(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】重荷重用空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 9/18 20060101AFI20221004BHJP
B60C 9/22 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
B60C9/18 M
B60C9/18 G
B60C9/22 G
B60C9/18 N
(21)【出願番号】P 2022018677
(22)【出願日】2022-02-09
【審査請求日】2022-02-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡部 太郎
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-87710(JP,A)
【文献】国際公開第2013/168370(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/103068(WO,A1)
【文献】特開2008-155867(JP,A)
【文献】特開2017-30418(JP,A)
【文献】特開2019-89418(JP,A)
【文献】特開2019-89419(JP,A)
【文献】特開2009-248771(JP,A)
【文献】特開2007-131110(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 9/00-9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
65%以下の偏平比の呼びを有し、
少なくとも3本の周方向溝が刻まれたトレッドと、前記トレッドの端に連なる一対のサイドウォールと、前記サイドウォールの径方向内側に位置する一対のビードと、前記トレッド及び前記一対のサイドウォールの内側に位置し前記一対のビードのうちの第一のビードと第二のビードとの間を架け渡すカーカスと、前記トレッドの径方向内側に位置する補強層と、前記補強層の径方向内側に位置し架橋ゴムからなる緩衝層とを備え、
前記少なくとも3本の周方向溝のうち軸方向において外側に位置する周方向溝がショルダー周方向溝であり、
前記補強層が、並列した多数のベルトコードを含むベルトと、らせん状に巻かれたバンドコードを含むバンドとを備え、
前記緩衝層が前記カーカスに積層され、前記緩衝層の端が前記ベルトの端の軸方向外側に位置し、
前記ベルトが、前記緩衝層に積層される第一ベルトプライと、前記第一ベルトプライの径方向外側に位置する第二ベルトプライと、前記第二ベルトプライの径方向外側に位置する第三ベルトプライとを備え、
前記緩衝層が、シート部と、前記シート部の軸方向外側に位置し前記シート部よりも厚い一対のハンプ部とを備え、
前記一対のハンプ部がそれぞれ前記第一ベルトプライの端において最大厚さを有
し、
前記シート部が前記ハンプ部と一体であり、前記シート部が第一の前記ハンプ部と第二の前記ハンプ部との間を架け渡す、
重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記シート部の見かけ厚さが2.2mm以上2.8mm以下である、
請求項1に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記ハンプ部の見かけ最大厚さが2.5mm以上6.5mm以下である、
請求項1又は2に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記緩衝層の幅の、前記トレッドの幅に対する比が1.00以上1.20以下である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記一対のハンプ部のうちの第一のハンプ部が最大厚さを示す位置から第二のハンプ部が最大厚さを示す位置までの軸方向距離の、前記ベルトの幅に対する比が0.95以上1.05以下である、
請求項1から4のいずれか一項に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記バンドが、径方向において前記第一ベルトプライと前記第二ベルトプライとの間に位置するフルバンドを備え、
前記フルバンドの端が前記ショルダー周方向溝の軸方向外側に位置し、
前記フルバンドの端が前記第一ベルトプライの端の軸方向内側に位置し、そして
前記フルバンドの端が前記第二ベルトプライの端の軸方向内側に位置する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記バンドが、赤道面を挟んで相対する一対のエッジバンドをさらに備え、
前記一対のエッジバンドがそれぞれ、前記フルバンドの端の径方向外側に位置する、
請求項6に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記カーカスが、並列した多数のカーカスコードを含む、少なくとも1枚のカーカスプライを備え、
前記緩衝層の見かけ厚さが前記シート部の見かけ厚さの1.2倍を示す位置が、前記シート部と前記ハンプ部との境界であり、
前記シート部の見かけ厚さが、赤道面に沿って計測される、前記緩衝層が積層するカーカスプライに含まれるカーカスコードと、前記第一ベルトプライに含まれるベルトコードとの間の距離である、
請求項1から7のいずれか一項に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記シート部と前記ハンプ部との境界が、前記ショルダー周方向溝の底の軸方向外側に位置する、
請求項1から8のいずれか一項に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重荷重用空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
重荷重用空気入りタイヤ(以下、タイヤ)のトレッド部には、一対のクッション層が設けられる。一対のクッション層は軸方向に離間して配置される。クッション層はベルトの端とカーカスとの間に位置する。
タイヤが走行するとベルトの端の部分に歪みが生じる。歪みを起因とする損傷を防ぐために、クッション層について様々な検討が行われている(例えば、下記の特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
昨今の環境規制強化やドライバー不足を背景に、トラックやバス等の車両では、積載量アップや低床化が進んでいる。これに伴い、低偏平タイヤの需要が増加している。
【0005】
低偏平タイヤは、構造上、高偏平タイヤに比べてクッション層の配置スペースを得にくい。従来仕様のクッション層を低偏平タイヤに採用すると、タイヤが膨らんだときにベルトの端が跳ね上がる恐れがある。低偏平タイヤでは、高偏平タイヤに比べてベルトの内圧分担が大きい。低偏平タイヤでは、寸法成長による、接地形状の大幅な変化が生じる恐れがある。安定性にかける接地形状は耐偏摩耗性の低下を招く。
【0006】
タイヤでは、サイド部が撓むことでトレッド部に作用する負荷が軽減される。低偏平タイヤの撓み代は高偏平タイヤの撓み代に比べて小さい。低偏平タイヤでは、トレッド部に作用する負荷の軽減に対するサイド部の貢献度は低い。低偏平タイヤでは、高偏平タイヤに比べて大きな負荷がトレッド部に作用する。大きな負荷は、耐久性や耐偏摩耗性の低下を招く恐れがある。
【0007】
