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特許7151855熱収縮性ポリエステル系ラベルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】熱収縮性ポリエステル系ラベルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 61/06 20060101AFI20221004BHJP
   B29C 65/48 20060101ALI20221004BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20221004BHJP
   B65D 23/08 20060101ALI20221004BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20221004BHJP
   G09F 3/04 20060101ALI20221004BHJP
   B29K 67/00 20060101ALN20221004BHJP
   B29K 105/02 20060101ALN20221004BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20221004BHJP
【FI】
B29C61/06
B29C65/48
B32B27/36
B65D23/08 Z
C08J5/18 CFD
G09F3/04 C
B29K67:00
B29K105:02
B29L7:00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021175355
(22)【出願日】2021-10-27
(62)【分割の表示】P 2018509853の分割
【原出願日】2017-12-11
(65)【公開番号】P2022028683
(43)【公開日】2022-02-16
【審査請求日】2021-10-27
(31)【優先権主張番号】P 2016240179
(32)【優先日】2016-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017059032
(32)【優先日】2017-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】丸山 裕子
(72)【発明者】
【氏名】春田 雅幸
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/039133(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/109662(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/084212(WO,A1)
【文献】特開平09-176612(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 61/00-61/10
G09F 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,3-ジオキソラン及び/又はテトラヒドロフラン(THF)とポリエステルを少なくとも含む粘度が100mPa・s未満の溶剤組成物で、熱収縮性ポリエステル系フィルムの両端部を重ね合わせて接着することを特徴とする熱収縮性ポリエステル系ラベルの製造方法。
【請求項2】
前記溶剤組成物に含まれるポリエステルの含有量が1質量%以上40質量%以下である請求項1に記載の熱収縮性ポリエステル系ラベルの製造方法。
【請求項3】
前記熱収縮性ポリエステル系フィルムの厚みが5μm以上60μm以下である請求項1または2のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系ラベルの製造方法。
【請求項4】
前記熱収縮性ポリエステル系フィルムを少なくとも表層に有する積層フィルムを含むことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系ラベルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱収縮性ポリエステル系フィルムをチューブ状に丸めて前記フィルムの両端部同士を溶剤で接着することにより形成された熱収縮性ポリエステル系ラベルに関し、さらに詳しくは、ラベルを形成するフィルムの厚みが薄くても、溶剤接着部における溶剤の過度な浸透が起こりにくい熱収縮性ポリエステル系ラベルに関する。また、結晶性の高いポリエチレンテレフタレート原料をフィルム原料として多用しても、溶剤接着部の剥離強度が高い熱収縮性ポリエステル系ラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガラス瓶またはプラスチックボトル等の保護と商品の表示を兼ねたラベル包装、キャップシール、集積包装等の用途に、耐熱性が高く、焼却が容易であり、耐溶剤性に優れたポリエステル系の熱収縮性フィルムから得られた熱収縮性ポリエステル系ラベルが、広範に利用されるようになってきており、PET(ポリエチレンテレフタレート)ボトル容器等の増大に伴って、使用量が増加傾向にある。
しかし、熱収縮性ラベルは使用された後はゴミとなってしまうため、最近は、環境面からゴミ量を削減する必要が生じ、厚みが薄い熱収縮性ラベル(薄肉化した熱収縮性ラベル)が使用されはじめている。また、様々な容器に対応するため、収縮率が高い熱収縮フィルムの要望が多い。そのため非晶量を増加した原料を用いて熱収縮フィルムを製膜することが増加傾向にある。
また、さらなる環境対応として、PETボトルリサイクル原料の比率を多くした熱収縮性ポリエステル系フィルムがある。
ところで、熱収縮性フィルムからチューブ状ラベルを形成するには、フィルムの幅方向片端部をもう一方の端部に重ねて固定する必要がある。この固定方法としては、従来から、溶剤接着法(特許文献1、2)や接着剤を使用する方法(特許文献3)等が用いられてきた。それらの中でも溶剤接着法は高速でチューブ状ラベルへの加工が可能であり、広く用いられている。
【0003】
この溶剤接着法で熱収縮性ポリエステル系フィルムの面同士をチューブ状ラベルに加工する工程(チュービング工程)では、生産効率を向上させてコストダウンを図るため、高速化が進んでいる。高速のチュービング工程で、高い剥離強度(接着強度)の溶剤接着部を安定的に得るには、接着溶剤として一般的に用いられている1,3-ジオキソランの塗布量を多くすればよいが、1,3-ジオキソランの塗布量を多くすると、厚みが薄く非晶原料が多い熱収縮性ポリエステル系フィルムの場合、塗布面側からフィルム裏面側まで溶剤が浸透してしまい(溶剤突き抜け)、裏面にも溶剤が付着する。そして、溶剤接着後のチューブ状ラベルをロール状に巻き取る際にはチューブ状ラベルが平らにつぶされるが、溶剤接着部に溶剤突き抜けが起こっている場合、溶剤接着部の裏側と接触したラベルが接着してしまい、チューブとして機能しなくなったり、ブロッキングを起こしてロールの解きほぐしができなくなったりすることがあった。
一方、溶剤突き抜けしないように1,3-ジオキソランの塗布量を少なくすると、高速化されたチュービング工程では、1,3-ジオキソランの塗布量がばらつきやすく、塗布量が少なくなってしまった場合は充分な剥離強度が得られなくなるという不都合があった。溶剤突き抜けしないように1,3-ジオキソランの代わりにテトラヒドロフラン(THF)を用いた場合も同様に、高速化されたチュービング工程では、THFの塗布量がばらつきやすく、塗布量が少なくなってしまった場合は充分な剥離強度が得られなくなる不具合があった。
【0004】
