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  • 特許-支脚器、及び分娩台 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】支脚器、及び分娩台
(51)【国際特許分類】
   A61G 13/00 20060101AFI20221004BHJP
   A61G 13/12 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
A61G13/00 Q
A61G13/12 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018117019
(22)【出願日】2018-06-20
(65)【公開番号】P2019217030
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000108672
【氏名又は名称】タカラベルモント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】田中 仁志
(72)【発明者】
【氏名】南谷 雄一郎
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0235457(US,A1)
【文献】登録実用新案第3029537(JP,U)
【文献】特開2010-000174(JP,A)
【文献】特表2002-529115(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 13/00
A61G 13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分娩台に取り付けられ、前記分娩台に着座した患者の脚が載置される脚受け部を有する支脚器であって、
前記脚受け部は、踵受け部と、湾曲部を介して前記踵受け部と連設された脹脛受け部と、を備え、
前記湾曲部は、前記踵受け部及び前記脹脛受け部の上方向にあり、下方向に向かって、前記踵受け部と前記脹脛受け部とが離れる方向に形成されている、
ことを特徴とする支脚器。
【請求項2】
前記脚受け部の側部に、前記患者の脚が前記脚受け部から滑り落ちることを防止する滑り落ち防止部材が設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の支脚器。
【請求項3】
前記滑り落ち防止部材が、前記脹脛受け部の側部から前記踵受け部の側部にかけて連なって形成されている、
ことを特徴とする請求項2に記載の支脚器。
【請求項4】
前記脹脛受け部と前記踵受け部が成す角度が鋭角である、
ことを特徴とする請求項3に記載の支脚器。
【請求項5】
前記脚受け部と接続された回動部材を有し、
前記回動部材によって前記脚受け部を回動させることで、前記患者に対する前記踵受け部又は前記脹脛受け部の位置が変更され、前記患者の踵受け状態又は股受け状態に対応する、
ことを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載の支脚器。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れか1項に記載の支脚器を備える、
ことを特徴とする分娩台
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者(産婦)の股受け状態と踵受け状態を迅速に変更できる支脚器、及びその支脚器を備える分娩台に関するものである。
【背景技術】
【0002】
陣痛(Labоr)、分娩(Delivery)、回復(Recоvery)の期間に、一連の行為を同一の部屋で行える出産法が採用されている(以下、この出産法をLDRと記す。)。このLDRでは、産婦(患者)が病室から分娩室まで移動せず、ベッドから分娩台に乗り換えることなく、出産を行えるため、産婦はリラックスして分娩できる。
【0003】
従来から、産婦にできるだけ負担がかからない状態で出産ができる分娩台が開発されている(例えば、特許文献1)。
LDRには、専用の分娩台が用いられ、この分娩台には、フラットのベッド状態と、産婦の踵や脹脛を受けて分娩に臨む分娩状態とに適宜変化させることができるものが使用されている。この分娩台の分娩形態は、踵受け用支脚器、股受け用支脚器、怒責グリップ、胎児受けなどの器具を取り付けたり、取り外したりすることによって実現される。これらの器具の取り付けや取り外しは、分娩台に産婦を載せた状態で行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-325706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