重荷重用空気入りタイヤのベルトは通常、径方向に積層された4枚のベルトプライで構成される。各ベルトプライは並列した多数のベルトコードを含む。通常ベルトコードには、スチールコードが用いられる。3枚のベルトプライでベルトを構成できれば、タイヤの軽量化を図ることができる。軽量化は車両の燃費性能の向上や積載量の増加に貢献する。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、軽量化を図りながら、接地形状の安定化と、トレッド部に作用する負荷の軽減とを達成できる、重荷重用空気入りタイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る重荷重用空気入りタイヤは65%以下の偏平比の呼びを有する。前記タイヤは、少なくとも3本の周方向溝が刻まれたトレッドと、前記トレッドの端に連なる一対のサイドウォールと、前記サイドウォールの径方向内側に位置する一対のビードと、前記トレッド及び前記一対のサイドウォールの内側に位置し前記一対のビードのうちの第一のビードと第二のビードとの間を架け渡すカーカスと、前記トレッドの径方向内側に位置する補強層と、前記補強層の径方向内側に位置し架橋ゴムからなる緩衝層とを備える。前記少なくとも3本の周方向溝のうち軸方向において外側に位置する周方向溝がショルダー周方向溝である。前記補強層は、並列した多数のベルトコードを含むベルトと、らせん状に巻かれたバンドコードを含むバンドとを備える。前記緩衝層は前記カーカスに積層され、前記緩衝層の端が前記ベルトの端の軸方向外側に位置する。前記ベルトは、前記緩衝層に積層される第一ベルトプライと、前記第一ベルトプライの径方向外側に位置する第二ベルトプライと、前記第二ベルトプライの径方向外側に位置する第三ベルトプライとを備える。前記緩衝層は、シート部と、前記シート部の軸方向外側に位置し前記シート部よりも厚い一対のハンプ部とを備える。前記一対のハンプ部はそれぞれ、前記第一ベルトプライの端において最大厚さを有する。
【0010】
好ましくは、この重荷重用空気入りタイヤでは、前記シート部の見かけ厚さは2.2mm以上2.8mm以下である。
【0011】
好ましくは、この重荷重用空気入りタイヤでは、前記ハンプ部の見かけ最大厚さは2.5mm以上6.5mm以下である。
【0012】
好ましくは、この重荷重用空気入りタイヤでは、前記緩衝層の幅の、前記トレッドの幅に対する比は1.00以上1.20以下である。
【0013】
好ましくは、この重荷重用空気入りタイヤでは、前記一対のハンプ部のうちの第一のハンプ部が最大厚さを示す位置から第二のハンプ部が最大厚さを示す位置までの軸方向距離の、前記ベルトの幅に対する比は0.95以上1.05以下である。
【0014】
好ましくは、この重荷重用空気入りタイヤでは、前記バンドは、径方向において前記第一ベルトプライと前記第二ベルトプライとの間に位置するフルバンドを備える。前記フルバンドの端が前記ショルダー周方向溝の軸方向外側に位置し、前記フルバンドの端が前記第一ベルトプライの端の軸方向内側に位置し、そして前記フルバンドの端が前記第二ベルトプライの端の軸方向内側に位置する。
【0015】
より好ましくは、この重荷重用空気入りタイヤでは、前記バンドは、赤道面を挟んで相対する一対のエッジバンドをさらに備える。前記一対のエッジバンドはそれぞれ、前記フルバンドの端の径方向外側に位置する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、軽量化を図りながら、接地形状の安定化と、トレッド部に作用する負荷の軽減とを達成できる、重荷重用空気入りタイヤが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る重荷重用空気入りタイヤの一部を示す断面図である。
【
図2】
図2は、補強層の構成を説明する概略図である。
【
図3】
図3は、
図1に示されたタイヤの一部を示す拡大断面図である。
【
図4】
図4は、
図3に示されたタイヤの一部を示す拡大断面図である。
【
図5】
図5は、
図3に示されたタイヤの一部を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
【0019】
本開示において、タイヤを正規リムに組み込み、タイヤの内圧が正規内圧に調整され、このタイヤに荷重がかけられていない状態は、正規状態と称される。
【0020】
本開示においては、特に言及がない限り、タイヤ各部の寸法及び角度は、正規状態で測定される。
正規リムにタイヤを組んだ状態で測定できない、タイヤの子午線断面における各部の寸法及び角度は、回転軸を含む平面に沿ってタイヤを切断することにより得られる、タイヤの断面において、左右のビード間の距離を、正規リムに組んだタイヤにおけるビード間の距離に一致させて、測定される。
【0021】
正規リムとは、タイヤが依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。
【0022】
正規内圧とは、タイヤが依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
【0023】
正規荷重とは、タイヤが依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。
【0024】
本開示において、「偏平比の呼び」は、JIS D4202「自動車用タイヤ-呼び方及び諸元」に規定された「タイヤの呼び」に含まれる「偏平比の呼び」である。
【0025】
本開示において、タイヤのトレッド部とは、路面と接地する、タイヤの部位である。ビード部とは、リムに嵌め合わされる、タイヤの部位である。サイド部とは、トレッド部とビード部との間を架け渡す、タイヤの部位である。タイヤは、部位として、トレッド部、一対のビード部及び一対のサイド部を備える。
【0026】
本開示において、並列したコードを含むタイヤの要素、5cm幅あたりに含まれるコードの本数は、この要素に含まれるコードの密度(単位は、エンズ/5cmである。)として表される。コードの密度は、特に言及がない限り、コードの長さ方向に対して垂直な面で切断することにより得られる要素の断面において得られる。
【0027】
本開示において、架橋ゴムとは、ゴム組成物を加圧及び加熱して得られるゴム組成物の成形体である。ゴム組成物は、バンバリーミキサー等の混錬機において、基材ゴム及び薬品を混合することにより得られる未架橋状態のゴムである。架橋ゴムは加硫ゴムとも称され、ゴム組成物は未加硫ゴムとも称される。
【0028】
基材ゴムとしては、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)及びブチルゴム(IIR)が例示される。薬品としては、カーボンブラックやシリカのような補強剤、アロマチックオイル等のような可塑剤、酸化亜鉛等のような充填剤、ステアリン酸のような滑剤、老化防止剤、加工助剤、硫黄及び加硫促進剤が例示される。基材ゴム及び薬品の選定、選定した薬品の含有量等は、ゴム組成物が適用される、トレッド、サイドウォール等の各要素の仕様に応じて、適宜決められる。
【0029】
本開示において、タイヤを構成する要素のうち、架橋ゴムからなる要素の温度70℃での複素弾性率は、JIS K6394の規定に準拠し、粘弾性スペクトロメータ((株)岩本製作所製の「VES」)を用いて下記の条件にて測定される。
初期歪み=10%
動歪み=2%
周波数=10Hz
変形モード=引張
この測定では、試験片はタイヤからサンプリングされる。タイヤから試験片をサンプリングできない場合には、測定対象の要素の形成に用いられるゴム組成物を170℃の温度で12分間加圧及び加熱して得られる、シート状の架橋ゴム(以下、ゴムシートとも称される。)から試験片がサンプリングされる。
【0030】
図1は、本発明の一実施形態に係る重荷重用空気入りタイヤ2(以下、単に「タイヤ2」とも称する。)の一部を示す。このタイヤ2は、トラック、バス等の車両に装着される。このタイヤ2の偏平比の呼びは65%以下である。言い換えれば、このタイヤ2は、65%以下の偏平比の呼びを有する。このタイヤ2は低偏平タイヤである。
【0031】
図1は、タイヤ2の回転軸を含む平面に沿った、このタイヤ2の断面(以下、子午線断面)の一部を示す。
図1において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。
図1の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表す。
【0032】
このタイヤ2は、トレッド4、一対のサイドウォール6、一対のビード8、一対のチェーファー10、カーカス12、インナーライナー14、一対のスチールフィラー16、補強層18、及び緩衝層20を備える。
【0033】
トレッド4は、その外面において路面と接地する。この外面は、トレッド面22である。
図1において符号PCは、トレッド面22と赤道面との交点である。交点PCはタイヤ2の赤道である。赤道PCはタイヤ2の径方向外端である。
【0034】
図1において、符号PEはトレッド面22の端である。両矢印WTで示される長さは、トレッド面22の幅である。トレッド面22の幅WTは、トレッド面22の第一の端PEからトレッド面22の第二の端PEまでの軸方向距離である。トレッド面22の幅WTはトレッド4の幅WTとも称される。