また、環境対応のため、PETボトルリサイクル原料を多く用いた熱収縮性ポリエステル系フィルムの需要が高まってきている。しかし、PETボトルリサイクル原料は結晶性の高いポリエチレンテレフタレート原料であるため、耐薬品性に優れており、特許文献1、2に示される溶剤である1,3-ジオキソランでは、接着部の剥離強度が不足するという問題があった。
【0005】
そこで1,3-ジオキソランと1,3-ジオキソランに相溶する有機溶剤との混合溶剤で接着する方法(特許文献4)が発明された。しかし、溶剤突き抜けを防止するためには溶剤接着加工前に溶剤接着部に貧溶媒を塗布して乾燥させる工程(前処理)が必要となり、作業効率が悪くなる問題があった。また前記前処理を省略する方法として1,3-ジオキソランとポリエステルの貧溶媒の混合溶液で接着する方法もあるが、貧溶媒の量が少ないと溶剤突き抜けを抑制する効果が得られず、多すぎると高速化したチュービング工程で十分な剥離強度が得られなくなるため、フィルムの種類に合わせて1,3-ジオキソランと貧溶媒の混合比率を調整する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第3075019号公報
【文献】特許第3452021号公報
【文献】特開2014-43520号公報
【文献】国際公開第2016/039133号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、フィルムの厚みが薄く非晶原料が多い場合でも溶剤突き抜けを起こさない溶剤接着部を有する熱収縮性ポリエステル系ラベルおよび包装体の提供を課題とし、特に、高速化したチュービング工程でも、あるいはPETボトルリサイクル原料を多く用いた熱収縮性ポリエステル系フィルムであっても、安定的に高い剥離強度が得られる溶剤接着部を有する熱収縮性ポリエステル系ラベルおよび包装体の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記の課題に関して鋭意検討を重ねた結果、特定の種類の化合物の組み合わせからなる溶剤組成物を用いることにより、上記課題が解決されることを見いだし、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下の構成をとる。
1.1,3-ジオキソラン及び/又はテトラヒドロフラン(THF)とポリエステルを少なくとも含む粘度が100mPa・s未満の溶剤組成物で、熱収縮性ポリエステル系フィルムの両端部を重ね合わせて接着することを特徴とする熱収縮性ポリエステル系ラベルの製造方法。
2.前記溶剤組成物に含まれるポリエステルの含有量が1質量%以上40質量%以下である1.に記載の熱収縮性ポリエステル系ラベルの製造方法。
3.前記熱収縮性ポリエステル系フィルムの厚みが5μm以上60μm以下である1.または2.のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系ラベルの製造方法。
4.前記熱収縮性ポリエステル系フィルムを少なくとも表層に有する積層フィルムを含むことを特徴とする1.~3.のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系ラベルの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、熱収縮性ポリエステル系フィルムの厚みが薄く非晶原料が多い場合でも溶剤突き抜けが起こらず、かつ、高速化したチュービング工程でも、あるいは結晶性の高いポリエチレンテレフタレート原料を多く用いた熱収縮性ポリエステル系フィルムであっても、安定的に高い剥離強度が得られる溶剤接着部を有する熱収縮性ポリエステル系ラベルおよび包装体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の熱収縮性ポリエステル系ラベルは、熱収縮性ポリエステル系フィルムの両端部同士を重ねて溶剤組成物で接着することにより形成されたチューブ状の熱収縮性ポリエステル系ラベルである。ここで、端部とは幅方向(長手方向に沿う方向)の端部を意味し、端部より20mm以内の部分を含む位置のことである。
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムには、ポリエステル1層のみからなるフィルムだけでなく、ポリエステル/ポリエステル以外の樹脂/ポリエステルといった積層構成のフィルムで、外側の層が共にポリエステル系フィルムとなっている積層フィルムも含まれるものとする。
【0011】
本発明において、溶剤組成物に1,3-ジオキソラン及び/又はテトラヒドロフラン(THF)とポリエステルの両方を含むことで、熱収縮性ポリエステル系フィルムの厚みが薄く非晶原料が多い場合でも溶剤突き抜けが起こらず、かつ、高速化したチュービング工程において、結晶性の高いポリエチレンテレフタレート原料を多く用いた熱収縮性ポリエステル系フィルムであっても溶剤接着部の剥離強度が高いポリエステル系ラベルを提供できる。
【0012】
1,3-ジオキソランはポリエステルの良溶媒であり、ポリエステル系フィルムを速やかに溶解するので、得られる溶剤接着部は高い剥離強度を有する。しかし、結晶性が高いPETボトルリサイクル原料の主成分であるポリエチレンテレフタレートを25質量%より多く含むポリエステル系フィルムは、1,3-ジオキソランに溶解しにくく、1,3-ジオキソランのみで溶剤接着を行っても、十分な剥離強度を得ることができない。
一方、本発明の溶剤組成物に含有されるポリエステルは非晶質成分となり得る1種以上のモノマー成分を含有させることにより、有機溶剤や熱で溶けやすくなるため、接着剤として好適に用いることができ、前記のポリエチレンテレフタレートを25質量%より多く含むポリエステル系フィルムであっても、本発明の1,3-ジオキソランと前記ポリエステルを含む溶剤組成物を使用すれば高い剥離強度を得ることができる。また、前記ポリエステルを熱で溶かしてホットメルト剤として使用することで、ポリエステル系フィルムの接着が可能だが、熱収縮性ポリエステル系フィルムを接着させる場合は、ホットメルト剤の熱によりポリエステル系フィルムが収縮してシワが入るために外観不良が発生しやすく、かつ粘度が高いために高速のチュービング工程では、安定的に一定量をポリエステル系フィルムに塗布することは困難である。
即ち、ポリエステルの良溶媒である1,3-ジオキソランと接着剤として機能するポリエステルの両方を溶剤組成物に含むことで、それぞれの上記欠点をカバーし、高速化したチュービング工程でも、あるいはPETボトルリサイクル原料の主原料であるポリエチレンテレフタレート原料を多く用いた熱収縮性ポリエステル系フィルムであっても、安定的に高い剥離強度を発現することが可能になる。
【0013】
一方、THFは1,3-ジオキソランよりポリエステルの溶解性では劣るが、ポリエステル系フィルムを溶解し、溶剤接着部は適度な剥離強度を有する。また溶剤突き抜けも1,3ジオキソランより生じ難いので、薄肉フィルムや非晶性の高い原料を用いた熱収縮ポリエステル系フィルムには適している。しかしTHFの塗布量が少ないと剥離強度不足が生じる。
また、前述のようにポリエステルは非晶質成分となり得る1種以上のモノマー成分を含有させることにより、あるいはさらに加熱することによりTHFに対して溶けやすくなるため、接着剤として好適に用いることができ、前述したようにTHFの塗布量が少なくても高い剥離強度を得ることができる。さらに、前述のようにポリエステルを熱で溶かしてホットメルト剤として使用すると悪さが発生する。
即ち、ポリエステルの良溶媒であるTHFと接着剤として機能するポリエステルの両方を溶剤組成物に含むことで、それぞれの上記欠点をカバーし、高速化したチュービング工程でも、安定的に高い剥離強度を発現することが可能になる。また非晶性が高い薄肉化した熱収縮性ポリエステル系フィルムであっても、溶剤突き抜けが生じがたくなる。
【0014】
