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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】グリッパ装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/08 20060101AFI20221004BHJP
【FI】
B25J15/08 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018106057
(22)【出願日】2018-06-01
(65)【公開番号】P2019209406
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-05-17
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、革新的研究開発プログラム(ImPACT)「タフ・ロボティクス・チャレンジ/ロボットコンポーネント/極限環境での探査活動能を拡張させる革新的ロボット機構の研究開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095359
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100143834
【弁理士】
【氏名又は名称】楠 修二
(72)【発明者】
【氏名】藤本 敏彰
(72)【発明者】
【氏名】多田隈 建二郎
(72)【発明者】
【氏名】昆陽 雅司
(72)【発明者】
【氏名】田所 諭
【審査官】臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-246427(JP,A)
【文献】特開昭59-084504(JP,A)
【文献】特開昭62-134374(JP,A)
【文献】特開平05-285878(JP,A)
【文献】特開平07-290393(JP,A)
【文献】特開2017-013168(JP,A)
【文献】実開昭58-171531(JP,U)
【文献】米国特許第04753128(US,A)
【文献】中国特許出願公開第108058187(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 13/00-19/00
B66C 23/72
G05G 7/04
H01F 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に力を作用可能に設けられた作用手段と、前記作用手段を支持する支持手段とを有する変位-力変換装置と、
1対の把持部材とを有し、
前記作用手段は、前記力の反力がかかると共に、前記反力の方向に沿って往復移動して、前記力の大きさを変更可能に設けられた操作部を有し、
前記支持手段は、前記操作部の移動と共に変化する前記反力と釣り合う力を、前記操作部に作用させるよう前記操作部に接続されており、
一方の把持部材は、前記対象物から成り、前記作用手段から作用する前記力により所定の方向に付勢されており、
他方の把持部材は、前記支持手段に取り付けられ、前記一方の把持部材との間に被把持物を把持可能に、前記一方の把持部材の付勢方向側で前記一方の把持部材に対向するよう配置されていることを
特徴とするグリッパ装置。
【請求項2】
前記作用手段は、前記対象物に対して引く力を作用可能に設けられていることを特徴とする請求項1記載のグリッパ装置
【請求項3】
前記作用手段は、長さに応じて両端に作用する力が変化する弾性体から成り、一端部が前記対象物に取り付けられ、他端部が前記操作部を成していることを特徴とする請求項1または2記載のグリッパ装置
【請求項4】
前記作用手段は、磁石から成り、一方の極を前記対象物側に向け、他方の極に前記操作部を有していることを特徴とする請求項1または2記載のグリッパ装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変位-力変換装置を利用したグリッパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄鋼等の磁性体へ吸着する際に、僅かなエネルギーで永久磁石の吸着と剥離とを切り替えるものとして、内部力補償型磁気吸着機構(Internally-Balanced Magnetic Unit)が提案されている(例えば、非特許文献1または2参照)。