タイヤ2においてトレッド面22の端PEが、外観上、識別不能な場合には、正規状態のタイヤ2に正規荷重を負荷して、キャンバー角を0゜としタイヤ2を平面に接触させて得られる接地面の軸方向外側端に対応するトレッド面22上の位置が、トレッド面22の端PEとして定められる。
【0035】
トレッド4は、ベース部24と、このベース部24の径方向外側に位置するキャップ部26とを備える。ベース部24は低発熱性の架橋ゴムからなる。キャップ部26は耐摩耗性及びグリップ性能が考慮された架橋ゴムからなる。
図1に示されるように、このタイヤ2のベース部24は補強層18全体を覆う。キャップ部26はベース部24全体を覆う。
【0036】
このタイヤ2では、少なくとも3本の周方向溝28がトレッド4に刻まれる。
図1に示されたトレッド4には、4本の周方向溝28が刻まれる。これら周方向溝28は、軸方向に並列され、周方向に連続して延びる。
【0037】
4本の周方向溝28のうち軸方向において外側に位置する周方向溝28がショルダー周方向溝28sである。ショルダー周方向溝28sの軸方向内側に位置する周方向溝28がミドル周方向溝28mである。このタイヤ2の4本の周方向溝28は、一対のミドル周方向溝28mと一対のショルダー周方向溝28sとで構成される。
【0038】
このタイヤ2では、排水性及びトラクション性能への貢献の観点から、ミドル周方向溝28mの幅はトレッド4の幅WTの2%以上10%以下が好ましい。ミドル周方向溝28mの深さは13mm以上25mm以下が好ましい。ショルダー周方向溝28sの幅はトレッド4の幅WTの1%以上7%以下が好ましい。ショルダー周方向溝28sの深さは13mm以上25mm以下が好ましい。周方向溝28の幅は、周方向溝の一方の縁から他方の縁までの最短距離で表される。
【0039】
前述したように、トレッド4には少なくとも3本の周方向溝28が刻まれる。これにより、トレッド4には少なくとも4本の陸部30が構成される。
図1に示されたタイヤ2のトレッド4には4本の周方向溝28が刻まれ、5本の陸部30が構成される。これら陸部30は、軸方向に並列され、周方向に連続して延びる。
【0040】
5本の陸部30のうち、軸方向において外側に位置する陸部30がショルダー陸部30sである。ショルダー陸部30sは、ショルダー周方向溝28sの軸方向外側に位置し、トレッド面22の端PEを含む。ショルダー陸部30sの軸方向内側に位置する陸部30はミドル陸部30mである。ミドル陸部30mの軸方向内側に位置する陸部30はセンター陸部30cである。このタイヤ2の5本の陸部30は、センター陸部30cと、一対のミドル陸部30mと、一対のショルダー陸部30sとで構成される。
【0041】
このタイヤ2では、センター陸部30cの幅はトレッド4の幅WTの10%以上18%以下である。ミドル陸部30mの幅はトレッド4の幅WTの10%以上18%以下である。ショルダー陸部30sの幅はトレッド4の幅WTの15%以上25%以下である。陸部30の幅は、トレッド面22の一部をなす陸部30の頂面の軸方向幅により表される。
【0042】
このタイヤ2では、トレッド4に構成される陸部30のうち、軸方向において中央に位置する陸部30、すなわちセンター陸部30cが赤道面上に位置する。このタイヤ2は、陸部30が赤道面上に位置するように構成されたトレッド4を備える。周方向溝28が赤道面上に位置するように、このトレッド4が構成されてもよい。
【0043】
それぞれのサイドウォール6はトレッド4の端に連なる。サイドウォール6は、カーカス12の軸方向外側に位置し、トレッド4の端から径方向内向きに延びる。サイドウォール6はトレッド4の径方向内側に位置する。サイドウォール6は架橋ゴムからなる。
【0044】
それぞれのビード8はサイドウォール6の径方向内側に位置する。ビード8は、コア32と、エイペックス34とを備える。
【0045】
コア32は周方向に延びる。コア32は、巻き回されたスチール製のワイヤを含む。コア32は略六角形の断面形状を有する。
【0046】
エイペックス34はコア32の径方向外側に位置する。エイペックス34は内側エイペックス34uと外側エイペックス34sとを備える。内側エイペックス34uはコア32から径方向外向きに延びる。外側エイペックス34sは内側エイペックス34uよりも径方向外側に位置する。内側エイペックス34uは硬質な架橋ゴムからなる。外側エイペックス34sは内側エイペックス34uよりも軟質な架橋ゴムからなる。
【0047】
それぞれのチェーファー10はビード8の軸方向外側に位置する。チェーファー10はサイドウォール6の径方向内側に位置する。チェーファー10は、リム(図示されず)と接触する。チェーファー10は、耐摩耗性が考慮された架橋ゴムからなる。
【0048】
カーカス12は、トレッド4、一対のサイドウォール6、及び一対のチェーファー10の内側に位置する。カーカス12は一対のビード8のうちの第一のビード8と第二のビード8との間を架け渡す。
【0049】
カーカス12は少なくとも1枚のカーカスプライ36を備える。このタイヤ2のカーカス12は1枚のカーカスプライ36からなる。カーカスプライ36は、それぞれのコア32の周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返される。カーカスプライ36は、第一のコア32から第二のコア32に向かって延びるプライ本体36aと、このプライ本体36aに連なりそれぞれのコア32の周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返される一対の折り返し部36bとを有する。
【0050】
図1には示されないが、カーカスプライ36は並列された多数のカーカスコードを含む。これらカーカスコードはトッピングゴムで覆われる。それぞれのカーカスコードは赤道面と交差する。このタイヤ2では、カーカスコードが赤道面に対してなす角度(以下、カーカスコードの交差角度)は70°以上90°以下である。このカーカス12はラジアル構造を有する。このタイヤ2のカーカスコードはスチールコードである。
【0051】
インナーライナー14はカーカス12の内側に位置する。インナーライナー14は、架橋ゴムからなるインスレーション(図示されず)を介してカーカス12の内面に接合される。インナーライナー14はタイヤ2の内面を構成する。インナーライナー14は、空気遮蔽性に優れた架橋ゴムからなる。インナーライナー14はタイヤ2の内圧を保持する。
【0052】
それぞれのスチールフィラー16は、ビード部に位置する。スチールフィラー16は、カーカスプライ36に沿ってコア32の周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返される。図示されないが、スチールフィラー16は並列した多数のフィラーコードを含む。フィラーコードとしてスチールコードが用いられる。
【0053】
補強層18は径方向においてトレッド4とカーカス12との間に位置する。補強層18はトレッド4の径方向内側に位置する。このタイヤ2の補強層18はベルト38とバンド40とを備える。
【0054】
ベルト38は、少なくとも3枚のベルトプライ42を備える。各ベルトプライ42は、両端42eが赤道面を挟んで相対するように配置される。
ベルト38は、第一ベルトプライ42A、第二ベルトプライ42B及び第三ベルトプライ42Cを備える。第一ベルトプライ42A、第二ベルトプライ42B及び第三ベルトプライ42Cはこの順で径方向に並ぶ。
このタイヤ2では、ベルト38を構成する少なくとも3枚のベルトプライ42のうち、径方向において最も内側に位置するベルトプライ42が第一ベルトプライ42Aであり、内側から順に第一ベルトプライ42A、第二ベルトプライ42B及び第三ベルトプライ42Cが並ぶ。ベルト38は、第一ベルトプライ42Aと、第一ベルトプライ42Aの径方向外側に位置する第二ベルトプライ42Bと、第二ベルトプライ42Bの径方向外側に位置する第三ベルトプライ42Cとを備える。このタイヤ2では、ベルト38が、径方向外側から順に、第一ベルトプライ42A、第二ベルトプライ42B及び第三ベルトプライ42Cが並ぶように構成されてもよい。
【0055】
このタイヤ2では、ベルト38は4枚以上のベルトプライ42で構成されてもよい。タイヤ2の軽量化の観点から、ベルト38は3枚のベルトプライ42、すなわち、第一ベルトプライ42A、第二ベルトプライ42B及び第三ベルトプライ42Cで構成されるのが好ましい。
