(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】自動車ドア用の開放装置
(51)【国際特許分類】
E05F 15/619 20150101AFI20221004BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
E05F15/619
B60J5/04 C
(21)【出願番号】P 2020521987
(86)(22)【出願日】2018-10-10
(86)【国際出願番号】 DE2018100834
(87)【国際公開番号】W WO2019076398
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2021-07-21
(31)【優先権主張番号】102017124282.1
(32)【優先日】2017-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510222604
【氏名又は名称】キーケルト アクツィーエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】レッドマン, ウーヴェ
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-277853(JP,A)
【文献】特開2004-27751(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102015215631(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0292310(US,A1)
【文献】特表2005-515326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/00-15/79
B60J 5/04
E05B 65/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気駆動部(2)及び作動手段(4)と少なくとも1つのセンサ(19)とを有する自動車ドア(23)用の開放装置(1)であって、
前記作動手段(4)は、スライド部材(17)を組み込み、
前記作動手段(4)は、前記自動車ドア(23)が閉鎖位置にあるとき、自動車のボディ(22)と略同一平面上に位置決めされ、前記自動車ドア(23)を開放する場合、前記作動手段(4)が前記
電気駆動部(2)によって
移動され、
前記作動手段(4)の作動動作の結果、前記自動車ドア(23)が動かされ、自動車のボディとの間に隙間(S)が生じ、
前記作動手段(4)の作動動作の初頭で、前記スライド部材(17)が前記自動車ドア(23)に当接し、
前記センサ(19)は、前記スライド部材(17)が前記自動車ドア(23)と当接する間中、閉鎖状態を維持し、前記自動車ドア(23)が操作者によって前記隙間(S)より更に広く開放されると、前記電気駆動部(2)をオフに切り替え、
前記作動動作の連続検出を前記センサ(19)によって可能にすることを特徴とする、開放装置(1)。
【請求項2】
前記作動手段(4)に前記センサ(19)を組み込むことができる
凹部(18)を設けることを特徴とする、請求項1に記載の開放装置(1)。
【請求項3】
前記作動手段(4)が少なくとも2つの部分で構成され、
前記スライド部材(17)に加えて駆動領域(16)を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の開放装置(1)。
【請求項4】
前記作動手段(4)に
前記スライド部材(17)を動作可能に収容することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の開放装置(1)。
【請求項5】
前記スライド部材
(17)によって前記センサ(19)を動作させることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の開放装置(1)。
【請求項6】
前記作動手段(4)
がラック(15)
を含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の開放装置
(1)。
【請求項7】
伝達部(3)によって前記作動手段(4)を駆動することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の開放装置(1)。
【請求項8】
前記開放装置(1)を前記自動車のボディ(22)に配置することを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の開放装置(1)。
【請求項9】
