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特許7152013把持装置、ロボットアーム及び開口拡縮機構
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】把持装置、ロボットアーム及び開口拡縮機構
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/00 20060101AFI20221004BHJP
【FI】
B25J15/00 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018214619
(22)【出願日】2018-11-15
(65)【公開番号】P2020082207
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】592218300
【氏名又は名称】学校法人神奈川大学
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100134728
【弁理士】
【氏名又は名称】奥川 勝利
(72)【発明者】
【氏名】江上 正
(72)【発明者】
【氏名】吉川 智康
【審査官】木原 裕二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第94/014573(WO,A1)
【文献】特開平04-189484(JP,A)
【文献】特開2017-132032(JP,A)
【文献】特開2016-122057(JP,A)
【文献】特開平08-132379(JP,A)
【文献】特開2005-169575(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0281204(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の可動部材が移動することで形成される拡縮開口を有し、該拡縮開口が縮小することで該拡縮開口内に被把持物を把持する把持装置であって、
前記複数の可動部材のうちの一部の可動部材は、前記拡縮開口が拡大している途中又は拡大した後に、前記拡縮開口の周縁部の一部分が開いて外部と連通するように移動し、
前記一部の可動部材は、前記拡縮開口が拡大した後に、該拡縮開口の周縁部に沿うように移動することで、前記拡縮開口の周縁部の一部分が開いて外部と連通するように移動することを特徴とする把持装置
【請求項2】
求項1に記載の把持装置において、
前記複数の可動部材のうち、第一支持部に支持された前記一部の可動部材と第二支持部に支持された他の可動部材とを、前記拡縮開口が拡縮するように移動させる第一移動手段と、
前記拡縮開口の周縁部の一部分が開いて外部と連通するように、前記第二支持部に対して前記第一支持部を相対移動させる第二移動手段とを有することを特徴とする把持装置。
【請求項3】
複数の可動部材が移動することで形成される拡縮開口を有し、該拡縮開口が縮小することで該拡縮開口内に被把持物を把持する把持装置であって、
前記複数の可動部材のうちの一部の可動部材は、前記拡縮開口が拡大している途中又は拡大した後に、前記拡縮開口の周縁部の一部分が開いて外部と連通するように移動し、
前記複数の可動部材のうち、第一支持部に支持された前記一部の可動部材と第二支持部に支持された他の可動部材とを、前記拡縮開口が拡縮するように移動させる第一移動手段と、
前記拡縮開口の周縁部の一部分が開いて外部と連通するように、前記第二支持部に対して前記第一支持部を相対移動させる第二移動手段とを有することを特徴とする把持装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の把持装置において、
前記第一移動手段及び前記第二移動手段の駆動力は、同一の駆動手段から伝達されることを特徴とする把持装置。
【請求項5】
請求項4に記載の把持装置において、
前記駆動手段からの駆動力によって移動する移動部材を有し、
前記拡縮開口が拡大するまでは、前記第二移動手段による相対移動を禁止した状態で、前記第一移動手段が前記移動部材の移動に連動して前記一部の可動部材及び前記他の可動部材を移動させ、前記拡縮開口が拡大した後は、前記第一移動手段による前記一部の可動部材及び前記他の可動部材の移動を禁止した状態で、前記第二移動手段が前記移動部材の移動に連動して前記第二支持部に対して前記第一支持部を相対移動させることを特徴とする把持装置。
【請求項6】
請求項2乃至5のいずれか1項に記載の把持装置において、
前記複数の可動部材は、平板状部材であり、
前記第二支持部及び前記第一支持部の少なくとも一方は、支持する可動部材における一方の平板面に対向し、該可動部材の移動方向を規制する規制部を備えた固定部材と、該可動部材における他方の平板面に対向し、該可動部材に該移動方向の移動力を伝達する移動力伝達部材とを備えることを特徴とする把持装置。
【請求項7】
請求項2至6のいずれか1項に記載の把持装置において、
前記第二移動手段は、前記第二支持部に対して前記複数の可動部材の移動方向に直交する方向へ外れた位置で、前記第一支持部を相対移動させることを特徴とする把持装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の把持装置において、
前記複数の可動部材は、前記拡縮開口の拡縮中に該拡縮開口の中心位置が固定されるように移動することを特徴とする把持装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の把持装置において、
前記拡縮開口の周縁部の一部分が開いたか否かを検知する開閉検知手段を有することを特徴とする把持装置。
【請求項10】
請求項9に記載の把持装置において、
前記複数の可動部材を移動させるときの移動負荷を検知する負荷検知手段と、
前記開閉検知手段の検知結果と前記負荷検知手段の検知結果とに基づいて、前記複数の可動部材の移動を中断する制御を実行する中断制御手段とを有することを特徴とする把持装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の把持装置において、
前記複数の可動部材のうちの少なくとも1つは、前記被把持物との当接を検知する当接検知手段を備えていることを特徴とする把持装置。
【請求項12】
請求項11に記載の把持装置において、
前記当接検知手段の検知結果に基づいて、前記複数の可動部材の移動パターンを切り替える制御を実行する移動パターン制御手段を有することを特徴とする把持装置。
【請求項13】
被把持物を把持する把持装置を備えたロボットアームであって、
前記把持装置として、請求項1乃至12のいずれか1項に記載の把持装置を用いたことを特徴とするロボットアーム。
【請求項14】
複数の可動部材が移動することで形成される拡縮開口を有する開口拡縮機構であって、
前記複数の可動部材のうちの一部の可動部材は、前記拡縮開口が拡大している途中又は拡大した後に、前記拡縮開口の周縁部の一部分が開いて外部と連通するように移動し、
前記一部の可動部材は、前記拡縮開口が拡大した後に、該拡縮開口の周縁部に沿うように移動することで、前記拡縮開口の周縁部の一部分が開いて外部と連通するように移動することを特徴とする開口拡縮機構。
【請求項15】
複数の可動部材が移動することで形成される拡縮開口を有する開口拡縮機構であって、
前記複数の可動部材のうちの一部の可動部材は、前記拡縮開口が拡大している途中又は拡大した後に、前記拡縮開口の周縁部の一部分が開いて外部と連通するように移動し、
