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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】タービン
(51)【国際特許分類】
   F02B 37/18 20060101AFI20221004BHJP
   F02B 37/22 20060101ALI20221004BHJP
   F02B 39/00 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
F02B37/18 E
F02B37/22
F02B39/00 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021503390
(86)(22)【出願日】2019-09-02
(86)【国際出願番号】 JP2019034397
(87)【国際公開番号】W WO2020179107
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-08-10
(31)【優先権主張番号】P 2019040384
(32)【優先日】2019-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 功
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 渉
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-172989(JP,A)
【文献】実開昭61-178034(JP,U)
【文献】特開平01-096428(JP,A)
【文献】実開昭61-151040(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2018/0238226(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/18
F02B 37/22
F02B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンインペラを収容する収容部が形成されたハウジングと、
前記ハウジングに形成され、前記収容部と連通する第1排気流路と、
前記ハウジングに形成され、前記収容部と前記第1排気流路が連通する位置に対し、前記タービンインペラの周方向の異なる位置で前記収容部と連通し、前記第1排気流路の流路断面積よりも小さい流路断面積を有する第2排気流路と、
前記ハウジングに形成され、前記タービンインペラの軸方向において前記収容部と連通する排出流路と、
前記第1排気流路と前記排出流路とを接続する第1バイパス流路と、
前記第2排気流路と前記排出流路とを接続し、前記第1バイパス流路の流路断面積よりも大きい流路断面積を有する第2バイパス流路と、
前記ハウジングのうち、前記第1排気流路の下流端に面する位置に設けられ、前記第1排気流路と前記第2排気流路とを区画する第1舌部と、
前記ハウジングのうち、前記第2排気流路の下流端に面する位置に設けられ、前記第2排気流路と前記第1排気流路とを区画する第2舌部と、
を備え、
前記第1排気流路の前記流路断面積は、前記第1排気流路のうち前記第2舌部に面する部位の中で流路断面積が最小となる第1排気最小面積であり、
前記第2排気流路の前記流路断面積は、前記第2排気流路のうち前記第1舌部に面する部位の中で流路断面積が最小となる第2排気最小面積であり、
前記第1バイパス流路の前記流路断面積は、前記第1バイパス流路のうち流路断面積が最小となる第1バイパス最小面積であり、
前記第2バイパス流路の前記流路断面積は、前記第2バイパス流路のうち流路断面積が最小となる第2バイパス最小面積であり、
前記第1排気最小面積と前記タービンインペラのスロート面積により導出される第1有効面積と、前記第2排気最小面積と前記タービンインペラのスロート面積により導出される第2有効面積との差に比べ、前記第1有効面積および前記第1バイパス最小面積の合計と、前記第2有効面積および前記第2バイパス最小面積の合計との差の方が小さい、タービン。
【請求項2】
前記第2排気流路は、前記第1排気流路よりも流路長が長い請求項1に記載のタービン。
【請求項3】
前記第1排気流路は、前記第2排気流路よりも流路長が長い請求項1に記載のタービン。
【請求項4】
前記第1排気最小面積をAa、前記第2排気最小面積をAb、前記タービンインペラの総スロート面積をAi、前記タービンインペラのうち前記第1排気流路と対向する対向部位のスロート面積をAia、前記タービンインペラのうち前記第2排気流路と対向する対向部位のスロート面積をAib、前記タービンインペラのうち前記第1排気流路と対向する対向部位の中心角をθa、前記タービンインペラのうち前記第2排気流路と対向する対向部位の中心角をθb、前記第1有効面積をAaf、および、前記第2有効面積をAbfとした場合に、前記第1有効面積Aafは式(1)および式(1a)にて導出され、前記第2有効面積Abfは式(2)および式(2a)にて導出される請求項1から3のいずれか一項に記載のタービン。
【数1】
…(1)
【数2】
…(1a)
【数3】
…(2)
【数4】
…(2a)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タービンに関する。本出願は2019年3月6日に提出された日本特許出願第2019-040384号に基づく優先権の利益を主張するものであり、その内容は本出願に援用される。
【背景技術】
【0002】
過給機は、タービンを備える。特許文献1のタービンには、2つの排気流路が形成される。2つの排気流路は、タービンインペラの径方向に並んで配される。2つの排気流路は、タービンインペラの周方向の異なる位置で、タービンインペラを収容する収容部と連通する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-180286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