この機構は、永久磁石の吸着力Fが、吸着面に接近するほど急激に増大する非線形特性を有するため、この吸着力Fを、同等の特性を有する非線形バネの復元力Fで補償するものである。この機構では、永久磁石の内部力Finter(=F-F)が変位によらず0となるため、永久磁石は常に平衡状態となり、永久磁石の移動には力を要さない。なお、この機構では、永久磁石を吸着面に接触させることにより、非線形バネの反力Fが機構全体を対象面に押し付けるため、吸着状態にすることができる。また、永久磁石を吸着面から離すことにより、非線形バネの反力Fが小さくなるため、吸着面から剥離することができる。このように、永久磁石を小さい力で移動させるだけで、永久磁石の吸着状態を切り替えることができる。
【0003】
なお、非特許文献1および2では、永久磁石の吸着力を補償する復元力を得るために、その永久磁石の逆特性を有する非線形バネを用いているが、その他にも、線形バネの逆特性を得るための構成として、非円形プーリとバネや錘とを用いる方法や、定荷重バネの幅や剛性を変位毎に調整する方法、カムやリンクを用いる方法などが提案されている。具体的には、非円形プーリを利用するものとして、ロボットアームの自重補償(例えば、非特許文献3参照)や、筋肉トレーニングマシン用の定荷重バネ(例えば、特許文献1参照)がある。また、逆特性バネに近い構造として、弦を引ききると操作力が微小となるコンパウンドボウが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】広瀬、今里、工藤、梅谷、「内部力補償型磁気吸着ユニット」、日本ロボット学会誌、1985年2月、Vol. 3、No. 1、p.10-19
【文献】鈴木、広瀬、「内部力補償型磁気吸着ッユニットのための非線形スプリングと機構の設計」、日本ロボット学会誌、2009年5月、Vol. 27、No. 4、p.460-469
【文献】遠藤、山田、矢島、尾形、広瀬、「非円形プーリ-バネ形による自重補償機構と4節平行リンク型アームへの適用」、日本ロボット学会誌、2010年1月、Vol. 28、No. 1、p.77-84
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第4231568号明細書
【文献】米国特許第3486495号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1および2記載の内部力補償型磁気吸着機構は、永久磁石の吸着力を非線形バネの復元力で補償することにより、僅かなエネルギーで永久磁石を移動させて、その吸着と剥離とを切り替えるものであるが、永久磁石の変位(移動)を力に変換するものではなかった。また、非特許文献1および2以外にも、非常に小さいエネルギーによる変位を力に変換するものは存在しなかった。
【0007】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、非常に小さいエネルギーによる変位を力に変換することができる変位-力変換装置を利用したグリッパ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、非特許文献1および2記載の内部力補償型磁気吸着機構の原理を拡張して一般化し、さらに検討を行った結果、本発明に想到した。すなわち、本発明に係るグリッパ装置は、対象物に力を作用可能に設けられた作用手段と、前記作用手段を支持する支持手段とを有する変位-力変換装置と、1対の把持部材とを有し、前記作用手段は、前記力の反力がかかると共に、前記反力の方向に沿って往復移動して、前記力の大きさを変更可能に設けられた操作部を有し、前記支持手段は、前記操作部の移動と共に変化する前記反力と釣り合う力を、前記操作部に作用させるよう前記操作部に接続されており、一方の把持部材は、前記対象物から成り、前記作用手段から作用する前記力により所定の方向に付勢されており、他方の把持部材は、前記支持手段に取り付けられ、前記一方の把持部材との間に被把持物を把持可能に、前記一方の把持部材の付勢方向側で前記一方の把持部材に対向するよう配置されていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る変位-力変換装置は、以下の原理により、変位を力に変換することができる。まず、図1に示すように、永久磁石に対応する要素「g(x)」と、その逆特性を有する非線形バネに対応する要素「-g(x)」とを直列に配置し、「g(x)」により対象物に力が作用しているとする。また、「-g(x)」は、「g(x)」とは反対側で、支持体に取り付けられ、常に「g(x)」と釣り合うようになっている。ここで、「g(x)」が作用手段に、「-g(x)」および支持体が支持手段に対応している。また、「g(x)」と「-g(x)」との釣り合い点が、操作部に対応している。また、「-g(x)」が「g(x)」の逆特性を有するとは、任意の操作部の位置に対して、「-g(x)」により操作部に作用する力が、「g(x)」により操作部に作用する力と同じ大きさで、向きが逆であることをいう。
