(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】シリンダヘッド
(51)【国際特許分類】
F02F 1/36 20060101AFI20221004BHJP
F02F 1/38 20060101ALI20221004BHJP
F02F 1/42 20060101ALI20221004BHJP
F01P 3/02 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
F02F1/36 C
F02F1/38 B
F02F1/42 G
F01P3/02 F
(21)【出願番号】P 2020561368
(86)(22)【出願日】2019-12-12
(86)【国際出願番号】 JP2019048830
(87)【国際公開番号】W WO2020129823
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-04-05
(31)【優先権主張番号】P 2018237725
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177460
【氏名又は名称】山崎 智子
(72)【発明者】
【氏名】松本 浩一
(72)【発明者】
【氏名】吉原 昭
(72)【発明者】
【氏名】佐野 孝幸
【審査官】菅野 京一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-145285(JP,A)
【文献】特開2017-190674(JP,A)
【文献】特開2016-121541(JP,A)
【文献】特開2017-125445(JP,A)
【文献】特開2015-117630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 1/00
F01P 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の気筒にそれぞれ接続される複数の排気ポートと、複数の前記排気ポートが集合するように構成される排気集合部と、を含む集合排気ポートと、
複数の前記気筒のそれぞれが並んで配置される列方向に冷却水を流すように構成される冷却水通路と、を備え、
前記冷却水通路は、
前記集合排気ポートの上方に設けられ
、前記列方向の一方から冷却水が供給され、他方に排出する上部通路と、
前記上部通路に対向して前記集合排気ポートの下方に設けられ
、前記列方向の一方から冷却水が供給され、他方に排出する下部通路と、を含み、
前記下部通路は、前記集合排気ポートに対応して設けられるポート通路部と、前記ポート通路部の
他方側となる下流側から前記気筒の列方向に沿って延在するサブ通路部と、を含み、
前記上部通路の
他方側となる下流側に前記気筒の列方向に延在する出口通路部を有し、
前記下部通路が前記サブ通路部を介して前記出口通路部に連通されている、多気筒エンジンのシリンダヘッド。
【請求項2】
前記サブ通路部は、前記ポート通路部との接続部分の直径よりも大きい直径である大径部を有し、
前記サブ通路部の前記大径部が前記上部通路に接続されている、請求項1に記載のシリンダヘッド。
【請求項3】
前記上部通路は、並んで配置される複数の前記気筒に対応して配置される気筒通路部と、前記集合排気ポートに対応して配置されるポート通路部と、を有し、
前記出口通路部が前記気筒通路部の下流側となる、請求項1又は2に記載のシリンダヘッド。
【請求項4】
前記上部通路は、前記出口通路部から前記気筒の列方向と交差する方向に延在するように設けられた分岐通路部を有し、
前記サブ通路部は、該分岐通路部を介して前記出口通路部に接続されている、請求項3に記載のシリンダヘッド。
【請求項5】
前記下部通路の前記サブ通路部は、前記
下部通路のポート通路部を形成する中子が支持される幅木によって形成される、請求項1から4の何れか一項に記載のシリンダヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、多気筒エンジンのシリンダヘッドに関し、特に、シリンダヘッドの内部に設けられる冷却水通路(ウォータジャケット)の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多気筒エンジンのシリンダヘッドには、各気筒に対応する複数の排気ポートが形成されていた。シリンダヘッドには、各排気ポートに接続される複数の排気通路を備えた排気マニホールドが接続され、排気マニホールド内で排気通路を合流させていた。