LDRを想定した分娩台は、一連の出産行為の間、産婦が分娩台に乗り移ることなく対応できることが望ましく、複数の出産スタイルに対応できる分娩台が望まれている。例えば、仰臥位と側臥位などの分娩スタイルの違いだけではなく、産婦の希望に応じて、通常分娩(踵受け状態による分娩)や無痛分娩(股受け状態による分娩)によるスタイルの違いに対応できることが望ましい。
また、出産直後には、産婦に対して処置を行うため、通常の分娩台を使用した場合、分娩時に取り付けられていた踵受け用支脚器を、処置時には股受け用支脚器に取り替える必要が生じる。この取り替えは素早く行う必要があるが、踵受け用支脚器は、分娩台に強固に固定されているため、複数人で取り替えを行うこともあり、助産師やスタッフにとって負担が大きい。また、分娩台に取り付けられる又は取り外される器具の点数が多いと、助産師等への負担が大きくなることに加え、それらの器具の置き場所を確保しなければならない。さらに、それらの器具の衛生状態を常に気にかけなければいけないという負担が増える。
【0006】
そこで、本発明は、患者(産婦)の股受け状態と踵受け状態を迅速に変更できる支脚器、及びこの支脚器を備える分娩台を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る支脚器は、分娩台に取り付けられ、分娩台に着座した患者の脚が載置される脚受け部を有するものであって、脚受け部は、踵受け部と、湾曲部を介して踵受け部と連設された脹脛受け部とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る支脚器は、脚受け部と接続された回動部材を有し、回動部材によって脚受け部を回動させることで、患者に対する踵受け部又は脹脛受け部の位置が変更され、患者の踵受け状態又は股受け状態に対応することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る支脚器は、脚受け部が平面視で逆V字状に形成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る支脚器は、脚受け部の側部に、患者の脚が脚受け部から滑り落ちることを防止する滑り落ち防止部材が設けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る支脚器は、滑り落ち防止部材が、脹脛受け部の側部から踵受け部の側部にかけて連なって形成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る支脚器は、脹脛受け部と踵受け部が成す角度が鋭角であることを特徴とする。
【0013】
本発明の分娩台は、上記の何れかの支脚器を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る支脚器は、踵受け部と、湾曲部を介して踵受け部に連設された脹脛受け部とを備えるため、踵受け状態用支脚器と股受け用支脚器の両機能を有する。
そのため、本発明に係る支脚器を分娩台に適用することで、分娩台に着座した患者の踵受け状態又は股受け状態に対応することができる。さらに、踵受け状態用支脚器と股受け用支脚器を別々に準備する必要がなくなり、取り付けられる又は取り外される器具の点数を減らすことができ、助産師やスタッフへの負担を軽減することができる。
【0015】
本発明に係る支脚器は、脚受け部と接続された回動部材を有し、回動部材によって脚受け部を回動させることで、患者に対する踵受け部又は脹脛受け部の位置や角度を容易に変更することができる。そのため、分娩台に着座した患者の踵受け状態又は股受け状態に迅速に対応することができる。
【0016】
本発明に係る支脚器は、脚受け部の側部に滑り落ち防止部材が設けられているため、患者の脚が脚受け部から滑り落ちることを防止することができる。
【0017】
本実施形態に係る分娩台は、患者の横臥状態、分娩時の踵受け状態及び分娩後の股受け状態に迅速に対応できるため、患者はリラックスして分娩することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る分娩台(踵受け状態)の斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る支脚器の斜視図である。(a)収納状態、(b)踵受け状態、(c)股受け状態
