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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】複合シート及びエアバッグ
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/12 20060101AFI20221004BHJP
   B60R 21/235 20060101ALI20221004BHJP
   B60R 21/232 20110101ALI20221004BHJP
【FI】
B32B27/12
B60R21/235
B60R21/232
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018198553
(22)【出願日】2018-10-22
(65)【公開番号】P2020066138
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-08-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000211156
【氏名又は名称】中興化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 和久
(72)【発明者】
【氏名】羽田 賢一朗
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-229939(JP,A)
【文献】特開2012-245746(JP,A)
【文献】特開2013-086598(JP,A)
【文献】特開2003-253538(JP,A)
【文献】特表2003-526557(JP,A)
【文献】特開2013-078977(JP,A)
【文献】国際公開第2018/031355(WO,A1)
【文献】米国特許第4262049(US,A)
【文献】欧州特許出願公開第3141384(EP,A1)
【文献】欧州特許出願公開第2199062(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/12
B60R 21/16
B60R 21/232
B60R 21/235
D03D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基布層と、
前記基布層の上に設けられており、前記基布層に向いている第1面と、前記第1面の裏側にある第2面と、前記第2面から前記第1面へ向かって凹んでいる島状配置の複数の凹部とを有し、且つ熱可塑性の第1樹脂を含む第1樹脂層と、
少なくとも一部が前記第2面の前記複数の凹部に充填されており、且つシリコーンを含む第2樹脂を含んでいる第2樹脂層と
を具備し、
前記第2面は、前記複数の凹部を1cm 当り9個以上81個以下有する、複合シート。
【請求項2】
前記第2面の上の前記第2樹脂層の担持量が5g/m以上50g/m以下である、請求項に記載の複合シート。
【請求項3】
前記複合シートの厚さが0.1mm以上1mm以下である、請求項1又は2に記載の複合シート。
【請求項4】
前記基布層は、織布または不織布を含む請求項1-の何れか1項に記載の複合シート。
【請求項5】
バッグ部と、前記バッグ部にガスを導入するガス導入部とを具備し、前記バッグ部は内面に前記基布層が位置するように請求項1-の何れか1項に記載の複合シートから形成されている、エアバッグ。
【請求項6】
サイドカーテンエアバッグである、請求項に記載のエアバッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合シート及びエアバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
エアバッグには、一定以上の圧力で空気をその内部に保持する性能が要求される。特に、サイドカーテンエアバッグには、ロールオーバー(車両横転)事故発生の際に乗員の車外放出等を防ぐ機能が求められる。そのために展開されたサイドカーテンエアバッグの内圧を一定時間保持することが求められる。例えば、内圧70kPaに膨張させたサイドカーテンエアバッグが12秒後に40kPa以上の内圧を維持していることが望ましい。
【0003】
エアバッグに用いられる基布材料は、シリコーンのような樹脂材料などで被覆して通気性を低減することで低通気性を付与されている。例えば、エアバッグ基布の製造には、ダイコート法およびナイフコート法などの液状の材料を基布に塗布するコーティング法が用いられている。
【0004】
例えば、シリコンコーティングを行う際の塗布方法として、ナイフコート法が実施されている。この方法では、樹脂材料などを薄く塗布する事は可能であるが、ナイフで基布表面を擦るために基布の凸部分へのシリコーンの付着量が凹部分に比較し少ない。また、シーム部(設計上膨らませない縫合部位)では平織部と比較して織組織が違うため糸密度が高くなる。このようにシーム部と平織部とで糸密度が違うために、エアバッグに内圧が掛かった際に糸密度が少ない平織部より糸目が開く結果、シーム部と平織部との境界部分よりエアー漏れが生じる。例えば、ナイフコート法を採用して製造したエアバッグでは、内圧70kPaに膨張させてから12秒後の内圧が40kPaに満たない場合がある。その原因として、バッグのシーム部と平織部との境界部分から糸目が広がり、漏れが発生することが挙げられる。
