(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】積層長繊維不織布の製造方法及び積層長繊維不織布
(51)【国際特許分類】
D04H 3/105 20120101AFI20221004BHJP
B32B 5/06 20060101ALI20221004BHJP
B32B 5/26 20060101ALI20221004BHJP
D06M 15/53 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
D04H3/105
B32B5/06 A
B32B5/26
D06M15/53
(21)【出願番号】P 2021067704
(22)【出願日】2021-04-13
(62)【分割の表示】P 2016203471の分割
【原出願日】2016-10-17
【審査請求日】2021-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】稲富 伸一郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 英夫
(72)【発明者】
【氏名】岩根 正好
(72)【発明者】
【氏名】浦谷 勇祐
(72)【発明者】
【氏名】奥村 裕司
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-066069(JP,A)
【文献】特開2010-150737(JP,A)
【文献】特開平08-158226(JP,A)
【文献】特開平08-176947(JP,A)
【文献】特開2015-074838(JP,A)
【文献】特開平10-212651(JP,A)
【文献】特開平11-100821(JP,A)
【文献】国際公開第2005/098124(WO,A1)
【文献】特開2000-256965(JP,A)
【文献】特開昭63-296936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H1/00-18/04
B32B1/00-43/00
D06M13/00-15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル、ポリオレフィン、またはポリアミドを原料とする長繊維不織布であり、親水性
を有する変性ポリエステル系の樹脂が塗布された低収縮長繊維不織布と、前記低収縮長繊維不織布よりも面積収縮率が15%以上高い高収縮長繊維不織布とを重ね合わせ積層体とする工程と、
前記積層体に対して、前記低収縮長繊維不織布側よりニードルを貫入させてニードルパンチ法による機械交絡を行い積層長繊維不織布とする工程と、を含む、
縦横の破断伸度が共に100%以上である積層長繊維不織布の製造方法。
【請求項2】
前記低収縮長繊維不織布を構成する繊維の繊維/繊維間静摩擦係数が0.3以下である請求項
1に記載の積層長繊維不織布の製造方法。
【請求項3】
前記積層体は、前記高収縮長繊維不織布を前記低収縮長繊維不織布で挟む3つの層の積層物である請求項1
または2に記載の積層長繊維不織布の製造方法。
【請求項4】
ポリエステル、ポリオレフィン、またはポリアミドを原料とする長繊維不織布であり、親水性
を有する変性ポリエステル系の樹脂が塗布された第1長繊維不織布と、
前記第1長繊維不織布よりも面積収縮率が15%以上高い第2長繊維不織布と、の積層体から成り、
前記積層体には、前記第1長繊維不織布側よりニードルが貫入されるニードルパンチ加工がされており、
縦横の破断伸度が共に100%以上である、積層長繊維不織布。
【請求項5】
前記積層体は、前記第2長繊維不織布を前記第1長繊維不織布で挟む3つの層の積層物である請求項
4に記載の積層長繊維不織布。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い伸長性をもち、機械的強度特性に優れた積層長繊維不織布の製造方法に関するものである。本発明の製造方法で得られる伸長性と機械的強度特性に優れた積層長繊維不織布は、土木用途、建材用途などに好適に用いられる。特に、土層や建造物などの上に不織布を敷設する場合に、不陸や凸凹状の突起などの非平面形状に追随しやすく、作業性を大幅に改善することが可能である。
【背景技術】
【0002】
