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特許7151925無人搬送車の制御方法、制御装置、及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】無人搬送車の制御方法、制御装置、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   B60D 1/00 20060101AFI20221004BHJP
   G05D 1/02 20200101ALI20221004BHJP
【FI】
B60D1/00 Z
G05D1/02 R
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022075289
(22)【出願日】2022-04-28
【審査請求日】2022-04-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003355
【氏名又は名称】株式会社椿本チエイン
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】松永 光一
(72)【発明者】
【氏名】藤井 正行
【審査官】藤井 浩介
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-186680(JP,A)
【文献】特開2003-034261(JP,A)
【文献】特開2020-001631(JP,A)
【文献】特開2020-011684(JP,A)
【文献】特開2016-193703(JP,A)
【文献】特開2002-326579(JP,A)
【文献】特開平10-119808(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0103511(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102006059082(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60D 1/00
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無人搬送車の駆動輪をコンピュータが制御する制御方法であって、
被牽引車が、前記無人搬送車の進行方向に対して左右に回転可能に連結軸で連結されており、
前記コンピュータは、
後退指示を受けた場合、
前記無人搬送車の後方を撮像する撮像部から撮像画像を取得し、
取得した撮像画像に基づき、前記被牽引車の直線又は曲線を含む目標軌道と前記被牽引車との偏差を算出し、
予め偏差の大きさに応じて記憶部に記憶してある連結角度の修正値の上限値から、算出した偏差に対応する上限値を読み出し、
前記連結軸における前記被牽引車の連結角度を、前記上限値を超えない範囲に設定し、
設定した連結角度に基づき前記無人搬送車を後退させるための前記駆動輪の左右の回転量を算出し、
算出した回転量に基づき前記駆動輪を制御する
無人搬送車の制御方法。
【請求項2】
無人搬送車の駆動輪をコンピュータが制御する制御方法であって、
被牽引車が、前記無人搬送車の進行方向に対して左右に回転可能に連結軸で連結されており、
前記コンピュータは、
後退指示を受けた場合、前記連結軸における前記被牽引車の連結角度を以下の式(1)から(3)により導出して設定
角度POR=φ2=arcTAN(L2/r2)…(1)
半径r=r2/COSφ2…(2)
θ=arcSIN(L1/r)+arcSIN(L2/r)…(3)
O:無人搬送車の駆動輪の回転軸の延長線と被牽引車の駆動輪の回転軸の延長線とが
交差する点
P:連結軸の中心点
Q:無人搬送車の駆動輪の回転軸の中心点
R:被牽引車の固定輪の回転軸の中心点
L1:線分P-Qの長さ
L2:線分P-Rの長さ
r:点Oを中心とする点Pの回転半径
r2:点Oを中心とする点Rの回転半径
θ:連結角度(無人搬送車の進行方向と被牽引車の進行方向との偏差)
設定した連結角度に基づき前記無人搬送車を後退させるための前記駆動輪の左右の回転量を算出し、
算出した回転量に基づき前記駆動輪を制御する
無人搬送車の制御方法。
【請求項3】
前記コンピュータは、
連結軸における前記連結角度を測定するセンサを用い、
前記センサにより測定された実際の連結角度と、前記式(1)から式(3)に基づいて前記被牽引車の軌道を導出する
請求項に記載の無人搬送車の制御方法。
【請求項4】
前記コンピュータは、
予め被牽引車を識別する識別データに対応付けて前記被牽引車の寸法データを記憶しておき、
連結された被牽引車の識別データに対応する寸法データを読み出し、
寸法データに含まれる長さL2を前記式(1)から(3)で用いて前記連結角度を算出する、
請求項又はに記載の無人搬送車の制御方法。
【請求項5】
前記コンピュータは、無人搬送車の後部に前記連結軸を介して接続され、前記被牽引車と係合する係合部を有して連結する連結装置に設けられている、
請求項1又は2に記載の無人搬送車の制御方法。
【請求項6】
無人搬送車の駆動輪をコンピュータが制御する制御部を備える制御装置であって、
被牽引車が、前記無人搬送車の進行方向に対して左右に回転可能に連結軸で連結されており、
前記制御部は、
後退指示を受けた場合、前記無人搬送車の後方を撮像する撮像部から撮像画像を取得し、
取得した撮像画像に基づき、前記被牽引車の直線又は曲線を含む目標軌道と前記被牽引車との偏差を算出し、
予め偏差の大きさに応じて記憶部に記憶してある連結角度の修正値の上限値から、算出した偏差に対応する上限値を読み出し、
前記連結軸における前記被牽引車の連結角度を、前記上限値を超えない範囲に設定し、
設定した連結角度に基づき前記無人搬送車を後退させるための前記駆動輪の左右の回転量を算出し、
算出した回転量に基づき前記駆動輪を制御する
無人搬送車の制御装置。
【請求項7】
無人搬送車の駆動輪をコンピュータが制御する制御部を備える制御装置であって、
被牽引車が、前記無人搬送車の進行方向に対して左右に回転可能に連結軸で連結されおり、