【0005】
特許文献1(特表2003-535767号公報)では、低通気性サイドカーテンエアバッグは円筒形モジュール内に保管されるところ、シリコーン被覆剤で重度に被覆された低通気性物品を巻くのに要する時間およびエネルギー並びに収納体積を減少させることが困難であることを問題視している。また特許文献1は、このような物品を密に収納したときにブロッキング(即ち、異なる被覆部分の付着)の問題が増大することも指摘している。特許文献1には、このような事情から密に収納された、低収納体積、低ブロッキング、低通気性のサイドカーテンエアバッグが望ましいと記載されている。
【0006】
このようなサイドカーテンエアバッグの要求に答えるべく、特許文献1では、過半量のシリコーン材料からなる被覆剤が低い付加量で存在し、膨張後に高い漏出時間特性を有するエアバッグクッションを提供することを目的としている。特許文献1に記載されている発明は、エラストマー組成物で被覆された布を有してなるエアバッグクッションであり、該エラストマー組成物が全組成物に対して少なくとも50重量%のシリコーンに基づく材料を含んでいる。しかしこの布は、2オンス/平方ヤード(およそ60g/m-70g/m)布程度のエラストマー組成物で被覆されており、被覆物の量が依然として多い。
【0007】
特許文献2(特開2007-229939号公報)には、希釈用の溶媒を一切使用しない無溶剤型シリコーンを用いると、塗工面が鏡面構造をとりやすく、光沢にとんだ、密着し易い粘着性の高い塗工面を形成しやすい傾向があることが記載されている。そして特許文献2には、この場合、高い粘着性のため、エアバッグの基布面同士の間などに高い摩擦力が発生しやすいと記載されている。塗工面上にタルクなどの微粉末を散布したり塗工液に滑り性を付与する充填剤を添加したりすることなく、粘着性が少なく表面摩擦係数の低いコーティング面を有する複合シートを得る方法として、特許文献2には、シリコーンの塗工面に凹凸形状を機械的に形成することが記載されている。しかし、特許文献2の複合シートでは60g/m程度のシリコーンが基材に塗工されており、用いるシリコーンの量が多い。シリコーンの量が多い理由は、シリコーンの塗工面に凹凸形状を機械的に設けるうえでシリコーンを厚く塗工する必要があるためと推察される。また、コーティング法によりシリコーンを基材に設けているため、エアー漏れを抑制するのにシリコーン量が必然的に多くなったとも考えられる。
【0008】
シリコンコーティング法とは別に、フィルムを熱加圧して基布に接着するラミネート法が用いられている。ラミネート法には、例えば、積層フィルムを熱ロールで加圧し融着を行う方法がある。
【0009】
ラミネート法には、ナイフコート法に比べ、製造スピードが遅くコストが高くなる傾向がある。また、積層するフィルムの製造に用いられるTダイ押し出し機のような広幅の押し出し機など、製造機器にも費用が掛かる。一方で、この方法ではシリコンコーティング法に比較して、エアバッグに内圧が掛かった際加工面からのエアー漏れが少ないというメリットがある。
【0010】
特許文献3(米国特許公報US2008/0075903A1)には、エアバッグクッションの製造方法が記載されており、当該方法は、熱可塑性の接着樹脂層と樹脂からなるバリア層とを含むマルチコンポーネントフィルムを基材に熱融着する工程を含んでいる。接着樹脂層およびバリア層の材料として融点が異なる材料を用いることで、接着層を介してバリア層を基材に熱融着させることができる。この方法では、押し出し機を用いるなどしてマルチコンポーネントフィルムを形成する工程の後で、得られたフィルムを基材にラミネートする工程が必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特表2003-535767号公報
【文献】特開2007-229939号公報
【文献】米国特許公報US 2008/0075903 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、優れた滑り性能を有する複合シート、及び収納性が高く展開機能および内圧保持性能に優れたエアバッグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、基布層と、前記基布層の上に設けられており、前記基布層に向いている第1面と、前記第1面の裏側にある第2面と、前記第2面から前記第1面へ向かって凹んでいる島状配置の複数の凹部とを有し、且つ熱可塑性の第1樹脂を含む第1樹脂層と、少なくとも一部が前記第2面の前記複数の凹部に充填されており、且つシリコーンを含む第2樹脂を含んでいる第2樹脂層とを具備し、前記第2面は、前記複数の凹部を1cm 当り9個以上81個以下有する、複合シートが提供される。
