(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】高熱伝導性無機フィラー複合粒子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C01F 7/02 20220101AFI20221004BHJP
C08K 9/02 20060101ALI20221004BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
C01F7/02
C08K9/02
C08L101/00
(21)【出願番号】P 2018155452
(22)【出願日】2018-08-22
【審査請求日】2021-08-20
(73)【特許権者】
【識別番号】591051335
【氏名又は名称】河合石灰工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109597
【氏名又は名称】西尾 章
(72)【発明者】
【氏名】太田 康博
(72)【発明者】
【氏名】八木 颯汰
(72)【発明者】
【氏名】木方 宏和
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-178543(JP,A)
【文献】特開2011-051867(JP,A)
【文献】特開2016-135719(JP,A)
【文献】特開2005-047774(JP,A)
【文献】特開2014-159494(JP,A)
【文献】特表2012-519073(JP,A)
【文献】米国特許第05161694(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F 7/00
C08K 9/02
C08L 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラファイトの表面にアルミナ水和物ゲルが被覆又は結合し、当該アルミナ水和物ゲルの表面に塩基性炭酸マグネシウムが被覆又は結合してなる絶縁性を有することを特徴とする高熱伝導性無機フィラー複合粒子。
【請求項2】
グラファイトの表面にアルミナ
(但し、α-アルミナは除く)が被覆又は結合し、当該アルミナの表面に水和水が除去された塩基性炭酸マグネシウムが被覆又は結合してなる絶縁性を有することを特徴とする高熱伝導性無機フィラー複合粒子。
【請求項3】
測定対象をエポキシ樹脂に配合して作製した樹脂試料の熱伝導計を使用して測定した熱伝導率が
1.26W/m・K~1.36W/m・Kであり、また、測定対象を加圧して作製した成型物のテスターを使用して測定した抵抗値に前記成型物の断面積を乗じ長さで除して導出した体積抵抗率(ρV)が
2584Ω・cm~12158Ω・cmであることを特徴とする請求項1に記載の高熱伝導性無機フィラー複合粒子。
【請求項4】
グラファイトの含有率が45重量%~90重量%であり、アルミナ水和物ゲルの含有率が0.3重量%~10重量%であり、塩基性炭酸マグネシウムの含有率が5重量%~54.7重量%であること特徴とする請求項1に記載の高熱伝導性無機フィラー複合粒子。
【請求項5】
アルミン酸塩の水溶液にグラファイトを添加して懸濁液を調製し、当該懸濁液に炭酸ガスを吹き込みアルミナ水和物ゲルが表面に被覆又は結合したグラファイトを得る工程と、前記アルミナ水和物ゲルが表面に被覆又は結合したグラファイトに水溶性無機マグネシウム塩の水溶液又は水溶性有機マグネシウム塩の水溶液を加えて得られる懸濁液に水溶性金属炭酸塩の水溶液を撹拌しながら加えて懸濁液を得る工程と、前記懸濁液を加熱・撹拌して熟成する工程と、熟成後に得られた生成物を固液分離、水洗、乾燥する工程と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の高熱伝導性無機フィラー複合粒子の製造方法。
【請求項6】
アルミニウムアルコキシドを含むアルコール溶媒にグラファイトを添加して得られる懸濁液に水を添加しアルミナ水和物ゲルが表面に被覆又は結合したグラファイトを得る工程と、前記アルミナ水和物ゲルが表面に被覆又は結合したグラファイトに水溶性無機マグネシウム塩の水溶液又は水溶性有機マグネシウム塩の水溶液を加えて得られる懸濁液に水溶性金属炭酸塩の水溶液を撹拌しながら加えて懸濁液を得る工程と、前記懸濁液を加熱・撹拌して熟成する工程と、熟成後に得られた生成物を固液分離、水洗、乾燥する工程と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の高熱伝導性無機フィラー複合粒子の製造方法。
【請求項7】
アルミン酸塩の水溶液にグラファイトを添加して懸濁液を調製し、当該懸濁液に炭酸ガスを吹き込みアルミナ水和物ゲルが表面に被覆又は結合したグラファイトを得る工程と、前記アルミナ水和物ゲルが表面に被覆又は結合したグラファイトに水溶性無機マグネシウム塩の水溶液又は水溶性有機マグネシウム塩の水溶液を加えて得られる懸濁液に水溶性金属炭酸塩の水溶液を撹拌しながら加えて懸濁液を得る工程と、前記懸濁液を加熱・撹拌して熟成する工程と、熟成後に得られた生成物を固液分離、水洗、乾燥する工程と、前記工程で得られた生成物を
250℃~400℃で0.5~24時間に亘り加熱処理することによりアルミナ水和物ゲルの表面に被覆又は結合した塩基性炭酸マグネシウムの水和水を除去する工程と、を含むことを特徴とする請求項2に記載の高熱伝導性無機フィラー複合粒子の製造方法。
【請求項8】
アルミニウムアルコキシドを含むアルコール溶媒にグラファイトを添加して得られる懸濁液に水を添加しアルミナ水和物ゲルが表面に被覆又は結合したグラファイトを得る工程と、前記アルミナ水和物ゲルが表面に被覆又は結合したグラファイトに水溶性無機マグネシウム塩の水溶液又は水溶性有機マグネシウム塩の水溶液を加えて得られる懸濁液に水溶性金属炭酸塩の水溶液を撹拌しながら加えて懸濁液を得る工程と、前記懸濁液を加熱・撹拌して熟成する工程と、熟成後に得られた生成物を固液分離、水洗、乾燥する工程と、前記工程で得られた生成物を
250℃~400℃で0.5~24時間に亘り加熱処理することによりアルミナ水和物ゲルの表面に被覆又は結合した塩基性炭酸マグネシウムの水和水を除去する工程と、を含むことを特徴とする請求項2に記載の高熱伝導性無機フィラー複合粒子の製造方法。
【請求項9】
熟成する工程の熟成温度が50℃~100℃であることを特徴とする請求項5~請求項8のいずれか1項に記載の高熱伝導性無機フィラー複合粒子の製造方法。
【請求項10】
