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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】調剤台
(51)【国際特許分類】
   A47B 81/00 20060101AFI20221004BHJP
   A61J 3/00 20060101ALI20221004BHJP
   A47B 46/00 20060101ALI20221004BHJP
   A47B 96/02 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
A47B81/00 P
A61J3/00 310B
A47B46/00 501B
A47B96/02 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019045497
(22)【出願日】2019-03-13
(65)【公開番号】P2020146192
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000151472
【氏名又は名称】株式会社トーショー
(74)【代理人】
【識別番号】100106345
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 香
(72)【発明者】
【氏名】大村 義人
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特許第5870931(JP,B2)
【文献】特開2016-182965(JP,A)
【文献】特開平11-127994(JP,A)
【文献】特開2000-125958(JP,A)
【文献】特開2004-188110(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 81/00
A61J 3/00
A47B 67/04
A47B 63/00
A47B 46/00
A47B 96/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の薬剤を並べて保持しうる棚部と、この棚部を下から支える台部と、調剤時に調剤対象部材を載せておくのに使用される載置受部材とを具備した調剤台において、
前記載置受部材が前記調剤対象部材を載せておけるほど前記台部から前方へ突き出た調剤時使用可能状態と前記調剤対象部材を載せておけるほどは前記台部から前方へ突き出でていない不使用時状態とを選択的に採りうる可動状態で前記台部に付設されており、
前記棚部が複数の区画に分けられており、そのうち一以上の区画には前方へ引出可能な区分棚が装備されており、調剤時に調剤対象部材を載せておくのに使用される区分受部材が前記調剤対象部材を載せておけるほど前記区分棚から側方へ突き出た調剤時使用可能状態と前記区分棚の前記棚部への収納を妨げるほどは前記区分棚から側方へ突き出でていない不使用状態とを選択的に採りうる可動状態で前記区分棚に付設されていることを特徴とする調剤台。
【請求項2】
多数の薬剤を並べて保持しうる棚部と、この棚部を下から支える台部と、調剤時に調剤対象部材を載せておくのに使用される載置受部材とを具備した調剤台において、
前記載置受部材が前記台部から前方へ進退可能な状態で前記台部に付設されており、
前記棚部が複数の区画に分けられており、そのうち一以上の区画には前方へ引出可能な区分棚が装備されており、調剤時に調剤対象部材を載せておくのに使用される区分受部材が前記調剤対象部材を載せておけるほど前記区分棚から側方へ突き出た調剤時使用可能状態と前記区分棚の前記棚部への収納を妨げるほどは前記区分棚から側方へ突き出でていない不使用状態とを選択的に採りうる可動状態で前記区分棚に付設されていることを特徴とする調剤台。
【請求項3】
多数の薬剤を並べて保持しうる棚部と、この棚部を下から支える台部とを具備した調剤台において、
前記棚部が複数の区画に分けられており、そのうち一以上の区画には前方へ引出可能な区分棚が装備されており、調剤時に調剤対象部材を載せておくのに使用される区分受部材が前記調剤対象部材を載せておけるほど前記区分棚から側方へ突き出た調剤時使用可能状態と前記区分棚の前記棚部への収納を妨げるほどは前記区分棚から側方へ突き出でていない不使用状態とを選択的に採りうる可動状態で前記区分棚に付設されていることを特徴とする調剤台。