【0056】
図1に示されるように、第一ベルトプライ42Aの端42Aeはショルダー周方向溝28sの軸方向外側に位置する。第二ベルトプライ42Bの端42Beはショルダー周方向溝28sの軸方向外側に位置する。第三ベルトプライ42Cの端42Ceはショルダー周方向溝28sの軸方向外側に位置する。この第三ベルトプライ42Cの端42Ceがショルダー周方向溝28sの軸方向内側に位置してもよい。損傷防止の観点から、第三ベルトプライ42Cの端42Ceが径方向においてショルダー周方向溝28sと重複しないように、この第三ベルトプライ42Cは配置される。
【0057】
図1において、符号W1で示される長さは第一ベルトプライ42Aの幅である。符号W2で示される長さは、第二ベルトプライ42Bの幅である。符号W3で示される長さは、第三ベルトプライ42Cの幅である。各ベルトプライ42の幅は、ベルトプライ42の第一の端42eから第二の端42eまでの軸方向距離である。ベルトプライ42の幅は、軸方向幅とも称される。ベルトプライ42の端は、後述する、ベルトプライ42に含まれるベルトコードの端によって表される。
【0058】
このタイヤ2では、第一ベルトプライ42Aが最も広い幅W1を有し、第三ベルトプライ42Cが最も狭い幅W3を有する。第二ベルトプライ42Bの幅W2は第一ベルトプライ42Aの幅W1よりも狭く、第三ベルトプライ42Cの幅W3よりも広い。このベルト40は、トレッド部Tの剛性を効果的に高める。
【0059】
このタイヤ2では、トレッド部Tの剛性が効果的に高められる観点から、トレッド4の幅WTに対する第一ベルトプライ42Aの幅W1の比(W1/WT)は0.75以上0.95以下が好ましい。トレッド4の幅WTに対する第二ベルトプライ42Bの幅W2の比(W2/WT)は0.70以上0.90以下が好ましい。トレッド4の幅WTに対する第三ベルトプライ42Cの幅W3の比(W3/WT)は0.50以上である。第三ベルトプライ42Cの幅W3は、タイヤ2の仕様(特に、ショルダー周方向溝28sの位置)を考慮して適宜設定される。
【0060】
このタイヤ2では、ベルト38を構成する少なくとも3枚のベルトプライ42のうち、径方向において最も内側に位置するベルトプライ42が、最も広い幅W1を有する第一ベルトプライ42Aである。
図1において符号WBで示される長さはベルト38の幅である。このタイヤ2では、ベルト38の幅WBは、最も広い幅を有するベルトプライ42の幅で表される。前述したように、第一ベルトプライ42Aが最も広い軸方向幅W1を有する。このタイヤ2のベルト38の幅WBは、第一ベルトプライ42Aの幅W1で表される。このタイヤ2では、第一ベルトプライ42Aの端42Aeがベルト38の端38eである。ベルト38の端38eは補強層18の端18eでもある。
【0061】
バンド40は、フルバンド44と、一対のエッジバンド46とを備える。
フルバンド44は、両端44eが赤道面を挟んで相対するように配置される。フルバンド44の端44eはベルト38の端38eの軸方向内側に位置する。フルバンド44の端44eは第一ベルトプライ42Aの端42Aeの軸方向内側に位置し、第二ベルトプライ42Bの端42Beの軸方向内側に位置する。フルバンド44の端44eは第三ベルトプライ42Cの端42Ceの軸方向外側に位置する。
一対のエッジバンド46は軸方向に離間して配置される。一対のエッジバンド46のうちの第一のエッジバンド46と第二のエッジバンド46とは赤道面を挟んで相対する。このタイヤ2では、第一のエッジバンド46と第二のエッジバンド46とはそれぞれ第二ベルトプライ42Bの径方向外側に位置し、第一のエッジバンド46と第二のエッジバンド46との間にベルト38の一部をなす第三ベルトプライ42Cが位置する。
【0062】
図2は、補強層18の構成を示す。
図2において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の周方向である。
図2の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の径方向である。紙面の表側が径方向外側であり、裏側が径方向内側である。
【0063】
図2に示されるように、ベルト38を構成する各ベルトプライ42は並列した多数のベルトコード48を含む。
図2では、説明の便宜のため、ベルトコード48は実線で表されるが、ベルトコード48はトッピングゴム50で覆われる。
このタイヤ2のベルトコード48はスチールコードである。各ベルトプライ42におけるベルトコード48の密度は、15エンズ/5cm以上30エンズ/5cm以下である。
【0064】
各ベルトプライ42においてベルトコード48は、周方向に対して傾斜する。
第一ベルトプライ42Aに含まれるベルトコード48の傾斜の向き(以下、第一ベルトコード48Aの傾斜方向)は、第二ベルトプライ42Bに含まれるベルトコード48の傾斜の向き(以下、第二ベルトコード48Bの傾斜方向)と逆である。このタイヤ2では、第一ベルトコード48Aと第二ベルトコード48Bとが交差するようにベルト40は構成される。
第三ベルトプライ42Cに含まれるベルトコード48の傾斜の向き(以下、第三ベルトコード48Cの傾斜方向)は第二ベルトコード48Bの傾斜方向と同じである。第三ベルトコード48Cの傾斜方向が第二ベルトコード48Bの傾斜方向と逆であってもよい。
【0065】
図2において、角度θ1は、第一ベルトプライ42Aに含まれるベルトコード48が赤道面に対してなす角度(以下、第一ベルトコード48Aの傾斜角度θ1)である。角度θ2は、第二ベルトプライ42Bに含まれるベルトコード48が赤道面に対してなす角度(以下、第二ベルトコード48Bの傾斜角度θ2)である。角度θ3は、第三ベルトプライ42Cに含まれるベルトコード48が赤道面に対してなす角度(以下、第三ベルトコード48Cの傾斜角度θ3)である。
【0066】
このタイヤ2では、第一ベルトコード48Aの傾斜角度θ1、第二ベルトコード48Bの傾斜角度θ2及び第三ベルトコード48Cの傾斜角度θ3は、10°以上が好ましく、60°以下が好ましい。
トレッド部Tの動きが効果的に拘束され、安定した形状の接地面が得られる観点から、第一ベルトコード48Aの傾斜角度θ1は15°以上がより好ましく、30°以下がより好ましい。第一ベルトコード48Aの傾斜角度θ1は20°以下がさらに好ましい。第二ベルトコード48Bの傾斜角度θ2は15°以上がより好ましく、30°以下がより好ましい。第二ベルトコード48Bの傾斜角度θ2は20°以下がさらに好ましい。第三ベルトコード48Cの傾斜角度θ3は、15°以上がより好ましく、50°以下がより好ましい。第三ベルトコード48Cの傾斜角度θ3は25°以下がさらに好ましい。
【0067】
図2に示されるように、バンド40を構成するフルバンド44及びエッジバンド46は、らせん状に巻かれたバンドコード52を含む。
図2では、説明の便宜のためバンドコード52は実線で表されるが、バンドコード52はトッピングゴム54で覆われる。
【0068】
このタイヤ2では、バンドコード52はスチールコード、又は有機繊維からなるコード(以下、有機繊維コード)である。バンドコード52として有機繊維コードが用いられる場合、この有機繊維としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、及びアラミド繊維が例示される。フルバンド44のバンドコード52Fと、エッジバンド46のバンドコード52Eとに同じコードが用いられてもよく、異なるコードが用いられてもよい。タイヤ2の仕様に応じて、フルバンド44及びエッジバンド46に用いられるバンドコード52が決められる。
【0069】
前述したように、フルバンド44はらせん状に巻かれたバンドコード52Fを含む。フルバンド44はジョイントレス構造を有する。フルバンド44において、バンドコード52Fが周方向に対してなす角度は、好ましくは5°以下、より好ましくは2°以下である。バンドコード52Fは実質的に周方向に延びる。
【0070】
フルバンド44におけるバンドコード52Fの密度は、20エンズ/5cm以上35エンズ/5cm以下である。バンドコード52Fの密度は、子午線断面に含まれるフルバンド44の断面において、フルバンド44の5cm幅あたりに含まれるバンドコード52Fの断面数により表される。
【0071】