本発明の溶剤組成物には1,3-ジオキソラン及び/又はTHFとポリエステルの他に、1,3-ジオキソラン及び/又はTHFと相溶する有機溶剤を混合しても良い。1,3-ジオキソラン及び/又はTHFと相溶する有機溶剤にはポリエステルの良溶媒または貧溶媒のいずれを用いても良い。ポリエステルの良溶媒には、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2,2,2-テトラクロロエタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。ポリエステルの貧溶媒には、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル等が挙げられる。溶剤組成物にポリエステルの貧溶媒を混合することで、溶剤突き抜けを防止することも可能である。ただし、同じくポリエステルの貧溶媒であるメタノールやエタノールなどのアルコール類および水は、溶剤組成物に含まれるポリエステルの溶解性を著しく低下させるため、溶剤組成物に混合しないことが望ましい。これらの1,3-ジオキソラン及び/又はTHFと相溶する有機溶剤は、単独または2種以上を溶剤組成物に混合して用いることもでき、1,3-ジオキソラン及び/又はTHF100質量部に対し、0~300質量部とすることが好ましく、0~200質量部がより好ましく、0~100質量部がさらに好ましい。
【0015】
本発明の溶剤組成物に用いるポリエステルは、エチレンテレフタレートユニットを主たる構成成分としてもよい。ここで、「エチレンテレフタレートユニットを主たる構成成分とする」とは、ポリエステルの全構成成分量に対して、エチレンテレフタレートユニットを50モル%以上含有することを示す。しかし、耐薬品性が強くなり、1,3-ジオキソランやTHF等の有機溶剤への可溶性が低下することから、エチレンテレフタレートユニットは、ポリエステルの構成ユニット100モル%中、70モル%以下が好ましく、60モル%以下がより好ましい。また、エチレンテレフタレートユニットは、ポリエステルの構成ユニット100モル%中、5モル%以上が好ましく、10モル%以上がより好ましい。
【0016】
本発明の溶剤組成物に用いるポリエステルを構成するテレフタル酸以外の他のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、オルトフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、および脂環式ジカルボン酸等を挙げることができる。
溶剤組成物に用いるポリエステルを構成するエチレングリコール以外の他のジオール成分としては、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール、ビスフェノールA等の芳香族系ジオール等を挙げることができる。
【0017】
本発明の溶剤組成物に用いるポリエステルは、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸やアジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の環状ジオールや炭素数3個以上を有するジオール(例えば、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール等)のうちの1種以上を含有させて、ガラス転移点(Tg)を70℃以下としたポリエステルが好ましい。
また、溶剤組成物に用いるポリエステルは、全ポリエステル樹脂中における多価カルボン酸成分100モル%中あるいは多価アルコール成分100モル%中の非晶質成分となり得る1種以上のモノマー成分の合計が30モル%以上、好ましくは40モル%以上、より好ましくは50モル%以上である。非晶質成分となり得るモノマー成分の合計が30モル%未満だと、1,3-ジオキソランを始めとする有機溶剤への溶解性が低くなり、溶剤として用いることができないためである。
非晶質成分となり得るモノマーとしては、例えば、イソフタル酸、オルトフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ヘキサンジオールを挙げることができる。
【0018】
本発明の溶剤組成物に含まれるポリエステルの含有量の上限は好ましくは40質量%以下、より好ましくは34質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。溶剤組成物に含まれるポリエステルの含有量が多いほど溶剤組成物の粘度が高くなり、高速化されたチュービング工程では、安定的に一定量で溶剤組成物をポリエステル系フィルムに塗布することが困難になるためである。また、溶剤組成物に含まれるポリエステルの含有量の下限は好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、特に好ましくは8質量%以上である。溶剤組成物に含まれるポリエステルの含有量が低すぎると、ポリエチレンテレフタレートを25質量%より多く含むポリエステル系フィルムを接着した際に、十分な剥離強度を得ることができず、また、溶剤組成物の塗布量が少なくなった場合に接着部の剥離強度が不足する。
本発明の溶剤組成物には、必要に応じて各種の添加剤や減粘剤、熱安定剤、着色用顔料、着色防止剤、紫外線吸収剤等を添加しても良い。
【0019】
また、溶剤組成物の粘度は、下限は特に限定されないが、粘度が高すぎると、高速化されたチュービング工程において安定的に一定量を塗布することが困難になるため、100mPa・s未満が好ましく、90mPa・s以下がより好ましく、80mPa・s以下がさらに好ましく、70mPa・s以下が特に好ましい。
チュービング工程に際しては、溶剤組成物を熱収縮性ポリエステル系フィルムに対し、50~550mg/m2程度で、公知のセンターシールマシン等を用いて塗布することが好ましい。また、チュービング工程での溶剤組成物の塗布幅は、接着部の剥がれを抑制するためにも1mm以上が好ましく、上限は特に限定されないが、使用するラベル面積は小さいほどコストも小さくなるため、10mm以下が好ましい。
【0020】
チュービング工程の速度は特に限定されないが、高速化の点で300~500m/分が好ましい。チュービング工程後のチューブ状ラベルは、通常、平らに畳まれてロール状に巻き取られた後、ラベルを繰り出して所定長さに裁断され、最終製品となるが、チュービング工程後に、ロールに巻き取らずに裁断工程を行ってもよい。
本発明の熱収縮性ポリエステル系ラベルは、溶剤接着部の剥離強度が2N/15mm以上、好ましくは3N/15mm以上、より好ましくは4N/15mm以上である。剥離強度が2N/15mm以上あれば、使用中に剥離する等のトラブルを防ぐことができる。また、溶剤接着部の剥離強度の上限は15N/15mm未満である。剥離強度が高いほど好ましいが、本発明では15N/15mm以上の剥離強度を実現できなかったためである。剥離強度の測定方法は、実施例に記載の方法に従う。
【0021】
本発明の熱収縮性ポリエステル系ラベルを構成する熱収縮性ポリエステル系フィルムの厚みは、5μm以上60μm以下であることが好ましく、8μm以上45μm以下であることがより好ましい。ラベル薄肉化の観点からは、より好ましくは30μm以下である。該ラベルには、接着部以外の部分に印刷層が設けられていてもよい。
【0022】
本発明の熱収縮性ポリエステル系ラベルは、90℃の温水中10秒での熱収縮率が主収縮方向で40%以上であることが好ましい。熱収縮率が40%以上あれば、美麗な収縮仕上がり性を得ることができる。40%より小さいと、熱収縮力が不足して、容器等に被覆収縮させたときに、容器に密着せず、外観不良が発生するため好ましくない。主収縮方向に直交する方向においては、90℃の温水中での熱収縮率は15%以下であることが好ましい。15%を超えると、ラベル縦方向が縮んでしまうタテヒケと呼ばれる現象が起こりやすいため好ましくない。なお、主収縮方向の熱収縮率とは、試料の最も多く収縮した方向での熱収縮率の意味であり、主収縮方向は、正方形の試料の縦方向または横方向の長さで決められる。熱収縮率(%)の測定方法は実施例に記載の方法に従う。