【0010】
このとき、釣り合い点である操作部を、非常に小さいエネルギーで、「g(x)」と「-g(x)」との間を往復移動させることができるとともに、その操作部の変位(所定の位置からの移動距離)により、「g(x)」により対象物に作用する力を変化させることができる。このように、本発明に係る変位-力変換装置は、非常に小さいエネルギーによる操作部の変位を、対象物に作用する力に変換することができる。
【0011】
本発明に係るグリッパ装置で、前記作用手段は、前記対象物に対して引く力を作用可能に設けられていることが好ましい。作用手段は、線形バネや、他の弾性体、磁石などであることが好ましい。例えば、前記作用手段は、長さに応じて両端に作用する力が変化する弾性体から成り、一端部が前記対象物に取り付けられ、他端部が前記操作部を成していてもよい。また、前記作用手段は、磁石から成り、一方の極を前記対象物側に向け、他方の極に前記操作部を有していてもよい。
【0013】
本発明に係るグリッパ装置は、本発明に係る変位-力変換装置を利用しているため、非常に小さいエネルギーで操作部を移動させるだけで、1対の把持部材の間で、大きな把持力を得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、非常に小さいエネルギーによる変位を力に変換することができる変位-力変換装置を利用したグリッパ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る変位-力変換装置の原理を示す正面図である。
図2】本発明の実施の形態の変位-力変換装置を示す正面図である。
図3】本発明の実施の形態の変位-力変換装置の変形例を示す正面図である。
図4】本発明の実施の形態のグリッパ装置を示す正面図である。
図5】本発明の実施の形態の変位-力変換装置の、実験用の変形例を示す正面図である。
図6図5に示す変位-力変換装置の、操作部の変位に対する操作力および発生力の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態について説明する。
図2および図3は、本発明の実施の形態の変位-力変換装置を示している。
図2に示すように、変位-力変換装置10は、作用手段11と支持手段12とを有している。
【0017】
作用手段11は、長さに応じて両端に作用する力が変化する、線形バネから成っている。作用手段11は、対象物1に対して引く力を作用可能に、一端が対象物1に取り付けられている。また、作用手段11は、他端に操作部11aを有している。操作部11aは、対象物1に作用する力の反力がかかると共に、反力の方向に沿って往復移動することにより、対象物1に作用する力の大きさを変更可能になっている。
【0018】
支持手段12は、作用手段11を支持するよう設けられている。支持手段12は、操作部11aに接続されており、操作部11aに作用する反力と釣り合う力を、操作部11aに作用させるようになっている。すなわち、支持手段12は、作用手段11の線形バネの逆特性を有しており、操作部11aの移動と共に変化する反力と釣り合う力を、操作部11aに作用させるようになっている。
【0019】
図2に示す具体的な一例では、支持手段12は、作用手段11の線形バネの逆特性を有し、長さに応じて両端に作用する力が変化する逆特性要素12aと、逆特性要素12aの一端が接続された支持体12bとを有している。支持手段12は、逆特性要素12aの他端が操作部11aに接続されており、操作部11aに作用する反力と釣り合う力を、操作部11aに作用可能になっている。
【0020】
なお、支持手段12は、線形バネの逆特性を有していればいかなる構成であってもよく、例えば、非特許文献3や、特許文献1、2に記載のように、非円形プーリとバネや錘とを用いる構成や、定荷重バネの幅や剛性を変位毎に調整する構成、カムやリンクを用いる構成などであってもよい。