2つの排気流路には、通常、2つのバイパス流路が設けられる。2つのバイパス流路は、流路断面積が実質的に同じである。2つの排気流路は、レイアウト上の制約により、流路断面積が互いに異なる場合がある。2つの排気流路の流路断面積が互いに異なる場合、2つのバイパス流路を開いた状態で排気を行うと、エンジン背圧にばらつきが生じる。
【0005】
本開示の目的は、エンジン背圧のばらつきを低減することが可能なタービンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のタービンは、タービンインペラを収容する収容部が形成されたハウジングと、ハウジングに形成され、収容部と連通する第1排気流路と、ハウジングに形成され、収容部と第1排気流路が連通する位置に対し、タービンインペラの周方向の異なる位置で収容部と連通し、第1排気流路の流路断面積よりも小さい流路断面積を有する第2排気流路と、ハウジングに形成され、タービンインペラの軸方向において収容部と連通する排出流路と、第1排気流路と排出流路とを接続する第1バイパス流路と、第2排気流路と排出流路とを接続し、第1バイパス流路の流路断面積よりも大きい流路断面積を有する第2バイパス流路と、ハウジングのうち、第1排気流路の下流端に面する位置に設けられ、第1排気流路と第2排気流路とを区画する第1舌部と、ハウジングのうち、第2排気流路の下流端に面する位置に設けられ、第2排気流路と第1排気流路とを区画する第2舌部と、を備え、第1排気流路の流路断面積は、第1排気流路のうち第2舌部に面する部位の中で流路断面積が最小となる第1排気最小面積であり、第2排気流路の流路断面積は、第2排気流路のうち第1舌部に面する部位の中で流路断面積が最小となる第2排気最小面積であり、第1バイパス流路の流路断面積は、第1バイパス流路のうち流路断面積が最小となる第1バイパス最小面積であり、第2バイパス流路の流路断面積は、第2バイパス流路のうち流路断面積が最小となる第2バイパス最小面積であり、第1排気最小面積とタービンインペラのスロート面積により導出される第1有効面積と、第2排気最小面積とタービンインペラのスロート面積により導出される第2有効面積との差に比べ、第1有効面積および第1バイパス最小面積の合計と、第2有効面積および第2バイパス最小面積の合計との差の方が小さい
【0007】
第2排気流路は、第1排気流路よりも流路長が長くてもよい。
【0008】
第1排気流路は、第2排気流路よりも流路長が長くてもよい。
【0010】
第1排気最小面積をAa、第2排気最小面積をAb、タービンインペラの総スロート面積をAi、タービンインペラのうち第1排気流路と対向する対向部位のスロート面積をAia、タービンインペラのうち第2排気流路と対向する対向部位のスロート面積をAib、タービンインペラのうち第1排気流路と対向する対向部位の中心角をθa、タービンインペラのうち第2排気流路と対向する対向部位の中心角をθb、第1有効面積をAaf、および、第2有効面積をAbfとした場合に、第1有効面積Aafは式(1)および式(1a)にて導出され、第2有効面積Abfは式(2)および式(2a)にて導出されてもよい。
【数1】
…(1)
【数2】
…(1a)
【数3】
…(2)
【数4】
…(2a)
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、エンジン背圧のばらつきを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、過給機の概略断面図である。
図2図2は、図1に示すタービンハウジングのA-A線断面図である。
図3図3は、タービンハウジングをウェイストゲートポート側から見た概略斜視図である。
図4図4は、比較例におけるタービンハウジングのA-A線断面図である。
図5図5は、タービンインペラの総スロート面積を説明するための図である。
図6図6は、タービンインペラの内径側スロート面積、および、外径側スロート面積を説明するための図である。
図7図7は、変形例におけるタービンハウジングのA-A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の一実施形態について説明する。実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0014】
図1は、過給機TCの概略断面図である。図1に示す矢印L方向を過給機TCの左側として説明する。図1に示す矢印R方向を過給機TCの右側として説明する。図1に示すように、過給機TCは、過給機本体1を備える。過給機本体1は、ベアリングハウジング3と、タービンハウジング(ハウジング)5と、コンプレッサハウジング7とを備える。タービンハウジング5は、ベアリングハウジング3の左側に締結機構9によって連結される。コンプレッサハウジング7は、ベアリングハウジング3の右側に締結ボルト11によって連結される。タービンTは、ベアリングハウジング3およびタービンハウジング5を含んで構成される。遠心圧縮機Cは、ベアリングハウジング3およびコンプレッサハウジング7を含んで構成される。
【0015】
ベアリングハウジング3の外周面には、突起3aが設けられている。突起3aは、タービンハウジング5側に設けられる。突起3aは、ベアリングハウジング3の径方向に突出する。タービンハウジング5の外周面には、突起5aが設けられている。突起5aは、ベアリングハウジング3側に設けられる。突起5aは、タービンハウジング5の径方向に突出する。ベアリングハウジング3とタービンハウジング5は、締結機構9によってバンド締結される。締結機構9は、例えば、Gカップリングで構成される。締結機構9は、突起3a、5aを挟持する。
【0016】
ベアリングハウジング3には、軸受孔3bが形成される。軸受孔3bは、過給機TCの左右方向に貫通する。軸受孔3bは、すべり軸受を介してシャフト13を回転自在に軸支する。シャフト13の左端部には、タービンインペラ15が設けられる。タービンインペラ15は、タービンハウジング5内に配される。タービンインペラ15は、タービンハウジング5に回転自在に収容されている。シャフト13の右端部にはコンプレッサインペラ17が設けられる。コンプレッサインペラ17は、コンプレッサハウジング7内に配される。コンプレッサインペラ17は、コンプレッサハウジング7に回転自在に収容されている。