前述したように、エッジバンド46はらせん状に巻かれたバンドコード52Eを含む。エッジバンド46はジョイントレス構造を有する。エッジバンド46において、バンドコード52Eが周方向に対してなす角度は、好ましくは5°以下、より好ましくは2°以下である。エッジバンド46のバンドコード52Eは実質的に周方向に延びる。
【0072】
エッジバンド46におけるバンドコード52Eの密度は、20エンズ/5cm以上35エンズ/5cm以下である。このバンドコード52Eの密度は、子午線断面に含まれるエッジバンド46の断面において、このエッジバンド46の5cm幅あたりに含まれるバンドコード52Eの断面数により表される。
【0073】
図3は、
図1に示されたタイヤ2の断面の一部を示す。この
図3は、このタイヤ2のトレッド部Tを示す。
【0074】
このタイヤ2では、第一ベルトプライ42Aの端42Aeと、第二ベルトプライ42Bの端42Beとはそれぞれ、ゴム層56で覆われる。ゴム層56で覆われた第一ベルトプライ42Aの端42Aeと第二ベルトプライ42Bの端42Beとの間には、さらに2枚のゴム層56が配置される。このタイヤ2では、第一ベルトプライ42Aの端42Aeと第二ベルトプライ42Bの端42Beとの間に、計4枚のゴム層56からなるエッジ部材58が構成される。エッジ部材58は架橋ゴムからなる。エッジ部材58は、第一ベルトプライ42Aの端42Aeと第二ベルトプライ42Bの端42Beとの間隔維持に貢献する。このタイヤ2では、走行による、第一ベルトプライ42Aの端42Aeと第二ベルトプライ42Bの端42Beとの位置関係の変化が抑えられる。エッジ部材58は、補強層18の一部である。このタイヤ2の補強層18は、ベルト38及びバンド40に加え、一対のエッジ部材58を備える。
【0075】
緩衝層20は補強層18の径方向内側に位置する。緩衝層20はトレッド4の径方向内側においてカーカス12に積層される。
緩衝層20は、両端20eが赤道面を挟んで相対するように配置される。緩衝層20の端20eはベルト38の端38eの軸方向外側に位置する。緩衝層20の端20eはベルト38の端38eの径方向内側に位置する。
緩衝層20は架橋ゴムからなる。緩衝層20の複素弾性率E*は3.0MPa以上6.0MPa以下である。
【0076】
緩衝層20はシート部60と一対のハンプ部62とを備える。
シート部60は赤道面からそれぞれのハンプ部62に向かってのびる。それぞれのハンプ部62はシート部60の軸方向外側に位置する。ハンプ部62はシート部60に連なる。ハンプ部62はシート部60と一体である。
図3において符号SHで示される位置は、緩衝層20の外面上の特定の位置を表す。このタイヤ2では、位置SHはシート部60とハンプ部62との境界である。境界SHは、ショルダー周方向溝28sの底28sbの軸方向外側に位置する。
【0077】
本開示において、緩衝層20の厚さは、タイヤ2の子午線断面においてタイヤ2の内面の法線に沿って計測される。
【0078】
図3において符号Paで示される位置はシート部60の外面と赤道面との交点である。符号Taで示される長さは、赤道面におけるシート部60の厚さである。厚さTaは、交点Paを通るタイヤ2の内面法線(すなわち、赤道面)に沿って計測される。
このタイヤ2では、緩衝層20のうち、赤道面を挟んで相対する第一の境界SHと第二の境界SHとの間の部分は厚さTaで維持され、この部分がシート部60である。シート部60は一様な厚さTaを有する。
【0079】
図3において、符号Pbはハンプ部62の外面上の特定の位置を表す。実線NLbは、位置Pbを通る、タイヤ2の内面法線である。両矢印Tbで示される長さは、位置Pbにおけるハンプ部62の厚さである。厚さTbは、タイヤ2の内面法線NLbに沿って計測される。
【0080】
このタイヤ2では、ハンプ部62の厚さは、シート部60との境界SHから位置Pbに向かって漸増し、位置Pbから緩衝層20の端20eに向かって漸減する。タイヤ2の子午線断面において、ハンプ部62は三角形状の断面形状を有する。
ハンプ部62の厚さは位置Pbにおいて最大を示す。ハンプ部62は位置Pbにおいて最大厚さTbを有する。位置Pbはハンプ部62の最大厚さ位置である。
【0081】
このタイヤ2では、シート部60の厚さは赤道面における厚さTaで表される。ハンプ部62の厚さは最大厚さTbで表される。ハンプ部62はシート部60よりも厚い。
【0082】
このタイヤ2では、補強層18が径方向外側から緩衝層20に積層される。補強層18の径方向内側部分は第一ベルトプライ42Aで構成される。このタイヤ2では、第一ベルトプライ42Aが緩衝層20に積層される。
図3に示されるように、ハンプ部62の最大厚さ位置Pbは第一ベルトプライ42Aの端42Aeの近くに位置する。ハンプ部62は第一ベルトプライ42Aの端42Aeにおいて最大厚さTbを有する。前述したように、このタイヤ2の第一ベルトプライ42Aの端42Aeはベルト38の端38eである。このタイヤ2では、ハンプ部62はベルト38の端38eにおいて最大厚さTbを有する。
【0083】
本開示において、ハンプ部62がベルト38の端38eにおいて最大厚さTbを有するとは、タイヤ2の子午線断面において、ベルト38の端38eからハンプ部62の最大厚さ位置Pbまでの最短距離が5mm以下であることを意味する。
【0084】
このタイヤ2では、緩衝層20のハンプ部62は、第一ベルトプライ42Aの端42Aeとカーカス12との間に位置する。タイヤ2が走行すると補強層18の端38eの部分に歪みが発生するが、厚いハンプ部62がこの歪みを緩和する。このタイヤ2では、この歪みを起因とする損傷の発生が抑制される。ハンプ部62はトレッド部の耐久性向上に貢献する。
【0085】
サイド部Sが撓むことでトレッド部Tに作用する負荷が軽減される。前述したように、このタイヤ2は低偏平タイヤである。このタイヤ2の撓み代は小さいため、高偏平タイヤのサイド部のように、このサイド部Sは、トレッド部Tに作用する負荷の軽減に貢献できない。
【0086】
従来タイヤでは、このタイヤ2の第一ベルトプライ42Aに対応するベルトプライ(以下、対応プライ)とカーカスプライとの間に、ベルトコードの傾斜角度を、カーカスコードの交差角度よりも小さく、対応プライのベルトコードの傾斜角度よりも大きい角度に調整した、ベルトプライ(以下、傾斜プライ)が設けられる。この傾斜プライがカーカスに積層され、この傾斜プライに対応プライが積層される。
【0087】
このタイヤ2では、緩衝層20のシート部60がトレッド4の内側においてカーカス12と補強層18との間に位置する。シート部60は補強層18の径方向内側においてカーカス12に積層され、このシート部60に補強層18の径方向内側部分をなす第一ベルトプライ42Aが積層される。
【0088】
シート部60は架橋ゴムからなる。このタイヤ2では、シート部60がトレッド部Tに作用する負荷の軽減に貢献する。シート部60は従来タイヤの傾斜プライのようにベルトコードを含まない。このタイヤ2では、従来の低偏平タイヤに比べてトレッド部Tに作用する負荷が軽減され、この負荷を起因とする損傷や偏摩耗の発生が抑制される。シート部60は、トレッド部Tの耐久性や耐偏摩耗性の向上に貢献する。
【0089】
トレッド部Tに作用する負荷の軽減にシート部60が貢献するので、従来の低偏平タイヤに設けられる後述のクッション層に比べて小さなハンプ部62を、このタイヤ2は採用できる。コンパクトなハンプ部62は、ベルト38の端38eの跳ね上がり防止に貢献する。カーカス12の輪郭(以下、ケースラインとも称される。)が適正な形状で構成される。このタイヤ2では、狙いの接地形状に近い接地形状が得られる。高偏平タイヤに比べてベルト38の内圧分担が大きいにも関わらず、寸法成長による接地形状の大幅な変化が抑制される。シート部60と一対のハンプ部62とで構成された緩衝層20は、耐偏摩耗性の向上に貢献する。
【0090】
前述したように、補強層18の一部をなすバンド40はらせん状に巻かれたバンドコード52を含む。バンド40はトレッド部Tを拘束する。バンド40は走行によるタイヤ2の形状変化を抑制する。前述したように緩衝層20によってケースラインの適正化が図れる。このタイヤ2では、緩衝層20とバンド40とが走行による形状変化を効果的に抑制する。このタイヤ2では、補強層の18の他の一部をなすベルト38を3枚のベルトプライ42で構成しても、接地形状の安定化が図られ、良好な耐偏摩耗性が得られる。しかもベルト38を3枚のベルトプライ42で構成することは、タイヤ2の軽量化に貢献する。
