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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】落石防護柵
(51)【国際特許分類】
   E01F 7/04 20060101AFI20221004BHJP
【FI】
E01F7/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018189211
(22)【出願日】2018-10-04
(65)【公開番号】P2020056272
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】594116334
【氏名又は名称】筑豊金網工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】特許業務法人 インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】菅 文彦
(72)【発明者】
【氏名】西島 武良
(72)【発明者】
【氏名】田中 淳一
(72)【発明者】
【氏名】島田 諭史
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-180422(JP,A)
【文献】特開2007-077672(JP,A)
【文献】特開2011-047154(JP,A)
【文献】特開2000-178925(JP,A)
【文献】特開2002-054109(JP,A)
【文献】特開2017-008656(JP,A)
【文献】特開平07-301032(JP,A)
【文献】特開2013-234495(JP,A)
【文献】実開昭55-036241(JP,U)
【文献】特開昭58-044110(JP,A)
【文献】特開2003-306942(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
落石が起こる可能性のある斜面に構築された一対の端末支柱と、前記端末支柱間に構築された複数本の中間支柱と、前記端末支柱と前記中間支柱の山側に沿って上下方向に間隔をあけて張り渡された複数本のワイヤーと、前記ワイヤーの山側全面に張られた金網と、前記ワイヤーの上下間隔を保持する、前記ワイヤーと直交する方向に配された間隔保持材とを備えた落石防護柵において、
前記間隔保持材は、丸棒鋼の外周面に突起が、前記丸棒鋼の長手方向に間隔をあけて多数個、形成された異形棒鋼からなり、
前記異形棒鋼の山側に張り渡された前記ワイヤーは、前記異形棒鋼の両側に前記ワイヤーを跨いで配したUボルトに座金を嵌め込み、ナットによって前記Uボルトを締め付けることにより、前記異形棒鋼に押し付けられて固定されることを特徴とする落石防護柵。
【請求項2】
前記座金には、前記異形棒鋼が入り込む異形棒鋼用凹部が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の落石防護柵。
【請求項3】
前記座金には、前記ワイヤーが入り込むワイヤー用凹部が形成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の落石防護柵。
【請求項4】
前記金網と前記ワイヤーとは、コイルにより連結されていることを特徴とする、請求項1から3の何れか1つに記載の落石防護柵。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、落石防護柵、特に、落石による衝撃エネルギーを効率よく吸収することができる落石防護柵に関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路等への落石を防止するための落石防護柵の一例が特許文献1に開示されている。以下、この落石防護柵を従来防護柵といい、図面を参照しながら説明する。
【0003】
図6は、従来防護柵を示す部分省略斜視図、図7は、従来防護柵を示す部分拡大図、図8は、図7のA方向視図である。
【0004】
図6から図8において、1は、落石が起こる可能性のある斜面に構築された一対の端末支柱、2は、端末支柱1間に構築された複数本の中間支柱、3は、端末支柱1と中間支柱2の山側(図6参照)に沿って上下方向に間隔をあけて張り渡された複数本のワイヤー、4は、ワイヤー3の山側全面に張られた金網、5は、ワイヤー3の上下間隔を保持する間隔保持材である。
【0005】