前記複数の可動部材のうち、第一支持部に支持された前記一部の可動部材と第二支持部に支持された他の可動部材とを、前記拡縮開口が拡縮するように移動させる第一移動手段と、
前記拡縮開口の周縁部の一部分が開いて外部と連通するように、前記第二支持部に対して前記第一支持部を相対移動させる第二移動手段とを有することを特徴とする開口拡縮機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被把持物を把持する把持装置及びこれを備えたロボットアーム、並びに、拡縮開口が拡縮する開口拡縮機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の把持装置の中には、例えばロボットアームのエンドエフェクタとして用いられるものとして、互いに対向配置される2つの棒状部材の一端側を駆動し、当該2つの棒状部材の間に被把持物を把持するグリッパーが知られている。
【0003】
また、特許文献1には、ボルトやナットをはめ込む拡縮開口を拡縮可能なメガネレンチが開示されている。このメガネレンチは、互いに隣接するように環状配置される6個のスライド体(可動部材)が、隣り合うスライド体間のスライド面同士を互いに相対移動させて移動する。これにより、当該6個のスライド体すべての移動方向に対して側方(拡縮開口の開口面法線方向)から見て、当該6個のスライド体により囲まれて形成される正六角形の拡縮開口が拡縮して、拡縮開口の大きさをボルトやナットのサイズに合わせることが可能となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したグリッパーのような把持装置では、例えば、多数の線状物(ワイヤー等)あるいは棒状物が被把持物であるような場合、2つの棒状部材を閉じる間に2つの棒状部材の他端側(自由端側)から被把持物が押し出されてしまい、当該被把持物を適切に把持できない。
【0005】
本発明者らは、前記特許文献1に開示のメガネレンチにおける拡縮開口を拡縮させる機構を利用した把持装置であれば、この問題点を解決することが可能であることを見出した。すなわち、拡縮開口に多数の線状物等の被把持物を入れた状態で拡縮開口を縮小して当該被把持物を拡縮開口で把持することにより、把持力を受けた被把持物に逃げ場がなくなり、多数の線状物等の被把持物であっても、これを適切に把持することが可能である。
【0006】
しかしながら、本発明者らの研究の結果、このような把持装置においては、拡縮開口の周縁部が閉じられていることで、種々の弊害が生じることが判明した。
例えば、上述したグリッパーのような把持装置では、被把持物を把持する際、2つの棒状部材の自由端側が互いに離間して開いているので、そこから被把持物を2つの棒状部材の間に挿入することができる。被把持物を当該2つの棒状部材の間に挿入するためには、当該2つの棒状部材の自由端間に被把持物を位置させればよく、精度が求められる位置合わせは、当該2つの棒状部材の自由端間を結ぶ方向のみ(一方向のみ)である。これに対し、上述した拡縮開口を拡縮させる機構を利用した把持装置においては、拡縮開口の周縁部が閉じられているため、被把持物を把持する際、拡大した拡縮開口の開口面法線方向から被把持物を拡縮開口内へ挿入することが求められる。そのため、被把持物を拡縮開口内に挿入するためには、拡縮開口の開口面に沿った2方向(2次元方向)について、精度が求められる位置合わせが必要である。よって、上述したグリッパーのような把持装置よりも、把持の際の位置合わせが複雑、煩雑であるという課題が生じる。
【0007】
なお、把持装置に限らず、複数の可動部材が移動することで当該複数の可動部材により囲まれて形成される拡縮開口が拡縮する開口拡縮機構を利用する装置においては、拡縮開口の周縁部が閉じられていることによる他の弊害が生じることがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明は、複数の可動部材が移動することで形成される拡縮開口を有し、該拡縮開口が縮小することで該拡縮開口内に被把持物を把持する把持装置であって、前記複数の可動部材のうちの一部の可動部材は、前記拡縮開口が拡大している途中又は拡大した後に、前記拡縮開口の周縁部の一部分が開いて外部と連通するように移動することを特徴とする。
この把持装置は、複数の可動部材が移動することで、当該複数の可動部材によって形成される拡縮開口を縮小させ、周縁部が閉じられている拡縮開口で被把持物を把持することができる。一方で、拡縮開口が拡大している途中又は拡大した後に、複数の可動部材のうちの一部の可動部材を移動することで、拡縮開口の周縁部の一部分を開いて、拡縮開口を外部と連通させることができる。したがって、上述したグリッパーのような把持装置と同様に、被把持物を把持する際、拡縮開口の周縁部のうちの開いた部分(外部と連通した連通路部分)から、被把持物を拡縮開口内に挿入することができる。よって、被把持物を拡縮開口内に挿入する際には、当該開いた部分(連通路部分)に被把持物を位置させればよく、精度が求められる位置合わせは、当該開いた部分間を結ぶ方向のみ(一方向のみ)である。その結果、拡縮開口の周縁部が常に閉じられている構成で生じていた、把持の際の位置合わせが複雑、煩雑となるという弊害を、解消することができる。例えば、当該把持装置をロボットアームの先端に取り付けるシステムにおいて、拡縮開口の周縁部が常に閉じられている構成では、被把持物の上側又は下側から被把持物を拡縮開口内へ至らせる軌道をとる必要があったが、本発明に係る把持装置であれば、被把持物の側方からの軌道で被把持物を拡縮開口内へ至らせることが可能となる。
【0009】
また、本発明は、前記把持装置において、前記複数の可動部材は、前記拡縮開口の拡縮中に該拡縮開口の中心位置が固定されるように移動することを特徴とする。
上述したグリッパーのような把持装置では、2つの棒状部材間のどの位置(棒状部材の長手方向のどの位置)で被把持物を把持するかによって、把持された被把持物の把持位置にばらつきが出てしまう。これに対し、本発明の把持装置においては、縮小する拡縮開口に把持される被把持物を、常に、拡縮開口の中心位置に寄せて把持することができる。よって、把持装置に把持される被把持物の把持位置がばらつくことがなく、把持位置の精度が高い。
【0010】
また、本発明は、前記把持装置において、前記一部の可動部材は、前記拡縮開口が拡大した後に、該拡縮開口の周縁部に沿うように移動することで、前記拡縮開口の周縁部の一部分が開いて外部と連通するように移動することを特徴とする。
上述したグリッパーのような把持装置では、例えば、多数の線状物(ワイヤー等)あるいは棒状物が被把持物であるような場合、2つの棒状部材を閉じる間に2つの棒状部材の自由端側から被把持物が押し出されてしまい、当該被把持物を適切に把持できないことがある。本発明の把持装置においては、拡縮開口が拡縮する間は、拡縮開口が複数の可動部材によって囲まれ、拡縮開口の周縁部が閉じられた状態である。したがって、拡縮開口を縮小して多数の線状物等の被把持物を拡縮開口で把持するとき、把持力を受けた被把持物に逃げ場がなく、多数の線状物等の被把持物であっても、これを適切に把持することが可能である。
【0011】
また、本発明は、前記把持装置において、前記複数の可動部材のうち、第一支持部に支持された前記一部の可動部材と第二支持部に支持された他の可動部材とを、前記拡縮開口が拡縮するように移動させる第一移動手段と、前記拡縮開口の周縁部の一部分が開いて外部と連通するように、前記第二支持部に対して前記第一支持部を相対移動させる第二移動手段とを有することを特徴とする。