【0003】
また、シリンダヘッド内に、各気筒に対応する複数の排気ポートを集合させる排気集合部を形成することで、シリンダヘッドに単一の排気管が接続されるように構成される多気筒エンジンが開発されている。
このようなシリンダヘッドは、内部を通過する排気の影響により高温となる。このため、シリンダヘッドには、冷却水を流通させる冷却水通路(ウォータジャケット)が形成されている。特に、上記のように内部に排気集合部が形成されたシリンダヘッドは、排気が内部で集合するため、高温になりやすい。このため、排気集合部を備えるシリンダヘッドでは、冷却水通路(ウォータジャケット)による冷却性能の向上が図られている。
【0004】
例えば、複数の排気導管を合流することによって形成される集合排気導管を一体的に設けたシリンダヘッドにおいて、排気導管の下方に配置される下側冷却液ジャケットと、排気導管の上方に配置される上側冷却液ジャケットと、これら下側冷却液ジャケットと上側冷却液ジャケットとを連通し冷却液の通路として機能する連通部とを備えるようにしたものがある(例えば、日本国特開2008-309158号公報を参照)。
【0005】
日本国特開2008-309158号公報の構成によれば、従来のシリンダヘッドに比べると冷却性能を向上することはできる。
しかしながら、上記の日本国特開2008-309158号公報の構成であっても、シリンダヘッドの冷却性能は必ずしも十分ではなく、さらなる向上が望まれている。
【0006】
近年では、シリンダヘッドが、冷却水通路(冷却液通路)として、排気ポートの上方に設けられる上部通路と、この上部通路とは独立して排気ポートの下方に設けられる下部通路と、を備える構造も提案されている。このような構造のシリンダヘッドでは、上部通路と下部通路とに、別々に冷却水を供給することができるため、上部通路と下部通路とが連通する従来のシリンダヘッドに比べて冷却性能を高めることができる。
【0007】
また、このように上部通路と下部通路とを独立させた構造であっても、シリンダヘッドの冷却性能はまだ十分ではなく、さらなる向上が望まれている。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、冷却水通路に冷却水を流通させるシリンダヘッドにおいて、冷却性能のさらなる向上を図ったシリンダヘッドを提供する。
【0009】
本発明の一つの態様によれば、多気筒エンジンのシリンダヘッドは、複数の気筒にそれぞれ接続される複数の排気ポートと、複数の前記排気ポートが集合するように構成される排気集合部と、を含む集合排気ポートと、複数の前記気筒のそれぞれが並んで配置される列方向に冷却水を流すように構成される冷却水通路と、を備える。前記冷却水通路は、前記集合排気ポートの上方に設けられる上部通路と、前記上部通路に対向して前記集合排気ポートの下方に設けられる下部通路と、を含む。前記下部通路は、前記集合排気ポートに対応して設けられるポート通路部と、前記ポート通路部の下流側から前記気筒の列方向に沿って延在するサブ通路部と、を含む。前記下部通路が前記サブ通路部を介して前記上部通路に連通されている。
【0010】
本発明の他の態様によれば、前記サブ通路部は、前記ポート通路部との接続部分の直径よりも大きい直径である大径部を有している。前記サブ通路部の前記大径部が前記上部通路に接続されている。
【0011】
本発明の他の態様によれば、前記上部通路は、並んで配置される複数の前記気筒に対応して配置される気筒通路部と、前記集合排気ポートに対応して配置されるポート通路部と、前記気筒通路部の下流側から前記気筒の列方向に延在する出口通路部と、を有している。前記サブ通路部が前記出口通路部に接続されている。
【0012】
本発明の他の態様によれば、前記上部通路は、前記出口通路部から前記気筒の列方向と交差する方向に延在するように設けられた分岐通路部を有している。前記サブ通路部は、該分岐通路部を介して前記出口通路部に接続されている。
【0013】
本発明の他の態様によれば、前記下部通路の前記サブ通路部は、前記ポート通路部を形成する中子が支持される幅木によって形成されている。
【0014】