従来知られている不織布は、引張強度や引裂強度などの機械的強度特性に優れたものは伸張性(伸び率)が低いものであった。一方、伸長性の高い不織布は、機械的強度特性に劣るものであった。この課題を改善するため、これまでに以下の方法が提案されていた。
【0003】
特許文献1には高収縮糸を不織布で挟み、その後熱処理により高収縮糸を収縮させる異種材複合シートが提案されている。しかし、高収縮糸がメッシュ形状を有するため、高収縮糸が存在する場所としない場所での特性差が大きいものであった。
【0004】
特許文献2には熱収縮繊維を含む不織布繊維シートと、熱収縮しにくい第2の不織布繊維シートをニードルパンチ法により積層させ、熱処理することで120%以上の伸度をもつシートを得る方法が提案されている。この方法であれば、部分的な特性の差が出にくくなるが、土木用途等の機械的強度特性(特に引張強力)が重要な用途では、機械的強度特性を満たすために、シートの目付を高くする必要があった。そのため、作業現場でシートを使用する際に、重量が重く、作業者の負担が増える問題があった。さらに前記シートを得るためには、収縮しにくい不織布繊維シートが収縮する不織布繊維シートの収縮を阻害しないようにするために、収縮しにくい不織布繊維シートにシリコン系油剤で処理した短繊維を使用することが提案されていた。しかし、シリコン系油剤で処理した短繊維を使用する前記シートでは、シートを海水に沈めて使用する場合、シートの撥水性が高く、シートが海中に沈みにくい、あるいは沈まない問題が予想された。
【0005】
特許文献3には、短繊維不織布に50%以上の未延伸の高伸度合成繊維を用いる方法が提案されている。この方法でも高い伸張性を持つ不織布を得ることができるが、機械的強度特性を満足させるためには非常に高い目付の不織布が必要であった。そのため、作業現場でシートを使用する際、重量が重く、作業者の負担が増える問題があった。
【0006】
熱により収縮する短繊維不織布と熱により収縮しにくい短繊維不織布を積層し、熱処理することによって、凸凹形状を付与したり、伸縮性を付与する方法が多数提案されている(例えば、特許文献4~6)。しかし、いずれも短繊維不織布を基布としているため、優れた機械的強度特性を得るためにはシートの目付を上げる必要があり、作業現場でシートを使用する際、重量が重く、作業者の負担が増える問題があった。
【0007】
上述の如く、高伸度で、機械的強度特性に優れ、軽量な不織布シートは提案されていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2001-30401号公報
【文献】特開2010-150737号公報
【文献】特開2004-36065号公報
【文献】特開平7-54256号公報
【文献】特開2002-302866号公報
【文献】特開2003-306859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記従来技術の課題を背景になされたもので、長繊維不織布を主体として構成される、高い伸長性とシート全面の機械的強度特性に優れ、しかも海水中での使用時にも海中に沈みやすく、軽量で取扱い性に優れた積層長繊維不織布の製造方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意研究した結果、ついに本発明を完成するに到った。すなわち本発明は以下の通りである。
1.非弾性繊維よりなる少なくとも2層の長繊維不織布を重ね合わせ、面積収縮率が低い長繊維不織布側よりニードルを貫入させるニードルパンチ法による機械交絡で積層する、縦横の破断伸度が共に100%以上である積層長繊維不織布の製造方法。
2.少なくとも2層の長繊維不織布の面積収縮率が15%以上異なる上記1に記載の積層長繊維不織布の製造方法。
3.最も面積収縮率が低い長繊維不織布を構成する繊維の繊維/繊維間静摩擦係数が0.3以下である上記1または2に記載の積層長繊維不織布の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法により得られる積層長繊維不織布は、高い伸長性とシート全面の機械的強度特性に優れ、海水中で使用しても海中に沈みやすく、軽量で取扱い性に優れた積層長繊維不織布である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いる非弾性繊維よりなる少なくとも2層の長繊維不織布は、それぞれの面積収縮率が15%以上異なるものであることが好ましく、20%以上異なることがより好ましく、30%以上異なることがさらに好ましく、40%以上異なることが最も好ましい。面積収縮率の差が15%未満であれば、熱処理により得られる積層長繊維不織布の高伸度化の効果が出にくくなる。