この把持装置では、複数の可動部材のうち、拡縮開口の周縁部の一部分が開いて外部と連通するように移動する当該一部の可動部材と、他の可動部材とが、それぞれ第一支持部と第二支持部という別々の支持部によって支持される。そして、拡縮開口を拡縮させる際には、第一移動手段によって当該一部の可動部材と当該他の可動部材とを移動させ、拡縮開口の周縁部の一部分を開いて拡縮開口を外部と連通させる際には、第二移動手段によって、第二支持部に対して第一支持部を相対移動させる。これにより、拡縮開口を拡縮する動作と、拡縮開口の周縁部の一部分を開く動作とを、比較的簡易な構成で実現することができる。
【0012】
また、本発明は、前記把持装置において、前記第一移動手段及び前記第二移動手段の駆動力は、同一の駆動手段から伝達されることを特徴とする。
これによれば、第一移動手段及び第二移動手段の駆動力が別々の駆動手段から伝達される構成と比べて、部品点数が少なく、より簡易な構成を実現できる。
【0013】
また、本発明は、前記把持装置において、前記駆動手段からの駆動力によって移動する移動部材を有し、前記拡縮開口が拡大するまでは、前記第二移動手段による相対移動を禁止した状態で、前記第一移動手段が前記移動部材の移動に連動して前記一部の可動部材及び前記他の可動部材を移動させ、前記拡縮開口が拡大した後は、前記第一移動手段による前記一部の可動部材及び前記他の可動部材の移動を禁止した状態で、前記第二移動手段が前記移動部材の移動に連動して前記第二支持部に対して前記第一支持部を相対移動させることを特徴とする。
この把持装置によれば、単一の駆動手段からの駆動力によって移動部材を移動させることで、拡縮開口を拡縮する動作と、拡縮開口の周縁部の一部分を開く動作とを実現することができる。
【0014】
また、本発明は、前記把持装置において、前記複数の可動部材は、平板状部材であり、前記第二支持部及び前記第一支持部の少なくとも一方は、支持する可動部材における一方の平板面に対向し、該可動部材の移動方向を規制する規制部を備えた固定部材と、該可動部材における他方の平板面に対向し、該可動部材に該移動方向の移動力を伝達する移動力伝達部材とを備えることを特徴とする。
これによれば、上述した可動部材の移動を比較的簡易な構成で実現することができる。
【0015】
また、本発明は、前記把持装置において、前記第二移動手段は、前記第二支持部に対して前記複数の可動部材の移動方向に直交する方向へ外れた位置で、前記第一支持部を相対移動させることを特徴とする。
これによれば、拡縮開口の周縁部の一部分を開いて外部と連通させるために第一支持部を相対移動させる際、第一支持部が第二支持部と抵触しないので、第一支持部の相対移動量をより多く確保できる。その結果、拡縮開口の周縁部の一部分をより大きく開くことができ、当該開いた部分から被把持物を拡縮開口内へ挿入する際の位置合わせをより簡単になる。
【0016】
また、本発明は、前記把持装置において、前記拡縮開口の周縁部の一部分が開いたか否かを検知する開閉検知手段を有することを特徴とする。
本発明に係る把持装置では、前記一部の可動部材を移動することで、拡縮開口の周縁部の一部分を開いて拡縮開口を外部と連通させ、その連通部分から被把持物を拡縮開口内へ入り込ませることができる。このように拡縮開口内へ被把持物を入り込ませるために可動部材を移動させる制御を実行するにあたり、前記拡縮開口の周縁部の一部分が開いているか否かを把握することは、被把持物を拡縮開口内へ確実に入り込ませる制御を実現するうえで、重要な情報である。また、拡縮開口内に把持している被把持物を拡縮開口外へ出すために可動部材を移動させる制御を実行するにあたっても、同様、被把持物を拡縮開口外へ確実に出す制御を実現するうえで、重要な情報である。
本発明によれば、開閉検知手段により、拡縮開口の周縁部の一部分が開いたか否かを検知できるため、適切な制御を実現することが容易になる。
【0017】
また、本発明は、前記把持装置において、前記複数の可動部材を移動させるときの移動負荷を検知する負荷検知手段と、前記開閉検知手段の検知結果と前記負荷検知手段の検知結果とに基づいて、前記複数の可動部材の移動を中断する制御を実行する中断制御手段とを有することを特徴とする。
拡縮開口の周縁部の一部分を開いて拡縮開口を外部と連通させ、その連通部分から被把持物を拡縮開口内へ入り込ませて把持する場合、被把持物が完全に拡縮開口内へ入り込んでいない状態で当該拡縮開口の周縁部の一部分を閉じてしまうと、当該一部分に被把持物を挟み込んでしまう。この場合、当該把持装置の可動部材やその他の構成部材、あるいは、被把持物が、損傷、破損するおそれがある。
本発明に係る把持装置によれば、例えば、開閉検知手段の検知結果から当該拡縮開口の周縁部の一部分が閉じていないと判断し、かつ、負荷検知手段の検知結果から複数の可動部材の移動負荷が閾値を超えると判断した場合には、当該一部分に被把持物を挟み込こんだものとして、複数の可動部材の移動を中断することができる。これにより、当該一部分に被把持物が挟み込こまれて、当該把持装置の可動部材やその他の構成部材、あるいは、被把持物が、損傷、破損するのを抑制することができる。
【0018】
また、本発明は、前記把持装置において、前記複数の可動部材のうちの少なくとも1つは、前記被把持物との当接を検知する当接検知手段を備えていることを特徴とする。
本発明に係る把持装置によれば、複数の可動部材を移動させて拡縮開口を縮小させるときに拡縮開口内の被把持物が可動部材に当接したか否かを判断できる。また、複数の可動部材を移動させて拡縮開口を拡大させるときに拡縮開口内の被把持物が可動部材から離間したか否かを判断することも可能である。これにより、これらの判断結果を利用した制御が可能となる。特に、前記当接検知手段が当接圧の大きさも検知できる構成であれば、所望の把持力で被把持物を把持する制御を実現することができる。
【0019】
また、本発明は、前記把持装置において、前記当接検知手段の検知結果に基づいて、前記複数の可動部材の移動パターンを切り替える制御を実行する移動パターン制御手段を有することを特徴とする。
本発明に係る把持装置によれば、複数の可動部材を移動させて拡縮開口を縮小させるとき、拡縮開口内の被把持物が可動部材に当接する前と当接した後とで当該複数の可動部材の移動パターンを切り替えることができる。例えば、当接する前までは、可動部材を予め決められた速度で移動させる移動パターンとし、当接した後は、速度を落とした移動パターンとしたり、適切な把持力で把持するように可動部材の移動位置を調整するように制御された移動パターンとしたりするように、移動パターンを切り替えることができる。
【0020】
また、本発明は、被把持物を把持する把持装置を備えたロボットアームであって、当該把持装置として、上述した把持装置を用いたことを特徴とする。
このロボットアームによれば、複数の可動部材により囲まれて形成される拡縮開口を縮小させ、周縁部が閉じられている拡縮開口で被把持物を把持できる一方、拡縮開口の周縁部の一部分を開いて、当該開いた部分から被把持物を拡縮開口内へ挿入でき、その挿入の際の位置合わせが簡単になる。
【0021】
また、本発明は、複数の可動部材が移動することで形成される拡縮開口を有する開口拡縮機構であって、前記複数の可動部材のうちの一部の可動部材は、前記拡縮開口が拡大している途中又は拡大した後に、前記拡縮開口の周縁部の一部分が開いて外部と連通するように移動することを特徴とする。
この開口拡縮機構は、複数の可動部材が移動することで、当該複数の可動部材によって形成される拡縮開口を拡縮できる一方で、拡縮開口が拡大している途中又は拡大した後に、拡縮開口を囲う複数の可動部材のうちの一部の可動部材を移動することで、拡縮開口の周縁部の一部分を開いて、拡縮開口を外部と連通させることができる。したがって、拡縮開口の周縁部が常に閉じられていることによる弊害を、解消することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、拡縮開口の周縁部が常に閉じられている構成による弊害、例えば把持装置において把持の際の位置合わせが複雑、煩雑となるという弊害を、解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態における部品組立システムの概要を示す説明図。