【0023】
本発明の熱収縮性ポリエステル系ラベルに用いるポリエステルは、エチレンテレフタレートユニットを主たる構成成分とすることが好ましい。強度や耐熱性に優れるためである。エチレンテレフタレートユニットは、ポリエステルの構成ユニット100モル%中、50モル%以上が好ましく、60モル%以上がより好ましい。
エチレンテレフタレートユニットは、PETボトルリサイクル原料由来のユニットを含んでいてもよい。PETボトルリサイクル原料とは、飲料用のPETボトルをフレークやペレットに加工したものである。ポリエステル系フィルムを製膜するときに、このPETボトルリサイクル原料を、ポリエステル原料100質量%中、90質量%以下で使用することが好ましい。90質量%を超えてPETボトルリサイクル原料を用いると、PETボトルを構成するポリエチレンテレフタレートの結晶性が高いため、得られるフィルムの熱収縮特性が低下するおそれがある。リサイクル推進のためには、PETボトルリサイクル原料をポリエステル原料100質量%中20質量%以上使うことが望ましい。
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムに用いるポリエステルを構成するテレフタル酸以外の他のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、オルトフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、および1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸等を挙げることができる。
【0024】
脂肪族ジカルボン酸(例えば、アジピン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等)をポリエステルに含有させる場合、含有率は3モル%未満(ジカルボン酸成分100モル%中)であることが好ましい。これらの脂肪族ジカルボン酸を3モル%以上含有するポリエステルを使用して得た熱収縮性ポリエステル系ラベルでは、高速装着時のフィルム腰が不充分となりやすい。
また、3価以上の多価カルボン酸(例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸およびこれらの無水物等)は含有させないことが好ましい。これらの多価カルボン酸を含有するポリエステルを使用して得た熱収縮性ポリエステル系ラベルは、必要な高収縮率を達成しにくくなる。
【0025】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムに用いるポリエステルを構成するエチレングリコール以外のジオール成分としては、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール、ビスフェノールA等の芳香族系ジオール等を挙げることができる。
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムに用いるポリエステルは、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の環状ジオールや、炭素数3~6個を有するジオール(例えば、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール等)のうちの1種以上を含有させて、ガラス転移点(Tg)を60~80℃に調整したポリエステルが好ましい。
【0026】
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムに用いるポリエステルは、全ポリエステル樹脂中における多価アルコール成分100モル%中あるいは多価カルボン酸成分100モル%中の非晶質成分となり得る1種以上のモノマー成分の合計が15モル%以上、好ましくは16モル%以上、より好ましくは17モル%以上、特に好ましくは18モル%以上である。非晶質成分となり得るモノマー成分の合計の上限は特に限定されないが、30モル%が好ましい。
非晶質成分となり得るモノマーとしては、例えば、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、イソフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2-イソプロピル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジ-n-ブチル-1,3-プロパンジオール、ヘキサンジオールを挙げることができる。これらの中でも、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノールまたはイソフタル酸を用いるのが好ましい。
【0027】
ここで、上記の「非晶質成分となり得る」の用語の解釈について詳細に説明する。
【0028】
本発明において、「非晶性ポリマー」とは、具体的にはDSC(示差走査熱量分析装置)における測定で融解による吸熱ピークを有さない場合を指す。非晶性ポリマーは実質的に結晶化が進行しておらず、結晶状態をとりえないか、結晶化しても結晶化度が極めて低いものである。
【0029】
また、本発明において「結晶性ポリマー」とは上記の「非晶性ポリマー」ではないもの、即ち、DSC示差走査熱量分析装置における測定で融解による吸熱ピークを有する場合を指す。結晶性ポリマーは、ポリマーが昇温すると結晶化されうる、結晶化可能な性質を有する、あるいは既に結晶化しているものである。
【0030】
一般的には、モノマーユニットが多数結合した状態であるポリマーについて、ポリマーの立体規則性が低い、ポリマーの対象性が悪い、ポリマーの側鎖が大きい、ポリマーの枝分かれが多い、ポリマー同士の分子間凝集力が小さい、などの諸条件を有する場合、非晶性ポリマーとなる。しかし存在状態によっては、結晶化が十分に進行し、結晶性ポリマーとなる場合がある。例えば、側鎖が大きいポリマーであっても、ポリマーが単一のモノマーユニットから構成される場合、結晶化が十分に進行し、結晶性となり得る。そのため、同一のモノマーユニットであっても、ポリマーが結晶性になる場合もあれば、非晶性になる場合もあるため、本発明では「非晶質成分となり得る」という表現を用いた。
【0031】
ここで、本発明においてモノマーユニットとは、1つの多価アルコール分子および1つの多価カルボン酸分子から誘導されるポリマーを構成する繰り返し単位のことである。
【0032】
テレフタル酸とエチレングリコールからなるモノマーユニット(エチレンテレフタレートユニット)がポリマーを構成する主たるモノマーユニットである場合、イソフタル酸とエチレングリコールからなるモノマーユニット、テレフタル酸とネオペンチルグリコールからなるモノマーユニット、テレフタル酸と1.4-シクロヘキサンジメタノールからなるモノマーユニット、イソフタル酸とブタンジオールからなるモノマーユニット等が、上記の非晶質成分となり得るモノマー由来のユニットとして挙げられる。
【0033】
また、炭素数8個以上のジオール(例えば、オクタンジオール等)、または3価以上の多価アルコール(例えば、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、ジグリセリン等)を含有させないことが好ましい。これらのジオール、または多価アルコールを含有するポリエステルを使用して得た熱収縮性ポリエステル系ラベルでは、必要な高収縮率を達成しにくくなる。また、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールをできるだけ含有させないことも好ましい。
