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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】プロピレン単独重合体
(51)【国際特許分類】
   C08F 10/06 20060101AFI20221004BHJP
【FI】
C08F10/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021165833
(22)【出願日】2021-10-08
(62)【分割の表示】P 2020174398の分割
【原出願日】2017-07-31
(65)【公開番号】P2022000531
(43)【公開日】2022-01-04
【審査請求日】2021-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】596133485
【氏名又は名称】日本ポリプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 正顕
(72)【発明者】
【氏名】細井 淳
(72)【発明者】
【氏名】山田 芳佳
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1618753(KR,B1)
【文献】特開2017-14532(JP,A)
【文献】特開2016-183337(JP,A)
【文献】特表2016-530360(JP,A)
【文献】特表2014-508848(JP,A)
【文献】特開2009-227899(JP,A)
【文献】特開2016-164264(JP,A)
【文献】特開平7-145203(JP,A)
【文献】特表2013-525558(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00-246/00
C08F 4/60-4/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記特性(i)~(ii)、(v)及び特性(v)’を有する、プロピレン単独重合体。
特性(i):融点(Tm)が145℃以上149℃以下
特性(ii):融点(Tm)と結晶化温度(Tc)(℃)が下記式(1)を満たす
Tm-Tc≦0.907×Tm-99.64・・・式(1)
特性(v):ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定する数平均分子量(Mn)が5万以下
特性(v)’:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定する重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnは、2.0以上、3.9以下
【請求項2】
下記特性(vi)をさらに有する、請求項1に記載のプロピレン単独重合体。
特性(vi):13C-NMRで測定する末端ビニル率が0.7以上
【請求項3】
下記特性(vii)をさらに有する、請求項1又は2に記載のプロピレン単独重合体。
特性(vii):長鎖分岐数が0.1個/1000モノマー以上
【請求項4】
下記特性(viii)をさらに有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロピレン単独重合体。
特性(viii):融点(Tm)と結晶化温度(Tc)(℃)が下記式(2)を満たす
Tm-Tc≧0.907×Tm-103.64・・・式(2)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プロピレン単独重合体に関し、詳しくは特定の融点範囲において、融点と結晶化温度との関係が良好であるプロピレン単独重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンは化学的安定性が高く、力学物性に優れ、安価なことから生活産業部材、工業部材などとして幅広く用いられている。
また、一部のポリプロピレンでは片末端にビニル基を有する重合体が知られている。
【0003】
例えば、ジメチルシリレンビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリドに代表されるキラルの立体剛性遷移金属化合物を含有する触媒組成物を用いることにより得られる、数平均分子量(Mn)が2,000ダルトン乃至50,000ダルトンであり、1,000炭素原子当りのビニル基の総数が7000÷Mn以上の立体規則性を有する末端ビニル基含有プロピレン重合体が知られている(特許文献1の請求項10、非特許文献1)。
【0004】
また、このジメチルシリレンビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリドを含有する触媒組成物を用いて、プロピレンの希薄状況下で重合することにより得られる、末端ビニル基含有プロピレン重合体がさらにプロピレンモノマーと共重合して得られる、多分散性が4.0以下、融点が90℃を超え、重量平均分枝指数(g)が0.95未満である長鎖分岐構造をもつ末端ビニル基含有プロピレン重合体が知られている(特許文献2の実施例25-30 非特許文献2)。
【0005】
またさらに、rac-ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-インデニル}]ハフニウムに代表されるインデン環の2位に5員環を構成する複素環を有する架橋インデン環をもち、4位にアリール基をもつメタロセン化合物を含む触媒を用いて、バルク重合といったプロピレン濃度の高い状況で、バルク重合が可能な比較的低温で重合することにより得られる、重量平均分子量(Mn)が5万より大きく13万未満、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Q値)が2.0以上4.0以下、末端ビニル率が0.7以上、末端ビニリデン率が0.1未満、40℃のオルトジクロロベンゼン溶出する成分が3重量%以下、mm分率が95%以上の末端ビニル基含有プロピレン重合体が知られている(特許文献3の請求項1)
【0006】
特許文献1および非特許文献1の末端ビニル基含有プロピレン重合体は、高選択的に末端ビニル構造を得るために、重合条件として比較的高温かつ低圧でスラリー重合することを必要とするため、プロピレンモノマーの不規則挿入による成長反応に由来する異種結合量が多い。
特許文献2の末端ビニル基含有プロピレン重合体も同様に、低圧でスラリー重合を行うことにより得られるものであり、生成するプロピレン重合体は実施例26、28、30に示されるように、不規則挿入に由来する異種結合量が多い。
特許文献3の末端ビニル基含有プロピレン重合体は、プロピレンモノマーの不規則挿入による成長反応に由来する異種結合量が比較的少ない重合体であるが、数平均分子量が50,000を超えていること、融点に対する結晶化度が高すぎるために結晶化が速いこと等に起因して、成形加工特性や成形品の外観に不具合が生じやすい問題がある。
そこで同じくジメチルシリレンビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリドを用い、助触媒として粘土を用いて比較的低温でバルク重合をおこない実用的な分子量にするために分子量調整剤として水素を用いた場合には、末端ビニル基の生成が不十分となり充分な量の長鎖分岐を有するプロピレン重合体を得ることができない。
そこで、特許文献4では、同様に、ジメチルシリレンビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリドを用いて、プロピレンの臨界温度を超えて重合をおこなって効率的に長鎖分岐を導入しているが、融点が高くなりすぎてしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表2001-525461号公報
【文献】特表2002-523575号公報
【文献】特開2009-299045号公報
【文献】欧州特許第2231726号明細書
【非特許文献】
【0008】
【文献】Macromol. Rapid Commun. 2000, 21, 1103-1107
【文献】Macromolecules.2002、35 3838
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本開示は、上記実情を鑑みて、特定の融点範囲において、融点と結晶化温度との関係が良好である新規なプロピレン単独重合体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示のプロピレン単独重合体は、下記特性(i)~(ii)を有することを特徴とする。
特性(i):融点(Tm)が145℃以上149℃以下
特性(ii):融点(Tm)と結晶化温度(Tc)が下記式(1)を満たす
Tm-Tc≦0.907×Tm-99.64・・・式(1)
【0011】
本開示のプロピレン単独重合体は、下記特性(iii)~(iv)をさらに有していてもよい。
特性(iii):アイソタクチックトライアッド分率(mm)が90%以上
特性(iv):異種結合量(2,1結合)が0.2mol%以下、且つ、異種結合量(1,3結合)が0.2mol%以下
【0012】
本開示のプロピレン単独重合体は、下記特性(v)をさらに有していてもよい。
特性(v):ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定する数平均分子量(Mn)が5万以下
【0013】
本開示のプロピレン単独重合体は、下記特性(vi)をさらに有していてもよい。
特性(vi):13C-NMRで測定する末端ビニル率が0.7以上
【0014】
本開示のプロピレン単独重合体は、下記特性(vii)をさらに有していてもよい。
特性(vii):長鎖分岐数が0.1個/1000モノマー以上
【0015】