【0017】
コンプレッサハウジング7には、吸気口19が形成される。吸気口19は、過給機TCの右側に開口する。吸気口19は、不図示のエアクリーナに接続される。ベアリングハウジング3とコンプレッサハウジング7の対向面によって、ディフューザ流路21が形成される。ディフューザ流路21は、空気を昇圧する。ディフューザ流路21は、環状に形成される。ディフューザ流路21は、シャフト13の径方向内側において、コンプレッサインペラ17を介して吸気口19に連通している。
【0018】
コンプレッサハウジング7には、コンプレッサスクロール流路23が形成される。コンプレッサスクロール流路23は、環状に形成される。コンプレッサスクロール流路23は、例えば、ディフューザ流路21よりもシャフト13の径方向外側に位置する。コンプレッサスクロール流路23は、不図示のエンジンの吸気口と、ディフューザ流路21とに連通している。コンプレッサインペラ17が回転すると、吸気口19からコンプレッサハウジング7内に空気が吸気される。吸気された空気は、コンプレッサインペラ17の翼間を流通する過程において加圧加速される。加圧加速された空気は、ディフューザ流路21およびコンプレッサスクロール流路23で昇圧される。昇圧された空気は、エンジンの吸気口に導かれる。
【0019】
タービンハウジング5には、排出流路25と、収容部27と、排気流路29とが形成される。排出流路25は、過給機TCの左側に開口する。排出流路25は、不図示の排気ガス浄化装置に接続される。排出流路25は、収容部27と連通する。排出流路25は、収容部27に対して、タービンインペラ15の回転軸方向に連続する。収容部27は、タービンインペラ15を収容する。排気流路29は、収容部27(タービンインペラ15)の径方向外側に配される。排気流路29は、収容部27と連通する。排気流路29は、収容部27に対して、タービンインペラ15の径方向に連続する。
【0020】
図2は、図1に示すタービンハウジング5のA-A線断面図である。図2では、タービンインペラ15について、外周のみを円で示す。図2に示すように、収容部27(タービンインペラ15)の径方向外側には、排気流路29が形成される。排気流路29は、連通部31と、タービンスクロール流路33と、排気導入口35と、排気導入路37とを備える。
【0021】
連通部31は、収容部27の全周に亘って環状に形成される。タービンスクロール流路33は、例えば、連通部31よりもタービンインペラ15の径方向外側に位置する。タービンスクロール流路33は、連通部31(収容部27)の全周に亘って環状に形成される。連通部31は、収容部27とタービンスクロール流路33とを連通させる。
【0022】
排気導入口35は、タービンハウジング5の外部に開口する。排気導入口35には、不図示のエンジンの排気マニホールドから排出される排気ガスが導入される。排気導入口35とタービンスクロール流路33との間には、排気導入路37が形成される。排気導入路37は、排気導入口35とタービンスクロール流路33とを接続する。排気導入路37は、例えば、直線状に形成される。排気導入路37は、排気導入口35から導入された排気ガスをタービンスクロール流路33に導く。タービンスクロール流路33は、排気導入路37から導入された排気ガスを、連通部31を介して収容部27に導く。このように、排気流路29は、排気導入口35、排気導入路37、タービンスクロール流路33および連通部31を含む。排気流路29は、排気導入口35から連通部31まで延在している。
【0023】
タービンハウジング5には、バイパス流路39が形成される。バイパス流路39は、排気流路29に入口端OPが開口し、排出流路25(図1参照)に出口端(後述するウェイストゲートポートWP)が開口する。より具体的に、バイパス流路39は、排気導入路37に入口端OPが開口し、排出流路25に出口端が開口する。バイパス流路39は、排気導入路37と排出流路25とを連通(接続)させる。
【0024】
バイパス流路39の出口端には、ウェイストゲートポートWP(図1参照)が形成される。バイパス流路39の出口端には、ウェイストゲートポートWPを開閉可能なウェイストゲートバルブWV(図1参照)が配される。ウェイストゲートバルブWVは、排出流路25内に配される。ウェイストゲートバルブWVがウェイストゲートポートWPを開いたとき、バイパス流路39は、排気導入路37を流通する排気ガスの一部を、収容部27(タービンインペラ15)を迂回して排出流路25に流出させる。
【0025】
タービンハウジング5には、仕切板41が形成される。仕切板41は、排気流路29内に配される。より具体的に、仕切板41は、排気導入口35、排気導入路37、および、タービンスクロール流路33内に配される。仕切板41は、排気導入口35、排気導入路37、および、タービンスクロール流路33の内面に対して、タービンインペラ15の回転軸方向(以下、仕切板41の短手方向ともいう)に接続される。仕切板41は、排気導入口35から離隔する方向に向かって延在する。仕切板41は、排気流路29に沿って延在する。つまり、仕切板41は、排気ガスが流れる排気流動方向(以下、仕切板41の長手方向ともいう)に沿って延在する。以下、排気流動方向の上流側を単に上流側といい、排気流動方向の下流側を単に下流側という。仕切板41は、上流側の端部が排気導入口35に配され、下流側の端部がタービンスクロール流路33と連通部31との間の位置(境界)に配される。
【0026】
仕切板41は、排気流路29をタービンインペラ15の径方向(以下、単に径方向という)に仕切る(分割する)。排気流路29は、仕切板41により内径側排気流路(第1排気流路)29aと外径側排気流路(第2排気流路)29bとに分割される。内径側排気流路29aは、外径側排気流路29bよりもタービンインペラ15の径方向内側に位置する。内径側排気流路29aは、外径側排気流路29bと径方向に並んで形成される。外径側排気流路29bは、内径側排気流路29aに比べて流路長が長い。
【0027】
仕切板41は、排気導入口35を径方向に分割する。排気導入口35は、仕切板41により内径側排気導入口35aと外径側排気導入口35bとに分割される。内径側排気導入口35aは、外径側排気導入口35bよりもタービンインペラ15の径方向内側に位置する。内径側排気導入口35aは、外径側排気導入口35bと径方向に並んで形成される。