【0021】
次に、作用について説明する。
図2に示すように、変位-力変換装置10は、操作部11aを作用手段11の側に移動させると、対象物1に作用する力が小さくなり、操作部11aを支持手段12の側に移動させると、対象物1に作用する力が大きくなる。このとき、操作部11aは、作用手段11の線形バネと支持手段12の逆特性要素12aとの釣り合い点であるため、非常に小さい力で操作部11aを往復移動させることができる。また、作用手段11として線形バネを利用しているため、対象物1に作用する力がゼロとなる位置からの操作部11aの変位と、対象物1に作用する力との間には線形の関係が得られる。このように、変位-力変換装置10は、非常に小さいエネルギーによる操作部11aの変位を、対象物1に作用する力に変換することができる。
【0022】
なお、図3に示すように、変位-力変換装置10は、作用手段11が永久磁石から成り、一方の極を対象物1の側に向け、他方の極側に操作部11aを有していてもよい。このとき、支持手段12の逆特性要素12aは、作用手段11の永久磁石の逆特性を有する非線形バネの特性を有している。この場合にも、非常に小さい力で操作部11aを往復移動させることができ、その操作部11aの変位を、対象物1に作用する力に変換することができる。
【0023】
図4は、本発明の実施の形態のグリッパ装置を示している。
図4に示すように、グリッパ装置20は、図2に示す変位-力変換装置10と、1対の把持部材21,22とを有している。
【0024】
変位-力変換装置10は、支持体12bがフレーム状を成し、内側に作用手段11、操作部11a、逆特性要素12aが配置されている。変位-力変換装置10は、作用手段11の一端が、フレーム状の支持体12bに設けられた貫通孔12cを通って、支持体12bの外側まで伸びている。
【0025】
また、変位-力変換装置10は、第1送りネジ15と第1モータ16とナット17とを有している。第1送りネジ15は、支持体12bの内側に配置され、操作部11aの移動方向に沿うよう、一端が支持体12bに取り付けられている。第1モータ16は、第1送りネジ15を回転可能に、支持体12bの外側に取り付けられている。ナット17は、第1送りネジ15に螺合しており、操作部11aが取り付けられている。変位-力変換装置10は、第1モータ16により第1送りネジ15を回転させることにより、ナット17を介して操作部11aを第1送りネジ15に沿って往復移動可能になっている。
【0026】
一方の把持部材21は、細長い板状を成し、一方の端部が作用手段11の一端に取り付けられており、他方の端部の表面に第1把持面21aを有している。一方の把持部材21は、作用手段11から作用する力により、作用手段11が引く方向に付勢されている。なお、一方の把持部材21は、図2の対象物1に対応している。
【0027】
他方の把持部材22は、第2送りネジ22aと細長い把持板22bと第2モータ22cとナット22dを有している。第2送りネジ22aは、操作部11aの移動方向に沿って支持体12bの外側に配置されている。把持板22bは、一方の端部の表面に第2把持面22eを有し、一方の把持部材21の付勢方向側で、第2把持面22eが第1把持面21aに対向するよう配置されている。把持板22bは、一方の端部に、第2送りネジ22aの一端が取り付けられている。第2モータ22cは、第2送りネジ22aを回転可能に、把持板22bの第2送りネジ22aとは反対側の面に取り付けられている。ナット22dは、第2送りネジ22aに螺合しており、支持体12bに取り付けられている。これにより、把持板22bは、一方の端部が第2送りネジ22aおよびナット22dを介して支持体12bに取り付けられている。他方の把持部材22は、第2モータ22cにより第2送りネジ22aを回転させることにより、一方の把持部材21の付勢方向に沿って、支持体12bに対して把持板22bを往復移動可能になっている。
【0028】
変位-力変換装置10は、第1把持面21aと第2把持面22eとの間に被把持物2を把持可能になっている。変位-力変換装置10は、被把持物2を把持する際に、第2送りネジ22aで他方の把持部材22の位置を調節可能、かつ、第1送りネジ15で把持力を調整可能になっている。
【0029】
次に、作用について説明する。
グリッパ装置20は、変位-力変換装置10を利用しているため、非常に小さいエネルギーで操作部11aを移動させるだけで、1対の把持部材21,22の間で、大きな把持力を得ることができる。また、その把持力の大きさを調整することもできる。