本開示のプロピレン単独重合体は、下記特性(viii)をさらに有していてもよい。
特性(viii):融点(Tm)と結晶化温度(Tc)が下記式(2)を満たす
Tm-Tc≧0.907×Tm-103.64・・・式(2)
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、特定の融点範囲において、融点と結晶化温度との関係が良好である新規なプロピレン単独重合体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】GPCにおけるクロマトグラムのベースラインと区間を説明する図である。
図2】実施例のプロピレン単独重合体の融点と結晶化温度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1.プロピレン単独重合体
本開示のプロピレン単独重合体は、下記特性(i)~(ii)を有することを特徴とする。
特性(i):融点(Tm)が145℃以上149℃以下
特性(ii):融点(Tm)と結晶化温度(Tc)が下記式(1)を満たす
Tm-Tc≦0.907×Tm-99.64・・・式(1)
【0019】
特性(i):融点(Tm)
本開示のプロピレン単独重合体は、示差熱走査熱量測定(DSC)により測定される融点(Tm)が145℃以上149℃以下である。
プロピレン重合体の融点が高くなるほど耐熱性や剛性が向上する。また、融点が高くなりすぎないように制御することにより、溶媒への可溶性を高めることができる。
したがって、本開示のプロピレン単独重合体の融点は、149℃以下が好ましく、より好ましくは148℃以下、さらに好ましくは147.5℃以下である。
また、本開示のプロピレン単独重合体の融点は、145℃以上が好ましく、より好ましくは146℃以上、さらに好ましくは146.5℃以上である。
融点(Tm)は、異種結合量(立体規則性、位置規則性)、アイソタクチック連鎖長、により制御することができる。
本開示のプロピレン単独重合体の融点を得る為に、異種結合量(立体規則性、位置規則性)、アイソタクチック連鎖長が最適になる錯体を選定し、さらに、重合温度圧力の調整をすること等で融点を制御することができる。
【0020】
特性(ii)、特性(viii):融点(Tm)と結晶化温度(Tc)の関係
本開示のプロピレン単独重合体は、示差熱走査熱量測定(DSC)により測定される融点(Tm)と結晶化温度(Tc)に関して下記式(1)を満たす。
Tm-Tc≦0.907×Tm-99.64・・・式(1)
さらに、好ましくは、下記式(1)’を満たす。
Tm-Tc≦0.907×Tm-100.64・・・式(1)’
すなわち、本開示のプロピレン単独重合体は、示差熱走査熱量測定(DSC)により測定される融点(Tm)と結晶化温度(Tc)との差(過冷却度(Tm-Tc):単位℃)が、融点(Tm)見合いで小さいことを特徴とする。
融点(Tm)見合いで結晶化温度(Tc)が高いということは、同じ融点(Tm)のプロピレン重合体とくらべて結晶化しやすい、結晶化速度が速い、結晶が小さく密になるということを意味する。このように結晶化しやすいプロピレン重合体を用いた場合には、結晶サイズや量に起因する透明性、結晶量に起因する耐熱性、剛性が融点(Tm)見合いで高くなることを意味する。
そこで本開示のプロピレン単独重合体は、上記式(1)を満たす必要がある。過冷却度(Tm-Tc)が大きすぎると、上記の透明性や、耐熱性、剛性が融点(Tm)見合いで悪くなってしまう。
【0021】
また反対に、過冷却度(Tm-Tc)が小さすぎることは融点(Tm)見合いの結晶化が速すぎ、結晶生成の大きさや量が制御できず、目的の物性が出ない可能性がある。
そこで、本開示のプロピレン単独重合体は下記式(2)を満たすことが望ましい。
Tm-Tc≧0.907×Tm-103.64・・・式(2)
【0022】
[過冷却度(Tm-Tc)の制御]
融点(Tm)は異種結合量(立体規則性、位置規則性)、アイソタクチック連鎖長、により制御される。また通常のプロピレン単独重合体ではTcとTmとの間には一次的な相関がある。
一方、融点(Tm)見合いの結晶化温度(Tc)が高くなるということは、異種結合量(立体規則性、位置規則性)、アイソタクチック連鎖長以外の一次構造が寄与する。とくに分岐構造を持つ場合には分岐点が結晶化を促進すると考えられており、分岐が多いほど過冷却度が小さくなる。
したがって、本開示の重合体を得る為には、異種結合量(立体規則性、位置規則性)、アイソタクチック連鎖長および、分岐量が最適になる錯体を選定し、さらに、重合温度圧力の調整をすること等で過冷却度を制御することができる。
【0023】
[融点(Tm)、結晶化温度(Tc)の測定方法]
本開示において融点(Tm)は、セイコーインスツルメンツ社製DSC6200を使用し、シート状にしたサンプル片を5mgアルミパンに詰め、室温から一旦200℃まで昇温速度100℃/分で昇温し、5分間保持した後に、10℃/分で20℃まで降温して、結晶化させた時の結晶最大ピーク温度(℃)として、結晶化温度(Tc)を求め、その後、10℃/分で200℃まで昇温させた時の融解最大ピーク温度(℃)として求めることができる。
【0024】
特性(iii):アイソタクチックトライアッド分率(mm)が90%以上
本開示のプロピレン単独重合体は、立体規則性が高いことが好ましい。
本開示においてプロピレン単独重合体の立体規則性に制限はないが、13C-NMRにより算出されるプロピレン単位3連鎖のmm分率(アイソタクチックトライアッド分率)は、90%以上に達し、好ましくは93%以上であり、より好ましくは95%以上である。
プロピレン単独重合体のmm分率が高いほど、高度に制御されていることを意味する。
また、mm分率が上記値より小さいと、製品の弾性率が低下するなど機械的物性が低下してしまう。
【0025】
プロピレン単位3連鎖のmm分率は、13C-NMR測定により測定された13Cシグナルの積分強度を、下記式(3)に代入することにより求められる。
mm(%)=Imm×100/(Imm+3×Imrrm)・・・式(3)
ここでImmは、プロピレン単位3連鎖がmmの結合様式に帰属される13Cシグナルの積分強度を表し、化学シフトが23.6~21.1ppmの範囲の13Cシグナルの積分強度(以下「I23.6~21.1」のように記載する。)として算出する。
Imrrmは、プロピレン単位5連鎖がmrrmの結合様式に帰属される13Cシグナルの積分強度を表し、I19.8~19.7で示される値である。
プロピレン単位3連鎖のmm分率を求めるための13C-NMR測定は、後述する10mmφのクライオプローブを装着したブルカー・バイオスピン(株)のAV400型NMR装置を用いた方法で行うことができる。
スペクトルの帰属は、Polymer Jounral,16巻,717頁(1984),朝倉書店や、Macromolecules,8卷,687頁(1975年)や、Polymer,30巻 1350頁(1989年)を参考に行うことができる。
【0026】
特性(iv):異種結合量(2,1結合)が0.2mol%以下かつ、異種結合量(1,3結合)が0.2mol%以下
プロピレン単独重合体の位置規則性には制限はないが、13C-NMRにより算出される2,1結合が0.2mol%以下かつ1,3結合が0.2mol%以下となることが好ましい。
2,1結合が、より好ましくは0.15mol%以下、さらに好ましくは0.12mol%以下、特に好ましくは0.10mol%以下である。
1,3結合は、より好ましくは0.18mol%以下、さらに好ましくは0.16mol%以下、特に好ましくは0.15mol%以下である。
異種結合の量が少なくなることにより、他のプロピレン重合体や基材に混合または塗布した場合にその混合効率が上がったり、コーティングの効率が良くなったり、さらにコーティング剤として剥がれにくくなる。
また、プロピレンの規則性(立体/位置)が高くなりすぎないように制御することにより、溶媒への可溶性を高め、末端ビニルの反応性を高めることができる。
【0027】
異種結合量(モル濃度)は、13C-NMRスペクトルのシグナル強度を用い、以下の式から求める。
プロピレン2,1結合(mol%)
=I2,1-P×100/(I1,2-P+I2,1-P +I1,3-P )
プロピレン1,3結合(mol%)
=I1,3-P×100/(I1,2-P+I2,1-P +I1,3-P )
ここで、I1,2-P、I2,1-P、I1,3-Pはそれぞれ下記のように求める。
I1,2-P =I48.80~44.50
I2,1-P =(I35.72~35.63+I35.83~35.77)/2
I1,3-P =I37.41-37.21/2
【0028】
特性(v):GPCで測定する数平均分子量(Mn)が5万以下
本開示のプロピレン単独重合体は、数平均分子量(Mn)が、5万以下であることが好ましく、より好ましくは4.5万以下であり、さらに好ましくは4万以下である。
上記範囲であると、末端ビニル基の変性をおこなう官能化の反応効率が良い。
また、単位質量あたりの末端ビニル基の量が増えるために変性によって官能基の量が十分な量導入できる。
さらに、溶媒への溶解性が高まる。
一方、数平均分子量(Mn)は、好ましくは1万以上であり、より好ましくは1.5万以上であり、さらに好ましくは2万以上である。
上記範囲であると、単独重合体の規則性(立体/位置)の特性に由来する2次構造がとりやすく、結晶性(融点および結晶化温度)を発現できる。
このプロピレン単独重合体の数平均分子量(Mn)は、重合用触媒成分として停止反応であるβメチル脱離反応速度が速い特殊な構造の錯体を選ぶことによって、制御が可能である。そのような錯体構造としては、後述する2位に嵩高い複素環基を有し、4位に置換されてもよいアリール基等を有するビスインデン錯体を挙げることができる。
また、この脱離反応速度は重合温度や、プロピレンの濃度、圧力を変えることによっても制御することができる。例えば、実施例に示す錯体では、重合温度が高くなる程、数平均分子量(Mn)を小さくすることができる。
【0029】