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の高熱伝導性無機フィラー複合粒子が充填されてなることを特徴とする樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラファイトの表面にアルミナ水和物ゲル又はアルミナが被覆又は結合し、当該アルミナ水和物ゲル又はアルミナの表面に塩基性炭酸マグネシウムが被覆又は結合する熱伝導性と絶縁性に優れる高熱伝導性無機フィラー複合粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスやIC等の電気・電子機器の小型化や軽量化に伴い、電子部品の高密度実装化が進んでおり、電子部品からの発熱が増大する傾向にある。発生した熱が電子部品に蓄積されると耐久性に悪影響が及ぶため、発生した熱を電子部品から効率よく放出できる高熱伝導性フィラーのニーズが高まっている。
従来、高熱伝導性フィラーには、アルミナ、マグネシア、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、金属粉、グラファイト等が一般的に知られている。各種の高熱伝導性フィラーの特性については、
図1に示すように一長一短がある。アルミナ、マグネシア、炭化ケイ素はいずれも硬度が高いため、電子部品との複合が難しいという問題がある。窒化アルミニウムや窒化ホウ素は高価という問題があり、加えて窒化アルミニウムは化学的に不安定という問題がある。金属粉は導電性で絶縁性が低く、電子部品の放熱材料に適用することが難しいという問題と化学的に不安定という問題がある。グラファイトは、特に安価で、また熱伝導率に優れるものの、導電性で絶縁性が低いためグラファイト単独では絶縁性が求められる電子部品の放熱材料に適用することが難しいという問題がある。
他方、熱伝導性フィラーの黒鉛(グラファイト)の表面にベーマイト又は酸化亜鉛を結合又は付着させ、黒鉛に絶縁性を付与した無機フィラー複合体の提案がある(特許文献1)。また、本願の出願人は、グラファイトの表面に塩基性炭酸マグネシウムが被覆又は結合し、絶縁性を有する高熱伝導性無機フィラー複合粒子を提案している(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】WO2013/039103号公報
【文献】特許第6222840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の無機フィラー複合体は、黒鉛と複合するベーマイト又は酸化亜鉛の形状によっては被充填物への練り込み量が十分ではなく、高熱伝導性の無機フィラーとして機能し難い可能性がある。また、黒鉛にベーマイト又は酸化亜鉛を複合させるには、高温高圧の熱水の存在下で合成する必要があるため、製造コストが高くなるという問題がある。特許文献2に記載の高熱伝導性無機フィラー複合粒子は、熱伝導性に優れ絶縁性を有するが、電子部品に使用される高熱伝導性フィラーは絶縁性が高ければ高いほど良く、より高い絶縁性が望まれている。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたもので、熱伝導性と絶縁性に優れる高熱伝導性無機フィラー複合粒子及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明者等は種々検討を重ね本発明に想到した。すなわち、第1の高熱伝導性無機フィラー複合粒子は、グラファイトの表面にアルミナ水和物ゲルが被覆又は結合し、当該アルミナ水和物ゲルの表面に塩基性炭酸マグネシウムが被覆又は結合して絶縁性を有することを特徴とする。また、第2の高熱伝導性無機フィラー複合粒子は、グラファイトの表面にアルミナ(但し、α-アルミナは除く)が被覆又は結合し、当該アルミナの表面に水和水が除去された塩基性炭酸マグネシウムが被覆又は結合して絶縁性を有することを特徴とする。
【0007】
第3の高熱伝導性無機フィラー複合粒子は、第1の高熱伝導性無機フィラー複合粒子において、測定対象をエポキシ樹脂に配合して作製した樹脂試料の熱伝導計を使用して測定した熱伝導率が1.26W/m・K~1.36W/m・Kであり、また、測定対象を加圧して作製した成型物のテスターを使用して測定した抵抗値に前記成型物の断面積を乗じ長さで除して導出した体積抵抗率(ρV)が2584Ω・cm~12158Ω・cmであることを特徴とする。第4の高熱伝導性無機フィラー複合粒子は、第1の高熱伝導性無機フィラー複合粒子において、グラファイトの含有率が45重量%~90重量%であり、アルミナ水和物ゲル又はアルミナの含有率が0.3重量%~10重量%であり、塩基性炭酸マグネシウムの含有率が5重量%~54.7重量%であることを特徴とする。
【0008】
高熱伝導性無機フィラー複合粒子の製造方法は、アルミン酸塩の水溶液にグラファイトを添加して懸濁液を調製し、当該懸濁液に炭酸ガスを吹き込みアルミナ水和物ゲルが表面に被覆又は結合したグラファイトを得る工程と、前記アルミナ水和物ゲルが表面に被覆又は結合したグラファイトに水溶性無機マグネシウム塩の水溶液又は水溶性有機マグネシウム塩の水溶液を加えて得られる懸濁液に水溶性金属炭酸塩の水溶液を撹拌しながら加えて懸濁液を得る工程と、前記懸濁液を加熱・撹拌して熟成する工程と、熟成後に得られた生成物を固液分離、水洗、乾燥する工程と、を含むものであることを特徴とする。
また、高熱伝導性無機フィラー複合粒子の製造方法は、上記の高熱伝導性無機フィラー複合粒子の製造方法における「アルミン酸塩の水溶液にグラファイトを添加して懸濁液を調製し、当該懸濁液に炭酸ガスを吹き込みアルミナ水和物ゲルが表面に被覆又は結合したグラファイトを得る工程」に代え、「アルミニウムアルコキシドを含むアルコール溶媒にグラファイトを添加して得られる懸濁液に水を添加しアルミナ水和物ゲルが表面に被覆又は結合したグラファイトを得る工程」を含むものであることを特徴とする。
【0009】
高熱伝導性無機フィラー複合粒子の製造方法は、アルミン酸塩の水溶液にグラファイトを添加して懸濁液を調製し、当該懸濁液に炭酸ガスを吹き込みアルミナ水和物ゲルが表面に被覆又は結合したグラファイトを得る工程と、前記アルミナ水和物ゲルが表面に被覆又は結合したグラファイトに水溶性無機マグネシウム塩の水溶液又は水溶性有機マグネシウム塩の水溶液を加えて得られる懸濁液に水溶性金属炭酸塩の水溶液を撹拌しながら加えて懸濁液を得る工程と、前記懸濁液を加熱・撹拌して熟成する工程と、熟成後に得られた生成物を固液分離、水洗、乾燥する工程と、前記工程で得られた生成物を250℃~400℃で0.5~24時間に亘り加熱処理することによりアルミナ水和物ゲルの表面に被覆又は結合した塩基性炭酸マグネシウムの水和水を除去する工程と、を含むものであることを特徴とする。