このタイヤ2は、軽量化を図りながら、接地形状の安定化と、トレッド部に作用する負荷の軽減とを達成できる。
【0091】
タイヤの製造では、トレッドやサイドウォール等の構成要素を組み合わせて生タイヤ(未加硫状態のタイヤであり、ローカバーとも称される。)が準備される。この生タイヤをモールド内で加硫することでタイヤは得られる。
従来のタイヤでは、ベルトの歪みを緩和するために、ベルトの端とカーカスとの間に一対のクッション層が設けられる。一対のクッション層は軸方向に離間して配置される。生タイヤの成形時においては、それぞれのクッション層がそれぞれの位置に独立してセットされる。赤道面に対するクッション層の位置にずれが生じることが懸念される。
【0092】
このタイヤ2では、ハンプ部62が従来タイヤのクッション層に対応する。このタイヤ2では、シート部60が第一のハンプ部62と第二のハンプ部62との間を架け渡す。第一のハンプ部62を適正な位置にセットすることで、第二のハンプ部62も適正な位置にセットされる。このタイヤ2では、赤道面に対するハンプ部62の位置にずれは生じにくい。緩衝層20は、タイヤ2の品質安定化に貢献する。シート部60及び一対のハンプ部62が同時に生タイヤに組み合わされるので、生タイヤの成形時間が短縮される。緩衝層20は生産性の向上にも貢献する。
【0093】
前述したように、このタイヤ2は、軽量化を図りながら、接地形状の安定化と、トレッド部に作用する負荷の軽減とを達成できる。このタイヤ2は、従来の低偏平タイヤに比べて、軽く、耐偏摩耗性及びトレッド耐久性に優れる。しかもこのタイヤ2では、品質の安定化と生産性の向上とが達成される。
【0094】
このタイヤ2では、シート部60の厚さTaは1.2mm以上1.8mm以下であることが好ましい。
厚さTaが1.2mm以上に設定されることにより、シート部60が歪の緩和に効果的に貢献できる。このタイヤ2では、良好なトレッド耐久性が得られる。この観点から、厚さTaは1.3mm以上であることがより好ましく、1.4mm以上であることがさらに好ましい。
厚さTaが1.8mm以下に設定されることにより、ケースラインが適正な形状で構成される。このタイヤ2では、狙いの接地形状に近い接地形状が得られる。このタイヤ2では、良好な耐偏摩耗性が得られる。この観点から、厚さTaは1.7mm以下であることがより好ましく、1.6mm以下であることがさらに好ましい。
【0095】
このタイヤ2では、ハンプ部62の厚さTbは2.0mm以上6.0mm以下であることが好ましい。
厚さTbが2.0mm以上に設定されることにより、補強層18の端38eの部分に生じる歪をハンプ部62が効果的に貢献できる。このタイヤ2では、良好なトレッド耐久性が得られる。この観点から、厚さTbは2.5mm以上であることがより好ましく、3.0mm以上であることがさらに好ましい。
厚さTbが6.0mm以下に設定されることにより、ケースラインが適正な形状で構成される。このタイヤ2では、狙いの接地形状に近い接地形状が得られる。このタイヤ2では、良好な耐偏摩耗性が得られる。この観点から、厚さTbは5.5mm以下であることがより好ましく、5.0mm以下であることがさらに好ましい。
【0096】
このタイヤ2では、トレッド耐久性及び耐偏摩耗性の向上の観点から、シート部60の厚さTaは1.2mm以上1.8mm以下であり、ハンプ部62の厚さTbは2.0mm以上6.0mm以下であることがより好ましい。
【0097】
このタイヤ2では、ハンプ部62の厚さTbの、シート部60の厚さTaに対する比(Tb/Ta)は1.1以上5.0以下であることが好ましい。
比(Tb/Ta)が1.1以上に設定されることにより、ハンプ部62がベルト38の端38eの部分に生じる歪みの緩和に貢献し、シート部60が接地形状の安定化に貢献する。このタイヤ2では、良好なトレッド耐久性及び耐偏摩耗性が得られる。この観点から、この比(Tb/Ta)は1.5以上であることがより好ましく、2.0以上であることがさらに好ましい。
比(Tb/Ta)が5.0以下に設定されることにより、ハンプ部62が接地形状の安定化に貢献し、シート部60がトレッド部に作用する負荷の軽減に貢献する。この場合においても、このタイヤ2では、良好なトレッド耐久性及び耐偏摩耗性が得られる。この観点から、この比(Tb/Ta)は4.0以下であることがより好ましく、3.0以下であることさらに好ましい。
【0098】
図4は、赤道面における緩衝層20の配置の状況を示す。
図4において符号64で示される要素はカーカスプライ36のカーカスコードである。符号66で示される要素はトッピングゴムである。
緩衝層20はカーカスプライ36と第一ベルトプライ42Aとの間に位置する。
図4に示されるように、カーカスコード64と第一ベルトコード48Aとの間には、カーカスプライ36のトッピングゴム66、緩衝層20及び第一ベルトプライ42Aのトッピングゴム50が位置する。カーカスコード64と第一ベルトコード48Aとの間にはゴム成分が位置し、ゴム成分はトッピングゴム66、緩衝層20及びトッピングゴム50を含む。
このタイヤ2では、カーカスコード64と第一ベルトコード48Aとの間の距離は、緩衝層20の厚さを調整することでコントロールされる。前述したように、緩衝層20のうち、第一の境界SHと第二の境界SHとの間の部分は、一様な厚さTaを有するシート部60である。第一の境界SHと第二の境界SHとの間において、カーカスコード64と第一ベルトコード48Aとの間の距離は、一定である。
【0099】
本開示においては、カーカスコード64と第一ベルトコード48Aとの間の距離は、緩衝層20の見かけ厚さである。特に、第一の境界SHと第二の境界SHとの間における、緩衝層20の見かけ厚さはシート部60の見かけ厚さとも称される。
【0100】
図4において符号TAで示される長さは、赤道面における、シート部60の見かけ厚さである。シート部60の見かけ厚さTAは、赤道面に沿って計測される。このタイヤ2では、赤道面における、シート部60の見かけ厚さTAで、シート部60の見かけ厚さが表される。
【0101】
このタイヤ2では、シート部60の見かけ厚さTAは2.2mm以上2.8mm以下であることが好ましい。
見かけ厚さTAが2.2mm以上に設定されることにより、カーカス12と補強層20との間のゴム成分が歪の緩和に効果的に貢献できる。このゴム成分を起因とする損傷の発生が防止される。この観点から、見かけ厚さTAは2.4mm以上であるのがより好ましい。
見かけ厚さTAが2.8mm以下に設定されることにより、カーカス12と補強層20との間のゴム成分が質量増加の抑制に貢献できる。この観点から、見かけ厚さTAは2.6mm以下であるのがより好ましい。
【0102】
図5は、ベルト18の端18eにおける緩衝層20の配置の状況を示す。緩衝層20はカーカスプライ36に積層される。
図5に示されるように、緩衝層20のハンプ部62と、カーカスプライ36のカーカスコード64との間には、カーカスプライ36のトッピングゴム66が位置する。
【0103】
図5において符号TBで示される長さは、前述の内面法線NLbに沿って計測される、カーカスコード64からハンプ部62の最大厚さ位置Pbまでの距離である。本開示においては、この距離TBがハンプ部62の見かけ最大厚さである。ハンプ部62の見かけ最大厚さTBは、シート部60の見かけ厚さTAよりも厚い。
【0104】
このタイヤ2では、ハンプ部62の見かけ最大厚さTBは2.5mm以上6.5mm以下であることが好ましい。
見かけ最大厚さTBが2.5mm以上に設定されることにより、補強層18の端38eの部分に生じる歪をハンプ部62が効果的に貢献できる。このタイヤ2では、良好なトレッド耐久性が得られる。この観点から、見かけ最大厚さTBは3.0mm以上であることがより好ましく、3.5mm以上であることがさらに好ましい。
見かけ最大厚さTBが6.5mm以下に設定されることにより、ケースラインが適正な形状で構成される。このタイヤ2では、狙いの接地形状に近い接地形状が得られる。このタイヤ2では、良好な耐偏摩耗性が得られる。この観点から、見かけ最大厚さTBは6.0mm以下であることがより好ましく、5.5mm以下であることがさらに好ましい。
【0105】
このタイヤ2では、トレッド耐久性及び耐偏摩耗性の向上の観点から、シート部60の見かけ厚さTAは2.2mm以上2.8mm以下であり、ハンプ部62の見かけ最大厚さTBは2.5mm以上6.5mm以下であることがより好ましい。