前記自動車のボディ(22)外の前記作動手段(4)を調節することを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の開放装置(1)。
【請求項10】
前記作動手段(4)の少なくとも一部の領域をプラスチック材料で形成することを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の開放装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車ドア用の開放装置であって、電気駆動部及び作動手段であって、作動手段が駆動部によって調節可能であり、自動車ドアが作動手段によって開放可能である、電気駆動部及び作動手段と、作動動作を検出する少なくとも1つのセンサとを有する開放装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最新の自動車には便利な機能が常に頻繁に搭載されつづけている。たとえば自動車に容易に乗り込めるようにし、美観及び空力形状を向上させるために、一例として外部ドアハンドルを用いずに自動車に装備を施す。一方で、外部ドアハンドルが設けられるが、外部ドアハンドルは開放するためにリレー動作を行ってスイッチ信号を自動車ドアのラッチに送るのにすぎないものも考えられる。自動車に乗り込むプロセスの単純化及び自動化を行い、外部ドアハンドルを一切有さない自動車に乗り込むことを可能にするために、「開放装置」やドアアジャスタやドアオープナが用いられている。
【0003】
DE19835994に記載されている既知のドアアジャスタや、これに基づいて構成された既知の自動車ドア用の開放装置にはスピンドルドライブが用いられている。スピンドルドライブや押出し装置は、扉体、特にトランクにかけられている関連するドアラッチを解放することによって起動する。押出し装置によって扉体が回動して隙間が形成される。これを第1の開放位置とする。この結果、ハンドルが隙間内に向かって回動することができ、扉体外輪郭を越えて突出することができる。結果として、設計が比較的複雑になる。
【0004】
DE102016105760には、ベースプレートを備え、さらに、ベースプレートに取り付けられる駆動部材と、駆動部とを備え、駆動部材に割り当てられ、少なくとも開放プロセスと手動開放プロセスとを識別する第1のセンサが設けられている自動車ドア用の開放装置が開示されている。本プロセスにおいて、開放装置は、センサ及び制御ユニットによって駆動することができる駆動部を備える。この場合に、可撓性接続手段によって伝達レバーを回動させることができ、これにより、駆動レバー及び駆動スライドを用いて開放動作が可能になる。ドアを動かしたり開放したりすることを可能にするために、駆動スライドは直線的に移動することで、たとえば、自動車のボディの開口から出ることで、ロックが解除されラッチが外されたドアの少なくとも一部の領域を開放することができる。駆動スライドの端の位置を第2の固定センサによって検出することができるので、駆動部のスイッチをオフに戻すことができる。
【0005】
DE102015103830には、作動用ロッドを駆動する形態のドアオープナが開示されている。作動用ロッドをねじ付きのロッドとして設計することができ、自動車ドアに固定可能に配置されるストッパと協働する。これにより、アクチュエータ及び作動用ロッドによってストッパに力を及ぼすことができるので、自動車のラッチの解除の完了後にドアを開放することができる。
【0006】
自動車のラッチの解除の完了後に自動車ドアを開放する先行技術から理解される装置を用いれば、ドアの少なくとも一部の領域を開放することができるので、自動車の操作者は隙間を通じてドアを開放することができる。原則的には既知の開放装置の有効性が示されているが、当該開放装置のいくつかは構造上の複雑な解決手段を提示しており、さらに、相当な努力をしなければ、作動動作を絶えずモニタすることができない。これが本発明の出発点である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、改善された自動車用の開放装置を提供することである。さらに、本発明の目的は、自動車ドアを確実に開放し、最小限の可能な手段で作動動作を検出することを可能にする開放装置を提供することである。さらにまた、本発明の目的は、構造が単純で費用効果が高い解決手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本目的は独立請求項1の特徴によって実現される。従属請求項は本発明の有効な実施形態を説明している。後述されている実施形態の一例は限定を課すものではなく、さらに言えば、説明及び従属請求項に記載されている特徴の考え得るいずれの変形も可能である点に留意するべきである。
【0009】
