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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-03
(45)【発行日】2022-10-12
(54)【発明の名称】解体工法及び防護部材
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/08 20060101AFI20221004BHJP
【FI】
E04G23/08 Z
E04G23/08 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018237844
(22)【出願日】2018-12-20
(65)【公開番号】P2020100946
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】518452560
【氏名又は名称】小倉商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】小倉 清和
(72)【発明者】
【氏名】安田 柾義
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-173026(JP,A)
【文献】特開平06-073751(JP,A)
【文献】特開2013-256820(JP,A)
【文献】特開平08-284438(JP,A)
【文献】特開2009-293230(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1794024(KR,B1)
【文献】欧州特許出願公開第01967655(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/08
E02F 9/24
E04G 21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数台の自走式の建設機械で建造物を解体する解体工法であって、
前記建設機械は、施工内容に応じたアタッチメントをアームの先端に脱着可能に装着でき、
複数台の前記建設機械のうち少なくとも1台を相番機とし、
前記相番機は、挟み込んで把持する把持装置を前記アタッチメントとして、前記アームの先端に装着するとともに、
前記把持装置で把持できる被把持部を有する防護部材を把持して装着し、
前記防護部材は、
破砕された破砕片の飛散を防止する、底部が開放された錐台状の防護本体部と、
錐台状の前記防護本体部の頂部に設けられた前記被把持部とで構成され、
解体部分の周囲に、前記相番機が前記防護部材を配置した状態で、
他の前記建設機械の前記アタッチメントとして装着した破砕装置で前記解体部分を破砕する
解体工法。
【請求項2】
少なくとも前記相番機の前記把持装置は、挟み込み方向に交差する方向を軸として回転可能な回転式把持装置である
請求項1に記載の解体工法。
【請求項3】
前記被把持部は、
前記把持装置で把持する被把持部本体と、
前記防護本体部の頂部から所定の間隔を隔てて前記被把持部本体を支持する支持部とで構成された
請求項1又は2に記載の解体工法。
【請求項4】
前記防護本体部は、多角錐台形状である
請求項1乃至3のうちいずれかに記載の解体工法。
【請求項5】
前記防護本体部に、反対側が目視できる透過部が備えられた
請求項1乃至4のうちいずれかに記載の解体工法。
【請求項6】
建造物を解体する建設機械のアームの先端にアタッチメントとして装着され、前記建造物における解体部分を挟み込んで把持する把持装置で把持できる被把持部と、
破砕された破砕片の飛散を防止する、底部が開放された錐台状の防護本体部とで構成され、
前記被把持部が、錐台状の前記防護本体部の頂部に設けられた
防護部材。
【請求項7】
前記被把持部は、
前記把持装置で把持する被把持部本体と、
前記防護本体部の頂部から所定の間隔を隔てて前記被把持部本体を支持する支持部とで構成された
請求項に記載の防護部材。
【請求項8】
前記防護本体部は、多角錐台形状である
請求項又はに記載の防護部材。
【請求項9】
前記防護本体部を、分解可能に構成した
請求項乃至のうちいずれかに記載の防護部材。
【請求項10】
前記防護本体部に、反対側が目視できる透過部が備えられた
請求項乃至のうちいずれかに記載の防護部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