前記制御部は、
後退指示を受けた場合、前記連結軸における前記被牽引車の連結角度を以下の式(1)から(3)により導出して設定し、
角度POR=φ2=arcTAN(L2/r2)…(1)
半径r=r2/COSφ2…(2)
θ=arcSIN(L1/r)+arcSIN(L2/r)…(3)
O:無人搬送車の駆動輪の回転軸の延長線と被牽引車の駆動輪の回転軸の延長線とが
交差する点
P:連結軸の中心点
Q:無人搬送車の駆動輪の回転軸の中心点
R:被牽引車の固定輪の回転軸の中心点
L1:線分P-Qの長さ
L2:線分P-Rの長さ
r:点Oを中心とする点Pの回転半径
r2:点Oを中心とする点Rの回転半径
θ:連結角度(無人搬送車の進行方向と被牽引車の進行方向との偏差)
設定した連結角度に基づき前記無人搬送車を後退させるための前記駆動輪の左右の回転量を算出し、
算出した回転量に基づき前記駆動輪を制御する
無人搬送車の制御装置。
【請求項8】
無人搬送車の駆動輪を制御するコンピュータに、被牽引車が、進行方向に対して左右に回転可能に連結軸で連結されている状態での制御処理を実行させるコンピュータプログラムであって、
前記コンピュータに、
後退指示を受けた場合、
前記無人搬送車の後方を撮像する撮像部から撮像画像を取得し、
取得した撮像画像に基づき、前記被牽引車の直線又は曲線を含む目標軌道と前記被牽引車との偏差を算出し、
予め偏差の大きさに応じて記憶部に記憶してある連結角度の修正値の上限値から、算出した偏差に対応する上限値を読み出し、
前記連結軸における前記被牽引車の連結角度を、前記上限値を超えない範囲に設定し、
設定した連結角度に基づき前記無人搬送車を後退させるための前記駆動輪の左右の回転量を算出し、
算出した回転量に基づき前記駆動輪を制御する制御信号を出力する
処理を実行させるコンピュータプログラム。
【請求項9】
無人搬送車の駆動輪を制御するコンピュータに、被牽引車が、進行方向に対して左右に回転可能に連結軸で連結されている状態での制御処理を実行させるコンピュータプログラムであって、
前記コンピュータに、
後退指示を受けた場合、前記連結軸における前記被牽引車の連結角度を以下の式(1)から(3)により導出して設定し、
角度POR=φ2=arcTAN(L2/r2)…(1)
半径r=r2/COSφ2…(2)
θ=arcSIN(L1/r)+arcSIN(L2/r)…(3)
O:無人搬送車の駆動輪の回転軸の延長線と被牽引車の駆動輪の回転軸の延長線とが
交差する点
P:連結軸の中心点
Q:無人搬送車の駆動輪の回転軸の中心点
R:被牽引車の固定輪の回転軸の中心点
L1:線分P-Qの長さ
L2:線分P-Rの長さ
r:点Oを中心とする点Pの回転半径
r2:点Oを中心とする点Rの回転半径
θ:連結角度(無人搬送車の進行方向と被牽引車の進行方向との偏差)
設定した連結角度に基づき前記無人搬送車を後退させるための前記駆動輪の左右の回転量を算出し、
算出した回転量に基づき前記駆動輪を制御する
処理を実行させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被牽引車を牽引する無人搬送車の制御方法、制御装置、及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
工場などの生産現場にて、材料、部品、完成品等の物品を搬送する無人搬送車(Automatic Guided Vehicle等)が普及している。無人搬送車は、物品を載せる台を自装置で有して搬送するタイプ、物品が載置されたカゴを下からリフトアップし搬送するタイプ、物品を入れるカゴ車(被牽引車)を牽引するタイプを含む様々なタイプを有する。
【0003】
特許文献1には、牽引の際の制御方法が開示されている。特許文献1では、牽引車の後方に向けて設けたカメラを用い、被牽引車の被連結部材に付されたマーカを撮影した画像から連結部分の折れ角(連結角度)を算出している。特許文献1に開示されている牽引車と被牽引車との間の連結部分は、牽引車の後方に突出させた棒状の連結部材の先端に鉛直方向に設けられた連結軸と、被牽引車の前方に突出させた棒状の連結部材の先端に鉛直方向に設けた連結孔とを係合させて連結される。
【0004】
牽引タイプの無人搬送車では、特定のラインが付された床面を撮像し、撮像画像に基づきラインに沿って走行する制御が実施される。前進時には、被牽引車が自然と無人搬送車に追随して走行する一方で、後進時には、駆動輪は無人搬送車のみにあるため、連結部分における折れ角が大きくなりやすく、限界に到達すると、それ以上後退を継続できなくなる等、制御が困難である。したがって、被牽引車を連結した無人搬送車の後退は、特許文献2のように、無人搬送車が被牽引車の下に潜り込み、リフトアップする、といった方法が採用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-199150号公報
【文献】特開平6-135321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
作業者の補助なしに、無人搬送車を目的位置で自動的に被牽引車と連結させ、あるいは、自動的に被牽引車を切り離させるように制御するには、無人搬送車の後進が必要になる。特定のラインに沿って前進のみで走行する無人搬送車が、特定の位置で被牽引車を切り離すと、後続の無人搬送車の走行の妨げになるためである。しかしながら、引用文献2のような後進時にはリフトアップと限定すると、被牽引車の形状、重さが限定的となる。無人搬送車と被牽引車とを連結したまま、被牽引車の自動連結及び自動連結解除を実現するためには、後進時の制御方法が課題になる。
【0007】
特許文献1は、無人搬送車ではなく、人間が牽引車を運転することを前提としているので、運転者が連結部分の連結角度を認識することで後進時の運転精度を向上させることができるが、どのように制御すべきか、運転者の技術による。
【0008】
無人搬送車は、前進動作時では初期の連結部分の連結角度が走行により維持又は収束する傾向にあるが、後進動作時では初期の連結角度が維持又は発散する傾向にある。したがって、後進動作においては連結角度を発散させない制御を実現することが課題になる。