請求項1に係れば、本発明の目的は、自動車用の開放装置であって、電気駆動部及び作動手段であって、作動手段が駆動部によって調節可能であり、自動車ドアが作動手段によって開放可能である、電気駆動部及び作動手段と、作動動作を検出する少なくとも1つのセンサとを有する開放装置において、作動動作の連続検出をセンサによって可能にすることができる開放装置を提供することによって達成される。本発明に係る開放装置の設計により、これを用いる際には、確実でエネルギー効率の高い自動車ドアや扉体の開放を可能にすることができる。
【0010】
センサによって動作部材を絶えずモニタするので、たとえば、途中から手動でドアを開放する場合に作動手段の作動動作を随時停止させることができる。したがって、絶えず検出することで、自動車の運転者の操作の挙動に合った作動動作を実施することができる。たとえば、ドアが開放装置によって開放された直後にドアをつかんで、手動で開放する場合、この開放をセンサによって検出することができるので、開放装置の駆動部を停止させることができ、この結果、最小限の可能なエネルギー消費で最適な開放を可能にすることができる。さらに、操作者がドアをつかんだ直後に開放装置を後退させることもできるので、操作者は障害物がない状態で自動車に乗り込むことができる。これにより、開放装置に起因する操作者に対するいかなる障害物もなくなるか、最小になる。
【0011】
開放装置は自動車ドアに関するが、本発明に関する限りは、トランク、扉体、カバー又はボンネットに用いることもできる。言い換えれば、動作可能に配置された自動車上の部品を閉鎖位置で保持し、開放するために部品の位置を開放位置にするいずれの箇所にも開放装置を用いることができる。この場合、この開放位置を利用することで、開放装置によって生じる隙間内に操作者が手を延ばすことができるので、手動による開放を可能にすることができる。
【0012】
この例では、作動手段の動作が電気駆動部によって可能になる。電気駆動部として電気モータを用いることが好ましい。電気モータを用いれば、作動手段を動作させることができ、特に、駆動された作動手段によってドアを開放することができるように作動手段を動作させることができる。本プロセスでは、作動手段はボディに対して動作し、自動車ドアに押す力を及ぼすことで、ロックが解除され係合が解除されたドアを動かすことができる。
【0013】
本発明に係れば、キャッチと少なくとも1つの爪とを有する自動車用の閉鎖システムが開放装置と協働し、キャッチと少なくとも1つの爪とからなるロック機構の係合を電気的に解除することができる。特に電気的に係合解除可能な閉鎖システムでは、自動車の操作者は、閉鎖システムを係合解除位置すなわち開放位置に移行させるのに電気パルスしか必要としない。その後、閉鎖システムが開放状態になることでドアや扉体を動かすことができる。閉鎖システムの電気開放パルスは、センサ、キーによって発生させることができ、あるいは、たとえば、接触センサや、組込みセンサを有するドアハンドルなどの感応手段によって発生させることができる。
【0014】
自動車ドアが係合解除状態になると、自動車ドアを自由に枢動させることができる。適宜、ドアは、複数の開放位置でドアを保持することができるドア用クリック機構付き帯状体(door rebound strap)も有する。ドアの係合が解除されると、ドアを開放装置によって動かすことができ、自動車ドアの動きを本発明にしたがって感知することができる。したがって、開放プロセス全体が検出され、特に、開放プロセス全体が絶えず検出されることで、開放手段すなわち開放装置に無関係にドアの動きを検出することができる。開放装置の動作を利用してドアを手動で外方に動かすと、動かすことによってセンサ検出が遮断され、これにより、電気駆動部の電源を切ることができたり、電気駆動部のプラスマイナスを逆転して作動手段を初期位置に戻すことができたりする。
【0015】
本発明の別の実施形態では、作動手段にセンサを組み込むことができる。作動手段に組込み型手段としてセンサを配置することにより、組込みの効果と同時にいくつかの効果がもたらされる。第一に、構造的に有効でコンパクトなセンサ配置を可能にすることができ、第二に、信号を作動手段の動作により直接発生させることができる。これに関して、センサとしてマイクロスイッチや近接センサなどの感応型機械式スイッチ手段を用いることができる。スイッチ手段は直接ドアと協働することができたり、間接的にスイッチング可能なものであることが可能であったりする。スイッチ手段は作動手段の動作の際に起動されたり、スイッチ信号を発生したりすることが好ましい。本プロセスでは、作動手段の動作によって、ドアや扉体の方向にスイッチ手段のスイッチが入れられ、すなわち起動され、これにより、リレー動作が行われてスイッチ信号を制御ユニットに送ることができる。制御ユニットは閉鎖装置のロック機構の係合を解除する信号を検出可能にするのに用いられ、これにより、開放装置の電気駆動部を起動することができて、作動手段が開放動作の方向にドアを変位させる。本プロセスにおいて作動手段は直線運動を行うことが好ましい。