例えば、SRC造などの建造物を自走式の建設機械で解体する解体工法及び解体工法に用いる防護部材に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今では、耐用年数が経過した建造物がたくさんあり、これらを例えば建て替えるためには、解体する必要がある。このような建造物を解体するには、解体部分を挟み込んで破砕するクラッシャ、先端のチゼルで打撃するブレーカなどの破砕装置をアームの先端に装着したバックホーなどの建設機械を用いる。
【0003】
しかしながら、例えば、クラッシャは解体部分を挟み込んで破砕する、つまり圧壊するため、周囲に破砕片が不用意に飛散することがあった。同様に、ブレーカの先端のチゼルは解体部分を打撃するため、周囲に破片が不用意に飛散することがあった。特に、SRC造における鉄骨をハイテンションボルトで連結した連結部を破砕すると、締結状態で軸力が作用しているハイテンションボルトは破砕の衝撃で破断し、勢いよく飛んでいき、周辺を損傷するおそれがあった。しかしながら、ハイテンションボルトで連結した連結部は、コンクリートに内在しているため、連結部の位置を避けて破砕することは困難であった。
【0004】
このような課題に対し、特許文献1では、建造物を解体するアタッチメントの近傍で建造物の解体部分を養生する養生ネットを、建設機械のアームの先端部に設けることにより解体部分の飛散を防止できることについて開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の飛散防止装置は、養生ネットを建設機械のアームの先端部に設けられているため、アタッチメントに対してアーム側への解体部分の飛散は防止できるものの、アタッチメントの側方や上下方向への解体部分の飛散を防止することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-048473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、この発明は、解体部分を破砕する際に生じる破砕片の飛散を防止できる解体工法及び防護部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、複数台の自走式の建設機械で建造物を解体する解体工法であって、前記建設機械は、施工内容に応じたアタッチメントをアームの先端に脱着可能に装着でき、複数台の前記建設機械のうち少なくとも1台を相番機とし、前記相番機は、挟み込んで把持する把持装置を前記アタッチメントとして、前記アームの先端に装着するとともに、前記把持装置で把持できる被把持部を有する防護部材を把持して装着し、前記防護部材は、破砕された破砕片の飛散を防止する、底部が開放された錐台状の防護本体部と、錐台状の前記防護本体部の頂部に設けられた前記被把持部とで構成され、解体部分の周囲に、前記相番機が前記防護部材を配置した状態で、他の前記建設機械の前記アタッチメントとして装着した破砕装置で前記解体部分を破砕することを特徴とする。
【0009】
上述の自走式の建設機械は、解体用のバックホーなどのクローラやタイヤで走行可能な重機である。
上記建造物は、SRC造、鉄筋コンクリート構造物、あるいは鉄骨構造物など破砕装置で破砕可能な構造であればいずれの構造の建造物であってもよい。
【0010】
上記把持装置は、解体部分を挟み込んで把持するフォークとも呼ばれる。
上記破砕装置は、大割機やクラッシャなど解体部分を挟み込んで破砕する装置や、先端のチゼルで打撃して破砕するブレーカなどの装置であってもよい。
【0011】
この発明により、解体部分を破砕する際に生じる破砕片の飛散を防止することができる。
詳述すると、複数台の自走式の建設機械で建造物を解体する解体工法において、相番機のアームの先端に装着した把持装置で防護部材の被把持部を把持することで、相番機のアームの先端に、把持装置を介して防護部材を装着することができる。
【0012】
このように、相番機のアームの先端に防護部材を装着しているため、解体部分の周囲に、相番機のアームの先端に装着した防護部材を配置してから、他の建設機械のアームの先端に装着した破砕装置で解体部分を破砕することで、破砕された解体部分の破砕片が飛散しても防護部材に当たって、破砕片の周囲への予期しない飛散を防止することができる。
【0013】
また、相番機のアームの先端に装着した把持装置で把持して防護部材を装着しているため、相番作業が不要である場合は、把持装置の把持を解放して防護部材を外すと、把持装置で、解体された解体部分を積み込んだり、集積したりするなどの作業をおこなうことができ、効率的に建設機械を稼働させて解体作業の工程短縮を図ることができる。