図2】部品組立システムにおけるロボットアームを斜め上方から見た外観斜視図。
図3】同ロボットアームのエンドエフェクタとして用いられるアイリスグリッパーの主要構成を示す斜視図。
図4】拡縮開口が開口し、かつ、拡縮開口の周縁部の一部分(切り欠き)が開いて外部と連通した状態であるアイリスグリッパーを示す上面図。
図5】拡縮開口が閉口した状態であるアイリスグリッパーを示す上面図。
図6】同アイリスグリッパーの下面図。
図7】同アイリスグリッパーを構成するベース部の構成を示す斜視図。
図8】同アイリスグリッパーを構成する下部ユニットの構成を示す斜視図。
図9】同下部ユニットの構成を示す上面図。
図10】同下部ユニットの構成を示す下面図。
図11】同アイリスグリッパーを構成する上部ユニットの構成を示す斜視図。
図12】同上部ユニットの構成を示す上面図。
図13】同上部ユニットの構成を示す下面図。
図14】同上部ユニットにおける上部上側ガイドディスク及び上側ディスクガイドを取り外した状態のアイリスグリッパーを示す上面図。
図15】同アイリスグリッパーの切り欠きが開いた状態から下部ユニット全体がY1方向へ回転移動した直後の状態を示す下面図。
図16図15に示す状態から下部ユニット全体が更にY1方向へ回転移動した状態を示す下面図。
図17図16に示す状態から下部ユニット全体が更にY1方向へ回転移動した状態を示す下面図。
図18図17に示す状態から下部ユニット全体が更にY1方向へ回転移動した状態を示す下面図。
図19図18に示す状態から下部ユニット全体が更にY1方向へ回転移動した状態を示す下面図。
図20図19に示す状態において、上部ユニット50の上部上側ガイドディスク51及び上側ディスクガイド53を取り除いたアイリスグリッパーの上面図。
図21図20に示す状態から、下部ユニットの下部上側駆動ディスク及び上部ユニットの上部下側駆動ディスクだけがY1方向へ回転移動し、可動ブレードが閉じ方向へ移動する状態を示す下面図。
図22図21に示す状態から更に、同下部上側駆動ディスク及び同上部下側駆動ディスクだけがY1方向へ回転移動し、可動ブレードが閉じ方向へ更に移動する状態を示す下面図。
図23図22に示す状態から更に、同下部上側駆動ディスク及び同上部下側駆動ディスクだけがY1方向へ回転移動し、可動ブレードが閉じ方向へ更に移動する状態を示す下面図。
図24図23に示す状態から更に、同下部上側駆動ディスク及び同上部下側駆動ディスクだけがY1方向へ回転移動し、可動ブレードが完全に閉じた状態を示す下面図。
図25】同アイリスグリッパーの開閉制御に関わるブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る把持装置を、ロボットアームのエンドエフェクタとして適用した一実施形態について説明する。
なお、本実施形態は、部品の組み立てを行う組み立て工場において、被把持物である部品が積載された運搬ケースから、ロボットアームを用いて部品をピックアップし、これを組み立てラインの部品搬送コンベア上の所定位置に配置する。ただし、本発明に係る把持装置について、このようなロボットアームに適用されるものは一例にすぎず、他のシステムに用いられるロボットアームに適用してもよいし、ロボットアーム以外の把持装置として用いられるものであってもよい。
【0025】
図1は、本実施形態における部品組立システムの概要を示す説明図である。
本実施形態の部品組立システム1は、部品取出位置2aに置かれた運搬ケース70内の部品をロボットアーム10により部品組立システムの搬送コンベア71上の所定位置に配置し、この搬送コンベア71で搬送された部品を後段の組み立て工程での組み立てに用いるものである。なお、空になった運搬ケース70は、ケース回収位置2bへ移される。
【0026】
図2は、ロボットアーム10を斜め上方から見た外観斜視図である。
ロボットアーム10は、土台部11、腕支持部12、腕部13、手部14、手先部15などを有している。土台部11は、架台にボルト止めで固定されるようになっている。
【0027】
腕支持部12は、土台部11の中心を通る鉛直軸を中心にして、図中矢印Aで示す方向に360[°]回転が可能なように土台部11に支持されている。また、腕部13は、上腕部13aと前腕部13bとを有している。上腕部13aの根本側端部は、水平方向に延在する第一軸13cを中心にして、図中矢印Bで示す方向に回転可能なように腕支持部12に支持されている。また、前腕部13bの根本側端部は、水平方向に延在する第二軸13dを中心にして、図中矢印Cで示す方向に回転可能なように上腕部13aの先端側端部に支持されている。
【0028】
手部14の根本側端部は、前腕部13bの長手方向に延びる中心軸線14aを中心にして、図中矢印Dで示す方向に回転可能なように前腕部13bの先端側端部に支持されている。また、手先部15は、水平方向に延在する第三軸15aを中心にして、図中矢印Eで示す方向に回転可能なように手部14の先端側端部に支持されている。手先部15には、様々な種類のエンドエフェクタを着脱することが可能であり、本実施形態では、後述のアイリスグリッパーが取り付けられる。
【0029】
図3は、ロボットアーム10のエンドエフェクタとして用いられるアイリスグリッパー20の主要構成を示す斜視図である。
図4は、把持用の拡縮開口が開口し、かつ、拡縮開口の周縁部の一部分が開いて外部と連通した状態(開状態)であるアイリスグリッパー20を示す上面図である。
図5は、把持用の拡縮開口が閉口した状態(閉状態)であるアイリスグリッパー20を示す上面図である。
図6は、アイリスグリッパー20の下面図である。
本実施形態のアイリスグリッパー20は、主に、ベース部30と、下部ユニット40と、上部ユニット50とから構成されている。アイリスグリッパー20は、ベース部30を介して手先部15に取り付けられる。
【0030】
本実施形態のアイリスグリッパー20は、複数の可動部材として、6枚の平板状の可動ブレード44A,44B,44C,54A,54B,54Cを備えている。本実施形態の可動ブレード44A,44B,44C,54A,54B,54Cすべての移動方向(各可動ブレードの平板面に平行な方向。図5の紙面に平行な方向。)に対して側方(図5の紙面の法線方向。以下「開口軸方向」という。)から見て、当該6枚の可動ブレードにより囲まれて形成される拡縮開口60が存在する。可動ブレードの形状は、同じものでも、異なるものでもよい。
【0031】
本実施形態のアイリスグリッパー20は、6枚の可動ブレードが3枚ずつ異なる支持部材である下部ユニット40及び上部ユニット50にそれぞれ支持されている。下部ユニット40に支持された3枚の可動ブレード44A,44B,44Cは、同一平面上で互いに隣接するように円弧状配置しており、隣り合う可動ブレード間の隣接面(可動ブレードの側面)同士を互いに相対移動させながら、3枚の可動ブレード44A,44B,44Cが、前記同一平面の面内で移動する。上部ユニット50に支持された3枚の可動ブレード54A,54B,54Cについても同様に、同一平面上で互いに隣接するように円弧状配置しており、隣り合う可動ブレード間の隣接面(可動ブレードの側面)同士を互いに相対移動させながら、3枚の可動ブレード54A,54B,54Cが、前記同一平面の面内で移動する。この点で、互いに重なり合うように配置される複数の可動部材で構成された一般的なアイリス機構(カメラの絞り等に適用されるアイリス機構)とは異なっている。