【0028】
ここで、不図示の排気マニホールドは、2つ(複数)の分割路を備える。2つの分割路は、内径側排気導入口35aおよび外径側排気導入口35bにそれぞれ接続される。不図示のエンジンから排出される排気ガスは、排気マニホールドの2つの分割路を流通し、内径側排気導入口35aおよび外径側排気導入口35bに導入される。2つの分割路を流通する排気ガスのうち、一方は内径側排気導入口35aに導入され、他方は外径側排気導入口35bに導入される。
【0029】
仕切板41は、排気導入路37を径方向に分割する。排気導入路37は、仕切板41により内径側排気導入路37aと、外径側排気導入路37bとに分割される。内径側排気導入路37aは、外径側排気導入路37bよりもタービンインペラ15の径方向内側に位置する。内径側排気導入路37aは、外径側排気導入路37bとタービンインペラ15の径方向に並んで形成される。内径側排気導入路37aは、内径側排気導入口35aと連通する。外径側排気導入路37bは、外径側排気導入口35bと連通する。
【0030】
図3は、タービンハウジング5をウェイストゲートポートWP側から見た概略斜視図である。図3では、ウェイストゲートバルブWVの図示を省略している。図3に示すように、バイパス流路39内には、隔壁43が形成される。隔壁43は、一端がバイパス流路39の入口端OP(図2参照)に位置し、他端がバイパス流路39の出口端(ウェイストゲートポートWP)に位置する。
【0031】
隔壁43は、排気ガスがバイパス流路39を流れる排気流動方向(以下、隔壁43の長手方向ともいう)に沿って延在する。隔壁43は、隔壁43の長手方向と直交する短手方向Dにおいて、バイパス流路39の内面に接続される。隔壁43は、バイパス流路39を分割する。バイパス流路39は、隔壁43により内径側バイパス流路(第1バイパス流路)39aと、外径側バイパス流路(第2バイパス流路)39bとに分割される。
【0032】
図2に戻り、内径側バイパス流路39aは、内径側排気導入路37aと連通している。内径側バイパス流路39aは、内径側排気導入路37aと排出流路25(図1および図3参照)とを接続させる。内径側バイパス流路39aは、内径側排気導入路37aを流通する排気ガスの一部をウェイストゲートポートWP(図1および図3参照)に導く。外径側バイパス流路39bは、外径側排気導入路37bと連通している。外径側バイパス流路39bは、外径側排気導入路37bと排出流路25とを接続させる。外径側バイパス流路39bは、外径側バイパス流路39bを流通する排気ガスの一部をウェイストゲートポートWPに導く。
【0033】
仕切板41は、タービンスクロール流路33を径方向に分割する。タービンスクロール流路33は、仕切板41により内径側タービンスクロール流路33aと、外径側タービンスクロール流路33bとに分割される。内径側タービンスクロール流路33aは、外径側タービンスクロール流路33bよりも径方向内側に位置する。内径側タービンスクロール流路33aは、外径側タービンスクロール流路33bと径方向に並んで形成される。内径側タービンスクロール流路33aは、内径側排気導入路37aと連通する。外径側タービンスクロール流路33bは、外径側排気導入路37bと連通する。
【0034】
内径側タービンスクロール流路33aは、内径側排気導入路37aから遠ざかるにつれて径方向の幅が小さくなる。つまり、内径側タービンスクロール流路33aは、上流側から下流側に向かって径方向の幅が小さくなる。
【0035】
外径側タービンスクロール流路33bは、外径側排気導入路37bから遠ざかるにつれて径方向の幅が小さくなる。つまり、外径側タービンスクロール流路33bは、上流側から下流側に向かって径方向の幅が小さくなる。
【0036】
連通部31は、図2中、左側の半周において、内径側タービンスクロール流路33aと連通する。以下、連通部31のうち内径側タービンスクロール流路33aと連通する部分を、第1連通部31aという。連通部31は、図2中、右側の半周において、外径側タービンスクロール流路33bと連通する。以下、連通部31のうち外径側タービンスクロール流路33bと連通する部分を、第2連通部31bという。
【0037】
収容部27は、図2中、左側の半周において、第1連通部31aと連通する。第1連通部31aは、内径側タービンスクロール流路33aと収容部27との間に位置する。収容部27は、図2中、右側の半周において、第2連通部31bと連通する。第2連通部31bは、外径側タービンスクロール流路33bと収容部27との間に位置する。
【0038】
このように、収容部27は、図2中、左側の半周において、内径側排気流路29aと連通する。収容部27は、図2中、右側の半周において、外径側排気流路29bと連通する。収容部27は、内径側排気流路29aと連通する位置が、外径側排気流路29bと連通する位置とタービンインペラ15の周方向において異なる。換言すれば、収容部27は、第1連通部31aを介して内径側タービンスクロール流路33aと連通する位置が、第2連通部31bを介して外径側タービンスクロール流路33bと連通する位置とタービンインペラ15の周方向において異なる。
【0039】
タービンハウジング5には、第1舌部45aと、第2舌部45bとが形成される。第1舌部45aは、仕切板41の下流側の端部(すなわち、排気導入口35から離隔する側の端部)に形成される。第1舌部45aは、内径側タービンスクロール流路33aの下流側の端部(下流端)に面する位置に設けられる。第1舌部45aは、内径側タービンスクロール流路33aと外径側タービンスクロール流路33bとを区画する。
【0040】
第2舌部45bは、外径側タービンスクロール流路33bの下流側の端部(下流端)に面する位置に設けられる。第2舌部45bは、外径側タービンスクロール流路33bと内径側タービンスクロール流路33aとを区画する。
【0041】