【0016】
作動手段が少なくとも2つの部分で構成され、駆動領域とスライド部材とを有する場合、これにより本発明のさらに別の実施形態がもたらされる。作動手段の多部品設計により、駆動部、ベアリング及び押圧領域間の相互作用における異なる要件に作動手段が適応可能であることが可能になる。1つには、作動手段は確実にガイド可能でなければならず、かつ低騒音で磨耗のないガイドが必要である。特に、低騒音にして開放装置に作動手段を収容することで、品質と操作者が感じる利便感とが向上する。たとえば、駆動領域は、長期の耐用年数を保証し、かつたとえばスライドベアリングやローラベアリングを可能にする金属材料からなることが可能であることが有効である。
【0017】
さらに、疲労に耐える接続と、電気駆動部から作動手段への伝達とを可能にすることができるように駆動領域を設計しなければならない。たとえば、電気駆動部は、作動手段と係合することができるウォーム歯車を有し、たとえば、作動手段は、ウォーム歯車と協働する歯を有することができることが好ましい。
【0018】
さらに、作動手段は、開放装置によるドアの動きや回動を可能にすることができるように、ドア又はドアの少なくとも1つの領域に作用することができるものでなければならない。特に、作動手段とドアとの当接領域で、ドアに作用することができるスライド部材をたとえばばねで付勢して配置することが有効である場合がある。スライド部材はプラスチック材料で形成することができることが好ましく、これにより、第一に、当接音が一切発生しないか、僅かな当接音しか発生しないことが可能であり、第二に、作動手段によって動作の緩衝を可能にすることができる。駆動領域及びスライド部材に加えて、たとえば、作動手段の取付けに必要な構成要素を作動手段に組み込んだり作動手段に配置したりすることも当然考えられる。
【0019】
作動手段にセンサを組み込むために、封止カバーを作動手段上に配置することもできる。
【0020】
本発明のさらに別の実施形態では、作動手段にスライド部材を動作可能に収容することができる。スライド部材を駆動領域に変位可能に取り付けることが好ましい。そのために、駆動領域及び/又はスライド部材がガイド部材を有することが可能である。さらに、スライド部材を駆動領域に対して圧縮ばねなどのばね部材によって位置決めすることができる。スライド部材がばねの押圧によって作動手段すなわち駆動領域から押し出されるようにスライド部材をばねで付勢して作動手段に保持することが好ましい。作動手段が非動作状態にあるとき、スライド部材は駆動領域から突出している状態にあり、たとえば、駆動領域のストッパに当接している。
【0021】
この場合に電気駆動部を動作させれば、作動手段がたとえばボディのBピラーから飛び出て、スライド部材が自動車ドアに作用する。自動車ドアが閉鎖状態にあるとき、可能な限り小さい騒音しか発生させずにドアを開放することができるようにスライド部材が自動車ドアに当接していることが好ましい。スライド部材が自動車ドアと対向する側にある緩衝手段を有することが好ましい。緩衝手段はたとえば弾性プラスチック材料からなることが可能である。スライド部材がプラスチック材料からなり、たとえば2成分部品として構成することができることが好ましい。一方で、作動手段での確実な取付け及びガイドを硬質プラスチック材料によって可能にし、他方で、自動車ドアとの有効な当接を弾性軟質プラスチック材料によって可能にする。
【0022】
別の実施形態では、スライド部材によってセンサを動作させることができる。センサを自動車ドアによって間接的に起動することができる(この例では、スライド部材を自動車ドア又は電気駆動部によって作動させると、スライド部材を変位させることができる)場合、作動手段を動作させると、直接結果を出すことができる。作動手段が非動作状態にあるとき、スライド部材はばねで付勢されて自動車ドアに当接している。
【0023】
この場合に作動手段が駆動部によって起動されて、たとえば自動車のBピラーやCピラーから飛び出る場合、スライド部材は作動手段の駆動領域に対して変位する。この例では、スライド部材の相対動作、好ましくはスライド部材が駆動領域内まで変位するようなスライド部材の相対動作により、スライド部材がセンサを起動させるようにセンサが配置される。言い換えれば、作動手段が電気駆動部によって直接駆動される場合、作動手段の最初の動作により、スライド部材と駆動領域との相対動作が起こる。したがって、センサは作動手段それ自体によって操作される。たとえば、作動手段にマイクロスイッチを組み込むことができ、そうすることで、前記マイクロスイッチをスライド部材の相対動作によって操作することができることが好ましい。スイッチ手段をスライド部材に固定することも当然考えられる。この場合、たとえばスライド部材と駆動領域との相対動作によってタッチ感応式センサを起動することができる。