【0014】
また前記防護部材は、破砕された破砕片の飛散を防止する、底部が開放された錐台状の防護本体部と、錐台状の前記防護本体部の頂部に設けられた前記被把持部とで構成されているため、相番機のオペレータが、解体部分を見ながら防護部材で防護することができる。
【0015】
詳述すると、錐台状の防護本体部、つまりラッパ状の防護本体部を有する防護部材をアームの先端に取付けた相番機のオペレータは、解体部分の周辺に防護部材を配置する必要があるが、防護本体部が筒状であると、オペレータから解体部分が見にくく、解体部分に対して適切な位置に防護部材を配置しがたいが、防護本体部がラッパ状であるため、筒状の防護本体部に比べて視野を拡大でき、解体部分に対して適切な位置に防護部材を配置することができる。
【0016】
この発明の態様として、少なくとも前記相番機の前記破砕装置は、挟み込み方向に交差する方向を軸として回転可能な回転式把持装置であってもよい。
この発明により、把持装置で把持した防護部材を、解体部分に対して様々な向きで配置することができる。そのため、いずれの場所や、周囲の環境によらずとも、様々な向きで防護部材を配置して、様々な向きや態様で飛散する破砕片を防護することができる。
【0017】
またこの発明の態様として、前記被把持部は、前記破砕装置で把持する被把持部本体と、前記防護本体部の頂部から所定の間隔を隔てて前記被把持部本体を支持する支持部とで構成されてもよい。
【0018】
この発明により、把持装置で被把持部を様々な向きで把持でき、様々な向きで被把持部を把持することで、解体部分に対して様々な向きで防護部材を配置できる。そのため、いずれの場所や、周囲の環境によらずとも、様々な向きで防護部材を配置して、様々な向きや態様で飛散する破砕片をより防護することができる。
【0019】
またこの発明の態様として、前記防護本体部は、多角錐台形状であってもよい。
この発明により、例えば円錐台状の防護本体部に比べて、容易に形成することができ、材料コストや加工コストを低減することができる。
【0020】
またこの発明の態様として、前記防護本体部に、反対側が目視できる透過部が備えられてもよい。
この発明により、防護する解体部分周辺の視野をさらに広げることができ、解体部分に対してより適切に防護部材を配置することができる。
なお、上記透過部は、高耐衝撃性、高耐久かつ高強度で透明な樹脂製の透過部や、パンチングメタルなどの透過性を有する金属性の透過部であってもよい。
【0021】
またこの発明の態様として、前記防護本体部を、分解可能に構成してもよい。
この発明により、防護部材を使用しない場合や運搬時に分解してコンパクトにすることができる。
【0022】
またこの発明は、建造物を解体する建設機械のアームの先端にアタッチメントとして装着され、前記建造物における解体部分を挟み込んで把持する把持装置で把持できる被把持部と、破砕された破砕片の飛散を防止する、底部が開放された錐台状の防護本体部とで構成され、前記被把持部が、錐台状の前記防護本体部の頂部に設けられた防護部材であることを特徴とする。
【0023】
この発明により、解体部分を破砕する際に生じる破砕片の飛散を防止することができる。
詳述すると、複数台の自走式の建設機械で建造物を解体する解体工法において、相番機のアームの先端に装着した把持装置で防護部材の被把持部を把持することで、相番機のアームの先端に、把持装置を介して装着した防護部材で、他の建設機械のアームの先端に装着した破砕装置で解体部分を破砕しながら解体する際に、破砕された解体部分の破砕片が飛散しても、破砕片の周囲への予期しない飛散を防止することができる。
【0024】
また、相番機のオペレータが、解体部分を見ながら防護部材で防護することができる。
詳述すると、錐台状の防護本体部、つまりラッパ状の防護本体部を有する防護部材をアームの先端に取付けた相番機のオペレータは、解体部分の周辺に防護部材を配置する必要があるが、防護本体部が筒状であると、オペレータから解体部分が見にくく、解体部分に対して適切な位置に防護部材を配置しがたいが、防護本体部がラッパ状であるため、筒状の防護本体部に比べて視野を拡大でき、解体部分に対して適切な位置に防護部材を配置することができる。
【発明の効果】
【0025】
この発明によれば、解体部分を破砕する際に生じる破砕片の飛散を防止できる解体工法及び防護部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】防護部材の斜視図による説明図。
図2】防護部材の分解斜視図。