第1舌部45aは、第2舌部45bに対して、タービンインペラ15の回転方向の位相が大凡180度ずれている。つまり、第1舌部45aおよび第2舌部45bは、タービンインペラ15の回転方向に等間隔で配されている。ただし、第1舌部45aは、第2舌部45bに対して、タービンインペラ15の回転方向の位相(位置)が異なればよい。第1舌部45aは、第2舌部45bに対して、位相のずれが大凡180度でなくてもよい。すなわち、第1舌部45aおよび第2舌部45bは、タービンインペラ15の回転方向に不等間隔に配されてもよい。第1舌部45aおよび第2舌部45bは、タービンインペラ15に対して径方向に対向する。
【0042】
図1に戻り、不図示のエンジンの排気マニホールドから排出された排気ガスは、排気流路29および収容部27を介して排出流路25に導かれる。排出流路25に導かれる排気ガスは、流通過程においてタービンインペラ15を回転させる。
【0043】
タービンインペラ15の回転力は、シャフト13を介してコンプレッサインペラ17に伝達される。コンプレッサインペラ17が回転すると、上記のとおりに空気が昇圧される。こうして、空気がエンジンの吸気口に導かれる。
【0044】
ところで、内径側排気流路29aおよび外径側排気流路29bは、レイアウト上の制約により、流路断面積が互いに異なる場合がある。本実施形態では、図2に示すように、内径側排気流路29aおよび外径側排気流路29bの流路断面積は、内径側タービンスクロール流路33aおよび外径側タービンスクロール流路33bの終端部(舌部)からの距離が等しい位置で比較した場合、互いに異なっている。内径側排気流路29aの流路断面積は、内径側タービンスクロール流路33aおよび外径側タービンスクロール流路33bの終端部(舌部)からの距離が等しい位置で比較した場合、外径側排気流路29bの流路断面積より大きい。例えば、内径側排気流路(第1排気流路)29aのうち第2舌部45bに面する部位の中で最小となる流路断面積を、第1排気最小面積Aaとする。外径側排気流路(第2排気流路)29bのうち第1舌部45aに面する部位の中で最小となる流路断面積を、第2排気最小面積Abとする。このとき、第1排気最小面積Aaは、第2排気最小面積Abより大きい。換言すれば、第2排気最小面積Abは、第1排気最小面積Aaよりも小さい。
【0045】
なお、本実施形態では、第1排気最小面積Aaが第2排気最小面積Abと異なる大きさを有する例について説明するが、これに限定されない。例えば、内径側排気流路29aのうち第2舌部45bに面する部位の中で流路断面積が最小(第1排気最小面積Aa)となる断面位置を、第1断面位置とする。外径側排気流路29bのうち第1舌部45aに面する部位の中で流路断面積が最小(第2排気最小面積Ab)となる断面位置を、第2断面位置とする。このとき、第1断面位置および第2断面位置を基準として、連通部31側(あるいは排気導入口35側)に所定距離ずれた断面位置において、内径側排気流路29aおよび外径側排気流路29bの流路断面積は、互いに異なってもよい。
【0046】
図4は、比較例におけるタービンハウジング105のA-A線断面図である。図4に示すように、タービンハウジング105は、バイパス流路139を備える。比較例におけるタービンハウジング105は、バイパス流路139以外の構成が、本実施形態におけるタービンハウジング5と同じである。バイパス流路139は、内径側バイパス流路139aと、外径側バイパス流路139bとを備える。内径側バイパス流路139aおよび外径側バイパス流路139bの流路断面積は、実質的に同じである。タービンハウジング105は、第1排気最小面積Aaおよび第2排気最小面積Abが互いに異なる。
【0047】
ここで、ウェイストゲートバルブWV(図1参照)を閉状態にすると、排気ガスは、バイパス流路139を流通せずに、排気流路29を流通する。このとき、排気ガスは、内径側排気流路29aおよび外径側排気流路29bの流路断面積に応じた流量で排気流路29を流通する。したがって、内径側排気流路29aを流通する排気ガスの流量(以下、単に内径側流量ともいう)と、外径側排気流路29bを流通する排気ガスの流量(以下、単に外径側流量ともいう)との間には、流量差が生じる。
【0048】
一方、ウェイストゲートバルブWV(図1参照)を開状態にすると、排気ガスは、排気流路29およびバイパス流路139を流通する。このとき、排気ガスは、内径側排気流路29a、外径側排気流路29b、内径側バイパス流路139a、および、外径側バイパス流路139bの流路断面積に応じた流量で排気流路29およびバイパス流路139を流通する。ここで、内径側バイパス流路139aおよび外径側バイパス流路139bの流路断面積は、実質的に同じである。
【0049】
したがって、内径側排気流路29aおよび内径側バイパス流路139aを流通する排気ガスの流量(以下、単に内径側流量ともいう)と、外径側排気流路29bおよび外径側バイパス流路139bを流通する排気ガスの流量(以下、単に外径側流量ともいう)との間には、流量差が生じる。ウェイストゲートバルブWV(図1参照)を開状態としたときの内径側流量と外径側流量との流量差は、ウェイストゲートバルブWVを閉状態としたときの内径側流量と外径側流量との流量差と大凡等しい。つまり、比較例のタービンハウジング105では、ウェイストゲートバルブWVを開いたとき、内径側流量と外径側流量との流量差が低減され難い。よって、比較例のタービンハウジング105は、ウェイストゲートバルブWVの開状態でエンジン背圧にばらつきが生じ、過給機TCの過給性能を低下させるおそれがある。
【0050】
そこで、図2に示すように、本実施形態のタービンハウジング5は、内径側バイパス流路39aおよび外径側バイパス流路39bの流路断面積を互いに異ならせている。具体的に、内径側バイパス流路39aおよび外径側バイパス流路39bの流路断面積は、内径側バイパス流路39aおよび外径側バイパス流路39bのウェイストゲートポートWPからの距離が等しい位置で比較した場合、互いに異なっている。本実施形態では、内径側バイパス流路39aおよび外径側バイパス流路39bのウェイストゲートポートWPからの距離が等しい位置で比較した場合、内径側バイパス流路39aの流路断面積は、外径側バイパス流路39bの流路断面積より小さい。換言すれば、外径側バイパス流路39bの流路断面積は、内径側バイパス流路39aの流路断面積より大きい。より具体的に、内径側バイパス流路39aの入口端OPの開口面積は、外径側バイパス流路39bの入口端OPの開口面積より小さい。
【0051】