【0024】
作動手段の少なくとも一部の領域、好ましくは駆動領域をラックとして設計する場合、これにより本発明のさらに別の実施形態がもたらされる。この例では、ラックには、電気駆動部に対する係合状態が良好になるという効果がある。効果について言えば、ラックは、作動手段が直線的に取り付けられるという点で好適である。駆動領域の一部には、たとえば、動作状態にあるものの平歯車、及び/又はモータのシャフトに固定されている歯車の平歯車が係合することができる歯が設けられることが好ましい。同時に、ラックにより、費用効果が高く構造的に単純な設計が実現される。
【0025】
さらなる実施形態では、作動手段を伝達部によって駆動することができる。伝達部、好ましくは、ウォームギヤ段と1つ以上の平歯車段との組み合せを使用すれば、作動手段の動作速度を調節可能であるように構成することができ、それと同時に、作動手段に使用可能な力を定めることができるという効果を奏する。さらに、1つ以上の平歯車段により、作動手段を駆動するための費用効果が高く構造的に単純な解決手段が実現される。ウォームギヤ段を直接電気駆動部に配置し、その後に平歯車段が続き、最後にラック駆動部が続くことが好ましい。開放装置の構成要素の配置に関して、この好ましい実施形態を用いれば、電気駆動部と作動手段とを互いに好ましくは90°の角度で配置することができるように電気駆動部と作動手段とを構成することができる。これはボディに設置する場所の点で特に有効である。
【0026】
例として、開放装置を自動車のボディに配置することができる。この点について、作動手段によってボンネット、ドア、扉体及び/又はカバーを動かすことができるように開放装置を配置することができる。そのために、たとえば、自動車のボディ及びフロントパネルや、自動車のAピラー、BピラーやCピラーに開放装置を配置することができる。たとえば、コンバーチブルソフトトップのカバーが開放装置によって持ち上げられる場合、開放装置を自動車の内部に配置することもできる。この場合、自動車のボディ外の作動手段を調節することができるように、自動車のボディにおける作動手段の配置を選択することができる。作動手段を自動車においてボディと同一面上に配置することができることが好ましい。一方で、たとえば、ドアや扉体が閉鎖状態にあるときにスライド部材すなわち作動手段がドアや扉体に当接するように、スライド部材がボディから突出するものも考えられる。当然、構造事情及び具体的な用途に応じて配置を適合させることができる。
【0027】
作動手段の少なくとも一部の領域をプラスチック材料で形成することができることが有効である。既に上述されているように、作動手段をシングルピース又はマルチピース部品として1種類のプラスチック材料又は複数のプラスチック材料で形成することにより、作動手段を異なる要件に合わせることができる。プラスチック材料の緩衝特性が接触領域で有効である一方で、プラスチック材料のガイド特性がセンサと当接する領域で有効であってもよい。駆動部の領域では、プラスチック材料の高硬度又は高強度が、作動手段の長期耐用年数を可能にするのに有効である。したがって、本発明に係る設計を用いれば、信頼性が高く、耐疲労性が高く、構造的に有効な作動手段を提供することができ、したがって、開放装置を提供することができる。
【0028】
以下、好ましい実施形態の一例に基づいて添付の図面を参照して本発明をさらに詳細に説明する。ただし、特定の原則が適用され、この原則下では、実施形態の一例は本発明を限定せず、さらに言えば、1つの実施形態を示すのにすぎない。示されている複数の特徴を、説明及び請求項のさらに別の特徴と組み合わせて実施するか、示されている複数の特徴の方だけで実施するかした上で、示されている複数の特徴を組み合わせて実施するか、示されている複数の特徴を単独で実施するかすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明にしたがって構成されている開放装置の三次元図であり、部分的にハウジングが示されず、自動車から分離した状態で開放装置が示されている。
【
図2】初期位置すなわち開始位置にあり、伝達部ハウジングが設けられている状態の、
図1に係る開放装置の側面図である。
【
図3】作動手段が引き出された位置にある
図2に係る開放装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、自動車から分離した状態で示されている開放装置1の三次元図である。開放装置は、駆動部2、伝達部3及び作動手段4を有する。この実施形態の一例では、電気駆動部2と作動手段4とが中心軸線M
MとM