【0014】
また本発明によれば、バッグ部と、前記バッグ部にガスを導入するガス導入部とを具備するエアバッグが提供される。前記バッグ部は、内面に前記基布層が位置するように上記の複合シートから形成されている。
【発明の効果】
【0015】
上記の複合シートは、優れた滑り性能を有する。また、複合シートを用いたエアバッグは、収納性が高く、展開機能に優れ、且つ内圧保持性能に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一例の複合シートを概略的に表す断面図。
図2】一例のシリコーン材料の硬化機構を表す式。
図3】複合シートを製造する一例の方法の一部を表す概略図。
図4】複合シートを製造する一例の方法の他の一部を表す概略図。
図5】一例のエアバッグを概略的に表す平面図。
図6】実施例1で用いたエンボスシートの平面写真。
図7】実施例1で作製した複合シートの平面写真。
図8図7で示した複合シートの拡大平面写真。
図9】実施例1で作製した複合シートの断面を示す走査型電子顕微鏡写真。
図10】摩擦試験を概略的に表す断面図。
図11】実施例5及び比較例5で作製したエアバッグの内圧保持性能を表すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施形態に係る複合シート及びエアバッグを、図面を参照して説明する。
【0018】
(第1の実施形態)
実施形態に係る複合シートは、基布層と、第1樹脂層と、第2樹脂層とを具備する。第1樹脂層は、基布層の上に設けられている。第1樹脂層は、基布層に向いている第1面と、この第1面の裏側にある第2面と、第2面から第1面へ向かって凹んでいる複数の凹部とを有している。第1樹脂層は、熱可塑性の第1樹脂を含んでいる。第2樹脂層の少なくとも一部が、第2面の複数の凹部に充填されている。第2樹脂層は、シリコーンを含む第2樹脂を含んでいる。
【0019】
図1に、一例の複合シートを概略的に表す断面図を示す。複合シート1は、基布層2と、第1樹脂層3と、第2樹脂層4とを含む。図示する例では、基布層2は糸(ヤーン)2aからなる織布である。第1樹脂層3は、第1面3aと第2面3bとを有している。第1樹脂層3の第1面3aは、基布層2に向いている。第1面3aは、糸2aにより基布層2の表面に形成されている凹凸形状に追従している。第2面3bは、第1面3aへ向かって凹んだ複数の凹部5をその表面に有する。図1では、複数の凹部5のうち一つを図示している。第2樹脂層4は、第1樹脂層3の第2面3bの上に設けられている。第2樹脂層4の一部が、第2面3bにある凹部5に入り込んでおり、凹部5を埋めている。
【0020】
第1樹脂層3の第2面3bにある凹部5は、例えば、第1樹脂層3に対するエンボス加工により設けられたものであり得る。第2面3bは、複数の凹部5を1cm当り9個以上81個以下有することが望ましい。また、第2面3bの面積のうち、複数の凹部5が占める割合が、7%以上64%以下であることが望ましい。
【0021】
第2樹脂層4は第2樹脂を含んでおり、その少なくとも一部が凹部5に充填されている。第2樹脂が凹部5に充填されることで、第2樹脂層4に含まれている第2樹脂の分布が凹部5に集中する。それにより複合シート1全体の厚さを薄くしながらも、第2樹脂層4の表面(基布層2及び第1樹脂層3に対し裏側の面)に適度な凹凸を有することができる。第1樹脂層3の第2面3bの上に設けられている第2樹脂層4の担持量は、例えば、5g/m以上50g/m以下であり得る。第2樹脂層4の担持量は、平面方向に亘って均一であってもよく、或いは均一でなくてもよい。複合シートの厚さ、つまり基布層2と第1樹脂層3と第2樹脂層4との合計厚さTの値は、例えば、0.1mm以上1mm以下であり得る。
【0022】
図1に例を示した構造の複合シート1は、優れた滑り性能を有する。そのため、複合シート1はエアバッグを形成するための材料に適している。複合シート1の最表面にて第2樹脂層4に起伏があるため、複合シート1が折りたたまれた状態における第2樹脂層4の表面同士の密着が少ない。従って、第2樹脂層4の表面にて発生する摩擦が少ない。複合シート1の滑りがよいことで、収納時には小さく折りたたまれたり小さく捲かれたりしているエアバッグを急速に展開することができる。
【0023】
また、複合シート1の全体の厚さが薄いため収納性が高く、エアバッグを搭載する車両の設計の自由度が向上する。そのうえ複合シート1の滑り性能が良いことから、エアバッグを密に収納しても良好な展開機能を維持できる。
【0024】
加えて複合シート1を用いることで、内圧の保持性能が高いエアバッグを得ることができる。つまり、複合シート1は、サイドカーテンエアバッグへの適用にも適している。第1樹脂層3が糸2aにより形成されている表面形状に追随しながら基布層2に密着している。第1樹脂層3は、基布層2における織りの目開きを防ぎ、気体の漏れを抑制する。そのため、複合シート1は高い気密性を有する。
【0025】
続いて、基布層、第1樹脂層、及び第2樹脂層を詳細に説明する。
【0026】