図3】本発明の実施形態に係る分娩台(股受け状態)の斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係る分娩台に患者が踵受け状態で着座している様子を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る分娩台に患者が股受け状態で着座している様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本実施形態に係る支脚器及びこの支脚器を備える分娩台を、図1から図3を参照し説明する。本実施形態に係る分娩台は、ベッド状態及び分娩状態の両状態で患者(産婦)が使用することができる。本実施形態では、分娩状態で使用される分娩台を説明する。
なお、以下の説明では、図1を基準として、着座した患者の正面側と背面側の方向を前後方向X、患者の左右側の方向を左右方向Y、分娩台の高さ方向を上下方向Zと記す。
【0020】
本実施形態に係る分娩台1は、図1に示したように、キャスター2Aを有する基台2と、基台2よりも上側に配置され、両側に手摺り3を有する背凭れ4と、背凭れ4と連結して設けられた腰受け5と、腰受け5よりも下側に設けられた補助台6と、腰受け5に接続され、左右方向Yの両側に設けられた支脚器7と、腰受け5の左右方向Yの両側に設けられた怒責グリップ8を備えている。
補助台6は、分娩台1上の患者が横臥状態のときは、腰受け5と同じ高さまで移動させ、下半身載置部として機能し、一方、患者が分娩状態のときは、腰受け5よりも低い位置に移動させ、新生児受台として使用することができる。なお、基台2には、ダンプ式昇降装置が搭載されている。
【0021】
支脚器7は、図2に示すように、脚受け部10と、第一アーム11を介して脚受け部10と接続された、円柱状の第一回動部材12と、第一回動部材12の一端に接続された、L字状の第二回動部材13と、第二回動部材13と接続され、ロックレバー14Aを有するロック部14と、第二アーム15を介してロック部14と連結され、腰受け5と接続される接続部材16を備えている。
【0022】
脚受け部10は、踵受け部20と、湾曲部21を介して踵受け部20と連結された脹脛受け部22とを備えている。この踵受け部20と湾曲部21と脹脛受け部22は、一体的に形成されている。
この脚受け部10には、例えば、プラスチック製やゴム製の素材を使用することができる。
【0023】
脚受け部10は、分娩台1に近い側に踵受け部20、分娩台1から遠い側に脹脛受け部22となるように設計されている(図1)。脹脛受け部22は、踵受け部20に対して、所定の角度を設けて連設されている。脹脛受け部22には、患者の脹脛が載置され、患者が分娩しやすい体勢をとるため、この所定の角度は、鋭角であることが好ましい。
脹脛受け部22は、所定の角度を設けて踵受け部20と連設されているため、脚受け部10は、平面視で逆V字状となっている。分娩台1を使用する患者の脚は、脚受け部10の外側部に載置される。
【0024】
[踵受け部20]
踵受け部20は、患者が足裏を載置する足裏受け部23と、患者の踵を支持する踵支持部24とを備えている。足裏受け部23は、平坦状に形成され、足裏受け部23の両側部には、滑り落ち防止部材25Aが形成され、この滑り落ち防止部材25Aと踵支持部24は、一体的に形成されている。この踵支持部24は、滑り落ち防止部材としての役割も担う。滑り落ち防止部材25Aは、湾曲部21から踵支持部24に向けて、高さ方向の長さが大きくなるように設計されている。なお、足裏受け部23は、クッション性の高い構成とすることが好ましい。
【0025】
[湾曲部21]
湾曲部21は、踵受け部20と脹脛受け部22との間に設けられている。そのため、この湾曲部21の曲げ角度によって、踵受け部20と脹脛受け部22との角度が決定される。患者が股受け状態となった場合、この湾曲部21には、患者の脚の膝裏が載置される。
また、湾曲部21の両側部には、滑り落ち防止部材25Bがそれぞれ形成されている。
【0026】
[脹脛受け部22]
脹脛受け部22は、患者の脹脛を支持する脹脛支持部26を備えている。
脹脛支持部26の長さは、踵支持部24の長さよりも短く設計されると共に、脹脛支持部26の外側部は、凹むように湾曲した形状に設計されている。また、脹脛支持部26の両側部には、滑り落ち防止部材25Cと連なった滑り落ち防止部材25Bが形成されている。
【0027】
[回動部材]
第一回動部材12は、脚受け部10を回動方向Vに回動させるために使用される。この第一回動部材12は、脚受け部10を分娩台1に近づけたり、遠ざけたりする際に使用される。この回動方向Vは、脚受け部10が背凭れ4(腰受け5)に向けて、近づく、あるいは遠ざかる方向である。