【0106】
図1において符号WCで示される長さは緩衝層20の幅である。緩衝層20の幅WCは、緩衝層20の第一の端20eからこの緩衝層20の第二の端20eまでの軸方向距離である。
【0107】
このタイヤ2では、緩衝層20の幅WCの、トレッド4の幅WTに対する比(WC/WT)は1.00以上1.20以下であることが好ましい。
比(WC/WT)が1.00以上に設定されることにより、補強層18の端38eの部分に生じる歪の緩和に緩衝層20が効果的に貢献できる。このタイヤ2では、良好なトレッド耐久性が得られる。この観点から、この比(WC/WT)は1.05以上であることがより好ましい。
比(WC/WT)が1.20以下に設定されることにより、サイド部Sの撓み代が適切に維持される。このタイヤ2では、カーカスコードの破断を伴う損傷(Cord Broken Up:CBU)の発生が抑えられる。この観点から、この比(WC/WT)は1.15以下であることがより好ましい。
【0108】
図3において符号WHで示される長さは、第一のハンプ部62が最大厚さTbを示す位置Pbから第二のハンプ部62が最大厚さTbを示す位置Pbまでの軸方向距離である。この軸方向距離WHはハンプ間距離とも称される。
【0109】
前述したように、ハンプ部62の最大厚さ位置Pbは第一ベルトプライ42Aの端42Aeの近くに位置する。このタイヤ2の第一ベルトプライ42Aの端42Aeはベルト38の端38eであるので、ハンプ部62の最大厚さ位置Pbはベルト38の端38eの近くに位置する。これにより、ケースラインが適正な形状で構成される。このタイヤ2では、狙いの接地形状に近い接地形状が得られる。このタイヤ2では、良好な耐偏摩耗性が得られる。この観点から、このタイヤ2では、ハンプ間距離WHの、ベルト38の幅WBに対する比(WH/WB)は0.95以上1.05以下であることが好ましい。この比(WH/WB)は、0.98以上であることがより好ましく、1.02以下であることがより好ましい。
【0110】
図3において符号WDで示される長さは、第一のハンプ部62側におけるこのハンプ部62とシート部60との境界SHから第二のハンプ部62側におけるこのハンプ部62とシート部60との境界SHまでの軸方向距離である。この軸方向距離WDは境界間距離とも称される。
本開示においては、シート部60とハンプ部62との境界SHは、緩衝層20の見かけ厚さがシート部60の見かけ厚さTAの1.2倍を示す位置によって表される。
【0111】
このタイヤ2では、境界間距離WDの、ハンプ間距離WHに対する比(WD/WH)は0.65以上0.85以下であることが好ましい。
比(WD/WH)が0.65以上に設定されることにより、ハンプ部62のコンパクト化が図られ、適正な形状のケースラインが構成される。狙いの接地形状に近い接地形状が得られる。このタイヤ2では、良好な耐偏摩耗性が得られる。この観点から、この比(WD/WH)は0.70以上であることがより好ましい。
比(WD/WH)が0.85以下に設定されることにより、補強層18の端38eの部分に生じる歪の緩和にハンプ部62が効果的に貢献できる。このタイヤ2では、良好なトレッド耐久性が得られる。この観点から、この比(WD/WH)は0.80以下であることがより好ましい。
【0112】
前述したように、このタイヤ2の補強層18の一部をなすバンド40はフルバンド44を備える。フルバンド44は、赤道面からそれぞれの端44eに向かって軸方向に延びる。フルバンド44はらせん状に巻かれたバンドコード52Fを含む。フルバンド44はトレッド部Tを拘束する。フルバンド44は走行によるタイヤ2の形状変化を抑制する。
【0113】
タイヤの走行状態において、トレッド端部分はアクティブに動く。周方向溝が刻まれている部分の剛性は、そうでない部分の剛性よりも低い。低偏平なタイヤは高偏平なタイヤよりも幅広のトレッド面を有する。低偏平タイヤでは、ショルダー周方向溝が高偏平なタイヤに比べてより軸方向外側に配置される。低偏平タイヤでは、ショルダー周方向溝付近における形状変化が大きい。
【0114】
このタイヤ2では、フルバンド44の端44eがショルダー周方向溝28sの軸方向外側に位置するように、フルバンド44が構成される。このタイヤ2では、ショルダー周方向溝28sの径方向内側にフルバンド44が位置する。
【0115】
このタイヤ2は低偏平なタイヤであるが、ショルダー周方向溝28s付近の変形をフルバンド44が効果的に抑える。このタイヤ2では、ショルダー周方向溝28s付近における形状変化が効果的に抑えられる。この観点から、このタイヤ2では、フルバンド44の端44eはショルダー周方向溝28sの軸方向外側に位置するのが好ましい。
【0116】
図3において、両矢印SFはショルダー周方向溝28s、詳細には、ショルダー周方向溝28sの外縁からフルバンド44の端44eまでの軸方向距離である。両矢印WSは、ショルダー陸部30sの幅である。この幅WSは、ショルダー陸部30sの頂面の内端(すなわち、ショルダー周方向溝28sの外縁)から、この頂面の外端(このタイヤ2では、トレッド面22の端PE)までの軸方向距離により表される。
【0117】
このタイヤ2では、ショルダー周方向溝28sからフルバンド44の端44eまでの軸方向距離SFの、ショルダー陸部30sの幅WSに対する比率(SF/WS)は50%以下が好ましい。これにより、走行状態においてアクティブに動くトレッド4の端の部分からフルバンド44の端44eが離れて配置されるので、バンドコード52における張力変動が抑えられる。このタイヤ2では、バンドコード52の破断の発生が抑えられる。このタイヤ2のフルバンド44は形状変化の抑制に貢献する。この観点から、この比率(SF/WS)は35%以下がより好ましく、25%以下がさらに好ましい。
【0118】
比率(SF/WS)が10%以上に設定されることにより、フルバンド44の端44eがショルダー周方向溝28s、具体的には、ショルダー周方向溝28sの底28sbから適当な間隔をあけて配置される。このタイヤ2では、ショルダー周方向溝28sの底28sbを起点とする損傷の発生が抑えられる。フルバンド44の幅が確保されるので、このフルバンド44がタイヤ2の形状変化の抑制に貢献する。この観点から、この比率(SF/WS)は15%以上がより好ましい。
【0119】
前述したように、このタイヤ2では、フルバンド44の端44eはベルト38の端38eの軸方向内側に位置する。ベルト38はフルバンド44よりも広い。このベルト38は、フルバンド44の端44eを拘束する。ベルト38は、フルバンド44に含まれるバンドコード52の張力変動の抑制に貢献する。張力変動によるバンドコード52の破断の発生が防止されるので、フルバンド44は、形状変化の抑制機能を安定に発揮できる。この観点から、フルバンド44の端44eはベルト38の端38eの軸方向内側に位置するのが好ましい。特に、ショルダー周方向溝28s付近における形状変化が効果的に抑えられる観点から、このタイヤ2では、フルバンド44の端44eは軸方向においてショルダー周方向溝28sとベルト38の端38eとの間に位置するのがより好ましい。
【0120】
このタイヤ2では、フルバンド44は、径方向において第一ベルトプライ42Aと第二ベルトプライ42Bとの間に位置する。
第一ベルトプライ42A及び第二ベルトプライ42Bは、フルバンド44に作用する力を抑制する。特に、第一ベルトプライ42Aに含まれるベルトコード48と第二ベルトプライ42Bに含まれるベルトコード48とは互いに交差する関係にあるので、フルバンド44に作用する力が効果的に抑制される。フルバンド44に含まれるバンドコード52Fの張力変動が抑制されるので、この張力変動によるバンドコード52Fの破断の発生が防止される。このタイヤ2のフルバンド44は、形状変化の抑制機能を安定に発揮できる。この観点から、このタイヤ2では、フルバンド44は、径方向において第一ベルトプライ42Aと第二ベルトプライ42Bとの間に位置するのが好ましい。特に、ショルダー周方向溝28s付近における形状変化が効果的に抑えられる観点から、このタイヤ2では、フルバンド44は、径方向において第一ベルトプライ42Aと第二ベルトプライ42Bとの間に位置し、フルバンド44の端44eが軸方向においてショルダー周方向溝28sとベルト38の端38eとの間に位置するのがより好ましい。
【0121】