またポリエステルは、全ポリエステル樹脂中における多価アルコール成分100モル%中および多価カルボン酸成分100モル%中(すなわち、合計200モル%中)の非晶成分は、共重合する方が好ましい。共重合することにより原料偏析の懸念が無くなり、フィルム原料組成が変動によるフィルム物性の変化を防ぐことが可能である。さらに共重合することによりエステル交換が進むことで、非晶量が増えて主収縮方向の収縮率を高くするのに有利である。
【0034】
本発明のラベルに用いられる熱収縮性ポリエステル系フィルムを形成する樹脂の中には、必要に応じて各種の添加剤、例えば、ワックス類、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、減粘剤、熱安定剤、着色用顔料、着色防止剤、紫外線吸収剤等を添加することができる。
上記熱収縮性ポリエステル系フィルムを形成する樹脂の中には、フィルムの作業性(滑り性)を良好にする滑剤としての微粒子を添加することがチュービング工程を高速化できる点においても好ましい。微粒子としては、任意のものを選択することができるが、例えば、無機系微粒子としては、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、硫酸バリウム等、有機系微粒子としては、例えば、アクリル系樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子、架橋ポリスチレン粒子等を挙げることができる。微粒子の平均粒径は、0.05~3.0μmの範囲内(コールターカウンタにて測定した場合)で、必要に応じて適宜選択することができる。
【0035】
熱収縮性ポリエステル系フィルムを形成する樹脂の中に上記粒子を配合する方法としては、例えば、ポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、エステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後、重縮合反応開始前の段階でエチレングリコール等に分散させたスラリーとして添加し、重縮合反応を進めるのが好ましい。また、ベント付き混練押出し機を用いてエチレングリコールまたは水等に分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または混練押出し機を用いて、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法等によって行うのも好ましい。
【0036】
上記熱収縮性ポリエステル系フィルムには、フィルム表面の印刷性や接着性を良好にするためにコロナ処理、コーティング処理や火炎処理等を施したりすることも可能である。
【0037】
なお、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムには、ポリエステル樹脂層を少なくとも1層有する積層型のポリエステルフィルムも含まれる。ポリエステル樹脂層が2層以上積層されるときは、そのポリエステル樹脂層は同じ組成のポリエステルであっても、異なる組成のポリエステルであってもよい。また、他の層として積層可能な層は、熱可塑性樹脂層であれば、特に限定されないが、価格や熱収縮特性から、ポリスチレン系樹脂層であることが好ましい。
ポリスチレン系樹脂には、熱可塑性樹脂および/またはゴム成分を添加することが好ましい。熱可塑性樹脂としては、アタクチック構造を有するポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ナイロン4、ポリヘキサメチレンアジパミド等のポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のポリオレフィン系樹脂等を挙げることができる。
一方、ゴム成分としては、スチレン系化合物をその構成成分として含有するゴム状共重合体が好ましく、スチレンとゴム成分からそれぞれ一種以上を選んで共重合したランダム、ブロックまたはグラフト共重合体を挙げることができる。このようなゴム状共重合体としては、たとえばスチレン-ブタジエン共重合体ゴム、スチレン-イソプレンブロック共重合体、それらのブタジエン部分の一部あるいは全部を水素化したゴム、アクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン共重合体ゴム、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体ゴム、アクリロニトリル-アルキルアクリレート-ブタジエン-スチレン共重合体ゴム、メタクリル酸メチル-アルキルアクリレート-ブタジエン-スチレン共重合体ゴム等を挙げることができる。上記したスチレン系化合物をその構成成分として含有するゴム状共重合体は、スチレン単位を有するため、シンジオタクチック構造を有するポリスチレン系樹脂に対する分散性が良好であり、ポリスチレン系樹脂に対する可塑性改良効果が大きい。また、相溶性調整剤としては、上記したスチレン系化合物をその構成成分として含有するゴム状共重合体を好適に用いることができる。
【0038】
一方、前記ゴム成分としては、他に、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ネオプレン、エチレン-プロピレン共重合体ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、アクリルゴム、ポリエーテル-エステルゴム、ポリエステル-エステルゴム等を用いることができる。
【0039】
また、ポリスチレン系樹脂の重量平均分子量は、10,000以上であると好ましく50,000以上であるとより好ましい。重量平均分子量が10,000未満のものは、フィルムの強伸度特性や耐熱性が低下し易いので好ましくない。重量平均分子量の上限は特に限定されないが、重量平均分子量が1,500,000を上回ると、延伸張力の増大に伴う破断の発生等が生じることがあるため、好ましくない。
ポリスチレン系樹脂は、各種メーカーにより、種々のグレードのものが市販されており、市販のものを使用してもよい。他の層は、1層であっても2層以上でも構わない。
【0040】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、上記したポリエステル原料を押出機により溶融押し出しして未延伸フィルムを形成し、その未延伸フィルムを以下に示す所定の方法により、横一軸延伸又は縦横二軸延伸して熱処理することによって得ることができる。積層する場合は、複数の押し出し機やフィードブロック、マルチマニホールドを用いればよい。なお、ポリエステルは、前記した好適なジカルボン酸成分とジオール成分とを公知の方法で重縮合させることで得ることができる。また、通常は、チップ状のポリエステルを2種以上混合してフィルムの原料として使用する。積層する場合は、複数の押し出し機を用いればよい。
原料樹脂を溶融押し出しする際には、ポリエステル原料をホッパードライヤー、パドルドライヤー等の乾燥機、または真空乾燥機を用いて乾燥するのが好ましい。そのようにポリエステル原料を乾燥させた後に、押出機を利用して、200~300℃の温度で溶融しフィルム状に押し出す。押し出しに際しては、Tダイ法、チューブラー法等、既存の任意の方法を採用することができる。
【0041】
そして、押し出し後のシート状の溶融樹脂を急冷することによって未延伸フィルムを得ることができる。なお、溶融樹脂を急冷する方法としては、溶融樹脂を口金から回転ドラム上にキャストして急冷固化することにより実質的に未配向の樹脂シートを得る方法を好適に採用することができる。