【0013】
面積収縮率の低い方の長繊維不織布の面積収縮率は好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下である。一方、面積収縮率の高い方の長繊維不織布の面積収縮率は好ましくは25%以上、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは40%以上である。ここで言う面積収縮率とはそれぞれの長繊維不織布を積層前に単独で測定した面積収縮率である。
【0014】
次に、面積収縮率の低い長繊維不織布(以下、「低収縮長繊維不織布」と言う)を得る方法について説明する。本発明において、非弾性繊維は、以下に列挙する樹脂を例として用いて得られる繊維であり、エラストマーではない樹脂よりなる繊維である。非弾性繊維を構成する樹脂としては、ポリエステル、ポリオレフィンやポリアミドが好ましく、汎用熱可塑性樹脂で安価なポリエステルやポリオレフィンが特に好ましい。ポリエステルとしては、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリシクロヘキサンジメチルテレフタレート(PCHT)、ポリトリメチオレンテレフタレート(PTT)などのホモポリエステルおよびそれらの共重合ポリエステルなどが例示できる。また、ポリオレフィンではポリエチレンやポリプロピレンなどが例示できる。また、通常使用される添加剤、例えば、塗料、顔料、艶消剤、制電剤、難燃剤、強化粒子を含んでも良い。また、本発明の目的を損なわない範囲での少量の他のポリマー、例えばナイロン、オレフィンなどを混合することも可能である。長繊維不織布の製造方法は、長繊維不織布として生産性、機械強度特性を得やすいとの観点から、スパンボンド法が好ましく用いることができる。
【0015】
低収縮長繊維不織布を構成する長繊維の繊度は特に限定されないが、生産性および機械強度特性を得やすいことから、1~10dtexが好ましく、1.5~8dtexがより好ましい。目付は、最終製品に必要な機械強度特性を考慮し設定することができるが、面積収縮率の高い長繊維不織布(以下、「高収縮長繊維不織布」と言う)を熱処理により、収縮させるときに収縮性を阻害しないために1000g/m2以下が好ましい。さらに、収縮を効率良く行うため、低収縮長繊維不織布の繊維表面を低摩擦化処理することが好ましい。低摩擦化処理としては油剤による処理が好ましい。油剤としてはポリエステルポリ
エーテルブロック共重合体を使用した変性ポリエステル系の樹脂や、シリコーン系高分子として、アミノ変性オルガノポリシロキサンやエポキシ変性オルガノポリシロキサンなどの変性シリコーンとこれらと反応性の硬化剤などを主体としたものなどがあるが、海水中での使用を考慮すると、親水性を有する変性ポリエステル系の樹脂が好ましい。油剤の付与方法も特に限定はなく、スプレー法、ディップ法等を用いることができる。さらに付与するタイミングも熱処理する前であれば効果を得ることができるが、好ましくは高収縮長繊維不織布と積層する前である。低収縮長繊維不織布を構成する長繊維の摩擦係数は、0.3以下が好ましく、0.27以下がより好ましい。
【0016】
次に、高収縮長繊維不織布を得る方法について説明する。低収縮長繊維不織布と同様生産性の観点からスパンボンド法で製造するのが好ましい。同方法で高収縮長繊維不織布を得るためには、使用する樹脂が配向結晶化により安定なフィラメントを得られる条件より低い紡糸速度で繊維化し、シート化する方法を用いる。通常ポリエステルを使用する場合の紡糸速度としては2000~3500m/minが好ましく、2000~3300m/minがより好ましい。使用する樹脂により紡糸速度は適宜変更する必要があり、樹脂としてはポリエステル、ポリオレフィンやポリアミドが好ましく、汎用熱可塑性樹脂で安価なポリエステルやポリオレフィンが特に好ましい。ポリエステルとしては、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリシクロヘキサンジメチルテレフタレート(PCHT)、ポリトリメチオレンテレフタレート(PTT)などのホモポリエステルおよびそれらの共重合ポリエステルなどが例示できる。また、ポリオレフィンではポリエチレンやポリプロピレンなどが例示できるが、収縮応力を高めるために、酸成分にイソフタル酸を4~12モル%共重合した共重合ポリエステルや、グリコール成分にネオペンチルグリコールエチレンオキサイドを10~60モル%共重合した共重合ポリエステルを用いることができる。低収縮不織布と同様に、通常使用される添加剤、例えば、塗料、顔料、艶消剤、制電剤、難燃剤、強化粒子を含んでも良い。