また、高熱伝導性無機フィラー複合粒子の製造方法は、上記の高熱伝導性無機フィラー複合粒子の製造方法における「アルミン酸塩の水溶液にグラファイトを添加して懸濁液を調製し、当該懸濁液に炭酸ガスを吹き込みアルミナ水和物ゲルが表面に被覆又は結合したグラファイトを得る工程」に代え、「アルミニウムアルコキシドを含むアルコール溶媒にグラファイトを添加して得られる懸濁液に水を添加しアルミナ水和物ゲルが表面に被覆又は結合したグラファイトを得る工程」を含むものであることを特徴とする。
【0010】
また、樹脂組成物は、上記の高熱伝導性無機フィラー複合粒子を充填させてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
従来の絶縁性と熱伝導性を兼ね備えた材料は高価であり、硬い材料も多く加工が困難であるため、熱対策と低コスト化が求められる放熱材料に適用することが難しかった。
一方、本発明の高熱伝導性無機フィラー複合粒子は、グラファイト、アルミナ水和物ゲル及び塩基性炭酸マグネシウムがいずれも安価で柔らかい複合体を形成するので、熱対策と低コスト化が求められる放熱部材に好適であり、極めて有用である。また、本発明の高熱伝導性無機フィラー複合粒子は、比重の小さい材料のみから構成されるため、軽量化が必要な用途に好適であり、極めて有用である。具体的には、放熱シートの他、放熱両面テープ、放熱グリース、放熱接着剤、放熱樹脂基板、放熱フレキシブル銅張積層版、パワーデバイス用封止材、白色LED用封止材、LED用ダイボンド材、放熱アンダーフィル材・注型材、ヒートシンク、ヒートパイプ、放熱塗料、放熱エンプラ、放熱エラストマー等の放熱部材・放熱素材の無機充填剤として使用することができ、また、LED照明、LEDテレビ、ノートPC、自動車、太陽光発電装置、携帯電話・スマートフォン等の熱対策が必要な用途に展開できる。加えて、本発明の高熱伝導性無機フィラー複合粒子は、汎用の高熱伝導性フィラーのアルミナの熱伝導率を大きく上回っているということからも、上記の熱対策が必要な用途において極めて有用である。また、本発明の高熱伝導性無機フィラー複合粒子の製造方法によれば、上記の有用な高熱伝導性無機フィラー複合粒子を簡易かつ効率的に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】高熱伝導性フィラーの特性を評価した表である。評価の記号は、表中の高熱伝導性フィラーの特性を相対的に評価した結果を示す。
【
図2】実施例1に係るグラファイトの表面にアルミナ水和物ゲルが被覆又は結合した状態を示すSEM像である。
【
図3】実施例1で得られた高熱伝導性無機フィラー複合粒子のSEM像である。
【
図4】
図3のSEM像を高倍率にしたSEM像である。
【
図5】高熱伝導性無機フィラー複合粒子を模式的に示す図である。
【
図6】実施例7で得られた高熱伝導性無機フィラー複合粒子のSEM像である。
【
図7】実施例13で得られた高熱伝導性無機フィラー複合粒子のSEM像である。
【
図10】実施例9で得られた高熱伝導性無機フィラー複合粒子の熱重量・示差熱 (TG-DTA)のグラフである。
【
図11】実施例の高熱伝導性無機フィラー複合粒子及び比較例の試料の成型物に係る体積抵抗率(ρ
V)の測定方法を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の高熱伝導性無機フィラー複合粒子は、グラファイトの表面にアルミナ水和物ゲルが被覆又は結合し、当該アルミナ水和物ゲルの表面に塩基性炭酸マグネシウムが被覆又は結合したものである。以下、本発明の高熱伝導性無機フィラー複合粒子を単に「複合粒子」ということがある。
【0014】
上記の複合粒子は、以下の各工程を含む製造方法により製造できる。
(a)アルミン酸塩の水溶液にグラファイトを添加して懸濁液を調製し、当該懸濁液に炭酸ガスを吹き込みアルミナ水和物ゲルが表面に被覆又は結合したグラファイトを得る工程と、前記アルミナ水和物ゲルが表面に被覆又は結合したグラファイトに水溶性無機マグネシウム塩の水溶液又は水溶性有機マグネシウム塩の水溶液を加えて得られる懸濁液に水溶性金属炭酸塩の水溶液を撹拌しながら加えて懸濁液を得る工程と、前記懸濁液を加熱・撹拌して熟成する工程と、熟成後に得られた生成物を固液分離、水洗、乾燥する工程と、を含むことにより製造できる。
上記のアルミナ水和物ゲルが表面に被覆又は結合したグラファイトは、当該グラファイトが懸濁液に含まれる状態、あるいは当該グラファイトを含む懸濁液を固液分離、水洗、乾燥させ単離した状態のいずれでもよい。このことは以下のすべての製造方法において同様である。また、固液分離は、固体分と液体分を分離できればどのような手段でもよく、濾過、加圧、遠心分離等を挙げられる。このことは以下のすべての製造方法において同様である。
(b)アルミニウムアルコキシドを含むアルコール溶媒にグラファイトを添加して得られる懸濁液に水を添加しアルミナ水和物ゲルが表面に被覆又は結合したグラファイトを得る工程と、前記アルミナ水和物ゲルが表面に被覆又は結合したグラファイトに水溶性無機マグネシウム塩の水溶液又は水溶性有機マグネシウム塩の水溶液を加えて得られる懸濁液に水溶性金属炭酸塩の水溶液を撹拌しながら加えて懸濁液を得る工程と、前記懸濁液を加熱・撹拌して熟成する工程と、熟成後に得られた生成物を固液分離、水洗、乾燥する工程と、を含むことにより製造できる。
【0015】
また、本発明の高熱伝導性無機フィラー複合粒子は、グラファイトの表面にアルミナが被覆又は結合し、当該アルミナの表面に水和水が除去された塩基性炭酸マグネシウムが被覆又は結合したものである。
【0016】
上記の複合粒子は、以下の工程を含む製造方法により製造できる。
(c)アルミン酸塩の水溶液にグラファイトを添加して懸濁液を調製し、当該懸濁液に炭酸ガスを吹き込みアルミナ水和物ゲルが表面に被覆又は結合したグラファイトを得る工程と、前記アルミナ水和物ゲルが表面に被覆又は結合したグラファイトに水溶性無機マグネシウム塩の水溶液又は水溶性有機マグネシウム塩の水溶液を加えて得られる懸濁液に水溶性金属炭酸塩の水溶液を撹拌しながら加えて懸濁液を得る工程と、前記懸濁液を加熱・撹拌して熟成する工程と、熟成後に得られた生成物を固液分離、水洗、乾燥する工程と、前記工程で得られた生成物を加熱処理することによりアルミナ水和物ゲルの表面に被覆又は結合した塩基性炭酸マグネシウムの水和水を除去する工程と、を含むことにより製造できる。