図3に示すように、内径側バイパス流路39aのうち流路断面積が最小となる内径側バイパス最小面積(第1バイパス最小面積)Baは、外径側バイパス流路39bのうち流路断面積が最小となる外径側バイパス最小面積(第2バイパス最小面積)Bbより小さい。内径側バイパス最小面積Baは、例えば、内径側バイパス流路39aのウェイストゲートポートWPの開口面積である。外径側バイパス最小面積Bbは、例えば、外径側バイパス流路39bのウェイストゲートポートWPの開口面積である。つまり、内径側バイパス流路39aのウェイストゲートポートWPの開口面積は、外径側バイパス流路39bのウェイストゲートポートWPの開口面積より小さい。
【0052】
図2に示すように、内径側排気流路29aおよび外径側排気流路29bの流路断面積は、互いに異なる。本実施形態では、内径側排気流路29aの流路断面積(第1排気最小面積Aa)は、外径側排気流路29bの流路断面積(第2排気最小面積Ab)より大きい。換言すれば、外径側排気流路29bの流路断面積(第2排気最小面積Ab)は、内径側排気流路29aの流路断面積(第1排気最小面積Aa)よりも小さい。これにより、外径側排気流路29bの流路断面積(第2排気最小面積Ab)が内径側排気流路29aの流路断面積(第1排気最小面積Aa)と等しい場合に比べて、タービンスクロール流路33、ひいては、タービンハウジング5を小型化することができる。その結果、タービンハウジング5(過給機TC)のコストを低減することができる。
【0053】
このように、本実施形態におけるタービンハウジング5は、内径側バイパス流路39aの流路断面積(内径側バイパス最小面積Ba)が、外径側バイパス流路39bの流路断面積(外径側バイパス最小面積Bb)より小さい。タービンハウジング5は、内径側排気流路29a(第1排気最小面積Aa)が、外径側排気流路29b(第2排気最小面積Ab)より大きい。つまり、流路断面積が外径側排気流路29bより大きい内径側排気流路29aには、流路断面積が外径側バイパス流路39bより小さい内径側バイパス流路39aが接続されている。
【0054】
ここで、ウェイストゲートバルブWV(図1参照)を閉状態にすると、排気ガスは、バイパス流路39を流通せずに、排気流路29を流通する。このとき、排気ガスは、内径側排気流路29aおよび外径側排気流路29bの流路断面積に応じた流量で排気流路29を流通する。したがって、ウェイストゲートバルブWVが閉じた状態では、内径側流量と外径側流量との間に流量差が生じる。
【0055】
一方、ウェイストゲートバルブWV(図1参照)を開状態にすると、排気ガスは、排気流路29およびバイパス流路39を流通する。このとき、排気ガスは、内径側排気流路29a、外径側排気流路29b、内径側バイパス流路39a、および、外径側バイパス流路39bの流路断面積に応じた流量で排気流路29およびバイパス流路39を流通する。ここで、流路断面積が外径側排気流路29bより大きい内径側排気流路29aには、流路断面積が外径側バイパス流路39bより小さい内径側バイパス流路39aが接続されている。
【0056】
したがって、ウェイストゲートバルブWVが開いた状態における内径側流量と外径側流量との間の流量差は、ウェイストゲートバルブWVが閉じた状態における内径側流量と外径側流量との間の流量差より小さくなる。よって、本実施形態のタービンハウジング5は、ウェイストゲートバルブWVを開いた状態でのエンジン背圧のばらつきを低減させ、過給機TCの過給性能の低下を抑制することができる。
【0057】
ここで、ウェイストゲートバルブWV(図1参照)が閉状態であるときの、内径側排気流路29aを流通する排気ガスの流量を、バルブ閉時内径側流量という。ウェイストゲートバルブWVが開状態であるときの、内径側排気流路29aおよび内径側バイパス流路39aを流通する排気ガスの流量を、バルブ開時内径側流量という。
【0058】
同様に、ウェイストゲートバルブWV(図1参照)が閉状態であるときの、外径側排気流路29bを流通する排気ガスの流量を、バルブ閉時外径側流量という。ウェイストゲートバルブWVが閉状態であるときの、外径側排気流路29bおよび外径側バイパス流路39bを流通する排気ガスの流量を、バルブ開時外径側流量という。
【0059】
また、バルブ開時内径側流量とバルブ開時外径側流量との流量差を、バルブ開時流量差という。バルブ閉時内径側流量とバルブ閉時外径側流量との流量差を、バルブ閉時流量差という。
【0060】
本実施形態によれば、タービンハウジング5は、内径側排気流路29aの流路断面積が外径側排気流路29bの流路断面積と比べて相対的に大きい。タービンハウジング5は、内径側バイパス流路39aの流路断面積が外径側バイパス流路39bの流路断面積と比べて相対的に小さい。そのため、バルブ開時流量差を、バルブ閉時流量差より小さくすることができる。したがって、本実施形態のタービンハウジング5は、ウェイストゲートバルブWVを開いた状態でのエンジン背圧のばらつきを低減させ、過給機TCの過給性能の低下を抑制することができる。
【0061】
上記では、第1排気最小面積Aaおよび第2排気最小面積Abと、内径側バイパス最小面積Baおよび外径側バイパス最小面積Bbとの関係について説明した。以下では、排気ガスが内径側排気流路29aおよび外径側排気流路29bを介してタービンインペラ15を通過する際の有効面積と、内径側バイパス最小面積Baおよび外径側バイパス最小面積Bbとの関係について、詳細に説明する。
【0062】
ここで、排気ガスが内径側排気流路29aを介してタービンインペラ15を通過する際の有効面積を、内径側有効面積Aafとする。排気ガスが外径側排気流路29bを介してタービンインペラ15を通過する際の有効面積を、外径側有効面積Abfとする。内径側有効面積Aafおよび外径側有効面積Abfの詳細については、後述する。
【0063】
内径側排気流路29aの流路断面積をAa(本実施形態では、第1排気最小面積Aa)とする。外径側排気流路29bの流路断面積をAb(本実施形態では、第2排気最小面積Ab)とする。内径側バイパス流路39aの流路断面積をBa(本実施形態では、内径側バイパス最小面積Ba)とする。外径側バイパス流路39bの流路断面積をBb(本実施形態では、外径側バイパス最小面積Bb)とする。
【0064】