一方、第二回動部材13は、脚受け部10を回動方向Wに回動させるために使用される。第二回動部材13の動作は、ロックレバー14Aによって、制御される。
【0028】
次に、本実施形態に係る支脚器7の動作について、説明する。
【0029】
支脚器7は、主として、収納状態、患者の踵受け状態、及び患者の股受け状態で使用される。
収納状態において、脚受け部10は、他の器具の動作の妨げとならないように配置される。脚受け部10は、図2(a)に示すように、足裏受け部23が上側を向くように、第一回動部材12で回動されると共に、外側に配置されるように第二回動部材13で回動される。このように配置させることで、分娩台1は、支脚器7を取り外さずに、ベッド状態で使用することができる。
【0030】
次に、踵受け状態において、脚受け部10は、図2(b)及び図1に示すように、足裏受け部23が背凭れ4側に向くように、かつ、脹脛支持部26が左右方向Yに向くように、第一回動部材12及び第二回動部材13で回動され、位置及び角度が変更される。
さらに、脹脛受け状態において、脚受け部10は、図2(c)及び図3に示すように、踵受け状態から、脹脛支持部26が上下方向Zの上側に向くように、第一回動部材12で回動され、位置及び角度が変更される。
【0031】
次に、本実施形態に係る支脚器7及びこの支脚器7を備える分娩台1の作用効果について説明する。
【0032】
本実施形態に係る支脚器7は、踵受け部20と脹脛受け部22を備え、逆V字状に形成されている点に大きな特徴を有し、患者の体勢に合わせて、患者に対する脚受け部10の位置及び角度を任意に変更できる。
【0033】
患者は、分娩時には、踵受け状態の体勢をとり、分娩後は、処置を施すため、股受け状態の体勢をとることがある。
患者が踵受け状態の体勢をとる場合、図4に示すように、第一回動部材12及び第二回動部材13によって、踵受け部20を患者の踵位置に調整できる。そして、分娩後、患者が股受け状態の体勢をとる場合、図5に示すように、脚受け部10の脹脛受け部22を患者の脹脛位置に容易に調整でき、湾曲部21で患者の膝裏を支持できる。
したがって、本実施形態に係る支脚器7を使用することで、患者の踵受け状態と股受け状態に迅速に対応することができる。
【0034】
本実施形態に係る支脚器7は、踵受け状態用支脚器と股受け用支脚器の両機能を備えるため、踵受け状態用支脚器と股受け用支脚器を別々に準備する必要がなくなり、取り付けられる又は取り外される器具の点数を減らすことができる。そのため、助産師やスタッフへの負担を軽減することができる。
さらに、分娩台1に取り付ける器具や取り外す器具の点数を減らすことで、器具を保管するスペースを確保する必要がない。そして、それらの器具の衛生面に関し、過度な注意を払う必要がなくなる。
【0035】
本実施形態に係る支脚器7の脚受け部10の両側部には、滑り落ち防止部材25Aから25Cが設けられているため、患者の脚が脚受け部10から滑り落ちることを防止することができる。
【0036】
本実施形態に係る分娩台1は、患者の横臥状態、分娩時の踵受け状態及び分娩後の股受け状態に迅速に対応できる。そのため、この分娩台1は、LDRに適しており、ベッドから分娩台に乗り換えることなく、患者はリラックスして分娩することができる。
【0037】
以上、本実施形態について説明したが、これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
例えば、本実施形態の支脚器7は、脚受け部10の外側部に患者の脚を載置させる構成としたが、脚受け部10の内側部に患者の脚を載置させる構成とすることもできる。この場合、脚受け部10は、分娩台1に近い側に脹脛受け部22、分娩台1に遠い側に踵受け部20となるように設計される。また、脚受け部10の形状は、平面視で逆U字状とすることもできる。
また、滑り落ち防止部材25Aから25Cは、連設されていなくてもよく、例えば、踵受け部の側部にのみ滑り落ち防止部材が形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 分娩台
2 基台
2A キャスター
3 手摺り
4 背凭れ
5 腰受け
6 補助台
7 支脚器
8 怒責グリップ
10 脚受け部
11 第一アーム
12 第一回動部材
13 第二回動部材
14 ロック部
14A ロックレバー
15 第二アーム
16 接続部材
20 踵受け部
21 湾曲部
22 脹脛受け部
23 足裏受け部
24 踵支持部
25A,25B,25C 滑り落ち防止部材
26 脹脛支持部
V 回動方向
W 回動方向
X 前後方向
Y 左右方向
Z 上下方向
図1
図2
図3
図4
図5