【0017】
高収縮長繊維不織布を構成する長繊維の繊度は特に限定されないが、生産性を考慮し、1~20dtexが好ましく、2~15dtexがより好ましい。目付は最終製品に必要な機械強度特性を考慮し設定することができるが、熱処理により、収縮させる応力を得るために100g/m2以上が好ましい。
【0018】
低収縮長繊維不織布および高収縮長繊維不織布を得た後の積層化工程の工程通過性を考慮し、前記長繊維不織布は搬送性が得られる程度の圧着におさえることが好ましい。
【0019】
次に積層化の手段である機械交絡方法について説明する。機械交絡させる方法としてはニードルパンチまたはウォーターパンチなどの方法があるが、乾燥が不要、高い目付けが可能であることからニードルパンチが良い。
【0020】
積層する長繊維不織布は、少なくとも低収縮長繊維不織布と高収縮著繊維不織布の2つの層を積層させる必要があるが、高収縮長繊維不織布を低収縮長繊維不織布で挟む3つの層の積層としても良い。その後、ニードルパンチで低収縮長繊維不織布層からニードルを貫入させ交絡させる必要がある。高収縮長繊維不織布は面積収縮率が高い繊維で構成されているため、フィラメント強力が低く、ニードルパンチ加工により繊維切断され、低収縮長繊維不織布との交絡が不十分となる。このため、熱処理時に剥離等の問題が起こりやすい。ペネ数や針深は使用するニードルの種類、得たい機械強力特性や2つの層の目付により適宜設定する必要があり、限定されるものではない。
【0021】
次に熱処理方法について説明する。熱処理方法は、バッチ式でも良いが生産性の観点から、連続熱処理が好ましい。熱処理の温度と時間は所定の収縮を施すことができれば限定されないが、温度は90~150℃が好ましく、100~150℃がより好ましく、熱処理時間は30秒以上が好ましく、30秒以上2分以下がより好ましい。
【0022】
本発明の製造方法において、使用する少なくとも2層の長繊維不織布の面積収縮率が10%以上異なるものであることが好ましい。また、高収縮長繊維不織布が10%以上熱収縮する条件で熱処理することが好ましい製造方法である。
【実施例】
【0023】
以下に本発明の実施例を示す。本発明は実施例に限定されるものではない。
【0024】
次に実施例および比較例を用いて、本発明を具体的に説明するが、実施例および比較例中の物性値は以下の方法で測定した。
【0025】
<紡糸速度>
得られた長繊維不織布を構成する繊維の単繊維の繊度T(dtex)と長繊維不織布製造時に設定する単孔吐出量Q(g/min)から下記式に基き、紡糸速度V(m/min)を求める。
V=(10000×Q)/T
【0026】
<面積収縮率>
JIS L1906(2000)に準拠して測定する。なお、恒温槽への挿入条件は150℃×2分とする。25cm×25cmのサンプルを採取し、20cmの位置に記しを付け、熱処理後、縦横長さを測定し、以下の計算により求める。サンプルがカールする場合は、シートが伸びないよう広げてサイズを測定する。
面積収縮率=(20-A)×(20-B)/400×100(%)
A:熱処理後の縦の長さ(cm)
B:熱処理後の横の長さ(cm)
【0027】
<繊維/繊維間静摩擦係数>
JIS L1015(1999)に準拠して測定する。
【0028】
<伸度および強力>
JIS L1913(2010)に準拠して測定する。なお、チャック間は10cm、引張速度は2cm/分とした。
【0029】
(実施例1)
原料はポリエチレンテレフタレート(IV=0.65)を使用した。低収縮長繊維不織布としては、紡糸温度265℃、単孔吐出量2g/minで紡出し、紡糸口金直下50mmより風速0.5m/sec、25℃の空気で冷却し、紡糸口金直下1.0mの位置に配したエジェクタにて300kPaで1段階で延伸させ、下方1.0mの位置でコンベアネット上へ繊維束を開繊させつつ捕集し420g/m2の長繊維不織布を得た。得られた低収縮長繊維不織布を構成する繊維の繊度は4.4dtex、換算した紡糸速度は4500m/min、面積収縮率は1%であった。