【0032】
これらの可動ブレード44A,44B,44C,54A,54B,54Cが連動して移動することにより、図4に示すように6枚の可動ブレードによって囲まれて形成される拡縮開口60が拡大した状態(開状態)と、図5に示すように当該拡縮開口60が縮小した状態(閉状態)とに切り替えることができる。しかも、本実施形態においては、後述するように、下部ユニット40に支持されている3枚の可動ブレード44A,44B,44Cが、拡縮開口60が拡大している途中又は拡大した後に、拡縮開口60の周縁部に沿うように移動することで、開口軸方向から見て拡縮開口60の周縁部の一部分(以下「切り欠き61」という。)が開いて外部と連通する。
【0033】
図7は、本実施形態のアイリスグリッパー20を構成するベース部30の構成を示す斜視図である。
ベース部30は、ベース基板31と、駆動手段としての駆動モータ32と、モータギヤ33と、第一ベースガイド34と、第二ベースガイド35と、ベースピンガイド孔36とを備えている。駆動モータ32は、正逆回転可能なもので、ベース基板31に固定されている。モータギヤ33は、駆動モータ32からの駆動力によって回転し、後述する下部ユニット40の駆動ギヤ43に噛み合って駆動力を伝達する。第一ベースガイド34は、後述する下部ユニット40の下部下側ガイドディスク41の回動時に、その内周側をガイドし、第二ベースガイド35は、下部下側ガイドディスク41の回動時に、その外周側をガイドする。ベースピンガイド孔36は、後述する下部ユニット40の下部ガイドピン46と係合し、下部下側ガイドディスク41の回動に連動して移動する下部ガイドピン46の移動をガイドする。
【0034】
図8は、下部ユニット40の構成を示す斜視図である。
図9は、下部ユニット40の構成を示す上面図である。
図10は、下部ユニット40の構成を示す下面図である。
下部ユニット40は、主に、下部下側ガイドディスク41と、下部上側駆動ディスク42と、駆動ギヤ43と、可動部材としての下部可動ブレード44A,44B,44Cと、滑り止め部材45A,45B,45Cと、下部下側ガイドディスク41の下面に設けられる下部ガイドピン46と、下部下側ガイドディスク41上に設けられる下部ガイド長孔47A~47Cと、駆動伝達ピン48とから構成されている。
【0035】
下部ユニット40において、下部下側ガイドディスク41及び下部上側駆動ディスク42は、上述したように同一平面上に円弧状配置された3枚の下部可動ブレード44A~44Cを、その平板面両側から挟み込むようにして配置される。下部ユニット40は、下部下側ガイドディスク41の下面に設けられる下部ガイドピン46がベース部30のベースピンガイド孔36に入り込むように、ベース部30上に取り付けられる。
【0036】
下部上側駆動ディスク42は、その周縁部に、駆動モータ32のモータギヤ33に噛み合う駆動ギヤ43が固定されており、駆動ギヤ43と一体的に、拡縮開口60の中心軸O回りで回転移動可能である。一方、下部下側ガイドディスク41も、当該下部下側ガイドディスク41の下面に設けられる下部ガイドピン46がベース部30のベースピンガイド孔36に沿って移動可能な範囲内で、拡縮開口60の中心軸O回りで回転移動可能である。下部下側ガイドディスク41と下部上側駆動ディスク42とは、お互いに相対的に回転移動が可能なように構成されている。
【0037】
下部下側ガイドディスク41には、図10に示すように、各下部可動ブレード44A~44Cの移動方向を規制する規制部としての下部ガイド長孔47A~47Cが形成されている。これらの下部ガイド長孔47A~47Cには、各下部可動ブレード44A~44Cのガイド突起44aが入り込む。これにより、各下部可動ブレード44A~44Cに移動力が付与されたとき、各下部可動ブレード44A~44Cは、それぞれのガイド突起44aが各下部ガイド長孔47A~47Cに沿って案内されて、所定の移動方向へ移動する。
【0038】
本実施形態では、下部ガイド長孔47A~47Cが直線状であり、ガイド突起44aが下部ガイド長孔47A~47Cに沿って長尺な形状であることから、下部下側ガイドディスク41の下部ガイド長孔47A~47Cに案内されて移動する下部可動ブレード44A~44Cは、それぞれ、下部ガイド長孔47A~47Cの長手方向へ平行移動することになる。
【0039】
一方、下部上側駆動ディスク42には、図8及び図9に示すように、各下部可動ブレード44A~44Cに移動力を伝達するための下部伝達長孔42A~42Cが形成されている。これらの下部伝達長孔42A~42Cには、各下部可動ブレード44A~44Cの被伝達突起44bが入り込む。これにより、駆動モータ32の駆動力によって下部上側駆動ディスク42が拡縮開口60の中心軸Oの回りで回転移動すると、下部上側駆動ディスク42の下部伝達長孔42A~42Cの内壁面に押され、各下部可動ブレード44A~44Cの被伝達突起44bに移動力が付与される。
【0040】
図11は、上部ユニット50の構成を示す斜視図である。
図12は、上部ユニット50の構成を示す上面図である。
図13は、上部ユニット50の構成を示す下面図である。
上部ユニット50は、主に、上部上側ガイドディスク51と、上部下側駆動ディスク52と、上部上側ガイドディスク51の周縁部に固定された上側ディスクガイド53と、可動部材としての上部可動ブレード54A,54B,54Cと、滑り止め部材55A,55B,55Cと、上部下側駆動ディスク52の周縁部に固定された下側ディスクガイド56と、上部上側ガイドディスク51上に設けられる上部ガイド長孔57A~57Cと、被駆動伝達溝58とから構成されている。被駆動伝達溝58は、図13に示すように、上部下側駆動ディスク52の周縁部に沿って拡縮開口60の中心軸Oを中心とする円弧状に下側ディスクガイド56に形成されている。
【0041】
図14は、アイリスグリッパー20の上部ユニット50における上部上側ガイドディスク51及び上側ディスクガイド53を取り外した状態を示す上面図である。
上部ユニット50において、上部上側ガイドディスク51及び上部下側駆動ディスク52は、上述した下部ユニット40と同様、同一平面上に円弧状配置された3枚の上部可動ブレード54A~54Cを、その平板面両側から挟み込むようにして配置される。上部ユニット50は、下部ユニット40の下部上側駆動ディスク42の上面に設けられる駆動伝達ピン48が、下側ディスクガイド56に形成された円弧状の被駆動伝達溝58に入り込むように、下部ユニット40上に取り付けられる。このとき、上側ディスクガイド53は、ベース部30のベース基板31に固定されるので、上側ディスクガイド53に固定される上部上側ガイドディスク51もベース基板31に対して固定される。上部下側駆動ディスク52は、上部上側ガイドディスク51(及びこれに固定される、上側ディスクガイド53)に対して相対的に回転移動が可能なように構成されている。
【0042】
上部上側ガイドディスク51には、図11及び図12に示すように、各上部可動ブレード54A~54Cの移動方向を規制する規制部としての上部ガイド長孔57A~57Cが形成されている。これらの上部ガイド長孔57A~57Cには、各上部可動ブレード54A~54Cのガイド突起54aが入り込む。これにより、各上部可動ブレード54A~54Cに移動力が付与されたとき、各上部可動ブレード54A~54Cは、それぞれのガイド突起54aが各上部ガイド長孔57A~57Cに沿って案内されて、所定の移動方向へ移動する。
【0043】