ワイヤー3は、岩受けワイヤー3aと、岩受けワイヤー3aの両端に連結された、岩受けワイヤー3aより小さな縦弾性係数を有する緩衝ワイヤー3bとからなり、緩衝ワイヤー3bは、端末支柱1に固定されている。
【0006】
間隔保持材5は、図7図8に示すように、板状の鋼材からなり、間隔保持材5の山側面にUボルト6により固定されている。
【0007】
このように構成されている従来防護網によれば、落石を受けた岩受けワイヤー3aおよび金網4の衝撃エネルギーは、岩受けワイヤー3aの両端部に連結された緩衝ワイヤー3bを介して端末支柱1に伝達されるが、緩衝ワイヤー3bおよび金網4の伸びにより衝撃エネルギーが吸収される結果、端末支柱1に加わる張力は、大きく軽減される。さらに、間隔保持材5の作用により直接、落石を受けなかった岩受けワイヤー3aにも衝撃エネルギーが伝達される結果、衝撃エネルギーの吸収効果が更に高まる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2011-47154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した従来防護柵によれば、落石による衝撃エネルギーを適正に吸収することはできるが、以下のような課題があった。
【0010】
ワイヤー3は、間隔保持材5にUボルト6により固定されているので、間隔保持材5部分のワイヤーの上下方向の間隔は保持される一方、ワイヤー3は、真っ直ぐな状態でUボルト6により間隔保持材5に押さえ付けられているのみで間隔保持材5に固定されているので、ワイヤー3は、その長手方向に滑りやすい。この結果、落石の衝撃エネルギーによりワイヤー3が過大に伸びて、落石が金網4を破って道路に落下するおそれがあった。
【0011】
従って、この発明の目的は、間隔保持材へのワイヤーの固定強度を適正に高めることによって、落石の衝撃エネルギーによるワイヤーの伸びを制限するとともに、間隔保持材へのワイヤーの固定箇所を落石の衝撃エネルギーによって適正に上下移動可能とすることによって、落石による衝撃エネルギーを効率よく吸収することができる落石防護柵を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、下記を特徴とするものである。
【0013】
請求項1に記載の発明は、落石が起こる可能性のある斜面に構築された一対の端末支柱と、前記端末支柱間に構築された複数本の中間支柱と、前記端末支柱と前記中間支柱の山側に沿って上下方向に間隔をあけて張り渡された複数本のワイヤーと、前記ワイヤーの山側全面に張られた金網と、前記ワイヤーの上下間隔を保持する、前記ワイヤーと直交する方向に配された間隔保持材とを備えた落石防護柵において、前記間隔保持材は、丸棒鋼の外周面に突起が、前記丸棒鋼の長手方向に間隔をあけて多数個、形成された異形棒鋼からなり、前記異形棒鋼の山側に張り渡された前記ワイヤーは、前記異形棒鋼の両側に前記ワイヤーを跨いで配したUボルトに座金を嵌め込み、ナットによって前記Uボルトを締め付けることにより、前記異形棒鋼に押し付けられて固定されることに特徴を有するものである。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記座金には、前記異形棒鋼が入り込む異形棒鋼用凹部が形成されていることに特徴を有するものである。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記座金には、前記ワイヤーが入り込むワイヤー用凹部が形成されていることに特徴を有するものである。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3の何れか1つに記載の発明において、前記金網と前記ワイヤーとは、コイルにより連結されていることに特徴を有するものである。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、間隔保持材へのワイヤーの固定強度を高めることによって、落石の衝撃エネルギーによるワイヤーの伸びが適正に制限されるので、落石による衝撃エネルギーを効率よく吸収することができる。
【0018】
また、この発明によれば、間隔保持材へのワイヤーの固定箇所が落石の衝撃エネルギーによって適正に上下移動可能となるので、この点においても落石による衝撃エネルギーを効率よく吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】この発明の落石防護柵を示す部分正面図である。
図2図1のA-A線断面図である。
図3図1のP部拡大図である。
図4図3のA方向視図である。