次に、高収縮長繊維不織布として、紡糸温度265℃、単孔吐出量0.75g/minで紡出し、紡糸口金直下50mmより風速0.5m/sec、25℃空気で冷却し、紡糸口金直下1.0mの位置に配したエジェクタにて125kPaで1段階で延伸させ、下方1.0mの位置でコンベアネット上へ繊維束を開繊させつつ捕集し200g/m2の長繊維不織布を得た。得られた高収縮長繊維不織布を構成する繊維の繊度は2.7dtex、換算した紡糸速度は2770m/min、面積収縮率は84%であった。
その後、低収縮長繊維不織布にスプレーにて付着量0.2質量%となるよう高松油脂株式会社製油剤SR1000を塗布し、単独でまず、オルガンFPD220(40SM)を用いペネ数58、針深10mmでニードルパンチ加工し、ニードルパンチ長繊維不織布を得た。得られたニードルパンチ長繊維不織布を構成する長繊維の繊維/繊維間静摩擦係数は0.26であった。
さらに、前記ニードルパンチ長繊維不織布と高収縮長繊維不織布とを積層し、ニードルパンチ長繊維不織布側からニードルとしてグロッツ社製R111を用い、ペネ数90、針深12mmでニードルパンチ加工を行い、積層不織布を得た。
得られた積層不織布を100℃で2分熱処理を行い、積層長繊維不織布を得た。
【0030】
(実施例2)
原料はポリエチレンテレフタレート(IV=0.65)を使用した。低収縮長繊維不織布としては、紡糸温度265℃、単孔吐出量2g/minで紡出し、紡糸口金直下50mmより風速0.5m/sec、25℃の空気で冷却し、紡糸口金直下1.0mの位置に配したエジェクタにて300kPaで1段階で延伸させ、下方1.0mの位置でコンベアネット上へ繊維束を開繊させつつ捕集し420g/m2の低収縮長繊維不織布を得た。得られた低収縮長繊維不織布を構成する長繊維の繊度は4.4dtex、換算した紡糸速度は4500m/min、面積収縮率は1%であった。
次に、高収縮長繊維不織布として、紡糸温度265℃、単孔吐出量0.75g/minで紡出し、紡糸口金直下50mmより風速0.5m/sec、25℃空気で冷却し、紡糸口金直下1.0mの位置に配したエジェクタにて200kPaで1段階で延伸させ、下方1.0mの位置でコンベアネット上へ繊維束を開繊させつつ捕集し200g/m2の高収縮長繊維不織布を得た。得られた高収縮長繊維不織布を構成する長繊維の繊度は2.0dtex、換算した紡糸速度は3800m/min、面積収縮率は60%であった。
その後、低収縮長繊維不織布を、単独でまず、オルガンFPD220(40SM)を用いペネ数58、針深10mmでニードルパンチ加工しニードルパンチ長繊維不織布を得た。得られたニードルパンチ長繊維不織布を構成する長繊維の繊維/繊維間静摩擦係数は0.35であった。
さらに、前記ニードルパンチ長繊維不織布と高収縮長繊維不織布を積層し、前記ニードルパンチ長繊維不織布側からニードルとしてグロッツ社製R111を用い、ペネ数90、針深12mmでニードルパンチ加工を行い、積層不織布を得た。
得られた積層不織布を100℃で2分熱処理を行い、積層長繊維不織布を得た。
【0031】
(実施例3)
原料はポリエチレンテレフタレート(IV=0.65)を使用した。低収縮長繊維不織布としては、紡糸温度265℃、単孔吐出量2g/minで紡出し、紡糸口金直下50mmより風速0.5m/sec、25℃の空気で冷却し、紡糸口金直下1.0mの位置に配したエジェクタにて300kPaで1段階で延伸させ、下方1.0mの位置でコンベアネット上へ繊維束を開繊させつつ捕集し210g/m2の低収縮長繊維不織布を得た。得られた低収縮長繊維不織布を構成する長繊維の繊度は4.4dtex、換算した紡糸速度は4500m/min、面積収縮率は1%であった。
次に、高収縮長繊維不織布として、紡糸温度265℃、単孔吐出量0.75g/minで紡出し、紡糸口金直下50mmより風速0.5m/sec、25℃空気で冷却し、紡糸口金直下1.0mの位置に配したエジェクタにて125kPaで1段階で延伸させ、下方1.0mの位置でコンベアネット上へ繊維束を開繊させつつ捕集し200g/m2の高収縮長繊維不織布を得た。得られた高収縮長繊維不織布を構成する長繊維の繊度は2.7dtex、換算した紡糸速度は2770m/min、面積収縮率は84%であった。