本実施形態では、上部ガイド長孔57A~57Cが直線状であり、ガイド突起54aが上部ガイド長孔57A~57Cに沿って長尺な形状であることから、上部上側ガイドディスク51の上部ガイド長孔57A~57Cに案内されて移動する上部可動ブレード54A~54Cは、それぞれ、上部ガイド長孔57A~57Cの長手方向へ平行移動することになる。このとき、各上部可動ブレード54A~54Cは、図14に示すように、その側方を、下側ディスクガイド56に設けられるガイド形状部56aによってガイドされながら、所定の移動方向へ移動する。
【0044】
一方、上部下側駆動ディスク52には、図13に示すように、各上部可動ブレード54A~54Cに移動力を伝達するための上部伝達長孔52A~52Cが形成されている。これらの上部伝達長孔52A~52Cには、各上部可動ブレード54A~54Cの被伝達突起54bが入り込む。これにより、駆動モータ32の駆動力が伝達されて上部下側駆動ディスク52が拡縮開口60の中心軸Oの回りで回転移動すると、上部下側駆動ディスク52の上部伝達長孔52A~52Cの内壁面に押され、各上部可動ブレード54A~54Cの被伝達突起54bに移動力が付与される。
【0045】
次に、本実施形態において、アイリスグリッパー20の切り欠き61が開いた状態から、切り欠き61を閉じてアイリスグリッパー20の拡縮開口60を閉状態にする閉じ方向Y1の動作について、図15図24を用いて説明する。
図15図19は、ベース部を2点鎖線で示したアイリスグリッパー20の下面図であり、図20図24は、上部ユニット50の上部上側ガイドディスク51及び上側ディスクガイド53を取り除いた状態のアイリスグリッパー20の上面図である。
なお、アイリスグリッパー20の拡縮開口60が閉じた状態から、拡縮開口60を開状態にして切り欠き61を開いた状態にする開き方向Y2の動作は、逆順の動作と同じであるため、説明を省略する。
【0046】
アイリスグリッパー20の切り欠き61が開いた状態において、駆動モータ32が閉じ方向Y1に対応する方向に駆動されると、モータギヤ33を介して、下部ユニット40の駆動ギヤ43に駆動力が伝達される。これにより、駆動ギヤ43が固定されている下部上側駆動ディスク42に、拡縮開口60の中心軸Oの回りでY1方向に回転移動するための移動力が付与される。その結果、下部上側駆動ディスク42は、図15図19に示すように、拡縮開口60の中心軸Oの回りでY1方向へ回転移動する。
【0047】
このような下部上側駆動ディスク42の回転移動により、下部上側駆動ディスク42の下部伝達長孔42A~42Cに係合する各下部可動ブレード44A~44Cの被伝達突起44bにもY1方向の移動力が付与されることになる。
【0048】
ここで、下部ユニット40の下部下側ガイドディスク41は、アイリスグリッパー20の切り欠き61が開いた状態において、当該下部下側ガイドディスク41の下面に設けられる下部ガイドピン46がベース部30のベース基板31に形成されたベースピンガイド孔36のY1方向上流端部に位置している。よって、下部下側ガイドディスク41は、下部ガイドピン46がベース基板31のベースピンガイド孔36にガイドされながら、拡縮開口60の中心軸Oの回りでY1方向へ回転移動可能な状態である。
【0049】
そのため、下部上側駆動ディスク42の回転移動により各下部可動ブレード44A~44CにY1方向の移動力が付与されると、各下部可動ブレード44A~44Cのガイド突起44aが係合する下部下側ガイドディスク41の下部ガイド長孔47A~47Cにも、Y1方向への移動力が付与される。その結果、下部下側ガイドディスク41は、下部ガイドピン46がベースピンガイド孔36に沿ってガイドされながら、下部上側駆動ディスク42及び下部可動ブレード44A~44Cと一緒に、拡縮開口60の中心軸O回りを、Y1方向へ回転移動する。すなわち、アイリスグリッパー20の切り欠き61が開いた状態において駆動モータ32が閉じ方向Y1に対応する方向に駆動されると、図15図19に示すように、下部ユニット40の全体がY1方向へ回転移動する。
【0050】
このとき、下部上側駆動ディスク42の上面に設けられる駆動伝達ピン48もY1方向へ回転移動することになる。この駆動伝達ピン48は、アイリスグリッパー20の切り欠き61が開いた状態において、上部ユニット50の下側ディスクガイド56に形成された円弧状の被駆動伝達溝58のY1方向上流端部に位置している。よって、アイリスグリッパー20の切り欠き61が開いた状態から下部ユニット40の全体がY1方向へ回転移動しても、駆動伝達ピン48から上部ユニット50への移動力の伝達は行われず、図15図19に示すように、上部ユニット50は停止したままで、回転移動はしない。
【0051】
このようにして、下部ユニット40の全体がY1方向へ回転移動し、図19に示すように、下部ガイドピン46がベースピンガイド孔36のY1方向下流端部に達すると、拡縮開口60の切り欠き61は、下部ユニット40によって塞がれて閉じた状態になる。このとき、下部上側駆動ディスク42の駆動伝達ピン48も、図20に示すように、上部ユニット50における被駆動伝達溝58のY1方向下流端部に達する。
【0052】
この状態から、更に、駆動モータ32が閉じ方向Y1に対応する方向に駆動されると、下部ユニット40では、下部上側駆動ディスク42が更に、図20図24に示すように、拡縮開口60の中心軸Oの回りでY1方向へ回転移動する。このとき、下部下側ガイドディスク41は、その下面に設けられる下部ガイドピン46がベース基板31のベースピンガイド孔36のY1方向下流端部によってY1方向への回転移動が止められている。そのため、下部下側ガイドディスク41は、Y1方向への回転移動が禁止され、下部下側ガイドディスク41が停止したまま下部上側駆動ディスク42だけがY1方向へ回転移動する。
【0053】
このように、下部上側駆動ディスク42がY1方向へ回転移動すると、下部上側駆動ディスク42の下部伝達長孔42A~42Cの内壁面に押されて、各下部可動ブレード44A~44Cの被伝達突起44bに移動力が付与される。このとき、各下部可動ブレード44A~44Cのガイド突起44aが係合する下部ガイド長孔47A~47Cを備えた下部下側ガイドディスク41は、上述したとおりY1方向への回転移動が禁止されている。そのため、下部上側駆動ディスク42の回転移動により各下部可動ブレード44A~44CにY1方向の移動力が付与されると、各下部可動ブレード44A~44Cは、それぞれのガイド突起44aが各下部ガイド長孔47A~47Cに沿って案内されて、図20図24に示すように、拡縮開口60を閉じる方向へ移動する。
【0054】
一方、上部ユニット50では、下部上側駆動ディスク42の上面に設けられる駆動伝達ピン48が、上部ユニット50の下側ディスクガイド56における被駆動伝達溝58のY1方向の下流端部に達している。そのため、下部ユニット40の下部上側駆動ディスク42が、図20図24に示すように、拡縮開口60の中心軸Oの回りでY1方向へ回転移動すると、駆動伝達ピン48が被駆動伝達溝58をY1方向へ押し、上部ユニット50の下側ディスクガイド56が拡縮開口60の中心軸Oの回りでY1方向へ回転移動し始める。これにより、上部下側駆動ディスク52の上部伝達長孔52A~52Cの内壁面に押されて、各上部可動ブレード54A~54Cの被伝達突起54bに移動力が付与される。
【0055】
このとき、各上部可動ブレード54A~54Cのガイド突起54aが係合する上部ガイド長孔57A~57Cを備えた上部上側ガイドディスク51は、ベース部30のベース基板31に固定されているため、Y1方向への回転移動が禁止されている。そのため、上部下側駆動ディスク52の回転移動により各上部可動ブレード54A~54CにY1方向の移動力が付与されると、各上部可動ブレード54A~54Cは、それぞれのガイド突起54aが各上部ガイド長孔57A~57Cに沿って案内されて、図20図24に示すように、拡縮開口60を閉じる方向へ移動する。