Sとに関連して互いに略直角に配置されている。
【0031】
電気駆動部2は、設置用フランジ5を用いて自動車のボディに固定することができるDCモータであることが好ましい。設置用フランジ5により、たとえば、伝達部ハウジング6を電気駆動部2に接続することもできる。電気駆動部と伝達部3との双方が自動車のボディ(図示せず)に動かないように固定される。
【0032】
示されている実施形態の一例では、ギヤ段3は3段伝達部3として構成されている。電気駆動部2の出力シャフト7上にはウォーム8が配置されており、伝達部ハウジング6内に取り付けられているウォームギヤ9と係合する。ウォームギヤ9は第1のスピンドルによって回転可能に固定されるようにピニオン11に接続されている。そのピニオン11が歯車12と噛合することで、第2のギヤ段を形成している。その先では、ピニオン14が第2のスピンドル13上に配置され、作動手段4の歯に係合している。前記歯はラック15として設計されている。したがって、ピニオン14とラック15とが第3のギヤ段を形成している。
【0033】
この実施形態の一例では、作動手段は実質的に2つの部品で構成され、駆動領域16とスライド部材17とを備える。スライド部材17は作動手段4中で矢印Pの方向に変位可能なように収容される。したがって、スライド部材17は作動手段4の中心軸線MSに沿って直線的に変位可能である。作動手段4は凹部18を有し、凹部18は複数の機能を持つ。1つには、凹部18はスライド部材17とスイッチ部材19とを組み込むのに用いられ、同時に、凹部18はマイクロスイッチ19に連絡させるためのケーブルガイドとして用いられる。同時に、凹部18はスライド部材17のストッパ20として用いられる。カバー(図示せず)を用いることで、スライド部材17及びスイッチ手段19を湿気から保護することができる。この場合、カバーを固定するのにねじ式接続具21を用いることができる。
【0034】
次に、
図2及び
図3は開放装置1の機能を例として示す。
図1では、開放装置1は開始位置すなわち初期位置にある。作動手段4は自動車のボディ22と略同一面上に位置決めされている。このように、作動手段4は開始位置すなわち初期位置にある。閉鎖システムはロックされかつ/又はラッチがかけられており、自動車ドア23は閉鎖位置にある。このときに自動車ラッチが外されることにより開放される場合、これと同時に、センサにより、好ましくは電気的に、駆動部2が制御信号を受ける結果、伝達部が始動し、作動手段を開始位置すなわち初期位置から移動させることができる。
【0035】
図2は、作動手段4が伝達部ハウジング6すなわちボディ22から出て完全に移動し尽くした位置を示す。明確に見ることができるように、動作中に作動手段4は作動手段4の中心軸線M
Sに沿って直線運動を行う。作動手段4の動作の結果、自動車ドア23が動かされ、隙間Sが生じるなどが起こる。自動車ドアを完全に開放するために、操作者は、たとえば、隙間S内に手を延ばすことができる。作動手段4の動作又は実現される隙間寸法Sは作動手段4の長さ及びストロークに依存し、実施形態に応じて変更することができる。好ましくは、20~150mm、さらにより好ましくは40~90mm、最も好ましくは約70mmの作動動作を行う。
【0036】
作動手段の作動動作の初頭で、スライド部材が自動車ドアに当接し、矢印Pの方向に駆動領域16内に入り込む。この動作は、たとえば、圧縮ばねに抗して作用することができ、同時にこの動作によってスイッチ手段19が動作する。スライド部材17が自動車ドア23と当接する間中、スイッチ手段19は閉鎖状態を維持する。たとえば、自動車ドア23が操作者によってさらに広く開放されれば、スライド部材17が作動手段の駆動領域16からたとえば圧縮ばねによって移動させられ、信号を発生させることができる。電気駆動部2をオフに切り替えることができるか否かに関して信号を解析することができる。スイッチ手段のばねをスライド部材17に対する反力に用いることもできることは言うまでもない。
【0037】
当然、作動手段4向けの別のベアリング、すなわち、スライド部材17向けの直線スライドベアリングを有効に用いることもできる。本発明に係る開放装置を用いれば、その場合、作動動作の連続検出値を検出することができるので、作動手段の無駄のない動作を可能にすることができる。
【符号の説明】
【0038】
1…開放装置、2…駆動部、3…伝達部、4…作動手段、5…設置用フランジ、6…伝達部ハウジング、7…ドライブシャフト、8…ウォーム、9…ウォームギヤ、10…第1のスピンドル、11,14…ピニオン、12…歯車、13…第2のスピンドル、15…ラック、16…駆動領域、17…スライド部材、18…凹部、19…スイッチ手段、20…ストッパ、21…ねじ式接続具、22…ボディ、23…自動車ドア、MS…作動手段中心軸線、MM…駆動部中心軸線、P…矢印、S…隙間。