得られた未延伸フィルムは、必要によりロールで70~100℃、好ましくは80~90℃で加熱された後、1.1~1.8倍にロールの速度差を用いて縦延伸される。得られた縦延伸後のフィルムは、必要により80~120℃、好ましくは90~110℃で予熱した後、横方向(押し出し方向に対して直交する方向)にテンター等で3.0倍以上、好ましくは3.5倍以上7倍以下に延伸する。延伸温度は、65℃以上100℃以下、好ましくは70℃以上95℃以下である。
また、横延伸後は、延伸温度より1℃~30℃高い温度で、熱処理することが好ましい。熱処理は、延伸後のフィルムの緊張状態を緩和するために行われ、熱処理時の温度で熱収縮率の調整を行い、また自然収縮率を減少させるのにも効果がある。これにより、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムが得られる。
【0042】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、従来公知の方法によりラベル化することができる。一例としては、所望幅に裁断した熱収縮性ポリエステル系フィルムに適当な印刷を施し、前記の溶剤組成物によりフィルムの左右端部を重ね合わせて接合してチューブフィルムを製造する。このチューブフィルムを適切な長さに裁断し、チューブ状ラベルとする。
上記ラベルに対し必要により公知の方法によりミシン目を形成した後、PETボトルに被せ、当該PETボトルをベルトコンベアー等にのせて、スチームを吹きつけるタイプの収縮トンネル(スチームトンネル)または、熱風を吹きつけるタイプの収縮トンネル(熱風トンネル)の内部を通過させる。これらのトンネル通過時にラベルが熱収縮することにより、ラベルがペットボトル等のボトル容器に装着される。
【0043】
本発明の包装体は、好ましくは本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムから得られ、好ましくはミシン目またはノッチを有するラベルが、包装対象物の少なくとも外周の一部に被覆して熱収縮させて形成されるものである。包装対象物としては、飲料用のPETボトルを始め、各種の瓶、缶、菓子や弁当等のプラスチック容器、紙製の箱等を挙げることができる。なお、通常、それらの包装対象物に、熱収縮性ポリエステル系フィルムから得られるラベルを熱収縮させて被覆させる場合には、当該ラベルを約5~70%程度熱収縮させて包装体に密着させる。なお、包装対象物に被覆されるラベルには、印刷が施されていても良いし、印刷が施されていなくても良い。
【実施例
【0044】
以下、実施例によって本発明をさらに詳述するが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施する場合は、本発明に含まれる。なお、実施例および比較例で得られたフィルムの物性の測定方法は、以下の通りである。
【0045】
[密度]
JIS K7112に従って、フィルムを密度勾配液(硝酸カルシウム水溶液)に浸して求めた。
【0046】
[温湯熱収縮率]
フィルムを長手方向およびその直交方向(幅方向)に沿うように10cm×10cmの正方形に裁断し、90℃±0.5℃の温水中に、無荷重状態で10秒間浸漬して熱収縮させた後、直ちに25℃±0.5℃の水中に10秒浸漬した後、水中から引き出して、試料の縦および横方向の長さを測定し、下記式に従って求めた値である。
収縮率={(収縮前の長さ-収縮後の長さ)/収縮前の長さ}×100(%)
本実施例では、フィルムの最も収縮率の大きい方向(主収縮方向)は幅方向である。
【0047】
[ガラス転移点(Tg)]
セイコー電子工業株式会社製の示差走査熱量計(型式:DSC220)を用いて、JIS K7121に従って求めた。未延伸フィルム10mgを、25℃から120℃まで昇温速度10℃/分で昇温し、昇温プロファイルを得た。ガラス転移温度以下のベースラインの延長線と遷移部における最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とした。
【0048】
[溶剤接着方法]
フィルムを幅380mmに裁断しながら、長手方向の巻長1000mとしてフィルムロールを製造した。そのフィルムロールからフィルムを繰り出して、フィルム幅方向の片端部の内側に接着用溶剤組成物を塗布幅が4±2mmの範囲内となるように長手方向に連続的に塗布し、この溶剤組成物塗布部をフィルムのもう一方の幅方向端部の上に、重なり部がセンターに来るようにフィルムを折り重ねて、溶剤接着した。
溶剤接着加工速度は400m/分とし、溶剤接着後のフィルムを同速度で紙管に巻き取った。得られたチューブ状ラベルのロールを23℃の雰囲気下で24時間エージングした。また、溶剤の塗布量は任意により調整を行っている。
【0049】
[溶剤組成物の粘度]
株式会社アタゴ製のB型粘度計(型式:BASE L)を用いて、溶剤組成物温度23℃、回転数10rpmの条件で測定を行った。
【0050】
[溶剤の突き抜け性評価]
溶剤接着して得られたエージング後の巻長1000mのチューブ状ラベルを、手でロール表面から500m引き出し、ブロッキング現象があったときは溶剤が突き抜けていると判断し、以下のように評価した。
ブロッキングなし:溶剤の突き抜け性評価 ○(突き抜けなし)
ブロッキングあり:溶剤の突き抜け性評価 ×(突き抜けあり)
【0051】
[溶剤接着部の剥離強度の測定方法]
上記した溶剤突き抜け評価時にロール表層から500m引き出した後の巻長500mのチューブ状ラベルロールの表層部分から、溶剤接着部が中央に来るように幅(長手方向長さに相当)15mmの試料を円周方向に沿って切り出した(長さは100mm程度あればよい)。試料数nは10とした。ボールドウィン社製の万能引張試験機「STM-50」にセットし、引張速度200mm/分の条件で180°ピール試験を行った。10個の試料の平均値を溶剤接着部の剥離強度(N/15mm)とした。
【0052】
<ポリエステルA~G、I~Jの合成例>
撹拌機、温度計および部分環流式冷却器を備えたステンレススチール製オートクレーブに、ジカルボン酸成分としてジメチルテレフタレート(DMT)100モル%と、多価アルコール成分としてエチレングリコール(EG)100モル%とを、エチレングリコールがモル比でジメチルテレフタレートの2.2倍になるように仕込み、エステル交換触媒として酢酸亜鉛を0.05モル%(酸成分に対して)用いて、生成するメタノールを系外へ留去しながらエステル交換反応を行った。その後、重縮合触媒として三酸化アンチモン0.225モル%(酸成分に対して)を添加し、280℃で26.7Paの減圧条件下、重縮合反応を行い、固有粘度0.70dl/gのポリエステルAを得た。このポリエステルAは、ポリエチレンテレフタレートである。なお、上記ポリエステルAの製造の際には、滑剤としてSiO2(富士シリシア社製サイリシア266)をポリエステルに対して8000ppm添加した。また、上記と同様にして、表1に示すポリエステルB,C,D,I,Jと表2に示すポリエステルE,F,Gを合成した。また、PETボトルリサイクル原料として、「クリアペレット」(よのペットボトルリサイクル社製;固有粘度0.63dl/g)をチップHとして用いた。
表中、TPAはテレフタル酸、IPAはイソフタル酸、OPAはオルトフタル酸、AAはアクリル酸、SAはセバシン酸、CHDMは1,4-シクロヘキサンジメタノール、NPGはネオペンチルグリコール、BDは1,4-ブタンジオールである。表1および表2のポリエステルの固有粘度は、ポリエステルAが0.70dl/g、ポリエステルBが0.70dl/g、ポリエステルCが0.73dl/g、ポリエステルDが0.73dl/g、ポリエステルEが0.53dl/g、ポリエステルFが0.98dl/g、ポリエステルGが0.89dl/g、ポリエステルHが0.63dl/g、ポリエステルIが0.70dl/g、ポリエステルHが0.70dl/gであった。なお、各ポリエステルは適宜チップ状にした。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