【0056】
本実施形態においては、アイリスグリッパー20の切り欠き61が開いた状態において、その切り欠き61から拡縮開口60の内部へと被把持物(部品)を挿入し、その後、駆動モータ32を閉じ方向Y1に対応する方向に駆動する。これにより、まず、下部ユニット40の全体がY1方向へ回転移動して切り欠き61を閉じる。その後、更に駆動モータ32を閉じ方向Y1に対応する方向に駆動すると、下部ユニット40の各下部可動ブレード44A~44C及び上部ユニット50の各上部可動ブレード54A~54Cは、それぞれの可動ブレード44A~44C,54A~54Cの頂点が拡縮開口60の中心軸Oに向けて進むように、平行移動する。これにより、開口軸方向から見て、6枚の可動ブレード44A~44C,54A~54Cによって囲まれて形成される拡縮開口60は、縮小していく。そして、拡縮開口60に被把持物(部品)が存在しない場合には、図24に示すように、開口軸方向から見て、拡縮開口60が完全に閉じた状態になる。
【0057】
本実施形態において、下部ユニット40の下部可動ブレード44A~44C同士、上部ユニット50の上部可動ブレード54A~54C同士は、それぞれ同一平面上で互いに隣接しているが、下部可動ブレード44A~44Cと上部可動ブレード54A~54Cとは開口軸方向にずれて配置されている。このような配置であっても、その拡縮開口60で被把持物(部品)を把持するのに問題はない。ただし、複数のアイリスグリッパー20を切り欠き61が互いに一致するように同軸上に配置し、当該複数のアイリスグリッパー20の拡縮開口60で被把持物(部品)を把持するようにすれば、より安定して被把持物を把持することが可能である。
【0058】
なお、ベース基板31、下部ユニット40及び上部ユニット50の各ディスク41,42,51,52は、拡縮開口60と対向する部分が貫通した形状となっている。これにより、被把持物を拡縮開口60で把持される際に、被把持物がベース基板31、下部ユニット40及び上部ユニット50の各ディスクに干渉しない。ベース基板31、下部ユニット40及び上部ユニット50の各ディスク41,42,51,52は、切り欠き61に対応する部分に空間が形成された形状となっている。これにより、切り欠き61から被把持物を拡縮開口60内へ挿入する際に、被把持物がベース基板31、下部ユニット40及び上部ユニット50の各ディスクに干渉しない。
【0059】
ロボットアーム10により運搬ケース70内の部品を把持する場合、切り欠き61が開いた状態のアイリスグリッパー20を、ロボットアーム10の各軸の回転を制御して、運搬ケース70内の部品を把持できる位置まで移動させる。仮に、切り欠き61がなく、拡縮開口60の周縁部が常に閉じられている把持装置であると、被把持物を把持する際、開状態の拡縮開口60に対して開口軸方向から被把持物を拡縮開口内へ挿入することが求められる。この場合、被把持物を拡縮開口60内に挿入するためには、拡縮開口60の開口軸方向に対して直交する2方向(2次元方向)について、被把持物に対して把持装置を、精度よく位置合わせする必要が生じる。これに対し、本実施形態のように、拡縮開口60に切り欠き61を有する構成であれば、被把持物を把持する際、その切り欠き61から被把持物を拡縮開口60内に挿入することができる。この場合、被把持物を拡縮開口60内に挿入するためには、被把持物の側面に対してアイリスグリッパー20の切り欠き61が対向するように位置合わせすればよく、拡縮開口60の開口軸方向に対して直交する1方向のみ、被把持物に対して把持装置を精度よく位置合わせすればよい。したがって、拡縮開口の周縁部が常に閉じられている構成よりも、把持の際の位置合わせが容易である。
【0060】
また、切り欠き61がなく拡縮開口60の周縁部が常に閉じられている把持装置では、開状態の拡縮開口60の寸法よりも最大寸法が大きな被把持物は、拡縮開口60内に挿入できないため、把持することはできない。これに対し、本実施形態のように、拡縮開口60に切り欠き61を有する構成であれば、開状態の拡縮開口60の寸法よりも最大寸法が大きな被把持物でも、その一部が拡縮開口60の寸法よりも小さい寸法であれば、その被把持物を把持することができる。
【0061】
また、本実施形態に係るアイリスグリッパー20によれば、縮小する拡縮開口60で把持される部品(被把持物)は、6枚の可動ブレード44A~44C,54A~54Cの滑り止め部材45A~45C,55A~55Cに当接することで拡縮開口60の中心軸Oに寄せられ、最終的には、部品の中心位置が拡縮開口60の中心軸Oに合わせられて把持される。したがって、アイリスグリッパー上での部品の把持位置にバラツキがなく、把持位置の精度が高い。よって、運搬ケース70からピックアップした部品を部品搬送コンベア71上に置く際、部品搬送コンベア71上の目標位置に当該部品を精度よく置くことができる。
【0062】
また、本実施形態に係るアイリスグリッパー20によれば、仮に、被把持物が、多数の線状物(ワイヤー等)あるいは棒状物であるような場合でも、6枚の可動ブレード44A~44C,54A~54Cの滑り止め部材45A,45B,45C,55A,55B,55Cが被把持物の側面に対して全方向から囲い込むことになる。よって、被把持物には逃げ場がなく、多数の線状物等の被把持物であっても、これを適切に把持することができる。
【0063】
また、本実施形態における6枚の可動ブレード44A~44C,54A~54Cは、各頂点が60°となる正三角形を基本形状とし、拡縮開口60の形成に寄与しない部分に係る2つの頂点を除去することで、図14等に示すように非三角形状となるように構成されている。これにより、各ディスク41,42,51,52と可動ブレード44A~44C,54A~54Cとの接触面積が低減して、拡縮開口60のスムーズな拡縮動作が実現されている。また、拡縮開口60を開いたときに可動ブレード44A~44C,54A~54Cの外方へ突出する部分が削減される結果、アイリスグリッパー20の小型化が実現できる。
【0064】
次に、アイリスグリッパー20の開閉制御について説明する。
図25は、アイリスグリッパー20の開閉制御に関わるブロック図である。
拡縮開口60を開閉するために可動ブレード44A~44C,54A~54Cに移動力を付与する駆動モータ32は、制御装置65によって駆動制御される。制御装置65は、上位制御部からの制御命令に従って拡縮開口60を開閉させるように駆動信号を駆動モータ32へ送る。駆動モータ32は、駆動信号に従って駆動し、可動ブレード44A~44C,54A~54Cに移動力を付与する。これにより、拡縮開口60が制御命令に従った開閉動作(切り欠き61の開閉動作を含む。)を行う。
【0065】
本実施形態の制御装置65は、駆動モータ32へ送る駆動信号から駆動モータ32の回転角を把握している。当該回転角は、可動ブレード44A~44C,54A~54Cの位置に対応しているため、制御装置65は、可動ブレード44A~44C,54A~54Cの位置を把握することができる。可動ブレード44A~44C,54A~54Cの位置によって、切り欠き61が開いているか否かを判別できるので、本実施形態の制御装置65は、切り欠き61が開いたか否かを検知する開閉検知手段として機能する。なお、開閉検知手段は、これに限らず、例えば、可動ブレード44A~44C,54A~54Cの位置を検知して、切り欠き61が開いたか否かを検知するような他の構成を採用してもよい。また、例えば、下部下側ガイドディスク41にフォトセンサを取り付け、上部下側駆動ディスク52が下部下側ガイドディスク41と重なる位置に到達したか否かを当該フォトセンサによって検知して、切り欠き61が開いたか否かを検知するような構成を採用してもよい。