【0009】
無人搬送車が直進軌道上を後進する場合は、連結部分の連結角度を単純にゼロに維持するだけでよいが、定められた円弧軌道上を後進する場合は無人搬送車及び被牽引車の寸法から幾何学的に算出可能な一定の連結角度を維持する制御が必要である。連結角度を維持するためには、目標の連結角度と実際の連結角度の偏差を補正する制御が必要となる。また、後進走行距離が長い場合や、高い位置精度が求められる場合には、路面の歪みや外力等の外乱が連結角度に影響するため、連結角度を維持するのみでは目標軌道から離脱する可能性が高い。目標軌道と実際の走行軌道との偏差を補正する制御も必要となる。
【0010】
本発明は、斯かる事情を鑑みてなされたものであり、後退を制御可能とする無人搬送車の制御方法、制御装置、及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の一実施形態の無人搬送車の制御方法は、無人搬送車の駆動輪をコンピュータが制御する制御方法であって、被牽引車が、前記無人搬送車の進行方向に対して左右に回転可能に連結軸で連結されており、前記コンピュータは、後退指示を受けた場合、前記連結軸における前記被牽引車の連結角度を設定し、設定した連結角度に基づき前記無人搬送車を後退させるための前記駆動輪の左右の回転量を算出し、算出した回転量に基づき前記駆動輪を制御する。
【0012】
本開示の一実施形態の無人搬送車の制御装置は、無人搬送車の駆動輪をコンピュータが制御する制御部を備える制御装置であって、被牽引車が、前記無人搬送車の進行方向に対して左右に回転可能に連結軸で連結されており、前記制御部は、後退指示を受けた場合、前記連結軸における前記被牽引車の連結角度を設定し、設定した連結角度に基づき前記無人搬送車を後退させるための前記駆動輪の左右の回転量を算出し、算出した回転量に基づき前記駆動輪を制御する。
【0013】
本開示の一実施形態のコンピュータプログラムは、無人搬送車の駆動輪を制御するコンピュータに、被牽引車が、進行方向に対して左右に回転可能に連結軸で連結されている状態での制御処理を実行させるコンピュータプログラムであって、前記コンピュータに、後退指示を受けた場合、前記連結軸における前記被牽引車の連結角度を設定し、設定した連結角度に基づき前記無人搬送車を後退させるための前記駆動輪の左右の回転量を算出し、算出した回転量に基づき前記駆動輪を制御する制御信号を出力する処理を実行させる。
【0014】
本開示の無人搬送車の制御方法、制御装置及びコンピュータプログラムでは、コンピュータが、被牽引車が連結軸に回転可能に連結された無人搬送車を後退させる場合、連結角度に基づき後退させるための駆動輪の速度(回転速度)を算出して制御する。連結角度が所定の大きさを超えないように制御されるか、特定の角度に保たれることにより、被牽引車と無人搬送車との間が過度に大きく折れ曲がって後退できなくなる事態や、被牽引車が蛇行してしまう事態を回避して後退を自動制御することが可能となる。
【0015】
本開示の一実施形態の無人搬送車の制御方法では、前記コンピュータは、前記無人搬送車の後方を撮像する撮像部から撮像画像を取得し、取得した撮像画像に基づき、前記被牽引車の直線又は曲線を含む目標軌道と前記被牽引車との偏差を算出し、予め偏差の大きさに応じて記憶部に記憶してある連結角度の修正値の上限値から、算出した偏差に対応する上限値を読み出し、連結角度の範囲を、前記上限値を超えない範囲で設定する。
【0016】
本開示の無人搬送車の制御方法では、被牽引車を連結させた無人搬送車が、撮像画像内に対する認識処理によって特定の目標軌道上を後退していく場合に、目標軌道に対する被牽引車の偏差が大きい場合と、偏差が小さい場合とでは、目標軌道へ戻すための連結角度の調整範囲に異なる上限を設け、被牽引車が蛇行して目標軌道に収束しない事態を回避することが可能になる。
【0017】
本開示の一実施形態の無人搬送車の制御方法では、前記コンピュータは、前記連結角度を以下の式(1)から(3)により導出して設定する。
角度POR=φ2=arcTAN(L2/r2)…(1)
半径r=r2/COSφ2…(2)
θ=arcSIN(L1/r)+arcSIN(L2/r)…(3)
O:無人搬送車の駆動輪の回転軸の延長線と被牽引車の駆動輪の回転軸の延長線とが
交差する点
P:連結軸の中心点
Q:無人搬送車の駆動輪の回転軸の中心点
R:被牽引車の固定輪の回転軸の中心点
L1:線分P-Qの長さ
L2:線分P-Rの長さ
r:点Oを中心とする点Pの回転半径
r2:点Oを中心とする点Rの回転半径
θ:連結角度(無人搬送車の進行方向と被牽引車の進行方向との偏差)
【0018】
本開示の無人搬送車の制御方法では、被牽引車、無人搬送車、及び連結軸間の連結角度と、無人搬送車及び被牽引車の軌道との関係を表す式(1)から式(3)により、被牽引車及び無人搬送車の寸法データを用いて連結角度を設定可能である。
【0019】
本開示の一実施形態の無人搬送車の制御方法では、前記コンピュータは、連結軸における前記連結角度を測定するセンサを用い、前記センサにより測定された実際の連結角度と、前記式(1)から式(3)に基づいて前記被牽引車の軌道を導出する。
【0020】
本開示の無人搬送車の制御方法では、被牽引車及び無人搬送車の寸法データを用い、目標軌道に沿うための連結角度を算出することが可能である。
【0021】
本開示の一実施形態の無人搬送車の制御方法では、前記コンピュータは、予め被牽引車を識別する識別データに対応付けて前記被牽引車の寸法データを記憶しておき、連結された被牽引車の識別データに対応する寸法データを読み出し、寸法データに含まれる長さL2を前記式(1)から(3)で用いて前記連結角度を算出する。
【0022】
本開示の無人搬送車の制御方法では、被牽引車及び無人搬送車の寸法データと、その時点における連結角度により、被牽引車の軌道を算出することができる。
【0023】
本開示の一実施形態の無人搬送車の制御方法では、前記コンピュータは、無人搬送車の後部に前記連結軸を介して接続され、前記被牽引車と係合する係合部を有して連結する連結装置に設けられている。