<フィルムIの製造方法>
上記合成例で得られた各ポリエステルチップを別個に予備乾燥し、表3に示したように、ポリエステルAを5質量%、ポリエステルBを5質量%およびポリエステルCを90質量%で混合して押出機に投入した。この混合樹脂を280℃で溶融させてTダイから押し出し、表面温度30℃に冷却された回転する金属ロールに接触させて急冷することにより、厚さ60μmの未延伸フィルムを得た。フィルム中の非晶成分量を表3に示した。このときの未延伸フィルムの引き取り速度(金属ロールの回転速度)は約20m/minであった。
上記未延伸フィルムをテンターへ導き、予熱ゾーンで100℃に加熱し、78℃の設定温度の延伸ゾーンで幅方向に5倍延伸した。続いて82℃で5秒間熱処理を行って、その後冷却した。両縁部を裁断除去して幅500mmでロール状に巻き取ることによって、厚さ12μmの横一軸延伸フィルムを1100mに亘って連続的に製造した。得られたフィルムは幅方向にのみ熱収縮する熱収縮性ポリエステル系フィルムであった。90℃で測定した温湯熱収縮率を表3に示した。
【0056】
<フィルムIIの製造方法>
ポリエステルCに変えてポリエステルDを用い、未延伸フィルムの厚さを60μmから200μmに変更した以外は、フィルムIと同様の方法で厚さ40μmの横一軸延伸フィルムを1100mの長さに亘って連続的に製造した。得られたフィルムは幅方向にのみ熱収縮する熱収縮性ポリエステル系フィルムであった。90℃で測定した温湯熱収縮率を表3に示した。
【0057】
<フィルムIIIの製造方法>
ポリエステルAを5質量%、ポリエステルCを25質量%およびポリエステルHを70質量%用い、未延伸フィルムの厚さを60μmから64μmに、延伸倍率を5倍から4倍に変更した以外は、フィルムIと同様の方法で厚さ16μmの横一軸延伸フィルムを1100mの長さに亘って連続的に製造した。得られたフィルムは幅方向にのみ熱収縮する熱収縮性ポリエステル系フィルムであった。90℃で測定した温湯熱収縮率を表3に示した。
【0058】
<フィルムIVの製造方法>
上記合成例で得られた各ポリエステルチップを別個に予備乾燥し、表3に示したように、ポリエステルAを5質量%、ポリエステルIを95質量%で混合して押出機に投入した。この混合樹脂を280℃で溶融させてTダイから押し出し、表面温度30℃に冷却された回転する金属ロールに接触させて急冷することにより、厚さ100μmの未延伸フィルムを得た。フィルム中の非晶成分量を表3に示した。このときの未延伸フィルムの引き取り速度(金属ロールの回転速度)は約20m/minであった。
上記未延伸フィルムをテンターへ導き、予熱ゾーンで90℃に加熱し、70℃の設定温度の延伸ゾーンで幅方向に5倍延伸した。続いて78℃で5秒間熱処理を行って、その後冷却した。両縁部を裁断除去して幅500mmでロール状に巻き取ることによって、厚さ20μmの横一軸延伸フィルムを1100mに亘って連続的に製造した。得られたフィルムは幅方向にのみ熱収縮する熱収縮性ポリエステル系フィルムであった。90℃で測定した温湯熱収縮率を表3に示した。
【0059】
<フィルムVの製造方法>
ポリエステルIをポリエステルJに変えて、厚さ100μmの未延伸フィルムを得た。未延伸フィルムをテンターへ導き、予熱ゾーンで97℃に加熱し、77℃の設定温度の延伸ゾーンで幅方向に5倍延伸した。続いて85℃で5秒間熱処理を行って、その後冷却した。両縁部を裁断除去して幅500mmでロール状に巻き取ることによって、厚さ20μmの横一軸延伸フィルムを1100mに亘って連続的に製造した。得られたフィルムは幅方向にのみ熱収縮する熱収縮性ポリエステル系フィルムであった。90℃で測定した温湯熱収縮率を表3に示した。
【0060】
<フィルムVIの製造方法>
ポリエステルAを5質量%、ポリエステルIを70質量%およびポリエステルHを25質量%用い、厚さ100μmの未延伸フィルムを得た。未延伸フィルムをテンターへ導き、予熱ゾーンで93℃に加熱し、73℃の設定温度の延伸ゾーンで幅方向に5倍延伸した。続いて81℃で5秒間熱処理を行って、その後冷却した。両縁部を裁断除去して幅500mmでロール状に巻き取ることによって、厚さ20μmの横一軸延伸フィルムを1100mに亘って連続的に製造した。得られたフィルムは幅方向にのみ熱収縮する熱収縮性ポリエステル系フィルムであった。90℃で測定した温湯熱収縮率を表3に示した。
【0061】
<フィルムVIIの製造方法>
共押出法を利用して、コア層形成用樹脂、スキン層形成用樹脂、接着剤層形成用樹脂を別々の押出機(第一~第三押出機)から溶融押出しし、ダイス(Tダイ)内で積層し、エアーナイフ法により、30℃に冷却された回転する金属ロールに巻き付けて急冷することにより、厚さが100μmで、三種五層構成、すなわち、コア層の表裏両側に中間層(接着剤層)が積層され、それらの中間層の外側に、それぞれ、スキン層が積層された構成の未延伸フィルム(ポリスチレン系樹脂積層シート)を得た。未延伸フィルムの各層の形成方法(溶融押出までの工程)は、以下の通りである。なお、以下の説明においては、ポリスチレン系混合樹脂積層シートの表裏から順に、第一層、第二層、第三層、第四層、第五層という(すなわち、第五層の表面は、金属ロール接触面である)。このときの未延伸フィルムの引取速度(金属ロールの回転速度)は、約20m/minであった。
・第一層、第五層(スキン層)の形成
上記したポリエステルAとポリエステルIを、それぞれブレンダー装置を用いて予備乾燥した後、その予備乾燥後のポリエステルAを5質量部とポリエステルIを95質量部ブレンダーにて混合させた後、第一押出機の直上のホッパに、定量スクリューフィーダーで連続的に供給した。そして、供給されたポリエステルAおよびポリエステルIの混合物を、単軸式の第一押出機のTダイから280℃で溶融押出しした(コア層の表裏の外側に積層された中間層の外側に積層されるように溶融押出しした)。Tダイからの押出を安定させるために、押出機とTダイとの間にヘリカルタイプかつ並列タイプのギアポンプを介在させた。
・第二層、第四層(接着剤層)の形成
チップKを、ブレンダー装置を用いて予備乾燥した後、その予備乾燥後のチップKを、第二押出機の直上のホッパに、定量スクリューフィーダーで連続的に供給した。そして、供給されたチップHを、単軸式の第二押出機のTダイから溶融押出しした(コア層の表裏の外側に積層されるように溶融押出しした)。なお、第二押出機の温度は200℃に調整した。また、第一押出機による押出しと同様に、Tダイからの押出を安定させるために、押出機とTダイとの間にヘリカルタイプかつ並列タイプのギアポンプを介在させた。
・第三層(コア層)の形成
チップL,M,Nを、それぞれ、ブレンダー装置を用いて予備乾燥した後、それらのチップL,M,Nを、混合ミキサー内へ、定量スクリューフィーダーで連続的に別々に供給した。なお、チップLの供給量を43質量%部とし、チップMの供給量を43質量%部とし、チップNの供給量を14質量%部とした。その後、混合ミキサー内で混合したチップL,M,Nの混合原料を、第三押出機の直上のホッパに、定量スクリューフィーダーで連続的に別々に供給した。そして、供給されたチップL,M,N(混合済みのもの)を、単軸式の第三押出機のTダイから溶融押出しした。なお、第三押出機の温度も200℃に調整した。また、第一押出機による押出しや第二押出機による押出しと同様に、Tダイからの押出を安定させるために、押出機とTダイとの間にヘリカルタイプかつ並列タイプのギアポンプを介在させた。
なお、上記各押出機による樹脂の押出において、未延伸フィルムの形成における第一~第三押出機の吐出量は、第一層/第二層/第三層/第四層/第五層の厚み比率が、24/2/48/2/24となるように調整した。