(d)アルミニウムアルコキシドを含むアルコール溶媒にグラファイトを添加して得られる懸濁液に水を添加しアルミナ水和物ゲルが表面に被覆又は結合したグラファイトを得る工程と、前記アルミナ水和物ゲルが表面に被覆又は結合したグラファイトに水溶性無機マグネシウム塩の水溶液又は水溶性有機マグネシウム塩の水溶液を加えて得られる懸濁液に水溶性金属炭酸塩の水溶液を撹拌しながら加えて懸濁液を得る工程と、前記懸濁液を加熱・撹拌して熟成する工程と、熟成後に得られた生成物を固液分離、水洗、乾燥する工程と、前記工程で得られた生成物を加熱処理することによりアルミナ水和物ゲルの表面に被覆又は結合した塩基性炭酸マグネシウムの水和水を除去する工程と、を含むことにより製造できる。
【0017】
アルミナ水和物ゲル又はアルミナに被覆又は結合する塩基性炭酸マグネシウムは、正炭酸マグネシウムの化学式がMgCO
3で表されるのに対し、mMgCO
3・Mg(OH)
2・nH
2Oで表される水和物で、その組成比は製法によって異なり、通常、mは3~5、nは3~8である。塩基性炭酸マグネシウムを加熱した際の熱分解挙動は、既報の技術文献等、例えば、(北海道大学工学部研究報告、69:213-220、窯業協会誌、84[6], 259-264, 1976)によれば、3段階の分解減量が起こる。150~240℃付近の減量は結晶水の脱水に伴う減量、350~420℃付近の減量は水和物(水酸基)の脱水及び炭酸塩の一部の脱炭酸に伴う減量、450~550℃付近の減量は残りの炭酸塩の脱炭酸に伴う減量と報告されている。本発明の高熱伝導性無機フィラー複合粒子を加熱した際の熱分解挙動は、
図10に示すように、上記の報告と同じように塩基性炭酸マグネシウムの減量が起こるものと推測され、本発明の高熱伝導性無機フィラー複合粒子を加熱処理することにより水和水が除去され、無水の塩基性炭酸マグネシウムがアルミナの表面に被覆又は結合した複合粒子を得ることができる。加熱処理の温度は250℃~400℃が好ましい。250℃より低いと、水和水を除去できない可能性があり、400℃より高いと炭酸塩の一部の脱炭酸に伴う減量が起こる可能性があるからである。250~400℃の温度で加熱処理することで水和水が脱水し除去され、おそらくmMgCO
3・Mg(OH)
2若しくはmMgCO
3・xMg(OH)
2・(1-x)MgOで示される化合物、すなわち無水の塩基性炭酸マグネシウムがアルミナの表面に被覆又は結合した複合粒子が得られていると考えられる。また、加熱時間は、塩基性炭酸マグネシウムの水和水が除去されればよく、0.5~24時間が好ましい。0.5時間より短いと塩基性炭酸マグネシウムの水和水を十分に除去できないからである。また、24時間を超えての加熱は時間の無駄で不経済である。なお、上記の加熱処理によりアルミナ水和物ゲルは、脱水してアルミナになる。無水の塩基性炭酸マグネシウムがアルミナの表面に被覆又は結合した本発明の高熱伝導性無機フィラー複合粒子は、高い絶縁性と高い熱伝導性を有するばかりか、樹脂の成形温度である250℃付近で重量減少(脱水反応)を起こさないので、成形中に発泡現象が起こらず、特に熱可塑性樹脂の成形において有用である。
【0018】
上記の製造方法におけるグラファイトの表面に被覆又は結合するアルミナ水和物ゲルの製造原料のアルミン酸塩は、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム等を挙げることができるがこれらに限定されない。なお、アルミナ水和物ゲルは、Al2O3・nH2O(n:1~4)で示すことができる化合物のゲルである。
【0019】
上記の製造方法におけるグラファイトの表面に被覆又は結合するアルミナ水和物ゲルの製造原料のアルミニウムアルコキシドは、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムn-ブトキシド、アルミニウムsec-ブトキシド、アルミニウムtert-ブトキシド等を挙げることができるがこれらに限定されない。
【0020】
上記の製造方法における塩基性炭酸マグネシウムの製造原料であるマグネシウム源として、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、ホウ酸マグネシウム等の水溶性無機マグネシウム塩及び酢酸マグネシウム、ギ酸マグネシウム等の水溶性有機マグネシウム塩を挙げることができるが、水溶性無機マグネシウム塩が好ましく、この中でも塩化マグネシウム又は硫酸マグネシウムがより好ましい。なお、マグネシウム源となる化合物は、無水物又は水和物のいずれでもよい。
【0021】
上記の製造方法における塩基性炭酸マグネシウムの製造原料である炭酸源として、水溶性金属炭酸塩が挙げられ、この中でも炭酸ナトリウム、炭酸カリウムが好ましい。なお、炭酸源となる化合物は、無水物又は水和物のいずれでもよい。
【0022】
上記の製造方法におけるグラファイト(以下、「黒鉛」ということもある。)は、公知のものを用いることができ、天然物、人造物のいずれも使用できる。また、形状も限定されることはなく、粒状、角状、平板状、鱗片状等いずれの形状のものも使用できるが、グラファイトは垂直方向に比べ平面方向に優れた熱伝導率を示すことから、鱗片状のグラファイトが特に好ましい。グラファイトの粒径は、粒状や角状の場合は0.1~500μm、平板状や鱗片状の場合は平面方向の平均径が1~4000μmが好ましく、また、平面方向と厚みを意味するアスペクト比は上記のグラファイトの熱伝導率の特性から2~2000であるものが好ましい。
【0023】
上記の製造方法における熟成する工程で加熱する際の熟成温度は、50℃~100℃が好ましく、60℃~90℃がより好ましい。熟成温度が50℃より低いと塩基性炭酸マグネシウムの生成速度が遅いためアルミナ水和物ゲルとの複合に長時間を要するため好ましくない。熟成温度が100℃を超えると水が蒸発するので、水の蒸発が起こらないように圧力に対応した器具や設備を使用する必要が生じ、生産上設備面でコストが高くなる。熟成温度への昇温速度は極端に早すぎなければ特に限定されない。また、熟成時間は0時間より長く、1時間~24時間が好ましい。24時間を超えての熟成は時間の無駄で不経済である。熟成する工程における懸濁液の撹拌は十分に行うことが好ましい。撹拌が十分でないと塩基性炭酸マグネシウムとアルミナ水和物ゲルが複合しないか複合が十分ではなく、複合粒子に絶縁性を付与できないことがある。
【0024】
本発明の高熱伝導性無機フィラー複合粒子は、グラファイトの含有率が45重量%~90重量%であることが好ましい。グラファイトの含有率が45重量%を下回ると熱伝導性が低下するからであり、90重量%を上回ると十分な絶縁性を付与できないからである。