図3】回転式フォークによる防護部材の把持方法についての説明図。
図4】解体状況の概略図。
図5】解体状況の概略図。
図6】解体状況の概略図。
図7】別の実施形態の防護部材の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下において、破砕機で解体部分を破砕した際に生じる破砕片の飛散を防止する防護部材1及び防護部材1を用いた解体工法について、図1乃至図6とともに説明する。
なお、図1は防護部材1の斜視図による説明図を示し、詳述すると、図1(a)は防護部材1の斜視図を示し、図1(b)は防護部材1の縦断面斜視図を示している。なお、図1(b)において防護部材1の手前側を破線で図示している。
【0028】
図2は防護部材1の分解斜視図を示し、図3は回転式フォーク40による防護部材1の把持方法についての説明図を示している。
詳しくは、図3(a)はアーム33に対して曲げた回転式フォーク40で奥行き方向手前側Lfからハンドル20を把持した装着状態(第1装着パターン)の概略拡大図を示し、図3(b)はアーム33に対して曲げた回転式フォーク40で上側からハンドル20を把持した装着状態(第2装着パターン)の概略拡大図を示し、図3(c)はアーム33に対して伸ばした回転式フォーク40で奥行き方向奥側Lbからハンドル20を把持した装着状態(第3装着パターン)の概略拡大図を示している。
【0029】
図4乃至図6は解体状況の概略図を示している。詳しくは、図4は第1装着パターンで防護部材1を装着した相番機Xで防護した状態で解体機Yが解体する状況の概略図であり、図5は第2装着パターンで防護部材1を装着した相番機Xで防護した状態で解体機Yが解体する状況の概略図であり、図6は第3装着パターンで防護部材1を装着した相番機Xで防護した状態で解体機Yが解体する状況の概略図を示している。
なお、図1図2及び図7において、防護部材本体10を構成する傾斜板11や上面板12の板厚の図示を省略している。
【0030】
本発明の防護部材1は、図1(a)に図示するように、解体機Yが解体部分Zを解体する際に、解体部分Zの破砕片(図示省略)が飛散することを防止するために、相番機Xに装着するアタッチメント部材であり、八角錐台状の防護部材本体10と、防護部材本体10の上面に設けたハンドル20とで構成している。
【0031】
防護部材本体10は、鋼製の板材でそれぞれが構成された、8枚の傾斜板11と、上面板12とを組み付けて構成した底面が開放された八角錐台状であり、上面板12にハンドル20を設けている(図1(b)参照)。
【0032】
8枚の傾斜板11はそれぞれ、同じ等脚台形であり、上辺と左右の斜辺に取付けリブ13を備えている。
このように構成された傾斜板11は、周方向に隣り合う傾斜板11の斜辺に備えた取付けリブ13同士を対向させるとともに、図示省略するボルトで接合して組み付けている。
【0033】
また、上面板12は、上面にハンドル20を設けた平面視正八角形状の鋼製板材であり、その周縁部に、上述のように構成された傾斜板11の上辺の取付けリブ13を図示省略するボルトで接合して、傾斜板11と上面板12とを組み付けて防護部材1を構成している。そのため、防護部材1は、図3に示すように、8枚の傾斜板11と上面板12とに9分割することができる。
【0034】
上面板12に設けたハンドル20は、図3に図示するように、相番機Xに装着した回転式フォーク40で把持する被把持部であり、所定間隔を隔てて上面板12に対して垂直方向に植設された2枚の支持プレート21と、支持プレート21同士の間を跨ぐハンドル本体22とで構成している。
【0035】
仮に、図1に示すように、図1における左上と右下を結ぶ方向を幅方向W、左下と右上を結ぶ方向を奥行き方向Lとするとともに、奥行き方向Lの手前側を奥行き方向手前側Lfとし、奥側を奥行き方向奥側Lbとした場合、上面板12上において幅方向Wに所定間隔を隔てて奥行き方向Lに沿うように配置した支持プレート21は、奥行き方向奥側Lbより奥行き方向手前側Lfが低くなる上辺211が傾斜した台形状の鋼製の板材である。また、ハンドル20は、上面板12において、奥行き方向Lの中央より奥行き方向奥側Lbに配置している。
【0036】
幅方向Wに所定間隔を隔てて配置した支持プレート21同士の間を跨ぐハンドル本体22は、図1(b)に示すように、高さ方向に所定間隔を隔てて配置されたフランジ221の間を高さ方向に2枚のウェブ222で連結して閉鎖断面を構成している。このように構成されたハンドル本体22は、例えば、2本のH型綱を並べてフランジ同士を連結して一体化することで構成することができる。