本発明の態様によれば、下部通路を構成するポート通路部が、ポート通路部の下流側から延在するサブ通路部を介してアッパジャケットに連通されていることで、下部通路のポート通路部の冷却水の流れを阻害することなく、下部通路内に冷却水を良好に流通させることができる。したがって、冷却水通路に冷却水を流通させることによるシリンダヘッドの冷却性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1A】本発明の一実施形態に係るシリンダヘッドの上面図である。
【
図1B】本発明の一実施形態に係るシリンダヘッドの側面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るシリンダヘッドの断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るウォータジャケットを模式的に示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るアッパジャケットを説明する図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るロアジャケットを説明する図である。
【
図6A】本発明の一実施形態に係るシリンダヘッドのB-B′線断面図である。
【
図6B】本発明の一実施形態に係る壁内通路部付近の拡大断面図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係るシリンダヘッドの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態が図面を参照して詳細に説明される。
【0017】
図1Aは、シリンダヘッドの上面(シリンダブロックへの取付け面とは反対側の面)を示す図であり、
図1Bは、シリンダヘッドのフロント側の側面を示す図である。
図2は、シリンダヘッドのA-A′線断面図である。また
図3は、ウォータジャケットの形状を、砂中子の形状として示した斜視図である。
図4は、ウォータジャケットの形状を示す上面図であり、
図5は、ウォータジャケットの形状を示す底面図である。また
図6A-6B及び
図7は、壁内通路部を説明する図であり、
図6Aは、シリンダヘッドのB-B′線断面図、
図6Bは壁内通路部付近の拡大断面図である。また
図7は、シリンダヘッドのC-C′線に相当する断面図である。
【0018】
図1A-Bに示す本実施形態に係るシリンダヘッド10は、フロント側(車両前方側)から直列(一列)に配置された4つの気筒(シリンダ)を有する空冷式の直列4気筒エンジンを構成する。シリンダヘッド10の下面10aには、第1~第4の気筒11が形成されたシリンダブロック(図示なし)が取付けられる。
【0019】
一方、シリンダヘッド10の上面10bには動弁室12が形成されている。図示は省略するが、この動弁室12内には吸気弁や排気弁を駆動する動弁機構が収容され、シリンダヘッド10の上面には、この動弁室12を覆うリンダカバーが取付けられる。
【0020】
本開示は、このような水冷式の多気筒エンジンを構成するシリンダヘッド10の内部構造、特に、シリンダヘッド10が備えるウォータジャケット(冷却水通路)の構造に特徴がある。以下では、シリンダヘッド10の内部構造が詳細に説明される。
【0021】
図1A-B及び
図2に示すように、シリンダヘッド10には、各気筒11に対応する2つの吸気バルブ孔13(13a,13b)と、2つの排気バルブ孔14(14a,14b)とが設けられている。つまりシリンダヘッド10には、合計8つの吸気バルブ孔13及び排気バルブ孔14が設けられている。
【0022】
またシリンダヘッド10には、各気筒11に対応する4つの吸気ポート15が設けられている。各吸気ポート15の一端側は、各気筒11に対応する2つの吸気バルブ孔13に接続されている。これらの吸気ポート15は、互い集合することなく独立して設けられ、シリンダヘッド10の一方の側面10cにそれぞれ開口している。つまりシリンダヘッド10の側面10cには、各気筒11にそれぞれに繋がる4つの吸気口16が形成されている(
図1A-B参照)。
【0023】
またシリンダヘッド10には、各気筒11に接続される集合排気ポート17が設けられている。集合排気ポート17は、各気筒11に接続される4つの排気ポート18(18a~18d)と、これらの排気ポート18(18a~18d)が集合する排気集合部19と、を含むように構成されている。
【0024】