【請求項4】
前記区分受部材の前記可動状態が前記区分棚から進退可能な状態であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載された調剤台。
【請求項5】
前記区分受部材に不使用時状態を継続させる状態安定化手段が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載された調剤台。
【請求項6】
前記区分棚の両側面のうち何れか一方または双方が薬剤を出し入れ可能なように解放されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載された調剤台。
【請求項7】
薬剤の滑り落ちを防止する塀状部材が前記区分棚の解放側面寄りの部位に設けられていることを特徴とする請求項6記載の調剤台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、各種の薬剤を並べて保持するとともに、それらの薬剤から必要なものを収集や調製する調剤作業に場所を提供することも行う調剤台に関する。
【背景技術】
【0002】
調剤台は、多数の薬剤を並べて保持しうる棚部と、この棚部を下から支える台部と、調剤時に調剤対象部材を載せておける載置受部材とを具備したものである。
載置受部材に載せ置く調剤対象部材には、調剤対象薬剤だけでなく、調剤指示部材も含まれる。そのうち、調剤対象薬剤には、当該の調剤台の棚部から収集された薬剤が該当するのに加えて、他の調剤台の棚部などから収集された薬剤まで含まれることもある。
また、調剤指示部材は、調剤対象薬剤の処方箋や調剤指示箋が典型的なものであるが、その内容を表示しうる固定のディスプレイや携帯端末の画面表示器などのこともある。
【0003】
従来の調剤台では(例えば特許文献1,2参照)、調剤台の前方空間が通路や調剤者立ち位置として使用されることを前提に、台部が下側に配置され、そのうえで、台部の上面部分のうち後半部に対して棚部が立設されるとともに、台部の上面部分のうち前半部に対して載置用板体(載置受部材)が上面露出状態で横置きされていた。
このように棚部が台部に比べて前後に薄くて棚部に並べて置ける薬剤収容箱などの数には限りがあることから、棚部の薬剤保持量を拡大するべく、棚部の上方にスライド昇降棚を付設したり(例えば特許文献1参照)、棚部を前後二段に分割したうえで前段の棚を横スライド可能にまでしたり(例えば特許文献2参照)、棚部の改良が試みられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-172502号公報
【文献】特開2012-005808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、新薬の開発やジェネリック医薬品の使用増加などによって薬剤の種類が増えており、棚部薬剤保持量には更なる拡大の要求が強まっている。しかも、台部の占有面積については拡大しないのが望ましく、そのような制約の下であっても棚部薬剤保持量は増えて調剤作業も行える、との要件を満たす調剤台に対する要望が高まっている。
増築や区画拡大などによる設備占有域拡張が難しい小規模な調剤薬局などでは、その多くが、調剤台の数を増やすことも調剤台の台部を大きくすることも儘ならないといった状況に置かれているため、薬剤保持量の大きな調剤台に対する期待が特に強まっている。
そこで、棚部の大きな調剤台を実現することが重要な技術課題となる。また、その課題の解決に資するべく棚部の拡大に関わる制約を減じることが基本的な技術課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の調剤台は(解決手段1)、上述した基本的な技術課題を解決するために創案されたものであり、
多数の薬剤を並べて保持しうる棚部と、この棚部を下から支える台部と、調剤時に調剤対象部材を載せておくのに使用される載置受部材とを具備した調剤台において、