ここで、数平均分子量(Mn)の値は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって得られるものであり、その測定法、測定機器の詳細は、以下の通りである。
装置:Waters社製GPC(ALC/GPC、150C)
検出器:FOXBORO社製MIRAN、1A、IR検出器(測定波長:3.42μm)
カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本)
移動相溶媒:o-ジクロロベンゼン(ODCB)
測定温度:140℃
流速:1.0mL/分
注入量:0.2mL
試料の調製は、試料と、ODCB(0.5mg/mLのジブチルヒドロキシトルエン(BHT)を含む)を用いて、1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して、溶解させて行う。
なお、得られたクロマトグラムのベースラインと区間は、図1のように行う。
また、GPC測定で得られた保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。使用する標準ポリスチレンは、何れも東ソー社製の以下の銘柄である。
銘柄:F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000
各々が0.5mg/mLとなるように、ODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して、較正曲線を作成する。較正曲線は、最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。
分子量への換算に使用する粘度式:[η]=K×Mαは、以下の数値を用いる。
PS:K=1.38×10-4、α=0.7
PP:K=1.03×10-4、α=0.78
【0030】
本開示のプロピレン単独重合体のGPC測定による重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnは、2.0以上、4.0以下の範囲であることが好ましい。
Mw/Mnが4.0以下であると、必要としない低分子量成分の量を減少させられ、満足する物性のものが得られる。
また、Mw/Mnが2.0以上であると、所望の量の高分子量成分が得られ、結晶構造由来の物性と反応性に由来する機能性のバランスが良くなる。
また、Mw/Mnは、より好ましくは2.3以上、3.9以下であり、さらに好ましくは2.6以上、3.8以下である。
【0031】
特性(vi):13C-NMRで測定する末端ビニル率が0.7以上
本開示のプロピレン単独重合体は、末端ビニル率が0.7以上であることが好ましい。
本開示において末端ビニル率とは、プロピレン単独重合体の全ポリマー鎖のうち末端にビニル基を持つ鎖の割合を意味し、下式により計算される。
(末端ビニル率)={[Vi]/((総末端数)-LCB数)}×2
(ただし、[Vi]は、H-NMRにより算出される1000モノマーユニット当りの末端ビニル基の数である。総末端数は、13C-NMRにより算出される1000モノマーユニット当りの末端の総数である。LCB数は、13C-NMRにより算出される1000モノマーユニット当りの炭素数7以上の分岐鎖の根元のメチン炭素の数である。)
本開示のプロピレン単独重合体は、末端ビニル率が0.7以上であることが好ましく、より好ましくは0.75以上である。さらに好ましくは0.8以上であり、理想的には1.0(すべてのポリマー鎖が末端にビニル基を有する)である。
【0032】
[反応機構と末端構造との関係]
本開示において、末端ビニル率が0.7以上のプロピレン単独重合体を得るに際し、反応機構と得られる末端構造との関係は以下の通りである。
プロピレンの重合においては、一般的にβ水素脱離が起こり、下記構造式(1-b)に示すビニリデン構造(プロピル-ビニリデン構造)の末端が生成する。
また、水素を用いた場合には、通常、水素へ連鎖移動が優先的に起こり下記構造式(1-c)に示すi-ブチル構造の末端が生成する。
しかしながら、特殊な構造の錯体を重合触媒に用いた場合には、βメチル脱離と一般に呼ばれる特殊な連鎖移動反応が起こり、下記構造式(1-a)に示すビニル構造(1-プロペニル構造)の末端が生成する(参照文献:Macromol.Rapid Commun.2000,21,1103-1107)。
また、プロピレンの重合においては、反応機構上、次のような末端構造が生成する。プロピレン挿入し、β水素脱離を起した後に、さらにγ位から水素を引き抜くことでできるπアリル中間体を経て、下記構造式(1-d)に示すi-ブテニル構造の末端が生成する。
また、プロピレンは不規則な2,1挿入を起こすことがあるが、このような不規則結合を起こした後に、水素へ連鎖移動したり、β水素脱離を起こしたり、πアリル中間体を経て水素脱離したりすると、下記構造式(1-e)に示すn-ブチル構造、下記構造式(1-f)に示す1-ブテニル構造、下記構造式(1-g)に示す末端ビニレン構造(2-ブテニル構造)の末端が生成する。ここで、1-ブテニル構造(構造式(1-f))は、本開示の末端ビニル基に含めるものとする。
【0033】
開始末端は、必ず飽和炭化水素末端であり、両末端に不飽和結合が現れることはない。
このことは、本開示のプロピレン単独重合体の変性を行う場合には、片側の末端のみが変性されることを意味する。これに対して、例えば、プロピレン重合体を熱分解して得られる末端不飽和結合を有する重合体は、両末端がビニリデン(Vd)基となる可能性があり、これから不飽和結合を変性した場合には両末端が変性される可能性があり、本開示のプロピレン単独重合体とは形態が異なってしまう。
【0034】
したがって、末端ビニル率を高めるためには、構造式(1-b)~(1-e)、(1-g)、(1-h)を生じる反応を抑制し、構造式(1-a)、(1-f)を生じる反応を促進させるような、重合条件が好ましい。
重合条件のうち、触媒に関しては、後述する、ビスインデニルハフニウム錯体の構造を有し、配位子であるインデン環の2位に特定の置換基を有する5員複素環、および、同インデン環の4位に特定の置換基を有するアリール基が置換したメタロセン化合物を含むオレフィン重合用触媒を用いることにより、構造式(1-a)を生じる連鎖移動反応を促進させることができる。
また、このようなメタロセン化合物を含むオレフィン重合用触媒を用いた場合には、水素を用いた場合にも、驚くべきことに、活性は増大するものの優先的にβメチル脱離反応が起こり、ビニル構造(1-プロペニル構造):構造式(1-a)が主に生成する。また、この選択率は、重合温度を変えることによっても制御することができる。例えば、実施例に示すメタロセン化合物を含むオレフィン重合用触媒では、重合温度が高くなる程、末端ビニル率を高くすることができる。
【0035】
【化1】
【0036】
また、本開示においては、プロピレンの重合において、反応機構上、ポリマー鎖内部に規則的なモノマーユニットに加えて、次のような内部オレフィンが生成しポリマーを構成するモノマーユニットとなることがある。
プロピレン挿入し、β水素脱離を起した後に、さらにγ位から水素を引き抜くことでできるπアリル中間体を経て、さらにプロピレンが挿入することにより構造式(1-m)に示す内部ビニリデン構造が生成しうる。
プロピレンが不規則な2,1挿入を起こしβ水素脱離を起した後に、πアリル中間体を経てさらにプロピレンが挿入することにより構造式(1-n)に示す内部3置換オレフィン構造が生成しうる。
プロピレン挿入し、βメチル脱離を起した後に、さらにγ位から水素を引き抜くことでできるπアリル中間体を経て、さらにプロピレンが挿入することにより構造式(1-o)に示す内部ビニレン構造が生成しうる。
【0037】
【化2】
【0038】
[末端ビニル率を特定する方法]
以下に説明する方法で、H-NMRおよび13C-NMRを実施し、末端ビニル率を特定することができる。
[試料調製と測定条件]
試料200mgをo-ジクロロベンゼン/重水素化臭化ベンゼン(CBr)=4/1(体積比)2.4mlおよび化学シフトの基準物質であるヘキサメチルジシロキサンと共に内径10mmφのNMR試料管に入れ、150℃のブロックヒーターで均一に溶解する。
NMR測定は10mmφのクライオプローブを装着したブルカー・バイオスピン(株)のAV400型NMR装置を用いて行う。
不飽和末端の定量には、H-NMRを用いる。H-NMRの測定条件は試料の温度120℃、パルス角4.5°、パルス間隔2秒、積算回数512回として測定をする。
化学シフトはヘキサメチルジシロキサンのプロトンシグナルを0.09ppmに設定し、他のプロトンによるシグナルの化学シフトはこれを基準とする。
飽和末端の定量には、13C-NMRを用いる。13C-NMRの測定条件は試料の温度120℃、パルス角を90°、パルス間隔を15秒、積算回数を1024回、ブロードバンドデカップリング法で測定を実施する。
化学シフトはヘキサメチルジシロキサンの13Cシグナルを1.98ppmに設定し、他の13Cによるシグナルの化学シフトはこれを基準とする。
【0039】
[不飽和末端の数の算出方法]
H-NMRでは、構造式(1-a)1-プロペニルと、構造式(1-f)1-ブテニルの不飽和結合のプロトンシグナルは、H-NMRスペクトルの5.08~4.85ppmと5.86~5.69ppmのシグナルに重なって検出される。そこで、末端ビニル基の数[Vi]は、1-プロペニルと1-ブテニルを合わせた数として、トータル1000モノマーあたりの不飽和結合量として、H-NMRスペクトルのシグナル強度を用い、以下の式から求める。
構造式(1-a)+構造式(1-f): [Vi]=Ivi×1000/Itotal
【0040】
また、末端ビニリデン基の数[Vd]は、プロピル-ビニリデンの数として、トータル1000モノマーあたりの不飽和結合量として、H-NMRスペクトルのシグナル強度を用い、以下の式から求める。
構造式(1-b): [Vd]=Ivd×1000/Itotal