【0024】
本開示の無人搬送車の制御方法は、無人搬送車に取り付けられていて、被牽引車と係合持してこれを無人搬送車に連結させる連結装置が実施し、無人搬送車の駆動輪を制御してもよいし、無人搬送車の駆動輪の制御部自体が実施してもよい。
【発明の効果】
【0025】
本開示によれば、無人搬送車と被牽引車とを連結させたままで、折れ角が限界まで至ることを回避しながら後退を制御可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本開示の無人搬送車、連結装置及び被牽引車の略示側面図である。
図2】無人搬送車及び連結装置の略示斜視図である。
図3】無人搬送車及び連結装置の構成を示すブロック図である。
図4】被牽引車Tを牽引した状態の無人搬送車Vの走行制御の概要図である。
図5】連結装置による後退制御手順の一例を示すフローチャートである。
図6】偏差と連結角度の修正値の上限値との対応関係を示す図である。
図7】無人搬送車Vの位置のラインLからの偏差(位置)の時間推移を示すグラフである。
図8】連結装置による走行制御の概要図を示す。
図9】第2実施形態の無人搬送車及び連結装置の構成を示すブロック図である。
図10】寸法データの概要図である。
図11】第2実施形態における無人搬送車の走行例を示す図である。
図12】第2実施形態の連結装置の制御部による制御処理手順の一例を示すフローチャートである。
図13】決定される目標軌跡の一例を示す図である。
図14】連結角度の制御の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本開示をその実施の形態を示す図面を参照して具体的に説明する。
【0028】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の無人搬送車V、連結装置1及び被牽引車Tの略示側面図であり、図2は、無人搬送車V及び連結装置1の略示斜視図である。
【0029】
無人搬送車Vは、図1及び図2に示すように、車体21及び車輪22を有する。無人搬送車Vの車体21は、略直方体状であって、後部に対応する面に傾斜面を有する形状を持つ。車体21は、後方に延びる一組の連結部材23を有する。連結部材23は、無人搬送車Vの高さ方向(鉛直方向)に沿う連結軸231を有している。車体21の底部211には、1つの前輪221及び2つの後輪222(一方の図示を省略)が設けられている。無人搬送車Vは、制御部の制御により後輪222を駆動輪として駆動させる。
【0030】
連結装置1は、基体10、連結部11、係合部12及び撮像部13を備える。基体10は、扁平な直方体状の筐体を有して内部に制御部100(図3参照)を収容する。連結装置1は、筐体の一広面に固定された連結部11により無人搬送車Vの後部の連結部材23に係合するように連結可能である。連結部11は、無人搬送車Vの進行方向に対して左右に回転可能に連結する。例えば連結部11は、無人搬送車Vの連結部材23の鉛直方向の連結軸231に対して嵌合する連結孔を有する1組の連結具で構成される。連結部11の連結孔は、基体10の筐体の広面の長辺方向と平行な軸方向を持つように設けられている。
【0031】
連結装置1は、図2に示すように、無人搬送車Vの連結軸231に、連結具111の連結孔を通して無人搬送車Vに連結する。連結部11は、無人搬送車Vの連結軸231と連結孔との間の回転量を測定するエンコーダ112を含む。エンコーダ112は例えば、磁気式アブソリュートエンコーダを用いる。エンコーダ112は、基体10内に設けられた制御部100へ回転量に対応する信号を出力する。
【0032】
係合部12は、基体10の他広面に、その広面の長辺方向に沿って直線運動をする第1アクチュエータ121と、広面に垂直な方向(進行方向)に沿って直線運動する第2アクチュエータ122と備える。第2アクチュエータ122は、第1アクチュエータ121から立設されており、その立設方向に移動可能なロッド123と、ロッド123のガイド124とを備える。係合部12は、ロッド123に固定されたグリップ板125と、ロッド123の基端に設けられたグリップ板126とによって、対象物を外側から掴んで被牽引車Tと係合できる。
【0033】
撮像部13は、直方体状の本体の端面の一方、即ち、無人搬送車Vの走行方向において後方に向けて撮像するように取り付けられている。撮像部13は複数の撮像部で構成されていてもよい。撮像部13は、図1及び図2に示した箇所のみならず、下部から後方を望むように設けられた他の撮像部を含んでもよい。
【0034】
被牽引車Tは、L字アングルを矩形に組んだフレームT1と、フレームT1の下部に設けられた車輪T2と、フレームT1上に固定されるカゴT3とを有する。カゴT3は、各側面に、落下防止のための金網を有しているが、これに限らない。被牽引車Tは、その他、車輪T2を有して所謂カゴ車と呼ばれるものであれば、特に限定されない。
【0035】
第1実施形態の連結装置1は、後部に連結軸231を有する無人搬送車Vであれば、取り付け可能である。そして連結装置1は、無人搬送車Vの走行を制御する制御部と通信接続し、基体10内部に設けられた制御部における制御処理により、無人搬送車Vから後輪222の駆動制御の権利を取得してこれを駆動して後退する。更に連結装置1は、図1に示すように被牽引車Tに近づくと、第1アクチュエータ121及び第2アクチュエータ122を制御して、被牽引車TのフレームT1の内、進行方向に対して垂直方向の横架材を、下からグリップ板125及びグリップ板126によって把持するように係合して連結する。係合の方法はこれに限られない。
【0036】
なお、連結装置1は、連結部材23及び連結軸231を連結装置1側に有する構造でもよい。その場合は、後部に連結部231を有さない無人搬送車Vであっても、無人搬送車V後部に連結装置1の一部である連結部材23を固定できる構造があれば、連結装置1を取り付け可能である。
【0037】
以下に、連結装置1の制御部100における制御処理の内容を説明する。図3は、無人搬送車V及び連結装置1の構成を示すブロック図である。