前記載置受部材が前記調剤対象部材を載せておけるほど前記台部から前方へ突き出た調剤時使用可能状態と前記調剤対象部材を載せておけるほどは前記台部から前方へ突き出でていない不使用時状態とを選択的に採りうる可動状態で前記台部に付設されていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の調剤台は(解決手段2)、上述した基本的な技術課題を解決するために創案されたものであり、
多数の薬剤を並べて保持しうる棚部と、この棚部を下から支える台部と、調剤時に調剤対象部材を載せておくのに使用される載置受部材とを具備した調剤台において、
前記載置受部材が前記台部から前方へ進退可能な状態で前記台部に付設されていることを特徴とする。
【0008】
さらに、本発明の調剤台は(解決手段3)、上記解決手段1,2の調剤台であって、前記載置受部材が横方向位置の異なる複数の部材に分かれており、それらの部材が個別可動になっていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の調剤台は(解決手段4)、上記解決手段1~3の調剤台であって、前記載置受部材に不使用時状態を継続させる状態安定化手段が設けられていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の調剤台は(解決手段5)、上記解決手段1~4の調剤台であって、前記棚部が複数の区画に分けられており、そのうち一以上の区画には前方へ引出可能な区分棚が装備されており、調剤時に調剤対象部材を載せておくのに使用される区分受部材が前記調剤対象部材を載せておけるほど前記区分棚から側方へ突き出た調剤時使用可能状態と前記区分棚の前記棚部への収納を妨げるほどは前記区分棚から側方へ突き出でていない不使用状態とを選択的に採りうる可動状態で前記区分棚に付設されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の調剤台は(解決手段6)、上述した基本的な技術課題を解決するために創案されたものであり、
多数の薬剤を並べて保持しうる棚部と、この棚部を下から支える台部とを具備した調剤台において、
前記棚部が複数の区画に分けられており、そのうち一以上の区画には前方へ引出可能な区分棚が装備されており、調剤時に調剤対象部材を載せておくのに使用される区分受部材が前記調剤対象部材を載せておけるほど前記区分棚から側方へ突き出た調剤時使用可能状態と前記区分棚の前記棚部への収納を妨げるほどは前記区分棚から側方へ突き出でていない不使用状態とを選択的に採りうる可動状態で前記区分棚に付設されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の調剤台は(解決手段7)、上記解決手段5,6の調剤台であって、前記区分受部材の前記可動状態が前記区分棚から進退可能な状態であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の調剤台は(解決手段8)、上記解決手段5~7の調剤台であって、前記区分受部材に不使用時状態を継続させる状態安定化手段が設けられていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の調剤台は(解決手段9)、上記解決手段5~8の調剤台であって、前記区分棚の両側面のうち何れか一方または双方が薬剤を出し入れ可能なように解放されていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の調剤台は(解決手段10)、上記解決手段9の調剤台であって、薬剤の滑り落ちを防止する塀状部材が前記区分棚の解放側面寄りの部位に設けられていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の調剤台は(解決手段11)、上記解決手段1~10の調剤台であって、前記棚部の下面が前記台部の上面を覆っていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