本発明の高熱伝導性無機フィラー複合粒子は、アルミナ水和物ゲル又はアルミナの含有率が0.3重量%~10重量%であることが好ましい。アルミナ水和物ゲル又はアルミナの含有率が0.3重量%を下回ると、アルミナ水和物ゲル又はアルミナの被覆量が少なくなり、塩基性炭酸マグネシウムの被覆が均一にできないからであり、また、10重量%を上回ると、吸湿性が高くなるため耐熱性の低下や絶縁性の低下が起こるからである。また、本発明の高熱伝導性無機フィラー複合粒子は、塩基性炭酸マグネシウムの含有率が5重量%~54.7重量%であることが好ましい。塩基性炭酸マグネシウムの含有率が5重量%を下回ると、十分な絶縁性が発現しないからであり、また、54.7重量%を上回ると、絶縁性に優れても熱伝導率に優れる高熱伝導性無機フィラー複合粒子が得られないからである。
【0025】
本発明の高熱伝導性無機フィラー複合粒子は、グラファイトの表面にアルミナ水和物ゲル又はアルミナが被覆又は結合し、当該アルミナ水和物ゲル又はアルミナの表面に塩基性炭酸マグネシウムが被覆又は結合しているので、熱伝導性と絶縁性に優れている。測定対象をエポキシ樹脂に配合して作製した樹脂試料の熱伝導計を使用して測定した熱伝導率は0.80W/m・K~2.00W/m・Kであることが好ましい。0.80W/m・Kを下回ると、高い熱伝導性が期待できないからであり、また、熱伝導率が2.00W/m・Kを上回らないのは、グラファイトにアルミナ水和物ゲル又はアルミナ及び塩基性炭酸マグネシウムが被覆又は結合するので、グラファイトの熱伝導率が制約されるからである。
また、下記の式(1)を用いて高熱伝導性無機フィラー複合粒子自体の熱伝導率を導出することができる。式(1)を用いて高熱伝導性無機フィラー複合粒子自体の熱伝導率の導出する方法は、特許文献2に記載の方法と同様である。
λf=(λc-λm・Vm)/Vf*C (1)
(但し、λf:高熱伝導性無機フィラー複合粒子の熱伝導率、λc:樹脂100部に対して高熱伝導性無機フィラー複合粒子を25部配合した樹脂試料の熱伝導率、λm:樹脂の熱伝導率、Vf:高熱伝導性無機フィラー複合粒子の体積分率、Vm:樹脂の体積分率、C:補正係数(10))
この方法で導出される高熱伝導性無機フィラー複合粒子の熱伝導率は、50W/m・K~150W/m・Kであることが好ましい。熱伝導率が50W/m・Kを下回ると高い熱伝導性が期待できないからであり、また、150W/m・Kを上回らないのは、グラファイトにアルミナ水和物ゲル又はアルミナ及び塩基性炭酸マグネシウムが被覆又は結合するので、グラファイトの熱伝導率が制約されるからである。
【0026】
高熱伝導性無機フィラー複合粒子の測定対象を加圧して作製した成型物のテスターを使用して測定した抵抗値(R)に当該成型物の断面積を乗じ長さで除して導出した体積抵抗率(ρV)は1000Ω・cm~100000Ω・cmであることが好ましい。体積抵抗率(ρV)が1000Ω・cmを下回ると、高い絶縁性が要求される電子部品への使用に好ましくないからであり、また、体積抵抗率(ρV)が100000Ω・cmを上回れば熱伝導率の低下が懸念されるからである。
【0027】
高熱伝導性無機フィラー複合粒子の熱伝導率と体積抵抗率(ρV)は、グラファイトの含有率とトレードオフの関係にある。そこで、下記の式(2)からなるパラメーターを設定することにより高熱伝導性無機フィラー複合粒子の評価を行うことが可能である。
GV/T値=グラファイト含有率/100×体積抵抗率(logρV)/熱伝導率
2.00≦GV/T値≦4.00 (2)
(但し、熱伝導率は高熱伝導性無機フィラー複合粒子を配合した樹脂試料の熱伝導率) このように設定したパラメーターのGV/T値が2.00を下回れば熱伝導率に優れかつ絶縁性にも優れる高熱伝導性無機フィラー複合粒子を得ることができないからであり、また、GV/T値が4.00を上回れば絶縁性に優れても熱伝導率に優れる高熱伝導性無機フィラー複合粒子が得られないからである。
【0028】
本発明の高熱伝導性無機フィラー複合粒子に係る構成材料のグラファイト、アルミナ水和物ゲル及び塩基性炭酸マグネシウムの各比重は、3を超えることがなく、比重が3を超え4に近い汎用の高熱伝導性フィラーであるアルミナと比べても軽量で、被充填物の放熱材料の軽量化に寄与できる。また、本発明の高熱伝導性無機フィラー複合粒子のグラファイトに被覆又は結合するアルミナ水和物ゲルの層は、
図2及び
図5に示すようにメッシュ状の構造をなしている。このため、被覆層の厚みが厚くなり、導電性のグラファイト粒子との間に距離を保たせることができる。このことも本発明の高熱伝導性無機フィラー複合粒子の絶縁性の向上に寄与するものと推測される。
【0029】
本発明の高熱伝導性無機フィラー複合粒子は、充填ができる限り被充填物には限定がないが、好適には樹脂組成物、特に絶縁性と放熱性が求められる基板、半導体パッケージ等に充填することができる。樹脂組成物に用いられる樹脂は特に限定されないが、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル、フッ素樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ナイロン等のポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリベンゾイミダゾール、アラミド樹脂、ポリフェニレンスルフィド、全芳香族ポリエステル、液晶ポリマー、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、マレイミド変性樹脂、ABS樹脂、アクリロニトリル-アクリルゴム・スチレン樹脂、アクリロニトリル・エチレン・プロピレン・ジエンゴム-スチレン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等の汎用樹脂等を例示できる。
【実施例】
【0030】
次いで、本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0031】
〔実施例1〕
実施例1の複合粒子は、以下の手順で作製した。
(1)アルミン酸ナトリウム(関東化学(株)社製)0.37gをイオン交換水150mLに溶解させたアルミン酸ナトリウム水溶液を得た。
(2)この水溶液にグラファイト20g(中心粒子径65μm、アスペクト比30、以下のグラファイトも同様)を添加して懸濁液を得た。
(3)この懸濁液を撹拌しながら、1L/minの速度で pHが7になるまで二酸化炭素ガスを吹き込んで、表面にアルミナ水和物ゲルが被覆又は結合したグラファイトを含む懸濁液を得た。
(4)この懸濁液に塩化マグネシウム(無水物)(米山薬品工業(株)社製)13.2gをイオン交換水100mLに溶解させた塩化マグネシウム水溶液を送液ポンプを用いて17mL/minの速度で滴下して加え懸濁液を得た。