【0038】
無人搬送車Vは、車体21内部に、後輪駆動部220と、後輪駆動部220を制御する制御部200とを備える。無人搬送車Vは、車体21内部に、走行時に床面を撮像範囲に含んで進行方向を撮像できる撮像部201を備える。制御部200は、後輪駆動部220及び撮像部201と接続されており、撮像部201により撮像された画像を画像処理して得られる情報に基づき、後輪222の左右の車輪それぞれの速度(回転量)を指定して後輪駆動部220を制御する。
【0039】
制御部200は、連結装置1と無人搬送車Vとの間の連結部11における連結軸231と連結孔との間の回転量(連結部11の連結具と連結部材23との間の角度)を測定するエンコーダ112から回転量のデータを取得して制御を実行してもよい。
【0040】
連結装置1は、基体10内に制御部100を備える。制御部100は、マイクロコントローラであり、プロセッサ101、メモリ102及び入出力部103を備える。
【0041】
プロセッサ101は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit )等のプロセッサを用いる。メモリ102は、不揮発性メモリである。メモリ102には、制御プログラム1P及び角度データが記憶されている。角度データは、後述する偏差に応じた連結角度修正値の上限値のデータである。角度データは、図示しない通信媒体を介して制御部100が取得したデータであってもよい。制御部100は、その他、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のメモリ、タイマ、各種センサ等を含んでもよい。
【0042】
入出力部103は、マイクロコントローラの入出力インタフェースである。プロセッサ01は、入出力部103を介して撮像部13からの画像信号を取得し、第1アクチュエータ121の駆動回路1201、及び第2アクチュエータ122の駆動回路1202へ、制御信号を出力する。入出力部103は、エンコーダ112とも接続されており、プロセッサ101は、エンコーダ112から出力される回転量に対応する信号を取得する。入出力部103は、無人搬送車Vの制御部200とも接続されており、プロセッサ101は、制御部200との間でデータの受け渡しが可能である。
【0043】
無人搬送車Vは前進時、基本的には、床面に付された特定の色のラインLに沿って自動的に走行する。無人搬送車Vは、車体21に床面に向けて設けられた撮像部201で撮影した画像からラインLの範囲を認識し、無人搬送車Vの位置とラインLとの間の偏差をゼロに近づけるように、後輪222の左右の速度(回転量)をそれぞれ制御する。第1実施形態において無人搬送車Vは後進の際も、連結装置1の制御により、後方を撮影する撮像部13又は他の撮像部を用いて、進行方向のラインLに沿うように走行する。
【0044】
図4は、被牽引車Tを牽引した状態の無人搬送車Vの走行制御の概要図である。図4の概要図は、一般的な走行制御の例を示す。図4Aから図4Eの順に、ラインLに沿って後退する様子を示す。なお、図4Aから図4Eは、説明を簡単とするために、被牽引車TとラインLとの間の距離を大きく設けて図示している。図4Aは、無人搬送車Vの連結部材23と連結装置1の連結部11とは直線上に沿う状態であって、連結角度θは0(ゼロ)度の状態である。後退時には、連結装置1の制御により、連結装置1の連結部11と、無人搬送車Vの連結部材23との間の連結角度θを、図4Bに示すように大きめに決定する。被牽引車TがラインLに近づくと、連結装置1は、図4Cに示すように、連結角度θを戻して小さくする。被牽引車TがラインL上に乗ると、連結装置1は、図4Dに示すように連結角度θを反対側に設定する。これにより、図4Eに示すように、無人搬送車Vと被牽引車Tとの両方がラインL上に乗り始める。
【0045】
図4に示した制御において、図4Bに示した連結角度を、大きく設定し過ぎると、被牽引車Tと無人搬送車Vとが接触してしまう事態や、無人搬送車Vの位置とラインLとの間の偏差が大きくなったり小さくなったり収束しない事態となる可能性が高い。そこで、第1実施形態の無人搬送車V及び連結装置1は、被牽引車Tを牽引している状態で後退する際の制御として、連結角度θを過度に大きく設定しないように以下のように制御する。以下、被牽引車Tを牽引している状態の無人搬送車Vの後退時の制御についてフローチャートを参照して説明する。
【0046】
なお、以下に示す処理では、図中に示す、被牽引車Tからの目標軌道であるラインLに対する位置偏差dx、被牽引車Tの進行方向とラインLとの間の角度偏差dθを用いる。
【0047】
図5は、連結装置1による後退制御手順の一例を示すフローチャートである。連結装置1は、無人搬送車Vに取り付けられ、且つ、被牽引車Tと連結している状態で、無人搬送車Vの制御部200との間でデータの授受をしつつ、以下の処理を実行する。
【0048】
連結装置1の制御部100は、プロセッサ101の処理により、無人搬送車Vの制御部200から、後退指示を受けたか否かを判断する(ステップS101)。ステップS101において、無人搬送車Vの制御部200は、連結された被牽引車Tを先頭として後退する場所に到達した場合、連結装置1の制御部100へ後退指示を送信する。
【0049】
後退指示を受けていないと判断した場合(S101:NO)、制御部100は、処理をステップS101へ戻し、後退の指示を受けたと判断するまで待機する。制御部100は、後退指示を受けたと判断した場合(S101:YES)、無人搬送車Vから後輪222の後輪駆動部220の制御権を取得する(ステップS102)。以後、制御権を手放すまでは、制御部100からの制御信号により、後輪222が制御され、被牽引車T及び連結装置1側が前方となって無人搬送車Vが移動する。
【0050】
制御部100は、走行経路情報を取得し、基準角度を算出する(ステップS103)。基準角度は、走行する経路(直線、曲線)上での走行の際の連結角度の基準となる。制御部100は、無人搬送車Vの制御部200から基準角度を取得してもよいし、目標軌道から所定のアルゴリズムにより算出してもよい。