このような本発明の調剤台にあっては(解決手段1)、調剤時に調剤対象部材を載せておくのに使用される載置受部材を、棚部より下に位置する台部に可動状態で付設して、載置受部材の姿勢が調剤時使用可能状態と不使用時状態とで切り替えられるとともに、調剤時に使用したいときには、台部から前方へ突き出させて使用可能状態にできるようにしたことにより、一時的に調剤台の前方空間を占めるが載置受部材として必要な役目を果たすことができる。これに対し、載置受部材が必要でないときには、それを不使用時状態にしておくことで、調剤台の前方空間が通行等の可能状態に戻るので、設備占有面積の恒久的な拡大を回避することができる。
【0018】
このように載置受部材を台部上面に固定しておくのでなく載置受部材を調剤に必要なときだけ台部前方に発現させうるようにしたことにより、棚部が台部の上面を占める割合を拡大しても必要な調剤作業は行うことができるので、棚部の拡大に関わる制約が減じられることとなる。
したがって、この発明によれば、棚部の大きな調剤台を実現するのに資することができて、上述した基本的な技術課題が解決される。
【0019】
また、本発明の調剤台にあっては(解決手段2)、載置受部材を台部から進退させることで載置受部材の姿勢を切り替えられるようにしたことにより、載置受部材が不使用時には台部にこぢんまり収まるので、可動式の載置受部材を付設しても台部の受ける影響が小さくて済む。
【0020】
さらに、本発明の調剤台にあっては(解決手段3)、載置受部材を横方向位置の異なる複数の部材に分けたうえで、それぞれを個別に使用しうるようにしたことにより、一部の載置受部材を前方へ突き出させて調剤対象部材を載せる一方、残りの載置受部材は前方へ不所望には突き出させないで、その前方空間を調剤者立ち位置として使用することができるため、調剤台の横幅が大きいような場合でも、楽な姿勢で調剤を行うことができる。
【0021】
また、本発明の調剤台にあっては(解決手段4)、状態安定化手段を設けて載置受部材が不使用時状態を維持しやすいようにしたことにより、付近の通過や薬剤収容状態の確認など載置受部材を使わないときにまで載置受部材が前方へ大きく突き出て邪魔になるといった不所望な事態の発生を未然かつ簡便に防止することができる。
【0022】
また、本発明の調剤台にあっては(解決手段5,6)、棚部を複数の区画に分けて何れかの区画あるいは総ての区画に前方へ引出可能な区分棚を装備させたことにより、棚部の奥行きが大きくなっても区分棚を引き出せば少なくとも側面は露出するので最奥にまで楽に手が届くうえ、棚の引き出しは、区画された小部分が対象なので、楽に調剤できる。
しかも、調剤時に調剤対象部材を載せておくのに使用される区分受部材を区分棚に付設したうえで、更に、区分受部材の姿勢が調剤時使用可能状態と不使用時状態とで切り替えられるとともに、調剤時に使用したいときには、引き出した区分棚から側方へ突き出させて使用可能状態にできるようにもしたことにより、一時的に調剤台の前方空間の一部を占めるが区分受部材として必要な役目を果たさせることができる。
【0023】
これに対し、区分受部材が必要でないときにはそれを不使用時状態にすることで、設備占有面積の拡大を回避することができるとともに、区分棚を棚部へ戻すのを許容する状態に姿勢を切り替えさせることまでできる。
このように区分受部材を区分棚に固定しておくのでなく区分受部材を調剤に必要なときだけ付設先の側方に発現させうるようにしたことにより、棚部が台部の上面を占める割合を拡大しても、必要な調剤作業は行うことができるうえ、区分棚の出し入れまで妨げられることなく円滑に行えるので、棚部の拡大に関わる制約が減じられることとなる。
したがって、この発明によれば、棚部の大きな調剤台を実現するのに資することができて、上述した基本的な技術課題が解決される。
【0024】
また、本発明の調剤台にあっては(解決手段7)、区分受部材を区分棚から進退させることで区分受部材の姿勢を切り替えられるようにしたことにより、区分受部材が不使用時には区分棚にこぢんまり収まるので、区分受部材を付設しても区分棚の受ける影響が小さくて済む。
【0025】
また、本発明の調剤台にあっては(解決手段8)、状態安定化手段を設けて区分受部材が不使用時状態を維持しやいようにしたことにより、付近の通過や薬剤収容状態の確認さらには区分棚の出し入れなど区分受部材を使わないときにまで区分受部材が側方へ突き出て邪魔になるといった不所望な事態の発生を未然かつ簡便に防止することができる。
【0026】