その後、低収縮長繊維不織布をスプレーにて付着量0.2質量%となるよう高松油脂株式会社製油剤SR1000を塗布し、単独でまず、オルガンFPD220(40SM)を用いペネ数58、針深10mmでニードルパンチ加工し、ニードルパンチ長繊維不織布を得た。得られたニードルパンチ長繊維不織布を構成する長繊維の繊維/繊維間静摩擦係数は0.26であった。
さらに、前記ニードルパンチ長繊維不織布、高収縮長繊維不織布、前記低収縮ニードルパンチ長繊維不織布を順に積層し、ニードルとしてグロッツ社製R111を用い、ペネ数90、針深12mmでニードルパンチ加工を行い、積層不織布を得た。
得られた積層不織布を100℃で2分熱処理を行い、積層長繊維不織布を得た。
【0032】
(比較例1)
原料はポリエチレンテレフタレート(IV=0.65)を使用した。低収縮長繊維不織布としては、紡糸温度265℃、単孔吐出量2g/minで紡出し、紡糸口金直下50mmより風速0.5m/sec、25℃の空気で冷却し、紡糸口金直下1.0mの位置に配したエジェクタにて300kPaで1段階で延伸させ、下方1.0mの位置でコンベアネット上へ繊維束を開繊させつつ捕集し420g/m2の低収縮長繊維不織布を得た。得られた低縮長繊維不織布を構成する繊維の繊度は4.4dtex、換算した紡糸速度は4500m/min、面積収縮率は1%であった。
次に、高収縮長繊維不織布として、紡糸温度265℃、単孔吐出量0.75g/minで紡出し、紡糸口金直下50mmより風速0.5m/sec、25℃空気で冷却し、紡糸口金直下1.0mの位置に配したエジェクタにて125kPaで1段階で延伸させ、下方1.0mの位置でコンベアネット上へ繊維束を開繊させつつ捕集し200g/m2の高収縮長繊維不織布を得た。得られた高収縮長繊維不織布を構成する長繊維の繊度は2.7dtex、換算した紡糸速度は2770m/min、面積収縮率は84%であった。
その後、低収縮長繊維不織布をスプレーにて付着量0.2質量%となるよう高松油脂株式会社製油剤SR1000を塗布し、単独でまず、オルガンFPD220(40SM)を用いペネ数58、針深10mmでニードルパンチ加工し、ニードルパンチ長繊維不織布を得た。得られたニードルパンチ長繊維不織布を構成する長繊維の繊維/繊維間静摩擦係数は0.26であった。
さらに、前記ニードルパンチ長繊維不織布と高収縮長繊維不織布を積層し、高収縮長繊維不織布側よりニードルとしてグロッツ社製R111を用い、ペネ数90、針深12mmでニードルパンチ加工を行い、積層不織布を得た。
得られた積層不織布を100℃で2分熱処理を行い、積層長繊維不織布を得た。
【0033】
(比較例2)
原料はポリエチレンテレフタレート(IV=0.65)を使用した。低収縮長繊維不織布としては、紡糸温度265℃、単孔吐出量2g/minで紡出し、紡糸口金直下50mmより風速0.5m/sec、25℃の空気で冷却し、紡糸口金直下1.0mの位置に配したエジェクタにて300kPaで1段階で延伸させ、下方1.0mの位置でコンベアネット上へ繊維束を開繊させつつ捕集し420g/m2の低収縮長繊維不織布を得た。得られた低収縮長繊維不織布を構成する長繊維の繊度は4.4dtex、換算した紡糸速度は4500m/min、面積収縮率は1%であった。
次に、高収縮長繊維不織布として、紡糸温度265℃、単孔吐出量0.75g/minで紡出し、紡糸口金直下50mmより風速0.5m/sec、25℃空気で冷却し、紡糸口金直下1.0mの位置に配したエジェクタにて270kPaで1段階で延伸させ、下方1.0mの位置でコンベアネット上へ繊維束を開繊させつつ捕集し200g/m2の高収縮長繊維不織布を得た。得られた高収縮長繊維不織布を構成する長繊維の繊度は1.7dtex、換算した紡糸速度は4300m/min、面積収縮率は2%であった。
その後、低収縮長繊維不織布をスプレーにて付着量0.2質量%となるよう高松油脂株式会社製油剤SR1000を塗布し、単独でまず、オルガンFPD220(40SM)を用いペネ数58、針深10mmでニードルパンチ加工し、ニードルパンチ長繊維不織布を得た。得られたニードルパンチ長繊維不織布を構成する長繊維の繊維/繊維間静摩擦係数は0.26であった。
さらに、前記ニードルパンチ長繊維不織布と高収縮長繊維不織布を積層し、前記ニードルパンチ長繊維不織布側より、ニードルとしてグロッツ社製R111を用い、ペネ数90、針深12mmでニードルパンチ加工を行い、積層不織布を得た。