得られた未延伸フィルムを、予熱ゾーンで100℃に加熱し、80℃の設定温度の延伸ゾーンで幅方向に5倍延伸した。続いて88℃で5秒間熱処理を行って、その後冷却した。両縁部を裁断除去して幅500mmでロール状に巻き取ることによって、厚さ20μmの横一軸延伸フィルムを1100mに亘って連続的に製造した。得られたフィルムは幅方向にのみ熱収縮する熱収縮性ポリエステル系フィルムであった。90℃で測定した温湯熱収縮率を表3に示した。
【0062】
【表3】
【0063】
[実施例1]
フィルムIに、1,3-ジオキソラン/アセトン/ポリエステルEを22/68/10(質量比)で混合した溶剤組成物を4mm幅で、300mg/m2となるように塗布し、加工速度400m/分で溶剤接着を行い、チューブ状ラベルロールを得た。また、上記した方法で、溶剤突き抜けの有無、溶剤接着部の剥離強度を測定し、溶剤接着条件および結果を表4に示した。溶剤の突き抜けがなく、溶剤接着部の剥離強度が大きく、良好なラベルであった。
【0064】
[実施例2]
1,3-ジオキソラン/アセトン/ポリエステルEを45/45/10(質量比)で混合した溶剤組成物を100mg/m2となるように塗布した以外は実施例1と同様に評価した。溶剤接着条件およびを表4に示す。いずれも溶剤の突き抜けがなく、溶剤接着部の剥離強度が大きく、良好なラベルであった。
【0065】
[実施例3~8]
フィルムおよび溶剤組成物の配合比率を種々変更し、実施例1と同様に評価した。各実施例の溶剤接着条件およびを表4に示す。いずれも溶剤の突き抜けがなく、溶剤接着部の剥離強度が大きく、良好なラベルであった。
【0066】
[比較例1]
1,3-ジオキソランのみの溶剤を用いた以外は実施例1と同様にして、チューブ状ラベルロールを得た。溶剤接着条件および結果を表4に示した。溶剤の突き抜けがあり、ラベルとしては好ましくないものであった。
【0067】
[比較例2]
1,3-ジオキソラン/アセトンを50/50(質量比)で混合した溶剤組成物を用いた以外は実施例1と同様にして、チューブ状ラベルロールを得た。溶剤接着条件および結果を表4に示した。溶剤の突き抜けはないが、溶剤接着部の剥離強度が小さく、ラベルとしては好ましくないものであった。
【0068】
[比較例3]
フィルムIIIに1,3-ジオキソランのみの溶剤を用いた以外は実施例1と同様にして、チューブ状ラベルロールを得た。溶剤接着条件および結果を表4に示した。溶剤の突き抜けはないが、溶剤接着部の剥離強度が小さく、ラベルとしては好ましくないものであった。
【0069】
[比較例4]
1,3-ジオキソラン/ポリエステルFを70/30(重量比)で混合した溶剤組成物を用いた以外は実施例1と同様にして、チューブ状ラベルロールを得ようとした。溶剤接着条件および結果を表4に示した。溶剤組成物の粘度が高すぎるため、フィルムに溶剤組成物を4mm幅で、50mg/m2以上となるように塗布できなかった。
【0070】
【表4】
【0071】
[実施例9]
フィルムIVに、THF/ポリエステルEを90/10(質量比)で混合した溶剤組成物を4mm幅で、250mg/m2となるように塗布し、加工速度400m/分で溶剤接着を行い、チューブ状ラベルロールを得た。また、上記した方法で、溶剤突き抜けの有無、溶剤接着部の剥離強度を測定し、溶剤接着条件および結果を表4に示した。溶剤の突き抜けがなく、溶剤接着部の剥離強度が大きく、良好なラベルであった。
【0072】
[実施例10]
フィルムIVに、THF/ポリエステルFを80/20(質量比)で混合した溶剤組成物を4mm幅で、250mg/m2となるように塗布し、加工速度400m/分で溶剤接着を行い、チューブ状ラベルロールを得た。また、上記した方法で、溶剤突き抜けの有無、溶剤接着部の剥離強度を測定し、溶剤接着条件および結果を表5に示した。溶剤の突き抜けがなく、溶剤接着部の剥離強度が大きく、良好なラベルであった。
【0073】
[実施例11]
フィルムIVに、THF/ポリエステルGを95/5(質量比)で混合した溶剤組成物を4mm幅で、250mg/m2となるように塗布し、加工速度400m/分で溶剤接着を行い、チューブ状ラベルロールを得た。また、上記した方法で、溶剤突き抜けの有無、溶剤接着部の剥離強度を測定し、溶剤接着条件および結果を表5に示した。溶剤の突き抜けがなく、溶剤接着部の剥離強度が大きく、良好なラベルであった。
【0074】
[実施例12]
フィルムIVに、THF/ポリエステルEを60/40(質量比)で混合した溶剤組成物を4mm幅で、100mg/m2となるように塗布し、加工速度400m/分で溶剤接着を行い、チューブ状ラベルロールを得た。また、上記した方法で、溶剤突き抜けの有無、溶剤接着部の剥離強度を測定し、溶剤接着条件および結果を表5に示した。溶剤の突き抜けがなく、溶剤接着部の剥離強度が大きく、良好なラベルであった。
【0075】
[実施例13]
フィルムVに、THF/ポリエステルEを90/10(質量比)で混合した溶剤組成物を4mm幅で、250mg/m2となるように塗布し、加工速度400m/分で溶剤接着を行い、チューブ状ラベルロールを得た。また、上記した方法で、溶剤突き抜けの有無、溶剤接着部の剥離強度を測定し、溶剤接着条件および結果を表5に示した。溶剤の突き抜けがなく、溶剤接着部の剥離強度が大きく、良好なラベルであった。
[実施例14]
フィルムVIに、THF/ポリエステルFを80/20(質量比)で混合した溶剤組成物を4mm幅で、250mg/m2となるように塗布し、加工速度400m/分で溶剤接着を行い、チューブ状ラベルロールを得た。また、上記した方法で、溶剤突き抜けの有無、溶剤接着部の剥離強度を測定し、溶剤接着条件および結果を表5に示した。溶剤の突き抜けがなく、溶剤接着部の剥離強度が大きく、良好なラベルであった。
【0076】
[実施例15]
フィルムVIに、THF/ポリエステルEを60/40(質量比)で混合した溶剤組成物を4mm幅で、100mg/m2となるように塗布し、加工速度400m/分で溶剤接着を行い、チューブ状ラベルロールを得た。また、上記した方法で、溶剤突き抜けの有無、溶剤接着部の剥離強度を測定し、溶剤接着条件および結果を表5に示した。溶剤の突き抜けがなく、溶剤接着部の剥離強度が大きく、良好なラベルであった。
[実施例16]
フィルムVIIに、THF/ポリエステルEを90/10(質量比)で混合した溶剤組成物を4mm幅で、250mg/m2となるように塗布し、加工速度400m/分で溶剤接着を行い、チューブ状ラベルロールを得た。また、上記した方法で、溶剤突き抜けの有無、溶剤接着部の剥離強度を測定し、溶剤接着条件および結果を表5に示した。溶剤の突き抜けがなく、溶剤接着部の剥離強度が大きく、良好なラベルであった。
【0077】
[比較例5]
THFのみの溶剤を用いた以外は実施例12と同様にして、チューブ状ラベルロールを得た。溶剤接着条件および結果を表5に示した。溶剤接着部の剥離強度が低く、ラベルとしては好ましくないものであった。
【0078】
[比較例6]
THFのみの溶剤を用いた以外は実施例15と同様にして、チューブ状ラベルロールを得た。溶剤接着条件および結果を表5に示した。溶剤接着部の剥離強度が低く、ラベルとしては好ましくないものであった。
【0079】
[比較例7]
THF/ポリエステルGを40/60(質量比)で混合した溶剤組成物を用いた以外は実施例9と同様にして、チューブ状ラベルロールを得ようとした。溶剤接着条件および結果を表5に示した。溶剤組成物の粘度が高すぎるため、フィルムに溶剤組成物を4mm幅で、1g/m2以下となるように塗布できなかった。
【0080】
【表5】
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の熱収縮性ポリエステル系ラベルは、ゴミ量削減目的の薄肉化の要請に対応でき、かつ、溶剤突き抜け等の不具合が起こりにくく、また、接着部の剥離強度が高いので、飲料ボトルのラベルとして有用である。また、結晶性の高いPETボトルリサイクル原料を多用した熱収縮性ポリエステル系フィルムを用いても溶剤接着部の剥離強度が高いので、この点からも飲料ボトルのラベルとして有用である。