また、本発明の調剤台にあっては(解決手段9)、区分棚の両側面のうち少なくとも一面については、完全に塞ぐことはしないで、少なくとも薬剤を出し入れ可能な程度には解放し、望ましくは薬剤を容易に出し入れできる程度まで大きく解放したことにより、棚部の拡大のために区分棚が奥行きの長いものになっていても、棚部を引き出して露出した側面から薬剤を出し入れすることができ、そのため調剤が楽なものになる。
【0027】
また、本発明の調剤台にあっては(解決手段10)、薬剤の滑り落ちを防止する塀状部材を区分棚の解放側面寄り部位に設けたことにより、区分棚の側面を大きく解放したとしても、そこからの不所望な薬剤の滑り落ちは防止することができる。
しかも、付設するのは比較的簡素な塀状部材なので、簡便かつ安価に実施することができる。
【0028】
また、本発明の調剤台にあっては(解決手段11)、棚部の下面が台部の上面を覆うところまで棚部を大きくしたことにより、本発明の遣り方では限界と言えるほど棚部の大きい調剤台が実現されるので、上述した重要な技術課題が明確に解決される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施例1について、調剤台の構造を示し、(a)が正面図、(b)が右側面図、(c)が斜視図である。
図2】その調剤台の使用態様を示す斜視図である。
図3】本発明の実施例2について、調剤台の構造を示し、(a)が平面図、(b)が正面図、(c)が右側面図、(d)が斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
このような本発明の調剤台について、これを実施するための具体的な形態を、以下の実施例1~2により説明する。
図1~2に示した実施例1は、上述した解決手段1~11(出願当初の請求項1~11)を総て具現化したものであり、図3に示した実施例2は、その変形例である。
【実施例1】
【0031】
本発明の調剤台の実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図1は、調剤台10の外観図であり、(a)が正面図、(b)が右側面図、(c)が斜視図である。
【0032】
調剤台10は、上側の棚部20と下側の台部30とを重ねて連ねたものであり、一枚物からなる側板等を用いて一体化されていても良いが、ここでは別体の両部20,30を上下に重ねたものを図示しており、棚部20の底板と台部30の天板とが同一サイズで、棚部20の下面が台部30の上面を完全に覆っている。
【0033】
棚部20は、PTP包装の錠剤や,シート包装の散薬,小瓶入り液剤といった各種の比較的ちいさな薬剤を保持するためのものであり、種類の多い薬剤の出し入れが遣りやすいよう上側に配置されている。多数の薬剤を並べて保持できるように、薬剤を載せて置くための棚板23が図示の例では8行7列のマトリクス状に配設されている。
種類の異なる薬剤が混じらないよう、薬剤は適宜な上面解放の小箱(後述する薬剤容器43等のケース)などに収容して区分けされ、棚板23上に並べて置かれる。
【0034】
台部30は、そのような棚部20を下から支えるとともに、調剤時に調剤対象部材を載せておくのに使用される載置受部材32を上部に装備しているものであるが、その上部を除いた大部分は、大きな薬剤やその他の器具なども収容できようになっており、戸棚になっているものもあるが、図示のものでは大きめの引出31が幾つか配設されている。
載置受部材32は、台部30に固定された天板ではなくなって、その天板に代わって当該位置に配された少し厚めの引出用枠部に対して進退可能な状態で組み込まれた可動式の板状体になっており、図示の例では、左右に一つずつ、合計で二つ、設けられている。
【0035】
このような載置受部材32,32は、横方向位置の異なる複数の部材に分かれていて、個々の載置受部材32を他の載置受部材32の状態と無関係に進退させることができるものである。そして、そのような載置受部材32は、何れも、前方へ引き出せば、台部30から前方へ突き出た調剤時使用可能状態になって、平坦な上面が載置受部材としての機能を発揮するようになっている。一方、載置受部材32を後方へ押し込めば、小さな把手33以外は台部30に収納されるので、台部30から前方へ殆ど突き出さない不使用時状態になって、調剤台10の前方の通行といった機能を毀損しないようにもなっている。