同様にして、i-ブテニル基の数[i-ブテニル]、ビニレン末端の数[末端ビニレン]、内部ビニリデンの数[内部ビニリデン]は以下の式から求められる。
構造式(1-d): [i-ブテニル]=Iibu×1000/Itotal
構造式(1-g): [末端ビニレン]=Ivnl×1000/Itotal
構造式(1-m): [内部ビニリデン]=Iivd×1000/Itotal
【0041】
ここで、Ivi、Ivd、Iibu、Ivnl、Iivdは、それぞれ、構造式(1-a)+構造式(1-f)、構造式(1-b)、構造式(1-d)、構造式(1-g)、構造式(1-m)に基づくシグナルの特性値を表し、以下の式で示される量である。
Ivi=(I5.08~4.85+I5.86~5.69)/3、
Ivd=(I4.79~4.65)/2、
Iibu=I5.30~5.08
Ivnl =(I5.58~5.30)/2、
Iivd=(I4.85~4.79)/2
【0042】
Iは積分強度を、Iの下つき添字の数値は化学シフトの範囲を示す。例えばI5.08~4.85は5.08ppmと4.85ppmの間に検出したシグナルの積分強度を示す。
また、Itotalは、以下の式で示される量である。
Itotal=IC3+Ivi+Ivd+Iibu+Ivnl+Iivd
IC3はプロピレンに基づくシグナルの特性値を表し、以下の式で示される量である。
IC3 = 1/6×Imain
ImainとはH-NMRスペクトルの4.00~0.00pmに検出されるポリマー主鎖と飽和末端のプロトンシグナルの総和である。
【0043】
[飽和末端の数の算出方法]
下記の飽和末端の数は、1000モノマーあたりの数として、13C-NMRスペクトルのシグナル強度を用い、以下の式から求める。
構造式(1-c): [i-ブチル]=Ii-butyl×1000/Itotal-C
構造式(1-e): [n-ブチル]=Inbu×1000/Itotal-C
構造式(1-h): [n-プロピル]=Inpr×1000/Itotal-C
構造式(1-i): [2,3-ジメチルブチル]=I2,3-dime×1000/Itotal-C
構造式(1-j): [3,4-ジメチルペンチル]=I3,4-dime×1000/Itotal-C
【0044】
更に、本開示のプロピレン単独重合体には、重合体内部にプロピレンの規則的な1,2挿入に基づく構造の他に、プロピレンの不規則な挿入に基づく下記の2,1結合、1,3結合をもちうる。
【0045】
【化3】
【0046】
ここで、Ii-butyl、Inbu、Inpr、I2,3-dime、I3,4-dimeはそれぞれ、構造式(1-c)、構造式(1-e)、構造式(1-h)、構造式(1-i)、構造式(1-j)に基づくシグナルの特性値を表し、以下の式で示される量である。
Ii-butyl =(I23.80~23.70+I25.80~25.70)/2
Inbu =I14.06~14.02
Inpr =(I14.44~14.42+I30.46~30.45)/2
I2,3-dime =(I16.21~16.17+I31.86~31.81)/2
I3,4-dime =I12.0~11.60
【0047】
また、Itotal-Cは、以下の式で示される量である。
Itotal-C=Ii-butyl+Inbu+Inpr+I2,3-dime+I3,4-dime+I1,2-P+I2,1-P+I1,3-P
I1,2-Pは、1,2挿入したプロピレンの結合に基づくシグナルの特性値、I2,1-Pは、2,1挿入したプロピレンの結合に基づくシグナルの特性値、I1,3-Pは、1,3挿入したプロピレンの結合に基づくシグナルの特性値を表し、以下の式で示される量である。
I1,2-P =I48.80~44.50
I2,1-P =(I35.72~35.63+I35.83~35.77)/2
I1,3-P =I37.41-37.21/2
【0048】
[総末端数の算出方法]
総末端数は、13C-NMRおよびH-NMRそれぞれで算出される1000モノマーユニット当りの末端の総数であり、具体的には、1000モノマーユニット当りの構造式(1-a)~構造式(1-j)までの末端の個数の総和である。
【0049】
特性(vii):長鎖分岐数が0.1個/1000モノマー以上
本開示のプロピレン単独重合体には、下記の構造式(A)で示される長鎖分岐(LCB)構造部分を持ち得る。
【0050】
【化4】
【0051】
[但し、構造式(A)中、P、P、Pはプロピレン重合体残基であり、それぞれ1つ以上のプロピレンユニットを有し、Cbrは、炭素数7以上の分岐鎖の根元のメチン炭素を示し、C、C、Cは、該メチン炭素(Cbr)に隣接するメチレン炭素を示す。]
構造式(A)において、プロピレン重合体の主鎖は、P-Cbr-Pのライン、P-Cbr-Pのライン又はP-Cbr-Pのラインの3通りが存在する。したがって、それぞれに対応して、Cbr-Pのライン、Cbr-Pのライン又はCbr-Pのラインが上記分岐鎖になり得る。P、P、Pは、それ自体の中に、構造式(A)に記載されたCbrとは、別の分岐炭素(Cbr)を含有することもあり得る。
ここでLCB構造の帰属は、プロピレン重合体の13C-NMRにより、44.1~43.9ppm、44.7~44.5ppm及び44.9~44.7ppmに3つのメチレン炭素(C、C、C)が観測され、31.7~31.5ppmにメチン炭素(Cbr)として観測されるものである。Cbrに近接する3つのメチレン炭素が、ジアステレオトピックに非等価に3本に分かれて観測されることが特徴である。
また、LCB数とは、13C-NMRにより算出される1000モノマーユニット当たりの炭素数7以上の分岐鎖の根元のメチン炭素(Cbr)の数である。
炭素数が6より多い分岐鎖と炭素数が6以下の分岐鎖とは、分岐の根本のメチン炭素のピーク位置が異なることにより区別できる(Macromol.chem.phys.2003年、Vol.204、1738頁参照。)。
本開示において、LCB数は、特に限定されないが、通常0.1個/1000モノマー以上、0.5個/1000モノマー以下であることが好ましい。
【0052】
2.プロピレン単独重合体の製造
本開示のプロピレン単独重合体は、例えば、下記の成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含むオレフィン重合用触媒を用いて、プロピレンを単独重合することにより製造することができる。
成分(A):下記の一般式(1)で表されるメタロセン化合物
【0053】
【化5】
【0054】
[R11及びR12は、独立して、ヘテロ原子を有してもよい炭素数3以上の炭化水素基を置換基として少なくとも一つ有する5員環を構成する複素環基(但し、5員環を構成する複素環基のヘテロ原子は直接アルカジエニル基と結合しない)を表す。
13及びR14は、独立して、4位にのみ置換基を有するアリール基であって、当該置換基が、ヘテロ原子及びハロゲン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を含有してもよい炭素数3~6の炭化水素基である。
11及びY11は、独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のケイ素含有炭化水素基、炭素数1~20のハロゲン化炭化水素基、炭素数1~20の酸素含有炭化水素基、アミノ基、又は、炭素数1~20の窒素含有炭化水素基を表す。
11は、炭素数1~20の二価の炭化水素基、炭素数1~20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基、又は、炭素数1~20の炭化水素基を有していてもよいゲルミレン基を表す。
ただし、5員環を構成する複素環基の置換基と、アリール基の置換基とは同一ではなく、当該複素環基の置換基のうち、炭素原子とヘテロ原子との合計数が最も大きい置換基の当該合計数が、当該アリール基の置換基が有する炭素原子とヘテロ原子との合計数よりも大きい。]
成分(B):成分(A)と反応してイオン対を形成する化合物又はイオン交換性層状珪酸塩
成分(C):有機アルミニウム化合物
【0055】
[オレフィン重合用触媒]
(1)成分(A)
成分(A)は、上記一般式(1)で表されるメタロセン化合物である。
一般式(1)においてR11およびR12は、独立して、ヘテロ原子を有してもよい炭素数3以上の炭化水素基を置換基として有する5員環を構成する複素環基である。但し、5員環を構成する複素環基のヘテロ原子は、直接アルカジエニル基と結合しない。
11およびR12は、複素環基上に適当な大きさの置換基を導入することにより、挿入されるプロピレンの向きが規則的に制御される。更に、この置換基により成長ポリマー鎖のβ位のメチル基が遷移金属上の空配位場へ向きやすくなるため、βメチル脱離反応が進行しやすくなり、末端ビニル基を高選択的に導入したプロピレン重合体を得ることができる。
【0056】
11およびR12は、互いに同一であることが好ましい。
また、R11およびR12は、5員環を構成する複素環基のヘテロ原子の隣の炭素が、一般式(1)中のアルカジエニル基と結合することが好ましい。
炭化水素基の炭素数は3以上であればよく、7以下であることが好ましく、より好ましくは6以下、更に好ましくは5以下、特に好ましくは4である。
また、ヘテロ原子としては、ケイ素、酸素、硫黄、窒素、ホウ素、リンなどが挙げられ、これらは炭素鎖内に存在して炭素-炭素結合の間に介在していてもよい。
また、R11及びR12は、独立して、5位にのみ置換基を有する5員環を構成する複素環基であって、当該置換基が、ヘテロ原子を有してもよい炭素数3以上の炭化水素基である(但し、5員環を構成する複素環基のヘテロ原子は直接アルカジエニル基と結合しない)ことが好ましい。
複素環基の置換基としての炭素数3以上の炭化水素基は、アルキル、シクロアルキル、芳香族炭化水素基のいずれであってもよいが、3級炭化水素基であることが好ましい。
【0057】