得られた積層不織布を100℃で2分熱処理を行い、積層長繊維不織布を得た。
【0034】
(比較例3)
原料はポリエチレンテレフタレート(IV=0.65)を使用した。第一層としては、紡糸温度265℃、単孔吐出量0.75g/minで紡出し、紡糸口金直下50mmより風速0.5m/sec、25℃の空気で冷却し、紡糸口金直下1.0mの位置に配したエジェクタにて200kPaで1段階で延伸させ、下方1.0mの位置でコンベアネット上へ繊維束を開繊させつつ捕集し420g/m2の長繊維不織布を得た。得られた長繊維不織布を構成する長繊維の繊度は2.0dtex、換算した紡糸速度は3800m/min、面積収縮率は60%であった。
次に、第二層として、紡糸温度265℃、単孔吐出量0.75g/minで紡出し、紡糸口金直下50mmより風速0.5m/sec、25℃空気で冷却し、紡糸口金直下1.0mの位置に配したエジェクタにて175kPaで1段階で延伸させ、下方1.0mの位置でコンベアネット上へ繊維束を開繊させつつ捕集し200g/m2の長繊維不織布を得た。得られた長繊維不織布を構成する長繊維の繊度は2.3dtex、換算した紡糸速度は3200m/min、面積収縮率は71%であった。
その後、第一層をスプレーにて付着量0.2質量%となるよう高松油脂株式会社製油剤SR1000を塗布し、単独でまず、オルガンFPD220(40SM)を用いペネ数58、針深10mmでニードルパンチ加工し、ニードルパンチ長繊維不織布を得た。得られたニードルパンチ長繊維不織布を構成する長繊維の繊維/繊維間静摩擦係数は0.26であった。
さらに、前記ニードルパンチ長繊維不織布と第二層長繊維不織布を積層し、前記ニードルパンチ長繊維不織布側より、ニードルとしてグロッツ社製R111を用い、ペネ数90、針深12mmでニードルパンチ加工を行い、積層不織布を得た。
得られた積層不織布を100℃で2分熱処理を行い、積層長繊維不織布を得た。
【0035】
(比較例4)
原料はポリエチレンテレフタレート(IV=0.65)を使用した。低収縮長繊維不織布としては、紡糸温度265℃、単孔吐出量2g/minで紡出し、紡糸口金直下50mmより風速0.5m/sec、25℃の空気で冷却し、紡糸口金直下1.0mの位置に配したエジェクタにて300kPaで1段階で延伸させ、下方1.0mの位置でコンベアネット上へ繊維束を開繊させつつ捕集し210g/m2の低収縮長繊維不織布を得た。得られた低収縮長繊維不織布を構成する長繊維の繊度は4.4dtex、換算した紡糸速度は4500m/min、面積収縮率は1%であった。
次に、高収縮長繊維不織布として、紡糸温度265℃、単孔吐出量0.75g/minで紡出し、紡糸口金直下50mmより風速0.5m/sec、25℃空気で冷却し、紡糸口金直下1.0mの位置に配したエジェクタにて270kPaで1段階で延伸させ、下方1.0mの位置でコンベアネット上へ繊維束を開繊させつつ捕集し200g/m2の高収縮長繊維不織布を得た。得られた高収縮長繊維不織布を構成する長繊維の繊度は1.7dtex、換算した紡糸速度は4300m/min、面積収縮率は2%であった。
その後、低収縮長繊維不織布をスプレーにて付着量0.2質量%となるよう高松油脂株式会社製油剤SR1000を塗布し、単独でまず、オルガンFPD220(40SM)を用いペネ数58、針深10mmでニードルパンチ加工し、ニードルパンチ長繊維不織布を得た。得られたニードルパンチ長繊維不織布を構成する長繊維の繊維/繊維間静摩擦係数は0.26であった。
さらに、前記ニードルパンチ長繊維不織布、高収縮長繊維不織布、前記ニードルパンチ長繊維不織布を順に積層し、ニードルとしてグロッツ社製R111を用い、ペネ数90、針深12mmでニードルパンチ加工を行い、積層不織布を得た。
得られた積層不織布を100℃で2分熱処理を行い、積層長繊維不織布を得た。
【0036】
実施例1~3、比較例1~4で得られた積層長繊維不織布の各物性の結果を表1に示す。
【0037】
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明により、長繊維不織布を主体として構成され高い伸長性とシート全面の機械的強度特性に優れ、海水中で使用しても沈みやすく軽量で取扱い性に優れた積層長繊維不織布の製造を提供することが可能となり、産業界への寄与大である。