各排気ポート18の一端側は、各気筒11に対応する2つの排気バルブ孔14a,14bに接続され、各排気ポート18の他端側は、排気集合部19で集合している。この排気集合部19は、気筒11の列設方向(シリンダヘッド10の前後方向、気筒11が並んで配置される方向)の中央部に位置し、シリンダヘッド10の吸気口16が開口する側面10cとは反対側の側面10dに開口している。つまりシリンダヘッド10の側面10dには、排気集合部19にて集合された排気が流出する1つの排気口20が、気筒の列設方向(シリンダヘッド10の前後方向)の中央部に形成されている。
【0025】
また各排気ポート18は、仕切壁21(21a~21c)によって隣接する排気ポート18の間で仕切られている。これらの仕切壁21は排気集合部19に向かって所定の長さで設けられている。これらの仕切壁21の長さは、適宜決定されればよい。また、少なくとも隣接する排気ポート18間での排気干渉が抑制されうるように、これらの仕切壁21の長さが設定されていることが好ましい。
【0026】
例えば、シリンダヘッド10の中央部に位置する(列設方向において4つの気筒のうち、内側に位置する)第2の気筒11bに対応する排気ポート18bと、第3の気筒11cに対応する排気ポート18cとの間を仕切る仕切壁21bは、排気口20の付近まで延設されていることが好ましい。これにより、仕切壁21bによって、隣接する排気ポート18bと排気ポート18cとの間での排気干渉を抑制できると共に、第1の気筒11aに対応する排気ポート18aと第4の気筒11dに対応する排気ポート18dとの間での排気干渉を抑制することもできる。
【0027】
また、このような構造のシリンダヘッド10には、気筒11の列設方向に冷却水を流通させるウォータジャケット(冷却水通路)30が一体的に形成されている。本実施形態では、ウォータジャケット30に、シリンダヘッド10のフロント側からリア側に向かって冷却水を流通させることで、排気熱による各気筒(燃焼室)11付近や集合排気ポート17付近の温度上昇を抑制している。
【0028】
本実施形態に係るウォータジャケット30は、
図3に示すように、集合排気ポート17の上方に設けられるアッパジャケット(上部通路)31と、集合排気ポート17の下方に設けられるロアジャケット(下部通路)32と、を備えている。
【0029】
アッパジャケット31は、
図3及び
図4に示すように、各気筒11の上方に設けられる気筒通路部33と、集合排気ポート17の上方に集合排気ポート17の上部を覆うように設けられるポート通路部34と、を有する。すなわちアッパジャケット31には、冷却水の主な流れとして、気筒通路部33及びポート通路部34を流れる2つの流れが形成される。
【0030】
なおこれら気筒通路部33とポート通路部34とは、第1の気筒11aに対応する排気バルブ孔14aの外側及び第4の気筒11dに対応する排気バルブ孔14bの外側と、隣接する排気バルブ孔14の間でそれぞれ連通している。
【0031】
一方、ロアジャケット32は、
図3及び
図5に示すように、各気筒11に対応する部分には設けられておらず、集合排気ポート17の下方に、集合排気ポート17の下部を覆うように設けられるポート通路部35によって構成されている。
【0032】
ここで、アッパジャケット31とロアジャケット32とは独立して対向するように設けられている。すなわちアッパジャケット31及びロアジャケット32には、別々の経路から冷却水が供給されるように形成されている。
【0033】
アッパジャケット31は、シリンダヘッド10のフロント側に、冷却水が供給される1つのアッパ入口通路部36を有し、シリンダヘッド10のリア側にアッパ出口通路部37を有する。すなわちアッパジャケット31内には、アッパ入口通路部36から冷却水が供給され、供給された冷却水は、気筒通路部33及びポート通路部34を通過した後に、アッパ出口通路部37から外部に排出されるようになっている。なおアッパ出口通路部37は必ずしも一つでなくてもよく、複数設けられていてもよい。
【0034】
一方、ロアジャケット32は、シリンダヘッド10のフロント側に、アッパ入口通路部36とは独立するロア入口通路部38を有しており、ロアジャケット32内には、このロア入口通路部38から冷却水が供給されるようになっている。またロアジャケット32は、シリンダヘッド10のリア側(冷却水の流れ方向の下流側)で、アッパジャケット31に接続されている。すなわちロアジャケット32内に供給された冷却水は、ポート通路部35を通過した後に、アッパジャケット31のアッパ出口通路部37を介して外部に排出されるようになっている。
【0035】