【0051】
制御部100は、無人搬送車Vの後方、即ち後退中の前方を撮影する撮像部13からの画像を取得し(ステップS104)、取得した画像に基づき、被牽引車Tと、目標軌道との間の位置偏差dx及び角度偏差dθを算出する(ステップS105)。ステップS105において制御部100は、被牽引車Tの固定輪の両輪の間の中間位置と、ラインLとの距離を、位置偏差dxとして算出し、ラインLと平行な線と、被牽引車Tの中心線との偏差(角度)を角度偏差dθとして算出する。制御部100は、目標軌道が曲線の場合、撮像部13から取得される画像に写る目標軌道の接線と、被牽引車Tの中心線との角度を角度偏差dθとして算出する。
【0052】
制御部100は、ステップS105で算出した位置偏差dx及び角度偏差dθに対応する、連結角度修正値の上限値を読み出す(ステップS106)。偏差が小さい場合、連結角度修正値の上限値は小さく、偏差が大きい場合、連結角度修正値の上限値は大きい(図6参照)。
【0053】
制御部100は、ステップS106で読み出した上限値を用いて連結角度の許容範囲を設定する(ステップS107)。ステップS107において制御部100は、連結角度の許容範囲を以下のように設定する。
許容範囲=基準角度±連結角度修正値の上限値
【0054】
制御部100は、エンコーダ112からその時点における実連結角度を取得する(ステップS108)。制御部100は、取得したその時点における実連結角度が、ステップS107で設定した連結角度の許容範囲内にあるか否かを判断する(ステップS109)。
【0055】
許容範囲内にあると判断された場合(S109:YES)、制御部100は、ステップS105で算出された偏差を減少させるように後輪222の左右の速度(回転量)を算出し(ステップS110)、後輪駆動部220へ左右の速度を示す制御信号を出力する(ステップS111)。
【0056】
制御部100は、無人搬送車V及び被牽引車Tが目標位置に到達したか否かを判断する(ステップS112)。ステップS112において制御部100は、撮像部13にて目標のマーカ等を撮像できたか否かによって判断してもよいし、他の方法で判断してもよい。
【0057】
無人搬送車V及び被牽引車Tが目標位置に到達したと判断した場合(S112:YES)、制御部100は、停止するように後輪駆動部220へ制御信号を出力する(ステップS113)。制御部100は、無人搬送車Vへ後輪駆動部220の制御権を返し(ステップS114)、後退制御を終了する。
【0058】
ステップS109において、連結角度が、連結角度の許容範囲内にないと判断された場合(S109:NO)、制御部100は、連結角度がその許容範囲内となるための後輪222の左右の速度(回転量)を算出し(ステップS115)、処理をステップS111へ進める。
【0059】
ステップS112において、目標位置に到達していないと判断された場合(S112:NO)、制御部100は、処理をステップS104へ戻す。
【0060】
図6は、偏差と連結角度の修正値の上限値との対応関係を示す図である。図6では、右側に偏差dxの大きさを示し、左側に、各々の偏差dxの範囲に対応する連結角度の許容範囲を示す。図6に示すように、目標位置であるラインLまでの位置偏差dxの範囲毎に、連結角度の上限値が設定されている。図6の例では、位置偏差dxが第1所定値以下である場合は、連結角度の修正値の上限値はα度、位置偏差dxが第1所定値超過であって第2所定値以下である場合は、連結角度の修正値の上限値はβ度、位置偏差dxが第2所定値超過であって第3所定値以下である場合は、連結角度の修正値の上限値はγ度に設定されている。位置偏差dxが第3所定値超過の場合、連結角度の修正値の上限値はγ度に設定される。角度偏差dθについても同様に図6に示したような対応関係が記憶されていてもよいし、位置偏差dx及び角度偏差dθの両方の範囲に対応付けて、上限値が記憶されていてもよい。
【0061】
図7は、無人搬送車Vの位置のラインLからの偏差(位置)の時間推移を示すグラフである。図7は、図5のフローチャートに示した処理手順により上限値を設定した場合の偏差dの推移を実線で示し、上限値を設定しない場合の位置偏差dxの推移を破線で示す。図7に示すように、図5のフローチャートに示した上限値を設定した制御によって、被牽引車TとラインLとの間の位置偏差dxは、収束しやすい。
【0062】
上述の処理により、図7に示すように、無人搬送車Vの駆動輪222の位置は、時間に応じて小さくなり、ラインL上に乗る。これにより、無人搬送車Vの駆動輪222の位置と、ラインLとの間の偏差が大きいほどに、連結角度を大きくしてラインLへより早く戻りつつ、限界まで連結角度を折り、戻し角度も大きくして連結角度が収束しない状態に陥ることを回避させることができる。
【0063】
図8は、連結装置1による走行制御の概要図を示す。図8では、被牽引車Tと連結された無人搬送車Vを、曲線ラインLに沿って後退させる様子を示す。図8では、上部から時計回りに順に動いていく様子を示す。図8Aの状態で、連結装置1の制御部100は、曲線ラインLに沿って走行するための基準角度を算出する。例えば制御部100は、所定のR曲線を更新する際の基準角度を設定する。図8Bの状態で、制御部100は、基準角度を目標にして連結角度θが作られている。図8Bの状態では比較的大きな連結角度θが作られている。被牽引車TとラインLとの位置偏差dxが比較的大きいため、連結角度θが大きくなっても許容されている。連結装置1の制御部100は、連結角度θが許容範囲内を維持するように、駆動輪222を制御して後進させる。図8Cの状態では、制御部100は、位置偏差dxが小さく、制御部100は角度を小さく戻しつつ、図8Dの状態では更に角度を小さくしている。これにより、被牽引車Tは曲線ラインL上に乗って後進する。
【0064】
(第2実施形態)
