導体12aから引き出されるように延びて基板200のシグナル端子部201に接続される基板接続部12bと、を有し、基板接続部12bは、嵌合部11aに囲まれた領域内に収容されると共に、少なくとも一部(具体的には露出部12x)が外部に露出している。
【0036】
このようなリセプタクルコネクタ10では、中心導体12aから引き出されるように延びて基板200のシグナル端子部201に接続される基板接続部12bが、プラグコネクタ100のグランドコンタクト101に篏合される筒状の嵌合部11aに囲まれた領域内(嵌合部11aの内側)に収容されている。
図8(b)に示されるように、プラグコネクタ100のグランドコンタクト101は、嵌合部11aよりも外方に配置される。このため、リセプタクルコネクタ10がプラグコネクタ100と篏合した状態においては、嵌合部11aの内側に収容されている基板接続部12bは、プラグコネクタ100のグランドコンタクト101から離間した位置に配置されることとなる。このことで、プラグコネクタ100のグランドコンタクト101と基板接続部12bとで電磁結合が発生しにくい構成となり、リセプタクルコネクタ10とプラグコネクタ100との挿入損失を抑制することができる。ここで、上述したように、比較例に係るコネクタ装置501では、基板接続部512bの視認性(確認し易さ)を担保すべく、基板接続部512bがグランドコンタクト511よりも外方にまで引き出されていた(
図9(a)参照)。本実施形態のように、基板接続部12bが嵌合部11aの内側に収容されている構成においては、嵌合部11aの内側において絶縁ハウジング13が設けられていることにより基板接続部12bの視認性が問題となりえる。この点、本実施形態に係るリセプタクルコネクタ10は、単に基板接続部12bを嵌合部11aの内側に収容するだけでなく、基板接続部12bの一部が露出部12xとして外部に露出する構成とされている。これにより、基板接続部12bが嵌合部11aに囲まれた領域内に収容されている(すなわち基板接続部12bの引き出し長さが短い)構成を採用していても、基板接続部12bの位置を容易に確認することができる。
【0037】
上記リセプタクルコネクタ10において、基板接続部12bは、プラグコネクタ100との嵌合方向であってプラグコネクタ100から基板200に向かう方向である第1方向で見ると、少なくとも一部が視認可能に配置されている、これにより、リセプタクルコネクタ10を基板200に実装する際、及び、リセプタクルコネクタ10に対してプラグコネクタ100を嵌合させる際等において、基板接続部12bの位置を容易且つ確実に確認することができる。
【0038】
上記リセプタクルコネクタ10において、絶縁ハウジング13には、基板接続部12bの少なくとも一部(具体的には露出部12x)を外部に露出させる切欠き部13xが形成されている。このような構成が採用されることにより、絶縁ハウジング13によってグランドコンタクト11及びシグナルコンタクト12の間を確実に絶縁しながら、絶縁ハウジング13の本体部13aにおける、基板接続部12bの露出に必要な部分のみを切欠いて露出部12xを確実に露出させることができる。
【0039】
上記リセプタクルコネクタ10において、切欠き部13xは、基板接続部12bにおけるシグナル端子部201との接触領域を外部に露出させるように形成されている。これにより、基板接続部12bとシグナル端子部201との接触箇所を確実に視認することができる。
【0040】
以上、本実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、基板接続部を露出させるための構成としてリセプタクルコネクタの絶縁ハウジングに切欠きが形成されている例を説明したが、基板接続部を露出させるための構成はこれに限定されない。
図10(a)及び
図10(b)に示されるリセプタクルコネクタ210は、絶縁ハウジング213を有している。絶縁ハウジング213は、基板接続部12bの延在方向、すなわちX方向において、基板接続部12bの先端(前端)よりも中心導体12a寄りの領域(すなわちX方向後方)にのみ設けられている。このような構成を採用した場合においても、切欠きを形成する場合と同様に、基板接続部12bの一部を適切に露出させることができる。また、このような構成では、例えば絶縁ハウジングに切欠きを形成する場合と比較して、基板接続部12bの一部を露出させるための絶縁ハウジング213の構成を簡易化することができ、絶縁ハウジング213の製造容易性を向上させることができる。
【0041】
また、基板接続部がリセプタクルコネクタのグランドコンタクトに囲まれた領域内に収容されているとして説明したが、これに限定されない。
図11(a)及び
図11(b)に示されるリセプタクルコネクタ310は、シグナルコンタクトの基板接続部312bを有している。基板接続部312bは、グランドコンタクト11に囲まれた領域内には全てが収容されておらず、その一部がグランドコンタクト11の外方にまで延びている。このような構成を採用した場合であっても、
図12(b)に示されるコネクタ装置301のように、嵌合状態において、基板接続部312bがプラグコネクタ100のグランドコンタクト101に囲まれた領域内に収容されている(グランドコンタクト101の外方にまでは延びていない)ことにより、グランドコンタクト101とリセプタクルコネクタ310の基板接続部312bとの近接領域が増大することを抑制し、リセプタクルコネクタ310とプラグコネクタ100との挿入損失を抑制することができる。
【符号の説明】
【0042】
1,301…コネクタ装置、10,210,310…リセプタクルコネクタ(電気コネクタ,第1コネクタ)、11…グランドコンタクト(第1コンタクト)、12…シグナルコンタクト(第2コンタクト)、12a…中心導体、12b,312b…基板接続部、13,213…絶縁ハウジング(第1絶縁ハウジング)、13x…切欠き部、100…プラグコネクタ(第2コネクタ)、101…グランドコンタクト(第3コンタクト)、102…シグナルコンタクト(第4コンタクト)、103…絶縁ハウジング(第2絶縁ハウジング)、200…基板、201…端子部。