タービンインペラ15の総スロート面積をAiとする。タービンインペラ15のうち内径側排気流路29aと対向する対向部位のスロート面積(以下、内径側スロート面積という)をAiaとする。タービンインペラ15のうち外径側排気流路29bと対向する対向部位のスロート面積(以下、外径側スロート面積という)をAibとする。総スロート面積Ai、内径側スロート面積Aia、および、外径側スロート面積Aibの詳細については、後述する。
【0065】
タービンインペラ15のうち内径側排気流路29aと対向する対向部位(内径側スロート面積Aia)の中心角をθaとする。タービンインペラ15のうち外径側排気流路29bと対向する対向部位(外径側スロート面積Aib)の中心角をθbとする。中心角θa、θbの詳細については、後述する。
【0066】
このとき、内径側有効面積Aafは、以下の式(1)により導出される。
【数5】
…(1)
【0067】
式(1)において、内径側スロート面積Aiaは、以下の式(1a)により導出される。
【数6】
…(1a)
【0068】
式(1a)において、タービンインペラ15の総スロート面積Aiは、以下の式(1b)により近似的に導出される。
【数7】
…(1b)
【0069】
図5は、タービンインペラ15の総スロート面積Aiを説明するための図である。図5に示すように、タービンインペラ15は、ハブ15aおよび羽根15bを有する。ハブ15aは、シャフト13(図1参照)に設けられる。ハブ15aは、図5中左側ほど径が小さく、図5中右側ほど径が大きくなる形状である。羽根15bは、ハブ15aの外周面に設けられる。羽根15bは、ハブ15aの周方向に離隔して複数設けられる。タービンインペラ15の出口シュラウド径を「D4s」とし、タービンインペラ15の出口ハブ径を「D4h」とする。また、タービンインペラ15の出口シュラウド側の羽根角を「β4s」とする。このとき、タービンインペラ15の総スロート面積Aiは、上記式(1b)により導出される。
【0070】
図6は、タービンインペラ15の内径側スロート面積Aia、および、外径側スロート面積Aibを説明するための図である。図6に示すように、タービンインペラ15は、内径側排気流路29aと対向する対向部位FS1を備える。内径側スロート面積Aiaは、タービンインペラ15のうち対向部位FS1のスロート面積である。中心角θaは、タービンインペラ15のうち対向部位FS1(内径側スロート面積Aia)の中心角である。なお、中心角θaは、第1舌部45aと第2舌部45bとの内径側排気流路29a側における位相のずれと大凡等しい。
【0071】
タービンインペラ15は、外径側排気流路29bと対向する対向部位FS2を備える。外径側スロート面積Aibは、タービンインペラ15のうち対向部位FS2のスロート面積である。中心角θbは、タービンインペラ15のうち対向部位FS2(外径側スロート面積Aib)の中心角である。なお、中心角θbは、第1舌部45aと第2舌部45bとの外径側排気流路29b側における位相のずれと大凡等しい。本実施形態では、中心角θaは、中心角θbと大凡等しい。
【0072】
外径側有効面積Abfは、以下の式(2)により導出される。
【数8】
…(2)
【0073】
式(2)において、外径側スロート面積Aibは、以下の式(2a)により導出される。
【数9】
…(2a)
【0074】
上記式(1)に示すように、内径側有効面積(第1有効面積)Aafは、内径側排気流路29aの流路断面積(第1排気最小面積Aa)とタービンインペラ15のスロート面積(内径側スロート面積Aia)とにより導出される面積である。上記式(2)に示すように、外径側有効面積(第2有効面積)Abfは、外径側排気流路29bの流路断面積(第2排気最小面積Ab)とタービンインペラ15のスロート面積(外径側スロート面積Aib)とにより導出される面積である。
【0075】
本実施形態では、内径側有効面積Aafと外径側有効面積Abfとの差は、内径側有効面積Aafおよび内径側バイパス最小面積Baの合計と、外径側有効面積Abfおよび外径側バイパス最小面積Bbの合計との差より大きい。つまり、内径側有効面積Aafと外径側有効面積Abfとの差に比べ、内径側有効面積Aafおよび内径側バイパス最小面積Baの合計と、外径側有効面積Abfおよび外径側バイパス最小面積Bbの合計との差の方が小さい。内径側有効面積Aafと外径側有効面積Abfとの差は、以下の式(3)の条件を満たす。
【数10】
…(3)
【0076】
ここで、ウェイストゲートバルブWV(図1参照)が閉状態であるとき、内径側排気流路29aを流通する排気ガスの流量(バルブ閉時内径側流量)は、内径側有効面積Aafによって導出される。ウェイストゲートバルブWVが開状態であるとき、内径側排気流路29aおよび内径側バイパス流路39aを流通する排気ガスの流量(バルブ開時内径側流量)は、内径側有効面積Aafおよび内径側バイパス最小面積Baによって導出される。
【0077】
同様に、ウェイストゲートバルブWV(図1参照)が閉状態であるとき、外径側排気流路29bを流通する排気ガスの流量(バルブ閉時外径側流量)は、外径側有効面積Abfによって導出される。ウェイストゲートバルブWVが開状態であるとき、外径側排気流路29bおよび外径側バイパス流路39bを流通する排気ガスの流量(バルブ開時外径側流量)は、外径側有効面積Abfおよび外径側バイパス最小面積Bbによって導出される。
【0078】
したがって、上記式(3)の左辺は、バルブ開時内径側流量とバルブ開時外径側流量との流量差(バルブ開時流量差)に応じた値を表しているといえる。上記式(3)の右辺は、バルブ閉時内径側流量とバルブ閉時外径側流量との流量差(バルブ閉時流量差)に応じた値を表しているといえる。よって、上記式(3)は、バルブ開時流量差が、バルブ閉時流量差よりも小さくなる条件を示している。
【0079】
例えば、比較例の内径側バイパス流路139a(図4参照)および外径側バイパス流路139b(図4参照)の流路断面積は、実質的に同じである。つまり、内径側バイパス最小面積Baは、外径側バイパス最小面積Bbと実質的に同じである。このとき、上記式(3)の左辺は、右辺と等しくなる。したがって、バルブ開時流量差は、バルブ閉時流量差と実質的に変わらない。このように、比較例のタービンハウジング105は、上記式(3)の条件を満たしていないため、ウェイストゲートバルブWVを開いた状態でのエンジン背圧のばらつきを低減させることが困難である。