基布層としては、例えば、織布または不織布を用いることができる。基布層の材料としてはポリエステル、ポリアミド、ナイロン等の樹脂材料からなる基布を挙げることができる。その他、ガラスクロス等を基布層として用いてもよい。基布層は、例えば、0.1mm以上0.5mm以下の厚さを有し得る。
【0027】
第1樹脂層に含まれる第1樹脂としては、例えば、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、及びナイロンなどの熱可塑性樹脂を挙げることができる。第1樹脂層は、例えば、20μm以上500μm以下の厚さを有し得る。
【0028】
第1樹脂層は、1以上の層を含み得る。つまり第1樹脂層は、単一の層である、又は積層されている複数の層を含む積層体であり得る。第1樹脂層に複数の層を含む場合、各々の層は異なる第1樹脂を含み得る。例えば、第1樹脂層は、複数の異なる材料の層からなるマルチコンポーネントフィルムであり得る。
【0029】
第2樹脂層に含まれる第2樹脂は、シリコーン(シリコーンゴム)を含む。第2樹脂は、シリコーン以外にも、熱硬化性の材料および熱可塑性の材料、例えば、エラストマー及びその他の樹脂材料を含むことができる。シリコーン以外の材料の具体例として、クロロプレン、クロルスルホン化オレフィン、ポリアミド系エラストマー、ポリスチレンブタジエン、ニトリルゴム、フッ素系ゴム、ポリウレタン等のエラストマーが挙げられる。第2樹脂として、シリコーンと上記材料の1種以上と組み合わせて用いることができる。或るいは、シリコーンの代わりに、上記材料の1種以上を第2樹脂として用いることができる。
【0030】
第2樹脂に用いることができるシリコーンの一例を詳述する。図2は、一例のシリコーン材料の硬化機構を表す式を示す。詳細には、図2は、シロキサンポリマーで形成されている主鎖を有する付加硬化型メチルビニル系シリコーンゴムの硬化機構を示す。白金(Pt)触媒の存在下で加熱することで、付加反応により硬化が進行する。
【0031】
第2樹脂に加え、第2樹脂層に充填剤を含ませてもよい。例えば、難燃性を付与したり滑り性能(低摩擦性)をさらに向上させたりする充填剤を第2樹脂層に含ませることができる。
【0032】
第2樹脂層は、1以上の層を含み得る。つまり第2樹脂層は、単一の層である、又は積層されている複数の層を含む積層体であり得る。第2樹脂層に複数の層を含む場合、各々の層は異なる第2樹脂を含み得る。
【0033】
上述したとおり複合シートは、優れた滑り性能を有し、薄いことで収納性が高く、高い気密性を有している。そのため、複合シートをエアバッグに好適に用いることができる。エアバッグは、サイドカーテンエアバッグを含む。
【0034】
次に、複合シートの製造方法を説明する。
【0035】
基布層と第1樹脂層とを積層させて、ラミネート基材を作製する。この際、第1樹脂層の第2面に凹部を形成する。第1樹脂層の第2面に第2樹脂を塗工し、第2樹脂を硬化させることで第2樹脂層を形成する。
【0036】
図3及び図4を参照して、複合シートを製造する一例の方法を説明する。
【0037】
図3は、複合シートを製造する一例の方法の一部を表す概略図、具体的には、ラミネート基材の製造を表す断面図である。例えば、熱転写プレスを用いて、加圧ベルト12の上に離形フィルム13、エンボスシート14、第1樹脂層3、及び基布層2をこの順番で重ね、加熱-加圧ロール11により加熱しながら加圧することで第1樹脂層3と基布層2とを一体化させてラミネート基材6を得る。
【0038】
加熱温度は、例えば、130℃以上150℃以下にする。プレス圧は、例えば、0.05MPa以上1MPa以下にする。搬送速度は、例えば、0.1m/min以上30m/min以下にする。
【0039】
第1樹脂層3として、例えば、上述した可塑性の第1樹脂からなる樹脂フィルムを用いることができる。基布層2として、例えば、上述した基布材料(織布、不織布、ガラスクロス、等)を用いることができる。
【0040】
エンボスシート14は、凹凸のある主面を有している。エンボスシート14は、その主面のうち第1樹脂層3の第2面3bと接触する加工面14aに複数の突出部を有している。エンボスシート14の加工面14aには、複数の突出部が1cm当り9個以上81個以下含まれ得る。
【0041】
加熱-加圧ロール11を用いて加熱および加圧することにより第1樹脂層3と基布層2とを一体化させると同時に、エンボスシート14の加工面14aが第1樹脂層3の第2面3bに加圧される。この際、加工面14aにある複数の突出部が第2面3bの表面に複数の凹部として転写される。加工面14aの突出部の形状および大きさ、並びに転写時のプレス圧を調整することで、凹部の形および大きさを制御することができる。こうして第1樹脂層3の第2面3bにエンボス加工が施され、複数の凹部が設けられる。
【0042】
図4は、複合シートを製造する一例の方法の他の一部を表す概略図、具体的には、ラミネート基材の上への第2樹脂層の形成を表す断面図である。例えば、バッチコート機を用いて第2樹脂を含む塗工材料Cを所定量ラミネート基材6の上に塗工し、加熱により塗工材料Cを硬化させて第2樹脂層4を形成する。塗工材料Cは、第1樹脂層3の第2面3bの上に塗工する。