【0037】
なお、このように構成されたハンドル本体22は、支持プレート21の上辺211の傾斜方向にフランジ221が沿うように傾斜させて支持プレート21に固定している。
このとき、ハンドル本体22は、上面板12の上面から、離間させて固定している。
【0038】
詳述すると、ハンドル本体22は、図3(a),(c)に図示するように、ハンドル本体22の下側のフランジ221と、上面板12との間に、回転式フォーク40の把持爪43が挿入可能な空間を形成している。
【0039】
そのため、図3に示すように、相番機Xに装着した回転式フォーク40で様々な向きで防護部材1を把持することができる。
具体的には、図3(a)に図示するように、アーム33に対して曲げた回転式フォーク40の一方の把持爪43を奥行き方向手前側Lf(支持プレート21の上辺211が低い側)からフランジ221と上面板12との間に挿入し、2本の把持爪43でハンドル本体22を把持して装着することができる(第1装着パターン)。
【0040】
このとき、奥行き方向手前側Lf(支持プレート21の上辺211が低い側)のハンドル本体22と上面板12との間隔は狭いものの、上述したように、ハンドル20は上面板12の奥行き方向Lの中央より奥行き方向奥側Lbに配置しているため、回転式フォーク40の主要部分は、防護部材本体10の底面側、すなわち解体作業時の解体部分Zに対して上面板12の裏側に配置することができる。
【0041】
別の装着パターンとして、図3(b)に図示するように、アーム33に対して曲げた回転式フォーク40の両把持爪43でハンドル20の上方からハンドル本体22を把持して装着することができる(第2装着パターン)。
【0042】
また、図3(c)に図示するように、アーム33に対して伸ばした回転式フォーク40の一方の把持爪43を奥行き方向奥側Lb(支持プレート21の上辺211が高い側)からフランジ221と上面板12との間に挿入し、2本の把持爪43でハンドル本体22を把持して装着することができる(第3装着パターン)。
【0043】
このとき、奥行き方向奥側Lb(支持プレート21の上辺211が高い側)のハンドル本体22と上面板12との間隔は広いため、ハンドル本体22と上面板12との間に一方の把持爪43を挿入して、2本の把持爪43でハンドル本体22を把持して装着することができる。
【0044】
なお、上述のように、上面板12において奥行き方向Lの中央より奥行き方向奥側Lbにハンドル20が配置され、上面板12に対してハンドル本体22が傾斜することで、図3(a)及び図3(c)に示すように、奥行き方向Lに沿う方向の回転式フォーク40でハンドル20を把持した2つの装着パターン(第1装着パターンと第3装着パターン)であっても、回転式フォーク40に対する防護部材本体10の装着角度を変えることができる。
【0045】
このように構成した防護部材1を相番機Xに装着して解体部分Zを解体する解体工法について以下で説明する。
なお、本実施形態では、図4乃至図6に示すように、SRC造の建造物を解体する場合について説明するが、鉄筋コンクリート構造物、あるいは鉄骨構造物など破砕装置で破砕可能な構造であればいずれの構造の建造物であってもよい。
【0046】
まず、本発明の解体工法で使用する相番機X及び解体機Yについて説明する。
相番機X及び解体機Yは、図4乃至図6に示すように、いわゆる解体用のバックホーである建設機械30を用いている。建設機械30は、自走するためのクローラ32を備えた本体31に対して可動するアーム33が備えられ、アーム33の先端には用途に応じたアタッチメントを装着可能に構成されている。
【0047】
このような建設機械30を用いた相番機Xは、アーム33の先端に回転式フォーク40を装着している。
相番機Xのアーム33の先端に装着する回転式フォーク40は、把持対象物を把持して、集積したり、積み込みする際に用いるアタッチメントであり、アーム33に対して装着する装着部41と、図示省略する回転機構によって装着部41に対して回転可能に装着された把持装置本体42と、把持装置本体42に対して開閉可能に装着された2本の把持爪43とで構成している。
【0048】
このように構成された回転式フォーク40は、建設機械30のオペレータの操作によって、アーム33に対して折り曲げたり伸ばしたりでき、さらには、装着部41に対して把持装置本体42及び把持爪43を回転式フォーク40の長手方向(図3(a)において上下方向)の軸を中心に回転させたり、図示省略する駆動機構によって2本の把持爪43を開閉可能に構成している。
【0049】