【0030】
グリッパ装置20は、第1送りネジ15により把持力の制御を行う変位-力変換装置10と、第2送りネジ22aによる被把持物2に対する高速な位置決め機構とを、直列に配置した構成となっている。グリッパ装置20は、作用手段11から作用する付勢力により一方の把持部材21が移動できるよう、第2送りネジ22aにより把持板22bの位置を調整して、支持体12bと一方の把持部材21,22との間隔(図4中の「b」)をあけた後、第1送りネジ15により把持力を調整して、第1把持面21aと第2把持面22eとの間に被把持物2を把持することができる。
【0031】
なお、グリッパ装置20は、第2送りネジ22aにより、高速な位置決めが可能であるが、バックドライバビリティを有するため、把持力が高まると逆回転をおこす可能性がある。このため、図4に示すように、トルクダイオード23により、逆回転トルクをフレームへ逃がす構成を有していてもよい。また、直動部分にトルクダイオード23と同じ成分を持つ機構を設けてもよい。
【0032】
このように、変位-力変換装置10は、図4に示すグリッパ装置20に利用することができるが、このようなロボット等のグリッパ機構に限らず、ワイヤ等の引張力に応じて剛性等の物理量の切換えが可能な切換機構、ブレーキ機構、内部構造にバネを用いる調圧バルブ機構などにも利用することができる。
【実施例1】
【0033】
図5に示す変位-力変換装置10を用いて、操作部11aを移動させる力および対象物1に作用する力を測定する実験を行った。図5に示すように、変位-力変換装置10は、作用手段11に引張バネから成る線形バネを用い、支持手段12として、非特許文献3に従って、非円形プーリ31と円形プーリ32と錘33とを用いている。非円形プーリ31は、円形プーリ32と接続されており、回転角度を線形バネの変位に変換している。非円形プーリ31は、角度θと半径rとが比例関係になる形状を成し、θが0°~345°の範囲で、rが10~40mmとなるよう設けられている。これにより、支持手段12は、錘33(質量:m)により発生する荷重mgを、非円形プーリ31によって線形バネの逆特性に変換するようになっている。また、錘33は、1.27kgとした。
【0034】
実験では、作用手段11と支持手段12との釣り合い点をb=0mmとし、その釣り合い点である操作部11aを移動させ、そのときの操作部11aの変位(線形バネの自然長を0とする)に対する、操作部11aを移動させる力(操作力)および対象物1に作用する力(発生力)の値を測定した。また、作用手段11の線形バネをあらかじめ10mm伸ばして、釣り合い点である操作部11aを10mmずらした位置(b=10mm)としたとき、および、作用手段11の線形バネをあらかじめ20mm伸ばして、釣り合い点である操作部11aを20mmずらした位置(b=20mm)としたときの、それぞれの操作部11aの変位に対する操作力および発生力の値も測定した。操作力は、リニアガイドで拘束したフォースゲージを用いて測定し、発生力は、線形バネの一端に取り付けたロードセルにより測定した。なお、bは、図4中の「b」に対応している。測定結果を、図6に示す。
【0035】
図6に示すように、発生力に比べて、非常に小さい力で操作部11aを移動可能であることが確認された。また、操作部11aの変位が大きくなるに従って、発生力も大きくなるのに対し、操作力はほとんど変化せず、小さいままであることが確認された。例えば、b=0、10、20mmのとき、それぞれ発生力の0.8%、11%、20%程度の力で、操作部11aを移動させることができ、発生力を制御できることが確認された。このことから、bが小さい方が、操作力を小さくできることがわかる。また、操作部11aを移動させるために必要な力は、ほぼ一定であるため、モータ等による制御が容易であることがわかる。
【符号の説明】
【0036】
1 対象物
2 被把持物

10 変位-力変換装置
11 作用手段
11a 操作部
12 支持手段
12a 逆特性要素
12b 支持体

12c 貫通孔
15 第1送りネジ
16 第1モータ
17 ナット

20 グリッパ装置
21 (一方の)把持部材
21a 第1把持面
22 (他方の)把持部材
22a 第2送りネジ
22b 把持板
22c 第2モータ
22d ナット
22e 第2把持面
23 トルクダイオード

31 非円形プーリ
32 円形プーリ
33 錘
図1
図2
図3
図4
図5
図6