【0043】
詳細には、基布層2及び基布層2と一体化されておりエンボス加工により第2面3bに凹部が設けられている第1樹脂層3とを含むラミネート基材6を、バックアップロール21により搬送する。搬送速度は、例えば、0.5m/minとする。第1樹脂層3の第2面3bに塗工材料Cを、例えば、塗工ナイフ22を用いて塗工する。第2面3bと塗工ナイフ22との間の距離を調整することで、塗工材料Cの塗工量を制御できる。第2面3bに塗工した塗工材料Cの少なくとも一部が第2面3bに設けられた凹部に充填される。塗工材料Cのうち大きな割合が凹部に充填され得る。
【0044】
塗工材料Cは、上述した第2樹脂を含んでいる。塗工材料Cは、第2樹脂に加え有機溶媒などの希釈剤を含んでもよい。或いは、溶媒を含まない塗工材料Cを用いてもよい。
【0045】
第1樹脂層3の第2面3bに塗工した塗工材料Cを加熱により硬化させることで、第2樹脂層4が形成される。加熱温度は、例えば180℃にすることができる。塗工材料Cに含む第2樹脂の硬化温度、及び第2樹脂以外の材料の有無に応じて、加熱温度を適宜調整する。
【0046】
こうして得られる複合シートでは、基布層2と第1樹脂層3とが一体化されてなるラミネート基材6の上に第2樹脂層4が設けられており、第2樹脂の少なくとも一部が第1樹脂層3の第2面3bにおける複数の凹部に充填されている。
【0047】
(第2の実施形態)
実施形態に係るエアバッグは、バッグ部とガス導入部とを具備している。バッグ部は、先に説明した複合シートから形成されている。バッグ部は、複合シートの基布層がバッグ部の内面に位置するように形成されている。ガス導入部から、バッグ部にガスが導入される。
【0048】
図5に、一例のエアバッグを概略的に表す平面図を示す。エアバッグ30は、バッグ部(膨張部)31、及びガス導入部(インフレーター口)32、を具備する。またエアバッグ30は、設計に応じて接合部(非膨張部)33を含み得る。
【0049】
バッグ部31は、エアバッグ30のうち袋状になっている部分である。ガス導入部32は、エアバッグ30の展開時にバッグ部31を膨張させるガスを発生させるインフレーターと接続される部位である。
【0050】
エアバッグ30では、例えば、前述の複合シートの基布層側がエアバッグ30の内側を向く、つまり基布層が袋の内面となり、第2樹脂層側がエアバッグ30の外表面となるように縫合されて、バッグ部31が形成されている。縫合部位に隣接して、接合部33が形成され得る。言い換えると、バッグ部31を形成する際の縫合位置により、接合部33の位置や大きさを調整できる。
【0051】
エアバッグ30の展開時には、ガス導入部32に接続されたインフレーター(図示せず)にてバッグ展開用ガスが発生し、ガス導入部32を経由してエアバッグ30内にバッグ展開用ガスが導入される。インフレーターは、例えば、自動車などの車両に搭載されている。バッグ展開用ガスがインフレーターからガス導入部32を経由してエアバッグ30内に導入されると、バッグ部31は、インフレーターからのガスを内部に貯めて膨張する。接合部33は、ガスが導入されても膨らまない。
【0052】
インフレーターが作動してエアバッグ30が展開されるまでは、エアバッグ30は密に折りたたまれたり密に巻かれたりして、例えば、車両の内部に収納され得る。収納されている状態では、エアバッグ30の外表面(例えば、第2樹脂層の表面)が互いに密着し得る。バッグ部31が上述した複合シートで形成されているため、エアバッグ30の収納性、展開機能、及び内圧の保持性の何れもが高い。これらの性能が高いことから、エアバッグ30をサイドカーテンエアバッグとして好適に運用することができる。
【0053】
バッグ部31に加え、ガス導入部32及び接合部33が複合シートで形成されていることがより好ましい。何れの部位についても、エアバッグ30の外表面に第2樹脂層が位置することが好ましい。
【0054】
エアバッグは、例えば、一体織り(One-Piece Woven;OPW、袋織りともいう)で得られたものであり得る。一体織りの場合は、バッグ部、ガス導入部、及び接合部のすべてが、一つの複合シートから形成され得る。一体織りのエアバッグは、縫合せずに形成することができ、エアー漏れをさらに抑制できる。一体織りのエアバッグは、縫合される代わりに、糸の折り込み部分で重なる2枚のシートが締結されている部位を含み得る。締結されている部分に隣接して接合部が形成され得る。
【実施例
【0055】
以下、実施例を説明する。具体的には、基布層に各種フィルム(第1樹脂層)をラミネートしたもの(ラミネート基材)に第2樹脂を含む塗工材料を塗工し、エンボス加工の有無に応じて摩擦係数を測定することで、エンボス加工の効果を確認した。
【0056】
[複合シートの作製]
(比較例1)
基布層として、ポリエステル繊維で製織した基材クロス(HAILIDE社製、466 dtex × 96 filaments、57×49本/in)を準備した。基布層の厚みは、0.3mmだった。第1樹脂層として、熱可塑性ポリウレタンフィルム(DingZing社製、厚み50μm)を準備した。熱転写プレス(株式会社ハシマ製 HP-1600)を用いて基布層に第1樹脂層をラミネートして、ラミネート基材を作製した。ラミネート基材を作製する際、エンボスシートを用いなかった。