(5)この懸濁液を撹拌しながら、炭酸ナトリウム(トクヤマ(株)社製)6.67gをイオン交換水55mLに溶解させた炭酸ナトリウム水溶液を送液ポンプを用いて17mL/minの速度で滴下して加え懸濁液を得た。
(6)この懸濁液を撹拌下、60 ℃で1時間熟成した。
(7)熟成により得られた生成物を濾過、水洗、乾燥することによって、グラファイトの表面にアルミナ水和物ゲルが被覆又は結合し、当該アルミナ水和物ゲルの表面に塩基性炭酸マグネシウムが被覆又は結合した高熱伝導性無機フィラー複合粒子を得た。
【0032】
〔実施例2〕
実施例2の複合粒子は、塩化マグネシウム(無水物)13.2gを塩化マグネシウム(六水和物)(関東化学(株)社製)28gに変更した以外は実施例1と同じ手順で作製した。
【0033】
〔実施例3〕
実施例3の複合粒子は、熟成温度を80℃に変更した以外は実施例2と同じ手順で作製した。
【0034】
〔実施例4〕
実施例4の複合粒子は、塩化マグネシウム水溶液及び炭酸ナトリウム水溶液を加える方法を送液ポンプによる滴下ではなく、送液ポンプを用いず一気に加えた以外は実施例2と同じ手順で作製した。
【0035】
〔実施例5〕
実施例5の複合粒子は、実施例2のイオン交換水の量はそのままで、グラファイト、アルミン酸ナトリウム、塩化マグネシウム(六水和物)及び炭酸ナトリウムの量をそれぞれ2倍にし、また、塩化マグネシウム水溶液及び炭酸ナトリウム水溶液を加える方法を送液ポンプによる滴下ではなく、送液ポンプを用いず一気に加えた以外は実施例2と同じ手順で作製した。
【0036】
〔実施例6〕
実施例6の複合粒子は、熟成時間を5時間に変更し、また、塩化マグネシウム水溶液及び炭酸ナトリウム水溶液を加える方法を送液ポンプによる滴下ではなく、送液ポンプを用いず一気に加えた以外は実施例2と同じ手順で作製した。
【0037】
〔実施例7〕
実施例7の複合粒子は、塩化マグネシウム(六水和物)28gを硫酸マグネシウム(無水物)(関東化学(株)社製)16.6gに変更し、また、硫酸マグネシウム水溶液及び炭酸ナトリウム水溶液を加える方法を送液ポンプによる滴下ではなく、送液ポンプを用いず一気に加えた以外は実施例2と同じ手順で作製した。
【0038】
〔実施例8〕
実施例8の複合粒子は、塩化マグネシウム(六水和物)28gを塩化マグネシウム(六水和物)42gに、炭酸ナトリウム6.67gを炭酸ナトリウム10gにそれぞれ変更し、また、塩化マグネシウム水溶液及び炭酸ナトリウム水溶液を加える方法を送液ポンプによる滴下ではなく、送液ポンプを用いず一気に加えた以外は実施例2と同じ手順で作製した。
【0039】
〔実施例9〕
実施例9の複合粒子は、グラファイトを20 gから10 g、アルミン酸ナトリウムを0.37 gから0.18g、塩化マグネシウム(六水和物)を28gから56g、炭酸ナトリウムを6.67gから13.3gに変更し、また、塩化マグネシウム水溶液及び炭酸ナトリウム水溶液を加える方法を送液ポンプによる滴下ではなく、送液ポンプを用いず一気に加えた以外は実施例2と同じ手順で作製した。
【0040】
〔実施例10〕
実施例10の複合粒子は、以下の手順で作製した。
(1)アルミン酸ナトリウム0.37gをイオン交換水150mLに溶解させたアルミン酸ナトリウム水溶液を得た。
(2) この水溶液にグラファイト20gを添加して懸濁液を得た。
(3)この懸濁液を撹拌しながら、1L/minの速度で pHが7になるまで二酸化炭素ガスを吹き込んで、アルミナ水和物ゲルが表面に被覆又は結合したグラファイトを含む懸濁液を得た。
(4)この懸濁液を濾過、水洗、乾燥することによってアルミナ水和物ゲルが表面に被覆又は結合したグラファイトを得た。
(5) 塩化マグネシウム(無水物)7.2gをイオン交換水100 mLに溶解させた塩化マグネシウム水溶液に、アルミナ水和物ゲルが表面に被覆又は結合したグラファイト11g を加えて懸濁液を得た。
(6)この懸濁液を撹拌しながら、炭酸ナトリウム3.7gをイオン交換水55mLに溶解させた炭酸ナトリウム水溶液を送液ポンプを用いて17mL/minの速度で滴下して加えた。
(7)この懸濁液を撹拌下、60 ℃で1時間熟成した。
(8)熟成により得られた生成物を濾過、水洗、乾燥することによって、グラファイトの表面にアルミナ水和物ゲルが被覆又は結合し、当該アルミナ水和物ゲルの表面に塩基性炭酸マグネシウムが被覆又は結合した高熱伝導性無機フィラー複合粒子を得た。
【0041】
〔実施例11〕
実施例11の複合粒子は、アルミン酸ナトリウム0.37gをアルミン酸ナトリウム1.85gに変更した以外は実施例10と同じ手順で作製した。
【0042】
〔実施例12〕
実施例12の複合粒子は、アルミナ水和物ゲルが被覆又は結合したグラファイトの数量を20gに変更し、塩化マグネシウム (無水物) 7.2 gを塩化マグネシウム(六水和物)28gに変更し、また、炭酸ナトリウム3.7gを炭酸カリウム(関東化学(株)社製)8.7に変更した以外は、実施例10と同じ手順で作製した。
【0043】
〔実施例13〕
実施例13の複合粒子は、以下の手順で作製した。
(1)工業用アルコール (今津薬品工業(株)社製、クリンエース・ハイ) 2100gにアルミニウムイソプロポキシド (関東化学(株)社製)12.24gを添加し、撹拌することにより溶解させた。
(2)この溶液にグラファイト360gを添加して懸濁液を得た。
(3)この懸濁液を撹拌しながら、イオン交換水6.48gを滴下することで、アルミナ水和物ゲルが表面に被覆又は結合したグラファイトを含む懸濁液を得た。
(4)この懸濁液を濾過、水洗、乾燥することによってアルミナ水和物ゲルが表面に被覆又は結合したグラファイトを得た。
(5)塩化マグネシウム(六水和物)28gをイオン交換水100mLに溶解させた塩化マグネシウム水溶液に、前記のアルミナ水和物ゲルが表面に被覆又は結合したグラファイト20g を加えて懸濁液を得た。
(6)この懸濁液を撹拌しながら、炭酸ナトリウム6.67gをイオン交換水55mLに溶解させた炭酸ナトリウム水溶液を加えて懸濁液を得た。
(7)この懸濁液を撹拌下、60 ℃で1時間熟成した。
(8)熟成により得られた生成物を濾過、水洗、乾燥することによって、グラファイトの表面にアルミナ水和物ゲルが被覆又は結合し、当該アルミナ水和物ゲルの表面に塩基性炭酸マグネシウムが被覆又は結合した高熱伝導性無機フィラー複合粒子を得た。
【0044】
〔実施例14〕
実施例14の複合粒子は、実施例5で得られた複合粒子を電気炉((株)共栄電気炉製作所社製、HRK-354035)を用いて300℃で8時間加熱処理し、グラファイトの表面にアルミナが被覆又は結合し、当該アルミナの表面に水和水が除去された塩基性炭酸マグネシウムが被覆又は結合した高熱伝導性無機フィラー複合粒子を得た。