【0036】
棚部20について更に説明すると、前面解放の枠体の中が複数の区画に分けられている。本例の棚部20では、七つの縦長区画に分割されて横一列に並んでおり、それぞれの区画に一つずつ区分棚21が装備されている。
区分棚21は、何れも、区画の一側を画するとともに複数の棚の支持機能を発揮する側板22と、縦一列に並んで側板22に固定された八段の棚板23と、棚板23の上面の周縁部のうち側板22の無い部位に立設された塀状部材24と、区分棚21を前方へ引出可能にするためのスライダ25と、区分受部材26とを具備している。
【0037】
棚板23は、何れも、従来品と同じく上面の平坦な板体からなり、横幅も従来と同等で良いが、奥行きが従来品より長くて二倍~三倍ほどになっているので、薬剤の収納量(より実用的な観点からは薬剤容器43の搭載数)が増えている。その代わり、前からだけでは奥寄りの薬剤やその容器43を取り出し難くなっているので、区分棚21を引き出したときに側板22の反対側が解放されるようになっていて、その解放側面から容易に薬剤等を出し入れすることができる。しかも、棚板23の前端部の上面は、解放側面に加えて前面も解放されているので、使用頻度の高い薬剤の収納に適している。
【0038】
塀状部材24は、棚板23の上面のうち解放側面寄り部位に加えて、前後の部位や、内側でも区切っておきたい適宜部位などに設けられており、区分棚21の出し入れ時の一寸した揺れなどで薬剤が棚板23から滑り落ちるを防止するためのものなので、薬剤や薬剤容器43の出し入れの邪魔にならないように、背の低いものが設けられている。図示の塀状部材24は連続しているが、完全に連続していることは必須でなく、落下防止機能が発揮できれば良いので、薬剤や薬剤容器43の短辺より小さな欠け等は有っても良い。
【0039】
スライダ25は、区分棚21の引出方向である前後方向に長く延びた引出機構の可動部であり、本例では区分棚21の最下部にだけ装備されているが、区分棚21の最上部だけや上下双方に設けても良い。また、スライダ25の個数や配置に関して、図示のような中央の一カ所か、図示を割愛した複数箇所が、採用されるが、その際、該当する区画における左右方向の配置位置として左右対称位置が採用されている。
そして、そのような位置にスライダ25を装備した棚部20は、側板22を左方に配した図示の区分棚21に限らず、それとは左右対称的に側板を右方に配した不図示の区分棚も、同じ区画に付け替えることができるものとなっている。
【0040】
区分受部材26は、上述した載置受部材32を少し小さくして台部30の上部でなく区分棚21に組み込んだようなものであり、図示の例では夫々の区分棚21の下部に一つずつ組み込まれて、最下の棚板23の直ぐ下であってスライダ25の直ぐ上の所に位置しているが、区分棚21の他の部位に装備されていても良く、複数設けられても良い。。
区分受部材26も、載置受部材32と同じく調剤時に調剤対象部材を載せておくためのものなので、同様に上面の平坦な板状体からなり、同様に横たえて組み込まれていて、区分棚21から進退させうる可動状態で区分棚21に付設されたものとなっている。
【0041】
とはいえ、区分受部材26は、載置受部材32とは取り付け箇所が異なるので、載置受部材32とは異なり、区分棚21が前方で十分に引き出されたときにだけ側方へ引き出すことができるようになっている。それ以外のときには、棚部20に対する区分棚21の収納を妨げないように、区分受部材26は区分棚21の中に押し込んで置かれる。
このような区分受部材26,26,…は、区分棚21から側方へ突き出た調剤時使用可能状態と、区分棚21から側方へ不所望には突き出でていない不使用時状態とを、選択的に採りうる可動状態で区分棚21に付設されたものとなっている。
【0042】
なお、区分受部材26は棚部20の下部に組み込まれており、載置受部材32は台部30の上部に組み込まれており、棚部20と台部30は上下に配置されているので、区分受部材26と載置受部材32とがぶつかって干渉するいった不都合な状態が生じるおそれは無い。区分棚21の最も下のスライダ25が載置受部材32と干渉することも無い。
また、図示は割愛したが、区分受部材26にも載置受部材32にも不使用時状態を継続させる状態安定化手段が付設されている。