【0057】
塗工材料としてシリコーン(Elkem Silicones社製の付加硬化型シリコーン)を準備した。ラミネート基材の第1樹脂層側にこのシリコーンを20±10 g/m塗工し、加熱することにより第2樹脂層を形成した。
【0058】
こうして複合シートを作製した。
【0059】
(実施例1)
図6に示すエンボスシートを準備した。図6は、当該エンボスシートを加工面側からみた平面写真である。図6に示す写真では、説明の促進のために黒線15により格子模様が描きこんである。格子模様における一つのマスの大きさは、1cmである。図6に示すエンボスシートの加工面には、白い菱形として視認できる突出部の頂点14bが1cm当り25個見られる。各々の突出部は四角錐の形状を有している。エンボスシートの加工面には、黒点14cを中心とする凹みも見られる。突出部の頂点14bと凹みの中心である黒点14cとは、約1.7mmの間隔で交互に並んで配置されている。
【0060】
比較例1と同様の基布層および第1樹脂層と、このエンボスシートとを用い、図3で示した方法でラミネート基材を作製した。つまりエンボスシートを用いて基布層に第1樹脂層をラミネートする際にエンボス加工を同時に施し、エンボスシートの加工面の突出部を第1樹脂層の第2面に転写することにより、エンボス加工した基材を作製した。
【0061】
エンボス加工したラミネート基材を用いたことを除き、比較例1と同様の手順により複合シートを作製した。
【0062】
(比較例2)
第1樹脂層として熱可塑性ポリエステルフィルム(日本マタイ製、厚み50μm)を準備した。第1樹脂層の材料を当該ポリエステルフィルムに変更したことを除き、比較例1と同様の手順によりラミネート基材を作製した。
【0063】
比較例1と同様のシリコーンを準備した。ラミネート基材の第1樹脂層側にこのシリコーンを20±10 g/m塗工し、加熱することにより第2樹脂層を形成した。こうして複合シートを作製した。
【0064】
(実施例2)
比較例2と同様の第1樹脂層を準備した。実施例1と同様のエンボスシートを準備した。第1樹脂層の材料を変更したことを除き、実施例1と同様の手順によりエンボス加工したラミネート基材を作製した。得られたラミネート基材を用いたことを除き、比較例2と同様の手順により複合シートを作製した。
【0065】
(比較例3)
基布層として、ポリアミド繊維で製織した基材クロス(旭化成社製、470 dtex × 72 filaments、51×51本/in)を準備した。基布層の厚みは、0.3mmだった。基布材料を当該ポリアミド布に変更したことを除き、比較例1と同様の手順によりラミネート基材を作製した。
【0066】
比較例1と同様のシリコーンを準備した。ラミネート基材の第1樹脂層側にこのシリコーンを20±10 g/m塗工し、加熱することにより第2樹脂層を形成した。こうして複合シートを作製した。
【0067】
(実施例3)
比較例3と同様の基布層を準備した。実施例1と同様のエンボスシートを準備した。基布材料を変更したことを除き、実施例1と同様の手順によりエンボス加工したラミネート基材を作製した。得られたラミネート基材を用いたことを除き、比較例3と同様の手順により複合シートを作製した。
【0068】
(比較例4)
比較例2と同様の第1樹脂層を準備した。比較例3と同様の基布層を準備した。第1樹脂層および基布層の材料を変更したことを除き、比較例1と同様の手順によりラミネート基材を作製した。
【0069】
比較例1と同様のシリコーンを準備した。ラミネート基材の第1樹脂層側にこのシリコーンを20±10 g/m塗工し、加熱することにより第2樹脂層を形成した。こうして複合シートを作製した。
【0070】
(実施例4)
比較例2と同様の第1樹脂層を準備した。比較例3と同様の基布層を準備した。実施例1と同様のエンボスシートを準備した。第1樹脂層および基布層の材料を変更したことを除き、実施例1と同様の手順によりエンボス加工したラミネート基材を作製した。得られたラミネート基材を用いたことを除き、比較例4と同様の手順により複合シートを作製した。
【0071】
[観察]
作製した複合シートを、次のようにして観察した。
【0072】
上記実施例および比較例では、第2樹脂として透明色のシリコーンを用いたため、第2樹脂の視認性を向上させる目的で複合シートに顔料を添加した。第2樹脂層側から複合シートの平面を観察し、第2樹脂の分布を確認した。
【0073】
具体例として、実施例1で作製した複合シートを確認した結果を説明する。図7は、実施例1で作製した複合シートの平面写真である。図8は、図7で示した複合シートの拡大平面写真である。図8は、図7の中心およびその周辺に対応する。図7及び図8に示すように凹部5の位置にて顔料の色が濃くなっており、その位置でシリコーンが多く付着していることが分かる。従って、シリコーンが凹部5に充填されていることが確認できる。また凹部5の配置が、エンボス加工に用いたエンボスシートの加工面にある突出部の頂点14bの配置に対応している。顔料による着色が濃い部分と薄い部分との面積を比較することで、第2面において凹部5が占めている面積割合を確認できる。