11およびR12の好ましい構造として、下記の一般式(2-1)、(2-2)又は(2-3)のいずれかで表される複素5員環の構造が挙げられる。
【0058】
【化6】
【0059】
[R21およびR22は、独立して、水素原子またはヘテロ原子を有してもよい炭素数3以上の炭化水素基であり、R21およびR22の少なくとも一方はヘテロ原子を有してもよい炭素数3以上の炭化水素基を表す。但し炭化水素基のヘテロ原子は直接5員環を構成する複素環基と結合しない。また、R21とR22とは結合して環を形成しない。]
【0060】
21とR22の好ましい例としては、R21がi-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、フェニル基、フリル基であり、特に好ましくはt-ブチルであり、R22が水素原子であることが好ましい。
【0061】
一般式(1)においてR13及びR14は、独立して、4位にのみ置換基を有するアリール基であって、当該置換基が、ヘテロ原子及びハロゲン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を含有してもよい炭素数3~6の炭化水素基である。
13およびR14は、互いに同一であることが好ましい。
アリール基としては、フェニル基であることが好ましい。
ヘテロ原子としては、ケイ素、酸素、硫黄、窒素、ホウ素、リンなどが挙げられる。
また、炭化水素基がヘテロ原子を含有する場合、当該ヘテロ原子は炭素鎖内に存在して炭素-炭素結合の間に介在していてもよい。
ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子のいずれであってもよい。
炭化水素基の炭素数は3以上6以下であればよく、5以下であることが好ましく、より好ましくは4以下、更に好ましくは3である。
アリール基の置換基としての炭素数3~6の炭化水素基は、アルキル、シクロアルキル、芳香族炭化水素基のいずれであってもよいが、2級炭化水素基であることが好ましい。
【0062】
13およびR14の好ましい構造として、下記一般式(3)で表されるフェニル基上の4位に置換基を有する構造が挙げられる。
4-R31-Ph- ・・・一般式(3)
[R31は、ヘテロ原子及びハロゲン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を含有してもよい炭素数3~6の炭化水素基である。ただし、R31は、R21、R22とは異なる。]
31の好ましい例としては、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、トリメチルシリル、n-ペンチル、n-ヘキシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、フェニル基、フリル基であり、特に好ましくはi-プロピルである。
【0063】
本開示においては、5員環を構成する複素環基の置換基と、アリール基の置換基とは同一ではなく、当該複素環基の置換基のうち、炭素原子とヘテロ原子との合計数が最も大きい置換基の当該合計数が、当該アリール基の置換基が有する炭素原子とヘテロ原子との合計数よりも大きい。
すなわち、複素環基(R11およびR12)上に同一でない複数の置換基が存在する場合(例えば、複素環基上の4位及び5位に互いに構造の異なる置換基を有する場合)、各置換基が有する炭素原子とヘテロ原子との合計数が最大の置換基が有する炭素原子とヘテロ原子との合計数と、アリール基上の置換基が有する炭素原子とヘテロ原子との合計数とを比較したときに、複素環基上の炭素原子とヘテロ原子との合計数が最大の置換基が有する当該合計数の方が、アリール基上の置換基が有する炭素原子とヘテロ原子との合計数よりも大きい。
なお、複素環基上に置換基が1つのみ存在する場合は、当該置換基が、上記合計数が最大の置換基である。また、複素環基の置換基及びアリール基の置換基がヘテロ原子を有しない場合があってもよく、ヘテロ原子を有しない場合は、当該ヘテロ原子数は0個とする。さらに、アリール基の置換基が炭素原子を有しない場合があってもよく、炭素原子を有しない場合は、当該炭素原子数は0個とする。
好ましい具体例としては、複素環基であるR11およびR12上の置換基がt-ブチル基(炭素原子4個とヘテロ原子0個で合計数が4)であり、アリール基であるR13およびR14上の4-位の置換基がi-プロピル基(炭素原子3個とヘテロ原子0個で合計数が3)である。
【0064】
上記のメタロセン化合物によれば、本開示のプロピレン単独重合体を高活性に製造することができる。
高活性が得られる理由は必ずしも明確ではないが、アリール基であるR13およびR14上に、炭素数3以上の置換基を導入することにより、遷移金属の電子密度が変化することで、プロピレンへの挿入反応速度が大きくなり、成長速度が増大すると考えられる。
また、活性増大の他の作用として、アリール基上の置換基は、その嵩高さにより成長ポリマー鎖を、一般式(1)中の遷移金属上の1つのインデン環配位子の6員環部分を避けるようにし向ける。その結果、次に挿入されるプロピレンの向きは、この6員環部分を避けるように向いた成長ポリマー鎖と、更に複素環基であるR11およびR12の両方で制御され、位置および立体規則的にプロピレン挿入が行われる。
この時、複素環基であるR11およびR12は、同時に成長ポリマー鎖のβ位のメチル基の向きを制御する効果によりβ位のメチル基脱離反応が増大することで末端ビニル基を効率的に生成させ、アリール基であるR13およびR14上の置換基と、複素環基であるR11およびR12上の置換基との組み合わせによる立体及び位置規則性の制御の両方を行っている。
最終的には、各々の置換基の組み合わせ効果により、成長反応速度とβメチル脱離反応速度の両方が制御されることで、特定の長さのポリマー鎖、すなわち特定の分子量の重合体がつくられる。
したがって本開示では、複素環基であるR11およびR12上の置換基と、アリール基であるR13およびR14上の置換基を、特定の置換基の組み合わせとすることで、成長反応とβメチル脱離による停止反応のバランスをとることにより、特定の分子量のプロピレン単独重合体を高規則性かつ高活性で得ることができる。
【0065】
上記X11およびY11は、それぞれ独立して、Hfとσ結合を形成する配位子であり、成分(B)および成分(C)とともにオレフィン重合能を有する活性なメタロセンを生成させる。
したがって、この目的が達成される限りX11及びY11は、配位子の種類が制限されるものではない。
11及びY11は、独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のケイ素含有炭化水素基、炭素数1~20のハロゲン化炭化水素基、炭素数1~20の酸素含有炭化水素基、アミノ基または炭素数1~20の窒素含有炭化水素基を挙げることができ、メタロセン化合物の安定性の点から、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基が好ましく、塩素、臭素、メチル基、エチル基、イソプロピル基、フェニル基が特に好ましい。
【0066】
上記Q11は、二つの五員環を結合する、2価のハロゲンを含有していてもよい炭素数1~20の二価の炭化水素基、炭素数1~20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基またはゲルミレン基を表す。
上述のシリレン基、またはゲルミレン基上に2個の炭化水素基が存在する場合は、それらが互いに結合して環構造を形成していてもよい。
上記Q11の具体例としては、メチレン、メチルメチレン、ジメチルメチレン、1,2-エチレン等のアルキレン基;
ジフェニルメチレン等のアリールアルキレン基;
シリレン基;
メチルシリレン、ジメチルシリレン、ジエチルシリレン、ジ(n-プロピル)シリレン、ジ(i-プロピル)シリレン、ジ(シクロヘキシル)シリレン等のアルキルシリレン基;
メチル(フェニル)シリレン等の(アルキル)(アリール)シリレン基;
ジフェニルシリレン等のアリールシリレン基;
テトラメチルジシリレン等のアルキルオリゴシリレン基;
ゲルミレン基;
上記の2価の炭素数1~20の炭化水素基を有するシリレン基のケイ素をゲルマニウムに置換したアルキルゲルミレン基;
(アルキル)(アリール)ゲルミレン基;
アリールゲルミレン基などを挙げることができる。
これらの中では、炭素数1~20の炭化水素基を有するシリレン基、または、炭素数1~20の炭化水素基を有するゲルミレン基が好ましく、アルキルシリレン基、アルキルゲルミレン基が特に好ましい。
【0067】
上記一般式(1)で表される化合物のうち好ましいものとしては、以下の化合物を例示できる。
(1)ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-t-ブチル-2-フリル)-4-(4-イソプロピル-フェニル)-インデニル}]ハフニウム
(2)ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-フェニル-2-フリル)-4-(4-イソプロピル-フェニル)-インデニル}]ハフニウム
(3)ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-t-ブチル-4-メチル-2-フリル)-4-(4-イソプロピル-フェニル)-インデニル}]ハフニウム
【0068】
(2)成分(B)
成分(B)は、成分(A)と反応してイオン対を形成する化合物又はイオン交換性層状珪酸塩である。
成分(B)は単独でもよいし、二種以上を用いてもよい。好ましくイオン交換性層状珪酸塩である。
【0069】
(2-1)成分(A)とイオン対を形成する化合物
成分(A)と反応してイオン対を形成する化合物としては、アルミニウムオキシ化合物、ホウ素化合物などを挙げることができ、アルミニウムオキシ化合物としては、具体的には次の一般式(I)~(III)で表される化合物が挙げられる。
【0070】
【化7】
【0071】