【0045】
〔比較例1〕
比較例1の試料は、以下の手順で作製した。なお、比較例1の試料は、特許文献2の発明に係るグラファイトの表面に塩基性炭酸マグネシウムが被覆又は結合する高熱伝導性無機フィラー複合粒子である。
(1)塩化マグネシウム(無水物)13.2gをイオン交換水100mLに溶解させ、塩化マグネシウム水溶液を調製した。
(2)炭酸ナトリウム6.67gをイオン交換水55mLに溶解させ、炭酸ナトリウム水溶液を調製した。
(3)この炭酸ナトリウム水溶液を送液ポンプを用いて(1)の塩化マグネシウム水溶液に17mL/minの速度で滴下して加え、塩基性炭酸マグネシウムゲルを生成させた
(4)このゲル溶液にグラファイトを20g添加して、グラファイトとの懸濁液を調製した。
(5)この懸濁液を撹拌下、60℃で1時間熟成した。
(6)熟成により得られた生成物を濾過、水洗、乾燥することによりグラファイトの表面に塩基性炭酸マグネシウムが被覆又は結合した試料を得た。
【0046】
〔比較例2〕
比較例2の試料は、グラファイトと塩基性炭酸マグネシウムを重量比で4:1の割合で乾式混合して得られた塩基性炭酸マグネシウムとグラファイトの混合粒子である。
なお、ここで用いた塩基性炭酸マグネシウムは、比較例1のようにグラファイトを添加することなく、塩化マグネシウム水溶液と炭酸ナトリウム水溶液を反応させ合成したものである。
【0047】
〔比較例3〕
比較例3の試料は、熟成温度を40℃に変更した以外は実施例2と同じ手順で作製した。
【0048】
〔比較例4〕
比較例4の試料は、炭酸ナトリウム6.67gを炭酸水素ナトリウム(米山薬品工業(株)社製)10.6gに変更し、炭酸水素ナトリウムをイオン交換水110mlに溶解し、また、塩化マグネシウム水溶液及び炭酸水素ナトリウム水溶液を加える方法を送液ポンプによる滴下ではなく、送液ポンプを用いず一気に加えた以外は実施例2と同じ手順で作製した。
【0049】
〔比較例5〕
比較例5の試料は、塩化マグネシウム水溶液と炭酸ナトリウム水溶液を加える順番を逆にし、炭酸ナトリウム水溶液を加えてから塩化マグネシウム水溶液を加えた以外は実施例4と同じ手順で作製した。
【0050】
〔比較例6〕
比較例6の試料は、原料のグラファイトである。
【0051】
実施例の複合粒子又は比較例の試料について、それぞれ諸物性を調べた。すなわち、複合粒子又は試料のグラファイトの含有率、アルミナ水和物ゲルの含有率、塩基性炭酸マグネシウムの含有率、SEM像、体積抵抗率(ρV)、複合粒子又は試料をエポキシ樹脂に配合した樹脂試料の熱伝導率を測定した。諸物性の分析方法は下記の通りである。
【0052】
〔グラファイトの含有率、アルミナ水和物ゲルの含有率及び塩基性炭酸マグネシウムの含有率〕
熱分析装置(ブルカー・エイエックスエス(株)社製 TG-DTA2000SA)を用いて、600℃における重量減少率に基づき下記の式(3)により、〔グラファイトの含有率〕、〔アルミナ水和物ゲルの含有率〕及び〔塩基性炭酸マグネシウムの含有率〕を導出した。
Z = (X×W+Y×W-34.6×Y )/( 58.5-W)
T = X+Y+Z
G = X / T×100
M = Y / T×100
N = Z / T×100 (3)
X:グラファイトの使用量〔g〕
Y:複合粒子及び試料中のアルミナ水和物ゲルの重量〔g〕
Z:複合粒子及び試料中の塩基性炭酸マグネシウムの重量〔g〕
W:複合粒子及び試料の600℃における重量減少率〔wt%〕
T:複合粒子及び試料の重量〔g〕
G:複合粒子及び試料中のグラファイトの含有率〔wt%〕
M:複合粒子及び試料中のアルミナ水和物ゲルの含有率〔wt%〕
N:複合粒子及び試料中の塩基性炭酸マグネシウムの含有率〔wt%〕
78:アルミナ水和物ゲルの示性式をAl(OH)3と仮定したときの分子量
102:アルミナの分子量
34.6:熱処理により、アルミナ水和物ゲルがアルミナへ転移したときの重量減少率の 理論値であり、「1- (アルミナの分子量/2/アルミナ水和物ゲルの示性式を
Al(OH)3と仮定したときの分子量)」によって導出された値
58.5:塩基性炭酸マグネシウムの示性式を4MgCO3・Mg(OH)2・5H2Oと仮定したと
きに、熱処理によって塩基性炭酸マグネシウムが酸化マグネシウムへ転移した
ときの重量減少率の理論値
【0053】
上記のYの「複合粒子及び試料中のアルミナ水和物ゲルの重量〔g〕」又はY’の「複合粒子中の300℃で加熱された時のアルミナ水和物ゲルの重量〔g〕」を以下の式で求めた。
(a)グラファイトにアルミナ水和物ゲルを被覆又は結合させるためにアルミン酸ナトリウムを使用した場合
Y = A×(B /100)×78/102/2
A:アルミン酸ナトリウムの使用量〔g〕
B:アルミン酸ナトリウムのAl2O3の含有率〔wt%〕(規格値に基づいて、本発明で 使用したアルミン酸ナトリウムのAl2O3含有率を36.5wt%と仮定した)
(b)グラファイトにアルミナ水和物ゲルを被覆又は結合させるためにアルミニウムイソプロポキシドを使用した場合
Y =C×78/204.25
C:アルミニウムイソプロポキシドの使用量〔 g 〕
78:アルミナ水和物ゲルの示性式をAl(OH)3と仮定したときの分子量
204.25:アルミニウムイソプロポキシドの分子量
(c)実施例14の加熱処理の場合
Y’= Y× 102/2/78
Z’= Z×(W’/ (W-Y×34.6 /100))
T’= X + Y’+ Z’
G = X / T’×100
M = Y’/ T’×100
N = Z’/ T’×100 (4)
X:グラファイトの使用量〔g〕
Y:加熱処理前の複合粒子のアルミナ水和物ゲルの重量〔g〕
Y’:複合粒子中の300℃で加熱された時のアルミナ水和物ゲルの重量〔g〕
Z:複合粒子中の塩基性炭酸マグネシウムの重量[g]
Z’:複合粒子中の300℃で加熱された時の塩基性炭酸マグネシウムの重量〔g〕
T’:加熱処理後の複合粒子の重量〔g〕
W :複合粒子の600℃における重量減少率〔wt%〕
W’:300℃で加熱処理後の複合粒子の600℃における重量減少率〔wt%〕
78:アルミナ水和物ゲルの示性式をAl(OH)3と仮定したときの分子量
102:アルミナの分子量
34.6:熱処理により、アルミナ水和物ゲルがアルミナへ転移したときの重量減少率の
理論値であり、「1- (アルミナの分子量/2/アルミナ水和物ゲルの示性式を
Al(OH)3と仮定したときの分子量)」によって導出された値
【0054】