【0074】
実施例2-4で作製した複合シートでも同様に、凹部5の位置にて顔料の色が濃くなっており、シリコーンが凹部5に充填されていることが確認できた。これに対し比較例1-4で作製した複合シートでは、全面に亘って顔料の色の濃さが均一だった(図示せず)。比較例1-4では第1樹脂層にエンボス加工を施さなかったため、凹部がない平坦なフィルム面上全体が着色しておりシリコーンが均等に塗工されたものと考えられる。
【0075】
続いて、複合シートを切り出して、観察断面を得た。この際、平面観察にて確認した凹部5の断面が切り出した観察断面に含まれるようにした。切り出した複合シートの基布層側に導電性両面テープを貼りつけ、電子顕微鏡の試料台に固定した。観察断面を走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジー社製 TM-3030)で観察した。
【0076】
図9は、実施例1で作製した複合シートの断面を示す走査型電子顕微鏡写真である。複合シート1は、基布層2側に貼り付けられた導電性両面テープ41により試料台40に固定されている。複合シート1にて第1樹脂層3が基布層2を構成する糸により形成されている凹凸形状に追従していることが分かる。特に、凹部5に対応する位置にて第1樹脂層3が基布層2に密着している。観察断面をエネルギー分散型X線分光法(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy;EDX)によりマッピングした結果(図示せず)、Si元素の分布は、凹部5に対応する部分に集中していた。このことからも、凹部5にシリコーンが充填されていることを確認できた。第2樹脂層4のうち、1.7mm程の幅の凹部5に充填されている部分が占める割合が多い。
【0077】
[評価]
各々の実施例および比較例で作製した複合シートについて、下記のとおり摩擦係数を評価した。具体的には、ISO-8295(1995年)に準ずる方法により静摩擦係数および動摩擦係数を測定した。
【0078】
詳細には、次のとおり試験した。試験機器としては、株式会社エー・アンド・ディ製 万能試験機TENSILON RTCを用いた。試験方法の概略を、図10に示す。
【0079】
図10は、摩擦試験を概略的に表す断面図である。第2樹脂層4同士が向き合うように、2枚の複合シート1をベースプレート51上にセットし、その上に滑り片52を乗せた。滑り片52としては、接触面積63mm × 63mmで重量200gのSUS(Steel Use Stainless)製ブロックを用いた。滑車54を経由して図示しないロードセルへ接続されたワイヤー53を用いて上側の複合シート1を100mm/minで引っ張る時の測定値に基づいて、静摩擦係数および動摩擦係数を求めた。
【0080】
それぞれの実施例および比較例における複合シートの作製の詳細および摩擦試験の結果を下記表1にまとめる。複合シートの作製の詳細としては、基布層の材料および厚み、第1樹脂層の材料、第1樹脂層の第2面へのエンボス加工を施したか否か、第2面の面積のうち凹部が占める割合、塗工材料の種類および塗工された実際の量、並びに複合シートの厚みを示す。塗工された塗工材料の実際の量は、塗工を行う前後のラミネート基材の重量差から求めた。この重量には、第1樹脂層の重量は含まれない。複合シートの厚みは、基布層と第1樹脂層と第2樹脂層との合計の厚みである。摩擦試験の結果としては、静摩擦係数および動摩擦係数を示す。
【0081】
【表1】
【0082】
比較例1で作製した複合シートと実施例1で作製した複合シートとは、第1樹脂層に対しエンボス加工を施したか否かの点で異なる。ラミネート基材に塗工された塗工材料(シリコーン)の塗工量および得られた複合シートの厚みは、両者の間で同程度だった。一方で比較例1の複合シートと比較して、実施例1の複合シートの方が静摩擦係数および動摩擦係数の両方が低かった。つまり、第1樹脂層の第2面に対しエンボス加工を施した結果、滑り性能が向上した。
【0083】
比較例2で作製した複合シートと実施例2で作製した複合シートとは、比較例1と実施例1との比較と同様に、第1樹脂層に対するエンボス加工が実施されたか否かの点で異なる。ポリウレタンの代わりに第1樹脂層の材料にポリエステルを用いた比較例2と実施例2との比較においても、塗工材料の塗工量および複合シートの厚みが同程度であったものの、エンボス加工が実施された実施例2の複合シートの方が静摩擦係数および動摩擦係数の両方が低かった。
【0084】
ポリアミド基布およびポリウレタンフィルムを用いた比較例3及び実施例3の比較、並びにポリアミド基布およびポリエステルフィルムを用いた比較例4及び実施例4の比較においても、比較例1及び実施例1の比較と同様に、エンボス加工が行われた複合シートの方が静摩擦係数および動摩擦係数の両方が低かった。
【0085】