状態安定化手段は、永久磁石と鉄片を用いた所謂マグネットキャッチや、軽く押し込むとラッチされ更に押し込むとラッチが解除されるラッチ機構など、簡素なものが良い。
【0043】
この実施例1の調剤台10について、図2の外観斜視図を引用して更に説明するが、調剤台10は基本的に該当部材を人手で作動させるものなので、以下、使用態様を中心に説明する。
【0044】
先ず、調剤台10の台部30に収納しておく薬剤等は、従来通り、該当する引出31を引き出してそこに出し入れする。
これに対し、棚部20に収納する薬剤は、必須ではないが大抵は薬剤容器43に収容しておき、薬剤容器43を棚板23の上に並べて置くことで、該当する区分棚21に収納するのであるが、従来と異なり、区分棚21ひいては棚板23の奥行きが増して、そこに薬剤容器43を前後に複数個たとえば四個ほど並べられるようになっているので、区分棚21の前端に置く薬剤容器43を除き二番目以降の薬剤容器43は、該当する区分棚21を棚部20から前方へ引き出した状態で解放側面から行う。
【0045】
棚部20に収納された薬剤容器43やそれに収容されている薬剤を取り出すときも、区分棚21の前端に置かれたものは区分棚21を引き出さなくても直ちに取り出せるが、棚部20の内側に位置している薬剤容器43に係るものは、該当する区分棚21を棚部20から前方へ引き出して(図2では左端の区分棚21を参照)、その解放側面から取り出す(図2では下からも前からも二番目のものと下から三番目で最奥のものとを参照)。
薬剤の取り出しは、薬剤容器43を取り出すことなく薬剤容器43の上の隙間から中の薬剤だけを抜き取ることで行っても良いが、ここでは先ず薬剤容器43を取り出して薬剤容器43の上方を大きく解放し、そこから薬剤を取り出す遣り方について詳述する。
【0046】
この遣り方では、該当する区分棚21を引き出した後で薬剤容器43を取り出す前に、その区分棚21から区分受部材26を右方へ引き出しておくのが良い。
そうすることで、区分棚21から取り出した薬剤容器43,43を区分受部材26の上に一時的に置いておけるので、薬剤容器43から必要な薬剤を取り揃える調剤行為が楽な姿勢で行えるので、能率も良く、間違いも起き難い。
【0047】
また、薬剤容器43から取り出した薬剤を収容するための薬剤収集箱42や、調剤指示箋や処方箋といった調剤指示部材41は、台部30から載置受部材32を引き出しておいて、その上に載せて置く。このような載置受部材32と区分受部材26との使い分けは必須では無いので、両部材32,26同時でも一方の部材だけでも使い方は自由であるが、それ又はそれらを載置に使用することで、調剤者の手が空くので、区分棚21の引き出し行為や薬剤容器43の取り出し行為についても、楽な姿勢で行うことができる。
そして、一つの区分棚21に係る薬剤を総て取り出したら、そこの区分受部材26を区分棚21の中に押し戻し、更に該当する区分棚21を棚部20の中に押し戻す。
【0048】
他の薬剤も取り揃える必要があれば、他の該当する区分棚21について、上述の行為を繰り返し行う。
そして、必要な薬剤のうち調剤台10に収容されていた薬剤が総て薬剤収集箱42の中に収まったら、調剤指示部材41や薬剤収集箱42を手にし、それから載置受部材32を台部30の中に押し戻す。
こうして、棚部20に従来より多くの薬剤容器43を収納した調剤台10からも、滞りなく必要な薬剤を取り出して収集することができる。
【実施例2】
【0049】
本発明の調剤台の実施例2について、その具体的な構成等を、図面を引用して説明する。図3は、(a)が平面図、(b)が正面図、(c)が右側面図、(d)が斜視図である。
【0050】
調剤台60は、基本的構造を上述の調剤台10から引き継いでおり、上述した区分棚21,側板22,棚板23,塀状部材24,区分受部材26がそれぞれ少しだけ改造された区分棚61,側板62,棚板63,塀状部材64,区分受部材66になっている。
具体的には、区分棚61の奥行きが区分棚21より長くなって、棚部が台部より少し大きくなっている。そして、それに随伴して、区分受部材66も前後に長くなり、調剤対象部材を載せて置ける面積が広くなっている。しかも、区分棚61が長くなった分だけ、それを収納する棚部も後方へ伸び、棚部の後端部が台部から後方へ出ているので、区分棚61を前方へ引き出したときでも、前後のバランスが良くて、調剤台60が安定する。