【0080】
一方、本実施形態の内径側バイパス最小面積Baは、外径側バイパス最小面積Bbより小さい。ここで、第1排気最小面積Aaは、第2排気最小面積Abより大きい。内径側スロート面積Aiaおよび外径側スロート面積Aibは、大凡等しい。そのため、内径側有効面積Aafは、外径側有効面積Abfより大きくなる。このとき、上記式(3)の左辺は、右辺より小さくなる。したがって、バルブ開時流量差は、バルブ閉時流量差より小さくなる。このように、本実施形態のタービンハウジング5は、上記式(3)の条件を満たしているため、ウェイストゲートバルブWVを開いた状態でのエンジン背圧のばらつきを低減させることができる。
【0081】
なお、内径側バイパス最小面積Baを外径側バイパス最小面積Bbより小さくすると、上記式(3)の左辺が右辺より大きくなる場合がある。その場合、バルブ開時流量差は、バルブ閉時流量差より大きくなる。そうすると、ウェイストゲートバルブWVを閉状態から開状態にした際に、エンジン背圧のばらつきが増加するおそれがある。したがって、本実施形態のタービンハウジング5は、上記式(3)の条件を満たすように、各流路断面積を設定することが好ましい。
【0082】
このように、本実施形態のタービンハウジング5は、上記式(3)の条件を満たすことで、ウェイストゲートバルブWVを開いた状態でのエンジン背圧のばらつきをより確実に低減させることができる。
【0083】
以上、添付図面を参照しながら本開示の一実施形態について説明したが、本開示はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0084】
例えば、上記実施形態では、タービンTが過給機TCに組み込まれる例について説明した。しかし、これに限定されず、タービンTは、過給機TC以外の装置に組み込まれてもよいし、単体であってもよい。
【0085】
上記実施形態では、第1排気最小面積Aaが、第2排気最小面積Abよりも大きい例について説明した。しかし、これに限定されず、第1排気最小面積Aaは、第2排気最小面積Abよりも小さくてもよい。
【0086】
図7は、変形例におけるタービンハウジング205のA-A線断面図である。図7に示すように、タービンハウジング205は、排気流路129およびバイパス流路239を備える。排気流路129は、内径側排気流路129aおよび外径側排気流路129bを備える。内径側排気流路129aは、内径側タービンスクロール流路133aを有する。外径側排気流路129bは、外径側タービンスクロール流路133bを有する。変形例におけるタービンハウジング205は、内径側タービンスクロール流路133a、外径側タービンスクロール流路133b、バイパス流路239以外の構成が、上記実施形態におけるタービンハウジング5と同じである。
【0087】
ここで、外径側タービンスクロール流路133bは、内径側タービンスクロール流路133aに比べて流路長が長い。つまり、外径側排気流路129bは、内径側排気流路129aに比べて流路長が長い。この場合、外径側排気流路129bは、内径側排気流路129aに比べて圧力損失が大きくなる。したがって、外径側排気流路129bは、内径側排気流路129aに比べて大きい流路断面積を備えることが好ましい。
【0088】
そこで、変形例のタービンハウジング205は、外径側排気流路(第1排気流路)129bの流路断面積を、内径側排気流路(第2排気流路)129aの流路断面積より大きくしている。つまり、第2排気最小面積Abは、第1排気最小面積Aaよりも大きい。このように、内径側排気流路129aおよび外径側排気流路129bのうち流路長が長い方の流路断面積は、内径側排気流路129aおよび外径側排気流路129bのうち流路長が短い方の流路断面積より大きくてもよい。これにより、内径側排気流路129aおよび外径側排気流路129bのうち流路長が長い方の圧力損失を低減させることができる。
【0089】
変形例のバイパス流路239は、内径側バイパス流路239aおよび外径側バイパス流路239bを有する。内径側バイパス流路(第2バイパス流路)239aの流路断面積は、外径側バイパス流路(第1バイパス流路)239bの流路断面積よりも大きい。具体的に、内径側バイパス流路239aのうち流路断面積が最小となる内径側バイパス最小面積Baは、外径側バイパス流路239bのうち流路断面積が最小となる外径側バイパス最小面積Bbよりも大きい。つまり、タービンハウジング205は、外径側排気流路129bの流路断面積が内径側排気流路129aの流路断面積と比べて相対的に大きい。タービンハウジング205は、外径側バイパス流路239bの流路断面積が内径側バイパス流路239aの流路断面積と比べて相対的に小さい。なお、排気流路129およびバイパス流路239の各流路断面積は、上記式(3)の条件を満たすように設定されてもよい。これにより、変形例のタービンハウジング205は、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本開示は、タービンに利用することができる。
【符号の説明】
【0091】
5:タービンハウジング(ハウジング) 15:タービンインペラ 25:排出流路 27:収容部 29a:内径側排気流路(第1排気流路) 29b:外径側排気流路(第2排気流路) 39a:内径側バイパス流路(第1バイパス流路) 39b:外径側バイパス流路(第2バイパス流路) 45a:第1舌部 45b:第2舌部 129a:内径側排気流路(第2排気流路) 129b:外径側排気流路(第1排気流路) 239a:内径側バイパス流路(第2バイパス流路) 239b:外径側バイパス流路(第1バイパス流路) Aa:第1排気最小面積 Ab:第2排気最小面積 Aaf:内径側有効面積(第1有効面積) Abf:外径側有効面積(第2有効面積) Ai:総スロート面積 Aia:内径側スロート面積 Aib:外径側スロート面積 Ba:内径側バイパス最小面積(第1バイパス最小面積) Bb:外径側バイパス最小面積(第2バイパス最小面積) T:タービン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7