以上の結果が示すとおり、第1樹脂層の第2面に対しエンボス加工を施し、得られたエンボス(凹部)に第2樹脂を充填することで、優れた滑り性能を有する複合シートが得られる。
【0086】
複合シートを用いてエアバッグを作製し、内圧保持性能を試験した。
【0087】
[エアバッグの作製]
(比較例5)
ポリアミド製基布(470 dtex × 72 filaments、56×48本/in)からなるOPW袋状物を準備した。当該OPW袋状物の両面にシリコーンを片面当たり55g/m塗工した。加熱によりシリコーンを硬化させた後、得られた材料シートを用いて図5で示したと同様な形状のOPWエアバッグを作製した。
【0088】
(実施例5)
ポリエステル製基布(466 dtex × 96 filaments、57×49本/in)からなるOPW袋状物を準備した。実施例2と同様の熱可塑性ポリエステルフィルム(第1樹脂層)を準備した。実施例1-4で用いたと同様のエンボスシートを準備した。OPW袋状物の両面に熱可塑性ポリエステルフィルムをラミネートした。ラミネートの際、エンボスシートを用いてポリエステルフィルムに対しエンボス加工を施した。片面のポリエステルフィルムにシリコーンを14g/m塗工し、その裏側のもう片面にシリコーンを30g/m塗工した。加熱によりシリコーンを硬化させた後、得られた複合シートを用いて図5で示したと同様な形状のOPWエアバッグを作製した。
【0089】
[評価]
比較例5及び実施例5で作製したエアバッグの内圧保持性能を次のようにして評価した。
【0090】
エアバッグのインフレーター口にエアー供給ノズルを接続し、エアー圧力50kPaまで内圧を掛けた後、バルブを閉じた。バルブを閉じてからの時間経過後の内圧データを収集した。
【0091】
図11に、実施例5及び比較例5で作製したエアバッグの内圧保持性能を表すグラフを示す。図11のグラフでは、横軸はバルブを閉じてからの経過時間を示し、縦軸はエアバッグの内圧を示す。実線61は、比較例5で作製したエアバッグにおける内圧の変化を示す。点線62は、実施例5で作製したエアバッグにおける内圧の変化を示す。
【0092】
また、経過時間20秒ごとの内圧保持率を下記表2にまとめる。詳細には、エアーバルブを閉じてから20秒後、40秒後、60秒後、及び80秒後におけるエアバッグの内圧およびバルブを閉じた時点の内圧(初期値)に対する保持率を示す。
【0093】
【表2】
【0094】
以上の結果から、比較例5で作製したエアバッグと比較して実施例5で作製したエアバッグの方が、内圧保持性能が高いことが分かる。
【0095】
また、実施例5で作製したエアバッグでは、シリコーンの塗工量に両面の間で差をつけた。それぞれの面におけるエアー漏れを目視で確認したところ漏れは見られなかった。
【0096】
このとおり基布層に第1樹脂層をラミネートしエンボス加工して第2樹脂をエンボスに充填して得られる複合シートは摩擦係数が低く、尚且つ、この複合シートを用いて内圧保持性能が高いエアバッグを得ることができる。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 基布層と、
前記基布層の上に設けられており、前記基布層に向いている第1面と、前記第1面の裏側にある第2面と、前記第2面から前記第1面へ向かって凹んでいる複数の凹部とを有し、且つ熱可塑性の第1樹脂を含む第1樹脂層と、
少なくとも一部が前記第2面の前記複数の凹部に充填されており、且つシリコーンを含む第2樹脂を含んでいる第2樹脂層と
を具備する、複合シート。
[2] 前記第2面は、前記複数の凹部を1cm 当り9個以上81個以下有する、[1]に記載の複合シート。
[3] 前記第2面の面積のうち前記複数の凹部が占める割合は、7%以上64%以下である、[1]又は[2]に記載の複合シート。
[4] 前記第2面の上の前記第2樹脂層の担持量が5g/m 以上50g/m 以下である、[1]-[3]の何れか1つに記載の複合シート。
[5] 前記複合シートの厚さが0.1mm以上1mm以下である、[1]-[4]の何れか1つに記載の複合シート。
[6] 前記基布層は、織布または不織布を含む[1]-[5]の何れか1つに記載の複合シート。
[7] バッグ部と、前記バッグ部にガスを導入するガス導入部とを具備し、前記バッグ部は内面に前記基布層が位置するように[1]-[6]の何れか1つに記載の複合シートから形成されている、エアバッグ。
[8] サイドカーテンエアバッグである、[7]に記載のエアバッグ。
【符号の説明】
【0097】
1…複合シート、2…基布層、3…第1樹脂層、4…第2樹脂層、5…凹部、6…ラミネート基材、11…加熱-加圧ロール、12…加圧ベルト、13…離形フィルム、14…エンボスシート、14a…加工面、14b…頂点、21…バックアップロール、22…塗工ナイフ、30…エアバッグ、31…バッグ部、32…ガス導入部、33…接合部、40…試料台、41…導電性両面テープ、51…ベースプレート、52…滑り片、53…ワイヤー、54…滑車、C…塗工材料。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11