上記の一般式(I)、(II)において、Rは、水素原子又は炭化水素基、好ましくは炭素数1~10の炭化水素基、特に好ましくは炭素数1~6の炭化水素基を示す。また、複数のRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。また、pは0~40、好ましくは2~30の整数を示す。
一般式(I)、(II)で表される化合物は、アルミノキサンとも称される化合物であって、これらの中では、メチルアルミノキサン又はメチルイソブチルアルミノキサンが好ましい。上記のアルミノキサンは、各群内及び各群間で複数種併用することも可能である。そして、上記のアルミノキサンは、公知の様々な条件下に調製することができる。
一般式(III)中、Rは、炭素数1~10、好ましくは炭素数1~6の炭化水素基を示す。一般式(III)で表される化合物は、一種類のトリアルキルアルミニウム又は二種類以上のトリアルキルアルミニウムと、一般式RB(OH)で表されるアルキルボロン酸との10:1~1:1(モル比)の反応により得ることができる。
ホウ素化合物としては、カルボニウムカチオン、アンモニウムカチオンなどの陽イオンと、トリフェニルホウ素、トリス(3,5-ジフルオロフェニル)ホウ素、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素などの有機ホウ素化合物との錯化物、又は種々の有機ホウ素化合物、例えばトリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素などを挙げることができる。
【0072】
(2-2)イオン交換性層状珪酸塩
イオン交換性層状珪酸塩(以下、単に珪酸塩と略記することもある)とは、イオン結合などによって構成される層が互いに結合力で平行に積み重なった結晶構造を有し、層間に層間イオンを有し、且つ、含有される層間イオンが交換可能である珪酸塩化合物をいう。
大部分の珪酸塩は、天然には主に粘土鉱物の主成分として産出される。水中に分散/膨潤させ、沈降速度等の違いにより精製することが一般的であるが、夾雑物が完全に除去されていることは要せず、イオン交換性層状珪酸塩以外の夾雑物(石英、クリストバライト等)を含んでもよい。それら夾雑物の種類、量、粒子径、結晶性、分散状態によっては純粋な珪酸塩以上に好ましいことがあり、そのような複合体も、成分(B)のイオン交換性層状珪酸塩に含まれる。
また、本開示で使用する珪酸塩は、天然産のものに限らず、人工合成物であってもよい。
【0073】
イオン交換性層状珪酸塩の具体例としては、例えば、白水春雄著「粘土鉱物学」朝倉書店(1988年)等に記載される1:1型構造や2:1型構造をもつ層状珪酸塩が挙げられる。
1:1型構造とは、前記「粘土鉱物学」等に記載されているような1層の四面体シートと1層の八面体シートが組み合わさった積み重なりを基本とする構造を示す。
2:1型構造とは、2層の四面体シートが1層の八面体シートを挟み込んだ積み重なりを基本とする構造を示す。
1:1型構造を持つイオン交換性層状珪酸塩の具体例としては、ディッカイト、ナクライト、カオリナイト、メタハロイサイト、ハロイサイト等のカオリン族珪酸塩、クリソタイル、リザルダイト、アンチゴライト等の蛇紋石族珪酸塩等が挙げられる。
2:1型構造を持つイオン交換性層状珪酸塩の具体例としては、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト等のスメクタイト族珪酸塩、バーミキュライト等のバーミキュライト族珪酸塩、雲母、イライト、セリサイト、海緑石等の雲母族珪酸塩、アタパルジャイト、セピオライト、パリゴルスカイト、ベントナイト、パイロフィライト、タルク、緑泥石群等が挙げられる。これらは混合層を形成していてもよい。
これらの中では、主成分が2:1型構造を持つイオン交換性層状珪酸塩であるものが好ましい。より好ましくは、主成分がスメクタイト族珪酸塩であり、さらに好ましくは、主成分がモンモリロナイトである。
層間カチオン(イオン交換性層状珪酸塩の層間に含有される陽イオン)の種類としては、特に限定されないが、主成分として、リチウム、ナトリウム等の周期表第1族のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等の周期表第2族のアルカリ土類金属、あるいは鉄、コバルト、銅、ニッケル、亜鉛、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、イリジウム、白金、金等の遷移金属などが、比較的容易に入手可能である点で好ましい。
【0074】
(2-3)イオン交換性層状珪酸塩の処理
前記イオン交換性層状珪酸塩は、乾燥状態で用いてもよく、液体にスラリー化した状態で用いてもよい。
また、イオン交換性層状珪酸塩の形状については、特に制限はなく、天然に産出する形状、人工的に合成した時点の形状でもよいし、また、粉砕、造粒、分級などの操作によって形状を加工したイオン交換性層状珪酸塩を用いてもよい。
このうち造粒されたイオン交換性層状珪酸塩を用いると、該イオン交換性層状珪酸塩を触媒成分として用いた場合に、良好なポリマー粒子性状を与えるため特に好ましい。
イオン交換性層状珪酸塩の処理方法は、特開2009-299046の段落0042~0071の記載を参照することができる。
【0075】
本開示に好ましく用いられる成分(B)は、化学処理されたイオン交換性層状珪酸塩であり、Al/Siの原子比として、0.01~0.25、好ましくは0.03~0.24のもの、さらには0.05~0.23の範囲のものがよい。Al/Si原子比は、粘土部分の酸処理強度の指標となるものとみられる。
イオン交換性層状珪酸塩中のアルミニウム及びケイ素は、JIS法による化学分析による方法で検量線を作成し、蛍光X線で定量するという方法で測定される。
【0076】
(3)成分(C)
本開示に用いられる成分(C)は、有機アルミニウム化合物であり、好ましくは、下記一般式(4)で表される有機アルミニウム化合物が使用される。
(AlR3-n ・・・一般式(4)
[上記一般式(4)中、Rは、炭素数1~20のアルキル基を表し、Xは、ハロゲン、水素、アルコキシ基又はアミノ基を表し、nは1~3の、mは1~2の整数を各々表す。]
有機アルミニウム化合物は、単独であるいは複数種を組み合わせて使用することができる。
有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリノルマルプロピルアルミニウム、トリノルマルブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルヘキシルアルミニウム、トリノルマルオクチルアルミニウム、トリノルマルデシルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムセスキクロライド、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムジメチルアミド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムクロライド等が挙げられる。これらのうち、好ましくは、m=1、n=3のトリアルキルアルミニウム及びアルキルアルミニウムヒドリドである。さらに好ましくは、Rが炭素数1~8であるトリアルキルアルミニウムである。
【0077】
(4)触媒の調製
本開示に好ましく用いられるオレフィン重合用触媒は、上記成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含む。これらは、重合槽内または重合槽外で接触させて得ることができる。オレフィン重合用触媒はオレフィンの存在下で予備重合を行ってもよい。
成分(A)、成分(B)及び成分(C)の使用量は任意である。
例えば、成分(B)に対する成分(A)の使用量は、成分(B)1gに対し、好ましくは0.1μmol~1000μmol、より好ましくは0.5μmol~500μmolの範囲である。
また、成分(A)に対する成分(C)の使用量は、成分(A)の遷移金属に対する成分(C)のアルミニウムのモル比で、好ましくは0.01~5×10、より好ましくは0.1~1×10の範囲である。
前記成分(A)、成分(B)及び成分(C)を接触させる順番は、任意であり、これらのうち2つの成分を接触させた後に残りの1成分を接触させてもよいし、3つの成分を同時に接触させてもよい。これらの接触において、接触を充分に行うため、溶媒を用いてもよい。溶媒としては、脂肪族飽和炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族不飽和炭化水素やこれらのハロゲン化物、また予備重合モノマーなどが例示される。脂肪族飽和炭化水素、芳香族炭化水素の例として、具体的にはヘキサン、ヘプタン、トルエン等が挙げられる。また、予備重合モノマーとしては、プロピレンを溶媒として用いることができる。
【0078】
(5)予備重合
オレフィン重合用触媒は、オレフィンを接触させて少量重合されることからなる予備重合に付されることが好ましい。予備重合により触媒活性を向上させることができ、製造コストを抑えることができる。
使用するオレフィンは、特に限定はないが、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、ビニルシクロアルカン、スチレン等を例示することができ、好ましくはプロピレンである。
オレフィンのフィード方法は、オレフィンを予備重合槽に定速的にあるいは定圧状態になるように維持するフィード方法やその組み合わせ、段階的な変化をさせる等、任意の方法が可能である。
予備重合温度、予備重合時間は、特に限定されないが、各々-20℃~100℃、5分~24時間の範囲であることが好ましい。
また、予備重合量は、成分(B)に対する予備重合ポリマーの質量比が好ましくは0.01~100、さらに好ましくは0.1~50である。
また、予備重合時に成分(C)を追加することもできる。