具体的には、ロアジャケット32は、ポート通路部35の下流側の端部近傍から気筒11の列設方向に沿って延在するサブ通路部39を備えている。一方、アッパジャケット31は、アッパ出口通路部37から分岐してサブ通路部39に向かって延設される分岐通路部40を有している。そして、ロアジャケット32のサブ通路部39は、この分岐通路部40に接続されている。本実施形態では、サブ通路部39は、ポート通路部35との接続部分の直径よりも大径の大径部39aを有しており、この大径部39aにおいてアッパジャケット31の分岐通路部40に接続されている。
【0036】
つまり本実施形態に係るシリンダヘッド10においては、ロアジャケット32内に供給された冷却水は、ポート通路部35及びサブ通路部39を通過した後、アッパジャケット31の分岐通路部40を介してアッパ出口通路部37から外部に排出されるようになっている。
【0037】
なお、ロアジャケット32が備えるサブ通路部39は、シリンダヘッド10を鋳造する際に、ポート通路部35を形成するための中子を支持する幅木によって形成される空間である。このため、サブ通路部39の先端部(下流側端部)は開口しているが、このサブ通路部39の開口は、図示しない封止部材(エキスパンションプラグ)によって封止されている。
【0038】
このようにロアジャケット32を構成するポート通路部35が、ポート通路部35の下流側の端部近傍から延在するサブ通路部39を介してアッパジャケット31の分岐通路部40に連通されていることで、ロアジャケット32内のポート通路部35の冷却水の流れを阻害することなく、ロアジャケット32内に冷却水を良好に流通させることができる。
【0039】
またサブ通路部39が、アッパジャケット31の気筒通路部33及びポート通路部34よりも下流側の分岐通路部40に接続されているため、アッパジャケット31の気筒通路部33及びポート通路部34の流れが阻害されることもなく、アッパジャケット31内にも冷却水を良好に流通させることができる。
【0040】
つまり、アッパジャケット31とロアジャケット32のそれぞれに冷却水を良好に流通させることができるため、シリンダヘッド10の冷却性能を向上することができる。
【0041】
さらにアッパジャケット31とロアジャケット32とは独立して設けられているため、アッパジャケット31とロアジャケット32とを接続するには、シリンダヘッド10を鋳造後に加工する必要がある。すなわち鋳造時には、サブ通路部39と分岐通路部40とは分離されているため、その後にシリンダヘッド10を加工して、サブ通路部39と分岐通路部40とを連通させる必要がある。
【0042】
本実施形態では、ロアジャケット32のサブ通路部39が、中子を支持する幅木によって形成された空間であり、その先端部は開口した状態であるため、サブ通路部39と分岐通路部40とを連通させるための加工を比較的容易に行うことができる。
【0043】
ところで、ウォータジャケット30を構成するアッパジャケット31及びロアジャケット32の少なくとも一方のジャケットは、仕切壁21内に設けられて他方のジャケットに向かって延びる壁内通路部を備えている。本実施形態では、以下に説明するようにアッパジャケット31及びロアジャケット32のそれぞれが壁内通路部を備えている。
【0044】
図6A-B及び
図7に示すように、まずロアジャケット32のポート通路部35は、排気ポート18bと、排気ポート18cとの間を仕切る仕切壁21b内に、アッパジャケット31に向かって延設される壁内通路部42を有している。ポート通路部35は、主に、集合排気ポート17の下方に、気筒の列設方向に沿って延在しているが、仕切壁21b内にはアッパジャケット31に向かって(上方に向かって)延設された壁内通路部42を有している。この壁内通路部42は、隣接する2つの排気ポート18b,18cのそれぞれの内面に沿って、仕切壁21bの高さ方向の中央付近まで延設されている。
【0045】
一方、アッパジャケット31のポート通路部34も、主に、集合排気ポート17の上方に、気筒の列設方向に沿って延在しているが、仕切壁21b内にはロアジャケット32側に向かって(下方に向かって)延設された壁内通路部43を有している。この壁内通路部43も、仕切壁21bの高さ方向の中央付近まで延設されている。
【0046】
仕切壁21bは、複数の排気ポート18を通過する排気の熱の影響を受けるため温度が上昇し易いが、仕切壁21b内にこれら壁内通路部42,43が設けられていることで、排気熱による仕切壁21bの温度上昇を効果的に抑制することができる。