また、このような建設機械30を用いた解体機Yは、アーム33の先端にクラッシャ50を装着している。
解体機Yのアーム33の先端に装着するクラッシャ50は、解体部分Zを破砕するためアタッチメントであり、アーム33に対して装着する装着部51と、図示省略する回転機構によって装着部51に対して回転可能に装着された装置本体52と、装置本体52に対して開閉可能に装着された2本の破砕爪53とで構成している。
【0050】
このように構成されたクラッシャ50は、建設機械30のオペレータの操作によって、アーム33に対して折り曲げたり伸ばしたりでき、さらには、装着部51に対して装置本体52及び破砕爪53をクラッシャ50の長手方向(図3(a)において上下方向)の軸を中心に回転させたり、図示省略する駆動機構によって2本の破砕爪53を開閉可能に構成している。
【0051】
このように構成された相番機X及び解体機Yを用いて解体部分Zを解体するためには、まず、相番機Xの回転式フォーク40でハンドル20を把持して防護部材1を装着する。
そして、SRC造の建造物の一部である解体部分Zに対して、相番機Xのアーム33を操作したり、アーム33に対する回転式フォーク40の向きを調整したり、装着部41に対して把持装置本体42を回転させて、防護部材1を適切な位置に配置したうえで、解体機Yのクラッシャ50で解体部分Zを破砕して解体する。
【0052】
このとき、解体部分Zの位置や、解体部分Zの周辺の状況、あるいは解体部分Zに対する解体機Yのクラッシャ50の向きなどの状況に応じて、例えば、第1装着パターンで防護部材1を装着したり(図4参照)、第2装着パターンで防護部材1を装着したり(図5参照)、第3装着パターンで防護部材1を装着したりして(図6参照)、解体部分Zに対してより適切な位置に配置できる装着パターンで装着した防護部材1を解体部分Zに対して配置する。
【0053】
上述したように、各種機能を備えたアタッチメントをアーム33の先端に装着できる自走式の建設機械30で建造物を解体するために、複数台の建設機械30のうち少なくとも1台を、挟み込んで把持する回転式フォーク40をアタッチメントとして、アーム33の先端に装着する相番機Xとし、相番機Xは、回転式フォーク40で把持できるハンドル20を有する防護部材1を把持して装着し、破砕する解体部分Zの周囲に防護部材1を配置した状態で、解体機Yのアタッチメントとして装着したクラッシャ50で解体部分Zを破砕するため、解体部分Zを破砕する際に生じる破砕片の飛散を防止することができる。
【0054】
詳述すると、複数台の自走式の建設機械30で建造物を解体する解体工法において、相番機Xのアーム33の先端に装着した回転式フォーク40で防護部材1のハンドル20を把持することで、相番機Xのアーム33の先端に、回転式フォーク40を介して防護部材1を装着することができる。
【0055】
このように、相番機Xのアーム33の先端に防護部材1を装着しているため、解体部分Zの周囲に、相番機Xのアーム33の先端に装着した防護部材1を配置してから、解体機Yのアーム33の先端に装着したクラッシャ50で解体部分Zを破砕することで、破砕された解体部分Zの破砕片が飛散しても防護部材1に当たって、破砕片の周囲への予期しない飛散を防止することができる。
【0056】
また、相番機Xのアーム33の先端に装着した回転式フォーク40で把持して防護部材1を装着しているため、相番作業が不要である場合は、回転式フォーク40の把持を解放して防護部材1を外すと、回転式フォーク40で、解体された解体部分Zを積み込んだり、集積したりするなどの作業をおこなうことができ、効率的に建設機械30を稼働させて解体作業の工程短縮を図ることができる。
【0057】
また、少なくとも相番機Xの回転式フォーク40は、挟み込み方向に交差する方向を軸として回転可能に構成しているため、回転式フォーク40で把持した防護部材1を、解体部分Zに対して様々な向きで配置することができる。そのため、いずれの場所や、周囲の環境によらずとも、様々な向きで防護部材1を配置して、様々な向きや態様で飛散する破砕片をより防護することができる。
【0058】
また、防護部材1は、破砕された破砕片の飛散を防止する、底部が開放された錐台状の防護部材本体10と、錐台状の防護部材本体10の上面板12に設けられたハンドル20とで構成されているため、相番機Xのオペレータが解体部分Zを見ながら防護部材1で防護することができる。
【0059】