上記各成分の接触の際もしくは接触の後に、ポリエチレン、ポリプロピレン等の重合体、シリカ、チタニア等の無機酸化物の固体を共存させる等の方法も可能である。
予備重合後に触媒を乾燥してもよい。乾燥方法には、特に制限は無いが、減圧乾燥や加熱乾燥、乾燥ガスを流通させることによる乾燥などが例示され、これらの方法を単独で用いても良いし、2つ以上の方法を組み合わせて用いてもよい。乾燥工程において触媒を攪拌、振動、流動させてもよいし静置させてもよい。
【0079】
[重合方法]
本開示においては、前記オレフィン重合用触媒と前記モノマーが効率よく接触するならば、あらゆる様式を採用しうる。具体的には、不活性溶媒を用いるスラリー法、不活性溶媒を実質的に用いずプロピレンを溶媒として用いるバルク重合法あるいは実質的に液体溶媒を用いず各モノマーをガス状に保つ気相重合法などが採用できる。
また、重合方式は、連続重合、回分式重合、又は予備重合を行う方法も適用される。
また、重合段数は、1段でもよく、バルク重合2段、バルク重合後気相重合、気相重合2段といった様式も可能であり、さらにはそれ以上の重合段数で製造することが可能である。
中でも、プロピレンを溶媒として用いる1段のバルク重合を行うことが好ましい。
【0080】
重合温度は、好ましくは0~90℃であり、より好ましくは60~85℃であり、さらに好ましくは70~80℃である。
重合圧力は、好ましくは0~5MPaG、より好ましくは0~4MPaGである。
【0081】
特開2009-299046号公報で開示される製造方法の場合、より高温でバルク重合を行うことによりβメチル脱離反応速度を相対的に増大させることにより、分子量の低い末端ビニル基含有プロピレン重合体が得られるが、その反面、局所的な発熱を除熱できなくなり、成長粒子が崩壊して微粉が発生する。また、成長粒子同士が融着して凝集物や塊を生成してしまい、溶媒であるプロピレンの臨界温度を超えてしまう。その結果、ポリマー粒子の形状や性状が悪化してしまうという問題があった。
このような問題に対し、本開示は、ビスインデニルハフニウム錯体の構造を有し、配位子であるインデン環の2位に特定の置換基を有する5員複素環、および、同インデン環の4位に特定の置換基を有するアリール基が置換したメタロセン化合物を含む触媒系を用いて、バルク重合に適した温度範囲で重合することにより、特定の分子量以下でポリマーの形状や性状が良好なプロピレン単独重合体を得ることができる。
さらに、活性を向上させるために、重合工程中に補助的に水素を用いることができる。
活性が向上する理由としては、休眠状態となった活性点、例えば副反応としてπアリル-遷移金属錯体や、プロピレンが2,1挿入した直後のものが考えられているが、これらが水素により再活性化されると考えられる。
多くの遷移金属錯体触媒では、水素への連鎖移動速度は速く効果的な連鎖移動剤として機能して飽和末端を生成するため、末端ビニル構造を生じにくくする。
しかしながら、本開示では、驚くべきことに水素を加えても、連鎖移動剤としての作用は乏しく再活性化の作用により、依然ビニル末端割合が高いまま保たれる。
従って本開示では、重合工程中に補助的に水素を用いることにより、活性が向上し、且つ、ビニル末端割合が高いまま保たれる。
【0082】
重合に使用する水素の量としては、水素をプロピレンのフィード質量比として、0~2.0×10-4、好ましくは0を超え2.0×10-4以下、より好ましくは2.0×10-5~1.5×10-4、さらに好ましくは3.0×10-5~1.0×10-4の範囲である。
バルク重合を行う場合には、気相部の濃度が平均的に0~10000ppm、好ましくは100~8000ppm、より好ましくは200~1000ppmの範囲で行うことにより、活性を向上させつつ目的の重合体を得ることができる。
【実施例
【0083】
次に、本開示を実施例によってさらに具体的に説明するが、本開示は、以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例における物性測定、分析等は、下記の方法に従ったものである。
【0084】
(1)メルトフローレート(MFR):
JIS K6758のポリプロピレン試験方法のメルトフローレート(試験条件:230℃、荷重2.16kgf)に従って、測定した。単位はg/10分である。
(2)分子量及び分子量分布(Mw、Mn、Mw/Mn):
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、上記本明細書記載の方法で、測定した。
(3)融点(Tm)、結晶化温度(Tc):
セイコーインスツルメンツ社製DSC6200を使用し、シート状にしたサンプル片を5mgアルミパンに詰め、室温から一旦200℃まで昇温速度100℃/分で昇温し、5分間保持した後に、10℃/分で20℃まで降温して、結晶化させた時の結晶最大ピーク温度(℃)として、結晶化温度(Tc)を求め、その後、10℃/分で200℃まで昇温させた時の融解最大ピーク温度(℃)として融点(Tm)を求めた。
(4)プロピレン単位3連鎖のmm分率:
10mmφのクライオプローブを装着したブルカー・バイオスピン(株)のAV400型NMR装置を用い、上記本明細書記載の方法で測定した。単位は%である。
(5)触媒活性(CE)(g/ghr)
触媒活性は、ポリマーの収量(g)を、導入した触媒量(g)(予備重合ポリマーを除いた値)で割った単位時間あたりの値である。
(6)組成分析:
イオン交換性層状珪酸塩の組成は、JIS法による化学分析により検量線を作成し、蛍光X線により測定した。
【0085】
[実施例1]
(1)錯体の合成
(錯体1)rac-ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-t-ブチル-2-フリル)-4-(4-イソプロピル-フェニル)-インデニル}]ハフニウムを、特開2009-299046の実施例13および特開2009-91512の実施例1の方法に準じて合成した。
【0086】
(2)触媒の調整
(2-a)イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
撹拌翼と還流装置を取り付けた1Lの3つ口フラスコに、蒸留水645.1gと98%硫酸82.6gを加え、95℃まで昇温した。
そこへ市販のモンモリロナイト(水澤化学工業社製ベンクレイKK、Al=9.78質量%、Si=31.79質量%、Mg=3.18質量%、Al/Si(モル比)=0.320、平均粒径14μm)100gを添加し、95℃で320分反応させた。320分後、蒸留水0.5Lを加えて反応を停止し、濾過することでケーキ状固体物255gを得た。
このケーキ1gには、0.31gの化学処理モンモリロナイト(中間物)が含まれていた。化学処理モンモリロナイト(中間物)の化学組成は、Al=7.68質量%、Si=36.05質量% Mg=2.13質量%、Al/Si(モル比)=0.222であった。
上記ケーキに蒸留水1545gを加えスラリー化し、40℃まで昇温した。水酸化リチウム・水和物5.734gを固体のまま加え、40℃で1時間反応させた。1時間後、反応スラリーを濾過し、1Lの蒸留水で3回洗浄し、再びケーキ状固体物を得た。
回収したケーキを乾燥したところ、化学処理モンモリロナイト80gを得た。この化学処理モンモリロナイトの化学組成は、Al=7.68質量%、Si=36.05質量%、Mg=2.13質量%、Al/Si(モル比)=0.222、Li=0.53質量%であった。
【0087】
(2-b)予備重合
1Lの3つ口フラスコに、得られた化学処理モンモリロナイト20gを入れ、ヘプタン131mLを加えてスラリーとし、これにトリイソブチルアルミニウム50mmol(濃度143.4mg/mLのヘプタン溶液を69mL)を加えて1時間攪拌した。1時間後、ヘプタンで1/100まで洗浄し、全容量を100mLとした。
この化学処理モンモリロナイトが入ったスラリー溶液を50℃に保ち、そこへトリノルマルオクチルアルミニウム4.2mmol(濃度143.4mg/mLのヘプタン溶液を10.7mL)を加えて20分間撹拌した。
そこへ、rac-ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-t-ブチル-2-フリル)-4-(4-イソプロピル-フェニル)-インデニル}]ハフニウム0.3mmol(トルエン50mLでスラリーとしたもの)を加えて、50℃に保ちながら20分間撹拌した。
その後ヘプタン350mLを追加し、このスラリーを1Lオートクレーブに導入した。
オートクレーブの内部温度を40℃にしたのち、プロピレンを10g/時の速度でフィードし、4時間40℃を保ちつつ予備重合を行った。その後、プロピレンフィードを止めて、40℃のまま1時間残重合を行った。
得られた触媒スラリーの上澄みをデカンテーションで除去した後、再びヘプタンを加えてデカンテーションすることにより予備重合触媒の洗浄をおこなった。上記デカンテーションにより残った部分に、トリイソブチルアルミニウム12mmol(濃度143.4mg/mLのヘプタン溶液を16.6mL)を加えて10分間攪拌した。この固体を40℃で2時間減圧乾燥することにより、乾燥予備重合触媒29.8gを得た。予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は0.49であった。この予備重合触媒を触媒1とした。
【0088】
(3)重合
3Lオートクレーブを加熱下、窒素を流通させることにより予めよく乾燥させた後、プロピレンで槽内を置換して室温まで冷却した。トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(140mg/mL)2.86mL、Hを160N(normal)ml導入した後に液体プロピレン750gを導入した後、75℃まで昇温した。その後、上記触媒1を、予備重合ポリマーを除いた質量で80mgを高圧アルゴンで重合槽に圧送し、重合を開始した。75℃で1時間保持した後、未反応のプロピレンをすばやくパージし重合を停止した。そうしたところ約188gのプロピレン単独重合体が得られた。