第2実施形態では、連結装置1による後退制御のうち、S105における目標の連結角度の算出をより精度よく実行する。図9は、第2実施形態の無人搬送車V及び連結装置1の構成を示すブロック図である。第2実施形態の無人搬送車V、連結装置1及び被牽引車Tの構成は、以下に示す寸法データ(幾何学データ)を用いることと、目標連結角の算出方法の詳細な手順以外は、第1実施形態の構成と同様である。したがって、共通する構成については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0065】
第2実施形態では、被牽引車Tの識別データを取得するための取得部14が連結装置1に設けられている。取得部14は、無人搬送車Vの走行方向における後方を撮影する撮像部であって、被牽引車Tに貼付された二次元コード、バーコード等から識別データを取得するものであってもよいし、RFID等で近距離無線によって被牽引車Tに取り付けられたタグから識別データを取得するものであってもよい。
【0066】
また第2実施形態では、図9に示すように、目標連結角を算出するために、メモリ102に、無人搬送車Vの寸法データと、被牽引車Tの識別データに対応付けて寸法データとを含む寸法データが記憶されている。図10は、寸法データの概要図である。無人搬送車Vの寸法データは、無人搬送車Vを上方から見た場合の駆動輪である左右の後輪222の軸中心を結ぶ線分VLの中心点Qを基準として、後輪222の幅W1、中心点Qと連結軸231の中心点Pまでの長さL1を含む。被牽引車Tの寸法データは同様にして牽引される場合の後輪の軸中心を結ぶ線分TLの中心点Rを基準として、後輪の幅W2、中心点Rと、連結装置1を介して接続された場合の無人搬送車Vの連結部材23の連結軸231の中心点Pまでの長さL2を含む。
【0067】
寸法データを用いた連結装置1による制御処理について説明する。図11は、第2実施形態における無人搬送車Vの走行例を示す図である。無人搬送車Vは、図11に示すように、床面に付された環状の特定の色のラインLに沿って自動的に走行する。被牽引車Tと連結した無人搬送車Vは、ラインLに沿って目的地の特定のエリアBへ向かう。特定のエリアBは、被牽引車Tに載せられている物品を必要とする現場付近で、被牽引車Tを停めておくエリアである。特定のエリアBは、図11に示すように、特定の色、模様、光彩等のラインで区切られた駐車スペースである。無人搬送車V及び連結装置1は、特定のエリアB付近の特定ポイントに到着すると、駐車スペースに被牽引車Tを収容させるために後退で被牽引車Tを押し込むように駆動輪222及び連結角度を制御する。駐車スペース内に被牽引車Tが収まったことを確認すると、無人搬送車V及び連結装置1は、被牽引車Tとの連結を解除し、前進でラインLへ向かい、ラインL上に戻ってラインL上の巡回を再開する。
【0068】
図11に示す走行例において、駐車スペースに被牽引車Tを収容させるために後退で被牽引車Tを押すように、駆動輪222及び連結角度を制御する際の処理手順についてフローチャートを参照して説明する。
【0069】
図12は、第2実施形態の連結装置1の制御部100による制御処理手順の一例を示すフローチャートである。連結装置1は、無人搬送車Vに取り付けられ、且つ、被牽引車Tと連結している状態で、無人搬送車Vの制御部200との間でデータの授受をしつつ、以下の処理を実行する。
【0070】
連結装置1の制御部100は、プロセッサ101の処理により、無人搬送車Vの制御部200から、後退指示を受けたか否かを判断する(ステップS201)。ステップS201において、無人搬送車Vの制御部200は、図11に示した経路において特定のエリアB付近の特定ポイント(エリアBを通過したポイント)に到着すると停止し、被牽引車Tを駐車スペースに押し込むように、連結装置1の制御部100へ後退指示を送信する。
【0071】
後退指示を受けていないと判断した場合(S201:NO)、制御部100は、処理をステップS201へ戻し、後退の指示を受けたと判断するまで待機する。制御部100は、後退指示を受けたと判断した場合(S201:YES)、無人搬送車Vから後輪222の後輪駆動部220の制御権を取得する(ステップS202)。以後、制御権を手放すまでは、制御部100からの制御信号により、後輪222が制御され、被牽引車T及び連結装置1側が前方となって無人搬送車Vが移動する。
【0072】
制御部100は、取得部14によって被牽引車Tの識別データを取得し(ステップS203)、取得した識別データに対応付けられた寸法データをメモリ102から読み出す(ステップS204)。ステップS203において制御部100は、被牽引車Tと連結する際に、被牽引車Tから、取得部14によって識別データを取得しておいてもよい。
【0073】
制御部100は、寸法データを用いて、被牽引車Tを押し込むための目標連結角度を導出する(ステップS205)。ステップS205の導出方法については、詳細を後述する。
【0074】
制御部100は、エンコーダ112から、連結装置1と無人搬送車Vとの間の実連結角度を取得する(ステップS206)。ステップS206において制御部100は、後述するように、エンコーダ112のみならず、TOFセンサを用いてもよい。
【0075】
制御部100は、実連結角度が目標連結角度となるように、後輪222の左右の速度(回転量)を算出し(ステップS207)、算出した速度で連結角度を作るように制御信号を出力する(ステップS208)。
【0076】
制御部100は、駆動輪222の速度と被牽引車Tを押し込み始めてからの経過時間により、無人搬送車V及び被牽引車Tの位置を推定し(ステップS209)、被牽引車Tが目的位置に到達したか否かを判断する(ステップS210)。
【0077】
被牽引車Tが目的位置に到達したと判断された場合(S210:YES)、制御部100は、停止するように後輪駆動部220へ制御信号を出力する(ステップS211)。制御部100は、無人搬送車Vへ後輪駆動部220の制御権を返し(ステップS212)、後退制御を終了する。
【0078】
被牽引車Tが目的位置に到達していいないと判断された場合(S210:NO)、制御部100は、処理をステップ206へ処理を戻す。
【0079】