詳述すると、錐台状の防護部材本体10、つまりラッパ状の防護部材本体10を有する防護部材1をアーム33の先端に取付けた相番機Xのオペレータは、解体部分Zの周辺に防護部材1を配置する必要があるが、筒状である防護部材本体はオペレータから解体部分Zが見にくく、解体部分Zに対して適切な位置に防護部材1を配置しがたいが、防護部材本体10がラッパ状であるため、筒状の防護部材本体に比べて視野を拡大でき、解体部分Zに対して適切な位置に防護部材1を配置することができる。
【0060】
また、ハンドル20は、回転式フォーク40で把持するハンドル本体22と、防護部材本体10の上面板12から所定の間隔を隔ててハンドル本体22を支持する支持プレート21とで構成されているため、回転式フォーク40でハンドル20を様々な向きで把持でき、様々な向きでハンドル20を把持することで、解体部分Zに対して様々な向きで防護部材1を配置できる。そのため、いずれの場所や、周囲の環境によらずとも、様々な向きで防護部材1を配置して、様々な向きや態様で飛散する破砕片をより防護することができる。
【0061】
また、防護部材本体10は、多角錐台形状であるため、例えば円錐台状の防護部材本体10に比べて、容易に形成することができ、材料コストや加工コストを低減することができる。
また、防護部材本体10を、分解可能に構成しているため、防護部材1を使用しない場合や運搬時に分解してコンパクトにすることができる。
【0062】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、この発明の建設機械は建設機械30に対応し、
以下同様に、
アームはアーム33に対応し、
相番機は相番機Xに対応し、
把持装置は回転式フォーク40に対応し、
被把持部はハンドル20に対応し、
防護部材は防護部材1に対応し、
解体部分は解体部分Zに対応し、
他の建設機械は解体機Yに対応し、
破砕装置はクラッシャ50に対応し、
回転式把持装置は回転式フォーク40に対応し、
防護本体部は防護部材本体10に対応し、
頂部は上面板12に対応し、
被把持部本体はハンドル本体22に対応し、
支持部は支持プレート21に対応し、
透過部は透明部14に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0063】
例えば、上述の説明では、防護部材本体10を構成する傾斜板11及び上面板12は鋼製の板材で構成したが、図7に図示するように、透明部14を備えるように構成してもよい。
具体的には、8枚の傾斜板11と上面板12とで構成する底面が開放された八角錐台状の防護部材本体10における各傾斜板11及び上面板12に透明部14を設けている。
【0064】
透明部14は、飛散する破砕片が当接しても損傷しない高耐衝撃性、高耐久かつ高強度で透明な樹脂製であり、各傾斜板11や上面板12を構成する枠体に透明部14を装着している。なお、透明部14は、パンチングメタル等の所要の強度及び透過性を有する金属材で構成してもよい。
【0065】
このように、防護部材本体10に、反対側が目視できる透明部14が備えられることで、防護する解体部分Z周辺の視野をさらに広げることができ、解体部分Zに対してより適切に防護部材1を配置することができる。
【0066】
また、上述の説明では、回転式フォーク40は装着部41に対して把持装置本体42が回転可能に構成されたが、回転式でなくてもよい。
さらにまた、防護部材本体10は八角錐台状であったが、例えば、六角錐台状などの多角錐台形状であってもよいし、円錐台状であってもよい。さらには、上面板12の半分と4枚の傾斜板11とで構成する半断面部分を一体化し、防護部材本体10を二分割するなど、適宜の分割形状の防護部材本体10であってもよい。
【0067】
また、上述の建設機械30は、クローラ32を備えた解体用のバックホーであったが、タイヤで自走可能なバックホーでもよいし、バックホー以外の建設機械であってもよい。
上記クラッシャ50は、解体部分Zを挟み込んで破砕するクラッシャであったが、先端のチゼルで打撃して破砕するブレーカなどで構成してもよい。
【0068】
また、上述の説明では、1台の相番機Xと解体機Yとで解体する態様について説明したが、例えば、2台の解体機Yに対して1台の相番機Xで施工したり、1台の解体機Yに対して2台の相番機Xで施工したりするなど、適宜の台数で施工してもよい。
【符号の説明】
【0069】
1…防護部材
10…防護部材本体
12…上面板
14…透明部
20…ハンドル
21…支持プレート
22…ハンドル本体
30…建設機械
33…アーム
40…回転式フォーク
50…クラッシャ
X…相番機
Y…解体機
Z…解体部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7