得られた重合体の評価結果を表1に示す。
【0089】
[実施例2,3,4,5]
実施例1において、槽内に、Hを240、480、640、960N(normal)ml導入した後に液体プロピレン750gを導入し、触媒1を予備重合ポリマーを除いた質量で80、50、40、40mg使用する以外は、同様の重合をおこなった。
得られた重合体の評価結果を表1に示す。
【0090】
[実施例6]
3Lオートクレーブを加熱下、窒素を流通させることにより予めよく乾燥させた後、プロピレンで槽内を置換して室温まで冷却した。トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(140mg/mL)2.86mL、液体プロピレン750gを導入した後、80℃まで昇温した。その後、上記触媒1を、予備重合ポリマーを除いた質量で200mgを高圧アルゴンで重合槽に圧送し、重合を開始した。80℃で1時間保持した後、未反応のプロピレンをすばやくパージし重合を停止した。そうしたところ約296gのプロピレン単独重合体が得られた。
得られた重合体の評価結果を表1に示す。
【0091】
[実施例7,8]
実施例6において、槽内に、Hを160、240N(normal)ml導入した後に液体プロピレン750gを導入し、触媒1を予備重合ポリマーを除いた質量で80、80mg使用する以外は、同様の重合をおこなった。
得られた重合体の評価結果を表1に示す
【0092】
[実施例9]
3Lオートクレーブを加熱下、窒素を流通させることにより予めよく乾燥させた後、プロピレンで槽内を置換して室温まで冷却した。トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(140mg/mL)2.86mL、液体プロピレン750gを導入した後、85℃まで昇温した。その後、上記触媒1を、予備重合ポリマーを除いた質量で160mgを高圧アルゴンで重合槽に圧送し、重合を開始した。85℃で1時間保持した後、未反応のプロピレンをすばやくパージし重合を停止した。そうしたところ約357gのプロピレン単独重合体が得られた。
得られた重合体の評価結果を表1に示す。
【0093】
[比較例1]
(1)錯体の合成
(錯体2)rac-ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-i-プロピルフェニル)インデニル}]ハフニウムの合成:
rac-ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-i-プロピルフェニル)インデニル}]ハフニウムの合成は、特開2012-149160号公報の合成例1に記載の方法と同様に、実施した。
(2)触媒の調整
実施例1の(2-b)予備重合において、rac-ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-t-ブチル-2-フリル)-4-(4-イソプロピル-フェニル)-インデニル}]ハフニウムにかえて、rac-ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-i-プロピルフェニル)インデニル}]ハフニウムを使用した以外は同様の操作をおこなった。
そうしたところ、乾燥予備重合触媒54.0gを得た。予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は1.70であった。この予備重合触媒を触媒2とした。
(3)重合
3Lオートクレーブを加熱下、窒素を流通させることにより予めよく乾燥させた後、プロピレンで槽内を置換して室温まで冷却した。トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(140mg/mL)2.86mL、液体プロピレン750gを導入した後、75℃まで昇温した。その後、上記触媒2を、予備重合ポリマーを除いた質量で200mgを高圧アルゴンで重合槽に圧送し、重合を開始した。75℃で1時間保持した後、未反応のプロピレンをすばやくパージし重合を停止した。そうしたところ約350gのプロピレン単独重合体が得られた。
得られた重合体の評価結果を表1に示す。
【0094】
[比較例2]
本比較例は、Macromol.Rapid Commun.2000,21に準じて行ったものである。
(1)錯体の合成
(錯体3)rac-ジメチルシリレンビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリドの合成):
特開平8-208733号公報の実施例2に記載の方法にしたがってrac-ジメチルシリレンビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリドを合成した。
(3)重合
充分に窒素置換した1Lオートクレーブに、トルエン500ml、有機アルミニウムオキシ化合物(東ソーファインケム社製ヘキサン溶液、MMAO-3A 1.47mmolAl/ml)3.4ml導入し、105℃に加熱した。
更に、(錯体3)rac-ジメチルシリレンビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド1mgをトルエンに溶解して導入した。その後プロピレンを0.35MPaになるまですばやく導入し、30分間105℃でこの圧力を保った。最終的にエタノールを圧入することで重合を停止した。
得られたポリマー溶液をエタノール中に加え、ろ過した後に、減圧乾燥を行ったところ、33gのポリマーが得られた。
得られた重合体の評価結果を表1に示す。
【0095】
[比較例3]
(2)触媒の調整
(2-a)イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
セパラブルフラスコ中で蒸留水2260gに96%硫酸(1500g)を加えその後、層状珪酸塩としてモンモリロナイト(水沢化学社製ベンクレイSL:平均粒径19μm)600gを加えた。このスラリーを0.5℃/分で1時間かけて90℃まで昇温し、90℃で480分反応させた。この反応スラリーを1時間で室温まで冷却し、蒸留水でpH3まで洗浄した。得られた固体を窒素気流下130℃で2日間予備乾燥後53μm以上の粗大粒子を除去し、更に215℃、窒素気流下、滞留時間10分の条件でロータリーキルン乾燥することにより、化学処理スメクタイト295gを得た。
この化学処理スメクタイトの組成はAl:2.72質量%、Si:43.48質量%、Mg:0.36質量%、Fe:0.61質量%であり、Al/Si=0.065[mol/mol]であった。
【0096】
(2-b)予備重合
3つ口フラスコ(容積1L)中に上で得られた化学処理スメクタイト20gを入れヘプタン(114mL)を加えてスラリーとし、これにトリエチルアルミニウム(50mmol:濃度71mg/mLのヘプタン溶液を81mL)を加えて1時間攪拌後、ヘプタンで1/1000まで洗浄し、全容量を200mLとなるようにヘプタンを加えた。
また別のフラスコ(容積200mL)中で、ヘプタン(85mL)に比較例2で合成した(錯体3)rac-ジメチルシリレンビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド(0.3mmol)を加えてスラリーとした後、トリイソブチルアルミニウム(0.6mmol:濃度140mg/mLのヘプタン溶液を0.85mL)を加えて60分室温で攪拌し反応させた。この溶液を、化学処理スメクタイトが入った3Lフラスコに加えて、室温で60分攪拌した。その後ヘプタンを214mL追加し、このスラリーを1Lオートクレーブに導入した。
オートクレーブの内部温度を40℃にしたのちプロピレンを20g/時の速度でフィードし2時間40℃を保ちつつ予備重合を行った。その後、プロピレンフィードを止めて、1時間残重合を行った。得られた触媒スラリーの上澄みをデカンテーションで除去し、残った部分にトリイソブチルアルミニウム(12mmol:濃度140mg/mLのヘプタン溶液を17mL)を加えて10分攪拌した。この固体を2時間減圧乾燥することにより乾燥予備重合触媒47.6gを得た。予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は1.38であった。この予備重合触媒を触媒3とした。
【0097】
(3)重合
3Lオートクレーブに加熱下窒素を流通させることにより予めよく乾燥させた後、プロピレンで槽内を置換して室温まで冷却した。トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(140mg/mL)2.86mLを加え、液体プロピレン750gを導入した後、70℃まで昇温した。その後、上記予備重合触媒を予備重合ポリマーを除いた重量で100mgを高圧アルゴンで重合槽に圧送し、70℃で1時間重合した。未反応のプロピレンをすばやくパージし重合を停止した。そうしたところ約78gのプロピレン単独重合体が得られた。
得られた重合体の評価結果を表1に示す。
【0098】
[比較例4]
比較例3の(3)重合において、Hを300N(normal)ml導入した後に液体プロピレン750gを導入し、その後70℃まで昇温し、70℃で1時間重合したこと以外は同様の重合をおこなった。
【0099】
【表1】
【0100】
[実施例の考察]
図2は、実施例と比較例のプロピレン単独重合体の融点と結晶化温度との関係を示す図である。
図2に示すように、実施例1~9は、特性(i):融点(Tm)が145℃以上149℃以下の条件を満たし、且つ、融点(Tm)と結晶化温度(Tc)の関係において、特性(ii)及び特性(viii)を同時に満たすことがわかる。
一方、比較例1~4では、特性(i)と特性(ii)を同時に満たすものは得られなかったことがわかる。
また、表1の実施例1~2、4~5、7~8に示すように、重合温度、触媒量を同じにした場合、水素導入量を多くすることによって、触媒活性が向上することも明らかとなった。
図1
図2