【0066】
制御装置65は、駆動モータ32を制御して可動ブレード44A~44Cを移動させて開いた切り欠き61から被把持物を拡縮開口60内へ入り込ませる際、開閉検知手段としての機能によって、切り欠き61が開いていることを確認する。これにより、切り欠き61が開いていない状態で、被把持物を拡縮開口60内へ入り込ませるような不適切な動作が抑制され、被把持物を適切に拡縮開口60内へ入り込ませる制御が実現できる。
【0067】
同様に、制御装置65は、駆動モータ32を制御して可動ブレード44A~44Cを移動させて開いた切り欠き61から拡縮開口60内の被把持物を外部へ出す際、開閉検知手段としての機能によって、切り欠き61が開いていることを確認する。これにより、切り欠き61が開いていない状態で、被把持物を拡縮開口60外へ出そうとするような不適切な動作が抑制され、被把持物を適切に拡縮開口60外へ出す制御が実現できる。
【0068】
また、制御装置65は、駆動モータ32を制御して可動ブレード44A~44Cを移動させて、切り欠き61を閉じるとともに拡縮開口60を閉じる制御にあたり、例えば、規定時間を超えても、あるいは、駆動モータ32の回転角が規定角度を超えても、切り欠き61が閉じたことを検知しないときには、駆動モータ32を逆回転させて制御初期の状態に戻し、当該制御を最初からやり直すようにしてもよい。
【0069】
また、本実施形態の制御装置65は、駆動モータ32の出力トルクのフィードバックを受けることで、可動ブレード44A~44C,54A~54Cを移動させるときの移動負荷を検知する負荷検知手段として機能する。これにより、本実施形態の制御装置65は、可動ブレード44A~44C,54A~54Cの移動負荷が過大になったときに、可動ブレード44A~44C,54A~54Cの移動を中断する制御を実現することができる。
【0070】
特に、本実施形態の制御装置65は、中断制御手段として機能し、上述した開閉検知手段しての機能により切り欠き61が閉じていないと判断し、かつ、負荷検知手段としての機能により可動ブレード44A~44C,54A~54Cの移動負荷が閾値を超えると判断した場合、切り欠き61に被把持物を挟み込こんだものとして、可動ブレード44A~44C,54A~54Cの移動を中断する制御を実行する。これにより、切り欠き61に被把持物が挟み込こまれて、可動ブレード44A~44C,54A~54C、モータギヤ33、駆動モータ32あるいは被把持物が、損傷、破損するのを抑制することができる。
【0071】
また、本実施形態の制御装置65は、トルク制御手段として機能し、駆動モータ32の出力トルクのフィードバックを受けることで駆動信号を調整し、拡縮開口60内で被把持物(部品)を把持する把持力(当接圧)をフィードバック制御する。これにより、制御命令に従った所望の把持力を安定して得ることができる。
【0072】
また、本実施形態において、被把持物(部品)に当接する各可動ブレード44A~44C,54A~54Cの滑り止め部材45A~45C,55A~55Cには、被把持物(部品)の当接を検知するための情報取得手段としての当接検知手段である圧力センサ62A~62Fが設けられている。圧力センサ62A~62Fで検知された当接圧の情報は、制御装置65へ送られる。本実施形態の制御装置65は、当接制御手段として機能し、圧力センサ62A~62Fからの当接圧の情報に応じて駆動信号を調整し、拡縮開口60内で被把持物(部品)を把持する把持力を直接的にフィードバック制御する。これにより、制御命令に従った所望の把持力を安定して得ることができる。例えば、被把持物を把持する際、圧力センサ62A~62Fで検知された当接圧が目標当接圧で一定になるように駆動信号を調整する制御を行うことで、適切な一定の把持力で被把持物を把持することが可能となる。
【0073】
また、本実施形態の制御装置65は、移動パターン制御手段として機能する。詳しくは、可動ブレード44A~44C,54A~54Cを移動させて拡縮開口60を縮小させる際、まず、可動ブレードを予め決められた速度で移動させる移動パターンで、可動ブレードの移動を制御する。その後、制御装置65は、圧力センサ62A~62Fからの当接圧の情報に応じて、拡縮開口60内の被把持物が可動ブレードの滑り止め部材45A~45C,55A~55Cに当接したか否かを判断する。そして、当接したと判断したら、可動ブレードの移動パターンを別の移動パターンに切り替える。具体的には、駆動モータ32の出力トルクのフィードバックを受けて駆動信号を調整し、拡縮開口60内で被把持物を把持する把持力が所望の把持力となるようにフィードバック制御する移動パターンに切り替える。
【0074】
また、本実施形態においては、圧力センサ62A~62F以外でも、可動ブレード44A~44C,54A~54Cや被把持物(部品)の情報を取得する種々の情報取得手段を、可動ブレード44A~44C,54A~54C上に設置してもよい。本実施形態では、情報取得手段の一例として、図25に示すように、被把持物(部品)に当接する各可動ブレード44A~44C,54A~54Cの滑り止め部材45A~45C,55A~55Cに、温度センサ63A~63Fを設けている。本実施形態の制御装置65は、温度センサ63A~63Fからの温度の情報を受けると、これを上位制御部へ送信する。これにより、上位制御部では、拡縮開口60内に把持される被把持物(部品)の温度を把握することが可能となる。
【0075】
また、情報取得手段の他の例として、例えば、可動ブレード44A~44C,54A~54Cの上面や下面に設置され、拡縮開口60内に把持される被把持物(部品)を撮像する撮像センサ(撮像手段)が挙げられる。これにより、撮像画像から被把持物(部品)の物体認識を行うことが可能となる。
【0076】
なお、本実施形態では、本発明をロボットアームの把持装置等に適用した例であるが、これに限られるものではなく、複数の可動部材が移動することで当該複数の可動部材により囲まれて形成される拡縮開口が拡縮する開口拡縮機構を利用する装置であれば、あらゆる装置に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 :部品組立システム
10 :ロボットアーム
20 :アイリスグリッパー
30 :ベース部
31 :ベース基板
32 :駆動モータ
33 :モータギヤ
34 :第一ベースガイド
35 :第二ベースガイド
36 :ベースピンガイド孔
40 :下部ユニット
41 :下部下側ガイドディスク
42 :下部上側駆動ディスク
42A~42C:下部伝達長孔
43 :駆動ギヤ
44A~44C:下部可動ブレード
44a :ガイド突起
44b :被伝達突起
45A~45C:滑り止め部材
46 :下部ガイドピン
47A~47C:下部ガイド長孔
48 :駆動伝達ピン
50 :上部ユニット
51 :上部上側ガイドディスク
52 :上部下側駆動ディスク
52A~52C:上部伝達長孔
53 :上側ディスクガイド
54A~54C:上部可動ブレード
54a :ガイド突起
54b :被伝達突起
55A~55C:滑り止め部材
56 :下側ディスクガイド
56a :ガイド形状部
57A~57C:上部ガイド長孔
58 :被駆動伝達溝
60 :拡縮開口
61 :切り欠き
62A~62F:圧力センサ
63A~63F:温度センサ
65 :制御装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0078】
【文献】特開2017-132032号公報
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