【0051】
また、左側の四っつの区分棚61は区分棚21と同じく側板62が左に配置されているが、右側の三つの区分棚61は区分棚21と異なり側板62が右に配置されている。
そのため、調剤台60は、その前方だけで調剤など必要な行為を済ませることができるものとなっている。具体的には、左側の区分棚61に対して薬剤を出し入れするときには調剤台60の右側部分の前に立ち、右側の区分棚61に対して薬剤を出し入れするときには調剤台60の左側部分の前に立つことで、調剤台60の前だけでも調剤等が行える。
【0052】
さらに、側板62の前端部には欠け62aが切欠形成されているので、最前の薬剤容器43については、薬剤を出し入れし易い向きが前からと側板62の無い方からとに限られず、側板62の有る方からも容易に薬剤を出し入れできるものとなっている。
また、塀状部材64は、薬剤の出し入れ頻度の高い最前部には塀状部材24と同等の高さのものが設けられているが、それより後方の部位には、薬剤の出し入れ頻度が相対的に低いうえ、薬剤の出し入れ方向が側方に限られていて薬剤の出し入れが相対的に遣りづらいこともあるため、塀状部材24より少し低い固形の部材か、塀状部材24よりかなり低いが滑り難い性質の軟質部材などが、用いられている。
【0053】
[その他]
上記実施例では、載置受部材や区分受部材が載置用板体や区分受用板とも言える板状部材になっていたが、それらの部材は使用目的に適うものであれば板状でなくても良い。
それらの可動状態についても、上例では載置受部材や区分受部材が前や横へ進退可能な状態で保持されて手動の引き出しや押し込みにて姿勢等の状態を切り替えるようになっていたが、その状態切替は、手動に限られる訳でなく例えばモータ駆動等によってなされるものであっても良く、横向き姿勢のまま水平移動する態様に限られる訳でもなく、例えば、一端部を軸支されて、そこを中心に揺動可能になっていて、載置使用に適う水平な突き出し姿勢と、突き出し不要時の垂下姿勢や後退姿勢と、を切り替えるものでも良い。
【0054】
上記実施例では、棚部を複数の区画に分けるときに全部を列単位で分割して縦長の区分棚が横一列に並んでいたが、棚部の区画分けは、それに限定される訳でなく、棚部の一部など部分的に行っても良く、上下の区分を排除するものでもない。
上記実施例では、区分棚の片面が総て又は前端部を除いた片面の大部分が側板にて塞がれていたが、区分棚の強度や剛性に不足が無く、さらに棚から薬剤が溢れ落ちるといった不都合も無ければ、区分棚の両側面が大きく解放されていても良い。
【0055】
また、区分棚の引き出し方についても、手動に限られる訳でなく、案内表示や支援駆動などが有っても良い(例えば特開2007-7093号公報や特開2013-255724号公報など参照)。
さらに、区分棚への薬剤収納や区分棚からの薬剤取出についても、目視確認だけで行うのでなく、適宜なシステムの支援を受けられるようにすると更に良い(例えば特開2006-247150号公報や特開2015-208528号公報など参照)。
【0056】
上記実施例では、区分受部材26,66が区分棚21,61の解放側面の方へ進出するようになっていたが、区分受部材26,66が側板22,62の方へも進出できるようになっていても良い。そうすることで、離れている他の区分受部材26,66に対して薬剤の出し入れを行うときなどにも調剤対象部材を載せ置くのに使用することができる。
上記実施例では、区分棚21,61の後端に背板の無いものを図示したが、区分棚21,61の後端に背板が有っても良い。
上記実施例2では、左から四番目の区分棚61と右から三番目の区分棚61との間に側板62が来ない配置になっていたが、そのような棚間に平板を装着するのも良い。
【符号の説明】
【0057】
10…調剤台、
20…棚部、
21…区分棚(区画)、22…側板、23…棚板、
24…塀状部材、25…スライダ、26…区分受部材、
30…台部、
31…引出、32…載置受部材、33…把手、
41…調剤指示部材(調剤対象部材)、
42…薬剤収集箱、43…薬剤容器、
60…調剤台、
61…区分棚(区画)、62…側板、62a…欠け、
63…棚板、64…塀状部材、66…区分受部材
図1
図2
図3