X、実測したW及び上記で得られたYを上記の式(3)に代入し、Zの「複合粒子及び試料中の塩基性炭酸マグネシウムの重量〔g〕」を求めた。そして、X、Y及びZから上記の式(3)に基づき、Tの「複合粒子及び試料の重量〔g〕」を求め、さらにGの「複合粒子及び試料中のグラファイトの含有率〔wt%〕」、Mの「複合粒子及び試料中のアルミナ水和物ゲルの含有率〔wt%〕」及びNの「複合粒子及び試料中の塩基性炭酸マグネシウムの含有率〔wt%〕」を導出した。実施例14の加熱処理の場合は、上記の式(4)に基づき、YからY’を求めた。そして、実測したW’、W、Y及びZから式(4)に基づき、 Z’の「複合粒子中の300℃で加熱された時の塩基性炭酸マグネシウムの重量〔g〕」を求めた。さらに、X、Y’及び Z’からT’の「加熱処理後の複合粒子の重量〔g〕」を求め、Gの「複合粒子中のグラファイトの含有率〔wt%〕」、Mの「複合粒子中のアルミナ水和物ゲルの含有率〔wt%〕」及びNの「複合粒子中の塩基性炭酸マグネシウムの含有率〔wt%〕」を導出した。結果は表1に示した。なお、表1の含有率は、計算において小数点第2位を四捨五入したため、含有率が100wt%を超えることがある。また、表1には、複合粒子及び試料の製造条件も示した。
【0055】
〔SEM像の観察〕
複合粒子又は試料をカーボンテープの上に張り付け、走査型電子顕微鏡を用いて複合粒子又は試料の形態を観察した。
複合粒子又は試料において、注意深く観察してもグラファイトの表面が殆ど観察されない場合を○、注意深く観察しなくても容易にグラファイトの表面の一部が観察される場合を△、注意深く観察してもグラファイトの表面しか殆ど観察されない場合を×として、被覆状態を評価した。結果は表2に示した。
なお、実施例1、7、13の複合粒子、比較例1、3の試料の各SEM像及びアルミナ水和物ゲルが被覆又は結合した状態のグラファイトのSEM像をそれぞれ
図2~
図4、
図6~
図9に示した。
図4から、複合粒子には塩基性炭酸マグネシウムの粒子が板状に覆われることが分かる。
【0056】
〔体積抵抗率〕
ハンドプレス機を用いて、複合粒子又は試料の1.0gを一軸加圧し、直径1.1cm×長さ0.75cmの円柱の成型物を得た。この成型物をアルミニウム金属の板に挟み込み、1.5kgの荷重をかけながら、テスター((株)カスタム社製、CDM-03)を用いて抵抗値(R)を測定し、下記の式を用いて体積抵抗率(ρ
V)を導出した(
図11参照)。
体積抵抗率(ρ
V)〔Ω・cm〕=抵抗値(R)〔Ω〕×断面積(S)〔cm
2〕/長さ(L)
〔cm〕
=抵抗値(R)〔Ω〕×π(0.55)
2〔cm
2〕/0.75〔cm〕
結果は表2に示した。
【0057】
〔熱伝導率〕
エポキシ樹脂(三井化学(株)社製、エポミックR140P)40gに複合粒子又は試料を10g配合し十分に混合させた後、2-エチル-4-メチルイミダゾール(和光純薬(株)社製)を0.8g加えて十分に混合し、120℃で2時間加熱硬化して熱伝導率測定用試験試料を作製した。得られた熱伝導率測定用試験試料を4cm×4cm×2cmの試験片として切り出し、25 ℃の恒温槽で2時間以上保持した。その後、迅速熱伝導計(京都電子工業(株)社製、QTM-500)を使用して複合粒子又は試料が配合された樹脂試料の熱伝導率を測定した。結果は表2に示した。
【0058】
下記の式(1)を用いて複合粒子自体の熱伝導率及び試料自体の熱伝導率を導出した。
λf=(λc-λm・Vm)/Vf*C (1)
(但し、λf:複合粒子又は試料の熱伝導率、λc:樹脂100部に対して複合粒子又は試料を25部配合した樹脂試料の熱伝導率、λm:樹脂の熱伝導率、Vf:複合粒子又は試料の体積分率、Vm:樹脂の体積分率、C:補正係数(10))
λfを導出するための各パラメーターは下記の通りである。
λc:上記の段落〔0057〕で得られた熱伝導率、λm:0.24W/m・K(測定値)、Vf:A÷(A+B)(A;樹脂試料中の複合粒子又は試料の重量をその比重(密度)で除した値、B;樹脂試料中のエポキシ樹脂の重量をその比重(密度)で除した値(複合粒子の比重及び比較例3~5の試料の比重;2.2(黒鉛の比重は2.2(既知)、塩基性炭酸マグネシウムの比重は2.2(既知)、アルミナ水和物ゲルの比重は2.5(既知)で互いに大きな差がなく、また、アルミナ水和物ゲルの含有率は0.3wt~10wt%で僅かであることから比重を2.2と設定した。比較例1、2の試料の比重;2.2 (黒鉛の比重は2.2(既知)、塩基性炭酸マグネシウムの比重は2.2(既知))、比較例6の試料の比重;2.2(黒鉛の比重は2.2(既知))、エポキシ樹脂の比重;1.16(既知))、Vm:B÷(A+B)
結果は表2に示した。表2中の「熱伝導率(測定値)」欄は、上記で測定した複合粒子又は試料が配合された樹脂試料の熱伝導率であり、「熱伝導率(導出値)」欄は、式(1)を用いて導出した複合粒子自体の熱伝導率又は試料自体の熱伝導率である。また、汎用の高熱伝導性フィラーであるアルミナについて、エポキシ樹脂にアルミナが配合された樹脂試料を作製し、式(1)の各パラメーターを測定・算出し、アルミナ自体の熱伝導率を式(1)により導出した。
【0059】
【0060】
【0061】
表1及び表2から分かるように、実施例1は特許文献2の発明に係る高熱伝導性無機フィラー複合粒子である比較例1とグラファイト含有率がほぼ同じであるにも拘わらず、体積抵抗率値(ρV)は約25倍の値を有している。これは、グラファイト表面にメッシュ構造を有したアルミナ水和物ゲルの仲介層を設けたことによって、アルミナ水和物ゲル及び塩基性炭酸マグネシウムが被覆又は結合した層の厚みが増え、導電性のグラファイト粒子間の距離が保たれるようになったため、絶縁性が保たれるようになったと推測される。
また、実施例の中で熱伝導率が最も低い実施例9は、特許文献2の高熱伝導性無機フィラー複合粒子である比較例1と比べ71%(測定値)又は65%(導出値)の熱伝導率を有している一方、実施例9の体積抵抗率(ρV)は比較例1の約215倍と比較例1を遙かに凌駕する絶縁性を有している。また、式(1)で導出したアルミナの熱伝導率は、30W/m・Kで既知のアルミナの熱伝導率とほぼ一致する数値であった。実施例9の熱伝導率の導出値(58W/m・K)は、アルミナの熱伝導率の約1.9倍であり、汎用される既存の高熱伝導性フィラーに比べ十分に高い熱伝導率を有する。実施例2、5、7、12は、比較例1より高い熱伝導率を有する上、比較例1より極めて高い絶縁性を有している。また、GV/T値が2.00以上であれば、高い熱伝導性と高い絶縁性を兼備した複合粒子を得られることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の高熱伝導性無機フィラー複合粒子は、安価で絶縁性と熱伝導性に優れ、基板、半導体パッケージ等の電子部品の分野において特に有用である。