図5図3のB方向視図である。
図6】従来防護柵を示す部分省略斜視図である。
図7】従来防護柵を示す部分拡大図である。
図8図7のA方向視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明の落石防護柵の一実施態様を、図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1は、この発明の落石防護柵を示す部分正面図、図2は、図1のA-A線断面図、図3は、図1のP部拡大図、図4は、図3のA方向視図、図5は、図3のB方向視図である。
【0022】
図1から図5に示すように、この発明の落石防護柵は、落石が起こる可能性のある斜面に構築された一対の端末支柱1(図6参照)と、端末支柱1間に構築された複数本の中間支柱2と、端末支柱1と中間支柱2の山側(図6参照)に沿って上下方向に間隔をあけて張り渡された複数本のワイヤー7と、ワイヤー7の山側全面に張られた金網4と、ワイヤー7の上下間隔を保持する、ワイヤー7と直交する方向に配された間隔保持材としての異形棒鋼8とから構成されている。異形棒鋼8の上端は、U字状に折れ曲がっていて最上部のワイヤー7に掛けられている。
【0023】
この発明の特徴は、間隔保持材が異形棒鋼8からなっている点にある。なお、異形棒鋼とは、丸棒鋼の外周面に突起8a(図3図4参照)が丸棒鋼の長手方向に間隔をあけて多数個、形成されているものである。
【0024】
間隔保持材としての異形棒鋼8の山側に張り渡されたワイヤー7を異形棒鋼8に固定するには、異形棒鋼8の両側にワイヤー7を跨いでUボルト9を配し、Uボルト9に、ボルト孔10aが形成された板状の座金10を嵌め込み、ナット11によってUボルト9を締め付ける。かくして、ワイヤー7は、異形棒鋼8に押し付けられて固定される。
【0025】
なお、座金10には、異形棒鋼8の一部が入り込む異形棒鋼用凹部10bが形成されているので、座金10に対する異形棒鋼8の位置ずれが抑制される。
【0026】
このようにして、ワイヤー7をUボルト9によって異形棒鋼8に固定することにより、図4に示されるように、ワイヤー7は、異形棒鋼8を乗り越え、U字状に変形して、その両側がUボルト9と座金10とに挟まれて、異形棒鋼8に固定されるので、異形棒鋼8へのワイヤー7の固定強度が高まる。この結果、落石の衝撃エネルギーによるワイヤー7の伸びが、ワイヤー7が変形しないで固定される場合に比べて適正に制限されるので、落石による衝撃エネルギーを効率よく吸収することができる。
【0027】
このように、ワイヤー7の伸びが制限されることによって、ワイヤー7と金網4とを連結しているコイル12(図1参照)の変形を抑えることができる結果、金網4がワイヤー7から外れるのを抑制することもできる。
【0028】
なお、座金10には、ワイヤー7が入り込むワイヤー用凹部10cが形成されているので、座金10に対するワイヤー7の位置ずれが抑制されるとともに、異形棒鋼8部分でのワイヤー7の変形量も拡大しやすい。
【0029】
また、異形棒鋼8へのワイヤー7の固定箇所は、落石の衝撃エネルギーによって適正に上下移動可能となるので、この点においても落石による衝撃エネルギーを効率よく吸収することができる。すなわち、異形棒鋼8には、突起8aが形成されているので、突起8aが形成されていない場合に比べて、ワイヤー7が上下移動しにくい。従って、所定の大きさを超える衝撃エネルギーがワイヤー7に作用した場合、ワイヤー7は上下移動する結果、衝撃エネルギーを吸収することが可能となる。
【0030】
以上、説明したように、この発明によれば、間隔保持材としての異形棒鋼8へのワイヤー7の固定強度を高めることによって、落石の衝撃エネルギーによるワイヤー7の伸びが適正に制限されるので、落石による衝撃エネルギーを効率よく吸収することができる。
【0031】
また、この発明によれば、間隔保持材としての異形棒鋼8へのワイヤー7の固定箇所が落石の衝撃エネルギーによって適正に上下移動可能となるので、この点においても落石による衝撃エネルギーを効率よく吸収することができる。
【符号の説明】
【0032】
1:端末支柱
2:中間支柱
3:ワイヤー
3a:岩受けワイヤー
3b:緩衝ワイヤー
4:金網
5:間隔保持材
6:Uボルト
7:ワイヤー
8:異形棒鋼
8a:突起
9:Uボルト
10:座金
10a:ボルト孔
10b:異形棒鋼用凹部
10c:ワイヤー用凹部
11:ナット
12:コイル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8