前述したように、軸方向において、フルバンド44の端44eは第一ベルトプライ42Aの端42Aeの内側に位置し、このフルバンド44の端44eは第二ベルトプライ42Bの端42Beの内側に位置する。言い換えれば、第一ベルトプライ42A及び第二ベルトプライ42Bはフルバンド44よりも広い。このタイヤ2では、フルバンド44よりも広い第一ベルトプライ42Aと第二ベルトプライ42Bとの間にこのフルバンド44は挟まれる。フルバンド44に含まれるバンドコード52の張力変動がより効果的に抑制されるので、フルバンド44のバンドコード52に破断は生じにくい。このタイヤ2のフルバンド44は、形状変化の抑制機能を安定に発揮できる。この観点から、このタイヤ2では、フルバンド44は径方向において第一ベルトプライ42Aと第二ベルトプライ42Bとの間に位置し、フルバンド44の端44eは第一ベルトプライ42Aの端42Aeの軸方向内側に位置し、このフルバンド44の端44eは第二ベルトプライ42Bの端42Beの軸方向内側に位置するのが好ましい。特に、ショルダー周方向溝28s付近における形状変化が効果的に抑えられる観点から、このタイヤ2では、フルバンド44は径方向において第一ベルトプライ42Aと第二ベルトプライ42Bとの間に位置し、フルバンド44の端44eが第一ベルトプライ42Aの端42Aeの軸方向内側に位置し、このフルバンド44の端44eが第二ベルトプライ42Bの端42Beの軸方向内側に位置し、さらにこのフルバンド44の端44eが軸方向においてショルダー周方向溝28sとベルト38の端38eとの間に位置するのがより好ましい。
【0122】
前述したように、このタイヤ2の補強層18の一部をなすバンド40はフルバンド44に加えて、一対のエッジバンド46を備える。
このタイヤ2では、それぞれのエッジバンド46は、径方向においてトレッド4とフルバンド44との間に位置する。エッジバンド46は、フルバンド44の端44eの径方向外側に位置する。エッジバンド46の内端46ueはフルバンド44の端44eの軸方向内側に位置する。エッジバンド46の外端46seはフルバンド44の端44eの軸方向外側に位置する。エッジバンド46は、径方向においてフルバンド44の端44eと重複する。
このタイヤ2では、エッジバンド46の外端46se位置が軸方向においてフルバンド44の端44e位置と一致していてもよい。この場合においても、エッジバンド46はフルバンド44の端44eの径方向外側に位置し、エッジバンド46は径方向においてフルバンド44の端44eと重複する。
【0123】
このタイヤ2では、エッジバンド46がフルバンド44の端44eの外側に位置する。
このタイヤ2は低偏平なタイヤであるが、フルバンド44及び一対のエッジバンド46がトレッド部の変形を効果的に抑制する。ケースラインの変化が抑制されるので、接地形状の変化が抑制される。
エッジバンド46がフルバンド44の端44eを拘束するので、フルバンド44に含まれるバンドコード52Fの張力変動が抑制される。張力変動によるバンドコード52Fの破断の発生が防止されるので、このフルバンド44は形状変化の抑制機能を安定に発揮できる。このタイヤ2では、接地形状の安定化が図れる。この観点から、このタイヤ2は、両端44eが赤道面を挟んで相対するように配置されたフルバンド44を備え、このフルバンド44のそれぞれの端44eの径方向外側に、エッジバンド46が位置するのが好ましい。
【0124】
前述したように、このタイヤ2では、エッジバンド46の内端46ueはフルバンド44の端44eの軸方向内側に位置する。
図3において、符号Weで示される長さはフルバンド44の端44eからエッジバンド46の内端46ueまでの軸方向距離である。
【0125】
このタイヤ2では、フルバンド44の端44eからエッジバンド46の内端46ueまでの軸方向距離Weは10mm以上が好ましい。これにより、エッジバンド46がフルバンド44の端44eを効果的に拘束する。フルバンド44に含まれるバンドコード52の張力変動が抑えられるので、この張力変動によるバンドコード52の破断の発生が抑えられる。このタイヤ2のフルバンド44は、形状変化の抑制機能をより安定に発揮できる。この観点から、この軸方向距離Weは20mm以上が好ましい。エッジバンド46によるタイヤ2の質量への影響が抑えられる観点から、軸方向距離Weは50mm以下が好ましい。
【0126】
このタイヤ2では、エッジバンド46の内端46ue位置の設定には、ショルダー周方向溝28sの底28sbを起点とする損傷の発生への関与が考慮される。ショルダー周方向溝28sの底28sbを起点とする損傷の発生が効果的に抑えられる観点から、軸方向において、エッジバンド46の内端46ueは、ショルダー周方向溝28sの底28sbよりも外側に位置するのが好ましく、ショルダー周方向溝28sよりもさらに外側に位置するのがより好ましい。このタイヤ2では、軸方向において、エッジバンド46の内端46ueがショルダー周方向溝28sの底28sbよりも内側に位置してもよい。この場合、エッジバンド46の内端46ueは、軸方向において、ショルダー周方向溝28sよりもさらに内側に位置するのがより好ましい。
【0127】
図3に示されるように、このタイヤ2では、シート部60とハンプ部62との境界SHは、フルバンド44の端44eの軸方向外側に位置する。これにより、ハンプ部62のコンパクト化が図られ、適正な形状のケースラインが構成される。狙いの接地形状に近い接地形状が得られる。このタイヤ2では、良好な耐偏摩耗性が得られる。この観点から、シート部60とハンプ部62との境界SHは、フルバンド44の端44eの軸方向外側に位置するのが好ましい。
【0128】
図3に示されるように、このタイヤ2では、シート部60とハンプ部62との境界SHは、エッジバンド46の外端46seの軸方向内側に位置する。これにより、シート部60とハンプ部62との境界SH部分に歪みが集中することが抑えられる。ベルト38の端38eの部分に生じる歪の緩和にハンプ部62が効果的に貢献できる。このタイヤ2では、良好なトレッド耐久性が得られる。この観点から、シート部60とハンプ部62との境界SHは、エッジバンド46の外端46seの軸方向内側に位置するのが好ましい。
【0129】
このタイヤ2では、良好な耐偏摩耗性とトレッド耐久性とが得られる観点から、シート部60とハンプ部62との境界SHは、軸方向において、フルバンド44の端44eとエッジバンド46の外端46seとの間に位置するのがより好ましい。
【0130】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、軽量化を図りながら、接地形状の安定化と、トレッド部に作用する負荷の軽減とを達成できる、重荷重用空気入りタイヤ2が得られる。本発明は、65%以下の偏平比の呼びを有する、低偏平な重荷重用空気入りタイヤ2において、顕著な効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0131】
以上説明された、軽量化を図りながら、接地形状の安定化と、トレッド部に作用する負荷の軽減とを達成するための技術は、種々のタイヤに適用されうる。
【符号の説明】
【0132】
2・・・タイヤ
4・・・トレッド
6・・・サイドウォール
8・・・ビード
12・・・カーカス
18・・・補強層
20・・・緩衝層
28、28s、28m・・・周方向溝
36・・・カーカスプライ
38・・・ベルト
40・・・バンド
42、42A、42B、42C・・・ベルトプライ
44・・・フルバンド
46・・・エッジバンド
48、48A、48B、48C・・・ベルトコード
60・・・シート部
62・・・ハンプ部
【要約】
【課題】軽量化を図りながら、接地形状の安定化と、トレッド部に作用する負荷の軽減とを達成できる、重荷重用空気入りタイヤ2の提供。
【解決手段】このタイヤ2は、トレッド4と、カーカス12と、補強層18と、緩衝層20とを備える。補強層18は、ベルト38と、バンド40とを備える。緩衝層20はカーカス12に積層される。緩衝層20の端20eはベルト38の端38eの軸方向外側に位置する。ベルト38は、第一ベルトプライ42Aと、第二ベルトプライ42Bと、第三ベルトプライ42Cとを備える。緩衝層20は、シート部60と、シート部60の軸方向外側に位置しシート部60よりも厚い一対のハンプ部62とを備える。一対のハンプ部62はそれぞれ、第一ベルトプライ42Aの端42Aeにおいて最大厚さTbを有する。
【選択図】
図3