図12のフローチャートに示した処理手順をより詳細に説明する。図13は、決定される目標軌跡の一例を示す図である。被牽引車Tの基準Rと、目的位置となる基準点R´とは、図13に示すように90度の円弧R-R”を含む軌跡で結ばれている。制御部100は、円弧の半径r2及び中心点Oを特定する。制御部100は、無人搬送車Vが牽引している被牽引車Tに対応する寸法データから、被牽引車Tの後輪の軸中心を結ぶTLの中心点である基準点Rと連結軸231の中心点Pまでの長さL2を読み出す。制御部100は、無人搬送車Vにおける基準点Qと連結軸231の中心点Pまでの長さL1を読み出す。
【0080】
図14は、連結角度の制御の一例を示す図である。図14は、被牽引車Tの基準点Rが図13に示した目標軌跡(円弧R-R”)を描くために必要な連結角度を導出するための無人搬送車Vの基準点Q、連結軸231の中心点P、連結角度θの幾何学データを図示したものである。
【0081】
無人搬送車Vの駆動輪である後輪222を結ぶ線分VL及びその長さ(幅)W1、被牽引車Tの固定軸(後輪)を結ぶ線分TL及びその長さ(幅)W2、並びに長さL1、L2と、連結角度θとは、図16に示す関係を示す。連結角度θを一定に維持するように、被牽引車Tと連結したまま無人搬送車Vを後退させた場合、無人搬送車Vは、線分VLの延長線と線分TLの延長線との交点Oを中心に、基準点Qまでの距離を半径r1で回転運動する。同様に、連結角度θを一定に維持するように、被牽引車Tと連結したまま無人搬送車Vを後退させた場合、被牽引車Tは、交点Oを中心に、基準点Rまでの距離を半径r2で回転運動する。
【0082】
図14に示した幾何学的関係を特定できることにより、被牽引車Tとの長さL2等の寸法データに基づいて連結角度θを算出したり、逆に、連結角度θが特定できる場合には、連結角度θから被牽引車Tの基準点Rの軌跡(半径r2及び中心点O)を算出したりすることができる。
【0083】
制御部100は、特定された基準点Q、R、連結軸231の中心点P、目的軌跡の円弧の半径r2、及び中心Oと、読み出した長さL1、L2とに基づき、図14に示すように、制御プログラム1Pに基づいて以下の式(1)から(3)に示すように連結角度θを算出する。
【0084】
角度POR=φ2=arcTAN(L2/r2)…(1)
半径r=r2/COSφ2…(2)
θ=arcSIN(L1/r)+arcSIN(L2/r)…(3)
【0085】
連結装置1の制御部100は、このように算出した連結角度θを維持するように無人搬送車Vの後輪222の左右の回転速度を設定して制御する。これにより、連結軸231の中心点Pは中心点Oに対して半径rの円軌道上を動き、無人搬送車Vの基準点Qは中心点Oに対して半径r1の円軌道上を動き、被牽引車Tの基準点Rは中心点Oに対して半径r2の円軌道上を動く。
【0086】
逆に、制御部100は、特定した基準点Q、R、連結軸231の中心点Pと、読み出した長さL1、L2と、エンコーダ112から得られる実連結角度θとに基づき、図16に示す幾何学関係に基づいて、以下のように、被牽引車Tの軌跡を導出することができる。制御部100はまず、無人搬送車Vの後輪222の中心を結ぶVLの延長線と、被牽引車Tの後輪の軸中心を結ぶ線分TLの延長線との交差点を円弧の中心Oと特定する。制御部100は、交点Oを中心とし、基準点Rまでの距離r2を半径とする円弧を、被牽引車Tの軌跡として導出できる。
【0087】
上述したように、図14に示した幾何学関係を用い、被牽引車Tに応じた長さL2に基づいて連結角度θ、あるいは、中心点O及び半径r2によって規定される軌道を算出することができる。
【0088】
また連結装置1は、係合部12による係合対象、即ち無人搬送車Vに連結させる被牽引車Tとの連結角度を、連結装置1の被牽引車Tと対向する面に水平方向に並設した複数の距離センサ(TOFセンサ等)を用いて測定してもよい(S206)。この場合、連結装置1は、複数の距離センサからそれぞれ測定された距離データの差分から、幾何学的に連結角度を算出可能である。また、連結装置1は、連結する被牽引車Tの種類、寸法を識別する識別データを、被牽引車Tに付されているタグから取得部14によって読み取り、長さL2のデータを取得してもよい。タグは、取得部14が撮像部である場合、バーコード、二次元コード等であってもよいし、取得部14が近距離無線通信によるリーダである場合、RFID等の無線通信により記憶されている識別データ等の情報の読み取りが可能な記憶媒体であってもよい。
【0089】
第1実施形態及び第2実施形態の連結装置1の制御により、被牽引車Tを連結した状態での無人搬送車Vの後退を、連結角度θの単純増を回避しつつ、被牽引車Tを目的の位置へ押し込むように制御できる。
【0090】
第1実施形態及び第2実施形態では、連結装置1の制御部100が、無人搬送車Vから駆動輪である後輪222の制御権を受け取って制御するものとして説明した。しかしながら、上述した後退制御の処理手順は、無人搬送車Vの制御部200自身によって実施されてもよい。
【0091】
上述のように開示された実施の形態は全ての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0092】
1 連結装置
11 連結部
112 エンコーダ(センサ)
12 係合部
13 撮像部
14 取得部
100 制御部(コンピュータ)
102 メモリ(記憶部)
V 無人搬送車
200 制御部(コンピュータ)
222 後輪(駆動輪)
231 連結軸
T 被牽引車
T1 フレーム
T2 車輪
【要約】
【課題】後退を制御可能とする無人搬送車の制御方法、制御装置、及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】無人搬送車の駆動輪をコンピュータが制御する制御方法であって、被牽引車が、前記無人搬送車の進行方向に対して左右に回転可能に連結軸で連結されており、前記コンピュータは、後退指示を受けた場合、前記連結軸における前記被牽引車の連結角度を設定し、設定した連結角度を保ちつつ前記無人搬送車を後退させるための前記駆動輪の左右の回転量を算出し、算出した回転量に基づき前記駆動輪を制御する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14