【0047】
つまり本実施形態に係るシリンダヘッド10の構造によれば、仕切壁21によって排気干渉を抑制することができると共に、ウォータジャケット30に冷却水を流通させることによるシリンダヘッド10の冷却性能を向上することができる。
【0048】
さらに、この仕切壁21bには、ロアジャケット32の壁内通路部42とアッパジャケット31とを連通する連通孔44が形成されている。本実施形態では、ロアジャケット32の壁内通路部42とアッパジャケット31の壁内通路部43との境界部分に、両者を連通する連通孔44が形成されている。すなわちロアジャケット32の壁内通路部42の最上部は、連通孔44を介してアッパジャケット31の壁内通路部43に連通している。
【0049】
ロアジャケット32の壁内通路部42は、アッパジャケット31側(上方)に延設されているため、冷却水に気泡が含まれている場合、その気泡が壁内通路部42内に停滞し易い。しかしながら、連通孔44が設けられていることで、気泡が連通孔44を介してアッパジャケット31の壁内通路部43側に排出される。
【0050】
また、この連通孔44は、空気抜き用の孔であり、ロアジャケット32の壁内通路部42内に滞留する空気が抜ける程度に比較的小さい直径で形成されている。このため、気泡は連通孔44を通過するが、壁内通路部42に流通する冷却水が連通孔44を通過する量は極めて少ない。つまり連通孔44が形成されていても、アッパジャケット31とロアジャケット32とは独立した状態が維持されており、アッパジャケット31及びロアジャケット32には、上述したように別々の経路で冷却水が流通する。
【0051】
したがって、上記連通孔44が形成されていることで、壁内通路部42を含むロアジャケット32及び壁内通路部43を含むアッパジャケット31のそれぞれに、冷却水を良好に流通させることができ、仕切壁21bを含むシリンダヘッド10の各部位をより適切に冷却することができる。
【0052】
なお、連通孔44は壁内通路部42の何れの位置に設けられていてもよいが最上部に設けられていることが好ましい。これにより、壁内通路部42内の気泡をより確実にアッパジャケット31側に排出させることができる。また本実施形態では、仕切壁21bに壁内通路部42,43を設けた例を説明したが、これらの壁内通路部42,43は、他の仕切壁21a、21cに設けることもできる。
【0053】
上述されるように、本発明の一実施形態が説明されたが、本開示は、上述の実施形態に限定されない。本開示は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0054】
例えば、上述の実施形態では、ロアジャケットのサブ通路部が、アッパジャケットの分岐流路部に接続された構成を例示したが、サブ通路部は、アッパジャケットの何れの部分に接続されていてもよい。
【0055】
また上述の実施形態では、アッパジャケット及びロアジャケットのそれぞれが、仕切壁に壁内通路部を有する例を説明したが、ロアジャケットのみが壁内通路部を有するようにしてもよいし、アッパジャケットのみが壁内通路部を有するようにしてもよい。またロアジャケットが壁内通路部を有する場合には、ロアジャケットの壁内通路部とアッパジャケットとを連通する連通孔が設けられていることが好ましい。
【0056】
また上述の実施形態では、多気筒エンジンとして直列4気筒のエンジンを例示して本開示が説明されたが、本開示に係るシリンダヘッドは、直列4気筒のエンジン以外の多気筒エンジンにも適用可能である。
【0057】
本出願は、2018年12月19日出願の日本特許出願特願2018-237725に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【符号の説明】
【0058】
10 シリンダヘッド
11 気筒(シリンダ)
11a~11d 第1~第4の気筒
12 動弁室
13(13a,13b) 吸気バルブ孔
14(14a,14b) 排気バルブ孔
15 吸気ポート
16 吸気口
17 集合排気ポート
18(18a~18d) 排気ポート
19 排気集合部
20 排気口
21(21a~21c) 仕切壁
30 ウォータジャケット
31 アッパジャケット
32 ロアジャケット
33 気筒通路部
34,35 ポート通路部
36 アッパ入口通路部
37 アッパ出口通路部
38 ロア入口通路部
39 サブ通路部
39a 大径部
40 分岐通路部
41 プラグ部材
42,43 壁内通路部
44 連通孔